(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ハーネス対応防汚衣
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20220203BHJP
A41D 13/02 20060101ALI20220203BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D13/02
A62B35/00 A
(21)【出願番号】P 2018181979
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大熊 亘
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-14644(JP,A)
【文献】特表2020-532660(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211063(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D20/00
A62B 1/00- 5/00
A62B35/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が着用しているハーネス型安全帯の汚れを防止するハーネス対応防汚衣であって、
前記ハーネス型安全帯の本体部を覆う防汚衣本体部と、
筒状に形成され、前記防汚衣本体部から突出しており、前記ハーネス型安全帯の本体部から延出しているランヤードを覆うランヤード覆い部と、
を有し、前記ランヤード覆い部の基端部の径の値が、前記ランヤード覆い部の中間部の径の値よりも小さくなっていることを特徴とするハーネス対応防汚衣。
【請求項2】
請求項1に記載のハーネス対応防汚衣であって、
前記ランヤード覆い部は一対で設けられており、これらの一対のランヤード覆い部のそれぞれが、ハーネス型安全帯に設けられている2本のランヤードのそれぞれを覆うように構成されていることを特徴とするハーネス対応防汚衣。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハーネス対応防汚衣であって、
前記防汚衣本体部の少なくとも一部の色と前記ランヤード覆い部の少なくとも一部の色とがお互いに異なっていることを特徴とするハーネス対応防汚衣。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のハーネス対応防汚衣であって、
前記防汚衣本体部に前記ランヤード覆い部を縫い付けている糸の色が、前記防汚衣本体部の色、前記ランヤード覆い部の色、および、ハーネス対応防汚衣を構成している他の布を縫い合わせているその他の糸の色とは異なっていることを特徴とするハーネス対応防汚衣。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のハーネス対応防汚衣であって、
前記ランヤード覆い部の先端の開口部からは、帯状もしくは紐状の部材(29)が所定の長さ延出していることを特徴とするハーネス対応防汚衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス対応防汚衣に係り、特に、ランヤードを含むハーネス型安全帯を覆うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鋼で構成された建屋等のメンテナンスにおける高所作業であって、粉塵等による汚れを伴う作業をする場合、不織布で構成された防汚衣(保護衣)を着てから腰ベルト型安全帯を装着している。そして、腰ベルト型安全帯から延出しているランヤード先端部のフックを上記建屋の一部に設置して、上記高所作業における転落や落下を防いでいる。上記高所作業では、防汚衣で覆われていない腰ベルト型安全帯の汚れが激しく、腰ベルト型安全帯の交換頻度が高い。
【0003】
ところで、近年、高所作業における落下や転落から作業者を一層確実に守るために、腰ベルト型安全帯に代えてハーネス型安全帯を使用するようになっている。ここで、従来の技術を示す文献として、たとえば、特許文献1を掲げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、腰ベルト型安全帯に代えてハーネス型安全帯を用いる場合、汚れた腰ベルト型安全帯と同様の頻度で汚れたハーネス型安全帯を交換すると、コストがかかってしまうので、ランヤードを含めたハーネス型安全帯の汚れを防止することができるハーネス対応防汚衣がほしいとの要求がある。
【0006】
このハーネス対応防汚衣にあっては、ハーネス型安全帯の本体部から延出しているランヤードの汚れをも防ぐとともに、ランヤードの取り回しをしやすくすることが、作業性の悪化を防止するする観点から重要である。
