(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用のセンサデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20220114BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61M5/315 550J
A61M5/31 520
A61M5/315 550N
A61M5/315 550P
(21)【出願番号】P 2018504114
(86)(22)【出願日】2016-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2016067344
(87)【国際公開番号】W WO2017016959
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-07-09
(32)【優先日】2015-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・ボガティルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ミハイ・ガブリ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ボーリン
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0290346(US,A1)
【文献】特開2008-267922(JP,A)
【文献】国際公開第2014/111341(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/111342(WO,A1)
【文献】特表2014-531283(JP,A)
【文献】国際公開第2015/039134(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/173770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスに着脱可能に取り付けられるように構成されたセンサデバイスであって:
それぞれの共振回路の一部を形成しそれに加えられる信号を有するように動作可能な導体素子のアレイであって、薬物送達デバイスの長手方向軸に対して平行な経路に沿って動くように構成された、導電性領域を支持する第1の可動要素を有する薬物送達デバイスに該センサデバイスが取り付けられたとき、各共振回路が該各共振回路のそれぞれの導体素子に対する第1の可動要素上に支持される導電性領域の近さを示す信号を出力するように動作可能であるように該センサデバイス内に配置される、導体素子のアレイと;
共振回路から出力される信号を受け、受けた信号に基づいて、第1の可動要素の経路に沿った位置に関連する情報を判定するように構成された回路と;
薬物送達デバイスに取り付けられたとき薬物送達デバイス上で外部から見える符号化された情報(660)を読み取るように動作可能であるようにセンサデバイス内に配置された感知装置(23)と
を含み、
ここで、該回路は、該符号化された情報に基づいて、薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関係する情報を判定するようにさらに構成され、
ここで、該符号化された情報は、薬物送達デバイスのモードを示す部分(68)をさらに含み、
薬物送達デバイスがダイヤル設定モードにあるとき、該薬物送達デバイスのモードを示す部分(68)は、外部から見えず、したがって該符号化された情報の一部ではなく、薬物送達デバイ
スが送達モードにあるとき、該薬物送達デバイスのモードを示す部分(68)は、外部から見ることができ、したがって該符号化された情報の一部である、前記センサデバイス。
【請求項2】
各共振回路は、異なる共振周波数を有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
導体素子のアレイは、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたときアレイ
の導体素子が可動要素の動きの最大範囲に相当する長さに沿って互いに概ね等間隔に配置されるように、センサデバイス内に配置される、請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
回路は、各共振回路から出力される共振信号の振幅を測定し、第1の可動要素上に支持される導電性領域の近さによる各共振信号の減衰の量を判定するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
符号化された情報の少なくとも一部は、少なくとも薬物送達デバイスの第2の可動要素上に設けられ、該第2の可動要素は、薬物送達デバイス内で回転可能であり、回路は、符号化された情報に基づいて、薬物送達デバイス内の第2の可動要素の回転の度合いを判定するように構成される、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
回路は、第1の可動要素の経路に沿った位置および第2の可動要素の回転の度合いに基づいて、現在ダイヤル設定されている薬物用量に関係する情報を判定するように構成される、請求項5に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
符号化された情報の少なくとも一部は、送達デバイス内に形成されるアパーチャまたは窓を通して外部から見え、感知装置は、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき、感知装置がアパーチャまたは窓から受けた光を検出するように動作可能になるように、センサデバイス内に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
感知装置は:
センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき薬物送達デバイスのアパーチャまたは窓の方へ光を投影するように構成された光源装置と;
アパーチャまたは窓から反射された光を受けるように構成された光センサ装置と
を含む、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
少なくとも、薬物送達デバイスの動作モードに関する情報、および薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関する情報に基づいて、投薬された薬物用量の履歴を記憶するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
薬物送達システムであって:
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサデバイスと;
経路に沿って動くように構成された第1の可動要素を有する薬物送達デバイスと
を含む、前記薬物送達システム。
【請求項11】
第1の可動要素は、下にある要素に沿って動くことができ、特定の方向における第1の可動要素の動きにより、経路に沿って連続する位置で、下にある要素が外部から見えるようになるように構成される、請求項10に記載の薬物送達システム。
【請求項12】
