(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】通信機器及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 45/247 20220101AFI20220114BHJP
【FI】
H04L45/247
(21)【出願番号】P 2019056884
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健
(72)【発明者】
【氏名】北辻 佳憲
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-181717(JP,A)
【文献】特開平08-032611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ネットワーク上のスイッチと有線又は無線により接続可能であるとともに、第2ネットワークにおいてスイッチとして動作する他の通信機器と携帯通信ネットワークの基地局を介して無線により接続可能な通信機器であって、
前記通信機器と、前記第1ネットワーク上のスイッチと、前記他の通信機器との間では、データの転送経路が設定されており、
前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定する判定部と、
前記転送経路が変化する可能性があると前記判定部が判定した場合に、前記通信機器と前記他の通信機器との通信接続状態がアイドル状態であるとき、前記通信機器と前記他の通信機器とが通信可能な状態に変更する通信接続部と、
前記転送経路が変化する可能性がないと前記判定部が判定すると、前記他の通信機器に前記転送経路を設定するための経路設定用データを送信せず、前記転送経路が変化する可能性があると前記判定部が判定すると、前記他の通信機器に前記経路設定用データを送信する送信部と、
を備える通信機器。
【請求項2】
前記通信機器に接続されている前記第1ネットワーク上のスイッチ及び前記他の通信機器から、前記スイッチ及び前記他の通信機器を識別する識別情報を含む前記経路設定用データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記経路設定用データを、前記スイッチ及び前記他の通信機器ごとに記憶部に記憶させる記憶制御部と、
をさらに備え、
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記経路設定用データの変化状況に基づいて前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定する、
請求項1に記載の通信機器。
【請求項3】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記第1ネットワーク上のスイッチに対応する前記経路設定用データの内容に変更があった場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定する、
請求項2に記載の通信機器。
【請求項4】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データのうち、前記転送経路に設定されているスイッチに対応する経路設定用データの受信間隔が第1の間隔よりも大きい場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定する、
請求項2又は3に記載の通信機器。
【請求項5】
前記判定部は、前記受信部が、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データに含まれている前記識別情報とは異なる識別情報を含む経路設定用データを受信すると、前記転送経路が変化する可能性があると判定する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の通信機器。
【請求項6】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データのうち、前記転送経路に設定されていないスイッチに対応する経路設定用データの受信間隔が第2の間隔よりも大きい場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の通信機器。
【請求項7】
第1ネットワーク上のスイッチと有線又は無線により接続可能であるとともに、第2ネットワークにおいてスイッチとして動作する他の通信機器と携帯通信ネットワークの基地局を介して無線により接続可能な通信機器が実行する通信方法であって、
前記通信機器と、前記第1ネットワーク上のスイッチと、前記他の通信機器との間では、データの転送経路が設定されており、
前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定するステップと、
前記判定するステップにおいて前記転送経路が変化する可能性があると判定された場合に、前記通信機器と前記他の通信機器との通信接続状態がアイドル状態であるとき、前記通信機器と前記他の通信機器とが通信可能な状態に変更するステップと、
