(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】分解炉
(51)【国際特許分類】
F27B 17/00 20060101AFI20220114BHJP
C07C 4/00 20060101ALI20220114BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20220114BHJP
C10G 9/20 20060101ALI20220114BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F27B17/00 D
C07C4/00
C07C11/04
C10G9/20
F28D7/10 A
F28D7/10 Z
(21)【出願番号】P 2018569154
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2017066331
(87)【国際公開番号】W WO2018002330
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519000308
【氏名又は名称】テクニップ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウード, ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】マムーディ, ナマルヴァル エスマイル
(72)【発明者】
【氏名】ファン ギョオテム, マルコ
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-292191(JP,A)
【文献】特開2009-270802(JP,A)
【文献】特開2009-210224(JP,A)
【文献】特開2014-112024(JP,A)
【文献】特表2004-519543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
C10G 9/20
C07C 11/04
C07C 4/00
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを運ぶための熱分解管を含む分解炉であって、前記熱分解管は環状流路を一緒に画定する半径方向内側本体と半径方向外側壁とを含み、
(1) 半径方向内側本体及び半径方向外側壁は、夫々、熱分解管の環状通路に沿って流体が流れるときに流体の回転を促進するように、熱分解管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有し、又は、
(2) 半径方向外側壁は、流体が熱分解管の環状通路に沿って流れるときに流体の回転を促進するように、熱分解管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有し、又は、
(3) 半径方向内側本体は、流体が熱分解管の環状通路に沿って流れるときに流体の回転を促進するように、熱分解管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有する
熱分解管の本体を含む、分解炉。
【請求項2】
エチレンを製造するための分解炉であって、前記熱分解
管がガス流を運ぶためのものである、請求項1に記載の分解炉。
【請求項3】
前記熱分解
管が、前記環状流路の下流の半径方向外側壁によって画定された非環状流路を備えている、請求項1または2に記載の分解炉。
【請求項4】
前記非環状流路の前記半径方向外側壁が、前記熱分解
管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有している、請求項3に記載の分解炉。
【請求項5】
前記非環状流路の前記半径方向外側壁が、前記熱分解
管の長手方向に直線の中心線を有している、請求項3に記載の分解炉。
【請求項6】
前記環状流路の前記半径方向外側壁が、前記非環状流路の前記半径方向外側壁の内径よりも大きな内径を有している、請求項3、4または5に記載の分解炉。
【請求項7】
前記熱分解
管は、前記分解炉内に延び、前記環状流路が前記熱分解管の延び長さの50%以下の長さを有している、請求項3に記載の分解炉。
【請求項8】
前記熱分解管が、環状流路を提供する2つの上流部と、1つの下流部と、2つの上流部と下流部を接続する分岐部を備え、該分岐部にて2つの上流部の各々を流れる別々のガスが下流部へ単一の流れとなり、各上流部の前記半径方向内側本体と前記半径方向外側壁の少なくとも一方が、流体流れの循環を促進するように構成されており、下流部は非環状流路を有する、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項9】
前記熱分解
管が延びる分解炉の燃焼領域に少なくとも1つのバーナーを含み、前記熱分解管が炉内で前記燃焼領域から離れて下流に延びている、請求項1乃至8の何れかに記載の分解炉。
【請求項10】
前記熱分解
管が、入口から下向きに延びている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項11】
前記半径方向内側本体が中空である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の分解炉
【請求項12】
前記半径方向内側本体も前記半径方向外側壁も、前記熱分解
管の長手方向に螺旋状に延びるそれぞれの中心線を有している、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項13】
前記それぞれの中心線が一致している、請求項12に記載の分解炉。
【請求項14】
前記熱分解
管の長手方向と直角に測定される前記環状流路の幅が、前記半径方向外側
壁の直径の25%以下である、請求項13に記載の分解炉。
【請求項15】
前記熱分解管の長手方向と直角に測定される前記環状流路の幅が、前記
熱分解管の円周方向に変化する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項16】
前記半径方向内側本体が直線の中心線を有し、前記半径方向外側壁が螺旋状に延びる中心線を有している、請求項1乃至11または15のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項17】
前記半径方向内側本体が螺旋状に延びる中心線を有し、前記半径方向外側壁が直線の中心線を有している、請求項1乃至11または15のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項18】
前記熱分解
管の長手方向と直角に測定される前記環状流路の最大幅が、前記半径方向外側
壁の直径の半分以下である、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項19】
長手方向に間隔をあけた支持体が、熱分解
管内に内側本体を支持するために設けられ、第1の支持体が半径方向外側壁および内側本体に固定されており、第2の支持体が、半径方向外側壁に固定され、かつ内側本体の半径方向外側に位置しているが、そこへ固定されていない少なくとも1つの支持部材を含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項20】
前記熱分解管は、熱分解管の長手方向に延び互いに離間した2つの上流部と、該2つの上流部に接続され、上流部からの流れ方向を逆にする1つ又は2つのUベント管部と、前記1つ又は2つのUベント管部に接続された下流部を備え、上流部の外側には少なくとも1つのバーナーが
配置されて、前記バーナーに対して前記上流部の少なくとも一部が前記下流部よりも放射熱にさらされる、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項21】
前記半径方向内側本体および/または前記半径方向外側壁が、前記環状流路内に突出する少なくとも1つの螺旋状突起を有している、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の分解炉。
【請求項22】
炭化水素原料を熱分解して分解生成物を製造する方法であって、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の分解炉の熱分解