【0007】
本発明は、ランヤードを含めたハーネス型安全帯の汚れを防止することができるハーネス対応防汚衣であって、ランヤードの取り回しがしやすいハーネス対応防汚衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、人が着用しているハーネス型安全帯の汚れを防止するハーネス対応防汚衣であって、前記ハーネス型安全帯の本体部を覆う防汚衣本体部と、筒状に形成され、前記防汚衣本体部から突出しており、前記ハーネス型安全帯の本体部から延出しているランヤードを覆うランヤード覆い部とを有し、前記ランヤード覆い部の基端部の径の値が、前記ランヤード覆い部の中間部の径の値よりも小さくなっているハーネス対応防汚衣である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハーネス対応防汚衣であって、前記ランヤード覆い部は一対で設けられており、これらの一対のランヤード覆い部のそれぞれが、ハーネス型安全帯に設けられている2本のランヤードのそれぞれを覆うように構成されているハーネス対応防汚衣である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のハーネス対応防汚衣であって、前記防汚衣本体部の少なくとも一部の色と前記ランヤード覆い部の少なくとも一部の色とがお互いに異なっているハーネス対応防汚衣である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のハーネス対応防汚衣であって、前記防汚衣本体部に前記ランヤード覆い部を縫い付けている糸の色が、前記防汚衣本体部の色、前記ランヤード覆い部の色、および、ハーネス対応防汚衣を構成している他の布を縫い合わせているその他の糸の色とは異なっているハーネス対応防汚衣である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のハーネス対応防汚衣であって、前記ランヤード覆い部の先端の開口部からは、帯状もしくは紐状の部材が所定の長さ延出しているハーネス対応防汚衣である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ランヤードを含めたハーネス型安全帯の汚れを防止することができるハーネス対応防汚衣であって、ランヤードの取り回しがしやすいハーネス対応防汚衣を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の防汚対象である作業者と作業者が着用しているハーネス型安全帯とを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の防汚対象であるハーネス型安全帯のランヤード先端のフック等を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の防汚対象である作業者と作業者が着用しているハーネス型安全帯(2本のランヤードを備えたハーネス型安全帯)とを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣で、作業者と作業者が着用しているハーネス型安全帯とを覆った状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の背面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣の背面図であって、ランヤード覆い部を取り除いた状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣のランヤード覆い部の先端部を示す図であって、(b)は(a)におけるIXB-IXB断面を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣のランヤード覆い部を構成する部材(不織布片)の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るハーネス対応防汚衣(ハーネス対応防護衣)1は、
図1、
図4等で示すように、人(作業者)3が着用しているハーネス型安全帯(フルハーネス型安全帯)5を覆って、ハーネス型安全帯5の汚れを防止するものであり、
図5、
図7で示すように、防汚衣本体部7とランヤード覆い部9とを備えて構成されている。
【0016】
なお、人3が着用しているハーネス型安全帯5を覆っているハーネス対応防汚衣1は、当然ではあるが、人3の胴体等を覆って、人3が汚れることも防ぐものである。
【0017】
ハーネス対応防汚衣1は、たとえば、不織布で形成されている。さらに説明すると、ハーネス対応防汚衣1は、所定形状に切断された複数の不織布片を縫製糸で適宜縫い合わせることで形成されている。
【0018】
