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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
E01C19/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019007163
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020117866
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】竹田 奈美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正和
(72)【発明者】
【氏名】青坂 隆史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 鉄朗
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-146303(JP,A)
【文献】特開2001-107313(JP,A)
【文献】特開2015-203188(JP,A)
【文献】実開昭58-169567(JP,U)
【文献】特開平10-204819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に備えられる転圧ローラに液剤を噴霧する液剤噴霧装置と、
前記転圧ローラに水を散水する散水装置と、
前記液剤噴霧装置及び前記散水装置を制御するコントローラと、を備えた転圧機械において、
前記コントローラは、前記機体が実施した1レーンあたりの転圧作業の回数である転圧回数を記録する記録部と前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたか否かを判定する折り返し判定部と前記転圧ローラの回転数を判定するローラ回転数算出部とを有し、前記折り返し判定部により前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたことを判定したときに前記記録部に記録される転圧回数が所定回数を超えた場合、前記散水装置を停止し、前記液剤噴霧装置を作動させ、前記ローラ回転数算出部により算出される前記転圧ローラの回転数が規定回数回転する期間経過後、前記液剤噴霧装置を停止し、前記散水装置を作動させることを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記機体の前後進を操作する前後進操作装置を備え、
前記折り返し判定部は、前記前後進操作装置が前進位置と後進位置との間に位置する中立位置を通過するときに前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたと判定する、ことを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記機体の速度を算出する機体速度算出部を備え、前記機体速度算出部によって算出される機体の速度が0または規定速度以上のとき、前記散水装置を停止し、前記液剤噴霧装置を停止する、ことを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に係り、特に水及び液剤の噴霧時期の適正化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤローラ等の転圧機械には、路面の舗装工事等で舗装材を締め固めるために車体の前部及び後部に車輪を兼ねた転圧ローラ(例えば転圧タイヤや鉄輪)が備えられている。
このような転圧機械は、アスファルト混合物等の舗装材を敷きつめた路面を走行しながら、転圧ローラによって舗装材を締め固めている。
【0003】
しかしながら、転圧ローラは舗装材に対し強い圧力で接することから、その表面には舗装材から剥離した欠片が付着し、平滑な路面を形成する妨げになる。
そこで、転圧ローラの近接位置に散水ノズルを配設し、舗装工事中に散水ノズルから転圧ローラの外周面に散水することにより舗装材の付着を防止している。
【0004】
また、散水ノズルから転圧ローラの外周面に散水する水を節水する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-203188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような転圧機械では、散水ノズルから散水する水の他にアスファルト合材付着防止剤等の液剤を噴霧することが知られている。この液剤は、転圧ローラと路面との温度差が大きい場合であっても転圧ローラにアスファルトが付着することを防止することが可能である(液剤による作用)。このような液剤の噴霧は、散水と同時に行うと液剤が薄まり、液剤による作用が低下する虞があった。また、液剤の噴霧が必要以上に行われると、却って路面を荒らす(液剤による反作用)虞があった。
