IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社協成の特許一覧

<>
  • 特許-パイロットガバナ 図1
  • 特許-パイロットガバナ 図2
  • 特許-パイロットガバナ 図3
  • 特許-パイロットガバナ 図4
  • 特許-パイロットガバナ 図5
  • 特許-パイロットガバナ 図6
  • 特許-パイロットガバナ 図7
  • 特許-パイロットガバナ 図8
  • 特許-パイロットガバナ 図9
  • 特許-パイロットガバナ 図10
  • 特許-パイロットガバナ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】パイロットガバナ
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/16 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G05D16/16 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018222406
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020087113
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000142078
【氏名又は名称】株式会社協成
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 宏二
(72)【発明者】
【氏名】田口 英樹
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-252706(JP,A)
【文献】実開昭58-122110(JP,U)
【文献】特開2002-132352(JP,A)
【文献】実開昭60-039113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧を導入する駆動圧室(6)、主ガバナによって調圧された二次圧を導入する二次圧室(7)及び大気圧室(8)を内部に有するケーシング(2)と、
前記駆動圧室(6)を間にして前記ケーシング(2)の内部に上下に間隔をあけて配置される上ダイヤフラム(3)及び下ダイヤフラム(4)と、
その上ダイヤフラム(3)と下ダイヤフラム(4)を連結するホルダ(5)と、
前記駆動圧室(6)に一次圧を導入する上向き開口の位置固定のノズル(10a)とそのノズル(10a)に対して接離するシートパッキン(10b)とを組み合わせたサプライバルブ(10)と、
前記上ダイヤフラム(3)に設けられ、前記サプライバルブ(10)に連動して前記駆動圧室(6)を前記二次圧室(7)に連通させるエキゾーストバルブ(11)と、
前記大気圧室(8)の内部に設置されて前記上ダイヤフラム(3)と下ダイヤフラム(4)を前記ホルダ(5)と一緒に前記二次圧室側(7)に向けて付勢する付勢圧の調整が可能なスプリング(12)とを有し、
前記二次圧室(7)の圧力低下時に前記シートパッキン(10b)が前記上ダイヤフラム(3)と下ダイヤフラム(4)の変位に追従して前記サプライバルブ(10)の弁部開度が増大し、この状況で前記ノズル(10a)経由で前記駆動圧室(6)に導入された圧力を前記主ガバナのローディング圧力室に駆動圧として供給するパイロットガバナであって、
前記上ダイヤフラム(3)と下ダイヤフラム(4)の相対位置を変更する調整機構を有し、
その調整機構は、前記下ダイヤフラム(4)に固定される調整リング(14)と、回転操作部(15b)を前記大気圧室(8)に臨ませて前記調整リング(14)に回転可能に取り付けられた調整ねじ(15)を備え、前記調整ねじ(15)が前記ホルダ(5)にねじ込まれて構成されており、
前記調整リング(14)に前記下ダイヤフラム(4)の内端側が固定され、前記ホルダ(5)に取り付けられた前記調整ねじ(15)のねじ込み量調整により、前記調整リング(14)に取り付けられた前記下ダイヤフラム(4)の固定位置と前記ホルダ(5)に対する前記上ダイヤフラム(3)の固定位置の関係が変化するパイロットガバナ。
【請求項2】