薬物送達デバイスは、デバイス内で回転可能な第2の可動要素を含み、該第2の可動要素の回転および第1の可動要素の動きは相互依存しており、第2の可動要素は、その外部の一部分の周りに設けられるコードを含み、該コードの一部は、薬物送達デバイスに形成される窓またはアパーチャを通して外部から見え、センサデバイスは、窓またはアパーチャの上に位置する感知装置を含み、該感知装置は、コードのうち窓またはアパーチャを通して外部から見える部分を読み取るように構成され、回路は、コードの外部から見える部分および第1の可動要素の経路に沿った位置に基づいて、薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関係する情報を判定するように構成される、請求項10または11に記載の薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射ペンのような薬物送達デバイスに着脱可能に取り付けることができるセンサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾病で、薬剤の注射による定期的な治療が必要とされている。そのような注射は、注射デバイスを用いて実行することができ、医療従事者または患者自身によって適用される。一例として、1型および2型の糖尿病は、たとえば1日に1回または数回のインスリン用量の注射により、患者自身によって治療することができる。たとえば、充填済みの使い捨てインスリンペンが注射デバイスとして使用可能である。あるいは、再使用可能なペンを使用することもできる。再使用可能なペンは、空の薬剤カートリッジを新しいものと交換することができる。どちらのペンも、各使用前に交換される1組の1回使い切りの針を装備することができる。次いで、たとえば、投薬量ノブを回し(ダイヤル設定し)、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、インスリンペンにおいて、注射予定のインスリン用量を手動で選択することができる。次いで、針を適当な皮膚部分に挿入し、インスリンペンの注射ボタンを押して、用量を注射する。たとえばインスリンペンの誤った取り扱いを防ぐ、または既に適用された用量の経過を追うために、インスリン注射を監視することができるように、たとえば注射されたインスリンのタイプおよび用量の情報など、注射デバイスの状態および/または使用に関する情報を測定することが望ましい。
【0003】
たとえば特許文献1には、補助デバイスを提供することが記載されている。補助デバイスは、デバイスを注射/薬物送達デバイスに解放可能に取り付けるための嵌合ユニットを含む。デバイスは、カメラを含み、注射ペンの投薬量窓を通して見える捕捉された像上で光学式文字認識(OCR)を実行し、それによって注射デバイスにダイヤル設定された薬剤の用量を判定するように構成される。そのような補助デバイスが用量を成功裏に判定するために、投薬量窓は、静止したままでなければならない。しかし、すべての薬物送達デバイスがこのように動作するとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、薬物送達デバイスに着脱可能に取り付けられるように構成されたセンサデバイスを提供する。センサデバイスは:
それぞれの共振回路の一部を形成しそれに加えられる信号を有するように動作可能な導体素子のアレイであって、薬物送達デバイスの長手方向軸に対して平行な経路に沿って動くように構成された、導電性領域を支持する第1の可動要素を有する薬物送達デバイスにセンサデバイスが取り付けられたとき、各共振回路が各共振回路のそれぞれの導体素子に対する第1の可動要素上に支持される導電性領域の近さを示す信号を出力するように動作可能であるようにセンサデバイス内に配置される、導体素子のアレイと;
共振回路から出力される信号を受け、受けた信号に基づいて、第1の可動要素の経路に沿った位置に関連する情報を判定するように構成された回路と
を含む。
【0006】
各共振回路は、異なる共振周波数を有することができる。
【0007】
導体素子のアレイは、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき、アレイの導体素子が可動要素の動きの最大範囲に相当する長さに沿って互いに概ね等間隔に配置されるように、センサデバイス内に配置される。
【0008】
アレイにおける各導体素子は、少なくとも1つの金属コイルを含むことができる。
【0009】
回路は、各共振回路から出力される共振信号の振幅を測定し、第1の可動要素上に支持される導電性領域の近さによる各共振信号の減衰の量を判定するように構成される。
【0010】
センサデバイスは、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき薬物送達デバイス上で外部から見える符号化された情報を読み取るように動作可能であるようにセンサデバイス内に配置される感知装置をさらに含むことができ、回路は、符号化された情報に基づいて、薬物送達デバイスの動作に関係する情報を判定するように構成される。
【0011】
回路は、符号化された情報および第1の可動要素の経路に沿った位置に基づいて、薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関係する情報を判定するように構成される。
【0012】
符号化された情報の少なくとも一部は、少なくとも薬物送達デバイスの第2の可動要素上に設けられ、第2の可動要素は、薬物送達デバイス内で回転可能であり、回路は、符号化された情報に基づいて、薬物送達デバイス内の第2の可動要素の回転の度合いを判定するように構成される。
【0013】
回路は、第1の可動要素の経路に沿った位置および第2の可動要素の回転の度合いに基づいて、現在ダイヤル設定されている薬物用量に関係する情報を判定するように構成される。
【0014】
回路は、現在ダイヤル設定されている用量に関係する情報に基づいて、投薬予定の用量サイズおよび/または投薬された用量サイズを判定するように構成される。
【0015】
回路は、符号化された情報に基づいて、薬物送達デバイスの動作モードを判定するように構成される。
【0016】
回路は、ダイヤル設定モードから投薬モードへの変化を判定するように構成される。あるいは、またはそれに加えて、回路は、投薬モードからダイヤル設定モードへの変化を判定するように構成することができる。
【0017】
動作モードの変化の判定は、現在ダイヤル設定されている用量に関する情報をさらに処理することに使用することができる。
【0018】
符号化された情報の少なくとも一部は、送達デバイス内に形成されるアパーチャまたは窓を通して外部から見え、感知装置は、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき、感知装置がアパーチャまたは窓から受けた光を検出するように動作可能になるように、センサデバイス内に配置される。
【0019】
感知装置は、センサデバイスが薬物送達デバイスに取り付けられたとき薬物送達デバイス内のアパーチャまたは窓の方へ光を投影するように構成された光源装置と、アパーチャまたは窓から反射された光を受けるように構成された光センサ装置とを含むことができる。
【0020】
センサデバイスは、投薬された薬物用量の履歴を記憶するように構成される。これは、現在ダイヤル設定されている用量を示す情報を記憶することによって実行される。たとえば、薬物送達デバイスの動作モードの変化が検出されたとき、現在ダイヤル設定されている用量の情報は、投薬予定の用量を示すことができる。センサデバイスは、投薬された薬物用量としてそれを記憶することができる。あるいは、またはそれに加えて、センサデバイスは、投薬された薬物用量を判定するように構成することができる。たとえば、投薬された用量は、現在ダイヤル設定されている用量、および投薬動作の終わりに判定されるゼロ用量から算定可能である。
【0021】
