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特許7005555パイロットガバナとそれを用いたパイロット式ガスガバナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】パイロットガバナとそれを用いたパイロット式ガスガバナ
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/16 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G05D16/16 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019095133
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020190864
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000142078
【氏名又は名称】株式会社協成
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 宏二
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-054330(JP,A)
【文献】実開昭58-122110(JP,U)
【文献】特開2012-149833(JP,A)
【文献】実開昭59-037608(JP,U)
【文献】特開2017-083981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧を導入する駆動圧力室(6)、主ガバナ(33)によって調圧された二次圧力を導入する二次圧力室(7)、大気圧室(8)、及び前記駆動圧力室(6)と前記大気圧室(8)との間に配置される調整圧力室(15)を内部に有するケーシング(2)と、
前記駆動圧力室(6)と前記二次圧力室(7)を区画する第1ダイヤフラム(3)、前記駆動圧力室(6)と前記調整圧力室(15)を区画する第2ダイヤフラム(4)、及び前記調整圧力室(15)と前記大気圧室(8)を区画する第3ダイヤフラム(14)と、
前記ケーシング(2)内に配置されて前記第1、第2、第3ダイヤフラム(3、4、14)の内周側を支持するホルダ(5)と、
前記ホルダ(5)の変位によって前記駆動圧力室(6)に対する一次側管路(31)からの制御用圧力流体の導入量を増減させる供給弁(10)と、
前記供給弁(10)の閉弁動作に連動して前記駆動圧力室(6)を前記二次圧力室(7)に連通させる排気弁(11)と、
前記大気圧室(8)に設置されて前記ホルダ(5)を前記二次圧力室(7)側に向けて付勢するスプリング(12)と、
前記駆動圧力室(6)と前記調整圧力室(15)を繋ぐ通路(16)と、
その通路(16)に配置される絞り(17)とを有し、
前記第1ダイヤフラム(3)と前記第2ダイヤフラム(4)の受圧状態の差が大きく、
前記第1ダイヤフラム(3)と前記第3ダイヤフラム(14)の受圧状態は近似しており、
前記ホルダ(5)を前記二次圧力室(7)側に動かそうとする力と、前記大気圧室(8)側に動かそうとする力がバランスした位置で前記供給弁(10)の弁部開度がゼロ、又は一定に維持されるようになっており、
二次圧力の低下に対する過渡応答時には、前記ホルダ(5)の位置制御が前記第1ダイヤフラム(3)と前記第2ダイヤフラム(4)によってなされ、
前記駆動圧力室(6)と前記調整圧力室(15)の圧力が近似又は等しい安定時には、前記ホルダ(5)の位置制御が前記第1ダイヤフラム(3)と前記第3ダイヤフラム(14)によってなされるパイロットガバナであって、
前記駆動圧力室(6)と前記調整圧力室(15)との間に、前記駆動圧力室(6)の圧力(PW)と前記調整圧力室(15)の圧力(PC)がPW≧PCの関係にあるときに閉弁し、PW<PCとなったときに開弁して前記調整圧力室(15)の圧力を前記駆動圧力室(6)に逃がす排気弁(19)又は逆止弁(20)を備えるパイロットガバナ。
【請求項2】
前記第3ダイヤフラム(14)の前記ホルダ(5)に対する取り付け位置を変更可能となす取り付け位置調整機構(18)を含んでいる請求項1に記載のパイロットガバナ。
【請求項3】
前記絞り(17)が可変絞り(17A)である請求項1又は2に記載のパイロットガバナ。