前記判定するステップにおいて前記転送経路が変化する可能性がないと判定されると、前記他の通信機器に前記転送経路を設定するための経路設定用データを送信せず、前記判定するステップにおいて前記転送経路が変化する可能性があると判定されると、前記他の通信機器に前記経路設定用データを送信するステップと、
を備える通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イーサネット(登録商標)ネットワークにおける経路を冗長化することにより構成されるループ状の経路においてデータが循環して送信され続けることを防止するための制御手法として、スパニングツリープロトコル(STP:Spanning Tree Protocol)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スパニングツリープロトコルでは、スイッチ間でパケットが循環して送信されないようにするために、転送経路としてのスパニングツリーが設定される。スパニングツリープロトコルでは、設定された転送経路を適切な状態に保つために、スイッチ間で、転送経路を設定するためのBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を第1時間(例えば、2秒)おきに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、設定経路として、携帯通信ネットワークの基地局を介した経路が設定されることがある。基地局は、基地局を介して接続されている2つの通信機器の間で、第1時間よりも長い第2時間(例えば、10秒)にわたってデータ送信が行われていない場合に、当該2つの通信機器の接続状態をコネクテッド状態からアイドル状態に変更し、リソースを確保している。しかしながら、スパニングツリーに、携帯通信ネットワークの基地局を介した経路が設定される場合、BPDUを第1時間おきに送信すると、基地局と通信機器との間でコネクテッド状態が維持されてしまい、基地局のリソースが消費されてしまう。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、携帯通信ネットワークの基地局におけるリソースの消費を抑制することができる通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る通信機器は、第1ネットワーク上のスイッチと有線又は無線により接続可能であるとともに、第2ネットワークにおいてスイッチとして動作する他の通信機器と携帯通信ネットワークの基地局を介して無線により接続可能な通信機器であって、前記通信機器と、前記第1ネットワーク上のスイッチと、前記他の通信機器との間では、データの転送経路が設定されており、前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定する判定部と、前記転送経路が変化する可能性がないと前記判定部が判定すると、前記他の通信機器に前記転送経路を設定するための経路設定用データを送信せず、前記転送経路が変化する可能性があると前記判定部が判定すると、前記他の通信機器に前記経路設定用データを送信する送信部と、を備える。
【0008】
前記通信機器は、前記通信機器に接続されている前記第1ネットワーク上のスイッチ及び前記他の通信機器から、前記スイッチ及び前記他の通信機器を識別する識別情報を含む前記経路設定用データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記経路設定用データを、前記スイッチ及び前記他の通信機器ごとに記憶部に記憶させる記憶制御部と、をさらに備え、前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記経路設定用データの変化状況に基づいて前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている前記第1ネットワーク上のスイッチに対応する前記経路設定用データの内容に変更があった場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データのうち、前記転送経路に設定されているスイッチに対応する経路設定用データの受信間隔が第1の間隔よりも大きい場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定してもよい。
【0011】
前記判定部は、前記受信部が、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データに含まれている前記識別情報とは異なる識別情報を含む経路設定用データを受信すると、前記転送経路が変化する可能性があると判定してもよい。
【0012】
前記判定部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記経路設定用データのうち、前記転送経路に設定されていないスイッチに対応する経路設定用データの受信間隔が第2の間隔よりも大きい場合、前記転送経路が変化する可能性があると判定してもよい。
【0013】
