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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20220114BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20220114BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20220114BHJP
   C08F 216/18 20060101ALI20220114BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220114BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220114BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220114BHJP
   C08G 65/323 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L27/16
C08F214/22
C08F216/18
C08K5/14
C09K3/10 M
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
F16J15/10 G
C08G65/323
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018530689
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2016080954
(87)【国際公開番号】W WO2017102818
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】15199924.0
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アヴァンタネオ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニショワ, リュボーフ
(72)【発明者】
【氏名】デ パット, ウーゴ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530298(JP,A)
【文献】特表2015-503015(JP,A)
【文献】特表2015-505872(JP,A)
【文献】特表2011-513569(JP,A)
【文献】特開昭62-119252(JP,A)
【文献】特開昭62-119253(JP,A)
【文献】特表2014-516113(JP,A)
【文献】特開平08-002981(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104893186(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
C08G 65/00-67/04
C09K 3/10-3/12
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(パー)フルオロエラストマー組成物[組成物(C)]であって、
- (パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と;
- 少なくとも1つのカテナリーエーテル結合および少なくとも1つのフルオロカーボン部分を有する繰り返し単位を含み、そして少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化芳香族基[基(Ar)]を含む少なくとも1つの鎖末端を含む(パー)フルオロポリエーテル鎖を含む少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル添加物[ポリマー(E)]とを含み、前記ポリマー(E)が、フルオロエラストマー(A)に対して、0.5~30phrの量で前記組成物中に含まれている組成物。
【請求項2】
前記フルオロエラストマー(A)が、
(1)VDFが、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C~Cパーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、水素含有C~Cオレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、ヨウ素、塩素および臭素の少なくとも1つを含むC~Cフルオロオレフィン;
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、好ましくはCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF=CFOX[式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である]の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
[式中、互いに等しいかもしくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは独立して、フッ素原子、およびとりわけ-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFなどの、任意選択的に1個以上の酸素原子を含む、C~C(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択される]
を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくは、パーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF=CFOCFORf2
[式中、Rf2は、C~C(パー)フルオロアルキル;C~C環状(パー)フルオロアルキル;および少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含む、C~C(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される]
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE);
(h)C~C非フッ素化オレフィン(OI)、例えば、エチレンおよびプロピレン;
(i)(過)フッ素化されていてもよい、ニトリル(-CN)基を含むエチレン性不飽和化合物
からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合させられている、フッ化ビニリデン(VDF)をベースにするコポリマー;ならびに
(2)TFEが、上に詳述されたような(c)、(d)、(e)、(g)、(h)および(i)からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合させられている、TFEをベースにするコポリマー
の中から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
式中、Rf2が、-CFCF(MOVE1);-CFCFOCF(MOVE2);または-CF(MOVE3)である、請求項2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記フルオロエラストマー(A)が、一般式:
[式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、R、R、R、RおよびRは、HまたはC~Cアルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、任意選択的に酸素原子を含有する、線状もしくは分岐のC~C18炭化水素ラジカル、または(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである]
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を任意選択的に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記フルオロエラストマー(A)が、フルオロエラストマー(A)の総重量に対して、0.001~10重量%の量でヨウ素および/または臭素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記フルオロエラストマー(A)が、(フルオロエラストマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して)
- 式:
CF=CFOCFORf2
[式中、Rf2は、C~C(パー)フルオロアルキル;C~C環状(パー)フルオロアルキル;および少なくとも1つのカテナリー酸原子を含む、C~C(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択される]
を有する少なくとも1つの(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)に由来する5~35モル%、好ましくは7~30モル%、より好ましくは15~25モル%の繰り返し単位と;
- 少なくとも1つのC~Cパーフルオロレフィンに由来する0.5~35モル%、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~25モル%の繰り返し単位と;