あるいは、投薬された用量は、センサデバイスがダイヤル設定モードから投薬モードへ動作モードの変化を判定したときの現在ダイヤル設定されている用量、およびセンサデバイスが投薬モードからダイヤル設定モードへ動作モードの変化を判定したときの現在ダイヤル設定されている用量から、算定することができる。
【0022】
動作モードの変化が発生した時間を示すタイムスタンプもまた、用量を示す情報に関連付けて記憶することができる。
【0023】
それに加えて、または別法として、投薬された薬物または薬剤のタイプを示す情報を、用量を示す情報に関連付けて記憶することができる。
【0024】
投薬された用量に関する情報、タイムスタンプ、投薬された薬物または薬剤のタイプを示す情報のうちの少なくとも1つを記憶することは、薬物の用量が投薬されるたびに繰り返すことができる。
【0025】
センサデバイスは、こうして、少なくとも、薬物送達デバイスの動作モードに関する情報、および薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関する情報に基づいて、投薬された薬物用量の履歴を記憶するように構成される。
【0026】
薬物または薬剤のタイプは、薬物標示コードに基づいて判定される。薬物標示コードは、薬物送達デバイスの外側に配置される。薬物標示コードは、薬物送達デバイスの外部から見えるように配置される。センサデバイスは、薬物標示コードを検出するように構成されたセンサを含むことができる。
【0027】
本発明の第2の態様は、薬物送達システムであって、本発明の第1の態様のセンサデバイスと、経路に沿って動くように構成された第1の可動要素を有する薬物送達デバイスとを含む薬物送達システムを提供する。
【0028】
第1の可動要素は、下にある要素に沿って動くことができ、特定の方向における第1の可動要素の動きにより、経路に沿って連続する位置で、下にある要素が外部から見えるようになるように構成される。
【0029】
薬物送達デバイスは、デバイス内で回転可能な第2の可動要素を含むことができ、第2の可動要素の回転および第1の可動要素の動きは相互依存している。第2の可動要素は、その外部の一部分の周りに設けられるコードを含むことができ、コードの一部は、薬物送達デバイスに形成される窓またはアパーチャを通して外部から見える。
【0030】
センサデバイスは、窓またはアパーチャの上に位置し窓またはアパーチャを通して外部から見えるコードの部分を読み取るように構成された感知装置を含むことができる。回路は、コードの外部から見える部分および第1の可動要素の経路に沿った位置に基づいて、薬物送達デバイスに現在ダイヤル設定されている薬物用量に関する情報を判定するように構成される。
【0031】
次に、本発明の例示的な実施形態をより完全に理解するために、以下の図面に関連する以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる薬物送達デバイス1の2つの図である。
【
図2A】様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる
図1に示されるような薬物送達デバイスの様々な構成要素およびその組合せの例示的な概略図である。
【
図2B】様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる
図1に示されるような薬物送達デバイスの様々な構成要素およびその組合せの例示的な概略図である。
【
図2C】様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる
図1に示されるような薬物送達デバイスの様々な構成要素およびその組合せの例示的な概略図である。
【
図2D】様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる
図1に示されるような薬物送達デバイスの様々な構成要素およびその組合せの例示的な概略図である。
【
図2E】様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる
図1に示されるような薬物送達デバイスの様々な構成要素およびその組合せの例示的な概略図である。
【
図3】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスの一部と組み合わせられた
図2Dに示される薬物送達デバイスの構成要素の概略切断図である。
【
図4A】センサデバイスの動作を示すことを目的とした、
図3の薬物送達デバイスおよびセンサデバイスのセンサアレイの様々な図である。
【
図4B】センサデバイスの動作を示すことを目的とした、
図3の薬物送達デバイスおよびセンサデバイスのセンサアレイの様々な図である。
【
図4C】センサデバイスの動作を示すことを目的とした、
図3の薬物送達デバイスおよびセンサデバイスのセンサアレイの様々な図である。
【
図4D】センサデバイスの動作を示すことを目的とした、
図3の薬物送達デバイスおよびセンサデバイスのセンサアレイの様々な図である。
【
図4E】センサデバイス2によって検出される共振の減衰、および異なる用量が薬物送達デバイスにダイヤル設定されていることを示す図である。
【
図5A】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる一代替薬物送達デバイスの様々な構成要素の例示的な概略図である。
【
図5B】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスを使用することができる一代替薬物送達デバイスの様々な構成要素の例示的な概略図である。
【
図5C】
図5Aおよび
図5Bの薬物送達デバイスと組み合わせられた本発明の実施形態によるセンサデバイスの概略図である。
【
図6】本発明の実施形態によるセンサデバイスの概略ブロック図である。
【
図7A】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスによって読み取られる符号化された情報の例の図である。
【
図7B】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスによって読み取られる符号化された情報の例の図である。
【
図8】本発明の様々な実施形態によるセンサデバイスと一緒に使用される薬物送達デバイスの構成要素の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
説明および図面を通して、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【0034】
図1は、本発明の様々な実施形態による(補助デバイスとも称され、図示されない)センサデバイスを使用することができる薬物送達デバイス1、この例では注射デバイスの2つの図である。
【0035】
図1の薬物送達デバイス1は、使用者が、デバイス1を用いて送達予定(たとえば投薬または排出予定)の薬物投薬量(またはいくつかの薬物投薬量)を調節することができるように構成される。
図1の例では、これは、用量セレクタ10を回転させる(たとえばダイヤル設定する)と、内部ダイヤル設定機構(図示せず)が、薬物送達機構(図示せず)が作動されたときに投薬予定の薬物の量を調節することで実現される。この例では、薬物送達機構は、デバイスのボタン11を押すことによって作動される。
【0036】
薬物送達デバイス1は、少なくとも1つのアパーチャまたは窓13A、13Bが形成される外側ハウジング12を含む。明らかなように、アパーチャは、単に、外部ハウジング12の切り取ったエリアとすることができるが、窓は、ハウジングのうちデバイスの構成要素を見ることができる透明部分であってもよい。便宜上、以下では、少なくとも1つのアパーチャまたは窓13A、13Bを、単に少なくとも1つの窓と呼ぶことにする。