管に前記炭化水素原料を供給する工程を含む方法。
【請求項23】
エチレン、プロピレンおよびブタジエンの少なくとも1つを製造する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスまたは液体などの流体の流れを運ぶための熱分解管を含む分解炉に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン分解炉では、少なくとも1つの熱分解管が炭化水素供給原料の流れをプロセスガスとして運びながら貫通する火室内にバーナーが設けられている。分解炉では、炭化水素原料は、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどの所望の生成物にできる限り早く変換されることが望ましい。できるだけ高い温度および、できるだけ低い炭化水素分圧での熱分解管内の少ない滞留時間が、好ましい生成物に対する選択性を決定する主なパラメータである。
【0003】
分解炉内の熱分解管の内面はコークス形成を受けやすく、いったん熱分解管の運転終了条件に達すると、一定の間隔で炭素を取り除く必要がある。運転終了条件は、熱分解管の内面へのコークスの蓄積の程度に依存し、熱分解管の長さにわたる最大許容圧力降下または最大許容熱分解管金属温度によって制限され得る。圧力降下も熱分解管金属温度も、熱分解管の内面への、このコークス堆積によって増大する。それらの冶金学的限界に近い熱分解管の操作はクリープおよび浸炭をもたらすため、過度の熱分解管金属温度は望ましくない。
【0004】
コークス形成速度は、コークスが形成される熱分解管の内面での原料転化率および温度に依存する。原料転化率が高ければ高いほど、そして内面の温度が低ければ低いほど、コークス形成は少なくなる。
【0005】
特許文献1から、管の内側に円筒体を設けることによって熱分解管から管に沿って流れる流体への全体的な伝熱を増大させることが知られている。この本体は周囲の管からの輻射を受け、それを本体の周囲の流体に伝達する。この熱分解管内の流れは、管の長さに沿って主に軸方向である。
【0006】
特許文献2または特許文献3から、管の内面での層流層の厚さを減少させる渦巻流を促進し、内側壁から管の中心部への物質移動を促進し、それによって、直管の伝熱と比較して壁から離れる対流伝熱を増大させる螺旋形状をもった熱分解管を提供することが知られている。このデザインは、追加の圧力降下に関して最小の不利益とともに伝熱を増大させるというさらなる利点を有する。
【0007】
特許文献4から、分解炉を通る流れの二重の流路を提供する熱分解管を有する分解炉を提供することが知られている。2つの上流部があり、次いで2つの上流部が共通の下流部に流れ込むときに流れの方向の反転がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2005/068926号
【文献】国際公開第2006/032877号
【文献】国際公開第2010/032024号
【文献】国際公開第2005/075607号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、流体の流れを運ぶための熱分解管を含む分解炉であって、熱分解管が一緒に環状流路を画定する半径方向内側本体と半径方向外側壁とを含み、半径方向内側本体と半径方向外側壁との少なくとも一方が、流体が熱分解管に沿って流れるにつれて流体の循環を促進するように熱分解管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有する分解炉が提供される。
【0010】
環状流路内の流体の流れの循環の促進は、流体への伝熱を改善する。旋回流は、軸方向の速度成分いわゆる渦巻流の上に接線方向の速度成分も半径方向の速度成分も有する流体をもたらすことができる。したがって、環状通路は、少なくとも実施形態の説明では、環状渦巻流路として考えられる。環状通路内の渦巻流が対流伝熱を改善する一方、内側本体の存在が環状流路を作り、同時に表面積対体積比を増大させる。少ない滞留時間を達成し、収率すなわち所望の分解生成物の生成を改善することが可能である。
【0011】
環状渦巻流路の例としては、半径方向内側本体も半径方向外側壁も熱分解管の長手方向に螺旋状に延びるそれぞれの中心線を有する第1のタイプの熱分解管と、半径方向内側本体が直線の中心線(または1つの平面内でのみ湾曲した中心線)を有し、半径方向外側壁が螺旋状に延びる中心線を有する第2のタイプと、半径方向内側本体が螺旋状に延びる中心線を有し、半径方向外側壁が直線の(または1つの平面内でのみ湾曲する)中心線を有する第3のタイプとが挙げられる。
【0012】
第3のタイプの実施形態は、半径方向内側本体のみが螺旋状に延びる中心線をもって形成される必要があり、半径方向外側壁は従来の管によって提供することができるという利点を有する。これにより、製造が比較的安価になる。
【0013】
流体は、エチレンおよび/または他のガス状生成物を製造するための分解炉の場合のようにガスであってもよく、またはビスブレーカ分解炉の場合のように液体であってもよい。
【0014】
熱分解管は、分解炉内にその全長、例えば分解炉の炉室または火室を通る全長に実質的に沿って環状流路を有することができる。
【0015】
ある実施形態では、熱分解管は、環状流路の下流の半径方向外側壁によって画定された非環状流路を備える。環状流路を設けることによって、流体への改善された熱流束が得られ、熱分解はより早く始まる。しかし、少なくともエチレンまたは他のガス状生成物を製造するための分解炉の場合、環状区域の幅が限られているため、これはコークス堆積物を収容する能力の低下を犠牲にして、もってコークスの形成が多い区域の非環状流路と比較して相対的な圧力降下の増加をもたらす。したがって、環状流路の下流に非環状流路を設けることによって、コークス形成の増加の結果としての圧力降下の増加が減少し、コークス堆積の増加に対処するためにより大きな断面積が利用可能になる。さらに、この下流の通路では、望ましい反応生成物の濃度は増大し、もって二次反応によってコークス堆積物と共に副産物を生成する傾向がある。この領域では、生成物の濃度および対応する二次反応の反応速度ができるだけ低くなるように低い炭化水素分圧を有することが有益である。これらすべては、非環状流路によって達成される。したがって、環状流路の下流に非環状流路を設けることにより、コークス層の厚さを受け入れ、望ましい反応生成物の収率に対する圧力降下の影響を最小にするために、より大きな断面積が利用可能になる。
【0016】
実施形態では、非環状流路において、半径方向外側壁内の全断面積が流れのために利用可能である。すなわち、半径方向内側本体はない。
【0017】
熱分解管は、分解炉内の熱分解管の長さの75%以下に延びる環状通路を有していてもよい。実施形態では、環状流路は、分解炉内の熱分解管の長さの70%または65%または60%または55%または50%以下に延びていてもよい。分解炉内の熱分解管の残りの部分は、非環状通路を含んでいてもよい。
【0018】
非環状流路は、熱分解管の長手方向に螺旋状に延びる中心線を有する半径方向外側壁によって画定することができる。あるいは、非環状流路は、熱分解管の長手方向に直線の(または単一の平面内でのみ湾曲している)中心線を有する半径方向外側壁によって画定することができる。
【0019】
環状流路の半径方向外側壁は、非環状流路の半径方向外側壁の内径よりも大きな内径を有していてもよい。これは、流れが非環状流路に入るときに平均軸流速が減少するあらゆる傾向を減少させるのに役立ち得る。環状流路の半径方向外側壁と非環状流路の半径方向外側壁との間に移行部が設けられてもよい。
【0020】
熱分解管は、各々それぞれの環状流路を一緒に画定するそれぞれの半径方向内側本体とそれぞれの半径方向外側壁とを有する複数の分岐部を含み、各分岐部の半径方向内側本体と半径方向外側壁との少なくとも一方は、流体流れの循環を促進し、分岐部は分岐点で一緒につながり、非環状流路は分岐点の下流に設けられる。
【0021】
このような構成は、表面積対体積比を望ましく増加させ、特に渦巻流を発生させる流体流れの循環を促進し、それによって複数の分岐部がある熱分解管のより上流部での伝熱を改善する。さらに下流の圧力降下は、非環状流路を設けることによって最小にすることができる。