前記通信機器は、前記転送経路が変化する可能性があると前記判定部が判定した場合に前記通信機器と前記他の通信機器との通信接続状態がアイドル状態であるとき、前記通信機器と前記他の通信機器とが通信可能な状態に変更する通信接続部をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る通信方法は、第1ネットワーク上のスイッチと有線又は無線により接続可能であるとともに、第2ネットワークにおいてスイッチとして動作する他の通信機器と携帯通信ネットワークの基地局を介して無線により接続可能な通信機器が実行する通信方法であって、前記通信機器と、前記第1ネットワーク上のスイッチと、前記他の通信機器との間では、データの転送経路が設定されており、前記転送経路が変化する可能性があるか否かを判定するステップと、前記判定するステップにおいて前記転送経路が変化する可能性がないと判定されると、前記他の通信機器に前記転送経路を設定するための経路設定用データを送信せず、前記判定するステップにおいて前記転送経路が変化する可能性があると判定されると、前記他の通信機器に前記経路設定用データを送信するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、携帯通信ネットワークの基地局におけるリソースの消費を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る通信機器の概要を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る端末の構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るUPF(User Plane Function)の構成を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る端末におけるUPFへのBPDUの送信に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[通信機器の概要]
図1は、本実施形態に係る通信機器の概要を示す図である。本実施形態において、通信機器は、セルラネットワーク(携帯通信ネットワーク)の基地局4を介して互いに通信可能に接続される複数の端末1(例えば、端末1A、1B)、又はユーザプレーン制御装置(UPF)5である。通信機器は、自身と、基地局4を介して接続される他の通信機器とを含むデータの転送経路を適切な状態に維持しつつ、基地局4におけるリソースの消費を抑制するために用いられる。なお、以下の説明において、ユーザプレーン制御装置5を、UPF5という。
【0018】
本実施形態において、複数の端末1は、第1ネットワークとしての通信ネットワークN1のゲートウェイであり、スイッチとしても機能する。複数の端末1のそれぞれは、基地局4を介してUPF5に通信可能に接続されるとともに、無線ネットワークN1上の一以上のスイッチ2(例えば、スイッチ2A、2B)と通信可能に接続されている。一以上のスイッチ2のそれぞれは、パーソナルコンピュータやロボット等の複数の電子機器3(例えば、端末3A、3B)のいずれかと通信可能に接続されている。なお、電子機器3は、スイッチ2に接続されることとしたが、これに限らず、端末1に接続されてもよい。
【0019】
UPF5は、第2ネットワークとしての5GのコアネットワークN2のゲートウェイであり、スイッチとしても機能する。UPF5は、基地局4を介して複数の端末1のそれぞれに通信可能に接続されるとともに、コアネットワークN2内のスイッチ6と通信可能に接続されている。スイッチ6は、UPF5、基地局4及び端末1を介して、端末1に接続されているスイッチ2と通信を行うことができる。
【0020】
本実施形態において、複数の端末1とUPF5との間では、STPに対応するデータの転送経路としてのスパニングツリーが予め設定されている。複数の端末1は、スパニングツリーを適切な状態に維持するために、当該スパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定する。複数の端末1は、スパニングツリーが変化する可能性がないと判定すると、UPF5にスパニングツリーを設定するための経路設定用データであるBPDUを送信せず、スパニングツリーが変化する可能性があると判定すると、UPF5にBPDUを送信する。同様に、UPF5は、スパニングツリーが変化する可能性がないと判定すると、端末1にBPDUを送信せず、スパニングツリーが変化する可能性があると判定すると、端末1にBPDUを送信する。
【0021】
このように、複数の端末1及びUPF5は、スパニングツリーが変化する可能性がないと判定すると、基地局4を介してBPDUを送信しない。これにより、基地局4は、端末1とUPF5との通信接続状態をBPDUの送信のためにコネクテッド状態に維持する必要がなく、アイドル状態に遷移させることができる。これにより、端末1とUPF5との間での通信接続状態が、端末1とUPF5とが通信可能な状態であるコネクテッド状態に維持され続けることを抑制し、基地局4におけるリソースの消費を抑制することができる。
【0022】
[端末1の構成]
続いて、端末1及びUPF5の構成を説明する。まず、端末1の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る端末1の構成を示す図である。
図2に示すように、端末1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0023】
通信部11は、基地局4及びスイッチ2と通信を行うための通信インターフェースである。