ここで上記特許文献1に開示される技術を鑑みると、散水する水を節水する技術については開示されているが、液剤の噴霧については開示されておらず、更なる改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液剤による作用を良好に保つとともに、液剤による反作用を抑制することができる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械は、機体に備えられる転圧ローラに液剤を噴霧する液剤噴霧装置と、前記転圧ローラに水を散水する散水装置と、前記液剤噴霧装置及び前記散水装置を制御するコントローラと、を備えた転圧機械において、前記コントローラは、前記機体が実施した1レーンあたりの転圧作業の回数である転圧回数を記録する記録部と前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたか否かを判定する折り返し判定部と前記転圧ローラの回転数を判定するローラ回転数算出部とを有し、前記折り返し判定部により前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたことを判定したときに前記記録部に記録される転圧回数が所定回数を超えた場合、前記散水装置を停止し、前記液剤噴霧装置を作動させ、前記ローラ回転数算出部により算出される前記転圧ローラの回転数が規定回数回転する期間経過後、前記液剤噴霧装置を停止し、前記散水装置を作動させることを特徴とする。
【0009】
これにより、転圧回数が所定回数を超えると、転圧ローラの回転数が規定回数回転する期間液剤の噴霧のみを実施し、転圧ローラの回転数が当該規定回数回転する期間経過後、水の散水のみを実施するよう、液剤噴霧装置及び散水装置をコントローラによって制御することで、転圧ローラの回転数に基づいて転圧ローラに液剤を噴霧する適切な期間を的確に規定し、転圧ローラに水及び液剤を散水、噴霧する時期を作業者の操作によらずにコントローラによって管理することが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記機体の前後進を操作する前後進操作装置を備え、前記折り返し判定部は、前記前後進操作装置が前進位置と後進位置との間に位置する中立位置を通過するときに前記機体の前後方向における進行方向が切り替えられたと判定するのが好ましい。
【0011】
これにより、作業者による機体の前後進操作を前後進操作装置の操作態様から判定することで、作業者による機体の前後進操作を的確に判定することが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記コントローラは、前記機体の速度を算出する機体速度算出部を備え、前記機体速度算出部によって算出される機体の速度が0または規定速度以上のとき、前記散水装置を停止し、前記液剤噴霧装置を停止するのが好ましい。
【0015】
これにより、機体の速度が0とき、換言すると機体が停車しているときには水の散水及び液剤の噴霧を停止することで、折り返し判定部による判定が誤判定であった場合であっても、不必要な水及び液剤の散水、噴霧を停止することが可能とされる。
【0016】
また、機体の速度が規定速度以上ときにも、水の散水及び液剤の噴霧を停止することで、例えば規定速度が転圧作業における機体の速度としては不適切な速度である場合、換言すると機体が転圧作業をしているのではなく、移動しているときである場合のような水及び液剤の散水、噴霧が不必要な場合に水及び液剤の散水、噴霧を停止することが可能とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の転圧機械によれば、転圧回数が所定回数を超えると、転圧ローラの回転数が規定回数回転する期間液剤の噴霧のみを実施し、転圧ローラの回転数が当該規定回数回転する期間経過後、水の散水のみを実施するよう、液剤噴霧装置及び散水装置をコントローラによって制御したので、転圧ローラの回転数に基づいて転圧ローラに液剤を噴霧する適切な期間を的確に規定し、転圧ローラに噴霧する液剤の時期を作業者の操作によらずにコントローラによって管理することができる。
【0018】
これにより、液剤による作用を良好に保つとともに、液剤による反作用を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかる機体の側面図である。
図2】機体後方から視た操作ユニットの斜視図である。
図3】ECUの接続構成が示されたブロック図である。
図4】転圧施工の説明図である。
図5】ECUが実行する、本発明に係る転圧機械の噴霧制御の制御手順を示すルーチンが示されたフローチャートである。
図6】ECUが実行する、本発明に係る転圧機械の噴霧制御の制御手順を示すルーチンが示されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、本発明にかかる機体1の側面図が示されている。