【請求項4】
前記調整圧力室(15)に連通させたタンク(21)を備える請求項1~のいずれかに記載のパイロットガバナ。
【請求項5】
ダイヤフラム(33c)によって区画されたバランス圧力室(33b)とローディング圧力室(33d)及び一次側管路(31)と二次側管路(32)の連通状態を切り替える開閉弁(33a)と、その開閉弁(33a)に閉弁力を付与するメインスプリング(33e)を備え、前記一次側管路(31)と前記二次側管路(32)間に組み込まれて一次側圧力を減圧して二次側に流す主ガバナ(33)と、請求項1~のいずれかに記載のパイロットガバナ(1)を組み合わせ、
前記パイロットガバナ(1)の前記駆動圧力室(6)を前記一次側管路(31)に、前記二次圧力室(7)を、前記二次側管路(32)と前記主ガバナ(33)のバランス圧力室(33b)にそれぞれ接続し、
前記駆動圧力室(6)を、前記主ガバナ(33)のローディング圧力室(33d)に接続したパイロット式ガスガバナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス圧力の制御に利用されるパイロットガバナと、そのパイロットガバナを用いて二次側でのガス使用量の増加に伴う二次側圧力の低下を防止したパイロット式ガスガバナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、都市ガスなどの供給経路の途中には、管路内の圧力を切り替える箇所が存在し、その部分には、ガスガバナ(整圧器)が設けられている。
【0003】
そのガスガバナの一例の概略構成を図13に示す。同図のガスガバナは、パイロット式ガスガバナと称されているものであって、下記特許文献1などに示されている。
【0004】
図13のパイロット式ガスガバナ30には、一次側管路31と二次側管路32間に組み込まれて高圧の一次側圧力を減圧して二次側に流す主ガバナ(本体稼動部)33、その主ガバナ33の動作を制御するパイロットガバナ1、オリフィス34などが含まれており、これらの機器による二次側圧力(以下では二次圧力と言う)の調圧によって二次圧力の変化が小さく抑えられる。
【0005】
図13のパイロットガバナ1は、ケーシング2に設けられた第1ダイヤフラム(上ダイヤフラム)3と第2ダイヤフラム(下ダイヤフラム)4を、ホルダ5を介して連結し、ケーシング2内に、第1ダイヤフラム3と第2ダイヤフラム4間に位置する駆動圧力室(荷重圧室)6と、第1ダイヤフラム3の上部に位置する二次圧力室7と、第2ダイヤフラム4の下部に位置する大気圧室8を形成している。
【0006】
また、制御用圧力流体の導入通路9と、その導入通路9の駆動圧力室6への出口部に設置された供給弁(サプライバルブ)10と、駆動圧力室6と二次圧力室7の連通状態を切り替える排気弁(エキゾーストバルブ)11と、ホルダ5を大気圧室8側から二次圧力室7側に向けて付勢する付勢力の調整が可能なスプリング12をケーシング2の内部に備えている。
【0007】
二次圧力室7は、二次側管路32と主ガバナ33のバランス圧力室33bに接続され、整圧器の形態によっては、一次側管路31と導入通路9を結ぶ経路の途中に組み込まれる減圧弁(図示せず)の調整圧力室にも接続される。
【0008】
導入通路9は、一次側管路31に接続され、駆動圧力室6は、主ガバナ33のローディング圧力室(駆動圧力室)33dに接続される。
【0009】
供給弁10は、図14に示すように、第1ダイヤフラム3と第2ダイヤフラム4の受圧状態の差によって弁部開度が制御され、第1ダイヤフラム3とスプリング12がホルダ5を上向きに動かそうとする力と第2ダイヤフラム4がホルダ5を下向きに動かそうとする力がバランスした位置で弁部開度が一定に維持される。
【0010】
例示のパイロットガバナ1の駆動圧力を利用して主ガバナ33を作動させるガスガバナは、一次側管路31と二次側管路32の連通が主ガバナ33の開閉弁33aによって遮断されている状況下で二次側管路32内の圧力が使用されて低下すると、パイロットガバナ1の二次圧力室7の圧力が低下する。
【0011】
そのために、パイロットガバナ1の第1、第2のダイヤフラム3、4がホルダ5を相反する向きに動かそうとする力のバランスが崩れ、第1、第2のダイヤフラム3、4がスプリング12に押されてホルダ5と共に上向きに移動し、供給弁10の弁部開度が大きくなる。
【0012】