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部12は、制御部13を、受信部131、記憶制御部132、設定部133、判定部134、通信接続部135、及び送信部136として機能させるプログラムを記憶している。
【0024】
また、記憶部12は、端末1がスイッチ2又はUPF5から受信したBPDUに関する情報を格納するBPDUデータベースを記憶する。BPDUには、ブリッジIDと、ルートIDと、パスコストと、ポートIDとが少なくとも含まれている。
【0025】
ブリッジIDは、BPDUを送信した装置を識別する識別情報である。具体的には、ブリッジIDは、スイッチ2、スイッチ6、及びスイッチとして動作する端末1並びにUPF5を識別する識別情報であり、これらの機器の管理者により予め設定される。ルートブリッジは、スパニングツリーにおける中心となるスイッチである。ルートIDは、ルートブリッジのブリッジIDである。パスコストは、ルートブリッジまでの経路上に存在する各スイッチのコストを合計したものである。コストは、ポートに対応するリンク速度に基づいて定められている。ポートIDは、ルートブリッジ向きのポートを示している。以下の説明において、ルートID、パスコスト、及びポートIDをまとめて、BPDU属性情報ともいう。
【0026】
BPDUデータベースは、BPDUに含まれているブリッジIDと、BPDU属性情報と、BPDUの受信時刻とを関連付けて記憶する。
【0027】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、受信部131、記憶制御部132、設定部133、判定部134、通信接続部135、及び送信部136として機能する。
【0028】
受信部131は、通信部11を介して、隣接しているスイッチからBPDUを受信する。具体的には、受信部131は、通信部11を介して、端末1に接続されている第1ネットワークN1上のスイッチ2及び他の通信機器としてのUPF5から、スイッチ2及びUPF5を識別するブリッジIDを含むBPDUを受信する。
【0029】
記憶制御部132は、受信部131が受信したBPDUを、スイッチ2及びUPF5ごとに記憶部12に記憶させる。具体的には、記憶制御部132は、受信部131が受信したBPDUに含まれているブリッジID及びBPDU属性情報と、BPDUの受信時刻とを関連付けて、記憶部12に記憶されているBPDUデータベースに記憶させる。
【0030】
より具体的には、記憶制御部132は、受信部131が受信したBPDUに含まれているブリッジIDがBPDUデータベースに記憶されていない場合には、新たなスイッチ(スイッチ2又はUPF5)に関するBPDUを受信したものとして、当該BPDUに含まれているブリッジIDと、BPDU属性情報と、BPDUの受信時刻とを関連付けて、BPDUデータベースに記憶させる。
【0031】
また、記憶制御部132は、受信部131が受信したBPDUに含まれているブリッジIDがBPDUデータベースに記憶されている場合には、既にBPDUデータベースに格納されているBPDUに対応するスイッチ2又はUPF5から再びBPDUを受信したものと判定する。そして、記憶制御部132は、BPDUデータベースにおいて、当該ブリッジIDに関連付けられているBPDUの受信時刻を更新する。
【0032】
また、記憶制御部132は、受信したBPDUに含まれているBPDU属性情報の少なくともいずれかが、BPDUデータベースにおいて、当該ブリッジIDに関連付けられているBPDU属性情報と異なる場合、BPDU属性情報を、受信したBPDU属性情報に更新する。例えば、記憶制御部132は、受信したBPDUに含まれているパスコストが、BPDUデータベースにおいて、受信したBPDUに含まれているブリッジIDに関連付けられているパスコストと異なる場合、BPDUデータベースに記憶されているパスコストを、受信したBPDUに含まれているパスコストに更新する。
【0033】
なお、記憶制御部132は、BPDUデータベースにおいて、受信部131が受信したBPDUに含まれているブリッジIDに関連付けられているBPDU属性情報が、受信部131が受信したBPDUに含まれているBPDU属性情報と異なっているか否かにかかわらず、BPDUデータベースにおけるBPDU属性情報を、受信したBPDUに含まれているBPDU属性情報に更新してもよい。
【0034】
設定部133は、BPDUデータベースに格納されている隣接する各スイッチのBPDUに基づいて、ルートポート、指定ポート及び非指定ポートを決定する。各スイッチにおいて、指定ポート及び非指定ポートが決定されることにより、スパニングツリーが構築される。
【0035】
設定部133は、BPDUデータベースに格納されているスイッチ2のBPDUと、BPDUの受信時刻に基づいて、ルートポートに対応するスイッチ2からのBPDUの受信間隔が第1の間隔よりも大きい場合、ルートポート、指定ポート及び非指定ポートの更新を行う。ここで、第1の間隔は、スパニングツリーが示す転送経路に設定されているスイッチ2と端末1との間で予め定められているBPDUの送信間隔であり、例えば、2秒である。第1の間隔は、例えば、機器の管理者等により設定される。なお、スパニングツリーが示す転送経路に設定されているスイッチ2とは、端末1のルートポートに対応する指定ポートを有するスイッチ2をいう。