防汚衣本体部7は、ハーネス型安全帯5の本体部11を覆うようになっている。ハーネス型安全帯5の本体部11は、ハーネス型安全帯5からランヤード21を除いた部位であり、たとえば、肩ベルト13と腿ベルト15と胸ベルト17と胴ベルト19とを備えて構成されている。なお、ハーネス型安全帯5の型式によっては、一部の部位(たとえば胴ベルト)を備えていないものもある。
【0019】
防汚衣本体部7は、たとえば、フード付のツナギの形状に形成されている。したがって、人がハーネス型安全帯5を着用し、さらに、ハーネス対応防汚衣1を着用した場合、人の手(手首よりも先の部位)と人の足(足首よりも先の部位)と人の顔とは、防汚衣本体部7から露出するが、人の手、人の足、人の顔以外の人の他の部位(胴体等)と、ハーネス型安全帯5の本体部11とは、防汚衣本体部7で覆われるようになっている。なお、ハーネス対応防汚衣1の型式によっては、一部の部位(たとえば、フード)を備えていないものもある。
【0020】
ランヤード覆い部9は、筒状に形成されており、防汚衣本体部7から突出(延出)している。そして、ハーネス型安全帯5の本体部11から延出しているランヤード21を覆うようになっている。
【0021】
ランヤード覆い部9は、ハーネス型安全帯5の本体部11から延出しているランヤード21と同程度の長さ防汚衣本体部7から延出している。
【0022】
ランヤード21は、
図2等で示すように、ランヤード本体部23とフック25とを備えて構成されている。ランヤード本体部23は、細長い紐状に形成されており、たとえば、
図3で示すように、基端部がハーネス型安全帯5の本体部11の肩ベルト13の部位(人3の背中の上部で肩ベルトがクロスしている部位)に接続されている。
【0023】
フック25は、ハーネス型安全帯5の本体部11から延出しているランヤード本体部23の先端に設けられている。
【0024】
筒状に形成されているランヤード覆い部9の一方の開口部(基端側の開口部)は、この全周が、防汚衣本体部7の一部に形成されている貫通孔27(
図8参照)の全周に、たとえば縫製されて一体的に設置されている。これにより、筒状に形成されているランヤード覆い部9の内部は、防汚衣本体部7の内部に通じており、防汚衣本体部7とランヤード覆い部9との接合部からハーネス対応防汚衣1の内部に粉塵等が侵入することが防止される。
【0025】
また、ランヤード覆い部9は、人3が着用しているハーネス型安全帯5の本体部11から延出しているランヤード本体部23を内部に貫通させて、ランヤード本体部23をこの全長にわたって覆うようになっている。
【0026】
ハーネス対応防汚衣1では、
図7で示すように、防汚衣本体部7からのランヤード覆い部9の突出方向を柔軟に変更できるようにするために、ランヤード覆い部9の基端部がくびれている。
【0027】
すなわち、ランヤード覆い部9の基端部の径D1(内径でもよいし外径でもよい)の値が、ランヤード覆い部9の中間部や先端部の径D2(内径でもよいし外径でもよい)の値よりも小さくなっている。
【0028】
さらには、ランヤード覆い部9の基端部の径D1の値が、ランヤード覆い部9の他の部位の内径の値よりも小さくなっている。
【0029】
また、ハーネス型安全帯5には、一対の(2本の)ランヤード21(21A、21B)が設けられている。これにより、ハーネス対応防汚衣1のランヤード覆い部9(9A、9B)も、一対で(2本)設けられている。
【0030】
そして、一対のランヤード覆い部9(9A、9B)のそれぞれが、ハーネス型安全帯に設けられている2本のランヤード21(21A、21B)のそれぞれを覆うように構成されている。
【0031】
2本のランヤード覆い部9(9A、9B)の基端部は、お互いが隣接して防汚衣本体部7に接続されている。また、2本のランヤード覆い部9(9A、9B)を備えたハーネス対応防汚衣1は、左右方向で対称に形成されている。すなわち、ハーネス対応防汚衣1は、着用等による変形が無ければ、ハーネス対応防汚衣1の中心を含み左右方向に対して直交する平面に対して対称に形成されている。
【0032】
また、
図7で示すように、一対のランヤード覆い部9の基端部のそれぞれは、お互いが隣接している側とは反対側(ハーネス対応防汚衣1での横方向での外側)でのみくびれていることで、一対のランヤード覆い部9(9A、9B)それぞれの基端部の径D1の値が、ランヤード覆い部9の中間部の径D2の値よりも小さくなっている。
【0033】
なお、ハーネス対応防汚衣1では、ハーネス対応防汚衣1を着用するときに、ランヤード覆い部9に手や腕を挿入してしまう誤りを防止するために、防汚衣本体部7とランヤード覆い部9との接合部の色が、他の部位の色とは異なっている。
【0034】