【0021】
機体1は、車輪3、操作ユニット5、散水装置7及び液剤噴霧装置8を備えたタイヤローラである。この機体1は、後述する転圧施工をすることでアスファルト舗装工事における締固め作業をすることが可能である。車輪(転圧ローラ)3は、ゴム製のタイヤであり、図示しない駆動装置により回転することで機体1を走行させ、減速することで機体1を減速させることが可能な転圧ローラである。
【0022】
散水装置7は、作動することで散水ノズル7aから水を車輪3に散水することが可能な噴霧装置である。この散水装置7は、機体1のフレーム1aに内設される図示しない水タンクに貯留される水を散水することが可能である。
【0023】
液剤噴霧装置8は、作動することで液剤ノズル8aから液剤を車輪3に噴霧することが可能な噴霧装置である。ここで、液剤とは、例えば車輪3と舗装路面との間に温度差がある場合にアスファルトが付着することを防止するために噴霧する所謂アスファルト合材付着防止剤のことである。
【0024】
図2を参照すると、機体後方から視た操作ユニット5の斜視図が示されている。操作ユニット5は、前後進レバー(前後進操作装置)11、ステアリング13、スピードメータ15及び噴霧設定部17を備えている。この操作ユニット5は、作業者が機体1の走行、転舵、制動、散水及び噴霧等の各種操作をするための装置である。
【0025】
前後進レバー11は、作業者が操作することで図示しないHST(Hydraulic Static Transmission)を制御し、車輪3の回転方向を変更することで機体1の前後方向における進行方向を切り替えるレバーである。この前後進レバー11は、前進位置、中立位置及び後進位置の3つの位置に切り替えることができる。
【0026】
前後進レバー11が前進位置のとき、作業者がアクセルペダル31を踏圧すると、HSTは、機体1が前方向に移動可能となるように制御される。また、前後進レバー11が後進位置のとき、作業者がアクセルペダル31を踏圧すると、HSTは、機体1が後方向に移動可能となるように制御される。一方、前後進レバー11が中立位置のとき、HSTは、作業者がアクセルペダル31を踏圧しても機体1が加速しないように制御される。
【0027】
ステアリング13は、作業者が操作することで機体上下方向を軸にして機体前側の車輪3を回動させ、機体1の左右方向における進行方向を調整する転舵装置である。
スピードメータ15は、例えば車輪3近傍に設けられた車輪速センサ3aによって検出される車輪3の回転数から算出される機体1の速度が表示されるメータである。このスピードメータ15には、例えば図示しないエンジンの回転数等も表示される。
【0028】
噴霧設定部17は、散水液剤連動スイッチ21及び転圧回数設定スイッチ23を備えている。散水液剤連動スイッチ21は、後述する散水液剤連動制御のON、OFFを作業者の任意で切り替えることが可能な切替スイッチである。転圧回数設定スイッチ23は、機体が1レーンあたりに行う転圧作業の回数(以下、転圧回数という)を作業者によって選択することが可能なスイッチである。
【0029】
ECU(コントローラ)40は、エンジンの運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
【0030】
図3を参照すると、ECU40の接続構成がブロック図で示されている。
ECU40の入力側には、車輪速センサ3a、前後進レバー11、散水液剤連動スイッチ21及び転圧回数設定スイッチ23が電気的に接続されている。
【0031】
これにより、ECU40には、車輪速センサ3aからは車輪3の回転速度情報が入力され、前後進レバー11からは作業者による前後進操作情報が入力され、散水液剤連動スイッチ21からは作業者による散水液剤連動制御のON、OFF操作が入力され、転圧回数設定スイッチ23からは作業者による転圧回数情報が入力される。
【0032】
一方、ECU40の出力側には、散水装置7及び液剤噴霧装置8が電気的に接続されている。これにより、ECU40は、散水装置7及び液剤噴霧装置8を制御(ON、OFF)して適宜水及び液剤を散水、噴霧することができる。
【0033】
ECU40には、算出部として車輪回転数算出部42及び機体速度算出部44が、判定部として折り返し判定部52が、各算出部や判定部による算出、判定結果を記録する記録部62がそれぞれ備えられている。
【0034】
車輪回転数算出部42は、車輪速センサ3aから入力される車輪3の回転速度情報に基づき、車輪3の回転数をカウントすることが可能な算出部である。
機体速度算出部44は、車輪速センサ3aから入力される車輪3の回転速度情報に基づき、機体1の速度を算出することが可能な算出部である。
【0035】
折り返し判定部52は、作業者により前後進レバー11が操作されて機体1の前後方向における進行方向を切り替えられたときに後述する転圧作業をしているレーン上で折り返したと判定する判定部の一つである。
【0036】