前記ケーシング(2)に、前記大気圧室(8)を覆う下部カバー(2c)と、その下部カバー(2c)の下端開口を覆うキャップ(2d)が含まれ、前記キャップ(2d)が着脱自在であり、そのキャップ(2d)を前記下部カバー(2c)から外して前記調整ねじ(15)の回転操作を行うように構成された請求項1に記載のパイロットガバナ。
【請求項3】
前記調整機構に、前記調整ねじ(15)に螺合してその調整ねじ(15)をねじ込み量が調整された位置に固定するロックナット(16)が含まれ、そのロックナット(16)が、前記大気圧室(8)内で前記調整リング(14)の下端面に当接可能となっている請求項1又は2に記載のパイロットガバナ。
【請求項4】
前記ホルダ(5)が、下端中心部に下向きに突出したボス部(5e)を有し、前記調整リング(14)は、前記ボス部(5e)を軸方向スライド自在に受け入れる凹部(14c)を有し、前記ボス部(5e)に形成されたねじ孔(5f)と前記調整ねじ(15)を螺合させた請求項1~3のいずれかひとつに記載のパイロットガバナ。
【請求項5】
前記調整ねじ(15)が前記ねじ孔(5f)から抜け出た位置で前記凹部(14c)による前記ボス部(5e)の受け入れ状態が維持されるように構成された請求項4に記載のパイロットガバナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス圧力制御用の整圧器などに採用されるパイロットガバナ(パイロット整圧器)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、都市ガスなどの供給経路の途中には、管路内の圧力を切り替える箇所が存在し、その部分には、ガバナと称される整圧器が設けられている。
【0003】
その整圧器の概略構成を図9に示す。図の整圧器には、一次側管路21と二次側管路22間に組み込まれて高圧の一次側圧力を減圧して二次側に流す主ガバナ23、パイロットガバナ1、オリフィス24などが含まれており、これらの機器による二次側圧力の調圧によって二次側圧力の変化が小さく抑えられる。
【0004】
その整圧器の一例が、例えば、下記特許文献1に詳しく示されている。
【0005】
図9のパイロットガバナ1は、ケーシング2に設けられた2枚のダイヤフラム(上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4)を、ホルダ5を介して連結し、ケーシング2内に、上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4(以下では上下のダイヤフラム3、4とも言う)間に位置する駆動圧室(荷重圧室)6と、上ダイヤフラム3の上部に位置する二次圧室7と、下ダイヤフラム4の下部に位置する大気圧室8を形成している。
【0006】
また、制御用圧力流体の導入通路9と、その導入通路9の駆動圧室6への出口部に設置されたサプライバルブ10と、駆動圧室6と二次圧室7の連通状態を切り替えるエキゾーストバルブ11と、ホルダ5を大気圧室8側から二次圧室7側に向けて付勢する付勢力の調整が可能なスプリング12をケーシング2の内部に備えている。
【0007】
二次圧室7は、二次側管路22と主ガバナ23のバランス圧力室23bに接続され、整圧器の形態によっては、一次側管路21と導入通路9を結ぶ経路の途中に組み込まれる減圧弁(図示せず)の調圧室にも接続される。
【0008】
導入通路9は、一次側管路21に接続され、さらに、駆動圧室6は、主ガバナ23のローディング圧力室(駆動圧室)23cに接続される。
【0009】
サプライバルブ10は、上下のダイヤフラムダ3、4に対向して加わる力がバランスした位置で弁部開度が一定に維持される。
【0010】
例示のパイロットガバナ1のパイロット圧を利用して主ガバナ23を作動させる整圧器は、一次側管路21と二次側管路22の連通が主ガバナ23の開閉弁23aによって遮断されている状況下で二次管路内の圧力が使用されて低下すると、パイロットガバナ1の二次圧室7の圧力が低下する。
【0011】
そのために、パイロットガバナ1の上下のダイヤフラム3、4に対向して加わる力のバランスが崩れ、上下のダイヤフラム3、4がスプリング12に押されてホルダ5と共に上向きに移動し、サプライバルブ10の弁部開度が大きくなる。
【0012】