たとえば、防汚衣本体部7にランヤード覆い部9を縫い付けている糸(縫製糸)の色が、不織布で構成されている防汚衣本体部7の色、不織布で構成されているランヤード覆い部9の色、および、ハーネス対応防汚衣1を構成している他の不織布を縫い合わせているその他の糸(防汚衣本体部7にランヤード覆い部9を縫い付けている糸以外の糸)の色とは異なっている。
【0035】
上述したように、ランヤード覆い部9の基端側の開口部の全周が防汚衣本体部7の貫通孔27の全周に縫い付けられていることで、ランヤード覆い部9の基端側の開口部の全周や防汚衣本体部7の貫通孔27の全周(防汚衣本体部7とランヤード覆い部9との接合部)に、環状の縫製糸の一部(縫い目)が現れている。
【0036】
この環状の縫製糸の色をたとえば赤くし、この環状の縫製糸以外の他の部位のたとえば白色にすることで、環状の縫製糸の色を他の部位の色と変えている。
【0037】
なお、上記説明では、環状の縫製糸全体の色を、色を他の部位の色と変えているが、環状の縫製糸の一部の色を、色を他の部位の色と変えた構成であってもよい。
【0038】
さらに、ランヤード覆い部9の基端側の開口部の全周と防汚衣本体部7の貫通孔27の全周とを縫い合わせている環状の縫製糸の色を変えることに代えてもしくは加えて、ランヤード覆い部9を構成している不織布片を縫っている糸の色が他の部位の色と異なるようにしてもよい。
【0039】
たとえば、
図7の左側のランヤード覆い部9Aは、
図10に示す形状の不織布片31を2枚重ねて適宜縫い合わせることで筒状に形成されているが、これの2枚の不織布片31を縫い合わせている糸の色が他の部位の色と異なっている態様でもよい。
【0040】
同様にして、
図7の右側のランヤード覆い部9Bも不織布片31を2枚重ねて適宜縫い合わせることで筒状に形成されているが、これの2枚の不織布片31を縫い合わせている糸の色が他の部位の色と異なっている態様でもよい。
【0041】
なお、ハーネス対応防汚衣1において、ハーネス対応防汚衣1を着用するときに、ランヤード覆い部9に手や腕を挿入してしまう誤りを防止するために、防汚衣本体部7の少なくとも一部の色とランヤード覆い部9の少なくとも一部の色とがお互いに異なっている態様にしてもよい。
【0042】
また、ハーネス対応防汚衣1のランヤード覆い部9の先端の開口部からは、
図9で示すように、帯状もしくは紐状の部材(たとえば、不織布で構成された部材)29が所定の長さ延出している。
【0043】
帯状もしくは紐状の部材29は、ランヤード覆い部9の先端部をハーネス型安全帯5のランヤード本体部23の先端部もしくはフック25(
図2参照)の基端部に設置するために設けられている。
【0044】
帯状もしくは紐状の部材29は、1つのランヤード覆い部9の先端の開口部から2本延出している。2本の部材29のそれぞれは、2枚の不織布片31のそれぞれから延出している。
【0045】
また、
図2で示すように、ランヤード21のフック25の基端には、環状の部材33が設けられているが、この環状の部材33に帯状もしくは紐状の部材29を通し、2本の部材29をお互いに結び付けることで、ランヤード覆い部9(ランヤード覆い部9の先端)が、ランヤード本体部23の先端に固定され、ランヤード覆い部9がランヤード21の全長を覆うようになっている。
【0046】
ハーネス型安全帯5の本体部11には、
図1で示すように、ランヤード21のフック25を引っ掛けるためのフック引っ掛け部35が設けられている。
【0047】
防汚衣本体部7には、
図5、
図6で示すように、ハーネス型安全帯5のフック引っ掛け部35に、ランヤード21のフック25を引っ掛けるときに、フック25を通すためのスリット状の貫通孔37が設けられている。また、防汚衣本体部7には、スリット状の貫通孔37を上側から覆って、貫通孔37からハーネス対応防汚衣1内に粉塵等が入り込むことを防止するためのフラップ39が設けられている。
【0048】
ここで、ランヤード覆い部9についてさらに詳しく説明する。
【0049】
まず、
図8を参照して、一対のランヤード覆い部9(9A、9B)の基端が接合される貫通孔(防汚衣本体部7の貫通孔)27について説明する。貫通孔27は、防汚衣本体部7の背側の身頃(後側の不織布)を貫通している。また、貫通孔27は、横方向(幅方向)の寸法の値が上下方向(縦方向)の寸法の値よりも大きなひし形状に形成されており、背側の身頃の上部に設けられている。
【0050】
ランヤード覆い部9を構成している不織布には表裏の区別が無いものとして説明する。一対のランヤード覆い部9(9A、9B)は、
図10に示すような形状の4枚の不織布(不織布片)31で構成されている。なお、
図10の紙面に対して直交する方向は不織布31の厚さ方向になっている。
【0051】
不織布31は、各辺部41、43、45、47、49、51、53で囲まれた形状(概ね細長い四角形状)に形成されている。不織布31の縦方向の寸法の値は、不織布31の横方向の寸法の値よりも大きくなっている。不織布31の横方向の寸法の値は、たとえば、基端側(縦方向の一端側)から先端側(縦方向の他端側)に向かうに若干小さくなっている(ほぼ一定であってもよい)。
