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特許7005515荷電表面逆相クロマトグラフィ材料による両親媒性強塩基性部分で修飾されたグリカンの分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】荷電表面逆相クロマトグラフィ材料による両親媒性強塩基性部分で修飾されたグリカンの分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/287 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/288 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/283 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/29 20060101ALI20220203BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01N30/88 N
G01N30/06 E
B01J20/287
B01J20/288
B01J20/283
B01J20/285 Z
B01J20/29
G01N30/26 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2018555667
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017028856
(87)【国際公開番号】W WO2017189357
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】62/326,783
(32)【優先日】2016-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローバー,マシュー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】マッコール,スコット・エイ
(72)【発明者】
【氏名】オカンデジ,ババジド
(72)【発明者】
【氏名】イラネタ,パメラ・シー
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166399(WO,A1)
【文献】特表2014-534176(JP,A)
【文献】特表2013-501243(JP,A)
【文献】特表2013-505028(JP,A)
【文献】特開昭61-278759(JP,A)
【文献】特表2007-522476(JP,A)
【文献】YAN, Shi et al.,Comparison of RP-HPLC modes to analyse the N-glycome of the free-living nematode Pristionchus pacificus,ELECTROPHORESIS,2015年,Vol.36,pp.1314-1329
【文献】LAUBER, Matthew A. et al.,Rapid Preparation of Released N -Glycans for HILIC Analysis Using a Labeling Reagent that Facilitates Sensitive Fluorescence and ESI-MS Detection,ANALYTICAL CHEMISTRY,2015年,Vol.87, No.10,pp.5401-5409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
B01J 20/281 - 20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からグリカンを選択的に単離する方法であって、前記方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に前記標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、前記クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、前記イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、前記イオン性修飾剤は、前記グリカンが前記高純度クロマトグラフィ材料に選択的に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まず、および当該1種以上のイオン性修飾剤はカルボン酸基、スルホン酸基、アリールスルホン基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、アミジノ基、グアニジン基又はアミノシラン基を含む、工程と、
c)前記吸着した標識されたグリカンを前記高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、前記標識されたグリカンを前記試料から選択的に単離する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
試料から複数種のグリカンを分離する方法であって、前記方法は、
a)複数種のグリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に複数種のグリカンを含む前記標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、前記クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、前記イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、前記イオン性修飾剤は、前記グリカンが前記高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まず、および当該1種以上のイオン性修飾剤はカルボン酸基、スルホン酸基、アリールスルホン基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、アミジノ基、グアニジン基又はアミノシラン基を含む、工程と、
c)前記吸着した標識されたグリカンを前記高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、前記標識されたグリカンを分離する工程と、を含む、方法。
【請求項3】
試料に含有されたグリカンを精製する方法であって、前記方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成することと、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に前記標識されたグリカン試料を搭載することであって、前記クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、前記イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、前記イオン性修飾剤は、前記グリカンが前記高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まず、および当該1種以上のイオン性修飾剤はカルボン酸基、スルホン酸基、アリールスルホン基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、アミジノ基、グアニジン基又はアミノシラン基を含む、ことと、
c)前記吸着したグリカンを前記高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、前記グリカンを精製することと、を含む、方法。
【請求項4】
試料中のグリカンを検出する方法であって、前記方法は
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
a)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に前記標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、前記クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、前記イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、前記イオン性修飾剤は、前記グリカンが前記高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まず、および当該1種以上のイオン性修飾剤はカルボン酸基、スルホン酸基、アリールスルホン基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、アミジノ基、グアニジン基又はアミノシラン基を含む、工程と、
b)前記吸着したグリカンを前記高純度クロマトグラフィ材料から溶出させる工程と、
c)前記グリカンを検出する工程と、を含む、方法。
【請求項5】
前記グリカンは、N-グリカン又はO-グリカンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記グリカンは、hIgGグリカン、フェチュイングリカン、FA2BG2S2、FA2G2S1,又はFA2G2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリカン標識試薬は、MS活性の、迅速蛍光タグ付け化合物、プロカインアミド試薬又はプロカイン試薬である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グリカン標識試薬は、0~5のログP値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ログP値は、1~5である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ログP値は、1~3である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グリカン標識試薬は、6よりも大きいpKa値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記pKa値は、7よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記pKa値は、8よりも大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グリカン標識試薬は、以下の式
【化1】
を有する試薬である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記高純度クロマトグラフィ材料は、クロマトグラフィックコア材料を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン性修飾剤は、アミノ基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記クロマトグラフィ表面の前記イオン性修飾剤は、前記クロマトグラフィ表面を、式(I)
【化2】
式(II):
【化3】
式(III):
【化4】
又はこれらの組み合わせを有する群から選択されるイオン性修飾試薬と反応させることによって提供され、
式中、mは1~8の整数であり、
vは0又は1であり、
vが0の場合、m’は0であり、
vが1の場合、m’は1~8の整数であり、
Zは
【化5】
-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、炭酸イミダゾール、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アルケン、アジド、-Br、-Cl又は-Iから選択される化学的反応性基を表し、
Yは内部極性官能基であり、
の各存在は、-H、-OH、-OR、ジアルキルアミン、トリフレート、Br、Cl、I、ビニル、アルケン又は-(CHm”Qを含むが、これらに限定されないケイ素上の化学的反応性基を独立して表し、
Qの各存在は、-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、炭酸イミダゾール、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アルケン、アジド、-Br、-Cl又は-Iであり、
m”は1~8の整数であり、
pは1~3の整数であり、
1’の各存在は、F、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、フルオロアルキル、又はフルオロアリールを独立して表し、
、R2’、R及びR3’の各存在は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、-Z、又は式-Si(R’)bR”若しくは-C(R’)bR”を有する基を独立して表し、
a及びbはそれぞれ、a+b=3の場合、0~3の整数を表し、
R’はC~C直鎖状、環状、又は分岐状のアルキル基を表し、
R”はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基、カチオン又はアニオン交換基、内部極性官能基を含むアルキル又はアリール基、及びキラル部分からなる群から選択される官能化基であり、
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
の各存在は、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを独立して表し、
Hetは、少なくとも1つの窒素分子を含む複素環系又はヘテロアリール環系を表し、
Aは、酸性イオン性修飾部分又は二重電荷イオン性修飾剤部分を表す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン性修飾試薬は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(2-(トリクロロシリル)エチル)ピリジン、2-(2-(トリメトキシ)エチル)ピリジン、2-(2-(トリエトキシ)エチル)ピリジン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリクロロシラン、スルホプロピルトリシラノール、カルボキシエチルシラントリオール、2-(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸、(2-ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、ビス(トリクロロシリルエチル)フェニルスルホニルクロリド、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、スルホン酸フェネチルトリシラノール、(トリエトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリメトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリクロロシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、ホスホン酸フェネチルトリシラノール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-(ヒドロキシエチル)-N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、又はN,N-ジメチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性表面基は、C4~C30の結合相、芳香族、フェニルアルキル、フルオロ芳香族、フェニルヘキシル、ペンタフルオロフェニルアルキル、又はキラル結合相である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記クロマトグラフィックコア材料は、シリカ材料又はハイブリッド無機/有機物質である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記クロマトグラフィックコア材料は、表面多孔性材料である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記高純度クロマトグラフィ材料は、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル、又はジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾剤で調製された固定相である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶出工程は、pH1~pH8を有する緩衝液を含む移動相を利用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記緩衝液は、pH2~pH7を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記緩衝液は、pH3~pH6を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記クロマトグラフ分離装置は、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、マイクロ流体分離装置、試料クリーンアップ装置、固体支持体、固相抽出装置、マイクロチップ分離装置、及びマイクロタイタープレートからなる群から選択される装置である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程cで溶出した前記標識されたグリカンを、二次クロマトグラフィ手段で処理して、前記グリカンを更に単離、精製、又は分離する工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記二次クロマトグラフィ手段は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含むクロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料以外のクロマトグラフィ材料を含む第2のクロマトグラフ分離装置か、又は疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含むクロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料以外の前記クロマトグラフ分離装置における第2のクロマトグラフィ材料である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記二次クロマトグラフ分離装置は、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、マイクロ流体分離装置、試料クリーンアップ装置、固体支持体、固相抽出装置、マイクロチップ分離装置、及びマイクロタイタープレートからなる群から選択される装置である、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
グリカンは、糖タンパク質、糖脂質、及びプロテオグリカンの一部として遊離状態及び複合形態の両方において生物系に亘って見出される。グリカンは、様々な生物学的プロセス及び生理学的プロセスにおいて役割を果たす。更に、グリカンの構造は多様で複雑である。その結果、グリカンプロファイルの完全な分析は困難であった。
【0002】
以前、グリカンプロファイルの分析には、従来のHPLCクロマトグラフィが利用されてきた。これらの方法は、逆相クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、及びHILIC分離を含む。従来、放出されたグリカンは、HILIC、又は代替的に、多孔性黒鉛化炭素などの黒鉛化固定相を使用する逆相クロマトグラフィ及びギ酸によって酸化された移動相よって分離されてきた(West,C.、Elfakir,C.、Lafosse,M.,Porous graphitic carbon:a versatile stationary phase for liquid chromatography。J Chromatogr A 2010,1217(19),3201~16、Ruhaak,L.R.、Zauner,G.、Huhn,C.、Bruggink,C.、Deelder,A.M.、Wuhrer,M.,Glycan labling strategies and their use in identification and quantification。Anal Bioanal Chem 2010,397(8),3457~81)。しかし、これらの方法は、グリカンの親水性及び極性の性質に起因して、完全にグリカンを分析するための十分な感度を提供していない。加えて、方法の感度を高めるために一部が標識されている多くのグリカンは、強く保持され過ぎて十分に分解されない。