その結果、一次側管路31からの駆動圧力室6に対する制御用圧力流体の導入量が増加し、駆動圧力室6の圧力(主ガバナ33に供給する駆動圧)が高まる。
【0013】
駆動圧力室6の圧力は、主ガバナ33のローディング圧力室33dに流れ、これによる
ローディング圧力室33dの圧力上昇により開閉弁33aが開弁し、一次側管路31から二次側管路32へ高圧のガスが流入する。
【0014】
駆動圧力は、主ガバナ33の開閉弁33aからの流量が二次側でのガス使用量に応じた流量になるまで上昇する。
【0015】
駆動圧力が制御目標圧(開閉弁33aからの流量が二次側でのガス使用量に応じた流量になる圧力)まで上昇すると、パイロットガバナ1の内部のホルダ5に対向して作用する力が再びバランスする。
【0016】
駆動圧力が上昇した影響により、パイロットガバナ1の内部ではホルダ5を大気圧室8
側へ押す力が増加しており、その分、二次圧力が低下してホルダ5に対向して作用する力がバランスしている。
【0017】
このため、ガス使用量の増加に応じて二次圧力の低下が起こる。
【0018】
また、このときに駆動圧がホルダ5を大気圧室8側に押すように作用する力は、第1、第2のダイヤフラム3、4の受圧状態の差によるものである。
【0019】
上記の状態とは反対に、ガス供給経路の二次側でのガス使用量が減少すると、パイロットガバナ1の二次圧力室7の圧力が上昇し、ホルダ5が大気圧室8側へ移動することで開閉弁33aが閉弁し、これに連動して排気弁11が開弁することで、駆動圧力室6内の駆動圧力が二次圧力室7側へ排出され、ガバナは停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2004-252706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
パイロット式ガスガバナは、パイロットガバナが二次圧力の低下に応じて生成した駆動圧力を主ガバナに制御信号として送っているが、図13に示した従来のパイロット式ガスガバナは、特性上、二次側でのガス使用量が増加すると、二次圧力が一定値低下すると言う欠点を有していた(図15の静特性A参照)。
【0022】
これは、パイロットガバナの第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの受圧状態の差を利用して駆動圧を生成しているからである。
【0023】
その二次圧力の低下は、パイロットガバナの第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの受圧状態を近似させる(受圧状態の差を小さくする)ことによって小さく抑えることができる(図15の静特性B参照)。
【0024】
しかしながら、この方法を採ると、ガス使用量変化時の駆動圧の応答挙動が過敏になってパイロットガバナによる制御が不安定になり、二次圧力P2が図16に示すように大きく振れてその振れが止まらなくなる。そのために、パイロットガバナの第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの受圧状態を近似させることには限界があった。
【0025】
図17に示すように、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの受圧状態の差が大きく設定されたパイロットガバナは、制御の初期には二次圧力P2が振れるが、その振れは早めに収束する。
【0026】
そのために、従来のパイロットガバナは、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの受圧状態の差を大きく設定しているが、そのパイロットガバナは、図17からわかるように、振れが収束した後の二次圧力P2の低下が避けられない。
【0027】
上記二次側でのガス使用量の増加に伴う二次圧力の低下の問題は、多量のガスが使用される用途のガス供給経路において特に顕著に現れる。
【0028】
そこで、この発明は、二次圧力変化時の動作を安定させたパイロットガバナと、二次側でのガス使用量の増加に伴う二次圧力の低下を防止したパイロット式ガスガバナを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
一次圧を導入する駆動圧力室、主ガバナによって調圧された二次圧力を導入する二次圧力室、大気圧室、及び前記駆動圧力室と前記大気圧室との間に配置される調整圧力室を内部に有するケーシングと、
