(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】メチルフェニデートまたはその塩を含有する経皮送達システムならびにその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4458 20060101AFI20220128BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220128BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220128BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220128BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220128BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220128BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K31/4458
A61P25/14
A61P25/00
A61K9/70 401
A61K47/34
A61K47/06
A61K47/32
(21)【出願番号】P 2018569164
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(86)【国際出願番号】 US2017039650
(87)【国際公開番号】W WO2018005593
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519000294
【氏名又は名称】タホ ファーマシューティカルズ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519000478
【氏名又は名称】リー,キャサリン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リー,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,シェン-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,タイジュン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0271792(US,A1)
【文献】国際公開第2007/064407(WO,A1)
【文献】特表2013-502419(JP,A)
【文献】特表2002-500178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188057(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0324575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0200663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0019385(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0030362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0078602(US,A1)
【文献】特開2009-073856(JP,A)
【文献】米国特許第06348211(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シリコーン接着剤層と;
(ii)(a)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩;および(b)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含み、
前記水素化合成炭化水素粘着付与剤が、前記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~80重量%であり、処置開始後2~18時間において、約6μg/cm
2/時~100μg/cm
2/時の範囲の流束速度を有
し、前記シリコーン接着剤層がバッキング層であるか、またはバッキング層と前記薬物含有マトリックス層との間にある、経皮送達システム。
【請求項2】
前記ゴム系ポリマーが、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムである、請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項3】
バッキング層、前記シリコン接着剤層、前記薬物含有マトリックス層、および剥離ライナーから本質的になる、請求項1または2のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項4】
前記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、前記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~20重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項5】
前記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、前記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約12、約15または約17重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項6】
前記シリコーン接着剤層が、100%のシリコーン接着剤を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項7】
前記薬物含有マトリックス層が、賦形剤をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項8】
前記薬物含有マトリックス層が、約20μm~約48μmの厚さを有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項9】
前記システムの1ユニットのサイズが、約2~60cm
2の寸法を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項10】
約18~25μg/cm
2/時の流束を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項11】
少なくとも約8~24時間の期間にわたって、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩を送達する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項12】
前記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、約15~19重量%であ
る、請求項1~
11のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項13】
前記シリコーン層が、前記シリコーン層を含まない対照経皮送達システムと比較して約50~80%、流束を増加させる、請求項1~
12のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項14】
前記賦形剤が、前記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を劣化させない、請求項1~
13のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項15】
前記薬物含有マトリックス層が、透過増強剤をさらに含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項16】
前記透過増強剤が、前記薬物含有マトリックス層の総重量の約5%~約25%を構成する、請求項1~
15のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項17】
実質的ゼロ次動態で前記メチルフェニデートまたはその塩を送達する、請求項1~
16のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項18】
前記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、5%未満の不純物を含む、請求項1~
17のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項19】
前記薬物含有マトリックス層が、色安定性であり、室温で、少なくとも2年の長期貯蔵期間にわたって、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の結晶成長を欠く、請求項1~
18のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項20】
被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約20~60%のメチルフェニデートを放出する、請求項1~
19のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項21】
被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約30%のメチルフェニデートを放出する、請求項1~
20のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項22】
約pH1.2のin vitro溶解媒体中で12時間以内に、少なくとも約80%のメチルフェニデートを放出する、請求項1~
21のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項23】
注意欠陥障害、注意欠陥/多動性障害、体位性頻脈症候群またはナルコレプシーを処置する
ために使用される請求項19~22のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項24】
(a)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーにより所望量のメチルフェニデートを溶解させて、混合物を形成するステップと;
(b)前記混合物を脱気するステップと;
(c)支持バッキング層上にシリコン層を積層するステップと;
(d)前記シリコン層上に前記混合物を積層して湿潤フィルムを形成するステップと;
(e)前記湿潤フィルムを乾燥させて乾燥フィルムを形成するステップと;
(f)前記乾燥フィルムに剥離ライナーを積層するステップと;
(g)任意選択で、前記乾燥フィルムを所望の寸法に切り出すステップと
を含む、請求項1~
23のいずれか一項に記載の経皮送達システムを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2016年6月30日に出願された米国仮出願第62/357,316号の利益を主張する。
【0002】
1.序文
本明細書では、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む経皮送達システムが開示される。疾患状態の処置のために治療有効量のメチルフェニデートを被検体に送達する方法もまた提供される。疾患状態は、注意欠陥障害(ADD)および/または注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの神経学的状態を含む。経皮送達システムを含むキット、ならびにそのような経皮送達システムを作製および使用する方法もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
2.背景
ADDおよび/またはADHDは、注意持続時間、衝動制御および自己制御からなる発達障害であることが報告されている。ADDおよび/またはADHDの病因は十分に研究されていないが、従来的に、メチルフェニデートが、小児および成人の両方のADDおよび/またはADHDの処置に使用されてきたことが知られている。また、メチルフェニデートは、限定されないが、体位性頻脈症候群およびナルコレプシーを含む疾患の処置にも使用できることも知られている。
【0004】
Daytrana(登録商標)(メチルフェニデート経皮システム)は、4つの投与量強度(10、15、20および30mg/日)で利用可能であり、用量に応じたパッチサイズ(それぞれ12.5、18.75、25および37.5cm2)を用いて9時間適用される。Daytrana(登録商標)は、アクリル系感圧接着剤を含むポリマーマトリックスである。しかし、パッチの剥離ライナーからの剥離力は時間の経過とともに増大する。このことは、患者が使用のために剥離ライナーを除去することに困難を感じているか、剥離ライナーを除去することができないとき、重大な問題を引き起こす。加えて、現在利用可能なメチルフェニデートパッチは、メチルフェニデートがパッチから漏れ出す、漏出の問題を有することが報告されている。現在利用可能なメチルフェニデートパッチはまた、大きなサイズのパッチは柔らかすぎて扱いにくいという問題をも引き起こす。この問題は、メチルフェニデートパッチが数カ月以上保管されている場合、より深刻である。米国特許出願公開第20140271792号明細書、米国特許出願公開第2016/0030362号明細書、およびNDA21-514CMCのレビューを参照されたい。加えて、現在利用可能なメチルフェニデートパッチは、透過および流束速度が低い(約9.1μg/cm2・時、米国特許出願公開第2016/0030362号明細書参照)。メチルフェニデートは皮膚感作を引き起こす(Daytrana(登録商標)添付文書、Cheng C. J of Pediatrics January 2017 Vol 180, P 241-246)ことから、低い透過速度を補う場合、より大きなパッチ(すなわち、37.5cm)が必要である。
【0005】