【0003】
同様に、C18で結合された逆相固定相では、正味電荷に関して異なるグリカン構造の間で選択性が低いことを考慮すると、分離は、問題のある共溶出が生じる傾向がある。ヒト免疫グロブリンG(hIgG)などの糖タンパク質から放出されたN-グリカンは、互いに全く異なる。特に、放出されたN-グリカンは、大略的に中性又は酸性の親水性残基のみを含有することとなるので、ペプチドと異なる電荷特性を示す。放出されたN-グリカン中の酸性残基及びこれらのカルボン酸又はリン酸基は、グリカン種の特性及び正味電荷状態に大きな影響を与える。より多くの酸性残基を含むグリカンは、より負の正味電荷を有することとなる。同様に、これらの酸性種は、エポエチン及びリソゾーム障害酵素代替療法の場合のように、バイオ医薬品の有効性としばしば相関する(Lauber,M.A.、Koza,S.M.、McCall,S.A.、Alden,B.A.、Iraneta,P.C.、Fountain,K.J.,High-Resolution Peptide Mapping Separations with MS-Friendly Mobile Phases and Charge-Surface-Modified C18。Anal Chem 2013,85(14),6936~44、Bennet,C.L.、Spiegel,D.M.、Macdougall,I.C.、Norris,L.、Qureshi,Z.P.、Sartor,O.、Lai,S.Y.、Tallman,M.S.、Raisch,D.W.、Smith,S.W.、Silver,S.、Murday,A.S.、Armitage,J.O.、Goldsmith,D.,A review of safety,efficacy,and utilization of erythropoietin,darbepoetin,and peginesatide for patients with cancer or chronic kidney disease:a report from the Southern Network on Adverse Reactions (SONAR)。Semin Thromb Hemost 2012,38(8),783~96)。
【0004】
米国特許出願公開第2013/0319086号に記載されるような新規カラム技術は、様々な生体高分子間の高分解能、大きさ、組成、構造(例えば、異性体、結合体)、及び/又は電荷に基づく固有の選択性を提供するグリカンを分析する新規の多峰性クロマトグラフィ媒体及び方法を提供している。更に、これらのカラムは、媒体から溶出された高分子が、分析後及び検出(例えば、蛍光タグ付け)前の最小限のクリーンアップ若しくは精製を伴うか又はこれらを伴わない、標準的な方法(例えば、質量分析、蛍光検出)による検出を可能とし、これは、高分子分析を大幅に単純化及び簡易化すると考えられる。
【0005】
しかし、このような技術は、グリカン、特に、N-グリカンの完全な分離に対して十分な感受性及び選択性を依然として提供しない。また、O-グリカンに対しても同様のことが当てはまると考えられる。このように、グリカンの分析において、優れた選択性を提供することをもたらす代替の方法が必要である。
【0006】
N-グリカンの蛍光標識は、グリカンの検出感度及び選択性並びにグリカンのクロマトグラフィ挙動の両方を改善するので、グリカンの検出に有利である。グリカン分析は、治療薬の一貫性を確保するためにタンパク質のグリコシル化プロファイリングをモニターする必要があるので、医薬品製造業者にとって重要である。蛍光部分を有する試薬で誘導体化すると、グリカンの識別情報を推定することができる。次いで、特定の化合物を識別するために質量分析(「MS」)が必要である。
【0007】
MSによる分析は、グリカン及びアミノ酸の分析、並びにプロテオミクスについて高度な発展を達成している。現況技術は、迅速に反応し、良好なMS/蛍光信号を与えるタグ付け分子を利用する。しかしながら、蛍光検出は、定量的に異なる存在量を相対的に判定するのに非常に有用なツールであるため、MSと蛍光検出との組み合わせが望ましい。一方、MSは、分子組成を判断するために使用される。現況技術のグリカン検出に対して選択される標識は、高いpKaイオン化可能残基と対となる比較的高い疎水性を有し、その後、いわゆる「両親媒性強塩基性」部分を生成することを特徴とする。
【0008】
このため、両親媒性強塩基性部分で標識されたグリカンの最適な選択性及び分解能を生成するクロマトグラフィ材料及び対応する分離法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2013/0319086号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】West,C.、Elfakir,C.、Lafosse,M.,Porous graphitic carbon:a versatile stationary phase for liquid chromatography。J Chromatogr A 2010,1217(19),3201~16
【文献】Ruhaak,L.R.、Zauner,G.、Huhn,C.、Bruggink,C.、Deelder,A.M.、Wuhrer,M.,Glycan labling strategies and their use in identification and quantification。Anal Bioanal Chem 2010,397(8),3457~81
【文献】Lauber,M.A.、Koza,S.M.、McCall,S.A.、Alden,B.A.、Iraneta,P.C.、Fountain,K.J.,High-Resolution Peptide Mapping Separations with MS-Friendly Mobile Phases and Charge-Surface-Modified C18。Anal Chem 2013,85(14),6936~44
【文献】Bennet,C.L.、Spiegel,D.M.、Macdougall,I.C.、Norris,L.、Qureshi,Z.P.、Sartor,O.、Lai,S.Y.、Tallman,M.S.、Raisch,D.W.、Smith,S.W.、Silver,S.、Murday,A.S.、Armitage,J.O.、Goldsmith,D.,A review of safety,efficacy,and utilization of erythropoietin,darbepoetin,and peginesatide for patients with cancer or chronic kidney disease:a report from the Southern Network on Adverse Reactions (SONAR)。Semin Thromb Hemost 2012,38(8),783~96
【発明の概要】
【0011】
本発明は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含むクロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料(HPCM)及び分析対象試料に両親媒性強塩基性標識部分を提供可能な標識試薬を使用して、標識されたグリカンのクロマトグラフィ分析のための新規の方法を提供する。
【0012】
一態様において、本発明は、試料からグリカンを選択的に単離する方法を提供し、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に選択的に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
c)吸着した標識されたグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、標識されたグリカンを試料から選択的に単離する工程と、を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、試料から複数種のグリカンを分離する方法を提供し、方法は、
a)複数種のグリカンを含む試料と標識試薬とを反応させて標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に複数種のグリカンを含む標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
c)吸着した標識されたグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、標識されたグリカンを分離する工程と、を含む。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、試料中に含有されたグリカンを精製する方法を提供し、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成することと、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載することであって、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、ことと、
c)吸着したグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、グリカンを精製することと、を含む。
【0015】
更に他の態様において、本発明は、試料中のグリカンを検出する方法を提供し、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
a)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
b)吸着したグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させる工程と、
c)グリカンを検出する工程と、を含む。
【0016】
特定の実施形態では、グリカンは、N-グリカン又はO-グリカンである。特定の実施形態では、グリカンは、hIgGグリカン、フェチュイングリカン、FA2BG2S2、FA2G2S1又はFA2G2である。
【0017】
いくつかの実施形態では、グリカン標識試薬は、MS活性の、迅速蛍光タグ付け化合物、プロカインアミド試薬又はプロカイン試薬である。特定の実施形態では、グリカン標識試薬は、0~5、1~5、又は1~3のログP値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する。特定の実施形態では、グリカン標識試薬は、6よりも大きい、7よりも大きい、又は8よりも大きいpKa値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、グリカン標識試薬は、以下の式を有する試薬である。
【0019】
【化1】
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、クロマトグラフィックコア材料を更に含む。
【0021】
特定の実施形態では、本発明のHPCMは、カルボン酸基、スルホン酸基、アリールスルホン基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、イミド基、アミド基、ピリジル基、イミダゾリル基、ウレイド基、チオニルウレイド基、アミジノ基、グアニジン基又はアミノシラン基を含むイオン性修飾剤を含む。
【0022】
更に別の実施形態では、クロマトグラフィ表面のイオン性修飾剤は、クロマトグラフィ表面を式(I)
【0023】
【化2】
式(II):
【0024】
【化3】
式(III):
【0025】
【化4】
又はこれらの組み合わせを有する群から選択されるイオン性修飾剤と反応させることで提供され、
式中、
mは1~8の整数であり、
vは0又は1であり、
vが0の場合、m’は0であり、
vが1の場合、m’は1~8の整数であり、
Zは
【0026】
【化5】
-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、炭酸イミダゾール、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アルケン、アジド、-Br、-Cl、又は-Iを含が、これらに限定されない化学的反応性基を表し、
Yは内部極性官能基(embedded polar functionality)であり、
の各存在は、(限定されないが)-H、-OH、-OR、ジアルキルアミン、トリフレート、Br、Cl、I、ビニル、アルケン、又は-(CHm”Qを含むケイ素上の化学的反応性基を独立して表し、
Qの各存在は、-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、炭酸イミダゾール、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アルケン、アジド、-Br、-Cl、又は-Iであり、
m”は1~8の整数であり、
pは1~3の整数であり、
の各存在は、F、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、フルオロアルキル、又はフルオロアリールを独立して表し、
、R2’、R、及びR3’の各存在は、水素、C~C18アルキル、C~C18のアルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、-Z、又は式-Si(R’)bR”若しくは-C(R’)bR”を有する基を独立して表し、
a及びbはそれぞれ、a+b=3の場合、0~3の整数を表し、
R’はC1~C6直鎖状、環状又は分岐状のアルキル基を表し、
R”は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基、カチオン又はアニオン交換基、内部極性官能基を含むアルキル又はアリール基、及びキラル部分からなる群から選択される官能基である。
【0027】
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
の各存在は、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを独立して表し、
Hetは、少なくとも1つの窒素分子を含む複素環系又はヘテロアリール環系を表し、
Aは、酸性イオン性修飾剤部分又は二重電荷イオン性修飾剤部分を表す。
【0028】
更に他の実施形態において、イオン性修飾剤は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(2-(トリクロロシリル)エチル)ピリジン、2-(2-(トリメトキシ)エチル)ピリジン、2-(2-(トリエトキシ)エチル)ピリジン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリクロロシラン、スルホプロピルトリシラノール、カルボキシエチルシラントリオール、2-(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸、(2-ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、ビス(トリクロロシリルエチル)フェニルスルホニルクロリド、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、スルホン酸フェネチルトリシラノール、(トリエトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリメトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリクロロシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、ホスホン酸フェネチルトリシラノール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-(ヒドロキシエチル)-N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、又はN,N-ジメチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランである。
【0029】
いくつかの実施形態では、HPCMの疎水性表面群は、C4~C30の結合相、芳香族、フェニルアルキル、フルオロ芳香族、フェニルヘキシル、ペンタフルオロフェニルアルキル、又はキラル結合相である。
【0030】
他の実施形態では、HPCMのクロマトグラフィックコアは、シリカ材料又はハイブリッド無機/有機物質である。
【0031】
更に他の実施形態では、HPCMのクロマトグラフィックコアは、表面多孔性材料である。
【0032】
特定の実施形態において、高純度クロマトグラフィ材料は、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル、又はジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾剤で調製された固定相である。
【0033】
他の実施形態では、溶出工程は、pH1~pH8、pH2~pH7、又はpH3~pH6を有する緩衝液を含む移動相を利用する。
【0034】
他の実施形態では、クロマトグラフ分離装置は、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、マイクロ流体分離装置、試料クリーンアップ装置、固体支持体、固相抽出装置、マイクロチップ分離装置、及びマイクロタイタープレートからなる群から選択される装置である。
【0035】
更に他の実施形態では、本発明の方法は、工程cで溶出した標識されたグリカンを、二次クロマトグラフィ手段で処理することにより、グリカンを更に単離、精製、又は分離する工程を更に含む。特にこのような実施形態において、二次クロマトグラフィ手段は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含むクロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料以外のクロマトグラフィ材料を含む第2のクロマトグラフ分離装置か、又は疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含むクロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料以外のクロマトグラフ分離装置における第2のクロマトグラフィ材料である。他の特定の実施形態では、二次クロマトグラフ分離装置は、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、マイクロ流体分離装置、試料クリーンアップ装置、固体支持体、固相抽出装置、マイクロチップ分離装置、及びマイクロタイタープレートからなる群から選択される装置である。
【0036】
本発明の方法の他の実施形態、標識試薬及び方法、並びにハイブリッド、シリカ、粒子、モノリス及び表面多孔性材料を含む本発明のHPCMの合成及び使用は、下記により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】両親媒性強塩基性部分で修飾されたグリカンの例示的な化学構造の図であり、具体的には、RFMS標識されたヘプタサッカリドグリカンを示す図である。
図2】Thermo Hypercarb 250Å 3μm 2.1×150mmカラムを使用して生成された蛍光クロマトグラムであり、本発明の標識されたN-グリカンは、黒鉛化固定相を用いて強く保持され過ぎており、分解が不十分であることを示し、分離条件は、実施例2に記載されている。
図3】従来のC18逆位相材料を使用して生成された本発明の標識されたN-グリカン(FA2G2、FA2G2S1及びFA2G2S2)の抽出されたイオンクロマトグラムであり、従来の分離は、所望の選択性に比べて不十分な選択性を提供することを示し、分離条件は、実施例2に記載されている。
図4】Waters ACQUITY UPLC CSH C18 130Å 1.7μm 2.1×150カラムを使用して生成された蛍光クロマトグラムであり、本発明の標識されたN-グリカンが保持され、荷電表面逆相材料を使用した高ピーク容量で一意的に分離されていることを示す。(A)は、クロマトグラム全体である。(B)は、観察されたクロマトグラフピーク及び中性、モノシアリル化及びジシアリル化されたグリカン構造に対するMSベースの割り当ての拡大クロマトグラムである。分離条件は、実施例3に記載されている。