図4を参照すると、転圧施工の説明図が示されている。また、図5及び図6を参照すると、ECU40が実行する、本発明に係る転圧機械の噴霧制御の制御手順を示すルーチンがフローチャートで示されている。以下、図4~6に沿い、噴霧制御の制御手順について説明する。なお、説明の便宜上、施工する区画(区画F)全体における締固め作業のことを転圧施工という。
【0037】
図4によると、機体1を用いた区画Fの転圧施工では、区画Fを予め第1レーン、第2、・・・第Nレーンといった複数のレーンに分け、1レーンあたり例えば8回(設定回数N)、締固め作業を行う。すなわち、転圧施工において、機体1は1レーンあたり4往復する。以下、1往路または1復路における締固め作業を転圧作業という。
【0038】
図5によると、本ルーチンは、散水液剤連動スイッチ21がON操作されるとスタートする(ステップS1)。このとき、記録回数Xもまた0とする。
ステップS10では、機体速度算出部44によって算出される機体1の速度Vが時速0km(以下、単に0という)か否かを判別する。ステップS10の判別結果が真(Yes)で、機体1の速度Vが0、すなわち機体1が停止していると判別すると、ステップS55及びステップS60に移行する。また、ステップS10の判別結果が偽(No)で、機体1の速度Vが0ではない、すなわち機体1が走行していると判別すると、ステップS15に移行する。
【0039】
ステップS15では、機体速度算出部44によって算出される機体1の速度Vが制限速度Vmaxか否かを判別する。ここで、制限速度Vmaxとは、例えば転圧施工における機体1の速度として最大の速度のことである。ステップS15の判別結果が真(Yes)で、機体1の速度Vが制限速度Vmaxより速い、すなわち機体1は転圧施工をしているのではなく、移動していると判別すると、ステップS55及びステップS60に移行する。また、ステップS15の判別結果が偽(No)で、機体1の速度Vが制限速度Vmax以下、すなわち機体1は転圧施工をしていると判別すると、ステップS20に移行する。
【0040】
したがって、ステップS10及びステップS15では、機体1が転圧施工を実施しているか否かを判定し、転圧施工を実施していない場合はステップS55及びステップS60に移行し、散水装置7及び液剤噴霧装置8をOFFにして本ルーチンを終了する。これにより、機体1が転圧施工を実施していないような場合にまで水及び液剤が散水、噴霧されることを抑制することが可能である。
【0041】
ステップS20では、機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと折り返し判定部52が判定したか否かを判別する。ここで、折り返し判定部52は、例えば作業者による前後進レバー11の切替操作により、前後進レバー11が前進位置または後進位置から中立位置を通過して相対する後進位置または前進位置に移動したことを検出すると、機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと判定する。
【0042】
ステップS20の判別結果が偽(No)で、機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと折り返し判定部52が判定していないと判別すると、ステップS21に移行し(図5、6のA)、液剤噴霧装置8がONか否かを判別する。
【0043】
ステップS21の判別結果が真(Yes)で、液剤噴霧装置8がONであると判別すると、後述するステップS100に移行する(図5、6のB)。また、ステップS21の判別結果が偽(No)で、液剤噴霧装置8がOFFであると判別すると、ステップS22に移行する。なお、ステップS21の判別結果が真(Yes)で、液剤噴霧装置8がONであると判別する場合とは、例えば本ルーチン中に作業者によって液剤噴霧スイッチが操作されて本ルーチンに関わらず液剤を噴霧しているような場合である。
【0044】
ステップS22では、散水装置7がONか否かを判別する。ステップS22の判別結果が真(Yes)で、散水装置7がONであると判別すると、本ルーチンを終了する(図5、6のC)。また、ステップS21の判別結果が偽(No)で、散水装置7がOFFであると判別すると、ステップS23に移行し、液剤噴霧装置8をONにして後述するステップS100に移行する(図5、6のB)。なお、ステップS21の判別結果が偽(No)で、散水装置7がOFFであると判別する場合とは、例えば本ルーチンの開始直後であって、まだ液剤の噴霧及び水の散水のいずれも実施していないような場合である。
【0045】
したがって、ステップS21~S23では、液剤噴霧及び散水がされているか否かを判別し(ステップS21、S22)、散水がされている場合であれば(ステップS22でYes)、ステップS20で機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと折り返し判定部52が判定するまでの間、散水を続けるため、本ルーチンを終了する。
