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  • 特許-単一熱流束センサ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】単一熱流束センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 17/20 20060101AFI20220114BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01K17/20
A61B5/01 150
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018553396
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2017062034
(87)【国際公開番号】W WO2017198788
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】16170086.9
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ボンヘルス エドウィン ヘラルドス ヨハヌス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブロム アントニウス ヘルマヌス マリア
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-075262(JP,A)
【文献】特開平10-103745(JP,A)
【文献】特許第5779806(JP,B2)
【文献】特開2014-142365(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104545823(CN,A)
【文献】米国特許第04859078(US,A)
【文献】特開2013-190236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 17/00-17/20
G01K 13/20
A61B 5/01
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のコア体温を測定する単一の熱流束センサ装置であって、
断熱材の層と、前記断熱層の内側領域に配置された内側温度測定手段と、前記断熱層の外側領域に配置された外側温度測定手段とを含むセンサと、
前記断熱層の領域内の温度を意図的に上昇させる加熱手段と、
前記内側温度測定手段から入力される温度を受信し、前記外側温度測定手段から入力された温度を受信し、前記対象の熱抵抗値を計算する評価ユニットとを有する、熱流束センサ装置。
【請求項2】
前記評価ユニットが、前記センサの平衡温度状態を決定する、請求項1に記載の単一熱流束センサ装置。
【請求項3】
前記評価ユニットが、加熱手段を作動させる前の平衡温度状態である、前記センサの第1の平衡温度状態に基づき、前記加熱手段を作動させる、請求項2に記載の単一熱流束センサ装置。
【請求項4】
前記評価ユニットが、加熱手段を作動させた後の平衡温度状態である、前記センサの第2の平衡温度状態に基づき、前記加熱手段を停止させる、請求項2又は3に記載の単一熱流束センサ装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、前記断熱層の外側領域の温度を上昇させる、請求項1乃至4のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項6】
温度測定手段が、サーミスタを有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項7】
前記加熱手段が、前記外側温度測定手段が有するサーミスタに電流を流す、請求項6に記載の単一熱流束センサ装置。
【請求項8】
前記加熱手段が、電流源を有する、請求項1乃至7のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項9】
前記単一の熱流センサ装置により収集される温度関連データを記録するメモリモジュールを有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項10】
ウェアラブルデバイスとして構成される、請求項1乃至9のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項11】
前記対象のコア体温に関する温度プロファイルを表示する表示ユニットを有する、請求項1乃至10のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項12】
遠隔監視ステーションと通信する無線インタフェースを有する、請求項1乃至11のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置。