図5】本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、種々の水性移動相添加剤の使用による感度、保持性、選択性の調整を示す。(A)は、Waters ACQUITY UPLC CSH C18 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラム及びアンモニウム/ギ酸系緩衝液で分離された、標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。(B)は、Waters ACQUITY UPLC CSH C18 130Å 1.7μm 2.1×150mm及びギ酸アンモニウム/酢酸系緩衝液によって分離された、標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。分離条件は、実施例4に記載されている。
図6】本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、HPCMを伴う高シアリル化グリカンを分解するためには一定のイオン強度分離が有利であることを示す。(A)は、Waters ACQUITY UPLC CSH C18 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラム及びギ酸アンモニウム/酢酸系緩衝液の多様な組成を含有する溶離液移動相によって分離された、標識されたフェチュイングリカンの蛍光クロマトグラムである。「MeCN」は、アセトニトリルの略である。分離条件は、実施例5に記載されている。
図7】本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、HPCMカラムクロマトグラフィを用いて最適化された分離を示す。(A)は、Waters ACQUITY UPLC CSH C18 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラムで取得された標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。(B)は、同カラムで取得された標識されたフェチュイングリカンの蛍光クロマトグラムである。MSベースで特定され、分離条件は、実施例6に記載されている。
図8】本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、強塩基性対弱塩基性のイオン性修飾剤を有する荷電表面逆相材料は、異なる移動相最適化を必要とすることを示す。DEAP HPCM 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラムによって得られるような標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、分離ごとに移動相A及びBが定義される。「MeCN」は、アセトニトリルを示し、分離条件は、実施形態7に記載されている。
図9】勾配条件を利用した、本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。DEAP HPCM 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラムによって得られるような標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、分離ごとに勾配条件が定義される。分離条件は、実施例8に記載されている。
図10】ジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用した本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。(A)は、DEAP HPCM 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラムで得られるような標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。(B)は、同カラムで得られるような標識されたフェチュイングリカンの蛍光クロマトグラムである。MSベースで特定され、アスタリスクは、非グリカンピークをマークする。分離条件は、実施例9に記載されている。
図11】ジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用した本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムであり、0~10mMのギ酸アンモニウム/ギ酸緩衝液のイオン強度に初期条件を調節することによって標識されたグリカンの改善された分離を示す。DEAP HPCM 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラム及び初期条件に対し様々なイオン強度:0.5~10mMギ酸アンモニウム/ギ酸緩衝液で取得された、標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラムである。勾配条件が提供され、「MeCN」は、アセトニトリルを示す。分離条件は、実施例10に記載されている。
図12】高感度ESI+MS検出に対する支持を示す改良された分離を示すジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用して、本発明に従って標識されたグリカンの蛍光及びベースピーク強度(BPI)クロマトグラフである。(A)は、DEAP HPCM 130Å 1.7μm 2.1×150mmカラム及び最適な方法条件で取得した標識されたウシフェチュイングリカンの蛍光及びベースピーク強度(BPI)クロマトグラムである。(B)は、マークされた保持時間において溶出した標識されたグリカンに対応する高信号対雑音、低バックグラウンドESI+質量スペクトルである。分離条件は、実施例9に記載されている。
図13】多様な両親媒性強塩基性部分で標識された放出されたフェチュイングリカンの改善された分離を示す、ジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用する本発明に従って標識されたグリカンの蛍光クロマトグラフである。(A)は、DEAP HPCM 130Å 1.7μm(位相1A)2.1×150mmカラムで取得されたRMFS標識されたフェチュインN-グリカンの蛍光クロマトグラムである。(B)は、同カラムで取得されたプロカイン標識されたフェチュインN-グリカンの蛍光クロマトグラムである。(C)は、同カラムで取得されたプロカインアミド標識されたフェチュインN-グリカンの蛍光クロマトグラムである。分離条件は、実施例11に記載されている。
図14】市販のm混合モードカラムと比較して、ジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用する、本発明に従って標識されたhIgGグリカンの蛍光クロマトグラフである。分離条件は、実施例12に記載されている。
図15】市販のm混合モードカラムと比較して、ジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾HPCMクロマトグラフィカラムを利用する、本発明により標識されたフェチュインN-グリカンの蛍光クロマトグラフである。分離条件は、実施例12に記載されている。
図16】(A)表面に帯電した逆相材料(DEAP HPCM、位相1A/1B)対(B)米国特許出願公開第20140178912号の位相21の図である。中性リガンドに対する、イオン化可能なリガンドの比が概略的に近似されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、例えば、クロマトグラフ分離のための新規なクロマトグラフィ材料、本材料調製のためのプロセス、クロマトグラフィ材料を含む分離装置、及び装置の使用方法を提供する。本発明は、下記に記述する定義を参照することにより、より完全に説明されることとなる。
【0039】
定義
「高純度」又は「高純度クロマトグラフィ材料」は、高純度の前駆体から調製される材料を含む。特定の態様では、高純度材料により、金属汚染が低減し、かつ/又は表面シラノールの酸度及び表面の異質性を含むが、これらに限定されないクロマトグラフィ特性を低下させない。
【0040】
「クロマトグラフィ表面」は、試料のクロマトグラフ分離をもたらす表面を含む。特定の態様において、クロマトグラフィ表面は、多孔質である。いくつかの態様では、クロマトグラフィ表面は、粒子、表面多孔性材料又はモノリスの表面であってもよい。特定の態様では、クロマトグラフィ表面は、クロマトグラフ分離の間に組み合わせて使用される1つ以上の粒子、表面多孔性材料又はモノリスの表面から構成される。ある他の態様では、クロマトグラフィ表面は、非多孔質である。
【0041】
「イオン性修飾剤」は、電子供与性基又は電子求引性基を担う官能基を含む。特定の態様では、イオン性修飾剤は、1つ以上のカルボン酸基、アミノ基、イミド基、アミド基、ピリジル基、イミダゾリル基、ウレイド基、チオニル-ウレイド基、アミジノ基、グアニジン基、アミノシラン基、又はこれらの組み合わせを含む。他の態様において、イオン性修飾剤は、遊離孤立電子対を有する窒素又はリン原子を保有する基を含む。特定の態様において、イオン性修飾剤は、材料表面に共有結合し、イオン性基を有する。いくつかの例では、イオン性修飾剤は、表面ハイブリッド基の化学修飾によってクロマトグラフィ材料に付着する。
【0042】
「疎水性表面基」は、疎水性を示すクロマトグラフィ表面上の表面基を含む。特定の態様において、疎水基は、C4~C18結合相などの炭素結合相とすることができる。他の態様では、疎水性表面基は、疎水性表面の外側部分が疎水性を維持するように、内部極性基を含むことができる。いくつかの例では、イオン性修飾剤は、表面ハイブリッド基の化学修飾によってクロマトグラフィ材料に付着する。他の例では、疎水基は、C4~C30、内部極性、キラル、フェニルアルキル又はペンタフルオロフェニル結合、及びコーティングであることができる。
【0043】
「クロマトグラフィックコア」は、限定するものではないが、材料の内部部分を形成する粒子、モノリス又は他の適切な構造の形態の、本明細書において定義されるようなシリカ又はハイブリッド材料のような有機物質を含むクロマトグラフィ材料を含む。特定の態様では、クロマトグラフィックコアの表面は、本明細書において定義されるようにクロマトグラフィ表面を表し、又は本明細書に定義されるように、クロマトグラフィ表面によって包まれた材料を表す。クロマトグラフィ表面材料は、離散的な遷移又は別個の遷移が識別可能であるようにクロマトグラフィックコアに配置若しくは結合されてもよく、又はアニールされてもよい。あるいは、クロマトグラフィ表面材料は、クロマトグラフィックコアの表面と混ざり合うようにクロマトグラフィックコアに結合されてもよく、結果として、材料のグラデーションが形成され、離散的な内部コア表面が生じない。特定の実施形態では、クロマトグラフィ表面材料は、クロマトグラフィックコアの材料と同一であるか又は異なってもよく、孔体積、表面積、平均孔径、炭素含量又は加水分解性pH安定性を含むがこれらに限定されないクロマトグラフィックコアと異なる物理的又は物理化学的特性を示してもよい。
【0044】
「ハイブリッド無機/有機物質」を含む「ハイブリッド」は、無機ベース構造を含み、有機官能性は、内部又は「骨格」無機構造並びにハイブリッド材料表面の両方に不可欠である。ハイブリッド材料の無機部分は、例えば、アルミナ、シリカ、チタン、セリウム、若しくはジルコニウム又はこれらの酸化物、あるいはセラミック材料であってもよい。「ハイブリッド」は、無機ベース構造を含み、有機官能性は、内部又は「骨格」無機構造並びにハイブリッド材料表面の両方に不可欠である。上記のように、例示的なハイブリッド材料は、米国特許第4,017,528号、同第6,528,167号、同第6,686,035号及び同第7,175,913号において示されている。
【0045】
「脂環基」という用語は、炭素原子数3以上の閉鎖環状構造を含む。脂環基としては、飽和環状炭化水素であるシクロパラフィン類又はナフテン類、2つ以上の二重結合で不飽和化された環状オレフィン、及び三重結合を有するシクロアセチレン類が挙げられる。脂環基は、芳香族基を含まない。シクロパラフィン類の例としては、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロペンタンが含まれる。シクロオレフィンの例として、シクロペンタジエン及びシクロオクタテトラエンが含まれる。脂環基はまた、縮合環状構造、アルキル置換脂環基等の置換脂環基を含む。脂環式化合物の場合、そのような置換基の例は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、-CF3、-CN等を更に含むことができる。
【0046】
「脂肪族基」という用語は、典型的には、1~22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖を特徴とする有機化合物を含む。脂肪族基は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。複雑な構造では、鎖は分岐又は架橋することができる。アルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基を含む1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が挙げられる。このような炭化水素部分は、1つ以上の炭素において、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルチオ、又はニトロ基で置換されてもよい。炭素数が特定されない限り、本明細書において使用される「低級脂肪族」は、上記で定義されるように脂肪族基(例えば、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル)を意味するが、1~6個の炭素原子を有する。かかる低級脂肪族基、例えば、低級アルキル基の代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-クロロプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、2-アミノブチル、イソブチル、tert-ブチル、3-チオペンチル等である。本明細書で使用されるように、「ニトロ」という用語は-NO2を意味し、「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br又は-Iを指し、「チオール」という用語は、SHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は、-OHを意味する。これにより、本明細書で使用する「アルキルアミノ」という用語は、上記に定義されるように、アルキル基を意味し、アルキル基にアミノ基が付着している。好適なアルキルアミノ基は、1~12個の炭素原子を有する基であり、好ましくは、炭素数1~約6個の炭素原子を有する。「アルキルチオ」という用語は、上記で定義されるように、スルフヒドリル基が結合しているアルキル基を意味する。好適なアルキルチオ基は、1~12個の炭素原子を有する基であり、好ましくは、炭素数1~約6個の炭素原子を有する。本明細書で使用されるように、「アルキルカルボキシル」という用語は、上記で定義されるように、カルボキシル基が結合したアルキル基を意味する。本明細書で使用されるように、「アルコキシ」という用語は、上記で定義されるように、酸素原子が結合したアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、1~12個の炭素原子、好ましくは、1~約6個の炭素原子、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ等を有する基が挙げられる。「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、アルキルに類似する不飽和脂肪族基を意味するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む。好適なアルケニル基及びアルキニル基は、2~約12個の炭素原子、好ましくは1~約6個の炭素原子を有する基を含む。
【0047】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、シクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。特定の実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格において例えば、直鎖に対してC1~C30又は分岐鎖に対してC3~C30の、30個以下の炭素原子を有する。特定の実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、例えば、直鎖に対してC1~C20又は分岐鎖に対してC3~C20の、その骨格において20個以下、より好ましくは18個未満の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、環状構造において4~10個の炭素原子、及びより好ましくは環状構造において4~7個の炭素原子を有する。「低級アルキル」という用語は、鎖状において炭素数1~6を有するアルキル基及び環状構造において炭素数3~6を有するシクロアルキルを意味する。
【0048】
また、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、(「低級アルキル」を含む)「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」を含み、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分のことを意味する。このような置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシアリールオキシカルボニルオキシカルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナート、ホスヒナート、シアノ、(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリルアミノ、ジアリルアミノ及びアルキルアリルアミノを含む)アミノ、(アルキルカルボニルアミノ、アリルカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)アシルアミノ、アミジノ、イミノ、スルヒドリル、アルキルチオ、アリルチオ、チオカルボキシレート、硫酸、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジドヘテロシクリル、アラルキル又は芳香族又はヘテロ芳香族部分を含むことができる。炭化水素鎖において置換された部分は、適切である場合、それ自体を置換することができることが当業者によって理解されるであろう。シクロアルキルは、例えば、上記のような置換基で更に置換することができる。「アラルキル」部分は、例えば1~3個の分離又は縮合環及び6~約18個の炭素環原子、例えば、フェニルメチル(ベンジル)を有するアリールで置換されたアルキルである。
【0049】
本明細書で使用される「アミノ」という用語は、式-NRaRbの非置換又は置換部分のことを指し、Ra及びRbは、それぞれ水素、アルキル、アリール、又はヘテロシクリルであり、あるいは、Ra及びRbは、それぞれ窒素原子と結合し、3~8個の原子を有する環状部分を形成する。これにより、「アミノ」という用語は、特に明記しない限り、ピペリジニル基又はピロリジニル基などの環状アミノ部分を含む。「アミノ置換アミノ基」とは、Ra及びRbのうちの少なくとも1つが更にアミノ基で置換されるアミノ基のことを意味する。
【0050】
「芳香族基」という用語は、1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素を含む。芳香族基としては、5及び6員環の単環基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン等の0~4個のへテロ原子が挙げられ得る。芳香環は、1つ以上の環位置において、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、-CF3、又は-CN等で置換され得る。
【0051】