【0036】
設定部133は、BPDUデータベースに格納されているスイッチ2のBPDUと、BPDUの受信時刻に基づいて、非指定ポートに対応するスイッチ2からのBPDUの受信間隔が第2の間隔よりも大きい場合、ルートポート、指定ポート及び非指定ポートの更新を行う。ここで、第2の間隔は、スパニングツリーが示す転送経路に設定されていないスイッチ2と端末1との間で予め定められているBPDUの送信間隔であり、例えば、20秒である。なお、スパニングツリーが示す転送経路に設定されていないスイッチ2とは、端末1の非指定ポートに対応する指定ポートを有するスイッチ2をいう。
【0037】
判定部134は、記憶部12のBPDUデータベースに記憶されているBPDUの変化状況に基づいて、スパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定する。判定部134は、所定時間(例えば1秒)おきに、BPDUの変化状況に基づいてスパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定する。
【0038】
具体的には、判定部134は、BPDUデータベースに記憶されている、第1ネットワークとしての通信ネットワークN1上のスイッチ2に対応するBPDUの内容に変更があった場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0039】
より具体的には、判定部134は、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUのうち、スパニングツリーに設定されているスイッチ2に対応するBPDUの受信間隔が第1の間隔よりも大きい場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0040】
また、判定部134は、受信部131が、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUに含まれているブリッジIDとは異なるブリッジIDを含むBPDUを受信すると、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。すなわち、判定部134は、受信部131が、BPDUデータベースにBPDUが記憶されていないスイッチ2から、端末1に接続したことを示すBPDUを受信すると、スパニングツリーが変更される可能性があると判定する。
【0041】
また、判定部134は、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUのうち、スパニングツリーに設定されていないスイッチ2に対応するBPDUの受信間隔が第2の間隔よりも大きい場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0042】
このようにすることで、端末1は、スイッチ2からのBPDUの受信状況に基づいて、適切なタイミングで、スパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定することができる。
【0043】
通信接続部135は、スパニングツリーが変化する可能性があると判定部134が判定した場合に、端末1と、UPF5との通信接続状態がアイドル状態であるか否かを判定する。通信接続部135は、端末1と、UPF5との通信接続状態がアイドル状態であると判定すると、通信部11を制御することにより、端末1と、UPF5との通信状態をコネクテッド状態に変更する。具体的には、通信接続部135は、TS23.502 4.2.3.2において規定されているUE triggered service requestを実施することにより、端末1とUPF5との通信状態をアイドル状態からコネクテッド状態に遷移させる。
【0044】
このようにすることで、端末1は、所定時間にわたってBPDUが送信されておらず、端末1とUPF5との通信接続状態がアイドル状態である場合に、スパニングツリーが変化する可能性があると判定されたときであっても、端末1とUPF5との通信接続状態をコネクテッド状態に変更してBPDUを送信することができる。
【0045】
送信部136は、スパニングツリーが変化する可能性がないと判定部134が判定すると、UPF5にBPDUを送信せず、スパニングツリーが変化する可能性があると判定部134が判定すると、BPDUを生成し、通信部11を介して、UPF5に当該BPDUを送信する。送信部136は、スパニングツリーが変化する可能性があると判定部134が判定すると、BPDUデータベースに含まれるBPDU及びスイッチ2から受信したBPDUに含まれるBPDU属性情報に基づいてBPDUを生成し、通信部11を介して、UPF5に生成したBPDUを送信する。
【0046】
また、送信部136は、通信ネットワークN1において端末1と通信可能に接続されているスイッチ2に、当該スイッチ2と端末1との間で予め定められている送信間隔でBPDUを送信する。
【0047】
[UPF5の構成]
続いて、UPF5の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るUPF5の構成を示す図である。