2つの分岐部があってもよく、その場合、分岐点はY分岐点であってもよい。
【0022】
熱分解管が分岐部を含む実施形態では、分岐部のうちの少なくとも1つの環状通路の長さは、その分岐部の長さプラス分岐点の下流に延びる熱分解管の長さの75%または70%または65%または60%または55%または50%以下であってもよい。
【0023】
熱分解管は入口からそこへ下向きに延びていてもよい。したがって、熱分解管に沿った流体の流れは下向きであり得る。熱分解管の頂部に入口があると、任意の鋤で掘られたコークスは、入口を塞がずに、それはデコーキング中に急速に燃焼し得る場所に行きつくことができる。これは管の通過数には関係ない(以下でさらに説明する)。
【0024】
熱分解管は、分解炉のチャンバを貫通する単一の流路を有することができる。それは、例えばチャンバの一端に入口を有し、他端に出口を有することができる。このような構成は滞留時間を著しく短縮する。いくつかの単一の流路の実施形態では、熱分解管は、それによって熱分解管に沿った流体の流れの通路が下方向である入口から下向きに延びている。これは、破砕したコークスに関して上記利点を有する。
【0025】
熱分解管は、分解炉のチャンバすなわち二重の流路の熱分解管を2度貫通していてもよい。これらの実施形態では、それぞれの流路はUベンド管によってつなぐことができる。この構成は、ナフサや軽油などの液体原料を熱分解するよりも長い滞留時間を必要とするエタンやプロパンなどのガス状原料を分解するのに、より魅力的なこともある。例えば、熱分解管は、チャンバの上部領域に入口と出口とを有し、流体の流れは、最初に第1の通過では下向きであり、次いで第2の通過では上向きである。
【0026】
単一の流路配置では、例えば上から下の下降流配置で、環状流路の下流に非環状流路があってもよい。二重の流路配置では、第1の流路は環状流路を含み、第2の流路は非環状流路を含んでもよい。
【0027】
熱分解管が分解炉を通る二重の流路を提供する実施形態では、熱分解管は、第1の流路内の上流部と第2の流路内の下流部とを含むことができ、下流部は、少なくともある程度まで、分解炉のバーナーに対して上流部の影の中にあり得る。したがって、上流部は、下流部の外側で受けた熱がより均一になるという利点を生かしながら下流部よりも多く輻射熱にさらされ得る。これにより、この下流部の熱分解管の壁のピーク温度を減少させることができ、したがって、ピークの熱分解管の壁の温度が冶金学的限界に近づく傾向を減少させることができる。これは、炉がデコーキング手順の間に操作され得る期間を延長することができる。
【0028】
環状流路分岐部がつながっている実施形態では、それらは、流れの方向がほぼ同じまま、例えば流れの下向きにつながっていてもよい。したがって、単一の流路配置では、各々環状流路を画定する2つの分岐部がY分岐点でつながり、次いで流れは非環状流路内を同じ一般的な方向、例えば下向きに続くことができる。
【0029】
代替の構成では、複数の分岐部内の流体流れは、ほぼ平行で同じ方向、例えば下向きであり得、分岐部がつながっている分岐点の下流の非環状流路内の流体流れの方向は、反対方向、例えば上向きであってもよい。したがって、分岐点の後にUベンド管を設けることができ、または各分岐部に対して1つの複数のUベンド管を設けることができ、分岐点はUベンド管の下流に設けられる。いずれにしても、非環状流路は、少なくともある程度まで、分解炉のバーナーに対して上流の分岐部の少なくとも1つの影の中にあり得る。したがって、環状流路をもった分岐部は、下流部の外側で受けた熱がより均一になるという利点を生かしながら下流部よりも多く輻射熱にさらされる。上記のように、これにより、この下流部の熱分解管の壁のピーク温度を減少させることができ、したがって、ピークの熱分解管の壁の温度が冶金学的限界に近づく傾向を減少させることができ、それによって炉がデコーキング手順の間に操作され得る期間を延長することができる。
【0030】
熱が分解炉に供給される方法にはいくつかの選択肢がある。少なくとも1つのバーナーは、炉室の上部領域または炉室の底部領域または炉室の頂部と底部との間の中間領域(すなわち側面燃焼)に設けられてもよく、または前記の任意の組合せがあってもよい。頂部燃焼のみの場合、煙道または排気ガスは下向きに流れることができる。頂部燃焼と側面燃焼との組合せの場合、煙道ガスは下向きに流れることができる。側面燃焼のみの場合には、煙道ガスは下向きまたは上向きに流れることができる。底部燃焼のみの場合、煙道ガスは上向きに流れることができる。底面燃焼と側面燃焼との組合せの場合、煙道ガスは上向きに流れることができる。
【0031】
ある実施形態では、分解炉は、熱分解管が延びる分解炉の燃焼領域に少なくとも1つのバーナーを含み、熱分解管は炉内で燃焼領域から離れて下流に延びる。頂部燃焼炉の場合、熱分解管は炉内を下流にかつ燃焼領域から離れて下流に延びていてもよい。
【0032】
熱分解管の上流部への熱流束を最大にすることによって、あらゆるコークスが管の内面にわたってより均等に分配され、管の材料がその可能性を最大限に利用され、そして内側本体がより効果的に使用される。熱分解管の上流部に燃焼領域を設けることによって、流体が出るときよりも低い温度で熱分解管に入るため、最大管表皮温度まで、より多くの余裕が得られ、より高い熱流束が可能になる。さらに、環状流路が熱分解管の上流部に設けられている場合、少なくとも1つのバーナーによって外側管温度が上昇すると、半径方向外側壁から内側本体への輻射伝熱が増大する。これにより、熱分解が始まる点までの流体温度の上昇が改善され、熱分解反応転化率が上昇し、そして反応温度レベルが増大し、収率スレート、すなわち望ましい反応生成物の出力流体中の濃度が改善される。
【0033】
熱分解管は入口からそこへ下向きに延びてもよい。例えば、熱分解管への入口は炉室の頂部にあってもよく、出口は炉室の底部にあってもよい。あらゆる破砕したコークスは、入口から離れて管を落下し得、もってその後入口を塞がず、デコーキング中に急速に燃焼し得る場所に行きつくことができる。
熱分解管内の流体の下向きへの流れの場合には、頂部燃焼および/または側面燃焼が有益である。
【0034】
流体流れの循環の促進は、環状流路内に突出する螺旋状フィンなどの少なくとも1つの螺旋状突起を有する半径方向内側本体および/または半径方向外側壁によって、さらに改善され得る。例えば、半径方向内側本体は、流体流れの循環を促進するために少なくとも1つの螺旋状突起を備えた本体を有することができる。
【0035】
環状通路は、中断されることなく実質的に連続的に内側本体の周りに延びることができる。したがって、環状通路が内側本体の周りに円周方向に延びるときに環状通路をさえぎるバッフルまたはフィンは、なくてもよい。
【0036】
半径方向内側本体も半径方向外側壁も熱分解管の長手方向に螺旋状に延びるそれぞれの中心線を有する実施形態では、螺旋循環の軸と螺旋状の中心線とは一致してもよい。したがって、螺旋状の中心線は同じピッチおよび振幅を有してもよく、同位相でもよい。
【0037】
このような構成では、熱分解管の長手方向と直角に測定される環状流路の幅は管の周りの異なる円周点で同じであろう。この幅は、好ましくは半径方向外側壁の直径の50%以下、より好ましくは半径方向外側壁の直径の40%または35%または30%または25%以下である。内側本体と半径方向外側壁との間の隙間を比較的小さくすると有益である。所与の流速に対する平均流体速度は、より小さな半径方向幅とともに増大し、対応して伝熱が増大するため、これは、半径方向外側壁の温度を低下させることができる。しかし、圧力降下は増大する。その場合、管は、管の金属温度ではなくて圧力降下によって制限されるようにデザインすることができる。管の金属温度を低下させることによって、クリープおよび浸炭速度が低下する。
【0038】
熱分解管の長手方向と直角に測定される環状流路の幅は、管の円周方向に変化してもよい。幅は、内側本体の第1の側面上の最小値から第1の側面と正反対の第2の側面上の最大値まで円周方向に増大してもよい。幅は、第1の側面から第2の側面へ円周方向に漸進的に増大してもよい。同じ円周方向に続いて、幅は、第2の側面から第1の側面へ漸進的に減少してもよい。
【0039】