「アリール」という用語は、0~4個のヘテロ原子、例えば、非置換又は置換ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等を含み得る5及び6員環の単環芳香族基を含む。アリール基はまた、ナフチル、キノリル、インドリル等の多環縮合芳香族基等を含む。芳香環は、例えば、アルキル基について上述したとおり、1つ以上の環の位置においてかかる置換基で置換されてもよい。好適なアリール基としては、非置換及び置換フェニル基が含まれる。本明細書で使用される「アリールオキシ」という用語は、上記で定義されるように、酸素原子が結合したアリール基を意味する。本明細書において使用される「アラルコキシ」という用語は、上記で定義されるように、酸素原子が結合したアラルキル基を意味する。好適なアラルコキシ基は、1~3個の別個の又は縮合した環及び6~約18個の炭素環原子、例えばO-ベンジルを有する。
【0052】
「セラミック前駆体」という用語は、セラミック材料の形成において生じる任意の化合物を含むことを意図している。
【0053】
「キラル部分」という用語は、キラル又は立体選択的合成を可能にする任意の官能基を含むことを意図している。キラル部分は、少なくとも1つのキラル中心、天然及び非天然アミノ酸、ペプチド及びタンパク質、誘導体化セルロース、大環状抗生物質、シクロデキストリン、クラウンエーテル及び金属錯体を有する置換基を含むが、これらに限定されない。
【0054】
「内部極性官能基」という用語は、シリカ表面上の未反応シラノール基の遮蔽による塩基性試料との相互作用が減少するように、一体の極性部分を提供する官能基である。内部極性官能基は、これに限定されないが、炭酸、アミド、尿素、エーテル、チオエーテル、スルフィニル、スルホキシド、スルホニル、チオ尿素、チオカーボネート、チオカルバメート、エチレングリコール、複素環式、及びトリアゾール官能基、又は米国特許第5,374,755号に開示されるようなカルバメート官能基及びキラル部分などが含まれる。
【0055】
「クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状」という言葉は、現在開示されている材料の孔構成の幾何形状を含み、例えば、当該分野における他のクロマトグラフィ媒体と区別して、材料のクロマトグラフ分離能力を強化することが見出されている。例えば、幾何形状を形成、選択又は構築することができ、種々の特性及び/又は因子を使用して、例えば、当該技術分野において既知の又は従来使用された幾何形状と比較して、材料のクロマトグラフ分離能力が「強化」されたか否かを判断できる。これらの因子の例として、(例えば、帯域拡張の低減及び良好なピーク形状によって証明されるように)高い分離効率性、より長いカラム寿命及び高い物質移動特性が挙げられる。これらの特性は、当該技術分野において認識された手法を使用して測定又は観察することができる。例えば、本多孔性無機/有機ハイブリッド材料のクロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状は、(例えば、物質移動速度を低下させ、効率を低下させるため両者とも所望されない)「インクボトル形」又は「シェル形状の」細孔幾何形状又は形態の不在により従来技術の材料と区別される。
【0056】
クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状は、微小孔の小集団のみを含むハイブリッド材料において見出される。約34Å未満の直径の全細孔が材料の比表面積に対して約110m/g未満で占める場合、ハイブリッド材料において微小孔の小集団が得られる。このような低微小孔表面積(MSA)を伴うハイブリッド材料により、(例えば、帯域拡張の低減及び良好なピーク形状によって証明されるように)高分離効率性及び良好な物質移動特性を含むクロマトグラフィ強化が得られる。細孔表面積(MSA)は、BJH法を用いた等温線の吸着脚(adsorption leg)からの多点窒素吸着分析によって決定される34Å以下の直径を有する細孔における表面積として定義される。本明細書で使用される略語「MSA」及び「MPA」は、「細孔表面積」を示すために互換的に使用される。
【0057】
「官能化基」という用語は、クロマトグラフィ固定相に特定のクロマトグラフィ機能性を付与する有機官能基を含む。
【0058】
「複素環基」という用語は、環内の原子のうちの1つ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄又は酸素である閉環状構造を含む。複素環基は、飽和又は不飽和であり、ピロール及びフランなどの複素環基は、芳香族特性を有し得る。これらの複素環基は、キノリン及びイソキノリンなどの縮合環状構造を含む。複素環基の他の例は、ピリジン及びプリンを含む。複素環基は、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、-CF3、-CNなどの1種以上の構成原子で置換することもできる。好適なヘテロ芳香族基及びヘテロ脂環基は、一般に、1つの環あたり3~約8員及び1つ以上のN、O又はS原子を有する1~約3個の分離又は縮合環を有し、例えば、クマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラヌル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルフォリノ及びピロリジニルがある。
【0059】
「金属酸化物前駆体」という用語は、金属を含有し、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウムのような金属酸化物の形成をもたらす、任意の化合物を含むことを意図する。
【0060】
「モノリス」という用語は、個々の粒子の形状及び形態が維持されているベッド構造に充填された個々の粒子の集合を含むことを意図している。粒子は、粒子を共に結合する材料を用いて有利に充填される。先行技術においてよく知られている結合材料のいずれかは、例えば、ジビニルベンジン、メタクリレート、ウレタン、アルケン、アルキン、アミン、アミド、イソシアネート、又はエポキシ基などの線状又は架橋ポリマー、並びにオルガノアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、ポリオルガノアルコキシシラン、ポリエトキシシラン、及びセラミック前駆体の縮合反応として使用できる。特定の実施形態では、「モノリス」という用語はまた、米国特許第7,250,214号において詳述されたハイブリッドモノリスのような他の方法によって製造されたハイブリッドモノリス、0~99モル%シリカ(例えば、SiO)を含有する1つ以上のモノマーの凝結から調製されたハイブリッドモノリス、凝結した多孔性無機/有機粒子から調製されたハイブリッドモノリス、クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状を有するハイブリッドモノリス、クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状を有さないハイブリッドモノリス規則的な細孔構造を有するハイブリッドモノリス、非周期的な細孔構造を有するハイブリッドモノリス、非晶質又は無定形の分子秩序を有するハイブリッドモノリス、結晶性ドメイン又は領域を有するハイブリッドモノリス、多様な異なるマクロ孔及びメソ孔特性を伴うハイブリッドモノリス、並びに多様な異なるアスペクト比におけるハイブリッドモノリスを含む。特定の実施形態において、「モノリス」という用語はまた、G.Guiochon/J.Chromatogr.A 1168(2007)101~168において記載されたような無機モノリスも含む。
【0061】
「ナノ粒子」という用語は、結晶性又は非結晶性である、約100nm未満の少なくとも1辺、例えば、約100nm(0.1mm)未満の直径又は粒子の厚さを有する粉末/ナノ粉末の微視的粒子/粒子又は微視的部材である。ナノ粒子は、とりわけ、例えば、より大きな強度、硬度、延性、焼結性、及びより大きな反応性を含む、従来のバルク材料の特性とは異なり、従来のバルク材料より優れている場合が多い。コロイド沈殿、機械的粉砕、気相核生成及び成長を含む多くのプロセスによって(主にナノサイズの粉末として)合成された少量のナノ材料の特性を判定するために、相当な科学的研究が引き続き費やされている。広範なレビューによりナノ相材料の最近の進展が記録されており、これを参照することにより本明細書に組み込まれている。Gleiter,H.(1989)「Nano-crystalline materials,」Prog.Mater.Sci.33:223~315 and Siegel,R.W.(1993)「Synthesis and properties of nano-phase materials,」Mater.Sci.Eng.A168:189~197。特定の実施形態において、ナノ粒子は下記の酸化物又は窒化物:炭化ケイ素、アルミニウム、ダイヤモンド、セリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ジルコニウム、バリウム、セリウム、コバルト、銅、ユーロピウム、ガドリニウム、鉄、ニッケル、サマリウム、シリコン、銀、チタン、亜鉛、ホウ素、及びこれらの混合物を含む。特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、ダイヤモンド、酸化ジルコニウム(非晶質、単斜晶、正方晶、及び立方形態)、酸化チタン(非晶質、アナターゼ、ブルッカイト、及びルチル形態)、アルミニウム(アモルファス、アルファ、及びγ形態)、及び窒化ホウ素(立方形態)から選択される。特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、ナノダイヤモンド、炭化ケイ素、二酸化チタン(アナターゼ形態)、立方晶窒化ホウ素、及びこれらのいかなる組み合わせ選択される。また、特定の実施形態において、ナノ粒子は、結晶性又は非晶性であってもよい。特定の実施形態では、ナノ粒子は、直径100mm以下、例えば、直径50mm以下、例えば、直径20mm以下である。
【0062】
更に、本発明の複合体中に分散していることを特徴とするナノ粒子は、外因的に付加されたナノ粒子を記述することが意図されていることを理解されたい。これは、例えば、粒子などの巨大分子構造がこれらの内因的に生成された凝集体を含むことができる、in situで形成することができる、推定ナノ粒子との有意な類似性を含むナノ粒子又は形成とは対照的である。
【0063】
「実質的な乱れ」のという用語は、X線粉末回折分析に基づく細孔順序の欠落を意味する。具体的に、「実質的に不規則的な」は、x線回折パターンにおける少なくとも1nmのd値(又はd-間隔)に相当する回折角におけるピークの欠落によって規定される。
【0064】
「表面修飾剤」は、(典型的に)クロマトグラフィ固定相に特定のクロマトグラフィ機能性を付与する有機官能基を含む。多孔性無機/有機ハイブリッド材料は、表面修飾剤によって追加的に置換又は誘導体化されてもよい、有機基及びシラノール基の両方を保有する。
【0065】
「表面修飾された」という言葉は、表面修飾剤で追加的に置換又は誘導体化され得る有機基及びシラノール基の両方を保有する、本発明の複合材料を説明するために本明細書において使用されている。「表面修飾剤」は、(典型的に)クロマトグラフィ固定相に特定のクロマトグラフィ機能性を付与する有機官能基を含む。本明細書に開示されるような表面修飾剤は、例えば、誘導体化又はコーティング及びその後の架橋によってベース材料に結合され、表面修飾剤の化学的特性をベース材料に付与する。一実施形態では、ハイブリッド材料の有機基は、反応して、表面修飾剤と有機共有結合を形成する。修飾剤は、求核性、求電子性、環化付加、フリーラジカル、カルベン、ニトレン及びカルボカチオン反応を含むが、これらに限定されない有機化学及び高分子化学において周知の多数の機構を介して材料の有機基と有機共有結合を形成することができる。有機共有結合は、限定するものではないが、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄及びハロゲンを含む有機化学の共通元素間の共有結合の形成を含んで定義される。更に、炭素-ケイ素結合及び炭素-酸素-ケイ素結合は、有機共有結合として定義され、一方、ケイ素-酸素-ケイ素結合は、有機共有結合として定義されていない。多様な合成変換は、文献において周知であり、例えば、March,J.Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,Wiley,New York,1985を参照されたい。
【0066】
「母試料」という用語は、血液、尿、脳脊髄液、滑液、痰、精液、唾液、涙液、胃液並びにこれらの抽出物及び/又は希釈物/溶液からなる群から選択される、生物学的流体に由来する試料を含むが、これらに限定されない1つ以上のグリカンを含む任意の試料を含み、これは、本発明の材料及び方法により単離、分離、精製又は検出するための試料を得る前に、クロマトグラフィ又は他の分離手段にかけられる。
【0067】
「クロマトグラフ分離装置」という用語は、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、マイクロ流体分離装置、試料クリーンアップ装置、固体支持体、固相抽出装置、マイクロチップ分離装置、マイクロタイタープレートを含むがこれらに限定されないクロマトグラフ分離を行うことができる任意の装置を含む。
【0068】
「二次クロマトグラフ分離手段」という用語は、クロマトグラフ分離装置及びクロマトグラフ分離装置が含むクロマトグラフィ材料を含む。特定の実施形態において、二次クロマトグラフ分離手段は、本発明の方法において利用されるクロマトグラフ分離装置とは別の又は追加的なクロマトグラフ分離装置である。他の実施形態では、二次クロマトグラフ分離手段は、本発明の方法において利用される同じクロマトグラフ分離装置によって収容される別の又は追加的なクロマトグラフィ材料である。
【0069】
クロマトグラフィ表面/固定相材料
本発明は、クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料(HPCM)を提供し、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含む。ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、四級アンモニウムイオン部分を含まない。
【0070】
特定の態様では、HPCMは、クロマトグラフィックコア材料を更に含むことができる。いくつかの態様において、クロマトグラフィックコアは、シリカ材料、ハイブリッド無機/有機物質、表面多孔性材料、又は表面的に多孔性粒子である。クロマトグラフィックコア材料は、離散粒子形態であってもよく、あるいはモノリスであってもよい。クロマトグラフィックコア材料は、任意の多孔性材料であってよく、市販で入手可能であってもよく、既知の方法、例えば、米国特許第4,017,528号、同第6,528,167号、同第6,686,035号及び同第7,175,913号において説明される方法で生成することができる。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィックコア材料は、非多孔性コアであってもよい。
【0071】
クロマトグラフィ表面材料及び(存在する場合)クロマトグラフィックコア材料の組成は、クロマトグラフの選択性の向上、カラム化学安定性の向上、カラム効率の向上、及び/又は機械的強度の向上を提供するように、当業者によって変更され得る。同様に、周囲材料の組成は、親水/親油性バランス(HLB)、表面電荷(例えば、等電位点又はシラノールpKa)及び/又は増強されたクロマトグラフ分離のための表面機能性の変化を提供する。また、いくつかの実施形態において、クロマトグラフィ材料の組成はまた、更なる表面修飾のために利用可能な表面機能性を提供し得る。
【0072】
本発明のHPCMのイオン性修飾剤及び疎水性表面基は、既知の方法を使用して調製できる。イオン性修飾剤のうちのいくつかは、市販されている。例えば、アミノアルキルトリアルコキシシラン、メチルアミノアルキルトリアルコキシシラン、及びピリジルアルキルトリアルコキシシランを有するシランが市販されている。クロロプロピルアルキルトリクロロシラン及びクロロプロピルアルキルトリアルコキシシランなどの他のシラン類も市販されている。これらは、イミダゾールと結合及び反応して、イミダゾリルアルキルシリル表面種を生成するか、又はピリジンと結合及び反応して、ピリジルアルキルシリル表面種を生成することができる。スルホプロピルトリシラノール、カルボキシエチルシラントリオール、2-(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、三酢酸、(2-ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、及び2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシランを含むが、これらに限定されない他の酸性修飾剤も市販されている。
【0073】
グリニャール反応及びヒドロシリル化を含む一般的な合成プロトコルを使用して、これらのタイプのシランを合成することは、当業者に既知である。生成物は、クロマトグラフィ、再結晶又は蒸留によって精製することができる。
【0074】
イソシアネート類等の他の添加物もまた市販されており、又は当業者によって合成されることができる。一般的なイソシアネート形成プロトコルは、一級アミンとホスゲン又はトリホスゲンとして知られる試薬との反応である。
【0075】
いくつかの実施形態では、イオン性修飾剤は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、イミド基、アミド基、ピリジル基、イミダゾリル基、ウレイド基、チオニル-ウレイド基、アミジノ基、グアニジン基、又はアミノシラン基を含む。
【0076】
他の態様では、イオン性修飾剤は、式(I)
【0077】
【化6】
式(II):
【0078】
【化7】
式(III):
【0079】
【化8】
の群から選択され得る。
式中、
mは、1~8の整数であり、
vは、0又は1であり、
vが0の場合、m’は0であり、
vが1の場合、m’は1~8の整数であり、
Zは、(限定されないが)
【0080】
【化9】
-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、イミダゾール炭酸塩、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アルケン、アジド、-Br、-Cl、又は-Iを含む、化学的反応性基を表し、
Yは、内部極性官能基であり、
の各存在は、-H、-OH、-OR、ジアルキルアミン、トリフレート、Br、Cl、I、ビニル、アルケン、又は-(CHm”Qを含むがこれらに限定されないシリコン上の化学的反応性基を独立して示し、
Qの各存在は、-OH、-OR、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、イソシアネート、塩化アシル、トリフレート、イソシアネート、チオシアネート、イミダゾール炭酸塩、NHS-エステル、カルボン酸、エステル、エポキシド、アルキン、アジド、-Br、-Cl、又は-Iであり、
m”は、1~8の整数であり、
pは、1~3の整数であり、
の各存在は、F、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルケニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、フルオロアルキル、又はフルオロアリールを独立して表し、
、R、R、及びRの各存在は、水素、C~C18アルキル、C~C18のアルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリール、-Z、又は式-Si(R’)bR”又は-C(R’)bR”を独立して表し、
a及びbはそれぞれ、a+b=3の場合、0~3の整数を表し、
R’は、C~C直鎖状、環状又は分岐状のアルキル基を表し、
R”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シアノ、アミノ、ジオール、ニトロ、エステル、カチオン又はアニオン交換基、内部極性官能基を含むアルキル又はアリール基、及びキラル部分からなる群から選択される官能化基である。
【0081】
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
は、水素、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールを表し、
の各存在は、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アルキニル、C~C18シクロアルキル、C~C18ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~C18アリールオキシ、又はC~C18ヘテロアリールをそれぞれ表し、