【0037】
少なくとも1つの窓13A、13Bは、可動ゲージ要素14をハウジング12の外部から見ることを可能にする。薬物送達デバイスは、用量セレクタ10がダイヤル設定されると、可動ゲージ要素14が動かされ、それによって選択された用量が使用者に示されるように構成される。より具体的には、用量セレクタ10がダイヤル設定されると、ゲージ要素14は、下にある面15A、15Bに沿って軸方向に動き、それによって選択された用量が示される。
図1の例では、ゲージ要素14の少なくとも一部の下に位置する面15Aは、数字スリーブ15Aを含む。数字スリーブ15Aの外面上には、薬物用量を示す数字が設けられ、現在選択されている用量を示す数字が少なくとも1つの窓13A、13Bを通して見える。この例では、数字スリーブ15Aは、可動ゲージ要素に形成されるゲージ窓(またはアパーチャ)14-1を通して見える。可動ゲージ要素14の他の部分については、以下で論じる。
【0038】
図1に示す薬物送達デバイス1の上の方の図は、ダイヤル設定が実行される前の状況を示す。したがって、可動ゲージ要素14は、その第1の(または最初の)位置である、可動ゲージ要素14が動くことが可能な経路の第1の端部にある。この例では、可動ゲージ要素14がその経路の第1の端部にあるとき、数字スリーブ15Aのうちゲージ窓14-1を通して見える部分は、数字ゼロ(すなわち、ゼロ用量)を示す。同じく数字のゼロは、使用者が薬物送達デバイス1のボタン11を押して調節済みの用量を完全に投薬または送達したときである、投薬動作の終わりにも現れる。
【0039】
図1に示す薬物送達デバイス1の下の方の図は、ダイヤル設定が実行された後の状況を示す。したがって、可動ゲージ要素14は、その第1の位置から離れて、第1の窓13Aを通して見える経路に沿って軸方向に動いている。この例では、デバイス1は、その最大用量にダイヤル設定されており、したがって可動ゲージ要素14は、その経路の第2の端部へと動いている。この例では、最大用量は「100」であり、数字スリーブ15Aのうちゲージ窓14-1を通して見える部分は、数字「100」を示す。いくつかの他の実施形態では、最大用量は、これよりも大きくても小さくてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、最大用量は「120」であってよい。
【0040】
この例では、デバイス1は、第1および第2の窓13A、13Bを含む。数字スリーブ15Aは、第1の窓13Aの下に位置しており、第1の窓13Aを通して見え、さらに下にある要素15Bは、第2の窓13Bの下に位置しており、第2の窓13Bを通して見えることがある。さらに下にある要素15Bは、いくつかの数字を含んでも含まなくてもよい。さらに下にある面15Bは、面15Bの上に位置しそれに沿って軸方向に動くように構成された可動ゲージ要素14の第2の部分14-2から、視覚的に区別可能である。たとえば、可動ゲージ要素14の第2の部分14-2は、さらに下にある面15Bとは異なる色、色調または反射率であってよい。たとえば、ゲージ要素14および下にある面15Bの一方は、明るい色とすることができ(たとえば、明るい色のポリマーから作ることができ)、他方は、暗い色とすることができる(たとえば、暗い色のポリマーから作ることができる)。したがって、使用者は、第2の窓13Bのうちゲージ要素14(具体的には、第2の部分14-2)が見える割合を、さらに下にある面15Bが見える割合と比較して判定することによって、選択された用量を判定することができる。これを
図1に見ることができ、
図1では、デバイス1がそのゼロ用量にダイヤル設定されたとき、ゲージ要素14は、第2の窓13Bを通して見える経路の長さ全体を覆う。対照的に、デバイス1がその最大用量にダイヤル設定されたとき、ゲージ要素14のどの部分も、第2の窓を通して見えない。代わりに、さらに下にある面15Bが、第2の窓13Bによって画成される経路の長さ全体に沿って見える。
【0041】
数字スリーブ15A(やはりゲージ要素14の下に位置する面である)もまた、数字スリーブ15Aの上に位置するそれに沿って軸方向に動くように構成された可動ゲージ要素14から、視覚的に区別可能である。たとえば、ゲージ要素14は、数字スリーブ15Aとは異なる色、色調または反射率であってよい。たとえば、ゲージ要素14および下にある面15Aの一方は、明るい色とすることができ(たとえば、明るい色のポリマーから作ることができ)、他方は、暗い色とすることができる(たとえば、暗い色のポリマーから作ることができる)。図示の例では、数字スリーブ15Aおよび下にある面15Bは、可動ゲージ要素14より反射率が高い。
【0042】
図2A~2Eは、
図1の薬物送達デバイスなどの薬物送達デバイスの構成要素の簡略化された概略図である。
図2A~2Eの目的は、
図1の薬物送達デバイスなどの薬物送達デバイス1の動作を示すことであり;これらの図面は、構成要素の厳密な設計を正確に表すことを意図するものではない。
【0043】
図2Aは、数字スリーブ15Aの簡略化された概略図である。スリーブ15Aの表面上には数字が設けられる。いくつかの例では、数字スリーブの表面の周りには、最小用量から最大用量までの範囲の数字が螺旋状に設けられる。スペースの制約および読み取られる数字の必要性から、数字スリーブ15Aにはすべての数字が印刷されるわけではない。たとえば、偶数だけを印刷することができる。
【0044】
図2Bは、可動ゲージ要素14の簡略化された概略図である。ゲージ要素14は第1のセクション14-4を含み、第1のセクション14-4にはゲージ窓14-1が設けられる。この例では、第1のセクション14-4は、数字スリーブ15Aを取り囲むように構成されたカラーである(
図2Cおよび
図2Dに見ることができる)。第1のセクション14-4から、第2の部分14-2および第3の部分14-3が逆の方向に延びる。第2および第3の部分14-2、14-3は、数字スリーブの長手方向軸に対して概ね平行に延びる。
【0045】
可動ゲージ要素の第2の部分14-2は、可動ゲージがその第1の位置にあるときに第2の窓13B全体を埋める(fill)のに十分な長さだけ、第1の部分14-4から延びるように構成される。第2の部分14-2は、さらに、ゲージ要素がその第1の位置から離れるように動くとき、数字スリーブ15Aの外面の一部分を覆い隠す働きをすることができる。可動ゲージ要素の第3の部分14-3は、ゲージ要素がその第1位置と第2の位置との間を動くとき、数字スリーブ15Aの外面の一部分を覆い隠すように構成される。このようにして、数字スリーブのうち、ゲージ窓14-1の下に位置する部分だけが、デバイスハウジング12の第1の窓13Aを通して見える。図示の例では、第2および第3の部分14-2、14-3は、数字スリーブ15Aを完全には取り囲んでおらず、第1の窓13Aを覆うのに十分なほどの幅しかない。しかし、いくつかの他の実施形態では、第2および第3の部分14-2、14-3は、下に位置する要素15A、15Bを部分的または全体的に取り囲むことができる。
【0046】
数字スリーブ15Aは、デバイスハウジング12内でその長手方向軸の周りを回転可能である。したがって、数字スリーブ15Aを可動(または回転可能)要素と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、数字スリーブ15Aの回転は、用量セレクタ10の回転によって引き起こされる。
【0047】
数字スリーブ15Aの回転運動NSRおよびゲージ要素14の軸方向運動GAは相互依存している。言い換えると、デバイス1のダイヤル設定機構は、数字スリーブ15Aが回転させられたとき、ゲージ要素14がその経路に沿って軸方向に動かされる、または並進運動させられるように構成される。さらに、数字スリーブ15Aの回転の度合いは、ゲージ要素14の軸方向運動の程度に比例して対応する。