また、散水がされていない場合であっても、液剤噴霧がされている場合(ステップS21でYes)は、後述するステップS100に移行し、液剤噴霧がされていない場合(ステップS21及びS22でNo)は、液剤噴霧を開始(ステップS23)してからステップS100に移行する。
一方、ステップS20の判別結果が真(Yes)で、機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと折り返し判定部52が判定したと判別すると、ステップS30に移行する。
【0046】
ステップS30では、記録部62に記録される、現レーンにおける転圧作業を完了した回数(記録回数X)に1を加算した回数が、作業者が転圧回数設定スイッチ23を操作して選択した転圧回数(以下、設定回数Nという。)と同じか否かを判別する。ここで、記録回数Xに1を加算した回数とは、折り返し判定部52が機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと判定した直後の転圧作業を完了させた回数(以下、完了回数Fという)である。
【0047】
ステップS30の判別結果が真(No)で、完了回数Fが設定回数Nと同じではない、すなわち機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと折り返し判定部52が判定する(ステップS20でYes)直前の転圧作業(以下、前転圧作業という)が現レーンにおける最後の転圧作業ではなかったと判別すると、ステップS40に移行する。ステップS30の判別結果が真(Yes)で、完了回数Fが設定回数Nと同じ、すなわち前転圧作業が現レーンにおける最後の転圧作業であったと判別すると、ステップS70に移行する。
【0048】
したがって、ステップS30では、完了回数Fが設定回数Nと同じか否かを判別することで、前転圧作業が現レーンにおける最後の転圧作業であるか否かを判別することができる。
【0049】
ステップS40では、記録回数Xに1を加算してステップS50に移行し、散水装置7をONにして本ルーチンを終了する。
これにより、現レーンにおける転圧作業の回数に1を加算することで(ステップS40)、転圧回数をカウントすることができる。また、散水装置7のみをONにする(ステップS50)ことで、車輪3に水を散水しつつ、液剤の節約および水と液剤とが混ざり液剤の効果を低下させることを抑制することができる。
【0050】
一方、ステップS30の判別結果が真(Yes)のときに移行するステップS70では、記録回数Xを0、すなわちリセットしてステップS80に移行し、散水装置7をOFFにしてステップS90に移行し、液剤噴霧装置8をONにしてステップS100に移行する。
【0051】
このように、記録回数Xをリセットすることで(ステップS40)、現転圧回数から改めて転圧回数をカウントすることができる。また、散水装置7をOFFにしつつ(ステップS80)、液剤噴霧装置8をONにする(ステップS90)ことで、車輪3に液剤を噴霧しつつ、水と液剤とが混ざり液剤の効果を低下させることを抑制することができる。
【0052】
ステップS100では、車輪回転数算出部42により算出される車輪3の回転数に基づき、ステップS90以降に車輪3が回転した車輪回転数が規定回数R以上回転したか否かを判別する。ここで、規定回数Rとは、車輪3に液剤を必要十分に噴霧するのに適した車輪3の回転数のことであり、例えば1回転である。
【0053】
ステップS100の判別結果が真(Yes)で、車輪3に液剤を必要十分に噴霧したと判別するまでステップS100を繰り返したあとステップS110に移行し、液剤噴霧装置8をOFFにしてステップS50に移行し、散水装置7をONにして本ルーチンを終了する。なお、ステップS100を繰り返す間に機体1が停止した場合は、ステップS100の判別結果が偽(No)であってもステップS110に移行するようにしてもよい。
【0054】
したがって、ステップS80~ステップS110及びステップS50では、液剤のみの噴霧(ステップS80、S90)を車輪3が規定回数R回転するまで実施し(ステップS100)、その後は水のみの散水(ステップS110、S50)を実施する。これにより、必要十分な液剤の噴霧をしたあとは、水のみの散水をして、適切な量の液剤の噴霧を作業者に依らず実施することができる。
【0055】
さらに、上記したようにステップS30、S40及びS70により、転圧回数を管理することで、現レーンにおける転圧回数ごとに液剤を噴霧する時期を管理することができる。
【0056】
本実施形態では、ステップS30のように完了回数Fが設定回数Nと同じ回数になると液剤を噴霧するため、各レーンにおける1回目の転圧作業のときに液剤を車輪3に噴霧し、その後はレーン変更をするまで水のみを散水する。これにより、液剤の不必要な噴霧を防止することで、液剤の節約及び施工路面の精度を向上させることができる。
【0057】