熱分解管の長手方向と直角に測定される環状流路の変化する幅は、例えば、内側本体が直線の中心線(または単一の平面内で湾曲した中心線)を有し、半径方向外側壁が螺旋状の中心線を有する第2のタイプの熱分解管について生じる。それは、内側本体が螺旋状の中心線を有し、半径方向外側壁が直線の(または単一の平面内で湾曲した)中心線を有する第3のタイプの熱分解管についても生じる。
【0040】
ある実施形態では、熱分解管の長手方向と直角に測定される環状流路の最大幅は、半径方向外側管の直径以下であり、その直径の半分以下であり得る。
内側本体が比較的高い輻射率を有すると好都合である。実際には、これは、それが光沢面ではなくて、つや消し面を有することを意味する。このようなつや消し面は、コークス層が形成される表面上に得られる。
【0041】
内側本体を熱分解管内に支持するために少なくとも1つの支持体を設けることができる。長手方向に離間した支持体を設けてもよい。第1のこのような支持体は、半径方向外側壁および内側本体に固定されてもよく、第2のこのような支持体は、半径方向外側壁に固定され、かつ内側本体の半径方向外向きに位置しているが、そこへ固定されていない少なくとも1つの支持部材を含み得る。第1の支持体は、内側本体の重量を支え得る。第2の支持体は、半径方向外側壁と内側本体との間の相対移動を可能にしながら内側本体を配置することを補助することができる。これは、示差熱移動および示差クリープの場合に有益である。第2の支持体の支持部材は、内側本体の半径方向外側に位置しているが内側本体にそこへ固定されていないリングであり得る。支持部材は、外側壁から支持部材まで半径方向内向きに突出する半径方向リブによって半径方向外側壁に固定されてもよい。
【0042】
内側本体は、半径方向外側壁に接触するのを妨げられ得る。それは、環状流路および比較的均一な熱分布のための一貫した形状を提供するために、ほぼ中央の位置に保持され得る。
内側本体は中実または中空であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、内側本体は中空体である。これは中実体よりも軽い。また、中空体の内側のガスは、例えば、より下のより熱い下流部からより高いより冷たい上流部への垂直の伝熱において、内側本体の一部から別の部分への伝熱を補助することができる。
他の実施形態では、例えば、より小さな直径の内側本体の場合には、内側本体は中実体であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明のある好ましい実施形態を、例として、添付図面を参照してここで説明する。
【
図1】第1のタイプの熱分解管の一部の長手方向略断面図である。
【
図2】
図1の線ll-ll上で撮られた
図1の熱分解管を通る横断面図である。
【
図3】第2のタイプの熱分解管の一部の長手方向略断面図である。
【
図4】
図3の線IV-IV上で撮られた
図3の熱分解管を通る横断面図である。
【
図5】第3のタイプの熱分解管の一部の長手方向略断面図である。
【
図6】
図5の線VI-VI上で撮られた
図5の熱分解管を通る横断面図である。
【
図7】第1のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図8】第2のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図9】
図8の線IX-IX上で撮られた横断面図である。
【
図10】
図8の線X-X上で撮られた横断面図である。
【
図11】第3のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図12】フィンを含むように修正された、第1のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図13】フィンを含むように修正された、第2のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図14】フィンを含むように修正された、第3のタイプの熱分解管の長手方向略断面図であり、その全長を示す。
【
図15】熱分解管が分解炉の長さを2度貫通する二重の流路配置で使用するための、第2のタイプの熱分解管の長手方向略断面図である。
【
図16】熱分解管が分解炉の長さを2度貫通する二重の流路配置で使用するための、第2のタイプの熱分解管の変形の長手方向略断面図である。
【
図17】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図18】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図19】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図20】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図21】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図22】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図23】熱分解管を有する分解炉の垂直面における略断面図である。
【
図24】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【
図25】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【
図26】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【
図27】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【
図28】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【
図29】更なる変形例の熱分解管を通る長手方向略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1及び
図2を参照すると、熱分解管1は、内側本体3を円周方向に延びるように囲む半径方向外側管状壁2を備えている。内側本体3は、中空体であり、それによって半径方向内側壁および半径方向外側管状壁が、この実施形態ならびに他の図示および説明される実施形態ではガスである流体の流れFのための環状流路5を一緒に画定する半径方向内側壁4を熱分解管に提供する。本実施形態は、エチレンを製造するための分解炉、すなわちエチレン分解炉に適用可能である。
【0046】
熱分解管1は、この実施形態では直線の、螺旋循環軸とも呼ばれることもある長手方向中心軸6を有する。長手方向中心軸6は、長手方向に見たときの熱分解管の「設置面積」を含む仮想包絡柱9の中心軸に沿って位置している。半径方向外側管状壁2は、長手方向中心軸6の周りの螺旋流路を辿る中心線7を有する。内側本体3は、長手方向中心軸6の周りの螺旋流路を辿る中心線8を有する。この実施形態では、半径方向外側管状壁2の螺旋状の中心線7と内側本体3の螺旋状の中心線8とは一致している。すなわち、中心線は同じピッチおよび振幅であり、互いに同位相である。流路5は、螺旋状に曲がりくねる環状流路である。
【0047】
内側本体3は、長手方向に見たときの内側本体の「設置面積」を含む仮想包絡柱10内に含まれている。長手方向中心軸6は、仮想包絡柱10の中心軸に沿って位置している。
螺旋状の中心線7、8は、振幅AおよびピッチPを有する。半径方向外側管状壁2の内径はD0として示され、内側本体3の外径はD1として示される。この明細書では、螺旋線の相対振幅は、螺旋線の振幅Aを半径方向外側管状壁の内径D0で割ったもの、すなわちA/D0とみなされる。相対ピッチは、ピッチPを半径方向外側管状壁の内径D0で割ったもの、すなわちP/D0とみなされる。
環状流路5は、長手方向中心軸6に対して半径方向に幅Wを有する。この第1のタイプの熱分解管では、幅Wは流路5の環状部の周りで一定である。
【0048】
図3及び
図4は、第2のタイプの熱分解管1を示す。
図1及び
図2で使用されているものに対応する参照番号が適宜使用される。第2のタイプは、内側本体3が螺旋状ではなくて円筒形の形状を有するという点で第1のタイプと異なる。内側本体3は、中空体であり、それによって半径方向内側壁および半径方向外側管状壁が、ガスの流れFのための環状流路5を一緒に画定する半径方向内側壁4を熱分解管に提供する。