したがって、薬物装入およびパッチサイズを低減して、皮膚感作を最小限に抑え、適切な物理的および薬物動態学的性質を呈するように、高流束を有する最適なメチルフェニデート製剤を開発する必要がある。本明細書で開示する経皮送達システムは、市販されている既知のメチルフェニデート経皮送達システムよりも高い透過および流束速度を有する。これらの改善された性質のために、同等またはそれ以上の活性薬剤が送達され得る。本開示のパッチは、漏れやすい、柔らかすぎて扱いにくい、患者に快適に適用するには大きすぎるという、現在の望ましくない問題を有していない。本明細書で開示するメチルフェニデート経皮送達システムは、ADDおよび/またはADHD、体位性頻脈症候群、ならびにナルコレプシーに苦しんでいる、介護者および患者の生活の質を改善する(Findling R, Dinh S, CNS Drugs (2014) 28:217-228)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3.概要
(i)シリコーン層と;(ii)(a)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩;および(b)粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含む経皮送達システムは、市販されている現在のメチルフェニデート経皮送達システムに対して、透過および流束が約60~70%向上していることが見出されている。本明細書で開示するメチルフェニデート経皮送達システムの透過および流束におけるこの劇的な増加は、患者の生活に大幅な改善をもたらす。
【0007】
本開示の目的は、メチルフェニデートまたはその塩を活性成分として皮膚または他の身体表面を通して被検体に経皮送達するための方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]から[26]を含む。
[1](i)シリコーン接着剤層と;
(ii)(a)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩;および(b)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含み、処置開始後2~18時間において、約6μg/cm
2
/時~100μg/cm
2
/時の範囲の流束速度を有する、経皮送達システム。
[2]上記ゴム系ポリマーが、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムである、上記[1]に記載の経皮送達システム。
[3]バッキング層、上記シリコン接着剤層、上記薬物含有マトリックス層、および剥離ライナーから本質的になる、上記[1]または[2]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[4]上記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、上記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~20重量%である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[5]上記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、上記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約12、約15または約17重量%である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[6]上記水素化合成炭化水素粘着付与剤が、上記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~80重量%である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[7]上記シリコーン接着剤層が、100%のシリコーン接着剤を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[8]上記薬物含有マトリックス層が、賦形剤をさらに含む、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[9]上記薬物含有マトリックス層が、約20μm~約48μmの厚さを有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[10]上記システムの1ユニットのサイズが、約2~60cm
2
の寸法を有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[11]約18~25μg/cm
2
/時の流束を有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[12]少なくとも約8~24時間の期間にわたって、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩を送達する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[13]上記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、約15~19重量%であり、上記スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムが、上記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として約10~85重量%である水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[14]スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーが、上記薬物含有マトリックス層の総重量を基準として約60~85重量%である水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[15]上記シリコーン層が、上記シリコーン層を含まない対照経皮送達システムと比較して約50~80%、流束を増加させる、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[16]上記賦形剤が、上記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を劣化させない、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[17]上記薬物含有マトリックス層が、透過増強剤をさらに含む、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[18]上記透過増強剤が、上記薬物含有マトリックス層の総重量の約5%~約25%を構成する、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[19]実質的ゼロ次動態で上記メチルフェニデートまたはその塩を送達する、上記[1]~[18]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[20]上記メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、5%未満の不純物を含む、上記[1]~[19]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[21]上記薬物含有マトリックス層が、色安定性であり、室温で、少なくとも2年の長期貯蔵期間にわたって、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の結晶成長を欠く、上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[22]被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約20~60%のメチルフェニデートを放出する、上記[1]~[21]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[23]被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約30%のメチルフェニデートを放出する、上記[1]~[22]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[24]約pH1.2のin vitro溶解媒体中で12時間以内に、少なくとも約80%のメチルフェニデートを放出する、上記[1]~[23]のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
[25]注意欠陥障害、注意欠陥/多動性障害、体位性頻脈症候群またはナルコレプシーを処置する方法であって、経皮送達システムにおけるメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を局所投与するステップを含み、上記メチルフェニデートが、少なくとも18時間の期間にわたってそれを必要とする患者の皮膚または粘膜に送達するために実質的ゼロ次動態を達成するのに十分な量で存在し、上記経皮送達システムが、シリコーン接着剤層と、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含む、方法。
[26](a)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーにより所望量のメチルフェニデートを溶解させて、混合物を形成するステップと;
(b)上記混合物を脱気するステップと;
(c)支持バッキング層上にシリコン層を積層するステップと;
(d)上記シリコン層上に上記混合物を積層して湿潤フィルムを形成するステップと;
(e)上記湿潤フィルムを乾燥させて乾燥フィルムを形成するステップと;
(f)上記乾燥フィルムに剥離ライナーを積層するステップと;
(g)任意選択で、上記乾燥フィルムを所望の寸法に切り出すステップと
を含む、上記[1]~[25]のいずれか一項に記載の経皮送達システムを作製する方法。
経皮送達システムは、バッキング層、シリコーン層、薬物含有マトリックス層、および剥離ライナーを含む。このシステムは、副作用なしに長期期間にわたって被検体の皮膚または粘膜に適用することができる。
【0009】
一実施形態において、経皮送達システムは、(a)シリコン(silicon)接着剤層と;(b)以下の性質:(i)皮膚への良好な接着性;(ii)皮膚に実質的な外傷を伴わずに剥離または除去する能力;(iii)経時的な粘着性の保持を有する水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーとを含む。一実施形態では、薬物含有マトリックスを剥離ライナーに取られることなく、本明細書で開示する経皮送達システムから剥離ライナーを除去することができる。一実施形態において、本経皮送達システムは、他のメチルフェニデート経皮送達システムに伴う剥離放出の問題を持たない。一実施形態において、経皮送達システムは、シリコーン接着剤層を含まない経皮送達システムよりも適用後の残留薬物含有量が低い。バッキング層と薬物含有マトリックス層との間のシリコン接着層の存在は、経皮システムから被検体への薬物の透過を改善する。
【0010】
また、望ましい粘性および接着性を有する、改善された薬剤装入を有する経皮システムもまた開示される。一実施形態において、経皮システムは接着剤を含む。一実施形態において、経皮システムは、薬物含有マトリックス層中に2種類以上のコポリマーを含む。
【0011】
一実施形態において、本開示のメチルフェニデート経皮送達システムは、遊離塩基形態であり得る有効医薬成分としてのメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む。一実施形態において、メチルフェニデート経皮送達システムは、接着特性を付与するための粘着付与剤を含むゴム系ポリマーをさらに含む。一実施形態において、ゴム系ポリマーは、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムを含む。一実施形態において、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムは、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む。一実施形態において、メチルフェニデート経皮送達システムは、1種以上の賦形剤をさらに含む。一実施形態において、シリコーン接着剤層は、流束の増大をもたらす。一実施形態において、経皮送達システムは、使用者の皮膚の角質層におけるメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の溶解度と比較して、経皮送達システムにおけるメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の溶解度を低減することにより、経皮送達システムから使用者の皮膚に至るメチルフェニデートの流束を増大させた。
【0012】
重要なことは、1種以上の賦形剤は、流束を改善することができる一方で、好ましくは、経皮送達システムの安定性に影響を与えないことである。具体的には、メチルフェニデートは、塩基、水および酸化剤などの物質に対して反応性であるため、1種以上の賦形剤はメチルフェニデートを分解する物質ではないこと、またはメチルフェニデートを分解する物質を含有していないことが望ましい。したがって、1種以上の賦形剤は、塩基、水、酸化剤、および/またはメチルフェニデートを分解し得るが実質的に流束を増大させることが判明している任意の物質ではなく、それらを含有または誘引しないことが好ましい。一実施形態において、1種以上の賦形剤は、1種以上の飽和炭水化物を含む。より具体的には、特定の実施形態において、1種以上の賦形剤は、スクアラン、イソスクアラン、モノシクロスクアラン、ヘミスクアラン、セスキスクアラン、スクアレンおよび/またはシクロメチコンを含む。
【0013】