図3に示すように、UPF5は、通信部51と、記憶部52と、制御部53とを備える。
【0048】
通信部51は、基地局4及びスイッチ6と通信をするための通信インターフェースである。
記憶部52は、ROM及びRAM等を含む記憶媒体である。記憶部52は、制御部53が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部52は、制御部53を、受信部531、記憶制御部532、設定部533、判定部534、通信接続部535、及び送信部536として機能させるプログラムを記憶している。
【0049】
制御部53は、例えばCPUである。制御部53は、記憶部52に記憶されたプログラムを実行することにより、受信部531、記憶制御部532、設定部533、判定部534、通信接続部535、及び送信部536として機能する。
【0050】
以下、受信部531、記憶制御部532、設定部533、判定部534、通信接続部535、及び送信部536の機能について説明する。なお、受信部531、記憶制御部532、設定部533、判定部534、通信接続部535、及び送信部536の機能は、受信部131、記憶制御部132、設定部133、判定部134、通信接続部135、及び送信部136の機能と同じであるので、適宜説明を省略する。
【0051】
受信部531は、UPF5に接続されているコアネットワークN2上のスイッチ6及び他の通信機器としての端末1から、スイッチ6及び端末1を識別するブリッジIDを含むBPDUを受信する。なお、UPF5には、UPF5と端末1との経路の冗長化を行うためにスイッチ2と接続されていてもよく、スイッチ2から、スイッチ2のブリッジIDを含むBPDUを受信してもよい。
【0052】
記憶制御部532は、受信部531が受信したBPDUを、スイッチ6及び端末1ごとに記憶部12に記憶させる。
【0053】
記憶制御部532は、新たなスイッチ(スイッチ6又は端末1)に関するBPDUを受信すると、当該BPDUに含まれているブリッジIDと、BPDU属性情報と、BPDUの受信時刻とを関連付けて、BPDUデータベースに記憶させる。
【0054】
また、記憶制御部532は、既にBPDUデータベースに記憶されているBPDUと同じブリッジIDのBPDUを受信した場合には、BPDUデータベースにおいて、当該ブリッジIDに関連付けられているBPDUの受信時刻を更新するとともに、変更があったBPDU属性情報を、受信したBPDUに含まれているBPDU属性情報に更新する。
【0055】
設定部533は、BPDUデータベースに格納されている隣接する各スイッチのBPDUに基づいて、ルートポート、指定ポート及び非指定ポートを決定する。各スイッチにおいて、指定ポート及び非指定ポートが決定されることにより、スパニングツリーが構築される。
【0056】
図4は、スパニングツリーの構築例を示す図である。
図4(a)は、
図1に示すネットワーク構成に対応する全ての経路を示す図である。
図4(a)では、各経路のそれぞれにパスコストを示している。隣接するスイッチ間でBPDUの送受信が行われた結果、パスコストが低い経路が選択され、
図4(b)の実線に示すようにスパニングツリーが構築される。
【0057】
判定部534は、記憶部52のBPDUデータベースに記憶されているBPDUの変化状況に基づいて、スパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定する。具体的には、判定部534は、BPDUデータベースに記憶されている、コアネットワークN2上のスイッチ6に対応するBPDUの内容に変更があった場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0058】
より具体的には、判定部534は、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUのうち、スパニングツリーに設定されているスイッチ6に対応するBPDUの受信間隔が第1の間隔よりも大きい場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。また、判定部534は、受信部531が、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUに含まれているブリッジIDとは異なるブリッジIDを含むBPDUを受信すると、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0059】
また、判定部534は、BPDUデータベースに記憶されている複数のBPDUのうち、スパニングツリーに設定されていないスイッチ6に対応するBPDUの受信間隔が第2の間隔よりも大きい場合、スパニングツリーが変化する可能性があると判定する。
【0060】
通信接続部535は、スパニングツリーが変化する可能性があると判定部534が判定した場合に、UPF5と、端末1との通信接続状態がアイドル状態であるか否かを判定する。通信接続部535は、UPF5と、端末1との通信接続状態がアイドル状態であると判定すると、UPF5と、端末1との通信状態をコネクテッド状態に変更する。具体的には、通信接続部535は、TS23.502 4.2.3.3において規定されているNetwork triggered service requestを実施することにより、UPF5と、端末1との通信状態をコネクテッド状態に変更する。