前記駆動圧力室と前記二次圧力室を区画する第1ダイヤフラム、前記駆動圧力室と前記調整圧力室を区画する第2ダイヤフラム、及び前記調整圧力室と前記大気圧室を区画する第3ダイヤフラムと、
前記ケーシング内に配置されて前記第1、第2、第3ダイヤフラムの内周側を支持するホルダと、
前記ホルダの変位によって前記駆動圧力室に対する一次側管路からの制御用圧力流体の導入量を増減させる供給弁と、
前記供給弁の閉弁動作に連動して前記駆動圧力室を前記二次圧力室に連通させる排気弁と、
前記大気圧室に設置されて前記ホルダを前記二次圧力室側に向けて付勢するスプリングと、
前記駆動圧力室と前記調整圧力室を繋ぐ通路と、
その通路に配置される絞りとを有し、
前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、その両者の受圧状態の差が大きく、
前記第1ダイヤフラムと前記第3ダイヤフラムは、その両者の受圧状態が近似しており、
前記ホルダを前記二次圧力室側に動かそうとする力と、前記大気圧室側に動かそうとする力がバランスした位置で前記供給弁の弁部開度がゼロ、又は一定に維持されるようになっており、
二次圧力の低下に対する過渡応答時には、前記ホルダの位置制御が前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムによってなされ、
前記駆動圧力室と前記調整圧力室の圧力が近似又は等しい安定時には、前記ホルダの位置制御が前記第1ダイヤフラムと前記第3ダイヤフラムによってなされるパイロットガバナを提供する。
【0030】
なお、ここで言う「受圧状態」は、各ダイヤフラムの設計形状や取り付け位置の違いによって決まる。
【0031】
その受圧状態の差が大きければ、受圧状態の異なった2枚のダイヤフラムが発生させる推力(ホルダを移動させる力)の差が大きくなる。
【0032】
また、受圧状態の差が近似していれば、受圧状態の近似した2枚のダイヤフラムが発生させる推力の差は小さくなる。
【0033】
第2ダイヤフラムは、受圧状態の差によって第1ダイヤフラムよりも大きな推力を生じるものになっている。
【0034】
前記駆動圧力室と調整圧力室を繋ぐ通路は、前記ケーシングの外部に設けてもよいし、ケーシング内の前記ホルダに設けてもよい。
【0035】
前記第3ダイヤフラムは、前記ホルダに取り付け位置調整機構を含ませてホルダに対する取り付け位置を変更可能にしておくことができる。
【0036】
また、前記駆動圧力室と前記調整圧力室との間には、駆動圧力室の圧力PWと調整圧力室の圧力PCがPW≧PCの関係にあるときに閉弁し、前記の関係が崩れてPW<PCとなったときに開弁して調整圧力室の圧力を駆動圧力室に逃がす排気弁や逆止弁(チェックバルブ)を設けることができる。
【0037】
その逆止弁や排気弁も、前記ケーシングの外部や前記ホルダに設けることができる。
【0038】
さらに、前記ケーシングの外部の通路に設ける絞りは、可変絞りにすることができる。
【0039】
このほか、前記調整圧力室に連通させたタンクを前記ケーシングの外部に設けて前記調整圧力室の実質的な体積(容積)を増やしたり、前記タンクと調整圧力室を結ぶ通路に固定絞り又は可変絞りをさらに追設したりすることもできる。
【0040】
この発明は、ダイヤフラムによって区画されたローディング圧力室とバランス圧力室及び一次側管路と二次側管路の連通状態を切り替える開閉弁を備え、前記一次側管路と二次側管路間に組み込まれて一次側圧力を減圧して二次側に流す主ガバナと、上述したこの発明のパイロットガバナを組み合わせ、
前記パイロットガバナの前記駆動圧力室を前記一次側管路に、前記二次圧力室を、前記二次側管路と前記主ガバナのバランス圧力室にそれぞれ接続し、
さらに、前記駆動圧力室を、前記主ガバナのローディング圧力室に接続したパイロット式ガスガバナも併せて提供する。
【発明の効果】
【0041】
この発明のパイロットガバナは、前記駆動圧力室との間が第2ダイヤフラムによって、また、前記大気圧室との間が第3ダイヤフラムによってそれぞれ区画された調整圧力室を新たに設け、その調整圧力室を絞りの設置された通路を介して前記駆動圧力室に連通させている。
【0042】