その結果、一次側管路からの駆動圧室6に対する制御用圧力流体の導入量が増加し、駆動圧室6の圧力(主ガバナに供給する駆動圧)が高まる。
【0013】
駆動圧室6の圧力は、ローディング圧が所定の圧力値になるまで上昇し、ローディング圧が所定の圧力値になったら、パイロットガバナ1の上下のダイヤフラム3、4に対向して加わる力が再びバランスすることで上下のダイヤフラム3、4がホルダ5を伴って下向きに移動してバランス点に戻される。
【0014】
このときの、ローディング圧力の上昇挙動は、上下のダイヤフラム3、4の取り付け位置(取り付けられた位置)の変動によって変化する。
【0015】
これは、上下のダイヤフラム3、4は、取り付け位置の変動により受圧状況が変化するためである。
【0016】
また、一方で、駆動圧室6内の上昇した圧力は主ガバナ23のローディング圧力室23cに流れ、これによるローディング圧力室23cの圧力上昇により開閉弁23aの弁部開度が大きくなり、一次側管路21の高圧流体が二次側管路22に流れる量が増えて二次側管路22内の圧力が上昇する。
【0017】
これに伴い、パイロットガバナ1の二次圧室7の圧力も上昇し、上ダイヤフラム3に加わる押し下げ力の増加によりサプライバルブ10が閉じる。
【0018】
同時に、エキゾーストバルブ11が開弁して、駆動圧室6の圧力が二次圧室7に逃げ、これにより、主ガバナのバランス圧力室23bとローディング圧力室23cの内圧が等しくなり、メインスプリング23dの力で開閉弁23aが閉じる。
【0019】
このように、ダイヤフラムの取り付け位置の変動によって上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4の受圧状況が変化することは、二次圧力の変動(使用量)に対する整圧器の応答特性に個体差が生じることを意味する。
【0020】
その応答特性の個体差を修正するために、図10に示すような特性調整機構が考案されており、それと類似の機構が下記特許文献1にも示されている。
【0021】
図10の特性調整機構は、ホルダ5に対してサプライバルブ10をねじ込み量可変にねじ込み、そのねじ込み量の調整により、上下のダイヤフラム3,4の相対位置が調整されるものになっている。
【0022】
その調整は、二次圧室7に所定圧力の気体を充填してパイロットガバナ1の応答特性を検査し、その検査で得られた特性値を予め判っている基準特性値と比較し、基準特性値とのずれに基づいてホルダ5に対するサプライバルブ10のねじ込み量の調整値を算出する。
【0023】
そして、算出したサプライバルブ10のねじ込み量の調整値に基づいて上下のダイヤフラム3,4の相対位置の調整を行い、その後、二次圧室7に所定圧力の検査用の流体を再度充填し、上下のダイヤフラム3,4の相対位置調整が正しく行われているかの再検査を実施する方法でなされている。
【0024】
なお、図10の位置から図11の位置への変位では、上下のダイヤフラム3,4に対向して加わる力の差が小さくなり、図11の位置から図10の位置への変位ではその力の差が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特開2006-285663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来考案されている図10に示すような特性調整機構は、パイロットガバナのケーシングの頭頂部に設けられている二次圧導入用のポートP3(図9参照)からケーシング2の内部に工具を挿入してサプライバルブ10の回転操作を行う必要がある。
【0027】
その作業は、回転操作用の工具を挿入するために、ポートP3を開口させて行う必要があり、そのときに二次圧室7の内圧が放出されることから、調整後に行う再検査のための二次圧室7に対する再度の流体圧の充填などの作業が必要になって多くの時間を費やしている。
【0028】
また、従来の特性調整機構によれば、上下のダイヤフラムの径方向内端側がホルダに固定され、ホルダの変位に連動して上下のダイヤフラムのホルダに対する取り付け位置も同時に変化するため、特性の微調整もし辛くて難しかった。
【0029】