【0049】
円筒形の内側本体3の中心線8は、長手方向に見たときの半径方向外側管状壁2を含む仮想包絡柱9の中心軸に沿って位置する熱分解管の長手方向中心軸6上に位置している。したがって、この第2のタイプの熱分解管の場合には、内側本体3は直線の中心線8を有する。この場合、長手方向に見たときの内側本体3の「設置面積」を含む仮想包絡柱10は、内側本体それ自体の円筒形状に対応する。
半径方向外側管状壁2は螺旋状の中心線7を有し、この中心線は振幅AおよびピッチPを有する。
【0050】
本効果は、環状流路5が螺旋形状を有することである。長手方向に横断する平面内の流路を示す
図4に見られるように、流路5は、最小幅W
minの横断面と最大幅W
maxの横断面とを有する。横断面で見たときの最小幅W
minの位置も最大幅W
maxの位置も、熱分解管の長さに沿って、すなわち長手方向に対して回転する。したがって、流路5は、螺旋状に曲がりくねる環状流路である。
半径方向外側管状壁2の内径はD
0として示され、内側本体3の外径はD
1として示される。
【0051】
図5及び
図6は、第3のタイプの熱分解管1を示す。
図1及び
図2で使用されているものに対応する参照番号が、適宜
図5および6で使用される。第3のタイプは、半径方向外側管状壁2が螺旋形状を有しているのではなくて円筒形であるという点で第1のタイプと異なる。内側本体3は、中空体であり、それによって半径方向内側壁および半径方向外側管状壁が、ガスの流れFのための環状流路5を一緒に画定する半径方向内側壁4を熱分解管に提供する。
【0052】
この第3のタイプについての熱分解管の長手方向中心軸6も、長手方向に見たときの半径方向外側管状壁2の中心線7である。この場合、長手方向に見たときの熱分解管の「設置面積」を含む仮想包絡柱9は、円筒形の半径方向外側管状壁2に対応する。
内側本体3は螺旋形であり、その中心線8は、熱分解管の長手方向中心軸6の周りの螺旋流路を辿る。内側本体3は、長手方向に見たときの内側本体の「設置面積」を含む仮想包絡柱10内に含まれる。長手方向中心軸6は、仮想包絡柱10の中心軸に沿って位置している。
内側本体3の螺旋状の中心線8はピッチPおよび振幅Aを有する。
【0053】
従って、この第3のタイプの熱分解管の場合には、半径方向外側管状壁2は直線の中心線7を有する一方、内側本体3は螺旋状の中心線8を有する。本効果は、環状流路5が螺旋形状を有することである。長手方向に横断する平面内の流路を示す
図6に見られるように、流路5は、最小幅W
minの横断面と最大幅W
max横断面内とを有する。横断面で見たときの最小幅Wminの位置も最大幅Wmaxの位置も、熱分解管の長さに沿って、すなわち長手方向に対して回転する。したがって、流路5は螺旋状に曲がりくねる環状流路である。
半径方向外側管状壁2の内径はD
0として示され、内側本体3の外径はD
1として示される。
【0054】
図1乃至
図6は、第1、第2および第3のタイプの熱分解管を示す。半径方向外側壁2および/または内側本体3は、螺旋状の中心線を有するように押出加工によって形成することができる。その場合、半径方向外側壁2および/または内側本体3は、螺旋循環軸、すなわち長手方向中心軸6と直角の平面内で円形であってもよい。あるいは、半径方向外側壁2および/または内側本体3は、螺旋状の中心線を有するように円筒形の管または棒から形成されてもよい。その場合、半径方向外側壁2および/または内側本体3は、螺旋状の中心線7および/または8と直角な平面内で円形であってもよい。
【0055】
図7は、分解炉を貫通する単一の流路を提供するための分解炉に取り付けるべき形態の第1のタイプの熱分解管1を示す。熱分解管1は、半径方向外側管状壁2と内側本体3とを有する環状渦巻流路31の形態の主要部を有する。熱分解管1は第1のタイプであるため、半径方向外側管状壁2も内側本体3も螺旋状の中心線を有する。熱分解管1は上端部に入口部40を有し、下端部に出口部42を有する。入口部40も出口部42も円筒形であり、それぞれ直線の中心線を有する。第1の上部移行部47は、上部入口部40と環状流れ部31との間に位置しており、第1の下部移行部50は、環状流れ部31と出口部42との間に位置している。
【0056】
その下端において、第1の上部移行部47は、熱分解管1の環状渦巻流路31の半径方向外側管状壁2につながっている。それは、その直線の長手方向中心軸をもった上部入口部40から螺旋状の中心線7をもった半径方向外側管状壁2への移行をもたらす(
図1参照)。
第1の下部移行部50の上端部は、環状渦巻流路31の半径方向外側管状壁2の下端部につながっている。したがって、第1の下部移行部50は、その螺旋状の中心線7をもった半径方向外側管状壁2からその直線の中心線をもった出口部42への移行をもたらす。
内側本体3は、その上端部に、内側本体3の外側および半径方向外側管状壁2の内側の周りで第1の上側移行部47から環状流路5に入る流れFを誘導するように構成されているオジーブ(分布曲線)60を有する。半径方向外側管状壁2も内側本体3も共に一致する螺旋状の中心線を有する。
内側本体3は、その下端部に、流れFが環状流路を離れるときに流れFを誘導するように構成されている第2のオジーブ(分布曲線)60を有する。
【0057】
内側本体3をその下端部に半径方向外側管状壁2内に保持するための第1の支持機構51が設けられている。
図8に示し、さらなる詳細が
図9及び
図10に見られる第2のタイプの熱分解管について同様の支持機構51が設けられている。支持体61は、内側本体3の下部領域に設けられ、半径方向外側管状壁2と内側本体との間に半径方向に延びる3つの等角度に間隔をあけた半径方向支持部材75から成る。半径方向支持部材75は、熱分解管1を通る流れFに対する乱れを最小にするように長手方向に低側面を有する。支持体61の半径方向支持部材75は、半径方向外側管状壁2に対する中央位置に内側本体3を保持する。支持体61は、内側本体3の重量を支える。
【0058】
戻って
図7を参照すると、内側本体3の上端部には、内側本体3を半径方向外側管状壁2内に中央に保持するための第2の支持機構52が設けられている。第2の支持機構は、スペーサリング(図示せず)の半径方向内側に画定された空間内に上向きに突出するガイドピン68を含む。スペーサリングは、半径方向外側管状壁2からスペーサリングまで半径方向内側に突出し、それによって、それを所定の位置に保持する3つの等角度に間隔をあけた半径方向支持部材67によって支持されている。ガイドピン68は、半径方向外側管状壁2の内側のほぼ中央位置に留まるようにスペーサリングによって緩く保持されている。スペーサリングによって内側本体3の頂部でガイドピン68にもたらされる緩い支持によって、半径方向外側の管状壁2および内側本体3の相対的な熱膨張が許容される。
【0059】
図8は、分解炉内で単一の流路の熱分解管として使用するための(
図3及び
図4に示すような)第2のタイプに基づく熱分解管1を示す。図示された熱分解管1は、螺旋状の中心線をもった半径方向外側管状壁2と直線の中心線をもった内側本体3とを有する環状渦巻流部31の形態の主要部を有する。
第1の上部移行部47は、上部入口部40と環状流れ部31との間に位置しており、第1の下部移行部50は、環状流れ部31と出口部42との間に位置している。第1の上部移行部47は、その下端部で熱分解管1の環状渦巻流部31の半径方向外側管状壁2につながっている。それは、その直線の長手方向中心軸をもった上部入口部40から、その螺旋状の中心線7をもった半径方向外側管状壁2への移行をもたらす(
図3参照)。
【0060】
第1の下部移行部50の上端部は、環状渦巻流部31の半径方向外側管状壁2の下端部につながっている。したがって、第1の下部移行部50は、その螺旋状の中心線7をもった半径方向外側管状壁2から、その直線の中心線をもった出口部42への移行をもたらす。
内側本体3は、その上端部に、内側本体3の外側かつ半径方向外側管状壁2の内側の周りで第1の上部移行部47から環状流路5に入る流れFを誘導するように構成されているオジーブ(分布曲線)60を有する。
内側本体3は、その下端部に、流れFが環状流路を離れるときに流れFを誘導するように構成されている第2のオジーブ(分布曲線)60を有する。