【0052】
また、不織布31の基端部であって幅方向の一端側には、筒状のランヤード覆い部9の基端部の径D1を小さくするための、「V」字状(三角形状)の切り欠き(辺部43、45で形成されている切り欠き)63が設けられている。
【0053】
ランヤード覆い部9Aは、
図10で示す形状の不織布31を2枚用意し、これらの不織布31を、2枚の不織布31の全体同士がお互いに重なるように重ねる。この重ねがされた状態で、辺部43、45、47、51の近傍の箇所を縫製糸によって縫い付ける。
【0054】
なお、辺部43、45、47、51の近傍の箇所とは、たとえば、辺部43、45、47、51より不織布31の内側に僅かに入った部位であって辺部43、45、47、51の沿って延びている部位である。
【0055】
これにより、筒状のランヤード覆い部9Aが形成され、縫い合わせがされていない辺部49のところが、ランヤード覆い部9A先端の開口部になり、縫い合わせがされていない辺部41のところが、ランヤード覆い部9A基端の開口部になる。ランヤード覆い部9Bも、ランヤード覆い部9Aと同様に形成される。
【0056】
筒状のランヤード覆い部9Aの縫い合わせがされていない2つ辺部53のうちの一方の辺部(2枚を重ね合わせたときの奥側の不織布31の辺部)53の近傍の箇所と、筒状のランヤード覆い部9Bの縫い合わせがされていない2つ辺部53のうちの一方の辺部(2枚を重ね合わせたときの奥側の不織布31の辺部)53の近傍の箇所とが縫製糸でお互いに縫い合わされる。
【0057】
さらに、筒状のランヤード覆い部9Aの縫い合わせがされていない2つ辺部53のうちの他方の辺部(2枚を重ね合わせたときの手前側の不織布31の辺部)53の近傍の箇所と、筒状のランヤード覆い部9Bの縫い合わせがされていない2つ辺部53のうちの他方の辺部(2枚を重ね合わせたときの手前の不織布31の辺部)53の近傍の箇所とがお互いに縫製糸でお互いに縫い合わされる。
【0058】
これにより2本のランヤード覆い部9A、9Bが、あたかも長ズボンのような態様で一体化する。
【0059】
防汚衣本体部7のひし形の貫通孔27は、4つの辺部55、57、59、61で囲まれている。一体化した2本のランヤード覆い部9A、9Bの基端の開口部は、4つの辺部41で構成されている。
【0060】
一体化した2本のランヤード覆い部9A、9Bの基端の開口部の1つ目の辺部41は、筒状のランヤード覆い部9Aの縫い合わせがされていない2つの辺部41のうちの一方の辺部(2枚を重ね合わせたときの奥側の不織布31の辺部)であり、2つ目の辺部41は、筒状のランヤード覆い部9Aの縫い合わせがされていない2つの辺部41のうちの他方の辺部(2枚を重ね合わせたときの手前の不織布31の辺部)である。
【0061】
3つ目の辺部41は、筒状のランヤード覆い部9Bの縫い合わせがされていない2つの辺部41のうちの一方の辺部(2枚を重ね合わせたときの奥側の不織布31の辺部)であり、4つ目の辺部41は、筒状のランヤード覆い部9Bの縫い合わせがされていない2つの辺部41のうちの他方の辺部(2枚を重ね合わせたときの手前の不織布31の辺部)である。
【0062】
1つ目の辺部41の近傍の箇所と、貫通孔27の1つ目の辺部55の近傍の箇所とが、他の部位の色とは異なる色の縫製糸で縫い合わされる。2つ目の辺部41の近傍の箇所と、貫通孔27の2つ目の辺部57の近傍の箇所とが、他の部位の色とは異なる色の縫製糸で縫い合わされる。3つ目の辺部41の近傍の箇所と、貫通孔27の3つ目の辺部59の近傍の箇所とが、他の部位の色とは異なる色の縫製糸で縫い合わされる。4つ目の辺部41の近傍の箇所と、貫通孔27の4つ目の辺部61の近傍の箇所とが、他の部位の色とは異なる色の縫製糸で縫い合わされる。
【0063】
これにより、ランヤード覆い部9の基端側の開口部の全周が、防汚衣本体部7の貫通孔27の全周に縫い合わされていることになる。
【0064】
なお、
図10で示すように、辺部53の長さ寸法L1の値は、三角形状の切り欠き63の頂上部67と辺部41との距離L2の値よりも大きくなっている。
【0065】
また、
図10で示す4枚の不織布片31を上述したように縫い合わせて、一対のランヤード覆い部9(9A、9B)を形成し、一対のランヤード覆い部9(9A、9B)を、防汚衣本体部7に縫い付けたことで、ランヤード覆い部9Aの基端部とランヤード覆い部9Bの基端部との接合箇所(辺部53の箇所)での、ランヤード覆い部9Aの内部とランヤード覆い部9Bの内部の防汚衣本体部7からの突出量の値は、切り欠き63の頂上部67(ランヤード覆い部9がもっともくびれている部位)の防汚衣本体部7からの距離の値よりも大きくなっている。
【0066】