上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4は逆向きに取り付けられているため、両ダイヤフラムの内端の取り付け位置の変動による受圧状況の変化は、上ダイヤフラム3を二次圧室7側に押す力が増加するときに、下ダイヤフラム4を大気圧室8側に押す力が減少するものになる。
【0030】
そのため、ホルダ5に対するサプライバルブ10のねじ込み量に対する特性の変化量が大きく、そのことが微調整を難しくしている。
【0031】
この発明は、上記の現状技術に鑑みてなされたものであって、二次圧力の変動に対する応答特性の個体差を、二次圧室の内圧を放出せずに短時間で修正することができ、応答特性の微調整も可能なパイロットガバナを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
一次圧を導入する駆動圧室、主ガバナによって調圧された二次圧を導入する二次圧室及び大気圧室を内部に有するケーシングと、
前記駆動圧室を間にして前記ケーシングの内部に上下に間隔をあけて配置される上ダイヤフラム及び下ダイヤフラムと、
その上ダイヤフラムと下ダイヤフラムを連結するホルダと、
前記駆動圧室に一次圧を導入する上向き開口の位置固定のノズルとそのノズルに対して接離するシートパッキンとを組み合わせたサプライバルブと、
前記上ダイヤフラムに設けられ、前記サプライバルブに連動して前記駆動圧室を前記二次圧室に連通させるエキゾーストバルブと、
前記大気圧室の内部に設置されて前記上ダイヤフラムと下ダイヤフラムを前記ホルダと一緒に前記二次圧室側に向けて付勢する付勢力の調整が可能なスプリングとを有し、
前記二次圧室の圧力低下時に前記シートパッキンが前記上ダイヤフラムと下ダイヤフラムの変位に追従して前記サプライバルブの弁部開度が増大し、この状況で前記ノズルを経由して前記駆動圧室に導入された圧力を主ガバナのローディング圧力室に駆動圧として供給するパイロットガバナであって、
前記上ダイヤフラムと下ダイヤフラムの相対位置を変更する調整機構を有し、
その調整機構は、前記下ダイヤフラムに固定される調整リングと、回転操作部を前記大気圧室に臨ませて前記調整リングに回転可能に取り付けられた調整ねじとで構成され、前記調整ねじが前記ホルダにねじ込まれ、前記調整リングに前記下ダイヤフラムの内端側が固定され、前記ホルダに対する前記調整ねじのねじ込み量調整により、前記調整リングに取り付けられた前記下ダイヤフラムの固定位置と前記ホルダに取り付けられた前記上ダイヤフラムの固定位置の関係が変化するパイロットガバナを提供する。
【0033】
そのパイロットガバナは、前記ケーシングに、前記大気圧室を覆う下部カバーと、その下部カバーの下端開口を塞ぐキャップを含ませ、前記キャップを前記下部カバーから外すことで、前記調整ねじの工具を使っての回転操作を可能となすことができる。
【0034】
この発明のパイロットガバナは、前記調整機構に、前記調整ねじに螺合してその調整ねじをねじ込み量が調整された位置に固定するロックナットが含まれ、そのロックナットが、前記大気圧室内で前記調整リングの下端面に当接可能となっているものが好ましい。
【0035】
また、前記ホルダが、下端中心部に下向きに突出したボス部を有し、前記調整リングは前記ボス部を軸方向スライド自在に受け入れる凹部を有し、前記ボス部の内側に形成されたねじ孔に前記調整ねじがねじ込まれた構造にするのも好ましい。
【0036】
前記調整ねじが前記ボス部から抜けた位置(ねじ孔と調整ねじとの螺合が解けた位置)で、前記凹部によるボス部の受け入れ状態が維持されるようにしておくのも好ましい。
【発明の効果】
【0037】
この発明のパイロットガバナは、上下のダイヤフラムの相対位置(=サプライバルブのノズルに対するシートパッキンの位置)を変更する調整機構を有しており、その調整機構の操作を大気圧室側で行えるものになっている。
【0038】
このために、二次圧室の圧力を放出せずに上下のダイヤフラムが取り付けられた位置の加工誤差などによる不可避の相対位置のずれを調整することができ、応答特性の個体差を無くすための調整作業が容易になる。
【0039】
また、ダイヤフラムの位置調整は、下ダイヤフラムのみを動かせるため、調整ねじのねじ込み量に対する応答特性の変化量が、上下のダイヤフラムが同時に動くタイプの調整機構に比べて小さく、そのために、微調整も困難を伴うことなく可能になる。
【0040】