特定の実施形態において、経皮送達システムの安定性に有害な影響を与えずに流束を最適化するために、2種以上の賦形剤が組み合わされる。
【0014】
一実施形態において、メチルフェニデート経皮送達システムは、メチルフェニデート遊離塩基、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムを含み、ここで、メチルフェニデート遊離塩基は総重量の約5~約20%を占め、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムは総重量の約70~約90%を占める。
【0015】
組成物に接着特性を加えるため、一実施形態において、メチルフェニデート経皮送達システムは、粘着付与剤をさらに含む。一実施形態において、薬物含有マトリックスは、添加された任意の粘着付与剤を含有しない。さらに、経皮送達システムの安定性を高めるために、一実施形態において、経皮送達システムは、酸化防止剤をさらに含む。一実施形態において、メチルフェニデート経皮送達システムは、1種以上の賦形剤に加えて、1種以上の透過増強剤をさらに含む。
【0016】
特定の実施形態において、薬物経皮送達システムは、メチルフェニデートまたはその塩が分散したマトリックスを含む。特定の実施形態において、システムおよび方法は、ポリマーおよびポリマー中に均一に分散したメチルフェニデートまたはその塩から形成されたマトリックスを含む。
【0017】
一実施形態において、(i)バッキング層と;(ii)シリコーン接着層と;(iii)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムおよび水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む、薬物含有マトリックス層と;(iv)剥離ライナーとを含む経皮送達システムが、本明細書で提供される。
【0018】
特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約5~約30重量%である。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約8重量%、約12重量%、約14重量%または約20重量%である。特定の実施形態において、第1の層は、約75~78%、78~80%、80~90%、90~100%のシリコーンを含む。特定の実施形態において、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムおよび水素化合成炭化水素粘着付与剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約70~80重量%、80~95重量%である。
【0019】
特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、約20~約60μmの厚さを有する。
【0020】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、約20~約60μmの厚さを有する。特定の実施形態において、システムは、約10~44μg/cm2時の流束を有する。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬剤含有マトリックス層の約8~20重量%である。
【0021】
一実施形態において、本開示の経皮送達システムは、他のメチルフェニデート経皮送達システムと比較して、より小さい有効表面積を有するシステムにおいて高い流束を達成する。一実施形態において、経皮送達システムは、40cm2未満の寸法を有する単位サイズを有する。開示された経皮送達システムは、コスト節約および患者コンプライアンスの改善という大きな利点をもたらす。
【0022】
一実施形態において、経皮送達システムは、約pH1.2のin vitro溶解媒体中で、12時間以内に少なくとも約80%のメチルフェニデートを放出する。
【0023】
実際の流束は異なる場合があるが、特定の実施形態において、皮膚透過速度は、約3~4μg/cm2/時、約4~5μg/cm2/時、約5~6μg/cm2/時、約6~7μg/cm2/時、約7~8μg/cm2/時、約8~9μg/cm2/時、約9~10μg/cm2/時、約10~11μg/cm2/時、または約11~12μg/cm2/時、約12~15μg/cm2/時、約15~20μg/cm2/時、約20~25μg/cm2/時、約25~30μg/cm2/時、約30~35μg/cm2/時、約35~40μg/cm2/時、約40~45μg/cm2/時、または約45~50μg/cm2/時である。
【0024】
特定の実施形態において、流束は約13~44μg/cm2・時である。
【0025】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、後述するように製剤が被検体の皮膚に長期期間にわたって適用される場合に、累積送達量(本明細書では累積流束とも称される)の活性剤を被検体に供給するように製剤される。特定の実施形態において、経皮製剤は、約1~100μg/cm2、約100~150μg/cm2、約150~200μg/cm2、約200~250μg/cm2、約250~300μg/cm2、約300~350μg/cm2、約350~400μg/cm2、約400~450μg/cm2、約450~500μg/cm2、約500~550μg/cm2、約550~600μg/cm2、約600~650μg/cm2、650~700μg/cm2、約700~750μg/cm2、750m~800μg/cm2、800~850μg/cm2、約850~900μg/cm2、約900~950μg/cm2、または約950~1000μg/cm2の累積送達量の活性剤を供給するように構成されている。
【0026】
経皮送達システムのサイズ(すなわち、面積)は様々であり得るが、被検体に対する活性剤の範囲内である。経皮送達システムを装着している被検体が、経皮送達システムについて、適用が容易であり、伸展性が向上して、ある期間使用しても快適であると感じることも重要である。特定の実施形態において、製剤のサイズは、活性剤の所望の経皮流束速度および標的投与量を考慮して選択される。特定の実施形態において、経皮送達システムは、約2~6cm2、約6~10cm2、約10~20cm2、約20~30cm2、約30~40cm2、約40~50cm2、約50~100cm2、約100~130cm2、約130~140cm2、約140~150cm2または約150~200cm2であるサイズを有する。
【0027】
本開示の経皮送達システムは、局所パッチが被検体の皮膚部位に長期期間(例えば、複数日数の期間)にわたって適用される場合に、治療有効量の活性剤を被検体に供給するように製剤される。例えば、長期期間は、約6~12時間、約12~24時間、約1~2日の期間であってもよい。
【0028】
特定の実施形態において、AUC0-tは、約80~120h.ng/mL、120~160h.ng/mL、160~200h.ng/mL、200~240h.ng/mL、240~280h.ng/mL、280~320h.ng/mL、320~360h.ng/mL、360~400h.ng/mL、400~440h.ng/mL、440~480h.ng/mLである。特定の実施形態において、AUC0-∞は、約80~120h.ng/mL、120~160h.ng/mL、160~200h.ng/mL、200~240h.ng/mL、240~280h.ng/mL、280~320h.ng/mL、320~360h.ng/mL、360~400h.ng/mL、400~440h.ng/mL、440~480h.ng/mLである。特定の実施形態において、Cmaxは、約8~12ng/mL、12~16ng/mL、16~20ng/mL、20~24ng/mL、24~28ng/mL、28~32ng/mL、32~36ng/mL、36~40ng/mL、40~44ng/mLである。特定の実施形態において、最長時間は、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間である。
【0029】
一実施形態において、(i)バッキング層と;(ii)シリコーン接着層と;(iii)メチルフェニデート遊離塩基、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むスチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムを含む、薬物含有マトリックス層と;(iv)剥離ライナーとを含む経皮送達システムが本明細書で提供される。
【0030】
経皮送達システムを作製する方法もまた本明細書で提供される。
【0031】
一実施形態において、経皮送達システムを作製する方法は、以下のステップを含む。第1に、所望量のメチルフェニデートを、溶媒により、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むスチレン-ブタジエンコポリマーに溶解させて薬物含有混合物を形成する。使用することができる溶媒の例は、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、またはメチルフェニデートもしくはその薬学的に許容される塩を溶解するのに適した他の溶媒である。次いで、任意選択で、増強剤および他の賦形剤を混合物に添加する。20分間、またはすべての構成成分が均一に分散するまで穏やかに混合した後、マトリックスを作製する。次に、混合物を静置して脱気させた。真空および遠心分離を用いて脱気時間を短縮することができる。シリコーン接着剤層を支持バッキング層の片面に積層する。混合物を脱気した後、厚さを制御しながら、支持バッキング層のシリコーン接着剤層の上にマトリックス状混合物を均一に積層し、湿潤フィルムを得る。次に、高温および/または強力なファンの下で湿潤フィルムを乾燥させて溶媒を除去する。次いで、乾燥フィルムの接着面を保護するために剥離ライナーと共に乾燥フィルムを積層し、次いで、これを所望の寸法に切り出してパッチ製品を形成する。
【0032】
本明細書では、治療量のメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の、被検体に対する制御された持続的送達のための方法がさらに提供される。
【0033】
いくつかの実施形態において、この方法は、メチルフェニデートおよびその塩を患者に送達するのに有用な、制御された持続的薬物送達システムを含む。システムは、実質的に均質な粒子の送達を含む。特定の実施形態において、実質的に均質な粒子はゴム系ポリマーマトリックス中に分散される。薬物含有マトリックスを調製する方法もまた開示される。
【0034】
他のメチルフェニデート経皮送達システムと比較した場合、本経皮送達システムは、1.2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、または11~12倍高い流束速度を実現する。特に、本メチルフェニデート経皮送達システムは、シリコーン接着剤層を含まない対照メチルフェニデート経皮送達システムと比較して、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、または8~9倍高い流束速度を実現する。
【0035】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、約6~100μg/cm2/時の範囲の流束速度でのメチルフェニデートの有効な投与を実現する。特定の実施形態において、経皮送達システムは、約6~10μg/cm2/時、10~15μg/cm2/時、15~20μg/cm2/時、20~25μg/cm2/時、25~30μg/cm2/時、30~35μg/cm2/時、35~40μg/cm2/時、40~45μg/cm2/時、45~50μg/cm2/時、50~55μg/cm2/時、55~60μg/cm2/時、60~65μg/cm2/時、65~70μg/cm2/時、70~75μg/cm2/時、75~80μg/cm2/時、80~85μg/cm2/時、85~90μg/cm2/時、90~95μg/cm2/時、または95~100μg/cm2/時の範囲の流束速度でのメチルフェニデートの有効な投与を実現する。
【0036】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、処置開始後少なくとも2~4時間、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間、14~16時間、16~18時間、18~20時間、20~22時間、または22~24時間にわたり、約6~10μg/cm2/時、10~15μg/cm2/時、15~20μg/cm2/時、20~25μg/cm2/時、25~30μg/cm2/時、30~35μg/cm2/時、35~40μg/cm2/時、40~45μg/cm2/時、45~50μg/cm2/時、50~55μg/cm2/時、55~60μg/cm2/時、60~65μg/cm2/時、65~70μg/cm2/時、70~75μg/cm2/時、75~80μg/cm2/時、80~85μg/cm2/時、85~90μg/cm2/時、90~95μg/cm2/時、または95~100μg/cm2/時の範囲の流束速度でのメチルフェニデートの有効な投与を実現する。
【0037】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、処置開始後少なくとも2~4時間、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間、14~16時間、16~18時間、18~20時間、20~22時間、または22~24時間にわたり、約6~10μg/cm2/時、10~15μg/cm2/時、15~20μg/cm2/時、20~25μg/cm2/時、25~30μg/cm2/時、30~35μg/cm2/時、35~40μg/cm2/時、40~45μg/cm2/時、45~50μg/cm2/時、50~55μg/cm2/時、55~60μg/cm2/時、60~65μg/cm2/時、65~70μg/cm2/時、70~75μg/cm2/時、75~80μg/cm2/時、80~85μg/cm2/時、85~90μg/cm2/時、90~95μg/cm2/時、または95~100μg/cm2/時の範囲で、メチルフェニデートの治療上有効な流束速度を実現する。