ただし、(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)に由来する繰り返し単位と、パーフルオロレフィンに由来する繰り返し単位との合計は、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも17モル%であり;
- 上に詳述されたビス-オレフィン(OF)に由来する0~5モル%、好ましくは0~3モル%、より好ましくは0~2.5モル%の繰り返し単位と;
- VDFに由来する90~30モル%、好ましくは85~40モル%、より好ましくは83~50モル%の繰り返し単位と
を含むVDFをベースにするコポリマーから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのC~Cパーフルオロレフィンが、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレンから選択される、請求項6に記載の組成物(C)。
【請求項8】
ポリマー(E)の前記(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]が、複数の繰り返し単位(R)を含む鎖であり、前記繰り返し単位が、一般式:
-(CF-CFZ-O-[式中、kは、0~3の整数であり、Zは、フッ素原子およびC~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基の中から選択される]を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
ポリマー(E)が、式:
T-O-R-T’ (I)
[式中:
は、請求項において定義されたような、鎖Rであり;
互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT’のそれぞれは、
- 式-CF、-CFCl、-CFZCHOH、-CFZCOOH、-CFZCOORおよび-CFZ-CH(OCHCH-OH(式中、kは、0~10の範囲に含まれる整数であり、Zは、FまたはCFであり;Rは、炭化水素鎖である)のいずれかの基;ならびに
- 式-CFZ**-CH(OCHCHk’-O-Ar(式中、k’は、0~10の範囲の整数であり、Z**は、FまたはCFであり;Arは、パーフルオロ芳香族基;好ましくは式-Cのパーフルオロベンゼン基である)の基(ArF’
から選択され;
ただし、TおよびT’の少なくとも1つは、基(ArF’)である]
に従う、請求項8に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記ポリマー(E)が、式:
-O-(CFCFO)a’(CFYO)b’(CFCFYO)c’(CFO)d’(CF(CFCF2O)e’-T
[式中:
- Yは、C~Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
- zは、1もしくは2であり;
- a’、b’、c’、d’、e’は、0以上の整数であり;ただし、a’、b’、c’、d’、e’の少なくとも1つは、1以上の整数であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT*’のそれぞれは、
- 式-CF、-CFCl、-CFZCHOH、-CFZCOOH、-CFZCOORおよび-CFZ-CH(OCHCH-OH(式中、kは、0~10の範囲に含まれる整数であり、Zは、FまたはCFであり;Rは、炭化水素鎖である)のいずれかの基;ならびに
- 式-CFZ**-CH(OCHCHk’-O-Ar(式中、k’は、0~10の範囲の整数であり、Z**は、FまたはCFであり;Arは、パーフルオロ芳香族基であり、Arは好ましくは、式-Cのパーフルオロベンゼン基である)の基(ArF’
から選択され;
ただし、TおよびT*’の少なくとも1つは、基(ArF’)である]
に従う、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物がさらに、少なくとも1つの過酸化物、好ましくはジアルキルペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよび2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ-tertブチルパーベンゾエート;ビス[1,3-ジメチル-3-(tert-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネートから選択される、典型的には有機過酸化物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
前記組成物が、
(a)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~10phrの、好ましくは1~7phrの量で、ポリ不飽和硬化助剤;
(b)任意選択的に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phrの、好ましくは1~10phrの量で、金属塩基性化合物(金属塩基性化合物は一般に、(j)二価の金属の酸化物または水酸化物、例えば、Mg、Zn、CaまたはPbの酸化物または水酸化物、および(jj)弱酸の金属塩、例えば、Ba、Na、K、Pb、Caステアリン塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩または亜リン酸塩からなる群から選択される);
(c)任意選択的に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phrの、好ましくは1~10phrの量で、金属塩基性化合物ではない酸受容体(これらの酸受容体は一般に、1,8ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどの、窒素含有有機化合物から選択される);
(d)任意選択的に、充填剤、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、および加工助剤などの、他の従来の添加剤
からなる群から選択される1つもしくは複数の原料を含む、請求項11に記載の組成物(C)。
【請求項13】
前記組成物がさらに、
- 芳香族または脂肪族ポリヒドロキシル化合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、少なくとも1つの硬化剤;および
1)第四級アンモニウム塩もしくはホスホニウム塩;(2)アミノホスホニウム塩;(3)ホスホラン類;(4)式[ArP-N=PAr n-(式中、Arはアリール基であり、n=1もしくは2であり、Xはn価のアニオンである)の、または式[(RP)N](式中、Rはアリール基もしくはアルキル基であり、Xは一価のアニオンである)のイミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの加硫促進剤;
ならびに/またはそれらの組み合わせ
を含み、
ここで、加硫促進剤の量が一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.05~5phrに含まれ;硬化剤の量が、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.5~15phr、好ましくは1~6phrである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項14】
)フルオロエラストマー(A)の100部当たり1~40部の量で含まれる、二価金属酸化物、例えば、MgO、CaO、ZnOなどからなる群から選択される1つもしくは複数の鉱酸受容体;
ii)フルオロエラストマー(A)の100部当たり0.5~10部の量で添加される、
Ca(OH)、Sr(OH) およびBa(OH) から選択される水酸化物;
弱酸の金属塩、例えば、Ca、Sr、Ba、NaおよびK炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩および亜リン酸塩ならびに
上述の水酸化物と上述の弱酸の金属塩との混合物
で構成される群から選択される1つもしくは複数の塩基性化合物
からなる群から選択される少なくとも1つの原料をさらに含む、請求項13に記載の組成物(C)。
【請求項15】
前記フルオロエラストマー(A)が、(過)フッ素化されていてもよい、ニトリル基を含むエチレン性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を含み、そして前記組成物(C)が、(i)有機スズ化合物;(ii)芳香族テトラアミン、ビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)などの、芳香族アミン化合物;(iii)ビスアミドラゾン;ならびに(iv)ビスアミドキシムの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物(C)を成形し、硬化させることによって得られる硬化品であって、前記硬化品が、O(角)リング、パッキング、ガスケット、ダイヤフラム、シャフトシール、バルブステムシール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、オイルシール、パイピングおよびチュービング、特にフレキシブルホースまたは炭化水素流体および燃料の配送用導管などの、他のアイテムからなる群から選択されてもよい物品。
【請求項17】