この場合、内側本体3は、螺旋状ではなく直線の中心線を有するが、
図7に関して説明したのと同様の方法でその下端部で支持されている。さらなる詳細を
図9に示す。したがって、支持機構51は、内側本体3の下部領域に設けられた支持体61を有する。
【0061】
支持体61は、半径方向外側管状壁2と内側本体3との間に半径方向に延びる3つの等角度に間隔をあけた半径方向支持部材75から成る。
図9で見てわかるように、半径方向支持部材75は、熱分解管1を通る流れFに対する乱れを最小にするように長手方向に低側面を有する。支持体61の半径方向支持部材75は、内側本体3を半径方向外側管状壁2に対して中央位置に保持する。支持体61は、内側本体3の重量を支える。円周方向に隣接する半径方向支持部材75間の角度120°が
図9に示されている。
【0062】
内側本体3の上端部には、内側本体3を半径方向外側管状壁2の中央に保持するための第2の支持機構52が設けられている。第2の支持機構52は、内側本体3が半径方向内側に延びる空間を画定するスペーサリング71を含む。スペーサリング71は、半径方向外側管状壁2からスペーサリング71まで半径方向内側に突出し、それによって、それを所定の位置に保持する3つの等角度に間隔をあけた半径方向支持部材67によって支持されている。円周方向に隣接する半径方向支持部材67間の角度120°が
図10に示されている。
内側本体3は、半径方向外側管状壁2内のほぼ中央位置に留まるように、スペーサリング71と内側本体の頂部とによって緩く保持されている。スペーサリング71によって、その頂部で内側本体3にもたらされる緩い支持によって、半径方向外側の管状壁2および内側本体3の相対的な熱膨張が許容される。
【0063】
図11は、分解炉内で単一の流路の熱分解管として使用するための(
図5及び
図6に示すような)第3のタイプに基づく熱分解管1を示す。図示された熱分解管1は、直線の中心線をもった半径方向外側管状壁2と、螺旋状の中心線をもった内側本体3とを有する環状渦巻流部31の形態の主要部を有する。
第2の上部移行部48は、上部入口部40と環状流れ部31との間に位置しており、第2の下部移行部53は、環状流れ部31と出口部42との間に位置している。
【0064】
第2の上部移行部48は、その下端部で熱分解管1の環状渦巻流部31の半径方向外側管状壁2につながっている。それは、円錐形であり、直線の長手方向中心軸と、その直線の中心線7をもった半径方向外側管状壁2の直径よりも小さな直径とを有する上部入口部40からの移行もたらす(
図5参照)。
第2の下部移行部53の上端部は、環状渦巻流部31の半径方向外側管状壁2の下端部につながっている。第2の下部移行部53は、円錐形であり、直線の中心線7とその直線の長手方向中心軸をもった出口部42の直径よりも大きな直径とを有する半径方向外側管状壁からの移行をもたらす。
【0065】
内側本体3は、その上端部に、第2の上部移行部48から内側本体3の外側および半径方向外側管状壁2の内側の周りの環状流路5に入る流れFを誘導するように構成されているオジーブ(分布曲線)60を有する。
内側本体3は、その下端部に、流れFが環状流路を離れるときに流れFを誘導するように構成されている第2のオジーブ(分布曲線)60を有する。
【0066】
内側本体3は、
図7に関して説明したのと同じである第1の支持装置51によってその下端部で支持されている。内側本体3の上端部は、
図7に関して説明したのと同じである第2の支持装置52によって支持されている。
図12は、分解炉内で単一の流路の熱分解管として使用するための(
図1および2に示すような)第1のタイプに基づく熱分解管1を示す。この場合、内側本体は、螺旋状に湾曲した長手方向フィン66が設けられている。螺旋状フィン66は、内側本体3の螺旋形状と同じ掌性をもった螺旋形状を有している。螺旋状フィン66、内側本体および半径方向外側管状壁2の位相は同相である。
【0067】
図13は、分解炉内で単一の流路の熱分解管として使用するための(
図3及び
図4に示すような)第2のタイプに基づく熱分解管1を示す。この場合、円筒形の内側本体3は、螺旋状に湾曲した長手方向フィン66を備えている。螺旋状フィン66は、半径方向外側管状壁2の螺旋形状と同じ掌性をもった螺旋形状を有している。螺旋状フィン66および半径方向外側管状壁2の位相は同相である。
図14は、分解炉内で単一の流路の熱分解管として使用するための(
図5及び
図6に示すような)第3のタイプに基づく熱分解管1を示す。この場合、内側本体は、螺旋状に湾曲した長手方向フィン66が設けられている。螺旋状フィン66は、内側本体3の螺旋形状と同じ掌性をもった螺旋形状を有している。螺旋状フィン66は、内側本体3と同相の螺旋形状を有している。
【0068】
図15は、熱分解管が分解炉の長さを2度貫通する二重の流路配置で使用するための(
図3および4に示すような)第2のタイプに基づく熱分解管1を示す。熱分解管は、ほぼU字形であり、その上流部UPすなわち「U」の上流のリムに環状渦巻流部31、およびその下流部DPすなわち「U」の下流のリムに環状渦巻流部35を有する。
本明細書に開示されている他のすべての渦巻流部35と同様に、渦巻流部31は内部本体を有しておらず、もってその中に画定された通路は非環状である。通路はほぼ円形の断面形状を有する。
【0069】
ガスの流れFは、直線の入口部40を介して入り、直線の出口部42を介して出る。第1の上部移行部47は、入口部40の下に、入口部40と環状渦巻流部31との間に位置している。第3の上部移行部49は、出口部42の下に、渦巻流部35と出口部42との間に位置している。第3の上部移行部49は、螺旋状の中心線をもった渦巻流部35とその直線の長手方向中心軸をもった出口部42との間の移行をもたらす。
第1の下部移行部50は、環状渦巻流部31の下に、その環状渦巻流部と第1の真線の中間部37との間に位置している。第3の下部移行部54は、第2の直線の中間部37の上に、その部分37と渦巻流部35との間に位置している。第3の下部移行部54は、その直線の長手方向中心軸をもった第2の直線の中間部37と、その螺旋状の中心線をもった渦巻流部35との間の移行をもたらす。Uベンド管部36は、第1および第2の直線の中間部37を接続するように構成されている。
【0070】
環状渦巻流部31は、第1の支持機構51によって支持される内側本体3をその下端部に含み、第2の支持機構52によって支持される内側本体3をその上端部に含む。内側本体3、それが支持されている半径方向外側管2、ならびにその支持機構51および52の形状は、
図8、
図9及び
図10に関して説明したものと同じである。
【0071】
図16は、Uベンド管部36の下流に渦巻流部35が設けられている代わりに、従来の流れ部分33があることを除いて、
図15と同様の熱分解管1を示す。これは、その下端部でUベンド管部36に直接接続しており、その上端部で出口部42に直接接続している。
図17は、熱分解管1が貫通する頂部燃焼火室12を有する分解炉11を示す。火室12の屋根には一対の下向燃焼バーナー20が設けられている。バーナーは、それによってバーナーの炎が火室12の中へ下向きに向けられる燃料/空気混合物を受けるように構成されている。火室12はL字形を有し、使用時に煙道ガス23がそこを通って火室から排出される煙道ガス出口24を含む。
【0072】
熱分解管1は、火室12を貫通する単一の流路をもたらすように構成されている。熱分解管は、環状渦巻流部31をもった上流部UPと、渦巻流部35をもった下流部DPとを有する。
直線の入口部40はガスの流れFを受けるように構成されている。入口部40は、火室の燃焼ゾーン25内の環状渦巻流部31に接続されている第1の上部移行部47に接続されている。中間移行部34は、環状渦巻流部31の下に、その環状渦巻流部とその渦巻流部35との間に設けられている。第3の下部移行部54は、渦巻流部35の下に、その渦巻流部と出口部42との間に設けられている。
【0073】
環状渦巻流部31は、
図3及び
図4に関して説明した第2のタイプの熱分解管に対応する形状を有する。それは、円筒形の内側本体3、螺旋状の半径方向外側管状壁2および螺旋状に曲がりくねる環状流路である環状流路5を有する。内側本体3の下端部の第1の支持機構51と内側本体の上端部の第2の支持機構52とを含む環状渦巻流部31のさらなる構成上の詳細は、