【0038】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、約2~約20%(重量/重量)のメチルフェニデートを含み、処置開始後少なくとも2~4時間、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間、14~16時間、16~18時間、18~20時間、20~22時間、または22~24時間にわたり、約6~10μg/cm2/時、10~15μg/cm2/時、15~20μg/cm2/時、20~25μg/cm2/時、25~30μg/cm2/時、30~35μg/cm2/時、35~40μg/cm2/時、40~45μg/cm2/時、45~50μg/cm2/時、50~55μg/cm2/時、55~60μg/cm2/時、60~65μg/cm2/時、65~70μg/cm2/時、70~75μg/cm2/時、75~80μg/cm2/時、80~85μg/cm2/時、85~90μg/cm2/時、90~95μg/cm2/時、または95~100μg/cm2/時の範囲で、治療上有効な流束速度を実現する。
【0039】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、処置開始後10~12時間以内に、メチルフェニデートの40~50%、50~60%、60~70%または70~80%を放出する。
【0040】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、室温における少なくとも2年間の長期保存期間にわたり、色安定性であり、活性成分の結晶成長がない。
【0041】
一実施形態において、経皮送達システムは、(i)シリコーン接着剤層と;(ii)(a)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩;および(b)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含み、ここで、経皮送達システムは、処置開始後2~18時間において、約6~100μg/cm2/時の範囲の流束速度を有する。
【0042】
本明細書で開示される経皮送達システムを投与するステップを含む、患者に薬物を送達するための方法が本明細書で提供される。
【0043】
本明細書では、メチルフェニデートを、それを必要とするヒト被検体に投与する方法であって、(1)(i)シリコン層と;(ii)処置開始後少なくとも2~4時間、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間、14~16時間、16~18時間、18~20時間、20~22時間、または22~24時間にわたり、約6~10μg/cm2/時、10~15μg/cm2/時、15~20μg/cm2/時、20~25μg/cm2/時、25~30μg/cm2/時、30~35μg/cm2/時、35~40μg/cm2/時、40~45μg/cm2/時、45~50μg/cm2/時、50~55μg/cm2/時、55~60μg/cm2/時、60~65μg/cm2/時、65~70μg/cm2/時、70~75μg/cm2/時、75~80μg/cm2/時、80~85μg/cm2/時、85~90μg/cm2/時、90~95μg/cm2/時、または95μg/cm2/時~100μg/cm2/時の範囲の、治療上有効な流束速度を実現する、少なくとも約2~約20%(重量/重量)のメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む薬物含有マトリックス層とを含む経皮送達システムを準備するステップと、(2)被検体の血液中に治療的濃度のメチルフェニデートを供給するのに十分な量で、被検体の皮膚の領域に経皮送達システムを適用するステップと、を含む方法が提供される。
【0044】
特定の実施形態において、本方法は、最大約4~60mgのメチルフェニデートを約2~60cm2の皮膚表面領域に適用するステップを含む。
【0045】
特定の実施形態において、本方法は、経皮送達システムを、被検体の腹部、大腿、耳の後ろ、または肩または上腕に適用するステップを含む。
【0046】
特定の実施形態において、本方法は、経皮送達システムを毎日の単回用量で適用するステップを含む。
【0047】
特定の実施形態において、本方法に適用される経皮処置システムは、処置開始後16時間にわたる、約6~100μg/時の範囲のメチルフェニデートの投与速度を実現する。
【0048】
特定の実施形態において、経皮処置システムは、処置開始後10時間にわたる、約6~100μg/時の持続的で安定した状態の送達を提供する。
【0049】
特定の実施形態において、経皮処置システムは、処置開始後16時間にわたる、約6~100μg/時の持続的で安定した状態の送達を提供する。
【0050】
特定の実施形態において、経皮処置システムは、処置開始後18時間にわたる、約6~100μg/時の持続的で安定した状態の送達を提供する。
【0051】
特定の実施形態において、経皮処置システムは、処置開始後24時間にわたる、約6~100μg/時の持続的で安定した状態の送達を提供する。
【0052】
本明細書には、被検体の疾患を処置または予防するために使用される経皮送達システムも記載される。特定の実施形態において、被検体は哺乳動物である。特定の実施形態において、被検体はヒトである。一実施形態において、治療有効量のメチルフェニデートまたはその塩を含む経皮送達システムを被検体に投与するステップを含む、疾患を処置する方法が本明細書で提供される。
【0053】
本明細書で提供される経皮送達システムを含むキットもまた開示される。キットは、本方法で使用される別個の要素の1つを含む1つ以上の容器を密閉して収容するように区画化されたキャリアを含む。キットは、経皮送達システムを投与するための説明書も同梱する。
【0054】
本明細書に記載されたキットは、被検体に投与されたときに、化合物または組成物の治療上または予防上有効な血漿レベルが、被検体において少なくとも1~2、2~4、4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、14~16、16~18、18~20、20~22、22~24時間維持され得るように、本明細書に記載された単位用量のメチルフェニデートまたはその塩を含む。特定の実施形態において、化合物または組成物の治療上または予防上有効な血漿レベルは、被検体において少なくとも1、2、3、4、5および7日間維持され得る。
【0055】
これらおよび他の態様、特徴および利点は、本開示の特定の実施形態に付随する説明および添付された図面および特許請求の範囲から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】シリコーン層を含まない経皮送達システムからの活性成分の透過機構と、シリコン層を含む経皮送達システムからの活性成分の透過機構を比較した概要図を示す。
【
図2】2つの経皮送達システム間の平均透過速度の比較を示す。下の曲線:シリコン層を有さない、17%メチルフェニデートを含む経皮送達システム。上の曲線:シリコン接着剤層および17%メチルフェニデートを含む薬物含有層とを含む経皮送達システム。グラフは、時間(時)に対する流束速度(μg/ml/cm
2/時)を測定したものである。
【
図3】2つの経皮送達システム間の平均累積量の比較を示す。下の曲線:シリコン接着剤層を有さない、17%メチルフェニデートを含む経皮送達システム。上の曲線:シリコン接着剤層および17%メチルフェニデートを含む薬物含有層とを含む経皮送達システム。グラフは、透過累積量(μg/cm
2)対時間(時)を測定したものである。
【
図4】剪断接着力と様々な%薬物装填に関するグラフを示す。一般に、薬物含有量が高いほど剪断力が低下する。
【
図6】実施例8のin vitro溶解プロファイルを示す。
【
図7】異なるアクリレート接着剤からの累積量のin vitro透過プロファイルを示す。
【
図8】二重層製剤における薬物装填とin vitro透過速度との間の線形関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
4.2 定義
本明細書で使用するとき、用語「被検体」と「患者」は互換的に使用される。用語「被検体」は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)ならびに霊長類(例えば、マカクザルなどのサル、チンパンジーおよびヒト)を含む哺乳動物などの動物を指す。一実施形態において、被検体はヒトである。
【0058】
任意の疾患または障害の「処置」は、一実施形態において、被検体に存在する疾患または障害を改善することを指す。別の実施形態において、「処置」は、被検体が識別できない、少なくとも1つの物理的パラメータを改善することを含む。さらに別の実施形態において、「処置」は、身体的(例えば、識別可能な症状の安定化)もしくは生理学的(例えば、身体的パラメータの安定化)、またはその両方の点で、疾患または障害を和らげることを含む。さらに別の実施形態において、「処置」は、疾患または障害の発症を遅延させることを含む。
【0059】
本明細書中で使用するとき、任意の疾患および障害の「予防」という用語は、障害またはその1つ以上の症状の予防を指す。予防とは、障害または症状の発症、発生および進行を妨げることである。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、ある数値からの±5%の偏差として定義される。
【0061】
用語「メチルリフェニデートまたはその薬学的に許容される塩」は、所望の薬理学的または生理学的効果を引き起こすメチルフェニデート遊離塩基またはメチルフェニデート塩を意味し、治療上有効または予防上有効な薬剤を含む。これらの用語はまた、限定されないが、塩、エステル、アミド、硫酸塩、プロドラッグ、有効代謝物、包接錯体などを含む、本明細書で具体的に言及されている活性剤の薬理学的に有効な誘導体および類似体をも包含する。
【0062】
薬物または薬理学的活性剤の「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の治療効果をもたらすための薬物または活性剤の、非中毒性であるが十分な量を意味している。「有効な」量は、個人の年齢および一般的な状態、特定の活性剤等に応じて、被検体毎に異なる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、通常の実験を用いて当業者によって決定され得る。
【0063】
本明細書で使用する「スチレン-ブタジエンブロックコポリマー」という用語は、スチレンとブタジエンを含有するモノマーのコポリマーとして定義される。
【0064】
本明細書で使用するとき、「局所的」および「局所的に」という用語は、哺乳動物の皮膚または粘膜表面への適用を意味し、用語「経皮」は、皮膚または粘膜(経口、頬、鼻、直腸および膣粘膜を含む)を通して体循環経路に入ることを意味する。したがって、本明細書に記載の組成物は、メチルフェニデートの経皮送達を達成するために被検体に局所的に適用され得る。
【0065】
本明細書で使用するとき、用語「薬物含有マトリックス」は、メチルフェニデートなどの1種以上の薬物と、任意選択で水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーとを含む組成物を意味する。
【0066】
5.詳細な説明
以下の詳細な説明では、特許請求の範囲に記載された主題を完全に理解することができるように、多数の具体的詳細が記載されている。ただし、特許請求の範囲に記載された主題は、これらの具体的詳細なしに実施できることが当業者には理解されるであろう。他の例では、特許請求の範囲に記載された主題を不明瞭にしないために、当業者にとって公知であるような方法、装置、またはシステムは、詳細には記載されていない。記載された特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実装において各種方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【0067】
5.1 経皮送達システムの多層構造
本明細書では、接触する表面に追従できる固体形態である柔軟な有限システムが開示される。このシステムは、有害な生理学的応答なしに、かつ被検体への投与中に乾燥表面または湿潤表面との接触によって分解されることなく、局所適用を容易にするため、上記のような固体形態で接触を維持することができる。当技術分野で公知の柔軟な有限システムとしては、フィルム、プラスター、ドレッシングおよび包帯、ならびに皮膚または粘膜に直接付着するマトリックスとは別個の貯蔵部または集積部において薬物が可溶化または含有されている多層送達システムが挙げられる。一実施形態において、薬物はマトリックス中にある。
【0068】
一実施形態において、本明細書に記載の経皮送達システムは、バッキング層、シリコーン接着剤層、(i)メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩;(ii)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層、ならびに剥離ライナーを含む。一実施形態において、ゴム系ポリマーはスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。一実施形態において、ゴム系ポリマーは、スチレン-イソプレン-スチレンポリマーではない。一実施形態において、ゴム系ポリマーは、ポリイソブチレンではない。
【0069】
メチルフェニデート(α-フェニル-2-ピペリジン酢酸メチルエステル)は、キラル薬物である。市販のメチルフェニデート製品(経口製品Ritalin(登録商標)錠剤および経皮製品Daytrana(登録商標)パッチなど)は、d-およびl-スレオ-メチルフェニデートの50:50(ラセミ)混合物を含んでいるが、d-スレオ-メチルフェニデート異性体は、より大きな薬理活性を有すると考えられている。本明細書に記載の組成物は、メチルフェニデートのいずれかの異性体を配合して製剤され得るが、d-およびl-スレオ-メチルフェニデートのラセミ混合物を含む組成物、またはd-スレオ-メチルフェニデート異性体を主に含む組成物が、商業的に最も妥当であり得る。
【0070】