このように構成されているため、前記二次圧力室の圧力が低下して一次側管路からの前記駆動圧力室に対する制御用圧力流体の導入量が増えると、前記駆動圧力室の圧力が前記調整圧力室の圧力よりも高まり、その後、絞りの設置された通路を通って駆動圧力室の圧力が調整圧力室に流れて駆動圧力室と調整圧力室が同圧になる。
【0043】
このため、二次圧力室の圧力低下に対する過渡応答時には、受圧状態差の大きい前記第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムによる前記ホルダの位置制御(前記供給弁の弁部開度の制御)が支配的に実行され、また、駆動圧力室と調整圧力室が時間をかけて同圧になることでガバナの稼動状態が安定すると、前記ホルダの位置制御が前記第1ダイヤフラムと第3ダイヤフラムによる制御に切り替わる。
【0044】
第1ダイヤフラムと第3ダイヤフラムは、受圧状態が近似したものになっているので、
第1ダイヤフラムと第3ダイヤフラムによる制御に切り替わると、二次圧力は安定し、圧力低下が極めて小さい状態、又はゼロに抑えられる。
【0045】
なお、前記第3ダイヤフラムの前記ホルダに対する取り付け位置の調整機構を含ませたものは、第3ダイヤフラムの取り付け位置を変えてその第3ダイヤフラムの受圧状態を変えることができる。
【0046】
また、前記駆動圧力室と調整圧力室との間に、調整圧力室の圧力PCが駆動圧力室の圧力PWよりも大となったときに開弁して調整圧力室の圧力を駆動圧力室に逃がす排気弁や逆止弁を設置したものは、二次圧力の急激な上昇に対する応答速度を向上させることができる。
【0047】
さらに、前記絞りとして可変絞りを用いたものは、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムによる制御から、第1ダイヤフラムと第3ダイヤフラムによる制御への切り替えの応答速度を調整することができる。
【0048】
前記調整圧力室に連通させたタンクを設けて調整圧力室の実質的な体積を増やしたものも、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムによる制御から、第1ダイヤフラムと第3ダイヤフラムによる制御への切り替えの応答速度を調整することができる。
【0049】
この発明のパイロット式ガスガバナは、この発明のパイロットガバナによる制御により、二次側でのガス使用量が増加したときにも制御の安定性を損なわずに二次圧力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】この発明のパイロットガバナの基本構成を簡略化して示す断面図である。
図2図1のパイロットガバナのダイヤフラムに過渡期に作用する圧力の説明図である。
図3図1のパイロットガバナのダイヤフラムに安定期に作用する圧力の説明図である。
図4図1のパイロットガバナを用いたこの発明のパイロット式ガスガバナの一例を簡略化して示す断面図である。
図5図4のパイロット式ガスガバナの動特性を示すグラフである。
図6図4のパイロット式ガスガバナの静特性を示すグラフである。
図7】この発明のパイロットガバナの一形態を簡略化して示す断面図である。
図8】この発明のパイロットガバナの他の形態の要部を簡略化して示す断面図である。
図9図8のパイロットガバナに設けた排気弁が開いて調整圧力室と駆動圧力室が連通した状態を示す断面図である。
図10】この発明のパイロットガバナのさらに他の形態の要部を簡略化して示す断面図である。
図11】この発明のパイロットガバナのさらに他の形態の要部を簡略化して示す断面図である。
図12】この発明のパイロット式ガスガバナの他の例を簡略化して示す断面図である。
図13】従来のパイロット式ガスガバナの一例を簡略化して示す断面図である。
図14】従来のパイロット式ガスガバナに採用されているパイロットガバナの作動状態の説明図である。
図15図13のパイロット式ガスガバナの静特性を示すグラフである。
図16】従来のパイロット式ガスガバナの第1、第2のダイヤフラムの受圧状態の差が小さいときの動特性を示すグラフである。
図17】従来のパイロット式ガスガバナの第1、第2のダイヤフラムの受圧状態の差が大きいときの動特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、この発明のパイロットガバナと、それを用いたパイロット式ガスガバナの実施の形態を、添付図面の図1図12に基づいて説明する。
【0052】