射出成形、圧縮成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷技術、フォームインプレース技術のいずれかによる、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物(C)の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月14日出願の欧州特許出願第15199924.0号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、新規フルオロエラストマー組成物に、それらの製造およびそれらの使用方法、ならびにそれらからのフッ素ゴム成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
加硫された(パー)フルオロエラストマーは、漏れ止め性、機械的特性および鉱油、油圧油、溶剤またはさまざまな性質の化学剤などの物質に対する耐性が、高温から非常に低温までの、広範囲の作業温度にわたって保証されていなければならない封止用部品、パイプ、オイルシールおよびOリングなどの技術的物品の製造に一般に使用される、優れた耐熱性および耐化学薬品性特性を持った材料である。
【0004】
低温可撓性は、それ以下でエラストマー加硫物が弾性から、硬直したガラス状態に変わる温度、その点で加硫物がもはや可撓性ではなく、変形後に回復する能力を示さない温度に関する。
【0005】
一般にフルオロエラストマーは、2つの因子:フッ素原子および置換基フルオロカーボン分子(例えば、トリフルオロおよびトリフルオロアルコキシ基)のサイズと、フッ素の高い電気陰性度のために関与する様々な分子間分子力とによって決まる低温特性を有する。
【0006】
嵩高い分岐基(メチル、トリフルオロメチルまたはパーフルオロアルコキシ)の存在は、「ゴム状」エラストマーに必要である「ランダム・ウォーク」鎖構造を重合に生成させる。フルオロエラストマーが収縮の温度(Temperature of Retraction)(TR-10)、ガラス転移温度(Tg)などの、それらの弾性特性を保持している最低温度を測定するためにいくつかの試験が有用である。
【0007】
フルオロエラストマーをベースにする製品を使ったダイナミックシール用途は、-40℃ほどに低い温度、およびいくつかの場合には、さらにより低い温度で弾性挙動を部品が維持することを要求する可能性がある。
【0008】
このフレーム内で、例えば、より嵩高いペンダント側鎖を有する特有のモノマーの組み込みによる、フルオロエラストマーポリマー鎖構造の変更に、および/または弾性領域を広げるための適切な添加物を有する硬化性調合物の提供に努力が従来捧げられてきた。
【0009】
他方で、パーフルオロポリエーテルは、それらと、フルオロエラストマーのマトリックスとの混和性のために、加工助剤として提案されてきた。欧州特許出願公開第0222408A号明細書(AUSIMONT SPA)1987年5月20日は、加工助剤としてフルオロポリエーテルを含む、フッ化ビニリデンをベースにするフルオロエラストマーの加硫可能な組成物を開示しており;同様に、米国特許第4,278,776号明細書(MONTEDISON SPA)1981年7月14日は、VDFをベースにするフルオロエラストマーでのパーフルオロポリエーテル加工助剤の使用を開示しており;特に、油とPTFE粒子との混合物からなるパーフルオロポリエーテルグリースを使って得られる性能が、硬化性フルオロエラストマーコンパウンド中のパーフルオロポリエーテルポリアミドの性能と比較された。すべてのこれらの公文書において、パーフルオロポリエーテル加工補助剤の添加には、硬度および機械的特性(弾性率)の有意な低下が随伴することが見いだされた。同様に、これらの材料は、それらの固有の揮発性のために、移行現象を起し、高温運転条件下で硬化部品から滲出する可能性があり、その結果、不具合が発生し、前記部品の性能は有意な影響を受ける。
【0010】
したがって当技術分野において、低温弾性挙動を有する硬化部品をもたらし、それ故にすべての有利な性能(機械的特性、封止特性)を依然として維持しながら、-40℃もしくはそれを超えてまで継続使用領域を広げることができるフルオロエラストマー組成物が依然として継続して求められている。
【0011】
本発明の目的はそれ故、この特性プロファイルを有利に示すフルオロエラストマーを提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明はしたがって、改善された低温エラストマー特性を有するフルオロエラストマー組成物を提供し、より具体的には、本発明は、(パー)フルオロエラストマー[組成物(C)]であって、
- (パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]と;
- 少なくとも1つのカテナリーエーテル結合および少なくとも1つのフルオロカーボン部分を有する繰り返し単位を含み、そして少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化芳香族基[基(ArF)]を含む少なくとも1つの鎖末端を含む(パー)フルオロポリエーテル鎖を含む少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル添加物[ポリマー(E)]とを含み、前記ポリマー(E)が、フルオロエラストマー(A)に対して、0.5~30phrの量で組成物中に含まれている組成物に関する。
【0013】
本出願人は意外にも、上に詳述されたような、(パー)フルオロエラストマー組成物へのポリマー(E)の組み込みが、ポリマー(E)がそれらから製造された最終部品から移行しない(成形された、処理されたスラブおよびOリングの表面上にオイル跡なし)という意味で、有効であり、かつ、均質であり、そして、傑出した封止性能(とりわけ、C-永久歪み)をもたらしながら、ガラス転移温度の著しい低下を達成できることを見いだした。
【0014】
本発明の目的のためには、「(パー)フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]という用語は、真のエラストマーを得るための基本構成成分として役立つフルオロポリマー樹脂を指定することを意図され、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、(過)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、含水素モノマー)に由来する繰り返し単位とを含んでいる。
【0015】
真のエラストマーは、それらの固有の長さの2倍まで、室温で、引き伸ばすことができ、そして5分間張力下にそれらを保持した後にそれらが解放されてしまうとすぐに、同時にそれらの最初の長さの10%以内に戻る材料とASTM,Special Technical Bulletin,No.184標準によって定義されている。
【0016】
好適な(過)フッ素化モノマーの非限定的な例はとりわけ、
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレンなどの、C2~C8フルオロ-および/またはパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル;1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)などの、C2~C8含水素モノフルオロオレフィン;
- 式CH2=CH-Rf0[式中、Rf0は、C1~C6(パー)フルオロアルキルまたは1つもしくは複数のエーテル基を有するC1~C6(パー)フルオロオキシアルキルである]に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C2~C6フルオロオレフィン;
- 式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フロオロ-もしくはパーフルオロアルキル、例えば、-CF3、-C2F5、-C3F7である)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フロオロ-もしくはパーフルオロアルキル、例えば、-CF3、-C2F5、-C3F7である)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF2=CFOX0[式中、X0は、1つもしくは複数のエーテル基を有するC1~C12オキシアルキル、または(パー)フルオロオキシアルキルである]に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;特に式CF2=CFOCF2ORf2[式中、Rf2は、C1~C6フルオロ-もしくはパーフルオロアルキル、例えば、-CF3、-C2F5、-C3F7または-C2F5-O-CF3のような、1つもしくは複数のエーテル基を有するC1-C6(パー)フルオロオキシアルキルである]に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF2=CFOY0[式中、Y0は、C1~C12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル、またはC1~C12オキシアルキルもしくはC1~C12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y0基は、カルボン酸基またはスルホン酸基を、その酸、酸ハライドまたは塩の形態で含む]に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
[式中、互いに等しいかもしくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは独立して、フッ素原子、任意選択的に1個または複数個の酸素原子を含む、C1~C6フロオロ-もしくはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば、-CF3、-C2F5、-C3F7、-OCF3、-OCF2CF2OCF3である]
の(パー)フルオロジオキソール