Hetは、少なくとも1つの窒素分子を含む複素環系又はヘテロアリール環系を表し、
Aは、酸性イオン性修飾剤部分又は二重電荷イオン性修飾剤部分を表す。
【0082】
更に他の実施形態において、イオン性修飾剤は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(2-(トリクロロシリル)エチル)ピリジン、2-(2-(トリメトキシ)エチル)ピリジン、2-(2-(トリエトキシ)エチル)ピリジン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、
2-(4-ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリメトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリエトキシシラン、イミダゾリルプロピルトリクロロシラン、スルホプロピルトリシラノール、カルボキシエチルシラントリオール、2-(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン、2-(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸、(2-ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3-トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、ビス(トリクロロシリルエチル)フェニルスルホニルクロリド、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシシラン、2-(クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(エトキシスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、スルホン酸フェネチルトリシラノール、(トリエトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリメトキシシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(トリクロロシリルエチル)フェニルホスホン酸ジエチルエステル、ホスホン酸フェネチルトリシラノール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-(ヒドロキシエチル)-N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、又はN,N-ジメチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランである。
【0083】
特定の実施形態では、イオン性修飾剤が式(III)である場合、酸性イオン性修飾剤は、トリシラノール、トリアルコキシシラン又はトリクロロシランの保護された又は脱保護された形態、又は、スルホン酸アルキルシラン、スルホン酸フェニルアルキルシラン、スルホン酸ベンジルアルキルシラン、スルホン酸フェニルシラン、スルホン酸ベンジルシラン、カルボン酸アルキルシラン、カルボン酸フェニルアルキルシラン、カルボン酸ベンジルアルキルシラン、カルボン酸フェニルシラン、カルボン酸ベンジルシラン、リン酸アルキルシラン、ホスホン酸フェニルアルキルシラン、ホスホン酸ベンジルアルキルシラン、ホスホン酸フェニルシラン、ホスホン酸ベンジルシラン、ボロン酸アルキルシラン、ボロン酸フェニルアルキルシラン、ボロン酸ベンジルアルキルシラン、ボロン酸フェニルシラン、ボロン酸ベンジルシランの塩類である。
【0084】
特定の実施形態において、イオン性修飾剤が式(III)のものである場合、酸性イオン性修飾剤は、スルホン酸アルキルイソシアネート類、スルホン酸フェニルアルキルイソシアネート類、スルホン酸ベンジルアルキルイソシアネート類、スルホン酸フェニルイソシアネート類、スルホン酸ベンジルイソシアネート類、カルボン酸アルキルイソシアネート類、カルボン酸フェニルアルキルイソシアネート類、カルボン酸ベンジルアルキルイソシアネート類、カルボン酸フェニルイソシアネート類、カルボン酸ベンジルイソシアネート類、ホスホン酸アルキルイソシアネート類、ホスホン酸フェニルアルキルイソシアネート類、ホスホン酸ベンジルアルキルイソシアネート類、ホスホン酸フェニルイソシアネート類、ホスホン酸ベンジルイソシアネート類、ボロン酸アルキルイソシアネート類、ボロン酸フェニルアルキルイソシアネート類、又はボロン酸ベンジルアルキルイソシアネート類の保護又は脱保護バージョン又は塩類である。
【0085】
特定の実施形態では、イオン性修飾剤試薬が式(III)から選択される場合、Aは、二重電荷イオン性修飾剤部分を表す。理論に限定されるものではないが、二重電荷イオン性修飾剤部分は、反対の電荷を表示することができる2つのサブグループを有する。いくつかの条件下で、二重電荷イオン性修飾剤部分は、双性イオン及び両性イオンと同様に作用して、正及び負電荷の両方を表示し、ゼロ正味電荷を維持することができる。他の条件下では、二重電荷イオン性修飾剤部分は、イオン化された1つの基のみを有し、正味の正電荷又は負電荷を表示することができる。二重電荷イオン性修飾剤部分は、限定されないが、正の電荷(一般的に、窒素又は酸素原子)及びカルボン酸、スルホン酸、リン酸又はボロン酸を含む酸基を通じて負の電荷を示すことができるアルキル、分岐アルキル、アリール、環状、多環芳香族、多環式、複素環及び多複素環基を含む。あるいは、いくつかの金属を含有する複合体は、正電荷及び負電荷の両方を示すことができる。二重電荷イオン性修飾剤部分は、これに限定されないが、双性イオン、両性電解質、アミノ酸基、アミノアルキルスルホン酸基、アミノアルキルカルボン酸基、モノ及びジメチルアミノアルキルスルホン酸基、モノ及びジメチルアミノアルキルカルボン酸基、ピリジニウムアルキルスルホン酸基、ピリジニウムアルキルカルボン酸基を含み得る。あるいは、二重電荷イオン性修飾剤部分は、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸基、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸基、4-(2-ヒドロキシエチル)-1ーピペラジンエタンスルホン酸)基、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)基、N-シクロへキシル-3-アミノプロパンスルホン酸基、N-シクロへキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸基、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、6-メチル-9,10-ジデヒドロ-エルゴリン-8-カルボン酸基、フェノールスルホンフタレイン、ベタイン基、クイノイド基、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン基、及びN-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン基であってもよい。
【0086】
本発明の別の態様は、HPCMの弱塩基性のイオン性修飾剤(pKa<7)が強塩基性のイオン性修飾剤(pKa>7)で置き換えられた荷電表面逆相材料の使用を必要とする。これにより、イオン性修飾剤の被覆率を変化させることなく、物理化学的特性の異なる荷電表面逆相材料を得ることができる。
【0087】
このタイプの例示的な固定相は、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル、又はジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾剤、C18結合、及び後続のエンドキャッピング(実施例1、位相1A)を利用する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明のHPCM中の疎水性表面基:イオン性修飾剤の比は、約4:1~約150:1であり、約20:1~約100:1、又は約25:1~約100:1である。
【0089】
他の実施形態において、本発明のHPCMにおけるイオン性修飾剤の濃度は、約0.5μmol/m未満、約0.4μmol/m未満、約0.3μmol/m未満、約0.01μmol/m~約0.5μmol/m、約0.1μmol/m~約0.4μmol/m、又は約0.2μmol/m~約0.3μmol/mである。
【0090】
更に別の態様では、本発明のHPCMは、約2.5~約300の定量化された表面被覆率B/Aを有し、Aは、イオン性修飾剤を表し、Bは、疎水基を表す。特定の態様において、定量化された表面被覆率B/Aは約3~約200、約4~約35又は約5~約22である。
【0091】
別の態様において、本発明のHPCMの疎水性表面基は、C4~C18結合相である。特定の態様では、疎水性表面基は、C18結合相である。更に別の態様で、疎水性表面基は、内部極性結合相である。他の態様において、疎水性表面基は、芳香族、フェニルアルキル、フルオロ芳香族、フェニルヘキシル、又はペンタフルオロフェニルアルキル結合相である。別の態様では、疎水性表面基は、C~C30、内部極性、キラル、フェニルアルキル又はペンタフルオロフェニル結合又はコーティングである。
【0092】
特定の実施形態では、本発明のHPCMは、粒子、モノリス又は表面多孔性材料の形態であってもよい。特定の他の態様において、本発明のHPCMは、非多孔性材料である。
【0093】
特定の態様において、本発明のHPCMは、無機物質(例えば、シリカ)、ハイブリッド有機/無機物質、ハイブリッド表面層を有する無機物質(例えば、シリカ)、無機(例えば、シリカ)表面層、又は異なるハイブリッド表面層を有するハイブリッド粒子であってもよい。
【0094】
一実施形態では、本発明のHPCMは、クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状を有していない。別の実施形態では、本発明のHPCMは、クロマトグラフィ的に増強された細孔幾何形状を有する。
【0095】
特定の実施形態において、本発明のHPCMは、約25~1100m/g、約80~500m/g、又は約120~330m/gの表面積を有する。
【0096】
他の実施形態において、本発明のHPCMは、約0.15~1.7cm/g、又は約0.5~1.3cm/gの間隙体積を有する。
【0097】
特定の他の実施形態において、本発明のHPCMは、多孔性でない。
【0098】
更に他の実施形態において、本発明のHPCMは、約110m/g未満、約105m/g未満、約80m/g未満、又は約50m/g未満の細孔表面積を有する。
【0099】
更に別の実施形態において、本発明のHPCMは、約20~1500Å、約50~1000Å、約100~750Å、又は約150~500Åの平均孔直径を有する。
【0100】
別の実施形態において、本発明のHPCMは、約1~約14のpH、約10~約14のpH、又は約1~約5のpHで加水分解的に安定する。
【0101】
別の態様において、本発明は、本明細書において説明されるような材料を提供し、HPCM材料は、クロマトグラフィ表面内で分散されるナノ粒子又は2つ以上のナノ粒子の混合物を更に含む。
【0102】
特定の実施形態では、ナノ粒子は、ナノ複合物の20重量%未満、ナノ複合物の10重量%未満、又はナノ複合物の5重量%未満で存在する。
【0103】
他の実施形態では、ナノ粒子は、結晶性又は非晶性であり、炭化ケイ素、アルミニウム、ダイヤモンド、セリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ジルコニウム、バリウム、セリウム、コバルト、銅、ユーロピウム、ガドリニウム、鉄、ニッケル、サマリウム、シリコン、銀、チタン、亜鉛、ホウ素、これらの酸化物又はこれらの窒化物であってもよい。特定の実施形態では、ナノ粒子は、ナノダイヤモンド、炭化ケイ素、二酸化チタン及び立方晶系窒化ホウ素からなる群から選択される1つ以上の部分を含む物質である。
【0104】
他の実施形態において、ナノ粒子の直径は、200nm以下、100nm以下、50nm以下、又は20nm以下であってもよい。
【0105】
表面修飾
本発明のHPCM材料は、更に表面修飾されていてもよい。
【0106】
このため、一実施形態において、本明細書において記載されるような材料は、式Z(R’)bSi-R”を有する表面修飾剤で表面修飾されてもよく、Z=Cl、Br、I、C~Cアルコキシ、ジアルキルアミノ又はトリフルオロメタンスルホネートであり、a及びbは、a+b=3の場合、それぞれ0~3の整数であり、R’は、C~C直鎖状、環状又は分岐状アルキル基であり、R”は官能化基である。
【0107】
別の実施形態において、材料は、ポリマーによるコーティングによって表面修飾されている。
【0108】
特定の実施形態では、R’は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、イソペンチル、へキシル及びシクロへキシルからなる群から選択される。その他の実施形態において、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シアノ、アミノ、ジオール、ニトロ、エステル、カチオン又はアニオン交換基、内部極性官能基を含むアルキル又はアリール基、及びキラル部分からなる群から選択される。特定の実施形態において、R’は、芳香族部分、フェニルアルキル部分、フルオロ芳香族部分、フェニルへキシル部分、ペンタフルオロフェニルアルキル部分及びキラル部分からなる群から選択される。
【0109】
一実施形態において、R”は、C~C30アルキル基である。更なる実施形態では、R”は、キラル部分を含む。別の更なる実施形態では、R”は、C~C20アルキル基である。
【0110】
特定の実施形態では、表面修飾剤は、内部極性官能基を含む。
【0111】
特定の実施形態では、このような内部極性官能基は、カルボネート、アミド、尿素、エーテル、チオエーテル、スルフィニル、スルホキシド、スルホニル、チオ尿素、チオカーボネート、チオカルバメート、エチレングリコール、複素環又はトリアゾール官能基を含む。他の実施形態では、このような内部極性官能基は、米国特許第5,374,755号に開示されるようなカルバメート官能基、及びキラル部分を含む。これらの基は一般式の基を含み、
【0112】
【化10】
式中、l、m、o、r及びsは、0又は1であり、nは、0、1、2又は3であり、pは、0、1、2、3又は4であり、qは、0~19の整数であり、Rは、水素、アルキル、シアノ及びフェニルからなる群から選択され、Z、R’、a及びbは上記のように定義される。好ましくは、カルバメート官能基は、以下に示される一般的な構造を有する。
【0113】
【化11】
式中、Rは、例えば、シアノアルキル、t-ブチル、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル、又はベンジルであってもよい。有利には、Rは、オクチル、ドデシル、又はオクタデシルである。
【0114】
特定の実施形態において、表面修飾剤は、フェニルヘキシルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン及びオクタデシルジメチルクロロシランからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、表面修飾剤は、オクチルトリクロロシラン及びオクタデシルトリクロロシランからなる群から選択される。他の実施形態では、表面修飾剤は、イソシアネート又は1,1’-カルボニルジイミダゾール(特に、ハイブリッド基が(CHOH基を含む場合)からなる群から選択される。
【0115】
別の実施形態にでは、材料は、有機基及びシラノール基の修飾の組み合わせによって表面修飾されている。
【0116】
更に別の実施形態では、材料は、有機基修飾及びポリマーによるコーティングの組み合わせによって表面修飾されている。更なる実施形態では、有機基は、キラル部分を含む。
【0117】
更に別の実施形態では、材料は、シラノール基修飾及びポリマーによる被覆の組み合わせによって表面修飾されている。
【0118】
他の実施形態では、材料は、粒子の有機基と修飾試薬との間に有機共有結合を形成することにより表面修飾されている。
【0119】
更に他の実施形態では、材料は、有機基修飾、シラノール基修飾及びポリマーによるコーティングの組合せによって表面修飾されている。
【0120】
別の実施形態において、材料は、シラノール基修飾により表面修飾されている。
【0121】
特定の実施形態において、表面修飾層は多孔性又は非多孔性であってもよい。
【0122】
標識試薬及び部分
本発明の別の態様は、分析される試料に両親媒性強塩基性標識部分を提供することができる標識試薬の使用である。
【0123】
多様な標識試薬を用いて、分析及び分離のための所望の部分を提供してもよい。
【0124】
特定の実施形態において、本発明のグリカン標識試薬は、0~5、0~3、1~5、又は1~3のログP値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する。特定の実施形態において、本発明のグリカン標識試薬は、6よりも大きい、7よりも大きい、又は8よりも大きいpKa値を有する両親媒性強塩基性部分を提供する。
【0125】
特定の実施形態では、標識試薬は、構造式の部分を提供する、MS活性の、迅速蛍光タグ付け化合物:
【0126】
【化12】
又はこれらの塩又はその溶媒和物であって、式中、
X=C又はN、
R1は、O=C=N-
【0127】
【化13】
から独立して選択され、
R2は、-H、-C1~C8アルキル、-C1~C8シクロアルキル、ハロ、ジアルキルアミノ、CH2-ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル又はアルコキシから独立して選択されるが、Cl又はO=C=N-ではなく、
R3及びR4は、-H、アルキル、アルキルアミノ、アルキルスルホン酸、アルキルホスホン酸から独立して選択され、R3又はR4は、アルキルアミノ、アルキルホスホン酸又はアルキルスルホン酸であり、R3及びR4は、それらが結合している窒素と共に、任意選択的に置換された5~8員の飽和又は部分的に不飽和の環を形成し得るが、R1がO=C=N-である場合は形成しない。
【0128】
本明細書に記載の式の化合物は、光学中心を有していてもよく、したがって、異なるエナンチオマー形体及びジアステレオマー形体で生じていてもよい。本明細書に記載の発明は、それぞれの式のかかる化合物の全てのエナンチオマー、ジアステレオマー及び他の立体異性体、並びにラセミ化合物及びラセミ体混合物、並びにその立体異性体の他の混合物を含む。
【0129】
本明細書に記載の化合物はまた、他の化合物と水素結合を形成することもできる。水素結合は、水素が窒素又は酸素のような電気陰性原子に結合している極性分子間の電磁的引力相互作用である。水素結合は、強い双極子-双極子間引力を表す。これらの水素結合引力は、分子と分子との間(分子間)又は単一分子内の異なる部分(分子内)の中で生じ得る。水素原子が電気陰性原子と結合した場合、水素結合供与体であると考えられる。この電気陰性原子は、水素原子に結合しているか否かに関わらず、水素結合受容体として考えられる。
【0130】
本明細書に提示される化合物には、非対称中心が存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周りの置換基の構成に応じて、「R」又は「S」の記号が指定される。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー、及びエピマー形態並びにd-異性体及びl-異性体並びにこれらの混合物を含む、全ての立体化学異性体形態を包含することを理解されたい。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発物質から合成により調製することができ、又は、エナンチオマー生成物の混合物を調製し、次いで分離し、例えば、ジアステレオマー混合物へ変換し、次いで、分離又は再結晶、クロマトグラフ技法、キラルクロマトカラムでのエナンチオマーの直接分離又は当該技術分野で知られている他の任意の適切な方法により調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販で入手可能であるか、又は当該技術分野において既知の手法によって製造及び分解されることができる。更に、本発明の化合物は、幾何異性体として存在し得る。本発明は、シス、トランス、シン、アンチ、entgegen(E)、及びzusammen(Z)異性体の全て並びにこれらの適切な混合物を含む。更に、互変異性体としての化合物が存在してもよく、本発明により、全ての互変異性体異性体が提供される。更に、本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に受容可能な溶媒との溶媒和物形態だけではなく、非溶媒和状態で存在することができる。一般に、溶媒和された形態は、本発明の目的のために非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0131】