なお、前記調整機構に、調整ねじをねじ込み量の調整された位置に固定するロックナットが含まれたものは、調整ねじの緩みに起因した調整位置の意図せぬ変動を防止できる。
【0041】
また、前記ホルダが下端中心部にボス部を、前記調整リングが前記ボス部を軸方向スライド自在に受け入れる凹部をそれぞれ有し、前記ボス部に形成されたねじ孔に前記調整ねじを螺合させたものは、前記ボス部と凹部によるホルダと調整リングの位置決め効果とガイド効果が得られるため、ホルダを介した上下のダイヤフラムの連結と、調整ねじの操作による下ダイヤフラムの変位が安定する。
【0042】
このほか、前記調整ねじが前記ボス部から抜けた位置で前記凹部による前記ボス部の受け入れ状態が維持されるようにしたものは、前記調整ねじが過剰に操作されてボス部との螺合が万一解ける状況が起こっても、ボス部と調整ねじの芯出し状態が維持されるので、ボス部に対する調整ねじの再螺合が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】この発明のパイロットガバナの一例を簡略化して示す断面図である。
図2図1のパイロットガバナに組み込まれた、下ダイヤフラムとホルダの平面図である。
図3図2のX-X線に沿った断面図である。
図4図1のアセンブリのホルダと調整リングと調整ねじをつないだ締結部位の拡大斜視図である。
図5】調整リングをホルダから離した状態を示す図4の締結部位の断面図である。
図6】調整リングをホルダ側に寄せた状態を示す図4の締結部位の断面図である。
図7図5の位置での上下のダイヤフラムの相対位置を示す図である。
図8図6の位置での上下のダイヤフラムの相対位置を示す図である。
図9】整圧器の主ガバナとパイロットガバナの接続状態の一例を示す概略構成図である。
図10】パイロットガバナの二次圧力の変動に対する応答特性の個体差を調整するために考案されている従来の特性調整の機構の一例の概要を示す断面図である。
図11図10の特性調整機構による特性調整法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明のパイロットガバナの実施の形態を、添付図面の図1図8に基づいて説明する。
【0045】
例示のパイロットガバナ1は、ケーシング2、上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4、ホルダ5、各々がケーシング2の内部に形成される駆動圧室6、二次圧室7、大気圧室8、制御用圧力流体の導入通路9、サプライバルブ10、エキゾーストバルブ11、スプリング12、圧力調整機構13、調整リング(アジャストリング)14、調整ねじ15、及びロックナット16を組み合わせて構成されている。
【0046】
ケーシング2は、駆動圧室6を有するボディ2aと、二次圧室7を覆う上部カバー2bと、大気圧室8を覆う下部カバー2cと、下部カバー2cの下端開口を塞ぐキャップ2dを組み合わせたものが用いられている。
【0047】
ボディ2aは、前記導入通路9と、主ガバナのローディング圧力室に接続されるポートP1を有する。
【0048】
上部カバー2bは、主ガバナのバランス圧力室につながれるポートP2と、主ガバナによって調圧された二次圧を導入するポートP3を有する。
【0049】
ボディ2aと上部カバー2bと下部カバー2cは、ボルト19で互いに締結され、上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4は、上下に間隔をあけてケーシング2の内部に配置されている。
【0050】
上ダイヤフラム3と下ダイヤフラム4は、同一構造のものが逆向きの姿勢にして組み込まれており、内径側がダイヤフラムプレート3a、4aによってそれぞれ補強されたものになっている。
【0051】
上ダイヤフラム3は、外周部がケーシング2のボディ2aと上部カバー2bとの間に挟み込まれて定位置に保持され、内周側は、ホルダ5に固定されている。
【0052】
下ダイヤフラム4は、外周部がケーシング2のボディ2aと下部カバー2cとの間に挟み込まれて定位置に保持され、内周側は、調整リング14に固定されている。
【0053】
ホルダ5は、平行配置の上支持板5aと下支持板5bを複数本のブリッジ5cを介して連結した構造になっている。