である。
【0017】
含水素モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの、含水素アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが典型的には使用される。
【0018】
フルオロエラストマー(A)は一般に、非晶質生成物、または低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)および室温よりも下のガラス転移温度(Tg)を有する生成物である。ほとんどの場合に、フルオロエラストマー(A)は有利には、10℃よりも下、好ましくは5℃よりも下、より好ましくは0℃よりも下のTgを有する。
【0019】
フルオロエラストマー(A)は好ましくは、
(1)VDFが、
(a)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、C2~C8パーフルオロオレフィン;
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロイソブテン(HFIB)、式CH2=CH-Rf(式中、Rfは、C1~C6パーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなどの、水素含有C2~C8オレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、ヨウ素、塩素および臭素の少なくとも1つを含むC2~C8フルオロオレフィン;
(d)式CF2=CFORf[式中、Rfは、C1~C6(パー)フルオロアルキル基、好ましくはCF3、C2F5、C3F7である]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF2=CFOX[式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC1~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である]の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
[式中、互いに等しいかもしくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは独立して、フッ素原子、およびとりわけ-CF3、-C2F5、-C3F7、-OCF3、-OCF2CF2OCF3などの、任意選択的に1個以上の酸素原子を含む、C1~C6(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択される]
を有する(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)式:
CF2=CFOCF2ORf2
[式中、Rf2は、C1~C6(パー)フルオロアルキル;C5~C6環状(パー)フルオロアルキル;および少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含む、C2~C6(パー)フルオロオキシアルキルからなる群から選択され;Rf2は、-CF2CF3(MOVE1);-CF2CF2OCF3(MOVE2);または-CF3(MOVE3)である]
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE);
(h)C2~C8非フッ素化オレフィン(OI)、例えば、エチレンおよびプロピレン;
(i)場合により(過)フッ素化された、ニトリル(-CN)基を含むエチレン性不飽和化合物
からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合させられている、VDFをベースにするコポリマー;ならびに
(2)TFEが、上に詳述されたような(c)、(d)、(e)、(g)、(h)および(i)からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合させられている、TFEをベースにするコポリマー
の中から選択される。
【0020】
任意選択的に、本発明のフルオロエラストマー(A)はまた、一般式:
[式中、互いに等しいかもしくは異なる、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、HまたはC1~C5アルキルであり;Zは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、任意選択的に酸素原子を含有する、線状もしくは分岐のC1~C18炭化水素ラジカル(アルキレンもしくはシクロアルキレンラジカルを含む)、または例えば、欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年7月5日に記載されているような、(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである]
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0021】
ビス-オレフィン(OF)は好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)および(OF-3):
[式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいかもしくは異なる、R1、R2、R3、R4は、H、FまたはC1~5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である];
[式中、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Aのそれぞれは独立して、F、Cl、およびHから選択され;互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Bのそれぞれは独立して、F、Cl、HおよびORB(ここで、RBは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化もしくは塩素化されていることができる分岐もしくは直鎖のアルキルラジカルである)から選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくはEは、mが3~5の整数である、-(CF2)m-基であり;(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、F2C=CF-O-(CF2)5-O-CF=CF2である];
[式中、E、AおよびBは、上に定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいかもしくは異なる、R5、R6、R7は、H、FまたはC1~5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である]
に従うものからなる群から選択される。
【0022】
本発明の組成物に使用することができる例示的なフルオロエラストマー(A)は、以下のモノマー組成(繰り返し単位の総モルに対して、モル%単位での):
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/または(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50~80%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~50%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45~65%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)20~55%、フッ化ビニリデン0~30%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32~60%モル%、C2~C8非フッ素化オレフィン(Ol)10~40%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0~30%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP 0~30%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)5~40%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%;ビス-オレフィン(OF):0~5%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20~70%、(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)25~75%、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~50%、ビス-オレフィン(OF):0~5%
を有するものである。
【0023】
フルオロエラストマー(A)は、乳化重合またはマイクロエマルション重合、懸濁重合またはミクロ懸濁重合、バルク重合および溶液重合などの、任意の公知の方法によって調製することができる。
【0024】
本発明のある種の実施形態によれば、フルオロエラストマー(A)は硬化部位を含んでもよく;硬化部位の選択は、それらが十分な硬化反応性を確保することを条件として、特に決定的に重要であるわけではない。
【0025】
フルオロエラストマー(A)は、ある種の繰り返し単位に結合したペンダント基としてか、ポリマー鎖の末端基としてかのどちらかで前記硬化部位を含むことができる。
【0026】