図1は、この発明のパイロットガバナの基本構成を示している。このパイロットガバナ1は、ケーシング2、第1ダイヤフラム3、第2ダイヤフラム4、ホルダ5、各々がケーシング2の内部に形成される駆動圧力室6、二次圧力室7、大気圧室8、制御用圧力流体の導入通路9、供給弁(サプライバルブ)10、排気弁(エキゾーストバルブ)11、スプリング12、圧力調整機構13を備え、さらに、第3ダイヤフラム14と、調整圧力室15と、通路16と、絞り(オリフィス)17を備えたものになっている。
【0053】
ケーシング2は、主ガバナのローディング圧力室に接続されるポートPo1と、主ガバナのバランス圧力室につながれるポートPo2と、主ガバナによって調圧された二次圧力を導入するポートPo3を有する。ポートPo2とPo3は、ひとつのポートを分岐させたものであってもよい。
【0054】
第1~第3のダイヤフラム3、4、14は、内周側がホルダ5に固定され、外周側はケーシング2に保持されている。ホルダ5は、ケーシング2内で上下方向に動くことができる。これらのダイヤフラムの内周側は、ダイヤフラムプレート(図示省略)によって補強されている。
【0055】
ホルダ5は、平行配置の支持板5a、5bを複数本のブリッジ5cを介して連結し、さらに、支持板5bの下面の中心に、フランジ5dを有する連結軸5eを垂下して設けたものになっている。
【0056】
駆動圧力室6と二次圧力室7は、第1ダイヤフラム3によって区画されている。また、駆動圧力室6と調整圧力室15は、第2ダイヤフラム4によって、調整圧力室15と大気圧室8は、第3ダイヤフラム14によってそれぞれ区画されている。
【0057】
導入通路9は、ガス供給経路の一次側管路に接続されて一次圧を供給弁10を通じて駆動圧力室6に導入する。
【0058】
供給弁10は、駆動圧力室6の内部に配置される上向き開口の位置固定のノズル10aとそのノズル10aに接離するシートパッキン10bを組み合わせたものになっている。
【0059】
この供給弁10は、駆動圧力室6と調整圧力室15の圧力が等しく、かつ、ホルダ5に対向して加わる力がバランスしているときに、弁部が開度ゼロ(閉弁状態)になるか、もしくはシートパッキン10bがノズル10aから一定量離間して一定開度を保つ。
【0060】
ホルダ5に対向して作用してバランスしている力は、第1ダイヤフラム3が二次圧を受けて発生する力と、スプリング12の力と、第1ダイヤフラム3と第3ダイヤフラム14に相反する向きに加わる力である。
【0061】
排気弁11は、駆動圧力室6と二次圧力室7の連通状態を切り替える弁であって、ホルダ5に組み込まれた弁体(ロッドバルブ)11aと、ホルダ5に設けられた弁座11bと、弁体11aを閉弁方向に付勢するスプリング(図示せず。弁体11aを自重で閉弁するものにすれば、このスプリングは省くことができる)からなる。
【0062】
この排気弁11の弁体11aに、供給弁10のシートパッキン10bが取り付けられており、供給弁10の閉弁動作に連動して排気弁11が開弁する。その開弁により、駆動圧力室6が二次圧力室7に連通する。
【0063】
スプリング12は、大気圧室8内に組み込まれている。そのスプリング12の弾発力は、圧力調整機構13によって調整される。圧力調整機構13は、ケーシング2に螺合させたハンドル付きの調整ボルト13aとスプリング押え13bを有しており、調整ボルト13aでスプリング押え13bを軸方向に進退させてスプリング12による二次圧力室7の側へのホルダ付勢力を増減させるものになっている。
【0064】
第1ダイヤフラム3と第2ダイヤフラム4は、その両者の受圧状態の差が大きく設定されている。その受圧状態の差により、第2ダイヤフラム4が駆動圧力室6の圧力を受けてホルダ5を大気圧室8側に押す力は、第1ダイヤフラム3が駆動圧力室6の圧力を受けてホルダ5を二次圧力室7側に押す力に勝るものになっている。
【0065】
第1ダイヤフラム3と第2ダイヤフラム4の受圧状態の差は、それらのダイヤフラムの設計形状や取り付け位置を変えることによって生じさせることができる。
【0066】
第1ダイヤフラム3と第3ダイヤフラム14は、その両者の受圧状態が近似しており、
そのため、駆動圧力室6と調整圧力室15の内圧が等しいときには、第1ダイヤフラム3がホルダ5を二次圧力室7側に押す力と、第3ダイヤフラム14がホルダ5を大気圧室8側に押す力が相殺される。
【0067】