【0048】
図2Cは、その最初の位置にあるゲージ要素14を示し、この例では、ゲージ要素14はその最初の位置でゼロ用量を示す。
図2Dは、数字スリーブ15Aの回転およびゲージ要素14のその第1の位置からの並進運動後の数字スリーブ15Aおよびゲージ要素14を示す。
図2Eは、
図2Dのこの配置を、簡略化された形のデバイスハウジング12内に示す。
【0049】
当技術分野では、(上述のような)用量セレクタ10の回転を数字スリーブ15Aの回転運動およびゲージ要素14の軸方向運動に変換する、使用者に対して送達予定の用量を調整するための様々なダイヤル設定機構が知られている。2つのそのような機構は、WO2013/110538A1およびWO2008/145171A1に記載されている。そのような機構(および用量がダイヤル設定された後に薬物の送達を引き起こす薬物送達機構)は当技術分野では知られているので、本明細書ではこれ以上詳細に記載しない。
【0050】
図3は、
図2Dに示す送達デバイス1の構成要素を極めて簡略化し、
図1~
図2Dを参照して説明した送達デバイス1とともに使用するためのセンサデバイス2を簡略化して示す切欠き図である。
【0051】
センサデバイス2は、導体素子20-1~20-6のアレイ20を含む。センサデバイス2は、回路21をさらに含む。各導体素子は、回路21の一部を形成する1つまたはそれ以上の発振器(または回路等価物)によってそれに加えられる所定の周波数の交流電流を有するように構成される。いくつかの実施形態では、各導体素子20-1~20-6は、金属コイルである。コイルは、PCB上に簡単にプリントされ、概ね同一であってよい。他の実施形態では、異なる配置および形状の導体素子を使用することができる。たとえば、コイルは、異なるサイズであってよく、および/または異なる数の巻きを有することができる。コイルは、二次元または三次元であってよい。三次元の積層コイルは、信号がそれに加えられると生成されるEM場を増加させる。いくつかの実施形態では、PCBは、6つの導体素子20-1~20-6を支持する。各共振回路の共振の振幅は、そのコイルによって支配される。したがって、いくつかの実施形態では、各コイルの寸法および構造は同一であることが望まれる。
【0052】
導体素子/コイル20-1~20-6は、センサデバイス2のハウジングのうち、薬物送達デバイス1とセンサデバイス2が互いに接続されたときに薬物送達デバイス1に隣接する部分の近くになるように、センサデバイス2内に配置される。センサデバイス2が薬物送達デバイス1に隣接して所定位置にあるとき、アレイ20の導体素子20-1~20-6は、ゲージ要素14が移動する経路に沿って間隔を置いて配置されている。導体素子20-1~20-6は、ゲージ要素14の動きの最大範囲に概ね対応する長さに沿って互いに実質的に等間隔に配置される。アレイ20がそれに沿って延びる軸は、薬物送達デバイス1の長手方向軸に対して概ね平行である。ゲージ要素14が移動する長さ(第1の窓13Aのサイズとほぼ等しい)は、一設計では、3cmである。これは、コイルは、好都合には、PCB上に5~6mmの間隔で収容可能であることを意味する。
【0053】
図3でも見られるように、ゲージ要素14は、導電性領域30を含む。図示の実施形態では、導電性領域30は、ゲージ要素14の第1のセクション14-4の後方、すなわちゲージ窓14-1の反対側に配置される。ゲージ要素14の導電性領域30は、導電性インクもしくはワニス、金属箔、金属プレートまたはインレイであってよい。導電性領域30は、たとえばアルミニウムまたは銅からなってよい。他の例では、導電性領域30は、強磁性材料、たとえば鉄、ニッケル、コバルト、およびそれらの合金の大部分、または当業界で既知の他の強磁性材料からなってよい。いくつかの実施形態では、導電性領域30の幅は、5mmであってよい。
【0054】
センサデバイス2は、その内部の導体素子20-1~20-6が薬物送達デバイス1の導電性領域30に隣接して位置するように薬物送達デバイス1に取り付けられるように構成される。したがって、センサデバイス2は、その少なくとも一部が薬物送達デバイス1の後ろへと延びるように取り付けられるように構成される。これは、センサデバイス2が、ゲージ窓14-1もしくは第1および第2の窓13A、13Bを覆い隠さない、または、薬剤用量のダイヤル設定および投薬を妨げないという点で、有利となり得る。そのような設計では、第2および第3の部分14-2、14-3は、数字スリーブ15Aを部分的または完全に取り囲み、導電性領域30は、別法として、これらの部分のうちの1つの上に配置してもよい。当業者には、ゲージ要素14上の導電性領域30を、いくらか他の範囲、たとえば90度まで、ゲージ窓14-1に対してオフセットさせることができることは明らかであろう。
【0055】
いくつかの実施形態では、回路21の一部を形成する発振器は、各導体素子/コイルに同時に共振信号を加えることに使用される。回路は、加えられる信号の質を向上させる1つまたはそれ以上のバンドパスフィルタを含むことができる。各導体素子20-1~20-6は、関連のキャパシタを有し、そこにおいて発振器、キャパシタおよび導体素子/コイルは、一緒に、共振回路を形成する。当業者には、機能共振回路を構築するには、抵抗などの他の回路構成要素が必要となることが分かるであろう。発振器、キャパシタ、導体素子および場合により抵抗によって形成される各共振回路は、特定の共振周波数を有する。各共振回路の共振周波数は、若干異なってよい。たとえば、各キャパシタは、各共振回路の共振周波数が若干異なるように、異なるキャパシタンスを有することができる。あるいは、またはそれに加えて、各コイルは、各共振回路の共振周波数が若干異なるように、異なるインダクタンスを有することもできる。あるいは、またはそれに加えて、さらに、各共振回路またはいくつかの共振回路は、各共振回路の共振周波数が若干異なるように、異なる抵抗を有することもできる。これは、各コイル20-1~20-6によって生成される磁場間における望ましくない相互作用を回避する助けとなる。これは、さらに、各共振回路の出力信号を識別する助けとなる。いくつかの実施形態では、互いに隣接する共振回路だけが異なる共振周波数を有することができる。たとえば、共振回路1、3および5が第1の周波数を有することができ、その一方で、共振回路2、4および6が第2の共振周波数を有することもできる。理想的には、各回路からの信号が簡単に区別されるように、各共振回路の帯域幅間の重なり合いはない、またはわずかであるべきである。いくつかの実施形態では、共振回路は、互いに隣接する共振回路の周波数が重なり合わない同様のものすることができるように、比較的高い品質係数(Q係数)をそれぞれ有する。各共振回路の共振の振幅はコイルによって支配されるので、いくつかの実施形態では、コイルは同一であり、共振回路の共振周波数の違いは異なるキャパシタンスのキャパシタを用いることで達成されることが望ましい。
【0056】
センサデバイス2の回路21は、アレイ20の導体素子20-1~20-6から出力される信号を受け、受けた信号に基づいて、ゲージ要素14の位置に関連する情報を判定するように構成される。導体素子20-1~20-6のうちの1つに対してゲージ要素14の導電性領域30が近いことによって、その素子における共振の質の低下が引き起こされる。他の導電性領域の近さは、(渦電流損失による)減衰効果を有し、共振信号の振幅の減少を引き起こす。したがって、以下により詳細に説明されるように、導体素子20-1~20-6のアレイのうちのどれが導電性領域30に最も近いかを決定することが可能になる。
【0057】
図4A~