図8、
図9及び
図10に記載されたものに対応する。
図17の構成は、螺旋流路の上流に螺旋状に曲がりくねる環状流路を提供する。
【0074】
図18は、
図17のものと同様であり、したがって同じ特徴を示すために同じ参照番号を使用する分解炉の別の実施形態を示す。
図18の実施形態は、頂部燃焼炉室または火室12をもった分解炉11と、ガスの流れFのための単一の流路の構成で延びる熱分解管1とを含む。熱分解管1の上流部UPは、第2のタイプの熱分解管にしたがって構成され、
図17の実施形態と同じように、円筒形の内側本体3と螺旋状の半径方向外側管状壁2とをもった環状渦巻流部31を有する。しかし、上流部UPの下流で下流部DPは、
図17に示すような渦巻流部35ではなく、従来の流れ部分33、すなわち直線の中心線をもった円筒状の半径方向外側管状壁を有するものを含む。環状渦巻流部31は、第2の中間移行部39を介して従来の流れ部分33に接続され、螺旋から直線への移行をもたらす。
従って、
図18の実施形態では、熱分解管1は、螺旋状に曲がりくねる環状流路である環状流路5をもった上流部UPと、円筒形の半径方向外側管状壁を有し内側本体がない従来の円筒形の流れ部分である下流部DPとを有する。
【0075】
図19は、上から下へのガスの流れFのための火室12および単一の流路の熱分解管1を有する分解炉11の別の実施形態を示す。熱分解管1は、
図17のものと同じ形状を有し、もって、その図の説明は
図19の実施形態に適用可能である。
図19の火室は、
図17のものと同じでもある下向燃焼バーナー20を有し、もって、その説明はここでも適用可能である。
図19の実施形態と
図17の実施形態との間の違いは、火室12が火炎27を生成するための燃料/空気混合物21の入力を各々受けるための一対の側壁バーナー26を備えていることである。
【0076】
図20は、分解炉11の別の実施形態を示し、この場合、底部燃焼火室12を有する。一対の上部燃焼バーナー20が、燃料/空気混合物21のそれぞれの流れを受けるために火室12の床に設けられている。火室12は、上下逆「L」形であり、煙道ガス23を排出するための煙道ガス出口24を有する。
図20の分解炉は、
図17のものと同じ形状を有する熱分解管1を備えている。ガスの流れFは、上から下への単一の流路で熱分解管1を通り抜ける。
図17に関する熱分解管1の説明は、
図20の熱分解管1にも適用可能である。
【0077】
図20の実施形態の場合、燃焼ゾーン25は、火室12の下部にある。したがって、使用時、ガスの流れFは、火室の非燃焼ゾーンに位置する螺旋状に曲がりくねる環状流路である流路5から火室の燃焼ゾーン25内の渦巻流部35(環状ではない)内に流れる。
図21は、火室12と熱分解管1とを有する分解炉11の別の実施形態を示す。この実施形態の特徴は、
図20のものと同じであり、もって
図20の実施形態の説明は、
図21の実施形態に適用可能である。
図21の実施形態は、燃料/空気混合物21が供給されて火炎27を生成する側壁バーナー26をさらに備えている点で
図20のものと異なる。
【0078】
図22は、火室12と、火室を貫通して単一の流路で延びる熱分解管1とを有する分解炉11の別の実施形態を示す。熱分解管1の構成は、
図17のものと同じであり、もって
図17の説明は、
図22の実施形態にも適用可能である。
図22の実施形態は、分解炉が側面燃焼火室を有する点で
図17のものと異なる。複数の側壁バーナー26が火室12の側壁に設けられ、各々は燃料/空気混合物21の入力を受けて燃焼火炎27を生成する。側壁バーナー26は、3段に、火室12の屋根の近くの上段、次いで上段の下の2つのそれぞれの段に配置されている。したがって、火室12の燃焼ゾーンは火室のほぼ上半分にあり、熱分解管1の環状渦巻流部31はこの燃焼ゾーンを貫通する。環状流路を有しない渦巻流部35は、燃焼ゾーン25の下流に設けられている。
【0079】
図23は、火室12と熱分解管1とをもった分解炉11の別の実施形態を示す。
図23の実施形態では、煙道ガス23を排出するための煙道ガス出口24は、
図20のものと同じであるが、バーナーの配置が異なる。
図23では、火室12は、燃料/空気混合気流21を受けて火室内に火炎27を生成する複数の側面取付バーナー26を有する。側壁バーナー26は、3段に配置されており、火室の床の近くに下段、次いでその上に2段がある。使用時には、ガスの流れFは、燃焼ゾーンがない熱分解管1の上流部UPを下向きに通り抜けて燃焼ゾーン25に部分的に入り、環状渦巻流部31の下部は、側壁バーナー26の上段に隣接して位置している。次いで、流れFは、完全に燃焼ゾーン25内にある渦巻流部35内に下向きに続く。
【0080】
図15乃至
図23の実施形態では、各々環状渦巻流部31を有する上流部UPと非環状流れ部(従来の流れ部分33か、または渦巻流部35のいずれか)を有する下流部DPとを有し、環状流れ部の半径方向外側管状壁2の内径が非環状流れ部の半径方向外側壁2の内径よりも大きいことが理解されよう。
図24乃至
図29は、熱分解管1のデザインの変形を示す。すべてのこれらの変形では、熱分解管1は、単一の下流部DPに流れ込む2つの上流部UP1とUP2とを有する。各場合、各上流部は、環状渦巻流部31を含む。各下流部は、渦巻流部35か、または従来の流れ部分33のいずれか、すなわち直線の中心線をもった円筒形の半径方向外側管状壁を有するものを含む。
【0081】
図24及び
図25の実施形態は、分解炉を通るガスの流れFの単一の流路を提供する。各場合、2つの上流部UP1とUP2とは、2つの上流部の各々を流れる別々のガスが下流部DPで単一の流れに成るY分岐部38でつながっている。各上流部は、第2のタイプの熱分解管のデザインにしたがって構成されており、互いに同じ特徴を有する。各上流部UP1、UP2は、頂部に入口部40、その下に第1の上部移行部47、およびその下に螺旋状に曲がりくねる環状流路である流路5を提供する環状渦巻流部31を有する。環状渦巻流部31は、その下端部で、第2の中間移行部39を介してY分岐部38に接続されており、螺旋から直線への移行をもたらす。
【0082】
環状流路5を提供する2つの上流部UP1およびUP2の部分の構成は、
図8、
図9及び
図10に関して説明されたものに対応する。円筒形の内側本体3は、内側本体3の下端部の第1の支持機構51と、内側本体の上端部の第2の支持機構52とによって螺旋状の半径方向外側管状壁2の内側に支持される。支持機構に関するさらなる詳細は、
図8、
図9及び
図10の説明において上で説明されている。上流部と下流部UP1、UP2との特徴は、
図24及び
図25の実施形態において同じである。下流部DPは、これら2つの実施形態の間で異なる。
【0083】
図24の実施形態では、下流部DPは、渦巻流部35を提供するように螺旋状の外側管2を有する。渦巻流部35は内側本体を有さず、もって、そこに画定された通路は非環状である。通路はほぼ円形の断面形状を有する。第3の下部移行部54は、渦巻流部35の下に、渦巻流部と直線の出口部42との間に位置しており、螺旋から直線への移行をもたらす。
図25の実施形態では、Y分岐部38の下流に、
図24に示すような渦巻流部35ではなく、従来の流れ部分33が設けられている。従来の流れ部分33は、出口部42に直接接続されている。
【0084】
図26、
図27、
図28及び
図29の実施形態は、分解炉を通る流れFの二重の流路を提供する熱分解管に関する。各場合、流れの方向は、1つ以上のUベンド管によって、2つの上流部UP1およびUP2における下向きの流れ方向から単一の下流部DPにおける上向きの流れ方向へ逆にされる。各場合、2つの上流部UP1、UP2は、第2のタイプの熱分解管のデザインをもった環状渦巻流部31を有する。したがって、それらは各々円筒形の内側本体3と、螺旋形状をもった半径方向外側管状壁2と、螺旋状に曲がりくねる環状流路である流路5とを有する。
【0085】