硬化部位含有繰り返し単位の中に、とりわけ:
(CSM-1)式:
[式中、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、AHfのそれぞれは独立して、F、Cl、およびHから選択され;BHfは、F、Cl、HおよびORHfB(式中、RHfBは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化または塩素化されていることができる分岐もしくは直鎖のアルキルラジカルである)のいずれかであり;互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なるWHfのそれぞれは独立して、共有結合または酸素原子であり;EHfは、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;RHfは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化されていることができる、分岐もしくは直鎖のアルキルラジカルであり;RHfは、ヨウ素および臭素からなる群から選択されるハロゲン原子であり;それらは、エーテル結合が挿入されていてもよく;好ましくはEは、mが3~5の整数である、-(CF2)m-基である]
のヨウ素または臭素含有モノマー;
(CSM-2)場合により(過)フッ素化された、ニトリル(-CN)基を含むエチレン性不飽和化合物
を挙げることができる。
【0027】
タイプ(CSM1)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、
(CSM1-A)式:
(式中、mは、0~5の整数であり、nは、0~3の整数であり、ただし、mおよびnの少なくとも1つは、0とは異なり、Rfiは、FまたはCF3である)
のヨウ素含有パーフルオロビニルエーテル(とりわけ、米国特許第4,745,165号明細書(AUSIMONT SPA)1988年5月17日、米国特許第4,564,662号明細書(MINNESOTA MINING & MFG[US])1986年1月14日および欧州特許出願公開第199138A号明細書(ダイキン工業株式会社)1986年10月29日に記載されているような);ならびに
(CSM-1B)式:
CX1X2=CX3-(CF2CF2)-I
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、X1、X2およびX3のそれぞれは独立して、HまたはFであり;pは、1~5の整数である)のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物(これらの化合物の中に、CH2=CHCF2CF2I、I(CF2CF2)2CH=CH2、ICF2CF2CF=CH2、I(CF2CF2)2CF=CH2を挙げることができる);
(CSM-1C)式:
CHR=CH-Z-CH2CHR-I
(式中、Rは、HまたはCH3であり、Zは、任意選択的に1個もしくは複数個のエーテル酸素原子を含有する、線状もしくは分岐の、C1~C18(パー)フルオロアルキレンラジカル、または(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)のヨウ素含有エチレン性不飽和化合物(これらの化合物の中に、CH2=CH-(CF2)4CH2CH2I、CH2=CH-(CF2)6CH2CH2I、CH2=CH-(CF2)8CH2CH2I、CH2=CH-(CF2)2CH2CH2Iを挙げることができる);
(CSM-1D)例えば、米国特許第4,035,565号明細書(DU PONT)1977年7月12日に記載されているブロモトリフルオロエチレンもしくはブロモテトラフルオロブテンなどの2~10個の炭素原子を含有するブロモおよび/もしくはヨードアルファ-オレフィン、または米国特許第4,694,045号明細書(DU PONT)1987年9月15日に開示されている他の化合物ブロモおよび/もしくはヨードアルファ-オレフィン
からなる群から選択されるものである。
【0028】
タイプ(CSM2)の硬化部位含有モノマーの中で、好ましいモノマーは、(過)フッ素化されており、とりわけ、
(CSM2-A)XCNがFまたはCF3であり、mが0、1、2、3または4であり;nが1~12の整数である、式CF2=CF-(OCF2CFXCN)m-O-(CF2)n-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル;
(CSM2-B)XCNがFまたはCF3であり、m’が0、1、2、3または4である、式CF2=CF-(OCF2CFXCN)m’-O-CF2-CF(CF3)-CNのニトリル基を含有するパーフルオロビニルエーテル
からなる群から選択されるものである。
本発明の目的に好適なタイプCSM2-AおよびCSM2-Bの硬化部位含有モノマーの具体的な例は、とりわけ、米国特許第4,281,092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第4,281,092号明細書(DU PONT)1981年7月28日、米国特許第5,447,993号明細書(DU PONT)1995年9月5日および米国特許第5,789,489号明細書(DU PONT)1998年8月4日に記載されているものである。
【0029】
フルオロエラストマー(A)が過酸化物硬化を意図される場合、本発明のフルオロエラストマー(A)は好ましくは、0.001~10重量%の量でヨウ素および/または臭素硬化部位を含む。これらの中で、ヨウ素硬化部位は、硬化速度を最大限にするために選択されるものである。
【0030】
この実施形態によれば、許容される反応性を確保するために、フルオロエラストマー(A)中のヨウ素および/または臭素の含有量は、フルオロエラストマー(A)の総重量に対して、少なくとも0.05重量%の、好ましくは少なくとも0.1重量%の、より好ましくは少なくとも0.15重量%のものであるべきであることが一般に理解される。
【0031】
他方で、フルオロエラストマー(A)の総重量に対して、好ましくは7重量%を超えない、より特に5重量%を超えない、またはさらには4重量%を超えないヨウ素および/または臭素の量が、副反応および/または熱安定性への有害作用を回避するために一般に選択されるものである。
【0032】
本発明のこれらの好ましい実施形態のこれらのヨウ素または臭素硬化部位は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の主鎖に結合したペンダント基として含まれてもよいか、または前記ポリマー鎖の末端基として含まれてもよい。
【0033】
第1実施形態によれば、ヨウ素および/または臭素硬化部位は、フルオロエラストマーポリマー鎖の主鎖に結合したペンダント基として含まれ;この実施形態に係るフルオロエラストマー(A)は典型的には、
- 例えば、米国特許第4,035,565号明細書(DU PONT)1977年7月12日に記載されているブロモトリフルオロエチレンもしくはブロモテトラフルオロブテン、または米国特許第4,694,045号明細書(DU PONT)1987年9月15日に開示されている他の化合物ブロモおよび/もしくはヨードアルファーオレフィンなどの、2~10個の炭素原子を含有するブロモおよび/もしくはヨードアルファ-オレフィン;
- ヨードおよび/またはブロモフルオロアルキルビニルエーテル(とりわけ米国特許第4,745,165号明細書(AUSIMONT SPA)1988年5月17日、米国特許第4,564,662号明細書(MINNESOTA MINING & MFG[US])1986年1月14日)および欧州特許出願公開第199138A号明細書(ダイキン工業株式会社)1986年10月29日に記載されているような);
から選択される臭素化および/またはヨウ素化硬化部位コモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0034】
この実施形態に係るフルオロエラストマーは一般に、フルオロエラストマーのすべての他の繰り返し単位の100モル当たり0.05~5モルの量で臭素化および/もしくはヨウ素化硬化部位モノマーに由来する繰り返し単位を含み、こうして上述のヨウ素および/もしくは臭素重量含有量を有利に保証している。
【0035】
第2の好ましい実施形態によれば、ヨウ素および/または臭素硬化部位(好ましくはヨウ素部位)は、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の末端基として含まれており;この実施形態に係るフルオロエラストマーは一般に、
- ヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤;好適な鎖-鎖移動剤は、典型的には式Rf(I)x(Br)y[式中、Rfは、1~8個の炭素原子を含有する(パー)フルオロアルキルまたは(パー)フルオロクロロアルキルであり、そして一方、xおよびyは、1≦x+y≦2で、0~2の整数である]のものである(例えば、米国特許第4,243,770号明細書(ダイキン工業株式会社)1981年1月6日および米国特許第4,943,622号明細書(日本メクトロン株式会社)1990年7月24日を参照されたい);ならびに
- とりわけ米国特許第5,173,553号明細書(AUSIMONT SRL)1992年12月22日に記載されているなどの、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ヨウ化物および/または臭化物
のいずれか1つを、フルオロエラストマー製造中に重合媒体に添加することによって得られる。
【0036】
より低いガラス転移温度を有する材料を得ることを目的とする場合、上に言及されたフルオロエラストマー(A)の中で、VDFをベースにするコポリマーが好ましく、それは、コストを削減しながら、増加した架橋密度、したがって改善された機械的特性を提供する。