したがって、本明細書に記載の化合物はまた、塩又は溶媒和物、特に酸付加塩の形態であってもよい。有機酸又は無機酸のいずれか一方との反応により、本明細書に提示された化合物又は化合物のグループは、塩を形成することができる。例えば、酸塩基の中和では、酸と塩基とが反応して水と塩を形成する。基本的に、共に反応するには、酸と塩基との間でプロトンを移送させる必要がある。また、異なる酸は異なるイオンを生成することができる。例えば、アレニウス酸を水に解離する場合ヒドロニウムイオンを生成する。同様に、ブレンステッド・ローリー酸は、塩基に水素イオンを供与するプロトン供与体である。そのため、プロトン受容体及びプロトン供与体は、反応の基礎となり、共役塩基又は共役酸と呼ばれる場合がある。共役対とは、ペア間で同等のプロトンの損失/取得がある、共通の特徴を伴う酸及び塩基のことを意味する。例えば、H2Oが水素イオンを供与して共役塩基であるOH-を形成すると共に、NH3が水素イオンを得てNH4+を形成するため、NH4+は塩基NH3に対する共役酸である。一方、異なる理論下で、ルイス酸は電子対を受け取り、ルイス塩基は電子対受容体を供与する。したがって、プロトンH+は、電子対受容体であってもよい。また、化合物は、反応に依存してルイス酸とルイス塩基の両方であってもよい。例えば、ヨウ化メチルは、ルイス酸及びルイス塩基の両方として挙動することができ、メチル基は、塩を形成するために供与される。
【0132】
本明細書で与えられる化合物のうち任意の塩を形成するために採用することができる酸の例として、N-ヒドロキシスクシンイミド、塩酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硫化水素酸、チオ硫酸、シアン化水素酸、リン酸、亜リン酸、塩化水素酸、亜塩素酸、亜硝酸、硝酸、塩素酸、過塩素酸、亜硫酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸などの当業者によく知られているような無機酸及び有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。塩類はまた、化合物をアルカリ金属イオン又はアルカリ土類イオンと配位させることによって形成され得る。更に、他の酸類は、限定されないが、以下を含む塩類を生成することができる。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミドベンゼンカルボン酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファー酸(+)、カンファー-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、イソ酪酸、乳酸(DL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(DL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、ウンデシレン酸。
【0133】
本明細書において説明される化合物に対し、対イオンは、化合物又は化合物群を酸と反応させた後に形成される共役塩基であってもよい。言い換えれば、対イオンは、関連する(複数の)化合物と反対の電荷を保持する。このため、NH4+の共役酸を有する本明細書の化合物の可能な塩類に関して、対イオンは、塩のアニオン部分を表す。
【0134】
これにより、本明細書に記載の塩化合物の対イオンは、制限されないが、下記のいずれかの共通アニオン及びオキソアニオンを含むことができる:N-ヒドロキシスクシンイミジル、水素化物(H-)、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、ヨウ化物(I-)、酸化物(O2-)、水酸化物(OH-)、過酸化物(O2 2-)、硫化物(S2-)、硫化水素(HS-)、セレン化(Se2-)、窒化物(N3-)、アジド(N3-)、リン化硼素(P3-)、ヒ化物(As3-)、炭化物(C4-)、シアン化物(CN-)、次亜塩素酸塩(ClO1-)、亜塩素酸塩(ClO2-)、塩素酸塩(ClO3-)、過塩素酸塩を(ClO4-)、亜硫酸(SO3 2-)、硫酸(SO4 2-)、硫酸水素(HSO4-)、チオ硫酸塩(S2O3 2-)、亜硝酸(NO2-)、硝酸(N3-)、亜リン酸(PO3 2-)、リン酸塩(PO4 3-)、(モノ)リン酸水素塩(HPO4 2-)、リン酸二水素塩(H2PO4-)、炭酸塩(Co3 2-)、水素炭酸塩(HCO3-)、シュウ酸塩(C2O4 2-)、シアネート(NCO-)、イソシアネート(OCN-)、チオシアネート(SCN-)、クロメート(CrO4 2-)、ジクロメート(Cr2O7 2-O)、過マンガン酸塩(MnO4-)。
【0135】
特定の実施形態では、グリカン標識試薬は、下記式を有する試薬である。
【0136】
【化14】
【0137】
他の実施形態において、標識試薬は、プロカインアミド又はプロカイン試薬である。
【0138】
他の実施形態において、この標識試薬及びこれらの対応するラベル部分は、米国特許出願第14/342,131号、同第14/193,418号、同第14/458,760号、及び同第15/005,619号、及び米国特許第5,296,599号、同第7,148,069号、同第7,494,815号及び同第8,124,792号において説明される標識試薬及び部分を含むがこれらに限定されない。これらの出願及び特許のそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0139】
特定の実施形態において、標識部分は、二級アミン、尿素又はアミド結合によりグリカンと共有結合している。他の実施形態において、両親媒性強塩基性部分が組み込まれ、本明細書において記載されたクロマトグラフィ法が有利に使用されるように、標識試薬は、N-グリカン又はO-グリカンのいずれか一方に適用され得る。
【0140】
分離装置及びキット
本明細書に記載のHPCM材料は、HPCM材料を含む固定相を有する多様な分離装置において利用することができる。分離装置は、例えば、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、試料クリーンアップ装置及びマイクロタイタープレートを含む。
【0141】
HPCM材料は、安定性が改善されるため、これらの装置の寿命を改善する。
【0142】
このような装置は、
a)充填材を受容するための筒状の内部を有するカラムと、
b)本明細書に記載のような高純度クロマトグラフィ材料を含む充填クロマトグラフィベッドと、を備える。
【0143】
このような別の装置は、
a)充填材を受容するための内部チャネルと、
b)本明細書に記載の高純度クロマトグラフィ材料を含む充填クロマトグラフィベッドと、含む、クロマトグラフィ装置を含む。
【0144】
HPCM材料はまた、本明細書及び使用説明書において記載されるようにHPCM材料を含むキットとして利用され得る。キットは、例えば、クロマトグラフィカラム、薄層プレート、濾過膜、試料クリーンアップ装置及びマイクロタイタープレートなどの分離装置と共に使用されるためのものであってもよい。別の実施形態では、説明書は、1つ以上のグリカンの分離、単離、精製、又は検出のためのものである。
【0145】
分離/分析方法
本発明は、本明細書に記載のようなHPCM材料を用いて、グリカン又はグリカンの混合物を選択的に単離、分離、精製、検出及び/又は分析するための方法を提供する。特定の実施形態において、本発明の方法及び本明細書に記載のHPCM材料を利用して、糖ペプチド、糖タンパク質又は糖脂質を選択的に単離/分離、精製、検出及び/又は分析することができる。本発明の方法は、化合物の複雑な混合物を分離し、これにより分解することができ、これらの混合物の成分化合物の迅速な単離/分離、精製、検出及び/又は分析を可能にする。
【0146】
一態様において、本発明は、試料からグリカンを選択的に単離する方法を提供することであって、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、当該クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、当該イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に選択的に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
c)吸着した標識されたグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、標識されたグリカンを試料から選択的に単離する工程と、を含む。
【0147】
更に別の態様において、本発明は試料から複数種のグリカンを分離する方法であって、方法は、
a)複数種のグリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、当該クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、当該イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
c)吸着した標識されたグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させることにより、標識されたグリカンを分離する工程と、を含む。
【0148】
更に他の態様において、本発明は試料中に含まれるグリカンを精製するための方法を提供し、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
b)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
c)吸着したグリカンを高純度のクロマトグラフィ材料から溶出させることにより、グリカンを精製する工程と、を含む。
【0149】
更なる他の態様において、本発明は、試料中のグリカンを検出する方法を提供し、方法は、
a)グリカンを含む試料を標識試薬と反応させて、標識されたグリカン試料を生成する工程と、
a)クロマトグラフィ表面を含む高純度クロマトグラフィ材料を含むクロマトグラフ分離装置に標識されたグリカン試料を搭載する工程であって、当該クロマトグラフィ表面は、疎水性表面基及び1種以上のイオン性修飾剤を含み、ただし、イオン性修飾剤が双性イオンを含まない場合、当該イオン性修飾剤は、グリカンが高純度クロマトグラフィ材料に吸着されるように四級アンモニウムイオン部分を含まない、工程と、
b)吸着したグリカンを高純度クロマトグラフィ材料から溶出させる工程と、
c)グリカンを検出する工程と、を含む。
【0150】
本発明のクロマトグラフィ法の特定の実施形態では、グリカンは、N-グリカン又はO-グリカンである。特定の態様において、グリカンは、hIgGグリカン、フェチュイングリカン、FA2BG2S2、FA2G2S1、又はFA2G2である。
【0151】
特定の実施形態では、グリカン標識試薬は、MS活性の、迅速蛍光タグ付け化合物、プロカインアミド試薬又はプロカイン試薬である。
【0152】
特定の他の実施形態では、グリカン標識試薬は、下記式を有する試薬である。
【0153】
【化15】
【0154】
本発明の方法を使用して、多様な試料からグリカンを選択的に単離、精製、及び/又は検出することができる。一実施形態では、試料は、血液、尿、脊髄液、滑液、痰、精液、唾液、涙、胃液及び抽出物並びに/又はこれらの希釈液/溶液からなる群から選択された生物流体であるか、又は生物流体由来である。特定の実施形態において、試料は、化合物の生物混合物を含む。
【0155】
特定の実施形態では、本発明の材料は、荷電された表面を利用しない従来のクロマトグラフィ材料と比較して顕著に改善されたピーク形状を生成するように求められる。別の実施形態では、本発明の材料は、これらの荷電した表面と、検体分子の同じ又は反対の電荷との間でクーロン相互作用を生成することによって有利な選択性が生じることが見出されている。更に、本発明の材料は、帯電した表面を利用しない従来のクロマトグラフィ材料に関連する非特異的結合問題を緩和することが見出されている。かかる利点は、特に、非特異的結合にならないので、低濃度の高分子の質量分析による同定又は確認を可能にし、豊富な種に見られる劣化したピーク形状、従来のクロマトグラフィ材料では、豊富な種を見るのに必要な試料質量の増加によって不明瞭にならない。
【0156】
本発明の一態様では、本発明の方法は、ESI+MS検出に結合された分離が高い信号対雑音質量スペクトルをもたらす移動相を利用する。このような移動相は、pH1~pH8、pH2~pH7、又はpH3~pH6を有する緩衝液を含む移動相を含むがこれらに限定されない。分離の水性移動相における緩衝添加剤の使用により、MS感度、保持性及び選択性を有意に調節することができる(図5)。
【0157】
特定の実施形態では、水性移動相は、pH3.6-1mMのギ酸アンモニウム/1mMのギ酸の緩衝液を含む。この溶液は、高分解能異性体及び分析物の電荷状態によって駆動されるいくつかの種別分離を示す分離の生成に効果的である。上記にかかわらず、図6にも示されるように、17mM酢酸及び1mMギ酸アンモニウムを含む水性移動相も効果的である。
【0158】
特定の実施形態では、本発明の方法は、一定のイオン強度条件で実施される。これは、ウシフェチュインからの標識グリカンの分離において明らかである(図6)。これらのグリカンは、高シアリル化され、高分岐されている点で一意的である。溶離剤移動相においてイオン強度がなければ、テトラシアリル化標識されたグリカンは、本発明のカラムからの溶出が予測されないと考えられる。水性移動相の添加剤を反映する溶離剤移動相における添加剤の使用は、高シアリル化された構造の回収を容易にする。このように、本発明の一実施形態は、勾配急峻性の最適化と共に添加物の適切な選択を利用する。図7は、これらの例示的な分離を示し、hIgG及びウシフェチュインからの標識されたグリカンが分析される。標識hIgGグリカンに対して得られたクロマトグラムは、複数のモノ及びジシアリル化N-グリカン種間及び種内の高度の分解能と共に、いわゆる中性N-グリカン構造(二分岐N-アセチルグルコサミンの有無に関わらない非フコシル化種及びフコシル化種)の高分解能クラスタリングを示す点で注目すべきである(図7A)。一方、標識フェチュイングリカン(図7B)について得られたクロマトグラムは、3つ及び4つのシアル酸残基を含むグリカン間で妥当な分解能を得ることができることを示すために注目に値する。
【0159】
特定の実施形態では、本発明のHPCMは、誘起シリカ粒子、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル又はジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾剤から調製された1.7μm、130Å平均孔径材料を含むが、これに限定されない、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノエチル、又はジエチルアミノプロピル(DEAP)修飾剤と、C18結合と、その後のエンドキャッピングと、によって調製された固定相である(実施例1、位相1A)。この「DEAP」材料(実施例1で説明される、位相1A)は、以下のように両親媒性の強塩基性部分で標識されたグリカンを分解する能力について評価されている。
【0160】
これに関して、本材料が、正味電荷によって異なるグリカンのより顕著な種別分離を生成することが見出されている。このように、別の実施形態では、本発明は、有機溶媒及び緩衝液の両方の濃度を増加させる同時勾配を有するこのDEAP固定相を用いて標識されたhIgGグリカンの分析を提供する(図8)。これらの分離に必要なイオン強度変化の大きさは、hIgG及びウシフェチュインの両方から調製された標識されたグリカンの分離を介して定義することができる(図9)。0.5~32%アセトニトリル(MeCN)の直線勾配上で、これらの分離を0~100mMギ酸アンモニウム及び100mMギ酸の勾配で最適化する。この有機溶媒とイオン強度の変化とのペアリングにより、全てのグリカン種の良好な回収がもたらされ、シアリル化の程度及び結果としてこれらの正味電荷によって異なるグリカンの最適な種別分離が行われる。ここでは示されていないが、これらの種の勾配は、二元ポンプ器具又は更には三元溶媒運搬システムのいずれか一方によって実施され得ることが想定される。更に、選択性及び分解能を別に達成するために、非線形又は多段の勾配を使用して、分離を同調させることができると考えられる。
【0161】
本発明の材料の合成
本発明はまた、本明細書に記載の高純度クロマトグラフィ材料(HPCM)材料を製造する方法を提供する。
【0162】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載のHPCMを製造する方法を提供し、方法は、
a.クロマトグラフィックコアをイオン性修飾試薬と反応させて、イオン性修飾材料を得る工程と、
b.得られた材料を疎水性表面修飾基と反応させる工程と、を含む、方法。
【0163】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に説明される高純度クロマトグラフィ材料の製造方法を提供することであって、
a.クロマトグラフィックコアを疎水性表面修飾基と反応させて表面修飾材料を得る工程と、
b.得られた材料をイオン性修飾剤と反応させる工程と、を含む。
【0164】
別の実施形態において、本発明は、本明細書において記載された高純度クロマトグラフィ材料を製造する方法を提供し、方法は、
a.クロマトグラフィックコアを疎水性表面修飾基と反応させて、表面修飾材料を得る工程と、
b.得られた材料をエンドキャップ表面基と反応させる工程と、
c.得られた材料をイオン性修飾剤と反応させる工程と、を含む。
【0165】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載した高純度クロマトグラフィ材料を製造する方法を提供し、方法は、
a.クロマトグラフィックコアを、イオン性修飾試薬と反応させて、イオン性修飾材料を得る工程と、
b.得られた材料を反応させて、ハイブリッド表面層を生成する工程と、
c.得られた材料を疎水性表面修飾基と反応させる工程、を含む。
【0166】
一態様において、上記に記載されるような本発明のHPCMは、約3~約133の装入比B’/A’で製造され、A’は、調製物において装入されたイオン性修飾剤試薬を表し、B’は、調製物において装入された疎水基を表す。特定の態様では、装入比B’/A’は、約4~約80、約4~約15、又は約6~約7である。
【0167】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、残存するシラノール基をエンドキャッピングする工程を更に含む。
【0168】
一実施形態では、方法において、記載された工程は同時に行われる。
【0169】
別の実施形態において、予め調製された高純度クロマトグラフィ材料の細孔構造は、窒素(N)吸着分析によって確認されるように、細孔の開口部及び細孔直径を拡大する熱水処理によって修飾される。熱水処理は、予め調製されたハイブリッド材料と塩基溶液とを含むスラリーを水中で調製し、スラリーをオートクレーブ中で、例えば、100~200℃の高温にて10~30時間加熱することにより行われる。トリメチルアミン(TEA)又はトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのアルキルアミンの使用、あるいは水酸化ナトリウムの使用が有利である。このように処理された材料は、冷却、濾過され、水及びメタノールで洗浄され、次いで80℃の低圧力下で16時間乾燥される。
【0170】
特定の実施形態では、熱水処理に続いて、高純度クロマトグラフィ材料の表面を種々の薬剤で修飾する。このような「表面修飾剤」は、(典型的に)クロマトグラフィ固定相に特定のクロマトグラフィ機能性を付与する有機官能基を含む。特定の態様では、HPCMがハイブリッド材料である場合には、材料は、表面修飾剤で追加的に置換又は誘導体化してもよい有機基及びシラノール基の両方を保有している。
【0171】