【0061】
送信部536は、スパニングツリーが変化する可能性がないと判定部534が判定すると、端末1にBPDUを送信せず、スパニングツリーが変化する可能性があると判定部534が判定すると、端末1にBPDUを送信する。また、送信部536は、コアネットワークN2において、UPF5と通信可能に接続されているスイッチ6に、当該スイッチ6とUPF5との間で予め定められている送信間隔で、各ポートに対応するBPDUを送信する。
【0062】
[端末1、UPF5における処理の流れ]
続いて、端末1、UPF5の処理の流れについて説明する。上述したように、受信部131、記憶制御部132、設定部133、判定部134、通信接続部135、及び送信部136の機能は、受信部531、記憶制御部532、設定部533、判定部534、通信接続部535、及び送信部536の機能と同じであるので、端末1における処理の流れについて説明し、UPF5における処理の流れについては省略する。
図5は、本実施形態に係る端末1におけるUPF5へのBPDUの送信に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
まず、記憶制御部132は、受信部131が受信したBPDUに基づいてBPDUデータベースを更新する(S10)。
続いて、判定部134は、S20~S40において、スパニングツリーが変化する可能性があるか否かを判定する。
【0064】
判定部134は、受信部131が新たなスイッチからBPDUを受信したか否かを判定する(S20)。判定部134は、新たなスイッチからBPDUを受信したと判定すると、S50に処理を移し、新たなスイッチからBPDUを受信していないと判定すると、S30に処理を移す。
【0065】
S30において、判定部134は、受信したBPDUに含まれるBPDU属性情報に基づいて、BPDUデータベースに記憶されているBPDU属性情報に変更があるか否かを判定する。判定部134は、BPDU属性情報に変更があると判定すると、S50に処理を移し、BPDU属性情報に変更がないと判定すると、S40に処理を移す。
【0066】
S40において、判定部134は、受信したBPDUの受信間隔が第1の間隔よりも大きいか否かを判定する。判定部134は、BPDUの受信間隔が第1の間隔よりも大きいと判定すると、S50に処理を移し、BPDUの受信間隔が第1の間隔以下であると判定すると、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0067】
S50において、UPF5と、端末1との通信接続状態がアイドル状態であるか否かを判定する。通信接続部535は、UPF5と端末1との通信接続状態がアイドル状態であると判定すると、S60に処理を移し、アイドル状態ではなくコネクテッド状態であると判定すると、S70に処理を移す。
【0068】
S60において、通信接続部135は、通信部11を制御することにより、端末1と、UPF5との通信状態をコネクテッド状態に変更する。
S70において、送信部136は、BPDUデータベースに含まれるBPDU及びスイッチ2から受信したBPDUに含まれるBPDU属性情報に基づいてBPDUを生成し、通信部11を介して、UPF5に生成したBPDUを送信する。
【0069】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態に係る端末1は、転送経路が変化する可能性がないと判定すると、基地局4を介して無線により接続可能なUPF5にBPDUを送信せず、転送経路が変化する可能性があると判定すると、UPF5にBPDUを送信する。同様に、UPF5は、転送経路が変化する可能性がないと判定すると、端末1にBPDUを送信せず、転送経路が変化する可能性があると判定すると、端末1にBPDUを送信する。このようにすることで、端末1及びUPF5は、基地局4におけるリソースの消費を抑制することができる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、STPに対応するスパニングツリーに端末1及びUPF5が含まれていることを前提として説明したが、これに限らず、MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)に対応するスパニングツリーに端末1及びUPF5が含まれている場合に適用してもよい。この場合、端末1の判定部134及びUPF5の判定部534は、当該端末1及びUPF5が属する複数のスパニングツリーにおいて、転送経路が変化する可能性があるか否かを判定する。
【0071】
また、例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0072】
1・・・端末、11・・・通信部、12・・・記憶部、13・・・制御部、131・・・受信部、132・・・記憶制御部、133・・・設定部、134・・・判定部、135・・・通信接続部、136・・・送信部、2・・・スイッチ、3・・・電子機器、4・・・基地局、5・・・UPF、51・・・通信部、52・・・記憶部、53・・・制御部、531・・・受信部、532・・・記憶制御部、533・・・設定部、534・・・判定部、535・・・通信接続部、536・・・送信部、6・・・スイッチ