図4Eは、可動要素がその経路に沿って異なる位置にあるときのセンサデバイス2の動作を示す。この例では、アレイ20は、第1から第6の導体素子20-1~20-6を含み、第1の素子20-1は、最小用量がダイヤル設定されたときに可動ゲージ要素14の導電性領域30に隣接して位置する。第6の素子20-6は、最大用量がダイヤル設定されたときに可動ゲージ要素14の導電性領域30に隣接して位置する。
【0058】
図4Aでは、可動ゲージ要素14は、(たとえば、用量がその最小値のときである)その最初の位置にある。したがって、第1の導体素子20-1の共振の質は、他のすべての導体素子におけるよりも低い。いくつかの実施形態では、導電性領域30が近いことで、第1の導体素子20-1の共振の振幅はほぼゼロに減少される。
【0059】
図4Bでは、ゲージ要素14は、約20%用量の位置へと動いている。この状況では、第2の導体素子20-2の共振の質が、他のすべての導体素子よりも低い。この位置は、数字スリーブ15Aのほぼ完全な1回転に相当することが
図2Aから明らかである。
【0060】
図4Cでは、ゲージ要素14は、約40%用量の位置へと動いており、したがって第3の導体素子20-3が低質の共振を有し、その一方で、第1、第2、第4、第5および第6の素子は高質の共振を有する。この位置は、数字スリーブ15Aのほぼ完全な2回転に相当することが
図2Aから明らかである。
【0061】
最後に、
図4Dでは、ゲージ要素14は、約70%用量の位置へと動いている。この位置では、導電性領域30は、第4の素子と第5の素子の間に配置され、したがって第4の素子20-4および第5の素子20-5の両方が、導電性領域30の近さにより共振の質が低下する。しかし、質の低下は、導電性領域30が導体素子の真下に位置するときよりも小さい。
【0062】
図4Eは、ゲージ要素がその動きの経路の様々な位置にあるときにプロセッサ21が受ける信号を示す線図である。導電性領域30は、導体素子20-1~20-6に対して4つの異なる位置に示されている。これらの位置は、
図4A~
図4Dに示されるものと対応する。導電性領域30が第1の素子20-1の下に配置されるとき、プロセッサ21によって第1の要素20-1から検出される共振の大きさは、白矢印によって示されるように、大きく減衰される。この位置は、ゼロダイヤル設定用量に相当する。他のコイルから検出される共振は、減衰されていない。導電性領域30が第2および第3の素子の下にそれぞれ配置されるとき、これらの素子の共振は、黒矢印および斜線矢印によって示されるように減衰される。導電性領域30が第4の素子と第5の素子との間の中間に配置されるとき、網状線矢印によって示されるように、第4および第5の素子の両方の共振が減衰されるが、導電性領域30が素子の真下に配置されるときよりはそれほど大きくは減衰されない。この位置は、約84用量に相当する。この情報を用いて、数字スリーブが3回転から4回転の間の回転を受けたことが判定される。
【0063】
上記から、ゲージ要素14の大まかな位置の判定に、回路21が導体素子20-1~20-6から出力された信号をどのようにして使用することができるかが明らかである。そして、数字スリーブ15Aの完全な回転の回数は、この位置情報から推論することができる。
【0064】
いくつかの代替実施形態では、センサデバイス2は、数字スリーブが行うことができる完全な回転の回数に応じて、より多くの、またはより少ない導体素子を有することができる。一般的に、回転の回数よりも1つ多い導体素子が設けられる。上述の例では、数字スリーブは、ゼロ用量位置から最大用量位置まで動くのに5回転する。したがって、6個の導体素子が設けられる。
【0065】
明らかなように、導体素子20-1~20-6のアレイ20を用いて用量が判定されるときの精度は、アレイの素子の数によって制限され、素子の数が多いほど精度も高くなる。(アレイ20の素子の数を単純に増加させるのではなく)センサデバイス2の精度を上げる代替機構について、
図5A~
図5Cを参照して述べる。
【0066】
図5Aは、本発明の実施形態によるセンサデバイス2とともに使用される薬物送達デバイス6の一部を形成することができる回転可能要素65A、この例では数字スリーブ65Aの一例を示す。
図5Bは、
図5Aの回転可能要素65Aを含む送達デバイス6の簡略化された図である。
図5Bの送達デバイスは、以下に述べる違いを除いて、前述の図を参照して述べた送達デバイスと概ね同じとすることができる。
【0067】
前述の送達デバイス1と同様に、回転可能要素65Aの回転は、可動ゲージ要素14の軸方向運動と相互依存している。回転の度合いは、可動ゲージ要素14の軸方向運動に比例することができる。
図5Aおよび
図5Bの例では、回転可能要素65Aの外面の周りには、その回転の向きが判定されることを可能にするための視覚的に区別可能なコード66が設けられる。たとえば、コードは、回転の向きが0度であるか、90度であるか、180度であるか、270度であるかに関するセンサデバイス2による判定を有効にすることができる。0度の回転は、送達デバイス6の用量がその最小値にダイヤル設定されているときの回転可能要素65Aの最初の向きに対応する。0度の回転はまた、回転可能要素65Aが毎回完全に1回転した後の向きに対応する。他の例では、コード66は、回転可能要素65Aの回転の向きに関してより高いまたはより低い精度を可能にすることができる。たとえば、コード66は、30もしくは45度の精度を可能にすることができ、または180度の精度のみを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、コード66は、完全な1回転を含む24の位置のそれぞれの位置を区別可能にする。コード66は、回転可能要素の回転の向きがセンサデバイス2によって判定されることを可能にする限り、任意の適した形状をとることができる。この例では、コード66は、数字スリーブ65Aの端部に設けられる。
【0068】
薬物送達デバイス6のハウジング12は、さらなるアパーチャまたは窓63を含み、そこから回転可能要素65Aのうちコード66の一部が設けられている部分が見える。さらなる窓63は、回転可能要素65Aの回転の向きにかかわらず、コードの一部分がさらなる窓63を通して外部から見えるように、回転可能要素65Aに対して位置し、回転可能要素65Aに対して向けられている。さらなる窓63は、回転可能要素が完全に1回転すると各々の回転の向きに対してコード66の異なるセクションが見えるように、回転可能要素65Aに対して位置し、回転可能要素65Aに対して向けられている。さらなるアパーチャは、この例では、デバイスハウジング12のうち、可動ゲージ要素14が見える少なくとも1つの窓13A、13Bとは異なる側(または、ハウジングが円筒形もしくはその他の形で丸い場合、デバイスハウジング12の外面の周り)に設けられる。このようにして、可動ゲージ要素14は、コードを視界から遮らない。
【0069】
図5Cに概略的に示すように、センサデバイス2は、導体素子20-1~20-6のアレイ20に加えて、さらなる感知装置23を含むことができる。感知装置23は、センサデバイス2が薬物送達デバイス6に取り付けられたとき、感知装置23が薬物送達デバイス6上で外部から見える符号化された情報660(コード66を含むことができる)を読み取るように動作可能になるように、センサデバイス2内に配置される。この例では、符号化された情報660の少なくとも一部が、さらなる窓63を通して見える。下記で論じる例などのいくつかの他の例では、符号化された情報の少なくとも一部は、ハウジング12の外部のうち感知装置23の下に位置する部分上に提供することができる。
【0070】