なお、散水液剤連動スイッチ21がON操作されたときに(ステップS1)、水の散水を実施してから本ルーチンをスタートするように噴霧制御を実行する場合は、散水液剤連動スイッチ21がON操作されたときに、まずステップS50に移行し、その後、上記の噴霧制御を実行すればよい。
【0058】
以上説明したように、本発明に係る転圧機械では、機体1に備えられる車輪3に液剤を噴霧する液剤噴霧装置8と、車輪3に水を散水する散水装置7と、液剤噴霧装置8及び散水装置7を制御するECU40と、を備えた転圧機械において、ECU40は、機体1が実施した1レーンあたりの転圧作業の回数である記録回数Xを記録する記録部62と機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたか否かを判定する折り返し判定部52とを有し、折り返し判定部52により機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたことを判定したときに記録部62に記録される記録回数Xが設定回数Nを超えた場合、散水装置7を停止し、液剤噴霧装置8を作動させ、一定期間経過後、液剤噴霧装置8を停止し、散水装置7を作動させる。
【0059】
従って、記録回数Xに1を加算した完了回数Fと設定回数Nとが同じ値になることで記録回数Xが設定回数Nを超えると、一定期間液剤の噴霧のみを実施し、一定期間経過後は水の散水のみを実施するよう、液剤噴霧装置8及び散水装置7をECU40によって制御したので、車輪3に噴霧する液剤の時期を作業者の操作によらずにECU40によって管理することができる。
【0060】
そして、機体1の前後進を操作する前後進レバー11を備え、折り返し判定部52は、前後進レバー11が前進位置と後進位置との間に位置する中立位置を通過するときに機体1の前後方向における進行方向が切り替えられたと判定する。
従って、作業者による機体1の前後進操作を前後進レバー11の操作態様から判定したので、作業者による機体1の前後進操作を的確に判定することができる。
【0061】
そして、ECU40は、車輪3の回転数を判定する車輪回転数算出部42を備え、一定期間は、車輪回転数算出部42により算出される車輪3の回転数が規定回数R回転する期間である。
従って、車輪回転数算出部42により算出される車輪3の回転数が規定回数R回転する間、噴霧のみを実施するよう、液剤噴霧装置8及び散水装置7をECU40によって制御したので、車輪3の回転数に基づいて車輪3に液剤を噴霧する適切な期間を的確に規定することができる。
【0062】
そして、ECU40は、機体1の速度を算出する機体速度算出部44を備え、機体1速度算出部によって検出される機体1の速度が0または制限速度Vmax以上のとき、散水装置7を停止し、液剤噴霧装置8を停止する。
従って、機体1の速度が0とき、換言すると機体1が停車しているときには水の散水及び液剤の噴霧を停止したので、折り返し判定部52による判定が誤判定であった場合であっても、不必要な水及び液剤の散水、噴霧を停止することができる。
また、機体1の速度が制限速度Vmax以上ときにも、水の散水及び液剤の噴霧を停止したので、例えば制限速度Vmaxが転圧作業における機体1の速度としては不適切な速度である場合、換言すると機体1が転圧作業をしているのではなく、移動しているときである場合のような水及び液剤の散水、噴霧が不必要な場合に水及び液剤の散水、噴霧を停止することができる。
【0063】
以上で本発明に係る転圧機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、現レーンにおける最初の転圧作業時を一定期間として車輪3に液剤を噴霧するようにしたが、各転圧作業の最初や各レーン毎に2回以上液剤を噴霧するようにしてもよく、液剤の種類や路面の温度等に応じて一定期間を変更するようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、前後進レバー11の操作態様から機体1の前後進操作を判定するようにしたが、機体1の速度から判定するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、前後進レバー11の操作から機体1の前後進切替操作を判定するようにしたが、例えば作業者が転圧作業を終える毎に押下する折り返しボタンを操作ユニット5に備え、折り返しボタンの操作から機体1の前後進切替操作を判定するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、図5のフローチャートに基づいて噴霧制御の制御手順を説明したが、各ステップの順序は、適宜変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 機体
3 車輪(転圧ローラ)
7 散水装置
8 液剤噴霧装置
11 前後進レバー(前後進操作装置)
40 ECU(コントローラ)
42 車輪回転数算出部(ローラ回転数算出部)
44 機体速度算出部
52 折り返し判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6