図26の実施形態を参照すると、2つの上流部UP1、UP2は互いに同じ構成を有するため、それらの一方のみを説明する。各上流部UP1、UP2はそれぞれ入口部40を備えている。第1の上部移行部47は、入口部40の下に位置しており、環状渦巻流部31、すなわち螺旋状に曲がりくねる環状流路5を有する熱分解管のその部分につながっている。環状渦巻流部31の下端部では、第1の下部移行部50が直線の中間部37に接続され、今度はこの中間部37がUベンド管部36の1つのリムに接続されている。Uベンド管部36は、別の直線の中間部37に接続する別のリムを有しており、これは、Y-分岐部38に接続する。Y-分岐部38の上には、下流部DPの渦巻流部35に接続する第3の中間移行部41が設けられている。これは、Y分岐部の直線部分から、螺旋状の中心線をもったその半径方向外側管状壁2をもった渦巻流部35への移行をもたらす。第3の上部移行部49が、渦巻流部35の下端部と出口部42の上端部との間に設けられて、螺旋から直線への移行をもたらす。
【0086】
図27の実施形態では、2つの上流部UP1およびUP2、下部移行部50、直線の中間部37、Uベンド管部36ならびにY-分岐部38の構成は、
図26の実施形態と同等の特徴のものと同じであり、したがって、
図26に関するそれらの説明は、
図27に適用可能である。
図27の実施形態は、下流部DPが渦巻流35ではなく従来の流れ部分33を有する点で
図26のものと異なる。その上端部では従来の流れ部分33はY-分岐部38に直接接続され、その下端部では直線の出口部42に直接接続されている。
【0087】
図26及び
図27の実施形態では、上流部UP1およびUP2の各々は、それぞれUベンド管部36を介してそれぞれの上流部UP1およびUP2からの流れがつながるY-分岐部38につながっていることが理解されるであろう。2つのUベンド管部36と、その一方の下流にY-分岐部38とがある。
図26も
図27もその熱分解管では、下流部DPは、上流部UP1とUP2との間に位置している。例えば
図17乃至
図23の構成のいずれかに示されるように、このような熱分解管が分解炉内のバーナー間に位置するとき、下流部DPは、上流部UP1およびUP2よりもバーナーからより熱遮蔽される。本効果は、炉からの入熱が、管がバーナーからの輻射熱に直接さらされる場合により大きくなり、そうでない場合により小さくなるのではなく、下流部DPを形成する熱分解管の一部の周囲の周りで比較的均一であることである。このデザインは、下流部の管の壁を半径方向に通る熱流束プロファイルが理想に近く、管の周囲の周りでほぼ同様のプロファイルを有する傾向にあるという利点を有する。これは、ピークの管金属温度と平均管金属温度との差が最小になり、したがって、デコーキング操作間の熱分解管の運転の長さを延長するようにピークの熱流束と平均熱流束との差を減少させる。
【0088】
図28及び
図29の実施形態は、2つの上流部UP1とUP2とがあり、そこからの流出が単一の下流部DPにつながっているという点で、
図26及び
図27のものと同様である。しかし、これらの実施形態の場合には、それ自体が2つの上流部UP1およびUP2によってそれぞれの第1の下部移行部50を介して供給されるY分岐部38によって供給される単一のUベンド管部36がある。それ以外にも、
図28及びび
図29の実施形態の2つの上流部UP1およびUP2の構成は、
図26の実施形態の上流部UP1およびUP2のものと同じであり、その説明は、
図28及び
図29の実施形態に適用可能である。
【0089】
図28の実施形態を参照すると、これは渦巻流部35を含む下流部DPを有する、すなわち、それは螺旋状の中心線をもった半径方向外側管状壁2を有する。Uベンド管部36は、直線の中間部37に接続しており、今度はこの中間部37は、第3の下部移行部54に接続している。これは、渦巻流部35への移行をもたらす。
図29の実施形態は、下流部DPが従来の流れ部分33である、すなわち直線の中心線をもった円筒形の半径方向外側管状壁を有する点で
図28のものとは異なる。従来の流れ部分33は、その上端部でUベンド管部36に直接接続され、その下端部で直線の出口部42に直接接続されている。
【0090】
図15乃至
図29の実施形態は第2のタイプの熱分解管を示しているが、これらの熱分解管は代替的に第1のタイプまたは第3のタイプのものであり得る。第1、第2または第3のタイプにかかわらず、それらは環状流路内に突出する少なくとも1つの螺旋状突起を含み得る。
上記のすべての実施形態には、ガスが熱分解管に沿って流れるときのガスの循環が促進される螺旋状に曲がりくねる環状流路がある。環状流路内のガスの流れの循環の促進は、ガスへの伝熱を改善する。旋回流は、軸方向速度成分の上に半径方向速度成分を有するガス、いわゆる渦巻流をもたらすことができる。環状通路内の渦巻流は対流伝熱を改善する一方、内側本体は環状流路を促進する旋回流を作るのに役立つ。対流伝熱が改善されるため、従来のものと比較してより短い長さの熱分解管を使用してガスへの同量の伝熱を達成することができる。これは、今度は、少ない滞留時間を達成し、そして収率、すなわち所望の分解生成物の生成を改善する。
【0091】
比較例
参照:van Goethem, M.W. .,Jelsma, E., 2014. Numerical and experimental study of enhanced heat transfer and pressure drop for high temperature applications; Chemical Engineering Research and Design 92, 663-671.
この記事は、従来の流れと渦巻流とを比較する計算流体力学(CFD)研究の結果を含む。
本明細書のために、環状渦巻流のCFD研究を同じ基準で行った。分解炉における3タイプの熱分解管の性能の間で比較を行った。結果を以下の表に示す。
【0092】
【0093】
「従来の」という見出しの欄は、直線の中心線をもった従来の熱分解管に関する。
「渦巻流」という見出しの欄は、螺旋状の中心線と非閉塞の流れ管腔を有する、すなわち内側本体を有しない、特許文献3から知られているタイプの熱分解管に関する。この場合、螺旋の振幅Aは16.8mmであり、ピッチPは434mmであった。表から、管の内径D0は56mmであったことが理解されよう。したがって、螺旋状の中心線の相対振幅はA/D0=30%であった。相対ピッチP/D0は7.75であった。
【0094】
「環状渦巻流」という見出しの欄は、内側本体3が螺旋状の中心線を有し、半径方向外側管2が直線の中心線を有する第3のタイプの熱分解管に基づく本発明のある実施形態に関する。螺旋状の中心線の振幅Aは23.4mmであり、ピッチPは605mmであった。
したがって、相対振幅A/D0は0.3であり、相対ピッチP/D0は7.75であった。
【0095】
本研究では、特定のパラメータがすべての実施例について同じになるように設定されたことに留意されたい。したがって、すべての熱分解管は同じ質量流量500kg/時を有していた。すべての管は、それらが同じ100%の「デューティ」を有するように大きさを決められる。これは、炉室からのその出口の管の外面温が、出口の管内の平均ガス温度よりも各例の同じ量だけ高いことを意味する。この温度差は190℃であった。
熱分解管への平均ガス入口温度と平均ガス出口温度もすべての場合に等しいように設定された。このように、管は、「デューティ」すなわち出口の温度差を上記のようにすることが各場合に同じであるように大きさを決められた(長さおよび直径)。
【0096】
すべての管は異なる摩擦特性を有している。この研究では、圧力降下もすべての場合について同じになるように寸法(長さおよび直径)を調整した。その場合、圧力降下が収率に対して有する効果はすべての場合について同一であると言うことができる。
結果は、熱分解管の形状が管の長さと滞留時間に対する効果を強調する表である。表から、螺旋状の中心線(渦巻流)をもった熱分解管は、熱分解管の長さを従来の熱分解管のものの72%まで減少させ、そして滞留時間は従来の熱分解管のものの84%まで減少することが理解され得る。
しかし、本発明のある実施形態を用いる例(「環状渦巻流」)は、これらのパラメータのより大きな減少をもたらす。長さは100%から54%に46%短縮されている。重要なことには、滞留時間は100%から77%に23%短縮されている。滞留時間は、これがプロセスの選択性を決定するため、最も重要なパラメータである。同じ温度および圧力の条件下の滞留時間の短縮は、一次分解生成物、すなわちエチレン、プロピレン、ブタジエンに対する選択性の改善をもたらす。