【0037】
VDFをベースにするコポリマーの中で、(フルオロエラストマー(A)の繰り返し単位の総モル数に対して):
- 上に詳述されたような、少なくとも1つの(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)に由来する5~35モル%、好ましくは7~30モル%、より好ましくは15~25モル%の繰り返し単位;
- 典型的にはテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレンから選択される、少なくとも1つのC2~C8パーフルオロレフィンに、好ましくはTFEに由来する0.5~35モル%、好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~25モル%の繰り返し単位;
ただし、(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(MOVE)に由来する繰り返し単位と、パーフルオロレフィンに由来する繰り返し単位との合計は、少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも17モル%のものであり;
- 上に詳述されたような、ビス-オレフィン(OF)に由来する0~5モル%、好ましくは0~3モル%、より好ましくは0~2.5モル%の繰り返し単位;および
- VDFに由来する90~30モル%、好ましくは85~40モル%、より好ましくは83~50モル%の繰り返し単位
を含むポリマー。
【0038】
好ましくは、上に詳述されたような、VDFをベースにするポリマーは、過酸化物硬化を意図され;この目的のために、それらは、一般に上に述べられた量で、上に詳述されたように、フルオロエラストマー(A)ポリマー鎖の末端基としてヨウ素硬化部位を一般に含む。
【0039】
ポリマー(E)の(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rf)]は好ましくは、複数の繰り返し単位(R1)を含む鎖であり、前記繰り返し単位は、一般式:-(CF2)k-CFZ-O-[式中、kは、0~3の整数であり、Zは、フッ素原子およびC1~C6パーフルオロ(オキシ)アルキル基の中から選択される]を有する。
【0040】
ポリマー(E)の鎖(Rf)はより好ましくは、式:
-(CF2CF2O)a’(CFYO)b’(CF2CFYO)c’(CF2O)d’(CF2(CF2)zCF2O)e’-
(ここで、繰り返し単位は、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖に沿って統計的に分布しており、式中、
- Yは、C1~C5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
- zは、1もしくは2であり;
- a’、b’、c’、d’、e’は、0以上の整数である)
に従う。
【0041】
最も好ましくは、鎖Rfは、式:
-(CF2CF2O)a”(CF2O)b”(CF2(CF2)zCF2O)c”-(式中:
- zは、1もしくは2であり、
- a’’、b’’、c’’は、0以上の整数である)に従う。
【0042】
鎖Rfは一般に、500~5000の、好ましくは750~3000の、さらにより好ましくは1000~2000の数平均分子量を有するように選択される。
【0043】
ポリマー(E)に含まれる、パー(ハロ)フッ素化芳香族基[基(ArF)]の選択は、この化合物が、芳香族であること、かつ、パー(ハロ)フッ素化されていること、すなわち、それが水素原子を含まず、少なくとも1個のフッ素原子を含むことを条件として、特に限定されない。
【0044】
誤解を避けるために、「芳香族基」という用語は、π非局在化電子の数がヒュッケル則(π電子の数は、nが整数である状態で、(4n+2)に等しい)を満たしている非局在化共役πシステムを有する環状置換基を意味することが本明細書によって意図される。
【0045】
基(ArF)は、単環式または多環式であり得る。それは、1つ以上の芳香環を含むことができる。それが2つ以上の芳香環を含む場合、これらの芳香環は、縮合しているまたは縮合していないものであり得る。基(ArF)は、1つもしくは複数のヘテロ原子(例えば、O、S、N)を環中に含む、ヘテロ芳香族化合物であり得る。それは、置換されているまたは置換されていないものであり得る。
【0046】
好ましくは、基(ArF)は、パーフッ素化されている、すなわち、すべてのその自由原子価が、フッ素原子で飽和されている。本発明の目的に好適である基(ArF)の非限定的な例はとりわけ、パーフルオロベンゼン基、パーフルオロビフェニル基、パーフルオロナフタレン基、パーフルオロアントラセン基、パーフルオロピリジン基、パーフルオロトルエン基および1つもしくは複数の過フッ素化置換基を含むそれらの誘導体である。
【0047】
一般に、ポリマー(E)は、式:
T-O-Rf-T’ (I)
[式中:
Rfは、上に詳述されたような、鎖Rfであり;
互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT’のそれぞれは、
- 式-CF3、-CF2Cl、-CFZ*CH2OH、-CFZ*COOH、-CFZ*COORhおよび-CFZ*-CH2(OCH2CH2)k-OH(式中、kは、0~10の範囲に含まれる整数であり、Z*は、FまたはCF3であり;Rhは、炭化水素鎖である)のいずれかの基;ならびに
- 式-CFZ**-CH2(OCH2CH2)k’-O-ArF(式中、k’は、0~10の範囲の整数であり、Z*は、FまたはCF3であり;ArFは、パーフルオロ芳香族基であり;そしてArFは好ましくは、式-C6F5のパーフルオロベンゼン基である)の基(ArF’)
から選択され;
ただし、TおよびT’の少なくとも1つは、上に詳述されたような、基(ArF’)である]
に従う。
【0048】
ポリマー(E)は好ましくは、式:
T*-O-(CF2CF2O)a’(CFYO)b’(CF2CFYO)c’(CF2O)d’(CF2(CF2)zCF2O)e’-T*’
[式中:
- Yは、C1~C5パーフルオロ(オキシ)アルキル基であり;
- zは、1もしくは2であり;
- a’、b’、c’、d’、e’は、0以上の整数であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、T*およびT*’のそれぞれは、
- 式-CF3、-CF2Cl、-CFZ*CH2OH、-CFZ*COOH、-CFZ*COORhおよび-CFZ*-CH2(OCH2CH2)k-OH(式中、kは、0~10の範囲に含まれる整数であり、Z*は、FまたはCF3であり;Rhは、炭化水素鎖である)のいずれかの基;ならびに
- 式-CFZ**-CH2(OCH2CH2)k’-O-ArF(式中、k’は、0~10の範囲の整数であり、Z*は、FまたはCF3であり;ArFは、パーフルオロ芳香族基であり;そしてArFは好ましくは、式-C6F5のパーフルオロベンゼン基である)の基(ArF’)
から選択され;
ただし、TおよびT’の少なくとも1つは、上に詳述されたような、基(ArF’)である]
に従う。
【0049】
述べられたように、ポリマー(E)は、フルオロエラストマー(A)に対して、0.5~30phrの量で組成物に含まれる。より特に、ポリマー(E)は、少なくとも3phr、好ましくは少なくとも5phr、より好ましくは少なくとも7phrの量で、および/または好ましくは最大でも25phr、より好ましくは最大でも22phrの量で組成物(C)中に存在する。特に満足できることが分かったポリマー(E)の量は、約10phr~約20phrの量である。
【0050】
本発明はまた、造形品を製造するための上に記載されたような(パー)フルオロエラストマー組成物の使用にも関する。
【0051】
組成物(C)は、例えば、成形(射出成形、押出成形)、カレンダー仕上げ、または押出によって、所望の造形品へ二次加工することができ、造形品は、相対的に柔らかく、弱いフルオロエラストマーの未硬化組成物を、非粘着性の、強固な、不溶性の、耐化学薬品性および耐熱性の硬化フルオロエラストマー材料でできた完成品へと有利に変換させる、加硫(硬化)を、それ自体の加工中におよび/または後続工程(後処理もしくはポスト硬化)において有利には受ける。
【0052】
本発明の組成物(C)は有利には、過酸化物硬化技術によって、イオン技術によって、スズ触媒硬化によってまたは混合型過酸化物/イオン技術によって硬化させることができる。
【0053】
過酸化物硬化は典型的には、熱分解によってラジカルを発生させることができる少なくとも1つの好適な過酸化物の(パー)フルオロエラストマー組成物への組み込による公知の技術に従って行われる。有機過酸化物が一般に用いられる。
【0054】
さらに、本発明の目的はしたがって、上に詳述されたような、フルオロエラストマー(A)およびポリマー(E)と;少なくとも1つの過酸化物、典型的には有機過酸化物とを含む組成物である。この組成物は有利には、過酸化物硬化性である。
【0055】
最も一般的に使用されるペルオキシドの中に、ジアルキルペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよび2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ-tert-ブチルパーベンゾエート;ビス[1,3-ジメチル-3-(tert-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネートを挙げることができる。他の好適な過酸化物系は、とりわけ、その内容が参照により本明細書によって援用される、欧州特許出願公開第136596A号明細書(MONTEDISON SPA)1985年4月10日および欧州特許出願公開第410351A号明細書(AUSIMONT SRL)1991年1月30日に記載されているものである。