通路16は、駆動圧力室6と調整圧力室15との間に設けられ、この通路16の途中に絞り17が設置されている。
【0068】
以上の通りに構成されたパイロットガバナ1を用いたパイロット式ガスガバナの一例を図4に示す。同図のパイロット式ガスガバナ30は、主ガバナ33とパイロットガバナ1とで構成され、主ガバナ33の動作の制御がパイロットガバナ1によってなされる。
【0069】
主ガバナ33は、一次側管路31と二次側管路32の連通状態を切り替える開閉弁33aと、バランス圧力室33bと、ダイヤフラム33cよってバランス圧力室33bから区画されたローディング圧力室33dと、開閉弁33aに閉弁力を付与するメインスプリング33eを備えたものになっている。
【0070】
パイロットガバナ1の駆動圧力室6は、導入通路9を介してガス供給経路の一次側管路31と主ガバナ33のローディング圧力室(駆動圧力室)33dにそれぞれ接続され、二次圧力室7は、二次側管路32と主ガバナ33のバランス圧力室33bに接続される。さらに、調整圧力室15は通路16を介して駆動圧力室6に接続される。
【0071】
主ガバナ33のローディング圧力室33dは、オリフィス34の含まれた通路を介して二次側管路32にも接続される。
【0072】
このパイロット式ガスガバナ30は、既に述べたように、二次側管路32内のガスが使用されて二次圧力P2(図2参照)が低下すると、パイロットガバナ1の二次圧力室7の圧力が低下する。
【0073】
そのため、スプリング12の力で第1~第3のダイヤフラム3,4、14がホルダ5と一緒に二次圧力室7側に押し動かされて供給弁10の弁部開度が大きくなる。
【0074】
これにより、駆動圧力室6に対する一次圧の導入量が増加して図2に示した駆動圧力室6の圧力PWが高まり、第2ダイヤフラム4を大気圧室8側に押す力が増大する。
【0075】
このとき、第2ダイヤフラム4が調整圧力室15の圧力PCを受けてホルダ5を二次圧力室7側へ動かそうとする力は、第3ダイヤフラム14が圧力PCを受けてホルダ5を大気圧室8側へ動かそうとする力よりも大きいが、調整圧力室15の圧力は制御の当初には駆動圧力室6の圧力よりも低いため、ホルダ5を大気圧室8側に押す力は二次圧力室7側へ押す力に勝る。
【0076】
その結果、第1~第3のダイヤフラム3,4、14がホルダ5を伴って下向きに移動し、ホルダ5が各ダイヤフラムから対抗して受ける力のバランス点に戻され、供給弁10の弁部開度が小さくなる。
【0077】
また、この間に駆動圧力室6の圧力が絞り17の配置された通路16を通って調整圧力室15に徐々に流れて図3に示した駆動圧力室6の圧力PWと調整圧力室15の圧力PCが同圧(PW=PC)になる。
【0078】
その状況では、第2ダイヤフラム4の両面に対向して加わる力は相殺されてゼロになるので、ホルダ5の位置の制御が、受圧状態の近似した第1ダイヤフラム3と第3ダイヤフラム14によってなされることになる。
【0079】
このように、この発明のパイロット式ガスガバナ30では、過渡期(パイロットガバナ1による制御開始当初)には、ホルダ5の位置制御(これは即ち、供給弁10の開度制御)が受圧状態の差の大きい第1ダイヤフラム3と第2ダイヤフラム4によって支配的になされ、充分に時間が経過した安定期には受圧状態の近似した第1ダイヤフラム3と第3ダイヤフラム14によってなされる。
【0080】
これにより、図5に示すように、過渡期には二次圧力P2の振れがあるが、その振れは安定期には収まり、制御後の二次圧力P2の低下がゼロもしくは極めて小さく抑えられ、安定した二次圧力P2が維持される。制御の開始から安定期に至るまでの時間は、駆動圧力室6と調整圧力室15が同圧になるまでの調整可能な時間である。
【0081】
既に述べた通り、二次側でのガス使用量の増加に伴う二次圧力の低下の問題は、多量のガスが使用される用途のガス供給経路において特に顕著に現れる。
【0082】
このため、この発明のパイロットガバナは、多量のガスを使用するものから急激なガス使用がある用途まで幅広く使用することができる。
【0083】
図7は、この発明のパイロットガバナの好ましい形態の一例である。この図7のパイロットガバナ1は、ホルダ5に対する第3ダイヤフラム14の取り付け位置を変えられるように取り付け位置調整機構18を追設したものである。
【0084】