【請求項13】
対象のコア体温を測定する方法において、
請求項1から12のいずれかに記載の単一の熱流束センサ装置を前記対象に取り付けるステップと、
第1の平衡温度を決定し、続いて、加熱手段を作動させて、前記センサ装置の断熱層の外側領域を加熱するステップと、
第2の平衡温度を決定するステップと、
前記対象に関する熱抵抗値を計算するステップと、
前記計算された熱抵抗値と前記平衡温度とに基づき前記対象のコア体温を計算するステップとを有する、方法。
【請求項14】
前記第2の平衡温度を決定した後に前記加熱手段を停止させるステップを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単一の熱流束センサ装置が、人間の対象の皮膚に取り付けられ、皮膚熱抵抗の値が決定される、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の熱流束センサ装置と、対象のコア体温を測定する方法とを記載する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケア環境では、しばしば、患者のコア体温を正確に監視することが必要である。コア体温は、心臓及び脳などの重要な器官を通る血液の温度であると理解されることができる。その測定は病院のケアにおいて非常に重要である。これは特に、冷房された手術室で長い外科手術を受けている患者にとって顕著である。なぜなら、麻酔下の患者は自分の体温を調節することができないからである。これは深刻な問題であり、外科的処置の後、全外科患者の最大50%が低体温に苦しんでいると推定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コア体温を監視する1つの方法は、食道プローブ、直腸プローブなどの侵襲性プローブを使用することである。コア体温は長期間にわたり監視されなければならないので、斯かるプローブは一般に、意識のある患者により非常に不快なものとして知覚される。非侵襲的な温度監視デバイスは、ゼロ熱流束の概念に基づかれることができる。しかしながら、斯かるセンサは、能動的に「ゼロ熱流」を実現するための制御ループ及び加熱要素を必要とし、これは、この種のセンサを着用可能なセンサ用途に一体化することを困難にする。
【0004】
コアの体温の測定は、受動センシングを使用して行うこともできる。受動的コア体温測定を実行するには、主に2つのアプローチがある。1つのアプローチは、断熱材により分離された2つの温度測定デバイスのみを必要とする。断熱材の熱抵抗率は既知であるが、通常、任意の年齢の任意の患者に適用されると仮定される平均値をとることで、皮膚熱抵抗率は推定されると想定される。平衡に達すると(温度測定デバイスにより報告される温度が一定レベルに達したとき)、2つの温度測定デバイス間の熱流が計算されることができ、次いでコア体温が決定される。受動的な「単一熱流センサ」の利点は、その単純な形状、薄さの実現、直接的な計算、及び2つの温度測定デバイスのみが必要であるという事実にある。しかしながら、熱の流れが外向きのみに限定されないことに起因するわずかな不正確さを無視しても、皮膚熱抵抗に関する値を仮定することにより、より深刻な不正確さが生じる可能性がある。患者は平均値と同じではない皮膚熱抵抗を持つ場合があり、その結果、その患者に関するコア体温は正確に報告されない。更に、皮膚熱抵抗率は、1人の患者であっても変わり得、額、腕、胸などにおいて異なる可能性がある。
【0005】
別の受動的アプローチは、2つの熱流を測定する。斯かる「二重熱流束センサ」では、センサパッドは異なる厚さの2つの層と、少なくとも4つの温度測定デバイスとを持つ。センサは、皮膚の熱抵抗率について何ら仮定することなく、コア体温を推定することができる。受動二重熱流束センサの利点は、より正確な温度読取値を提供する点にある。しかしながら、二重熱流束センサは、より複雑な形状を持ち、製造コストが高く、明らかに大きく、少なくとも4つの温度測定デバイスを必要とし、複雑な計算を実行する必要があり、平衡に達するまでの加熱時間が長く、及びエラーが発生しやすい。
【0006】
従って、本発明の目的は、対象のコア体温を測定するための改良された単一熱流束センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、請求項1の単一熱流束センサ装置及び対象のコア体温を測定する請求項13に記載の方法により実現される。
【0008】
本発明によれば、単一の熱流束センサ装置は、断熱材の層と、上記断熱層の内側領域に配置された内側温度測定手段と、上記断熱層の外側領域に配置された外側温度測定手段とを含むセンサと、上記内側温度測定手段から入力された温度を受信し、上記外側温度測定手段から入力された温度を受信する評価ユニットと、例えば上記サーミスタの1つの温度を上昇させるため、上記断熱層の領域の温度を故意に上昇させる加熱手段とを有する。評価ユニットは、対象に関する熱抵抗値を計算し、この情報を用いて、対象のコア体温を正確に決定することができる。