このように構成されていることで、ランヤード覆い部9Aがランヤード覆い部9B側に一層曲がりやすくなっており、また、ランヤード覆い部9Bがランヤード覆い部9A側に一層曲がりやすくなっている。
【0067】
次に、ハーネス型安全帯5およびハーネス対応防汚衣1の着用について説明する。
【0068】
まず、人3がハーネス型安全帯5を着用し、続いて、ハーネス対応防汚衣1を着用する。このときに、一方のランヤード覆い部9Aに一方のランヤード21Aを通し、ランヤード21Aのフック25をランヤード覆い部9Aの先端の開口部から突出させ、フック25の環状の部材33に2本の部材29を結び付けて、ランヤード覆い部9Aの先端をフック25の基端に固定する。また、他方のランヤード覆い部9Bに他方のランヤード21Bを通し、ランヤード21Bのフック25をランヤード覆い部9Bの先端の開口部から突出させ、フック25の環状の部材33に2本の部材29を結び付けて、ランヤード覆い部9Bの先端をフック25の基端に固定する。
【0069】
続いて、ランヤード21を使用しないときには、スリット状の貫通孔37にフック25を通して、フック25を防汚衣本体部7のフック引っ掛け部35に引っ掛ける。
【0070】
ランヤード21を使用するときには、
図3で示すように、2つのランヤード21A、21Bのフック25を建屋等のフック設置体65に設置する。ハーネス型安全帯5とハーネス対応防汚衣1とを着用している人3が、移動するときには、一方のランヤード21Aのフック25を建屋65等に掛けておいて、他方のランヤード21Bのフック25をかけ替える。さらに移動するときには、同様にして、ランヤード21のフック25を1つずつ掛け替える。
【0071】
ハーネス対応防汚衣1によれば、ハーネス型安全帯5の本体部11を覆う防汚衣本体部7と、筒状に形成され防汚衣本体部7から突出しておりハーネス型安全帯5の本体部11から延出しているランヤード21を覆うランヤード覆い部9とを備え、ランヤード覆い部9の基端部の径D1の値が、ランヤード覆い部9の中間部の径D2の値よりも小さくなっているので、ランヤード21を含めたハーネス型安全帯5の汚れを防止することができるとともに、ランヤード21の取り回しがしやすくなる。
【0072】
すなわち、ランヤード覆い部9の基端部の径D1の値が、ランヤード覆い部9の中間部の径D2の値よりも小さくなっているので、防汚衣本体部7に対してランヤード覆い部9がこの基端部で曲がりやすくなっており(ランヤード覆い部9の防汚衣本体部7からの延出方向を変えやすくなっており)、ハーネス型安全帯5のランヤード21を覆った場合であっても、ランヤード21およびランヤード覆い部9の延出方向を変えやすくなっている。これにより、ランヤード21およびランヤード覆い部9の取り回しがしやすくなる。
【0073】
また、ハーネス対応防汚衣1によれば、ランヤード覆い部9が一対で設けられており、これらの一対のランヤード覆い部9(9A、9B)のそれぞれが、ハーネス型安全帯5に設けられている2本のランヤード21(21A、21B)のそれぞれを覆うように構成されているので、2本のランヤード21の汚れを防止することができるとともに、2つのランヤード21のうちの少なくとも1つのランヤードを建屋等に接続することができ、ハーネス型安全帯5を着用している作業者の安全性を確保することができる。
【0074】
また、ハーネス対応防汚衣1によれば、一対のランヤード覆い部9の基端部のそれぞれは、お互いが隣接している側とは反対側でのみくびれていることで、一対のランヤード覆い部9の基端部の径D1の値が、ランヤード覆い部9の中間部の径D2の値よりも小さくなっているので、基端がお互いに隣接してハーネス型安全帯5の本体部11から延出している一対のランヤード21それぞれの延出方向を変えやすくなっている。
【0075】
また、ハーネス対応防汚衣1によれば、防汚衣本体部7にランヤード覆い部9を縫い付けている糸の色が、他の部位の色と異なっているので、縫製糸の糸を変えるだけの簡単な変更で、お互いの形状が似通っている防汚衣本体部7の長袖部とランヤード覆い部9とを容易に見分けることができる。そして、ハーネス対応防汚衣1を着用するときの誤着用を確実に防止することができる。
【0076】
また、ハーネス対応防汚衣1によれば、ランヤード覆い部9の先端の開口部から帯状もしくは紐状の部材29が所定の長さ延出しているので、ランヤード覆い部9の先端をランヤード21のフック25の基端部に固定することでき、ランヤード覆い部9でランヤード本体部23の全体を覆うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 ハーネス対応防汚衣
3 人
5 ハーネス型安全帯
7 防汚衣本体部
9、9A、9B ランヤード覆い部
11 ハーネス型安全帯の本体部
21、21A、21B ランヤード
29 帯状もしくは紐状の部材
D1 ランヤード覆い部の基端部の径
D2 ランヤード覆い部の中間部の径