【0054】
上支持板5aの中心部には、上向きに突出した円筒状のボス部5dが設けられ、そのボス部5dが上ダイヤフラム3の中心の孔に通されて二次圧室7に挿入され、その挿入部の外周にセットナット17を螺合させて上ダイヤフラム3の内径側をホルダ5に固定している。
【0055】
下支持板5bの中心部には、下向きに突出したボス部5eが設けられ、そのボス部5eには当該ボス部の端面(下面)に開口したねじ孔5fが設けられている。
【0056】
サプライバルブ10は、駆動圧室6に一次圧を導入する上向き開口の位置固定のノズル
10aとそのノズルに接離するシートパッキン10bを組み合わせたものになっている。
【0057】
ノズル10aは、導入通路9を介して導入される一次圧を駆動圧室6に流入させる。シートパッキン10bは、エキゾーストバルブ11(ロッドバルブ)に連結されてエキゾーストバルブ11と一緒に上ダイヤフラム3に取り付けられたホルダ5の上支持板5aの内部(ボス部5dとそのボス部5dに結合させた中空ディスク5gの内部)に組み込まれている。
【0058】
エキゾーストバルブ11は、スプリング11aによって閉弁方向に付勢されている。
【0059】
圧力調整機構13は、スプリング12でダイヤフラムに加える付勢力を増減させて主ガバナによる二次圧の調圧値を変化させるものであって、ダイヤフラムプレート4aの下面に添わせたスプリング受け13aと、スプリング12の下端を受けたスプリング押え13bと、そのスプリング押え13bを推進させるキャップ2dに螺合した圧力調整ボルト13c(図のそれはハンドル付き)とで構成されている。
【0060】
調整リング14は、ホルダ5の下方に設けられている。この調整リング14は、図3図4に示すように、上側が駆動圧室6に配置される大径部14a、下側が大気圧室8に臨む小径部14bとして構成されて大径部14aの上面の中心部に、ホルダ5の下支持板5bに設けられたボス部5eを軸方向スライド自在に受け入れる凹部14cを設けたものになっている。
【0061】
ボス部5eと凹部14cは、スライド自在に適合して嵌り合うものになっており、そのボス部5eと凹部14cによりホルダ5と調整リング14が互いに位置決めされ、かつ、互いの軸方向移動がガイドされる。
【0062】
調整リング14の小径部14bは、下ダイヤフラム4の中心の穴に通され、大気圧室8の内部において、その小径部14bにセットナット18を螺合させて下ダイヤフラム4の内径側を調整リング14に固定している。
【0063】
調整ねじ15は、調整リング14に回転可能、かつ、軸方向相対移動不可に取り付けられている。そして、この調整ねじ15の上部の雄ねじ部15aがホルダ5のボス部5eに設けられたねじ孔5fに螺合している。
【0064】
調整ねじ15は、下端に回転操作部15bを有しており、その回転操作部15bを有する下端側が大気圧室8内に配置されている。
【0065】
大気圧室8に臨ませた図示の回転操作部15bは、角レンチを係合させる角孔であるが、ソケットレンチのソケットを外嵌する角軸、各種のドライバ(プラスドライバ、マイナスドライバ、トルクス(登録商標)ドライバなど)を係合させるスリットや係合凹部などに置き換えることが可能である。
【0066】
調整ねじ15は、外周に螺合したロックナット16により、調整後の位置に保持される。なお、調整ねじ15はホルダ5のボス部5eから抜けた位置で調整リングの凹部14cによるボス部5eの受け入れ状態が維持されるようにしておくことができ、そのように構成されたものは、過剰操作によって調整ねじ15がねじ孔5fから抜け出ることが万一あっても、ねじ孔5fに対する調整ねじ15の再ねじ込みが楽に行える。
【0067】
サプライバルブ10は、上下のダイヤフラム3,4に対向して加わる力がバランスしているときに、弁部が開度0(これはノズル10aの出口がシートパッキン10bによって塞がれた状態)、もしくは一定開度(シートパッキン10bがノズル10aから一定量離間した状態)を保つ状態になる。
【0068】
この状態から二次圧室7に導入される二次圧の低下が起こると、スプリング12の力で
上下のダイヤフラム3,4がホルダ5と一緒に二次圧室7側に押し動かされてサプライバルブ10の弁部開度が大きくなる。
【0069】