【0009】
本発明の単一の熱流束センサ装置の利点は、単一の熱流束センサと二重の熱流束センサとの利点を組み合わせる点にあり、即ち単一の熱流束センサの簡単な構成を持つが、二重熱流束センサのより良好な測定精度を実現する点にある。また、センサの温度を意図的に上昇させる加熱手段を備えることにより、以下に説明するように、対象の熱抵抗を決定することが可能である。この熱抵抗率は、従来の手法のように単純に推定されるのではなく、計算されるため、温度測定の精度が大幅に改善されることができる。本発明のセンサの製造コストは、従来の単一の熱流センサと比較して優れており、二重熱流センサよりも著しく低い。
【0010】
本発明によれば、対象のコア体温を測定する非侵襲的方法は、斯かる単一熱流束センサ装置を対象に取り付けるステップと、第1の平衡温度を決定し、続いて加熱手段を作動させて上記センサの断熱層の外側領域を加熱するステップと、第2の平衡温度を決定するステップと、上記対象の熱抵抗値を決定するステップと、上記熱抵抗値と平衡温度とに基づき上記対象のコア体温を計算するステップとを有する。
【0011】
本発明の方法は、対象のコア体温のより正確な計算を可能にする。なぜなら、それは、対象に関する熱抵抗率を決定するステップも含むからである。これは、対象に関する推定熱抵抗値に依存する従来の単一熱流温度感知方法と比較して有利である。
【0012】
従属請求項及び以下の説明は、本発明の特に有利な実施形態及び特徴を開示する。実施形態の特徴は適宜組み合わせられることができる。あるクレームカテゴリーの文脈で説明される特徴は、別のクレームカテゴリーにも等しく適用されることができる。
【0013】
用語「熱流束」及び「熱流」は同義語であると理解され、以下では交換可能に使用される。本発明の単一の熱流束センサ装置は、対象の熱抵抗率を決定することが実用的でない任意の対象の温度を測定するために使用されることができる。以下では、本発明を何ら限定するものではないが、対象はヒト患者であり、観察される温度は患者のコア体温であると仮定されることができる。
【0014】
温度測定手段は、任意の適切なタイプの温度センサを含むことができる。サーミスタは、好ましい小さなサイズ、感度、精度、及び電気回路に容易に組み込むことができる能力のため、小型デバイスにおいて温度を測定するのにしばしば使用される。従って、以下では、温度測定手段がサーミスタであると仮定されることができる。
【0015】
断熱層又はセンサパッドは、ポリマー発泡体などの任意の適切な物質を含むことができる。物質の熱抵抗の値は、断熱材の製造業者から得られることができると仮定されることができる。代替的に、当業者に知られているように、この値を決定することは比較的簡単である。
【0016】
評価ユニットは好ましくは、各サーミスタから信号を受信するのを可能にする適切なインタフェースを有する。例えば、サーミスタの位置における温度を示す電圧信号を供給するため、サーミスタが回路全体に接続されることができる。センサが患者の皮膚上に置かれるとき、サーミスタの温度は、センサパッドを通る熱流に基づき変化する。入ってくる情報を解釈するため、評価ユニットは好ましくは、適切な処理ユニットを有する。処理ユニットは、複数の適切なインタフェースを備えるマイクロプロセッサとすることができ、センサの平衡温度状態を決定するため、必要な計算を実行するように実現されることができる。斯かる平衡状態は、各サーミスタが経時的に安定した値を報告するときに達成される。
【0017】
例えば、処理ユニットは、サーミスタ入力信号を連続的に比較することができ、これらの各々が適切な時間(例えば数秒)の間、本質的に一定のままであるか又は不変であるとき、処理ユニットは、第1の平衡温度に到達したと想定することができる。この時点で、処理ユニットは、内側サーミスタに関する第1の温度値と外側サーミスタに関する第1の温度値とを記録し、その後、加熱手段を作動させることができる。
【0018】
加熱手段は、センサパッドに埋め込まれたワイヤループとして実現されることができる。これは、例えばワイヤに電流を流すことにより、外部源から加熱されることができる。抵抗ワイヤループの代わりに、所望の加熱機能を達成するため、センサパッド内に1つ又は複数の抵抗器が実現されることができる。本発明の特に好ましい実施形態では、サーミスタが本質的に抵抗要素であるという事実を利用して、外側領域でセンサの温度を上昇させるのに、外側サーミスタ自体が使用される。この有利な実現は、別個の加熱要素の必要性を排除する。本発明のその好ましい実施形態では、サーミスタに電流が流れ、その温度を上昇させる。この目的のため、本発明の単一の熱流センサ装置の加熱手段は、電流源を有する。
【0019】