本明細書に記載の組成物は、メチルフェニデート遊離塩基(「メチルフェニデート塩基」)、その薬学的に許容される任意の塩、またはそれらの混合物を配合して製剤することができる。メチルフェニデートの薬学的に許容される好適な塩の例は、弱無機および有機酸の塩、および第四級アンモニウム塩である。これらの塩としては、限定されないが、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、ケイ皮酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、もしくはアスコルビン酸などの酸による塩、または塩化メチルエステル、臭化メチルエステル、塩化エチルエステル、塩化プロピルエステル、塩化ブチルエステル、塩化イソブチルエステル、塩化ベンジルエステル、臭化ベンジルエステル、臭化フェネチルエステル、塩化ナフチルメチルエステル、硫酸ジメチルエステル、ベンゼンスルホン酸メチルエステル、トルエンスルホン酸エチルエステル、エチレンクロロヒドリンエステル、プロピレンクロロビドリンエステル、臭化アリルエステル、臭化メチルアリルエステルまたは臭化クロチルエステルなどの、硫酸、ハロゲン化水素酸、または芳香族スルホン酸の有機酸エステルによる、第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0071】
特にメチルフェニデート塩基を含むメチルフェニデートは、第2級アミン部分およびメチルエステル部分を有し、メチルフェニデートとの化学反応または相互作用に利用可能であり、経皮組成物において典型的に使用され得るポリマー、増強剤、賦形剤および他の構成成分中に存在し得る、活性水素原子または水素原子を有する官能基、例えば、カルボキシ、ヒドロキシル、アミン、チオール、シラノールまたはエポキシ基などの反応性官能基の存在下で不安定であり分解する。メチルフェニデートの主な分解物としては、リタリン酸およびエリトル異性体が挙げられ、それらの濃度は、官能基の量(重量)の増加に伴って顕著に増加する。そのような分解は、貯蔵後の組成物中に存在する活性種の量を大幅に減少させ、したがって薬物送達に利用可能な活性メチルフェニデートの量を減少させ得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、そのような官能基を有する構成成分なしに製剤される。すなわち、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、上記で定義され以下でより詳細に議論される非反応性構成成分のみを用いて製剤される。
【0072】
本明細書に記載の組成物は、治療有効量のメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む。一般に、メチルフェニデートの量は、薬物含有マトリックスの総乾燥重量を基準として、約5~約20重量%、例えば約5~約15重量%であり、約10~約19重量%、または約15~約18重量%などである。特定の実施形態において、薬物含有マトリックスは、薬物含有マトリックスの総乾燥重量を基準として、約17重量%のメチルフェニデートを含む。
【0073】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによれば、組成物は、単位当たり約20~約225mgのメチルフェニデート塩基または等量のその薬学的に許容される塩を含んでいてよい。
【0074】
薬物含有マトリックス層中に存在するメチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩の量は様々であり得る。特定の実施形態において、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩の量は、約4mg~約60mgの範囲である。特定の実施形態において、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩は、経皮送達システムの単位当たり約4~8mg、約8~10mg、約10~12mg、約12~14mg、約14~16mg、約16~18mg、18~20mg、約20~24mg、約24~28mg、約28~30mg、約30~35mg、約35~40mg、約40~45mg、約45~50mg、約50~55mg、または約55~60mgの範囲である。一実施形態において、経皮送達システムの単位は、経皮送達システムの1回の用量である。一実施形態において、1回の用量は、パッチ1個分である。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層中に存在するメチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約0.01~0.05重量%、約0.05~0.1重量%、約0.1~0.2重量%、約0.2~0.5重量%、約0.5~1重量%、約1~2重量%、約2~4重量%、約2~5重量%、約5~6重量%、約6~7重量%、約7~8重量%、約8~9重量%、約9~10重量%、約10~13重量%、約13~14重量%、約14~15重量%、約15~16重量%、約16~17重量%、約17~18重量%、約18~19重量%、約19~20重量%、または約20~25重量%である。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約0.01~5重量%である。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約1~16重量%である。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約0.5~1重量%、1~2.5重量%、2.5~3重量%、3~4重量%、4~5重量%、5~6重量%、6~7重量%、7~8重量%、8~9重量%、9~10重量%、10~11重量%、11~12重量%、12~13重量%、13~14重量%、14~15重量%、15~16重量%、16~17重量%、17~18重量%、18~19重量%、19~20重量%である。
【0075】
薬物含有マトリックス層は、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む。一実施形態において、メチルフェニデートはメチルフェニデート遊離塩基である。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩である、1種以上の活性剤を含む。
【0076】
5.1.1 シリコーン接着剤層
本開示のメチルフェニデート経皮送達システム中のシリコーン接着剤層は、パッチの流束および効率を顕著に増加させることが見出されている。本明細書で開示するメチルフェニデート経皮送達システムは、薬物装填容量および薬物放出持続性を高め、所望される皮膚浸透速度および接着特性を達成した。
【0077】
特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、10~50%、50~80%、80~90%、90~100%のシリコーン接着剤を含む。一実施形態において、シリコーン接着剤層は、100%のシリコーン接着剤を含む。特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、約1~5μm、5~10μm、10~20μm、20~30μm、30~40μm、40~50μmまたは50~60μmの厚さを有する。
【0078】
一実施形態において、シリコン接着剤層は、層全体にわたって均一な厚さを有する均一層である。シリコーン接着剤層と薬物含有マトリックス層との最小限の相互混合が存在する。特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、バッキング/不透過層として作用する。Hartwig R., Kanios D., Bonne S.; Acrylic Polymer Backing Films for Controlling In- Vitro Permeation and Delivery Profile of Estradiol from Transdermal Drug Delivery Systems; AAPS 2004は、アクリルポリマーバッキングフィルムを追加することにより、透過速度および送達プロファイルを低下させることができることを示した。シリコン接着剤層の追加は、実際上、透過速度および送達プロファイルを増加させる。
【0079】
特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、追加の接着剤をさらに含む。好適な接着剤としては、シリコーンポリマーおよび樹脂から作製された感圧接着剤が挙げられる。ポリマー対樹脂比は、マトリックス層が本開示のデバイスの皮膚接触層である場合に有用な、異なるレベルのタックを達成するように変えることができる。この目的のための有用な市販シリコーン接着剤の具体例としては、Dow Corning製の標準Dow Corning(登録商標)BIO-PSAシリーズ(7-4400、7-4500および7-4600シリーズ)ならびにアミン相溶性(エンドキャップ)Dow Corning(登録商標)BIO-PSAシリーズ(7-4100、7-4200および7-4300シリーズ)が挙げられる。特定の実施形態において、接着剤として、Dow Corning(登録商標)BIO-PSA 7-4201、7-4202、7-4301、7-4302、7-4501、7-4502 and 7-4602と、BIO-PSA 7-4201、BIO-PSA 7-4301、BIO-PSA 7-4302またはこれらの混合物、例えば、BIO-PSA 7-4201、BIO-PSA 7-4301および/またはBIO-PSA 7-4302が挙げられる。
【0080】
特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、シリコーン接着剤層を含まない対照経皮システムと比較して、少なくとも60~70%の流束の増加をもたらす。特定の実施形態において、シリコーン接着剤層は、シリコーン接着剤層を含まない対照経皮システムと比較して、薬物送達の平均累積量を少なくとも60~70%増加させる。
【0081】
5.1.2 薬物含有マトリックス層
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、ゴム系ポリマーを含む。特定の実施形態において、ゴム系ポリマーとしては、限定されないが、スチレンブロックポリマーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。好適なスチレンブロックコポリマーベースの接着剤としては、限定されないが、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBS)が挙げられる。
【0082】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む。特定の実施形態において、水素化合成炭化水素粘着付与剤は、ロジンエステル、テルペンおよび/または炭化水素である。一実施形態において、ポリマーマトリックスは、1つ以上のC5~C9水素化炭化水素樹脂を含む。一実施形態において、ポリマーマトリックスは、1つ以上のC5~C9水素化炭化水素樹脂を含まない。一実施形態において、水素化合成炭化水素は完全に飽和している。特定の実施形態において、水素化炭化水素は部分的に飽和している。特定の実施形態において、水素化炭化水素は、完全に水素化されていない、少なくとも1、2、3、4個の炭素原子を含む。
【0083】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、天然または合成ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、スチレン-ブタジエンポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、炭化水素ポリマー(ブチルゴムなど)、ハロゲン含有ポリマー(ポリアクリルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリクロロジエンなど)、ならびにこれらの他のコポリマーなどのゴム系ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、1つ以上のポリイソブチレンポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、1つ以上のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスは、1つ以上のポリイソブチレンポリマーおよび1つ以上のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーを含む。
【0084】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、上記に挙げた天然または合成ポリマーまたは段落[0089]に挙げたコポリマーのいずれを除外してもよい。
【0085】
薬物含有マトリックス層は、感圧接着剤を含んでよい。用語「感圧接着剤」は、接着剤を表面に付着させるために圧力が印加されたときに接着結合を形成する接着剤を意味する。特定の実施形態において、接着強度の程度は、接着剤を表面に適用するために用いられる圧力の量に比例する。
【0086】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、アクリルポリマーを含有しない。
【0087】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、粘着付与剤を含む。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、粘着付与剤を含まない。
【0088】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、ゴム系ポリマー中に存在しない粘着付与剤を含む。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、水素化合成炭化水素粘着付与剤以外の粘着付与剤を含まない。