そのために、駆動圧室6に対する一次圧の導入量が増加して駆動圧室6の圧力が高まり、下ダイヤフラム4を大気圧室8側に押す力が増大する。
【0070】
これにより、上下のダイヤフラム3、4がホルダ5を伴って下向きに移動し、その両者に対抗して加わる力のバランス点に戻され、サプライバルブ10の弁部開度が小さくなる
【0071】
このパイロットガバナの弁部開度の増減に伴う主ガバナの動作については既に説明したので、ここでの再説明は省く。
【0072】
図1に示したパイロットガバナ1は、以下のようにして、個体差による応答特性値のずれを修正する。
【0073】
まず始めに、予め検査によって確認されている応答特性値を基準特性値とし、検査対象のパイロットガバナの二次圧室に所定圧の気体を充填した状態で二次圧力の低下に対する修正前の応答特性を検査する。
【0074】
その後、その検査で得られた応答特性値を基準特性値と比較してホルダ5のねじ孔5fに対する調整ねじ15のねじ込み量を算出する。
【0075】
調整ねじ15のねじ孔5fに対するねじ込み量と上下のダイヤフラム3,4の相対位置の関係は、予め実施した同一仕様のパイロットガバナの検査データから知ることができ、その検査データがあれば、応答特性の修正に必要な調整ねじ15のねじ孔5fに対するねじ込み量の算出が可能である。
【0076】
応答特性の修正に必要な調整ねじ15のねじ込み量が求まったら、キャップ2dをそのキャップ2dに螺合させた圧力調整ボルト13cと一緒に外し、スプリング押え13bとスプリング12を大気圧室8から抜き取る。
【0077】
そして、回転操作用の工具を(図示せず)を大気圧室8に挿入し、その工具で調整ねじ15を必要量回転させてホルダ5に対する調整リング14の位置(下ダイヤフラム4の径方向内端側の取り付け位置)を図5の位置から図6の位置に変化させる。
【0078】
このとき、上ダイヤフラム3は、図7図8に示すように元の位置に保持され、サプライバルブ10の弁部開度dは変化しない。
【0079】
上記の調整が済んだら、ロックナット16を締め付けてスプリング押え13bとスプリング12を元に戻し、キャップ2dを取り付ける。
【0080】
この後、調整後の応答特性が適正であるかを、再検査を行って確認する。このとき、二次圧室7には、検査に必要な圧力を有する加圧された気体が充填されているので、従来品のように再検査のための気体の再充填作業を必要としない。
【0081】
また、調整ねじ15の回転操作による上下のダイヤフラム3,4の位置関係の調整は、下ダイヤフラム4のみが調整ねじ15の回転操作で動いてなされるため、調整ねじ15のねじ込み量の変動に対する応答特性の変化幅が、調整時に上下のダイヤフラム3,4が同時に動く従来品と違って小さい。そのために、応答特性の微調整が可能になり、微調整の作業もし易くなる。
【0082】
なお、上記においてダイヤフラム、ホルダの支持板、ボディのカバーについて上下の関係を述べたのは、説明の便宜上であって、この発明のパイロットガバナは倒立状態にして使用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 パイロットガバナ
2 ケーシング
2a ボディ
2b 上部カバー
2c 下部カバー
2d キャップ
P1~P3 ポート
3 上ダイヤフラム
4 下ダイヤフラム
3a、4a ダイヤフラムプレート
5 ホルダ
5a 上支持板
5b 下支持板
5c ブリッジ
5d、5e ボス部
5f ねじ孔
5g 中空ディスク
6 駆動圧室
7 二次圧室
8 大気圧室
9 導入通路
10 サプライバルブ
10a ノズル
10b シートパッキン
d 弁部開度
11 エキゾーストバルブ
11a スプリング
12 スプリング
13 圧力調整機構
13a スプリング受け
13b スプリング押え
13c 圧力調整ボルト
14 調整リング
14a 大径部
14b 小径部
14c 凹部
15 調整ねじ
15a 雄ねじ部
15b 回転操作部
16 ロックナット
17,18 セットナット
19 締結用のボルト
21 一次側管路
22 二次側管路
23 主ガバナ
23a 開閉弁
23b バランス圧力室
23c ローディング圧力室
23d メインスプリング
24 オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11