感知装置23は、符号化された情報660が読み取られることを有効にする限り、任意の適したタイプのものであってよい。たとえば、感知装置は、カメラもしくは感知要素の小さなアレイを含む光学式の感知装置、磁気もしくは誘導式の感知装置、または伝導/抵抗式の感知装置であってよい。
【0071】
図5Cのセンサデバイス2の回路21は、符号化された情報660に基づいて、薬物送達デバイス6の動作に関係する情報を判定するように構成される。いくつかの特定の例では、回路21は、符号化された情報660およびアレイ20の導体素子から出力された信号に基づいて、デバイス6がダイヤル設定された現在の用量を判定するように構成される。たとえば、回路21は、アレイ20から出力された信号を利用して、発生した回転可能要素65Aの完全な回転の回数を判定することができ、感知装置23によって読み取られた符号化された情報660を利用して、回転可能要素65Aの回転の向きを判定することができる。言い換えると、アレイ20から出力された信号を使用して、可動ゲージ要素の軸方向並進運動の範囲、したがって完全な回転の回数を大まかに判定することができ、感知装置によって読み取られた符号化された情報660をこの大まかな判定とともに使用して、可動ゲージ要素14の並進運動の範囲をより精密に判定する(それによって、現在ダイヤル設定されている用量を判定する)ことができる。
【0072】
アレイ20は、可動ゲージ要素14をその最初の位置から最後の位置へ動かすために必要とされる回転可能要素65Aの完全な回転の回数よりも1つ多い導体素子を含むことができる。素子20-1~20-6は、回転可能要素65Aの完全な1回転ごとに、アレイ20の連続する素子の出力が変化するように、可動ゲージ要素の導電性領域30を支持する部分に隣接して分散させることができる。
【0073】
次いで、回路21は、感知装置23によって読み取られた符号化された情報660(具体的には、コード66)を使用して、回転可能要素65Aのあらゆる部分回転の程度を判定する。次いで、回転可能要素65Aの部分回転の判定された程度と、完全な回転の判定された回数とを組み合わせて、薬物送達デバイス6の現在ダイヤル設定されている用量を判定する。この判定を、下の表3に示す:
【0074】
たとえば、回路21が、感知装置23から、回転可能要素65Aが最初の位置にあると判定し、導体素子20-1~20-6から、完全な回転が起きていないと判定した場合、回転可能要素65Aはゼロ用量位置にあると算定される。しかし、回路21が、感知装置23から、回転可能要素65Aが最初の位置にあると判定し、導体素子20-1~20-6から、完全な1回転が起きたと判定した場合、「24」用量が薬物送達デバイス1にダイヤル設定されたと算定される。同様に、回路21が、感知装置23から、回転可能要素65Aが(24可能なうちの)11番目の位置にあると判定し、導体素子20-1~20-6から、4回の完全な回転が起きたと判定した場合、「83」用量が薬物送達デバイス1にダイヤル設定されたと算定される。
【0075】
ここまで、電子デバイス2の構成について、非常に高いレベルで説明した。
図6は、センサデバイス2をより詳細に示す。
【0076】
図6は、様々な実施形態によるセンサデバイス2の簡略化された概略ブロック図である。上述したように、センサデバイス2は、回路21へ信号を出力するように構成された導体素子20-1~20-6のアレイ20を含む。いくつかの実施形態では、デバイス2は、符号化された情報を示す信号を回路21へ出力するように構成されたさらなる感知装置23を含む。
【0077】
回路21は、任意の適当な構成とすることができ、本明細書に記載する機能を実行するのに適した1つまたはそれ以上のプロセッサおよび/またはマイクロプロセッサ210の任意の組合せ(簡略化のため、以下、「少なくとも1つのプロセッサ」と呼ぶ)を含むことができる。回路21は、それに加えて、または別法として、ASIC、FPGAなどの1つまたはそれ以上のハードウェアのみの構成要素の任意の組合せを含むこともできる(
図6には図示せず)。
【0078】
回路21は、ROMおよびRAMの一方または両方などの1つまたはそれ以上の非過渡的コンピュータ可読メモリ媒体211の任意の組合せをさらに含むことができ、メモリ媒体211は、少なくとも1つのプロセッサ210に接続される。メモリ211は、それに記憶されるコンピュータ可読命令211Aを有することができる。コンピュータ可読命令211Aは、少なくとも1つのプロセッサ210によって実行されるとき、アレイ20および感知装置23の制御動作ならびにアレイ20および感知装置23から受けた信号の解釈など、本明細書に記載する機能をセンサデバイス2に実行させることができる。
【0079】
感知装置23は、少なくとも1つの光源23-2と、光センサ23-1とを含む。光源23-2は、デバイスハウジング62内に形成されたさらなる窓63内に見える符号化された情報66を照明するためのものである。光センサ23-1は、光センサに見える(すなわち、光センサの下に位置する)像(符号化された情報660を含む)を検出することによって、符号化された情報を読み取るように構成される。像は、面のうち像が提供される異なる部分から後方反射された光を検出することによって検出される。次いで、符号化された情報660は回路21へ渡される。感知装置23は、
図6には示されないが、さらなる非電気構成要素を含むことができる。
【0080】
センサデバイス2は、表示画面24(LEDまたはLCD画面など)およびデータポート25の一方または両方をさらに含むことができる。表示画面24は、回路21の制御下で、薬物送達デバイス1の動作に関する情報を使用者に表示するように動作可能とすることができる。たとえば、センサデバイス2によって判定された情報を、使用者に表示することができる。センサデバイス2によって判定される情報は、ダイヤル設定された用量を含むことができる。センサデバイス2によって判定することができる他の情報は、投薬されている薬物、薬物送達デバイス1、6のモード、および/または以前に投薬された用量の履歴を含む。この「他の情報」の判定について、
図7Aおよび
図7Bに関して以下に論じる。
【0081】
データポート25は、薬物送達デバイス6の動作に関係する記憶された情報をメモリ211からPC、タブレットコンピュータ、またはスマートフォンなどの遠隔デバイスへ転送するために使用することができる。同様に、データポート25を介して、新しいソフトウェア/ファームウェアをセンサデバイスへ転送することができる。データポート25は、USBポートなどの物理的なポートとすることができ、またはIR、WiFi、もしくはBluetooth(登録商標)トランシーバなどの仮想もしくは無線のポートとすることができる。
【0082】
センサデバイス2は、デバイス2の他の構成要素に給電するために、着脱可能または恒久的な(好ましくは、たとえば光起電性セルによって充電可能な)電池26をさらに含むことができる。電池26の代わりに、光起電性または容量性の電源を使用することもできる。
図6には示されないが、それでもなおセンサデバイス2内に含むことができる他の電気構成要素には、トリガバッファ27-1、レギュレータ27-2、電圧抑制器27-3、およびチャージャチップ27-4がある。チャージャチップ27-4は、充電可能な電池が存在する場合に充電するためのものである。
【0083】
上記で論じたように、感知装置23によって読み取られる符号化された情報660は、回路が回転可能要素15A、65Aの回転の向きを判定することを可能にするために、コード66の一部分を含むことができる。しかし、いくつかの実施形態では、別法または追加として、感知装置によって読み取られる符号化された情報660に、他の動作情報を含むこともできる。たとえば、符号化された情報660は、送達されている薬物を示す部分67(たとえば、バーコードの形態)を含むことができる。これは