【0056】
上に詳述されたような、過酸化物硬化性組成物中に一般に含まれる他の原料は、
(a)フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~10phrの、好ましくは1~7phrの量の、ポリ不飽和硬化助剤(curing coagent)(これらの硬化助剤の中で、以下のもの:トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N-ジアリルアクリルアミド;N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン;上に詳述されたような、ビス-オレフィン(OF);とりわけ、欧州特許出願公開第860436A号明細書(AUSIMONT SPA)1998年8月26日および国際公開第97/05122号パンフレット(DU PONT[US])1997年2月13日に記載されているものなどの、エチレン性不飽和基で置換されたトリアジンが一般に使用され;上述の硬化助剤の中で、上に詳述されたような、TAICおよびビス-オレフィン(OF)、より具体的には、TAICおよび、上に詳述されたような、式(OF-1)のビス-オレフィンが特に良好な結果を与えることが分かった);
(b)任意選択的に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phrの、好ましくは1~10phrの量で、金属塩基性化合物(金属塩基性化合物は一般に、(j)二価の金属の酸化物または水酸化物、例えば、Mg、Zn、CaまたはPbの酸化物または水酸化物、および(jj)弱酸の金属塩、例えば、Ba、Na、K、Pb、Caステアリン塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩または亜リン酸塩からなる群から選択される);
(c)任意選択的に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、一般に0.5~15phrの、好ましくは1~10phrの量で、金属塩基性化合物ではない酸受容体(これらの酸受容体は一般に、とりわけ欧州特許出願公開第708797A号明細書(DU PONT) 1996年5月1日に記載されているような、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどの、窒素含有有機化合物から選択される);
(d)任意選択的に、充填剤、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、および加工助剤などの、他の従来の添加剤
からなる群から選択される。
【0057】
イオン硬化は、当技術分野において周知であるように、イオン硬化に好適な1つ以上の硬化剤および1つ以上の加硫促進剤の(パー)フルオロエラストマー組成物への組み込みによって達成することができる。
【0058】
さらに、本発明の目的はしたがって、上に詳述されたような、フルオロエラストマー(A)およびポリマー(E);ならびに少なくとも1つの硬化剤および少なくとも1つの加硫促進剤、ならびに/またはそれらの組み合わせを含む組成物である。この組成物は有利には、イオン硬化性である。
【0059】
加硫促進剤の量は一般に、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.05~5phrであり;硬化剤の量は典型的には、フルオロエラストマー(A)の100重量部に対して、0.5~15phr、好ましくは1~6phrである。
【0060】
硬化剤は一般に、芳香族または脂肪族ポリヒドロキシル化化合物、およびそれらの誘導体からなる群から選択され;それらの例は、とりわけ、欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING & MFG[US]+)1989年10月4日および米国特許第4,233,427号明細書(RHONE POULENC IND)1980年11月11日に記載されている。硬化剤の中に、特に(i)ジヒドロキシ、トリヒドロキシおよびテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン;(ii)2つの芳香環が脂肪族、脂環式または芳香族二価ラジカルによって、あるいはO、S、およびNからなる群から選択される1つもしくは複数のヘテロ原子によって、例えば、酸素もしくは硫黄原子によって、またはカルボニル基によって一緒に結合している、ビスフェノール誘導体が挙げられるであろう。芳香環は、1つもしくは複数の塩素、フッ素もしくは臭素原子で、またはカルボニル、アルキルもしくはアシル基で置換されていてもよい。ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0061】
使用されてもよい加硫促進剤としては:
(1)第四級アンモニウムもしくはホスホニウム塩(例えば、欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING & MFG[US]+)1989年10月4日および米国特許第3,876,654号明細書(DU PONT)1975年4月8日を参照されたい);
(2)アミノホスホニウム塩(例えば、米国特許第4,259,463号明細書(MONTEDISON SPA)1981年3月31日を参照されたい);
(3)ホスホラン(例えば.、米国特許第3,752,787号明細書(DU PONT)1973年8月14日を参照されたい);
(4)例えば、欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON SPA)1984年10月3日に記載されているような、式[Ar3P-N=PAr3]+nXn-(式中、Arは、アリール基であり、n=1もしくは2であり、Xは、n価のアニオンである)の、または欧州特許出願公開第0182299A号明細書(ASAHICHEMICAL IND)1986年5月28日に記載されているような、式[(R3P)2N]+X-(式中、Rは、アリールもしくはアルキル基であり、Xは、一価のアニオンである)のイミン化合物
が挙げられる。第四級ホスホニウム塩およびアミノホスホニウム塩が好ましい。
【0062】
加硫促進剤と硬化剤とを別々に使用する代わりに、加硫促進剤と硬化剤との間の1:2~1:5、好ましくは1:3~1:5のモル比の付加体を使用することも可能であり、加硫促進剤は、上で定義されたように、正電荷を有する有機オニウム化合物の1つであり、硬化剤は、上で示された化合物、特にジヒドロキシもしくはポリヒドロキシ化合物またはジチオールもしくはポリチオール化合物から選択され;付加体は、示されたモル比での加硫促進剤と硬化剤との間の反応生成物を溶融させることによって、または、示された量で硬化剤を補った1:1付加体の混合物を溶融させることによって得られる。任意選択的に、付加体に含有されるそれに対して、過剰の加硫促進剤が存在していてもよい。
【0063】
次のもの:1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチルホスホランアミンおよびテトラブチルホスホニウムが、付加体の調製のためのカチオンとして特に好ましく;特に好ましいアニオンは、2つの芳香環が3~7の炭素原子のパーフルオロアルキル基から選択される二価のラジカルを介して結合しており、OH基がパラ位にある、ビスフェノール化合物である。上記のような付加体の調製に好適な方法は、参照によりその全体を本明細書に援用される、欧州特許出願公開第0684277A号明細書(AUSIMONT SPA[IT])1995年11月29日に記載されている。
【0064】
硬化剤および加硫促進剤(またはそれらの組み合わせ)に加えて、上に詳述されたような、フルオロエラストマー(A)とポリマー(E)とを含むイオン硬化性組成物に一般に添加される他の原料は:
i)典型的にはフルオロエラストマー(A)の100部当たり1~40部の量で含まれる、二価の金属酸化物、例えば、MgO、CaO、ZnOなどからなる群から選択される1つもしくは複数の鉱酸受容体;
ii)典型的にはフルオロエラストマー(A)の100部当たり0.5~10部の量で添加される;Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2、弱酸の金属塩、例えば、Ca、Sr、Ba、NaおよびK炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩および亜リン酸塩ならびに上述の水酸化物と上述の金属塩との混合物で構成される群から選択される1つもしくは複数の塩基性化合物
である。
【0065】
また、充填剤、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などの、他の従来の添加剤が、硬化する混合物にそのとき添加されてもよい。
【0066】
混合型過酸化物/イオン硬化は、上に詳述されたような、1つもしくは複数の過酸化物と、当技術分野において周知のような、イオン硬化に好適な1つもしくは複数の硬化剤および1つもしくは複数の加硫促進剤とを、本発明の硬化性組成物に同時に導入することによって達成することができる。だからさらに、本発明の目的は、上に詳述されたような、フルオロエラストマー(A)と、ポリマー(E)と、(i)少なくとも1つの過酸化物と、(ii)少なくとも1つの硬化剤および少なくとも1つの加硫促進剤、ならびに/またはそれらの組み合わせとを含む組成物である。
【0067】