評価ユニットは好ましくは、例えば電流源にトリガ信号を発することにより、センサの第1の平衡温度状態に基づき加熱手段を作動させるように実現される。加熱手段がアクティブである限り、処理ユニットは、サーミスタ入力信号を比較し続け、これらが適切な時間(例えば数秒)の間本質的に等しいとき、処理ユニットは第2の熱平衡状態に達したと想定する。この時点で、処理ユニットは、内側サーミスタに関する第2の温度値と外側サーミスタに関する第2の温度値とを記録することができる。
【0020】
評価ユニットにより収集された情報、即ち各サーミスタに関する第1及び第2の温度値、及びセンサパッド断熱材の既知の熱抵抗値を用いて、皮膚熱抵抗率を計算することができる。これは、評価ユニットが、その後の温度監視手順中により正確なコア体温を計算することを可能にする。方法の段階及び関連する数学式は、図を用いてより詳細に説明される。
【0021】
第2の平衡状態が決定された後、加熱手段はオフにされることができる。代替的に、本発明の更に好ましい実施形態では、加熱源は、第2の熱平衡に達した後にスイッチオフされず、オンのままである。この実施形態では、加熱のレベルは、センサパッドを通る熱流束を本質的に最小にするように選択される。結果として生じる状態はゼロ熱流の状態に似ている。この状態では、コア温度を得るために第1のサーミスタにより測定された温度に加算(又はこれから減算)されなければならない分数が小さくなる。その分数に関連付けられる誤差も小さくなる。
【0022】
好ましくは、本発明のセンサ装置は、患者のコア体温に関する温度プロファイルを記録することができる適切なメモリモジュールを具備する。これは例えば、表示ユニットに視覚フィードバックとして表示されることができる。本発明の更に好ましい実施形態では、センサ装置は、例えば患者の腕にカフとして装着されるか、又は患者の胸に接着パッチにより取り付けられる等のウェアラブルデバイスとして実現される。表示ユニットは、ウェアラブルデバイスの一体部分であってもよい。代替的又は追加的に、センサ装置は、コア体温値又は全体の温度プロファイルをある間隔で遠隔監視ステーションに送信することができる無線インタフェースを具備していてもよい。
【0023】
本発明による単一の熱流束センサ装置は、周術期を通して、並びに手術室へ及びここからの患者の搬送中において、患者の所定の場所に設置されることができる。一般病棟又は集中治療室における患者を監視する場合にも役立つ。
【0024】
本発明の他の目的及び特徴が、添付の図面に関連して考慮される以下の詳細な記載から明らかになるであろう。しかしながら、図面は単に説明のためだけにデザインされ、本発明を限定するための規定として機能するものではない点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による単一熱流センサのブロックダイアグラムを示す図である。
図2】理想的な単一の熱流束センサの簡略ダイアグラムを示す図である。
図3A】本発明による方法における第1段階を示す図である。
図3B】本発明による方法における第2段階を示す図である。
図4】本発明による単一熱流センサの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、類似する番号は、全体を通して類似する対象を参照する。図面における対象が、必ずしも大きさ通りに描かれているわけではない。
【0027】
図1は、本発明の単一熱流センサ装置1の例示的な実施形態を示す。センサ装置1は、主に断熱層100又はパッド100からなるセンサ10を有する。パッド100は、患者の皮膚2に適用され、センサ装置1は、患者のコア体温を決定するために使用される。
【0028】
センサ10は、パッド100の内面に又はこれに近接して配置された内側サーミスタS1と、パッド100の外面に又はこれに近接して配置された外側サーミスタS2とを持つ。評価ユニット11は、サーミスタに電気的に接続され、受信した電気信号を評価して、パッド100の内側領域における温度T1及びパッド100の外側領域における温度T2を決定することができる。このため、評価ユニット11は、適切なマイクロプロセッサ、FPGAなどを有することができる。
【0029】
この例示的な実施形態では、単一の熱流センサ1は、温度プロファイルを記録するメモリモジュール111を持ち、また、温度プロファイル及び/又は記録された温度測定値を遠隔監視ステーションに送信するための送信機112を具備する。この図はまた、単一の熱流センサ1が、例えば患者又は介護者などのユーザに温度プロファイルを示す(例えば、スマートな時計のような)表示ユニット113に接続されるか、又はこれを具備することができることを示す。
【0030】
本発明のセンサ装置1は、外側サーミスタS2の温度を上昇させるように実現された加熱手段12を持つ。この例示的な実施形態では、加熱手段12は、電流源12であり、所定の期間、外側サーミスタS2に電流を印加するよう、評価ユニット11により制御される。これは、追加情報が収集されることを可能にし、その結果、以下に説明されるように、皮膚2の熱抵抗率が決定されることができる。
【0031】