熱水処理された高純度クロマトグラフィ材料の表面は、有機基を含み、これは、材料の有機基に対して反応性である試薬と反応させることによって誘導体化することができる。例えば、材料上のビニル基は、臭素(Br)、水素(H)、フリーラジカル、伝播性高分子ラジカル中心、ジエン等の種々のオレフィン反応性試薬と反応させることができる。別の例では、材料上のヒドロキシ基は、下記に示されるようなイソシアネート、カルボン酸、カルボン酸塩化物及び反応性有機シランなどの多様なアルコール反応性試薬と反応することができる。この種の反応は、文献において周知であり、例えば、March,J.Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,Wiley,New York,1985、Odian,G.「The Principles of Polymerization」、2nd Edition,Wiley,New York,1981を参照されたい。
【0172】
また、熱水処理された高純度クロマトグラフィ材料の表面もまたシラノール基を含み、反応性オルガノシランと反応して誘導体化することができる。高純度クロマトグラフィ材料の表面誘導体化は、標準的な方法、例えば、還流条件下での有機溶媒中のオクタデシルトリクロロシラン又はオクタデシルジメチルクロロシランとの反応によって行われる。この反応には、典型的にはトルエン等の有機溶媒が用いられる。反応混合物にピリジン又はイミダゾールなどの有機塩基を添加して、反応を触媒する。この反応生成物は、次いで、水、トルエン及びアセトンで洗浄される。この材料は、周囲温度又は高温で、pH修飾水性有機溶液中での加水分解によって更に処理することができる。この加水分解には、典型的にはアセトン等の有機溶媒が用いられる。トリフルオロ酢酸、ギ酸、塩酸、酢酸、ギ酸ナトリウム若しくはギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム又は酢酸アンモニウム、リン酸緩衝液、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又は重炭酸アンモニウムを含む酸性又は塩基修飾剤を使用して、pHを変更することができる。次いで、加水分解の生成物は、水、トルエン、及びアセトンで洗浄され、80℃~100℃の低圧力下で16時間乾燥される。得られた材料は、上述した同様の手順を用いて、残存シラノール基をエンドキャップするためにトリメチルクロロシランのような短鎖シランと更に反応させることができる。
【0173】
本明細書に開示されるような表面修飾剤は、例えば、誘導体化又はコーティング及びその後の架橋により、ベース材料に対して表面修飾剤の化学的性質を付与する。一実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料の有機基は、反応して表面修飾剤との有機共有結合を形成する。修飾剤は、求核性、求電子性、環化付加、フリーラジカル、カルベン、ニトレン及びカルボカチオン反応を含むが、これらに限定されない有機化学及び高分子化学において周知の多数の機構を介して材料の有機基と有機共有結合を形成することができる。有機共有結合は、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、及びハロゲンを含むが、これらに限定されない有機化学の共通元素間の共有結合の形成を伴うように定義される。更に、炭素-ケイ素結合及び炭素-酸素-ケイ素結合は、有機共有結合として定義され、一方、ケイ素-酸素-ケイ素結合は、有機共有結合として定義されていない。
【0174】
「官能化基」という用語は、例えば、オクタデシル(C18)又はフェニルを含むクロマトグラフィ固定相に特定のクロマトグラフィ機能性を付与する有機官能基を含む。このような官能化基は、ベース材料に直接組み込まれるか、あるいは、例えば、誘導体化又はコーティング及び後架橋によりベース材料に結合し、表面修飾剤の化学的性質をベース材料に付与する、例えば、本明細書に開示されたような表面修飾剤に存在する。
【0175】
特定の実施形態では、シラノール基は、表面修飾されている。他の実施形態において、有機基は、表面修飾されている。更に他の実施例では、高純度クロマトグラフィ材料の有機基及びシラノール基の両方は、表面修飾又は誘導体化されている。別の実施形態において、高純度クロマトグラフィ材料は、ポリマーによりコーティングすることにより表面修飾される。特定の実施形態において、ポリマーでコーティングすることによる表面修飾は、シラノール基修飾、有機基修飾、又はシラノール及び有機基修飾の両方と組み合わせて使用される。イオン性修飾剤は、シラノール基修飾、有機基修飾、又はシラノール及び有機基修飾の両方によって材料に添加されてもよい。疎水性表面基は、シラノール基修飾、有機基修飾又はシラノール及び有機基修飾の両方によって材料に添加されてもよい。
【0176】
より一般的に、高純度クロマトグラフィ材料の表面は、以下によって修飾され得る。化学式Z(R’)bSi-R”の化合物を含む表面修飾剤による処理であって、Z=Cl、Br、I、C~Cアルコキシ、ジアルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノ、又はトリフルオロメタンスルホネート、a及びbは、a+b=3の場合、それぞれ0~3の整数であり、R’は、C~C直鎖状、環状又は分岐状のアルキル基であり、R”は官能化基である。特定の例において、このような材料は、ポリマーによるコーティングにより表面修飾されている。
【0177】
R’は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、イソペンチル、へキシル又はシクロへキシルを含み、R’は、メチルであることが好ましい。
【0178】
官能化基R”は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基、カチオン基又はアニオン交換基、内部極性官能基又はキラル部分を含むアルキル基又はアリール基を含むことができる。好適なR”官能化基の例として、キラル部分、オクチル(C)、オクタデシル(C18)及びトリアコンチル(C30)のようなC~C20を含むC~C30アルキル、アルキルアリール、例えば、C~Cフェニル、シアノアルキル基、例えば、シアノプロピル、ジオール基、例えば、プロピルジオール、例えば、アミノプロピルなどのアミノ基、及び内部極性官能基を有するアルキル基又はアリール基、例えば、炭酸、アミド、尿素、エーテル、チオエーテル、スルフィニル、スルホキシド、スルホニル、チオ尿素、チオカーボネート、チオカルバメート、エチレングリコール、複素環式、及びトリアゾール官能基、又は米国特許第5,374,755号に開示されるようなカルバメート官能基及びキラル部分などが含まれる。特定の実施形態において、R”は、芳香族、フェニルアルキル、フルオロ芳香族、フェニルヘキシル、ペンタフルオロフェニルアルキル及びキラル部分からなる基から選択される。これらの基は一般式の基を含み、
【0179】
【化16】
式中、l、m、o、r及びsは、0又は1であり、nは、0、1、2又は3であり、pは、0、1、2、3又は4であり、qは、0~19の整数であり、R3は、水素、アルキル、シアノ、フェニルからなる基から選択され、Z、R’、a及びbは、上記のように定義される。好ましくは、カルバメート官能基は、以下に示される一般的な構造を有する。
【0180】
【化17】
式中、Rは、例えば、シアノアルキル、t-ブチル、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル、又はベンジルであってもよい。有利には、Rは、オクチル、ドデシル、又はオクタデシルである。
【0181】
キラル分離などの特定の用途では、官能化基としてキラル部分を含むことは特に有利である。
【0182】
ポリマーコーティングは、文献において公知であり、大略的に、ポリマー層を支持体へ化学結合しない、物理吸着されたモノマーの表面への重合又は重縮合(I型)、ポリマー層を支持体へ化学結合する、物理吸着されたモノマーの表面への重合又は重縮合(II型)、物理吸着されたプレポリマーの支持体への固定化(III型)、及び予備合成されたポリマーの支持体表面への化学吸着(IV型)によって提供され得る。例えば、参照により本明細書に援用されているテキストであるHanson,et al.,J.Chromat.A656(1993)369~380を参照されたい。このように、ポリマーによりハイブリッド材料をコーティングすることは、本発明において記載された種々の表面修飾と共に使用されてもよい。
【0183】
特定の実施形態では、疎水性表面修飾剤は、フェニルヘキシルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン及びオクタデシルジメチルクロロシランからなる群から選択される。更なる実施形態において、表面修飾剤は、オクチルトリクロロシラン及びオクタデシルトリクロロシランからなる群から選択される。
【0184】
別の実施形態において、高純度クロマトグラフィ材料は、有機基及びシラノール基修飾の組合せによって表面修飾されている。
【0185】
他の実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、有機基修飾とポリマーによるコーティングとの組み合わせによって表面修飾されている。
【0186】
他の実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、シラノール基修飾とポリマーによるコーティングとの組み合わせによって表面修飾されている。
【0187】
別の実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、ハイブリッドコア及び/又は周囲の材料の有機基と修飾試薬との間の有機共有結合の形成によって表面修飾されている。
【0188】
特定の実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、有機基修飾、シラノール基修飾とポリマーによるコーティングとの組み合わせによって表面修飾されている。
【0189】
一実施形態では、高純度クロマトグラフィ材料は、シラノール基修飾によって表面修飾されている。
【0190】
別の実施形態では、本発明は、ポロゲンを更に含むことによって、高純度クロマトグラフィ材料を修飾する方法を提供する。更なる実施形態では、ポロゲンは、シクロヘキサノール、トルエン、メシチレン、2-エチルヘキサン酸、ジブチルフタル酸、1-メチル-2-ピロリジノン、1-ドデカノール及びトリトンX-45からなる群から選択される。特定の実施形態において、ポロゲンは、トルエン又はメシチレンである。
【0191】
一実施形態では、本発明は、高純度クロマトグラフィ材料が界面活性剤又は安定剤を含むことによって更に修飾される方法を提供する。特定の実施形態において、界面活性剤は、トリトンX-45、トリトンX100、トリトンX305、TLS、プルロニックF-87、プルロニックP-105、プルロニックP-123、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アンモニアドデシル硫酸塩、ドデシル硫酸トリス又はトリトンX-165である。特定の実施形態では、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アンモニアドデシル硫酸塩、又はドデシル硫酸トリスである。
【0192】
上述のようなハイブリッド、シリカ、粒子、モノリス及び表面多孔性材料を含む本発明のHPCMの合成の特定の実施形態を、以下の実施例において更に例示する。
【実施例
【0193】
実施例
本発明は、多孔性クロマトグラフィ材料の表面修飾を説明する以下の非限定的な実施例によって更に例示することができる。
【0194】
材料
全ての試薬は、特記しない限り、受領されたまま使用された。当業者は、以下の供給及び供給元の等価物が存在し、それ故に、以下に列記された供給元は限定的であるとして解釈されるものではないことを認識するだろう。
【0195】
一般的に、以下に記載される方法に加えて、本発明のHPCMは、その開示が参照により本明細書に援用されている米国特許出願第2013/0319086号に概説されている例示的なプロトコルを用いて製造することができる。
【0196】
特性
当業者は、以下の器具及び供給元の等価物が存在し、それ故に、以下に列記された器具は限定的であるとして解釈されるものではないことを認識するだろう。
【0197】
%C、%H、%N値は、燃焼分析(CE-440 Elemental Analyzer;Exeter AnalyticalInc.,(North Chelmsford,MA))によって測定され、あるいは%Cは、電量炭素分析装置によって(モジュールCM5300,CM5014,UIC Inc.,(Joliet,IL))測定された。これらの材料の比表面積(SSA)、比孔体積(specific pore volume)(SPV)及び平均孔径(APD)は、多点N2収着法(Micrometrics ASAP 2400;Micrometrics Instruments Inc.,(Norcross,GA))を使用して測定された。BET法を用いてSSAが算出され、SPVは、P/P>0.98に対して求められた一点値であり、APDは、BJH法を使用して等温線の脱着の脚部(desorption leg)から算出された。走査型電子顕微鏡(SEM)画像解析が7kVで実行された(JEOL JSM-5600機器(東京、日本))。粒径をBeckman Coulter Multisizer 3分析装置(30μm孔、70,000カウント;(Miami,FL))を使用して測定した。粒子直径(dp)は、体積ベース粒径分布の50%累積直径として測定された。分布の幅は、90%累積体積直径を10%累積体積直径で割ったもの(9010比を示す)として測定した。多核(13C、29Si)CP-MAS NMRスペクトルは、Bruker Instruments Avance-300分光計(7mmダブルブロードバンドプローブ)を用いて得た。スピン速度は通常、5.0~6.5kHzであり、待ち時間(recycle delay)は5秒であり、干渉偏波接触時間は6ミリ秒であった。報告された13C及び29Si CP-MAS NMRスペクトルシフトは、外部標準アダマンタン(13C CP-MAS NMR,δ38.55)及びヘキサメチルシクロトリシロキサン(29Si CP-MAS NMR,δ-9.62)を使用してテトラメチルシランに対して記録された。異なるケイ素環境の集団は、DMFitソフトウェアを使用するスペクトルデコンボルーションによって評価された。[Massiot,D.、Fayon,F.、Capron,M.、King,I.、Le Calve,S.、Alonso,B.、Durand,J.O.、Bujoli,B.、Gan,Z.、Hotson,G.Magn.Reson.Chem.2002,40,70~76]「Titrations were performed using a Metrohm 716 DMS Titrino autotitrator with 6.0232.100 pH electrode」(Metrohm,Hersau,Switzerland,or equivalent)。
【0198】
実施例1
DEAP HPCM固定相の合成
以下の手順により、DEAP HPCM固定相(位相1A及び1B)を合成した。
【0199】
工程1:(米国特許第6,686,035号に記載の方法に従って調製した)式(O1.5SiCHCHSiO1.5)(SiOのBEH多孔性粒子(Waters Corporation,Milford,Mass、6.5%C;SSA =75~200m/g:SPV=0.60~0.75cc/g;APD=115~310Å)は、Dean-Starkトラップを使用してトルエン(5mL/g,Fisher Scientific(Fairlaw,NJ)で1時間還流させた。冷却時には、再蒸留された0.3μmol/mの(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(DEAP,Silar Liaboratories(Wilmington,NC))が加えられ、反応は2時間還流のために加熱された。反応物は次いで冷却され、生成物は濾過され、トルエン、1:1v/vアセトン/水、及びアセトンで連続的に洗浄された(全ての溶媒はFisher Scientific(Fairlawn,NJ)製)。次いで、減圧下で80℃において16時間生成物を乾燥させた。
【0200】
工程2:工程1からの材料は、Dean-Starkトラップを使用してトルエン(5mL/g、Fisher Scientific(Fairlawn,NJ))中で1時間還流させた。冷却すると、2.3μmol/mのイミダゾール(Aldrich(Milwaukee,WI))及びオクタデシルトリクロロシラン(Gelest Inc.,(Morrisville,PA))を加え、反応物を16時間加熱還流した。次いで、反応物を冷却し、生成物を濾過し、トルエン、1:1v/vアセトン/水及びアセトン(全てFisher Scientific(Firlawn,NJ)からの溶媒)で連続的に洗浄した。次いで、この材料は、アセトン/水性0.1M重炭酸アンモニウム(pH10)溶液中で20時間50℃で還流された(加水分解)。加水分解後、材料は、1:1v/vのアセトン/水及びアセトン(全てFisher Scientific(Fairlawn,NJ)からの溶媒)で連続的に洗浄された。次いで、減圧下で80℃において16時間生成物を乾燥させた。
【0201】
工程3:工程2からの材料は、Dean-Starkトラップを使用してトルエン(5mL/g、Fisher Scientific(Fairlawn,NJ))中1時間還流させた。冷却時に、イミダゾール(Aldrich(Milwaukee,WI))及びトリエチルクロロシラン(TECS,Gelest Inc.,(Morrissville,PA))が加えられ、反応物は、4時間還流のため加熱された。その後、反応物は、冷却され、イミダゾール及びトリメチルクロロシラン(Aldrich(Milwaukee,WI))が反応物に加えられ、追加的に16時間還流のために加熱された。反応物は、次いで冷却され、生成物は濾過され、トルエン、1:1v/vアセトン/水、及びアセトンで連続的に洗浄された(全ての溶媒は、Fisher Scientific(Fiarlawn,NJ)製)。次いで、減圧下で80℃において16時間生成物を乾燥させた。上記手順(工程1~3)に記載された全試薬は、特記しない限り受領されたまま使用された。当業者であれば、供給物及び供給元が列挙されているが、等価物が存在することを理解し、列挙された供給物/供給元は決して限定的であるとして解釈されるべきではないことを認識するだろう。
【0202】
以上の手順により得られる固定相は、次のように特徴づけられた。%C値は、電量炭素分析装置(modules CM5300,CM5014,UICInc.,(Joliet,IL))によって測定された。これらの材料の比表面積(SSA)、比孔体積(SPV)及び平均孔径(APD)は、多点N吸着法(Micrometrics ASAP 2400;Micrometrics Instruments Inc.,(Norcross,GA))を使用して測定された。BET法を用いてSSAが算出され、SPVは、P/P>0.98に対して求められた一点値であり、APDは、BJH法を使用して等温線の脱着の脚部から算出された。粒径をBeckman Coulter Multisizer 3分析装置(30μm孔、70,000カウント;(Miami,FL))を使用して測定した。粒子直径(dp)は、体積ベース粒径分布の50%累積直径として測定された。オクタデシルトリクロロシランの総表面被覆量は、元素分析で測定した表面修飾の前後の粒子%Cの差によって判定した。当業者は、以下の器具の等価物が存在し、それ故に、以下に列記された器具は限定的であるとして解釈されるものではないことを認識するだろう。2つのDEAP HPCM位相、位相1A及び位相1Bに関連する情報は、下記に記載されている。
【0203】
【表1】
米国特許第7919177号,同第7223473号,同第6686035号で説明される
【0204】
【表2】
【0205】
実施例2
標識されたグリカンの黒鉛化炭素及び従来のC18逆相クロマトグラフィ
本発明の請求の範囲に従って標識されたN-グリカンは、以前に公表された条件に従ってヒトIgG(シグマ14506)由来の標識試薬-1(RFMS)から調製された。(Lauber,M.A.、Yu,Y.Q.、Brousmiche,D.W.、Hua,Z.、Koza,S.M.、Magnelli,P.、Gutherie,E.、Taron,C.H.、Fountain,K.J.,Rapid Preparation of Released N-Glycans for HILIC Analysis Using a Labeling Reagent that Facilitates Sensitive Fluorescence and ESI-MS Detection。Anal Chem 2015,87(10),5401~9.)