【0089】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層中に存在する粘着付与剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約3~10重量%、約10~30重量%、約30~50重量%、約50~60重量%、約60~65重量%、約65~70重量%、約70~75重量%、約75~80重量%、約75~80重量%、約80~90重量%、約90~95重量%、約95~96重量%、約96~97重量%、約97~98重量%、98~99重量%である。特定の実施形態において、粘着付与剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約30~85重量%である。特定の実施形態において、粘着付与剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約30~60重量%である。
【0090】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、薬物透過作用を増強する増強剤組成物を含む。増強剤組成物は、被検体の皮膚を通した活性剤の吸収を促進する。
【0091】
特定の実施形態において、酸化防止剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約0.001~5.0重量%、約0.05重量%、約0.001~0.005重量%、約0.005~0.01重量%、約0.01~0.05重量%、約0.05~0.1重量%、約0.1~0.5重量%、約0.5~1重量%、約1~3重量%、約3~5重量%の範囲の量で存在する。
【0092】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、限定されないが、金属酸化物(酸化亜鉛および酸化チタンなど)、金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびステアリン酸亜鉛など)、ケイ酸化合物(カオリン、タルク、ベントナイト、アエロジル、含水シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)ならびに金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)を含む充填剤を含有してもよい。存在する場合、このような充填剤は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、1~75重量%、例えば2~50重量%であってよい。
【0093】
特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、限定されないが、揮発性溶媒または不揮発性溶媒(すなわち、アセトン、イソプロパノールまたは水と比較して不揮発性であるが、それにもかかわらず若干の揮発性を示す溶媒)、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン、ジメチルイソソルビド、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールおよびベンジルアルコールを含む溶媒を含む。一実施形態において、溶媒はジエチレングリコールモノエチルエーテルである。特定の実施形態において、溶媒はTranscutal(登録商標)Pである。薬物含有マトリックス層は、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約0.1~1重量%、約1~5重量%、約5~10重量%、約10~15重量%、約15~20重量%、約20~30重量%の量で溶媒を含む。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、1種以上の可溶化剤および/または増強剤を含む。特定の実施形態において、可溶化剤および/または増強剤は、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、テトラヒドロフラン、オレイン酸、SPAN80、ミリスチン酸イソプロピル、Brij30、Tween80、スクアラン、ジプロピレングリコール、リモネン、N-ラウロイルサルコシン、オクタノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、Crodasinic LS30、グリセリン、Crodamol、グリセリルモノオレエート、オレイルアルコール、グリセリンジベヘネート(glyceryl dibehenated)、オクチルドデカノール、パルミチン酸イソプロピル、ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、オレイン酸エチル、ドデカノール、ミリスチルアルコール、オレイン酸オレイル、Nヘプタン、N-ヘキサン、イソブチルアルコール、ポリソルベート80、クロロホルムである。
【0094】
経皮送達システムの薬物含有マトリックス層の厚さは様々であり得る。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層は、治療有効量の活性剤の被検体に対する所望の長期送達を提供するのに十分な範囲内の厚さを有する。特定の実施形態において、製剤の厚さは、活性剤の所望の経皮送達速度および標的投与量を考慮して選択される。特定の実施形態において、薬物含有マトリックス層の厚さは、約10~約15μm、約15~約20μm、約20~約25μm、約25~約30μm、約30~約35μm、約35~約40μm、約40~約45μm、約45~約50μm、約50~約55μm、または約55~約150μmである。
【0095】
5.1.3 バッキング層
特定の実施形態において、経皮送達システムは、バッキング層(例えば、支持層)を含む。バッキングは、被検体の所望の局所的位置に密着できる程度に柔軟であってよい。バッキングは、活性剤を吸収しない材料から製作され、活性剤が経皮製剤のバッキング側から放出されないようにする。目的のバッキング材は、閉塞性(すなわち、不透過性)であっても、半閉塞性または通気性(透過性)であってもよい。バッキングとしては、限定されないが、不織布、織布、フィルム(シートを含む)、箔、多孔質体、発泡体、紙、不織布または織物にフィルムを積層することで得られる複合材料、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。不織布としては、限定されないが、以下の、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;レーヨン、ポリアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、およびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー;ならびにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0096】
織物としては、限定されないが、綿、レーヨン、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。フィルムとしては、限定されないが、以下の、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂;(低密度および高密度ポリエチレン(LDPE、HDPE)ならびにポリプロピレンを含む。);ポリメチルメタクリレートおよびポリエチルメタクリレートなどのポリアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリ-クロロ-トリ-フルオロ-エチレン、アクリロニトリルメチルアクリレートコポリマー、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂;ならびにポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、およびポリスルホン;ならびにこれらの組み合わせを挙げることができる。箔としては、金属箔、例えばアルミニウム箔などを挙げることができる。紙としては、限定されないが、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、グラシン紙、合成紙、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。複合材料としては、限定されないが、上記フィルムを上記不織布または織物に積層した複合材料を挙げることができる。特定の実施形態において、バッキングは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルを含む。
【0097】
特定の実施形態において、バッキング層は、薬物含有マトリックス層の表面と接触している。例えば、薬物含有マトリックス層の片面が適用時に皮膚に接触するように経皮送達システムが構成されている場合、バッキングは薬物含有マトリックス層の対向面と接触する。
【0098】
特定の実施形態において、好適なバッキング層としては、ポリエステルに積層されたエチレンビニルアセテートフィルム、金属化ポリエステルに積層されたエチレンビニルアセテートフィルム、ポリエチレンまたはポリオレフィンバッキングが挙げられる。バッキング層は、保存期間が長くなった場合に生じ、被検体の皮膚の動きによって生じることがある、しわを防止するように十分な厚さでなければならない。典型的には、バッキング層は約50~約100ミクロンの厚さである。特定の実施形態において、バッキング層は、薬物含有マトリックス層よりも大きな表面を有する。特定の実施形態において、バッキング層は、約0.01mm~薬物含有マトリックス層よりも少なくとも10mm大きい範囲になる。
【0099】
5.1.4 剥離ライナー
特定の実施形態において、経皮送達システムは剥離ライナーを含む。特定の実施形態において、剥離ライナーは、薬物含有マトリックス層上に、具体的にはバッキング層から遠位(すなわち、反対側)にある薬物含有マトリックス層の表面上に、提供される。剥離ライナーは、経皮送達システムの使用前における薬物含有マトリックス層の保護を容易にすることができる。特定の実施形態において、剥離ライナーは、薬物含有マトリックス層を保持せずに薬物含有マトリックス層から除去可能であるように構成される。
【0100】
剥離ライナーは、任意の好都合な材料であってよい。特定の実施形態において、剥離ライナーは、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態において、剥離ライナーは、例えば、シリコーン処理を施した、ポリエチレンコーティング上質紙、ポリオレフィンコーティンググラシン紙、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィルム、ポリプロピレンフィルムの片面を処理することにより調製され得る、被コーティング基材を含む。特定の場合には、剥離層は、シリコーン処理を施したポリエステルフィルムを含む。
【0101】
5.2 活性剤の投与量および送達
本開示によれば、本発明者らは、経皮的送達システムがシリコーン接着剤層および薬物含有マトリックス層を含む場合、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥/多動性障害(ADHD)を処置する目的で、局所適用送達を介してメチルフェニデートを人体に投与することができるを見出した。特定の実施形態において、メチルフェニデートは、経皮送達システムの適用の2時間後に実質的ゼロ次動態を達成するのに有効な量で送達される。本組成物は、局所適用経路を介して患者にメチルフェニデートを安定的に放出する。特定の実施形態において、経皮送達システムは、約0.5mg/24時間~約100mg/24時間のメチルフェニデート送達速度を有する。特定の実施形態において、経皮送達システムは、患者における治療有効用量を達成するために、約2.5mg/24時間~約60mg/24時間の送達速度を有する。メチルフェニデートの経口投与は1日当たり20~60mgである。特定の実施形態において、局所適用システムは、約20~180mgのメチルフェニデートまたは系内で結晶化しない有効量を含有する。特定の実施形態において、局所適用システム中のメチルフェニデートの量は、少なくとも60mgの薬物を患者に送達するのに有効な量である。特定の実施形態において、送達パッチのサイズは、約2~約60cm2である。特定の実施形態において、経皮送達システムは、24時間当たり約5mgを送達し、10cm2当たり約26.4mgのメチルフェニデート塩基を含有する。
【0102】
一実施形態において、本明細書に開示される経皮送達システムは、少なくとも2~4時間、4~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間、14~16時間、16~18時間、18~20時間、20~22時間、または22~24時間にわたりメチルフェニデートの治療的血中濃度を達成するために、少なくとも8ug/cm2・時の流束をもたらす量で、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0103】
一実施形態において、本明細書に開示される経皮送達システムは、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を、少なくとも2時間にわたり少なくとも8ug/cm2・時の流束で、少なくとも5mgの用量を患者に8時間以上提供する量で含む。
【0104】
一実施形態において、本明細書に開示される経皮送達システムは、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を、少なくとも16時間、1~25ng/mlの範囲のメチルフェニデートの血中濃度を達成するのに十分な量で含む。
【0105】
一実施形態において、本明細書に開示される経皮送達システムは、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系接着剤担体中にメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含み、ここで、メチルフェニデートは、少なくとも2時間の期間にわたってそれを必要とする患者の皮膚または粘膜への送達を行うために実質的ゼロ次動態を達成するのに十分な量で存在し、メチルフェニデートは実質的に結晶を含まない治療有効量で存在する。
【0106】