図2は、人の皮膚2に適用される単一の熱流束センサの動作の原理を示す。この比較的単純なセンサ構造は、断熱材100の層により分離された2つの温度センサS1、S2のみを使用する。皮膚2を通る、及びセンサパッド100を通る熱流Iheatは同じであり、
として表されることができる。ここで、T1は内側センサS1における温度であり、T2は外側センサS2における温度であり、R1は断熱材100の熱抵抗率であり、R0は皮膚熱抵抗率である。断熱材の熱抵抗率R1は、既知であると想定されることができる。コア体温に関する式は、式(1)を再構成することにより得られることができ、
となる。
【0032】
式(1)及び(2)は、物質層2、100が無限に広いという仮定に基づかれるので、その結果、熱は矢印により示されるように垂直方向にのみ流れると推定されることができる。実際の用途では、測定結果の精度を低下させる側方熱流成分も存在する。更に、センサパッドの熱抵抗R1のみが既知であり、皮膚熱抵抗R0は推定されなければならない。これは、測定結果の精度を著しく低下させる可能性がある。なぜなら、皮膚の熱抵抗率は、身体のどの部分にセンサが取り付けられるかに基づき変化する可能性があり、皮膚熱抵抗率の値は、年齢、生理学などの様々な要因に基づき人毎に著しく変化し得るからである。
【0033】
本発明のセンサは、皮膚熱抵抗率を実際に測定することにより、従来のセンサのこの限界を克服することができる。図3A及び3Bは、方法の段階を説明するために使用される。最初に、センサ10のサーミスタは、周囲温度又は室温Troomを持つと仮定されることができる。センサ10を皮膚2に取り付けた後、患者の身体からの熱流が、センサパッド100の温度を上昇させ、その結果、サーミスタも上昇する温度を報告する。この方法の第1段階におけるサーミスタの1つに関する温度プロファイルPxが図3Aに示される。最終的に、サーミスタの温度は平衡温度TEQ1に達する。この時点で、上記式(2)を用いて、コア体温は
として表されることができる。ここでT11は初期内側サーミスタ温度値であり、T21は初期外側サーミスタ温度値である。前述したように、R1は既知の量であり、T11、T21は測定値である。残りの未知数は、皮膚熱抵抗R0及びコア体温T0である。
【0034】
第2段階では、時間tonで加熱手段をオンにしてこのサーミスタS2に電流を印加することにより、外側サーミスタS2が短時間加熱される。加熱装置は、外側サーミスタS2における温度が僅かに上昇するだけ、即ちコア体温レベルより上に上昇しないよう制御されることができる。図3Bに示されるように、しばらくして新しい平衡温度TEQ2に達する。サーミスタ温度が記録され、電流が時間toffにスイッチオフされる。ここでもまた、上記式(2)を用いて、コア体温は
として表されることができる。ここで、T11は第2の内側サーミスタ温度値であり、T21は第2の外側サーミスタ温度値T21である。この場合においても、R1は既知の量であり、T1l、T21は測定値であり、残りの未知数は皮膚抵抗率R0及びコア体温T0である。熱流束を逆転させることにより、T22はT12より高くなり、その結果、式(4)はT12よりも低いコア温度値を表す。
【0035】
本発明の方法は、上記式(3)及び(4)を等式化し、皮膚熱抵抗率R0を解くことにより、皮膚熱抵抗率R0が測定量に関して表されることを可能にする。これは、
となる。
【0036】
患者の皮膚抵抗率が平均値と同じであると仮定する代わりに、患者の皮膚抵抗率R0が、満足のいく程度の精度で測定され、今や患者特異的及び場所特異的である。これは、患者のコア体温を正確に報告するため、温度監視手順を通じて式(2)が使用されることを可能にする。こうして、患者のコア体温が完全に非侵襲的な態様で正確に推定されることができる。
【0037】
図4は、ウェアラブルデバイス1として実現された本発明の単一の熱流センサ1を示し、いくつかの可能な位置のうちの2つ、即ち胸部又は腕の周りの2つの位置を示す。いずれの場合においても、センサパッドは、患者3の皮膚2に取り付けられる。前述の方法を使用して計算されるように、患者のコア体温T0の視覚的な読取値が、温度プロファイルP3として示されることができる。ウェアラブルデバイスは、小さなディスプレイを含むことができる。その結果、患者又は介護者がコア体温の発達を観察できる。代替的に、ウェアラブルデバイスは、情報を遠隔監視ステーション4に送信することができ、そこで、温度プロファイルP3がディスプレイに表示されることができる。
【0038】
本発明が好ましい実施形態及びこれに関する変形例の形で開示されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく多数の追加的な修正及び変形がなされる事ができる点を理解されたい。
【0039】
明確化のため、本願を通して使用される「a」又は「an」は複数性を排除するものではなく、及び「有する」が、他のステップ又は要素を排除するものではない点を理解されたい。「ユニット」又は「モジュール」の記載は、1つ以上のユニット又はモジュールの使用を排除しない。
図1
図2
図3A
図3B
図4