【0206】
その後、本発明の請求の範囲に従い標識されたヒトIgGN-グリカンは、黒鉛化炭素又は従来のC18逆相クロマトグラフィのいずれか一方及びWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステムを使用して分離された。図2及び図3に示される代表クロマトグラムを生成するための分離は、以下の条件を用いて行われた。
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
実施例3
HPCM及びギ酸移動相を用いた標識されたグリカンの分離
標識されたヒトIgGN-グリカンは、Waters ACQUITY UPLC CSH C18カラム及びWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステムを使用して分離された。図4に示された代表的なクロマトグラムを生成するための分離は、以下の条件を用いて実行された。
【0210】
【表5】
【0211】
実施例4
HPCM及び種々の水性移動相添加剤を用いた標識されたグリカンのLC-蛍光MS分析
標識されたヒトIgGのN-グリカンは、Waters ACQUITY UPLC CSH C18カラム、Waters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステム及びWaters Synapt G2-S質量分析計を使用して分析された。方法選択性及び感度は、ギ酸、酢酸、ギ酸アンモニウム、及び/又は酢酸アンモニウムを含む、種々の水性移動相添加剤の使用によって調整された(図5)。これらの分離法の詳細を以下に記載する。
【0212】
【表6】
【0213】
【表7】
【0214】
【化18】
【0215】
実施例5
HPCMを用いた高シアリル化標識グリカンの分離に対する一定のイオン強度
標識されたN-グリカンは、以前公表されたプロトコルに従い、ウシフェチュイン(シグマF3004)から調製され(Lauber,M.A.、Yu,Y.Q.、Brousmiche,D.W.、Hua,Z.、Koza,S.M.、Magnelli,P.、Gutherie,E.、Taron,C.H.、Fountain,K.J.,Rapid Preparation of Released N-Glycans for HILIC Analysis Using a Labeling Reagent that Facilitates Sensitive Fluorescence and ESI-MS Detection。Anal Chem 2015,87(10),5401-9)、ACQUITY UPLC CSH C18カラム、Waters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステム及びWaters Synapt G2-S質量分析計を用いてLC蛍光質量分析計で分析された。図6に示される代表的なクロマトグラムは、下記の方法条件を使用して得られた。
【0216】
【表8】
【0217】
【表9】
【0218】
実施例6
標識されたグリカンを分離するためにHPCMを使用する例示的な実施形態
標識されたヒトIgG及びウシフェチュイン由来のN-グリカンは、ACQUITY UPLC CSH C18カラム、Waters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステム及びWaters Synapt G2-S質量分析計を用いてLC蛍光質量分析計で解析された。図7に示される代表的なクロマトグラムは、下記の方法条件を使用して得られた:
【0219】
【表10】
【0220】
【表11】
【0221】
実施例7
DEAP HPCMの標識ヒトIgGグリカンの分離に対する方法条件の最適化
DEAP HPCMカラム及びWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステムを用いて標識ヒトIgG N-グリカンが分析された。方法選択性は、ギ酸、酢酸、ギ酸アンモニウム、及び/又は酢酸アンモニウムを含む、種々の水性移動相添加剤の使用によって調整された(図8)。これらの分離法の詳細は、下記から求めることができる。
【0222】
【表12】
【0223】
実施例8
DEAP HPCMの標識フェチュイングリカンの分離に対する方法条件の最適化
DEAP HPCMカラム及びWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステムを用いて標識フェチュインN-グリカンが分析された。方法選択性は、ギ酸、酢酸、ギ酸アンモニウム、及び/又は酢酸アンモニウムを含む、種々の水性移動相添加剤の使用によって調整された(図9)。これらの分離法の詳細を以下に記載する。
【0224】
【表13】
【0225】
実施例9
標識されたグリカンを分離するためにDEAP HPCMを使用する例示的な実施形態
標識されたヒトIgG及びウシフェチュイン由来のN-グリカンは、DEAP HPCMカラム、Waters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステム及びWaters Synapt G2-S質量分析計を用いてLC蛍光質量分析計で解析された。図10及び図12において示される代表的なクロマトグラム及び代表的な質量スペクトルは、以下の方法条件を使用して得られた。
【0226】
【表14】
【0227】
【表15】
【0228】
実施例10
標識されたグリカンの分離を改善する方法の初期条件中のイオン強度の増大
下記に記述されるように、DEAP固定相を用いて2つの例示的な分離が得られた(図10)。図10Aは、モノ-及びジ-シアリル化構造(S1及びS2構造体)中で優れた分解能が達成された標識されたhIgG N-グリカンに対するクロマトグラムを示す。一方、中性構造体は、特に非フコシル化及び二分岐GlcNAc(N-アセチルグルコサミン)構造(図11)に関して、勾配の初期条件中に高いイオン強度を実装することによりDEAP固定相上で分像能を増加することができ、他の材料と比べてわずかに劣る分解能で分離される(図7A参照)。理論的に限定されるものではないが、分離の最初の段階におけるいくらかのイオン強度は、荷電した表面逆相材料のベース粒子と、標識の際に両親媒性強塩基性部分を有する中性グリカンとの間のイオン反発を好ましく減少させると考えられる。図10Bは、ウシフェチュインからの高シアル化、高アンテナ型標識されたグリカンを分析するためのDEAPの使用に対する例示的な結果を示す。この荷電表面逆相材料及び開発された技術では、最も顕著に、クロマトグラムを支配するトリシアリル化、三アンテナ型構造(S3)に対して比類のない分解能が達成される。この方法の顕著な能力は、トリシアリル化(S3)構造に対応する保持ウィンドウの前面で微細構造を分解する能力である。MS分析により、このクロマトグラフィ微細構造は、通常、(N-アセチルノイラミン酸であるNANAに対して)N-グリコリルノイラミン酸であるNGNAとして既知である非ヒトシアル酸の形態の存在に起因し得るS3種の+16Da形態に対応することが確認されている(図10Bの挿入図)。N-グリコリルノイラミン酸を含有するシアリル化グリカンは、それらが生物医薬品上に存在する場合、患者において免疫原性応答を潜在的に引き起こすことができるため、これは、本発明の非常に重要な能力である。N-グリコリルノイラミン酸を含有するシアリル化グリカンも、長期間に亘る赤肉の消費に関連するバイオマーカであることが判明しており、これらの存在は、癌の危険因子として関与している。荷電表面逆相材料の使用に関連する固有選択性を考慮すると、本技術が、グリカン種を含有するN-グリコリルノイラミン酸の更に高い分解能を可能にするよう更に最適化できると主張することは合理的である。間違いなく、これらの種が低相対量の試料中に存在する場合であっても、これらの種を監視するため感度が高い手法を有することは重要である。
【0229】
DEAP HPCM荷電表面反転材料の使用に対する利点は、両親媒性の強塩基性残基で標識されたグリカンの最適なクロマトグラフィ条件が、ESI+MSによるグリカンの分析のための適切な条件でもあることである。ウシフェチュインからの標識されたグリカンは、例えば、同等の信号対雑音が蛍光及びMS検出の両方に対して得られるように、DEAP HPCM固定相によって分析されることができる(図12)。また、2つのクロマトグラムのピークプロファイルが良好に一致していることも注目されたい。更に、これらの分析から抽出できる質量スペクトルは、高信号対雑音を示すことに対してまさに例示的である(図12B)。
【0230】
標識されたヒトIgG N-グリカンは、勾配の初期条件の間、イオン強度に関して変化する方法によって分離された。試料は、DEAP HPCMカラム及びWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio LCシステムを用いたLC蛍光によって分析された。図11に示されたクロマトグラムは、下記の方法条件を使用して得られた:
【0231】
【表16】
【0232】
実施例11
種々の両親媒性強塩基性部分で標識された放出されたフェチュイングリカンの最適化された分離
プロカイン及びプロカインアミドで標識されたN-グリカンは、以前公表されたプロトコルに従い、ウシフェチュイン(シグマF3004)から調製され(Lauber,M.A.、Yu,Y.Q.、Brousmiche,D.W.、Hua,Z.、Koza,S.M.、Magnelli,P.、Gutherie,E.、Taron,C.H.、Fountain,K.J.,Rapid Preparation of Released N-Glycans for HILIC Analysis Using a Labeling Reagent that Facilitates Sensitive Fluorescence and ESI-MS Detection。Anal Chem2015,87(10),5401-9.)、DEAP HPCM 130Å 1.7pm(位相1A)カラム及びWaters ACQUITY UPLC-Class Bio LCシステムを用いたLC-Fluorescence-MSによって続けて分析された。図13に示された代表的なクロマトグラムは、実施例9に列記された方法条件を使用して得られた。プロカイン(標識試薬-2)で標識されたグリカンに対する蛍光検出器の波長は、Ex 295/Em335nmであり、プロカインアミド(標識試薬-3)で標識されたグリカンに対しては、Ex 265/Em345であった。
【0233】
【化19】
【0234】
実施例12
DEAP HPCM対GlycanPac AXR-1カラムを使用する標識されたヒトIgG及びフェチュインN-グリカンの分離に対応する比較例
本発明の一部として記載される方法及び材料は、Liu、Aich及びPohlによって以前に米国特許出願公開第20140178912号に記載されたアニオン交換混合様式材料及びグリカン分析方法とは異なる。アニオン交換体の逆相材料のこれらの例示的な実施形態では、Liu、Auch及びPohlは、親水性アミド基で終端した10個の中性炭素アルキル鎖からなる1個のリガンドと、ジメチル化された第三級アミンで終端された11個の炭素アルキル鎖からなる第2のリガンドとの結合を介して生成された固定相(位相21)を画定した。
【0235】
位相21は、GlycanPac AXR-1カラム(即ち、Thermo Scientific Catalog 088136)の形態でThermo Scientificによって市販されるようになったと考えられる。本明細書では、DEAP HPCMで達成したクロマトグラフ分離は、GlycanPac AXR-1で得られるものと対照をなす。図14は、最適な使用条件における荷電表面逆相材料(DEAP HPCM、位相1A)対同一の使用条件及び上記のタイプのグリカンに対する性能を向上させるよう調節された市販の混合モードGlycanPac AXR-1カラムを使用した標識されたhIgGグリカンの分離を示す。
【0236】
蛍光検出の確立された技術と良好に比較される標識されたグリカンのMS検出は、いずれかの検出モードで類似のクロマトグラフィプロファイルが得られることを可能にする。このとき、MS検出器は、QC実験室では日常的に用いられていない。標識された標識試薬の強塩基部分及びキノリン環構造は、MS様式及び蛍光様式の両方において同様の信号対雑音比を提供するキーとなる。この試薬特性により、QC試験中に観察される可能性がある不明なピークの即時調査が可能となる。同一の試料は、QC実験室で使用された正確な条件下で稼動する支持設備において、MSにより調査することができる。本標識及び本開示に記載された荷電した表面材料との併用により、MS適合試薬による試料の再標識、LC法の開発、及び不明のピークの同定を必要とする可能性がある明快な試料の調査が可能となる。強塩基性部分で標識されたグリカンは、GlycanPac AXR-1カラムでは最適に分離することが困難である。位相21(GlycanPac AXR-1位相を想定、図16参照)におけるリガンドの端部にイオン性修飾基(この場合、第三級アミン)を配置することにより、正電荷の標識を伴うグリカンの分離に対して有害であるカラムのイオン交換特性を強調する。移動相のイオン強度は、イオン反発を緩和し、保持を増加させるように増加させることができるが、これはシアリル化グリカンの種別分離において望ましいイオン誘引力を緩和することもできる。荷電表面逆相材料は、(感度MS分析に必要な)低イオン強度条件下で(高分解能を可能にする)良好なピーク形状及び(荷電した検体の選択的分離に必要な)保持を提供するように最適化される。10 13図14は、リガンドの末端と比較した、表面における荷電基への配置の影響を明確に示す。尚、標識されたhIgGグリカンは、DEAP HPCM(位相1A)材料により強力に保持され、良好に分解されながら、GlycanPac AXR-1カラム上で同条件下で注入及び分離されると、空隙で溶出することに注目されたい。かなり明らかに、両親媒性強塩基性部分で標識されたこれらのグリカンは、市販のHPCM固定相及びDEAP HPCM固定相の両方とは大きさが著しく異なる程度まで、GlycanPac AXR-1固定相によって非常に強く反発される。また、本発明に重要なグリカンは、分離の初期段階中、高いイオン強度条件を用いる場合にはGlycanPac AXR-1カラム上にのみ保持され得、それでも、保持及び分解能は、分析のために不十分であることが見出されている。特に、標識されたトリ-及びテトラ-シアリル化グリカンは、GlycanPac AXR-1固定相においてより良好に保持される。しかし、最適条件で使用された場合であっても、GlycanPac AXR-1固定相は、類似の粒径、DEAP HPCM(位相1A)に比べて劣っていることが観察される分離分解能が生じる(図15)。GlycanPac AXR-1材料の性能不良は、そのイオン性修飾剤の位置付け及びアクセス性によるものであると考えられる(図16)。米国特許出願公開第20140178912号上の位相21では、イオン性修飾剤である第三級アミンは、アルキル鎖及びアミド末端基からなる、他のより豊富な中性基と長さが同等であるリガンドの末端にある。これにより、結合相と移動相との界面自体が正の電位となる。更に、界面は、極性アミド末端基が中心となる。これらの位相21の属性により、両親媒性強塩基性残基で修飾されたグリカンへの適用性が低くなると考えられる。
【0237】
条件
ここでは実施例9において提供された条件を使用して、DEAP HPCM固定相を用いて、標識されたヒトIgG及びフェチュインN-グリカンの例示的な分離を生成する。図14及び図15に示されるように、Thermo Scientific GlycanPac AXR-1カラムを使用する分離に対しても同じ方法条件が使用された。更に、標識されたヒトIgGN-グリカンの分離のためのGlycanPac AXR-1カラムの使用を最適化する試みとして、以下の条件が採用された。
【0238】
【表17】
【0239】
【表18】
【0240】
参照による援用
本明細書に引用された全ての特許出願及び他の参考文献の全内容は、参照によりその全体が本明細書に明確に援用されている。
【0241】
等価物
当業者は、本明細書に記載の特定の手順と同等の多数の等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを用いて確認することができる。このような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、以下の特許請求の範囲の対象とされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16