注意欠陥障害(ADD)および/または注意欠陥/多動性障害(ADHD)の処置または予防的処置に有効な組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、最適な投与量範囲の同定を助けるために、任意選択で、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイを用いることができる。用いられる正確な用量はまた、疾患または障害の重症度に依存し、施術者の判断および各患者の状況に応じて決定されなければならない。
【0107】
経皮送達のための薬剤の適切な用量は、化合物が投与される面積に依存して、0.5mg/24時間~100mg/24時間の範囲である。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験システムから導き出した用量反応曲線から外挿することができる。そのような動物モデルおよびシステムは、当技術分野において周知である。
【0108】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、被検体が就寝する直前に被検体に適用される。一実施形態において、経皮送達システムは、朝に起床する8~10時間前に被検体に適用される。一実施形態において、経皮送達システムは、午前中に睡眠から覚醒した直後に被検体に適用される。一実施形態において、経皮送達システムは、夜分に就寝する前に除去される。特定の実施形態において、経皮送達システムは、目が覚めているときに仕事または学業または他の活動に従事する前2時間以内に適用される。特定の実施形態において、経皮送達システムは、2~4、4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、14~16、16~18、18~20、20~22、22~24時間にわたり被検体に適用される。
【0109】
本明細書で使用するとき、用語「流束」は、皮膚または粘膜を通した薬物の吸収として定義され、フィックの拡散の第一法則:
J=D(dCm/dx)
によって記述され、式中、Jは流束(単位:g/cm2/秒)、Dは皮膚または粘膜を通した薬物の拡散係数(単位:cm2/秒)、Dcm/dxは皮膚または粘膜を通る薬物の濃度勾配である。
【0110】
本発明者らは、メチルフェニデートに対する正常なヒト皮膚の比較的広範囲の透過性が存在し、この透過性は、個体毎および部位毎に異なることに加えて、薬物の化学的形態にも依存することを見出した。特定の実施形態において、経皮送達システム中のメチルフェニデートは、塩基形態もしくは塩基/塩基性塩の組み合わせ、またはエステルである。
【0111】
特定の実施形態において、治療有効用量のメチルフェニデートは、治療効果を達成し、典型的に、小児および成人の両方において約0.05mg/kg~約1.0mg/kg/日の範囲であり、より好ましくは約0.075~約0.3mg/kg/日である。
【0112】
本明細書で開示する経皮送達システムは、被検体に適用してから6時間後に実質的ゼロ次送達を達成する。経皮送達システムは、少なくとも18時間、20時間または24時間、メチルフェニデートまたはその薬学的塩の実質的ゼロ次送達を維持する。これは、最初の18時間に薬物の15~40%を送達するように、局所組成物中に十分なメチルフェニデートを供給することによって、確保される。
【0113】
一実施形態において、開示される経皮送達システムは、少なくとも18時間の実質的ゼロ次送達を達成する。シリコーン接着剤層は、少なくとも18時間の実質的ゼロ次送達に必要な有効形態のメチルフェニデートを保持しながら、十分な量のメチルフェニデートが組成物に装填されることを可能にする。
【0114】
本明細書では、薬剤投入速度を制御するために主に皮膚または粘膜透過性に依存する局所適用システムにおいて、長期期間にわたり治療量のメチルフェニデートを送達するシステムおよび方法が開示される。薬物の送達は、皮膚または粘膜を通した薬物送達の最大速度をシステム自体が制御する速度制御システムからの送達であってもよいと考えられる。
【0115】
本明細書で使用する語句「実質的ゼロ次」は、定常状態に達するとほぼ一定になる速度での、皮膚または粘膜を通したメチルフェニデートの送達を意味する。この意味の範囲内で考えられる典型的な変動性は、定常状態(投与後3~10時間)におけるメチルフェニデートの血中濃度の平均値からの約30%~約40%の差である。
【0116】
実際の流束は様々であり得るが、特定の実施形態において(例えば、以下のセクション6の実施例における皮膚透過アッセイを用いて測定した場合)、皮膚浸透率は、約3~4μg/cm2/時、約4~5μg/cm2/時、約5~6μg/cm2/時、約6~7μg/cm2/時、約7~8μg/cm2/時、約8~9μg/cm2/時、約9~10μg/cm2/時、約10~11μg/cm2/時、または約11~12μg/cm2/時、約12~15μg/cm2/時、約15~20μg/cm2/時、約20~25μg/cm2/時、約25~30μg/cm2/時、約30~35μg/cm2/時、約35~40μg/cm2/時、約40~45μg/cm2/時、または約45~50μg/cm2/時である。
【0117】
特定の実施形態において、流束は約13~44μg/cm2・時である。
【0118】
特定の実施形態において、経皮送達システムは、後述するように製剤が被検体の皮膚に長期期間にわたって適用される場合に、累積送達量(本明細書では累積流束とも称される。)の活性剤を被検体に供給するように製剤される。特定の実施形態において、経皮製剤は、約1~100μg/cm2、約100~150μg/cm2、約150~200μg/cm2、約200~250μg/cm2、約250~300μg/cm2、約300~350μg/cm2、約350~400μg/cm2、約400~450μg/cm2、約450~500μg/cm2、約500~550μg/cm2、約550~600μg/cm2、約600~650μg/cm2、650~700μg/cm2、約700~750μg/cm2、750m~800μg/cm2、800~850μg/cm2、約850~900μg/cm2、約900~950μg/cm2、または約950~1000μg/cm2の累積送達量の活性剤を供給するように構成される。
【0119】
経皮送達システムのサイズ(すなわち、面積)は様々であり得るが、被検体に対する活性剤の範囲内である。経皮送達システムを装着している被検体が、経皮送達システムについて、適用が容易であり、伸展性が向上して、ある期間使用しても快適であると感じることも重要である。特定の実施形態において、製剤のサイズは、活性剤の所望の経皮流束速度および標的投与量を考慮して選択される。特定の実施形態において、経皮送達システムは、約2~6cm2、約6~10cm2、約10~20cm2、約20~30cm2、約30~40cm2、約40~50cm2、約50~100cm2、約100~130cm2、約130~140cm2、約140~150cm2または約150~200cm2であるサイズを有する。
【0120】
本開示の経皮送達システムは、局所パッチが被検体の皮膚部位に長期期間(例えば、複数日数の期間)にわたって適用される場合に、治療有効量の活性剤を被検体に供給するように製剤される。例えば、長期期間は、約6~12時間、約12~24時間、約1~2日の期間であってもよい。
【0121】
特定の実施形態において、各種製剤、ヒト薬物動態プロファイルおよび皮膚透過特性は、表1、表2および表3に示されるものである。特定の実施形態において、AUC0-tは、約80~120h.ng/mL、120~160h.ng/mL、160~200h.ng/mL、200~240h.ng/mL、240~280h.ng/mL、280~320h.ng/mL、320~360h.ng/mL、360~400h.ng/mL、400~440h.ng/mL、440~480h.ng/mLである。特定の実施形態において、AUC∞は、約80~120h.ng/mL、120~160h.ng/mL、160~200h.ng/mL、200~240h.ng/mL、240~280h.ng/mL、280~320h.ng/mL、320~360h.ng/mL、360~400h.ng/mL、400~440h.ng/mL、440~480h.ng/mLである。特定の実施形態において、Cmaxは、約8~12ng/mL、12~16ng/mL、16~20ng/mL、20~24ng/mL、24~28ng/mL、28~32ng/mL、32~36ng/mL、36~40ng/mL、40~44ng/mLである。特定の実施形態において、Tmaxは、4~6時間、6~8時間、8~10時間、10~12時間、12~14時間である。
【0122】
本開示の経皮送達システムの一態様は、活性剤の顕著な分解および/または顕著な活性低下を伴わずに長期期間貯蔵することができるというものである。特定の実施形態において、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を含む薬物含有マトリックス層は、少なくとも1年、2年、3年、4年、5年または6年間にわたり安定している。特定の実施形態において、経皮送達システムは、25℃+2℃/60%RH+5%RHに維持される。
【0123】
5.3 使用方法
一実施形態において、注意欠陥障害および注意欠陥/多動性障害を処置する方法であって、メチルフェニデート経皮送達システムを局所投与するステップを含み、メチルフェニデートが、少なくとも約2~4、4~6、6~8、8~10、10~12、12~14、14~16、16~18、18~20、20~22、22~24時間の期間にわたってそれを必要とする患者の皮膚または粘膜に送達するために実質的ゼロ次動態を達成するのに十分な量で存在し、経皮送達システムが、シリコーン接着剤層および薬物含有マトリックス層を含む、方法が本明細書で開示される。
【0124】
一実施形態において、メチルフェニデートは、患者における治療有効用量を達成するために、約5~10mg、10~15mg、15~20mg、20~25mg、25~30mg、30~35mg、35~40mg、40~45mg、45~50mg、50~55mg、55~60mg、60~65mg、65~70mg、70~75mg、75~80mg/24時間の送達速度を可能にするのに十分な量で存在する。
【0125】
一実施形態において、経皮送達システムは、毎日の適用を目的として製剤される。
【0126】
一実施形態において、ADDまたはADHDを有する個人に対し、8μg/cm2/時を超過する速度で、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を経皮投与するステップを含む、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥/多動性障害(ADHD)を処置する方法が本明細書で開示される。
【0127】
ADDまたはADHDを有する個人に対し、0.15mg/kg/日を超過する速度で、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を経皮投与するステップを含む、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥/多動性障害(ADHD)を処置する方法。
【0128】
5.4 経皮送達システムを作製する方法
本開示の諸態様はまた、上記に開示した経皮送達システムを製造する方法を含む。特定の実施形態において、シリコン接着剤層がバッキングに適用される。特定の実施形態において、本方法は、薬物含有マトリックス層を形成するために、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を1種以上の溶媒、ゴム系ポリマーと混合することにより、混合物を形成するステップを含む。特定の実施形態において、ポリマーは、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。
【0129】
シリコーン接着剤層は、まずバッキング層に適用される。次いで、薬物含有マトリックス混合物を、バッキングの上にあるシリコーン接着剤層に適用する。本方法は、バッキングと反対側の薬剤含有マトリックス層に剥離ライナーを適用するステップをさらに含んでもよい。特定の場合には、経皮送達システムを作製する方法は、キットを形成するパッケージ内に経皮製剤を入れることをさらに含む。経皮製剤をパッケージ内に入れた後、方法はパッケージを密封するステップを含んでもよい。
【実施例】
【0130】
6.実施例
以下の実施例は、本明細書で提供される代表的な実施形態の合成および使用を例示する。これらの例は、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を限定するものではなく、またはそのように解釈されるべきでもない。主題の範囲は、本明細書に特に記載された態様以外の態様で実施することができることは明らかであろう。本明細書の教示を考慮すると、主題の多くの改変および変種が可能であり、したがって、これらの改変および変種は、特許請求の範囲に記載された主題の範囲内にある。
【0131】
6.1 材料および方法
経皮システムは、揮発性有機溶媒などの適切な溶媒の存在下で、ポリマー、薬物、および他の賦形剤を適量でブレンド(混合)し、湿潤ブレンドを剥離ライナー上にキャストし、続いて、適切な乾燥条件で揮発性溶媒を蒸発させ、接着剤層、薬物含有マトリックス層および剥離ライナーをバッキングフィルム上に積層するなどの、公知の方法論に従って製造される。
【0132】
流束は、フランツ拡散セルを使用する標準的手順で測定することができ、実験はヒト死体皮膚で行った。フランツセルを使用し、各フランツ拡散セルにおいて、ヒト死体皮膚の円板(直径25mm)をレセプターコンパートメント(receptor compartment)上に配置する。経皮送達システムを、皮膚と同じ大きさに切断し、レセプター中央の拡散領域の上に配置する。次いで、ドナーコンパートメント(donor compartment)を追加し、組立品に圧締めする。0時点において、レセプター培地溶液14mLをレセプターコンパートメントに添加し、セルを32℃に維持する。レセプターコンパートメントの試料を定期的に採取して、皮膚流束を決定し、HPLCにより分析する。
【0133】
流束試験