図7Aおよび
図7Bで見ることができ、
図7Aおよび
図7Bは、感知装置23の光センサに見える符号化された情報の2つの異なる図の例を示す。符号化された情報660の少なくとも一部(コード66の一部分など)が、薬物送達デバイス6のさらなる窓63を通して見える。薬物標示コード部分67は、たとえば、薬物カートリッジのうち、薬物送達デバイス1、6に挿入され、さらなる窓63を通して見え、したがって感知装置23によって読み取られる部分上に設けることができる。あるいは、薬物標示コード部分67は、送達デバイスハウジング12の外部のうち、センサデバイス2が薬物送達デバイス1、6に取り付けられたとき、さらなる窓63に隣接し、感知装置23の光センサ23-1の下に位置する(したがって、感知装置23の光センサ23-1によって可読である)部分上に設けてもよい。
【0084】
符号化された情報660は、薬物送達デバイス1、6のモードを示す部分68をさらに含むことができる。これは、
図7Aおよび
図7Bに見ることができ、
図7Aおよび
図7Bは、デバイス1、6がダイヤル設定モードおよび送達モードの各々にあるときの符号化された情報660を示す。この例では、デバイスがダイヤル設定モードにあるとき、モードインジケータ68は、符号化された情報の一部ではなく(
図7Aに示す)、デバイスが送達モードにあるとき、モードインジケータ68は、符号化された情報660の一部である。したがって、モードインジケータ68が符号化された情報660内に存在するか否かを判定することによって、回路21は、デバイス1、6のモードを判定することができる。
【0085】
モードインジケータ68は、薬物送達機構の作動(たとえば、ボタン11を押すことによる)に応答して動かされる内部要素上に設けることができる。可動内部要素および薬物送達機構は、薬物送達機構の作動がそれによってダイヤル設定モードから送達モードへ切り替わることで、モードインジケータ68がさらなる窓63内に見えるようになる(またはさらなる窓63から消える)ように、ともに構成される。そのような内部可動要素69の一例を
図8に示し、これは「ロッキングアーム」である。薬物送達デバイス1、6内に位置するとき、ロッキングアーム69は、薬物送達機構の作動に応答して、たとえばボタン11を押すことによって、第1の位置から第2の位置へ動くように構成される。ロッキングアーム69は、さらに、薬物ダイヤル設定機構のその後の作動に応答して、第2の位置から第1の位置へ戻るように構成することができる。あるいは、ロッキングアーム69は、ボタン11からの圧力除去に応答して、第2の位置から第1の位置へ戻るように構成することができる。モードインジケータ68は、ロッキングアーム69が第1および第2の位置の一方にあるときのみ、窓63を通して見える。このようにして、センサデバイス2は、センサデバイス2が取り付けられた薬物送達デバイス6のモードを判定することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、センサデバイス2は、投薬された薬物用量の履歴を記憶するように構成される。これは、モードインジケータ68に基づいてダイヤル設定モードから送達モードへの変化が検出されたとき、現在ダイヤル設定されている用量を示す情報を記憶することによって実施することができる。モードインジケータ68がダイヤル設定モードから送達モードに変化したことを検出したとき、現在ダイヤル設定されている用量の情報は、投薬予定用量を示す。センサデバイス2は、この情報を投薬された薬物用量として扱うことができる。あるいは、センサデバイス2は、現在ダイヤル設定されている用量、および投薬動作の終わりに判定されるゼロ用量から、投薬された薬物用量を算定することもできる。あるいは、さらに、センサデバイス2は、モードインジケータが投薬モードへの変化を検出したときの現在ダイヤル設定されている用量、およびモード検出器がダイヤルモードへの変化を検出したときの現在ダイヤル設定されている用量から、投薬された薬物用量を算定することもできる。モード変化が発生した時間を示すタイムスタンプもまた、用量を示す情報に関連付けて記憶することができる。それに加えて、または別法として、薬物標示コード部分67に基づいて判定される投薬された薬物のタイプを示す情報も、用量情報に関連付けて記憶することができる。これは、薬物の用量が投薬されるたびに繰り返すことができる。
【0087】
上記の実施形態は、限定的と解釈されるべきでないことを理解されたい。本出願を読めば、他の変形形態および修正形態が当業者には明らかである。さらに、本出願の開示は、本明細書に明示的もしくは暗示的に開示される任意の新規な機能もしくは任意の新規な機能の組合せ、またはその任意の一般論を含むことを理解されたい。本出願または本出願から導出される出願の手続き遂行中に、そのような機能および/またはそのような機能の組合せを包含するために、新しいクレームを策定することができる。
【0088】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0089】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0090】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0091】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0092】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0093】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0094】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0095】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0096】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0097】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0098】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0099】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0100】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0101】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0102】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0103】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0104】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0105】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0106】
本明細書に記載の物質、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の改変(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような改変、および本発明のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。