図7に示すように、ホルダ5の第3ダイヤフラム14を固定したフランジ5dは、ホルダ5の本体部から独立させている。また、連結軸5eに相当する箇所は、小径軸部e-1とその小径軸部e-1をスライド自在に挿入する筒状の大径軸部e-2とで構成し、小径軸部e-1を支持板5bに、大径軸部e-2をフランジ5dにそれぞれ設けている。
【0085】
また、フランジ5dに、調整ねじ18aを回転可能、軸方向相対移動不可に取り付けている。その調整ねじ18aは、下端に六角孔などの回転操作部(図示せず)を有しており、この調整ねじ18aの先端外周に形成した雄ねじ18bを小径軸部e-1の孔面に形成された雌ねじ18cに螺合させて第3ダイヤフラム14の位置調整機構18を構成している。
【0086】
ダイヤフラムの受圧状態は、取り付け位置を変えることによって変化させることができ、小径軸部e-1に対する調整ねじ18aのねじ込み量を変化させることで、第3ダイヤフラム14の取り付け位置(第1、第2ダイヤフラムとの位置関係)が変動して受圧状態が変化する。従って、図7のパイロットガバナ1は、第3ダイヤフラム14の受圧状態の調整が可能である。
【0087】
パイロットガバナ1は、製造上の理由から製品の応答特性に個体差が生じることがあり、その応答特性の個体差のずれを取り付け位置調整機構18により修正することが可能である。
【0088】
図8も、この発明のパイロットガバナの好ましい形態を示している。この図8のパイロットガバナ1は、駆動圧力室6と調整圧力室15との間に、排気弁19を設けている。排気弁19は、弁体19a、弁座19b、及び弁体19aを閉弁方向に付勢するスプリング19cを組み合わせた一般的な排気弁である。
【0089】
その排気弁19は、駆動圧力室6と調整圧力室15との間に、駆動圧力室6の圧力PWと調整圧力室15の圧力PCがPW<PCとなったときに図9に示すように開弁して調整圧力室15の圧力を駆動圧力室6に逃がす。
【0090】
駆動圧力室6の圧力PWと調整圧力室15の圧力PCは、通常、PW≧PCの関係が保たれるが、二次側でのガスの使用量が急減に減少した場合、PW<PCとなることがある。
【0091】
排気弁19は、このときの逆圧を感知して開弁し(PW≧PCの関係が成立しているときには閉弁する)、調整圧力室15の圧力PCを駆動圧力室6側に逃がす。これにより、二次圧力の急激な上昇に対する応答速度を向上させることができる。
【0092】
図10に示すように、調整圧力室15と駆動圧力室6との間に、排気弁に代えて逆止弁20を設けたものも、同様の作用、効果を期待できる。
【0093】
図10では、ケーシング2の外部に設けた通路16に逆止弁20を組み込んでいるが、この逆止弁20も、フランジ5dなどに取り付けてケーシング2の内部に設置することができる。
【0094】
図11に示すように、通路16に設置する絞りは可変絞り17Aであってもよく、この可変絞り17Aを有するパイロットガバナ1は、二次圧力P2の低下に対する応答速度(二次圧力P2の振れの収束速度)を調整することができる。
【0095】
このほか、図12に示すように、調整圧力室15に、その調整圧力室15の体積を増加させるタンク21を接続することでも、応答速度を変えることができる。
【0096】
容積を増減できるタンク21を用いれば、応答速度の調整範囲が広がる。
【符号の説明】
【0097】
1 パイロットガバナ
2 ケーシング
Po1~Po3 ポート
3 第1ダイヤフラム
4 第2ダイヤフラム
5 ホルダ
5a、5b 支持板
5c ブリッジ
5d フランジ
5e 連結軸
-1 小径軸部
-2 大径軸部
6 駆動圧力室
7 二次圧力室
8 大気圧室
9 導入通路
10 供給弁
10a ノズル
10b シートパッキン
11 排気弁
11a 弁体
11b 弁座
12 スプリング
13 圧力調整機構
13a 調整ボルト
13b スプリング押え
14 第3ダイヤフラム
15 調整圧力室
16 通路
17 絞り
17A 可変絞り
18 取り付け位置調整機構
18a 調整ねじ
18b 雄ねじ
18c 雌ねじ
19 排気弁
19a 弁体
19b 弁座
19c スプリング
20 逆止弁
21 タンク
30 パイロット式ガスガバナ
31 一次側管路
32 二次側管路
33 主ガバナ
33a 開閉弁
33b バランス圧力室
33c ダイヤフラム
33d ローディング圧力室
33e メインスプリング
34 オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17