経皮送達システムの一実施形態を用いて、流束試験を行った。経皮送達システムの調製および試験の際に、以下の方法を用いた。まず、パッチの保護剥離ライナーを取り除き、パッチの接着剤面を露出させた。次に、接着剤面が皮膚に向かうようにしてヒト死体皮膚にパッチを付着させ、パッチ裏側に穏やかな圧力をかけ、しっかりと接着するようにする。次に、皮膚側を下部チャンバーに向けた状態で、フランツ拡散セルの上部チャンバーと下部チャンバーとの間にパッチ/皮膚複合体を固定し、ここで、下部チャンバーに緩衝液を満たし加熱して、人体の状態を再現する。フランツ拡散セルの下部チャンバー内の緩衝液のメチルフェニデート濃度を測定することにより、試験パッチのメチルフェニデートの透過量および流束を決定することができる。
【0134】
メチルフェニデート経皮送達システムの2つの実施形態から、流束データを得た。一実施形態において、経皮送達システムは、賦形剤なしで約8%のメチルフェニデート遊離塩基を含み、ここで、第2の実施形態は、約25%のスクアランと共に約8%のメチルフェニデートを含む。経皮送達システムは約0.0248mg/cm2/時の流束を達成したが、別の実施形態において、経皮送達システムは、約0.0530mg/cm2/時の流束を達成した。これらの結果は、メチルフェニデート経皮送達システムの流束の増加におけるスクアランの有効性を示す。結果を以下の表1に示す。
【0135】
【0136】
表1に示すように、スクアランの重量%の増加は、流束速度の増加をもたらした。特に、25重量%のスクアレンを含む経皮送達システムは、賦形剤を含まない製剤1と比較して、約40%~約50%の流束の増加をもたらした。シクロメチコンを用いた実施形態もまた、賦形剤を含まない実施形態よりも高い流束をもたらした。メチルフェニデート経皮送達システムが、8時間を超える適用時間にわたり、約ゼロ次の動態でメチルフェニデートの送達を持続することができることを示すために、さらなる試験を行った。
【0137】
in vivo薬物動態研究
メチルフェニデートを含有する経皮パッチの薬物動態研究を、12人の健常なボランティアにおいて評価する。経皮システムを、健常な被検体の臀部に局所的に9時間適用する。血液試料を定期的に収集した。開発され検証されたクロマトグラフィー法を使用して、血漿中のメチルフェニデート濃度を測定した。十分な感度、特異性、直線性、回収率、正確さおよび精度を実証するために、この方法を検証した。WinNonlin Pro 5.3以上を使用して、AUC0-t、AUC0-∞、Cmax、Tmax、t1/2などの薬物動態パラメータを計算した。結果を表2に示す。
【0138】
【0139】
表3は、メチルフェニデートの重量%と剥離接着力に対するその効果との関係を示す。結果を
図4にも示す。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
in vitro溶解研究
実施例10に記載したパッチ製剤組成物を0.01NのHCl溶解緩衝液に溶解させた。0.5、1.5、3、4、9および12時間の時点で試料を回収した。メチルフェニデート含量をHPLCにより決定し、結果を
図6に示す。
【0146】
12時間未満では、放出される、実施例8のメチルフェニデートの80%超が存在すると結論付けることができる。
【0147】
一実施形態において、経皮送達システムは、約pH1.2のin vitro溶解媒体中で、12時間以内に少なくとも約80%のメチルフェニデートを放出する。
【0148】
安定性研究(シリコーン接着剤およびSBS接着剤を用いたバッチ組成物の結晶成長観察および不純物分析
実施例8および実施例10から製造された製品を、色および結晶成長を含む外観について検査した。次いで、これらの製品を、1か月間もの期間にわたり、加速エージング条件(40℃/75%RH)および対照室温条件(25℃/60%RH)で、応力状況で、個別に2週間貯蔵し、検査した。結果は以下に記載したとおりである。
【0149】
【0150】
6.1.2.製剤
溶解させることができるメチルフェニデートの最大量を決定するために各種接着剤を試験した。結果は以下に示すとおりである。
【0151】
【0152】
6.1.5.皮膚透過
各種製剤の皮膚透過を試験した。結果を
図2および
図3に示す。接着剤中のメチルフェニデートの量が多くなると、透過が増大する。ただし、メチルフェニデートは、Duro Tak 87-6911中では高度に可溶性であるが、メチルフェニデートの量が40%を超えると、フィルムとしてコーティングすることができなかった。
図8に示すように、メチルフェニデートが20重量%未満である場合、薬剤装填と透過速度との間には線形関係がある。
【0153】
実施例18~20は、薬物装填が多いほど透過速度が速いことを示している。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
7.例示的なシステムおよび方法を以下の項目に記載する。
【0158】
項目1.
(i)シリコーン接着剤層と;
(ii)(a)メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩;および(b)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層と
を含む経皮送達システム。
【0159】
項目2.ゴム系ポリマーが、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムである、項目1に記載の経皮送達システム。
【0160】
項目3.バッキング層、シリコン接着剤層、薬物含有マトリックス層、および剥離ライナーから本質的になる、項目1および2のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0161】
項目4.メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~約20重量%である、項目1~3のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0162】
項目5.メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約12、約15または約17重量%である、項目1~4のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0163】
項目6.水素化合成炭化水素粘着付与剤が、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として、約10~80重量%である、項目1~5のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0164】
項目7.シリコーン接着剤層が、100%のシリコーン接着剤を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0165】
項目8.薬物含有マトリックス層が、賦形剤をさらに含む、項目1~7のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0166】
項目9.薬物含有マトリックス層が、約20~約48μmの厚さを有する、項目1~8のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0167】
項目10.システムの1ユニットのサイズが、約2~60cm2の寸法を有する、項目1~9のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0168】
項目11.約18~25μg/cm2/時の流束を有する、項目1~10のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0169】
項目12.少なくとも約8~24時間の期間にわたって、メチルフェニデートおよびその薬学的に許容される塩を送達する、項目1~11のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0170】
項目13.メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、約15~19重量%であり、スチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムが、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として約81~85重量%である水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0171】
項目14.スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーが、薬物含有マトリックス層の総重量を基準として約30~60重量%である水素化合成炭化水素粘着付与剤を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0172】
項目15.シリコーン層が、シリコーン層を含まない対照経皮送達システムと比較して約50~80%、流束を増加させる、項目1~14のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0173】
項目16.賦形剤が、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を劣化させない、項目1~15のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0174】
項目17.薬物含有マトリックス層が、透過増強剤をさらに含む、項目1~16のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0175】
項目18.透過増強剤が、薬物含有マトリックス層の総重量の約5%~約25%を構成する、項目1~17のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0176】
項目19.実質的ゼロ次動態でメチルフェニデートまたはその塩を送達する、項目1~18のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0177】
項目20.メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩が、5%未満の不純物を含む、項目1~19のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0178】
項目21.室温で少なくとも2年の貯蔵寿命を有する、項目1~20のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0179】
項目22.薬物含有マトリックス層が、色安定性であり、少なくとも2年の長期貯蔵期間にわたって、メチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩の結晶成長を欠く、項目1~21のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0180】
項目23.被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約20~60%のメチルフェニデートを放出する、項目1~22のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0181】
項目24.被検体への投与後12時間以内に、少なくとも約30%のメチルフェニデートを放出する、項目1~23のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0182】
項目25.約pH1.2のin vitro溶解媒体中で12時間以内に、少なくとも約80%のメチルフェニデートを放出する、項目1~24のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0183】
項目26.処置開始後2~18時間において、約6μg/cm2/時~100μg/cm2/時の範囲の流束速度を有する、項目1~25のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【0184】
項目27.注意欠陥障害、注意欠陥/多動性障害、体位性頻脈症候群またはナルコレプシーを処置する方法であって、経皮送達システムにおけるメチルフェニデートまたはその薬学的に許容される塩を局所投与するステップを含み、メチルフェニデートが、少なくとも18時間の期間にわたってそれを必要とする患者の皮膚または粘膜に送達するために実質的ゼロ次動態を達成するのに十分な量で存在し、経皮送達システムが、シリコーン接着剤層と、水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーを含む薬物含有マトリックス層とを含む、方法。
【0185】
項目28.
(a)水素化合成炭化水素粘着付与剤を含むゴム系ポリマーにより所望量のメチルフェニデートを溶解させて、混合物を形成するステップと;
(b)混合物を脱気するステップと;
(c)支持バッキング層上にシリコン層を積層するステップと;
(d)シリコン層上に混合物を積層して湿潤フィルムを形成するステップと;
(e)湿潤フィルムを乾燥させて乾燥フィルムを形成するステップと;
(f)乾燥フィルムに剥離ライナーを積層するステップと;
(g)任意選択で、乾燥フィルムを所望の寸法に切り出すステップと
を含む、先行項目1~26に記載の経皮送達システムを作製する方法。
【0186】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際上、記載された改変に加えて、本発明の各種改変が、上記の記載および添付図面から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付した特許請求の範囲内に入ることが意図されている。実際上、すべての個々の実施形態を、本明細書で開示された1つ以上の個々の実施形態と組み合わせることができる。
【0187】
本明細書で引用したすべての参考文献は、個々の出版物または特許または特許出願の各々が、あらゆる目的のためにその全体において参照により組み込まれることが具体的におよび個別に示される場合と同程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。