フルオロエラストマー(A)が、場合により(過)フッ素化された、ニトリル基を含むエチレン性不飽和化合物(例えば、上に詳述されたような、タイプ(CSM-2)のモノマー)に由来する繰り返し単位を含む場合、硬化はさらに、(i)有機スズ化合物;(ii)芳香族テトラアミン、ビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)などの、芳香族アミン化合物;(iii)ビスアミドラゾン;(iv)ビスアミドキシムの少なくとも1つを使用して達成することができる。
【0068】
有機スズ化合物の具体的な例はとりわけ、アリル-、プロパルギル-およびアレニル-スズ硬化剤を開示している米国特許第4,394,489号明細書(DU PONT)1983年7月19日に記載されており;米国特許第5,767,204号明細書(日本メクトロン株式会社)1998年6月16日は、式:
(式中、Aは1~6の炭素原子を有するアルキリデン基または1~10の炭素原子を有するパーフルオロアルキリデン基であり、XおよびYはヒドロキシル基またはアミノ基である)で表されるビス(アミノフェニル)化合物を提供しており;米国特許第5,789,509号明細書(DU PONT)1998年8月4日は、本発明組成物に使用するのに好適なテトラアルキルスズ、テトラアリールスズ化合物、ビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)を開示している。
【0069】
本発明の組成物(C)はそれ故に、上に詳述されたような、ニトリル(-CN)基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を含フルオロエラストマー(A)、および上に詳述されたような、ポリマー(E)に加えて、上に詳述されたような、(i)有機スズ化合物;(ii)芳香族テトラアミン、ビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)などの、芳香族アミン化合物;(iii)ビスアミドラゾン;(iv)ビスアミドキシムの少なくとも1つ以上を含むことができる。
【0070】
このタイプの加硫は、組成物(C)が、とりわけ米国特許第5,447,993号明細書(DU PONT)1995年9月5日に記載されているように、ヨウ素化および/または臭素化末端基をさらに含有する、ニトリル(-CN)基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を含むフルオロエラストマー(A)を含む場合には、過酸化物タイプの加硫と組み合わせられてもよい。この場合の組成物はさらに、上に詳述されたような、少なくとも1つの過酸化物と、任意選択的に、上に詳述されたような、少なくとも1つのポリ不飽和硬化助剤を含んでもよい。
【0071】
その上、本発明は、上に詳述されたような、組成物(C)から得られる硬化品に関する。前記硬化品は一般に、上に詳述されたような、フルオロエラストマー組成物を成形し、硬化させることによって得られる。これらの硬化部品は、O(角)リング、パッキング、ガスケット、ダイヤフラム、シャフトシール、バルブステムシール、ピストンリング、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、およびオイルシールなどの、封止用物品であってもよいし、またはパイピングおよびチュービング、特にフレキシブルホースまたは炭化水素流体および燃料の配送用導管などの、他のアイテムであってもよい。
【0072】
組成物(C)から得られる硬化品は、非常に低いガラス転移温度を提供するそれらの能力のおかげで、低い使用温度に遭遇する企ての分野において、例えば、特に航空宇宙封止用部品として、例えばCNGおよびLPGシステムなどの、自動車用途向け弾性部品、ならびに低温環境におけるガスおよび/または石油掘削(例えば、沖合操作を含む)用の部品として使用されるのに好適である。
【0073】
さらに加えて、本発明は、射出成形、圧縮成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷技術、フォームインプレース技術のいずれかによる、上に詳述されたような、組成物(C)の加工方法に関する。
【0074】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0075】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0076】
TECNOFLON(登録商標)VPL X75545 FKMは、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から商業的に入手可能な、フッ化ビニリデン(VDF)60.5モル%;テトラフルオロエチレン(TFE)17.5モル%;および式CF2=CF-OCF2O-CF3を有するパーフルオロ-メトキソ-ビニルエーテル(MOVE3)22モル%に由来する繰り返し単位を含む、過酸化物硬化性ヨウ素末端基含有フルオロエラストマー(FKM-1)である。
【0077】
調製実施例1:PFPEジオールのヘキサフルオロベンゼン誘導体[PFPE-ArF-1]の調製
次の構造:
HOCH2CF2O-(CF2O)n(CF2CF2O)m(CF2CF2CF2O)p(CF2CF2CF2CF2O)q-CF2CH2OH
[式中、n=4.90であり、m=4.75であり、(p+q)=0であり;(パー)フルオロポリエーテル鎖の数平均分子量(Mn)は、1060ダルトンに等しい]
を有するPFPEジオール前駆体[PFPE-1]を使用した。
【0078】
100gのPFPE-1を、70gのヘキサフルオロベンゼン(Sigma-Aldrich製)と混合し、16gのKOH粉末(タイトル85%)を室温で液体混合物に添加した。反応マスを、6時間60℃で、攪拌下に、保った。結果として生じた溶液を水性HCl(0.1N)で2回洗浄し、減圧下で乾燥させて125.7gの無色液体生成物をもたらした。19F NMR分析は、相当する芳香族誘導体-CF2CH2OC6F5への-CF2CH2OH基の完全転化(99モル%超)を示した。
【0079】
調製実施例2:PFPEジオールのヘキサフルオロベンゼン誘導体[PFPE-ArF-2]の調製
次の構造:
HOCH2CF2O-(CF2O)n(CF2CF2O)m(CF2CF2CF2O)p(CF2CF2CF2CF2O)q-CF2CH2OH
[式中、n=6.27であり、m=8.03であり、(p+q)=0.09であり;(パー)フルオロポリエーテル鎖の数平均分子量(Mn)は、1540ダルトンに等しい]
を有するPFPEジオール前駆体[PFPE-2]を使用した。
【0080】
100gのPFPE-2を、50gのヘキサフルオロベンゼン(Sigma-Aldrich製)と混合し、11gのKOH粉末(タイトル85%)を室温で液体混合物に添加した。
【0081】
反応マスを、6時間60℃で、攪拌下に、保った。
【0082】
結果として生じた溶液を水性HCl(0.1N)で2回洗浄し、減圧下で乾燥させて118.4gの無色液体生成物をもたらした。19F NMR分析は、相当する芳香族誘導体-CF2CH2OC6F5への-CF2CH2OH基の完全転化(99モル%超)を示した。
【0083】
調製実施例3:PFPEのヘキサフルオロベンゼン誘導体[PFPE-ArF-3]の調製
次の構造:
TO-(CF2O)n(CF2CF2O)m(CF2CF2CF2O)p(CF2CF2CF2CF2O)q-
[TおよびT’は、末端基-CF2CH2(OCH2CH2)k-OHであり、
式中、n=4.29であり、m=5.19であり、(p+q)=0.06であり;(パー)フルオロポリエーテル鎖の数平均分子量(Mn)は、1200ダルトンに等しい]
を有するPFPEジオール前駆体[PFPE-2]を使用した。
【0084】
100gのPFPEジオールを、65gのヘキサフルオロベンゼン(Sigma-Aldrich製)と混合し、14gのKOH粉末(タイトル85%)を室温で液体混合物に添加した。
【0085】
反応マスを、6時間60℃で、攪拌下に、保った。
【0086】
結果として生じた溶液を水性HCl(0.1N)で2回洗浄し、減圧下で乾燥させて122.3gの無色液体生成物をもたらした。19F NMR分析は、相当する芳香族誘導体-CH2CH2OC6F5への-CH2CH2OH基の完全転化(99モル%超)を示した。
【0087】
一般的な配合および硬化手順
FKM-1を、オープンミルで下に詳述されるような原料と配合した。プラークを、160℃で、5分間プレス金型中で硬化させ、次に条件(230℃で1+4時間)下に空気循環オーブン中で後処理した。
引張特性は、DIN 53504 S2規格に従って、プラークから打ち抜いた検体に関して測定した。
TSは、MPa単位での引張強度であり;
M100は、100%の伸びにおけるMPa単位での弾性率であり、
EBは、%単位での破断点伸びである。
Shore(ショア)A硬度(3”)(HDS)は、ASTM D 2240方法に従って積み重ねられた3片のプラークに関して測定した。
圧縮永久歪み(C-Set)値は、ASTM D 395-B方法(200℃で70時間)に従ってOリング(#214クラス)に関して測定した。
硬化した検体のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418に従って測定した。
硬化処方および条件ならびに硬化したサンプルの特性を、それぞれ、表1および表2に要約する。
【0088】
【0089】
【0090】
上に再収集されたデータは、上述の量でのポリマー(E)の添加が、実質的に不変の機械的特性および有利な封止性能を維持しながら、この分野において非常に重要である、Tgの観点からより低い温度の方へ6~8℃のゲインありで、傑出した低温挙動を有する硬化部品を提供するのに有効であることを十分実証している。
【0091】
パーフルオロ芳香族基のないパーフルオロポリエーテルの添加は、低温挙動においていかなる有意なゲインも提供することなく、封止特性に有意に悪影響を及ぼす。