(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ゲルシート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20220128BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20220128BHJP
C09J 133/26 20060101ALI20220128BHJP
B29C 39/10 20060101ALN20220128BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C08J5/04 CEY
C09J7/21
C09J133/26
B29C39/10
B29K105:06
(21)【出願番号】P 2019182576
(22)【出願日】2019-10-03
(62)【分割の表示】P 2016126983の分割
【原出願日】2016-06-27
【審査請求日】2019-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一希
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 諒
(72)【発明者】
【氏名】中山 善幾
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027383(WO,A1)
【文献】特開2007-085461(JP,A)
【文献】特開2016-067653(JP,A)
【文献】特開2015-081235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00, 5/04,5/18
B32B 27/00-27/42
B29C 39/10
C09J 7/21
C09J133/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル材と、前記ゲル材中に埋め込まれた中間基材とを含む、ロール状ではないゲルシートであって、
前記ゲルシートの厚みをA、前記中間基材の振幅をBとするとき、
B/A≦0.4
の関係を満たし、
粘着力の変動係数CV値が、4.3~8.1であり、
前記中間基材の厚みが0.05mm~2.0mmであ
り、
前記ゲル材が、高分子マトリックス、水及び多価アルコールを含むハイドロゲルであり、前記高分子マトリックスが、(メタ)アクリルアミド系単量体及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種以上の単官能単量体と、架橋性単量体との共重合体である前記ゲルシート。
【請求項2】
ゲルシートの厚みが0.2mm~2.0mmである請求項1に記載のゲルシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルシートは、生体に貼付するサージカルテープや、種々の医療用機器類の固定用テープ、生体に貼付する生体電極用パッド、心電図用電極、建材や電子材料等の工業用粘着テープ等として好適に用いられている。これらのゲルシートには、補強や裁断時の保形性の改善等を目的として、中間基材が埋め込まれることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゲル骨格形成成分としてのカルボン酸系高分子と架橋成分としての難水溶性の多価金属と水とパルミチン酸アスコルビルリン酸のアルカリ金属塩とを含むハイドロゲルが開示され、そのハイドロゲルは、強度付与等の観点から中間基材を含み得ることが記載されている。また、中間基材としては、ポリエステル等の合成樹脂繊維で形成された不織布の他、トリコット等の編み物、織物等とされたシート状物が適用される旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/124216号(請求項1、0046)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のゲルシートにおける中間基材は、ゲルシート内に存在させるだけであり、裁断時等におけるゲルシートの取り扱い性に関する効果のみが着目されていた。一方で、従来の中間基材を含むゲルシートは、皮膚への粘着性にばらつきがあるという問題を生じる場合があった。粘着性にばらつきが存在すると、例えば電極用のゲルパッドとして用いる場合に、粘着性が良好なパッドや粘着力がなく皮膚から剥がれてしまうパッドが得られる等の不都合を生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、粘着性にばらつきがない、中間基材を含むゲルシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、上記の粘着性のばらつきは、中間基材がゲルシートの内部でわずかに波打つことにより生じており、この波打つ程度を特定範囲内に制御することで粘着性のばらつきを抑制できることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)ゲル材と、前記ゲル材中に埋め込まれた中間基材とを含む、ロール状ではないゲルシートであって、
前記ゲルシートの厚みをA、前記中間基材の振幅をBとするとき、
B/A≦0.4
の関係を満たし、
粘着力の変動係数CV値が、4.3~8.1である前記ゲルシート。
(2)ゲルシートの厚みが0.2mm~2.0mmである前記(1)に記載のゲルシート。
(3)中間基材の厚みが0.05mm~2.0mmである前記(1)又は(2)に記載のゲルシート。
(4)ゲル材が、高分子マトリックス、水及び多価アルコールを含むハイドロゲルであり、前記高分子マトリックスが、(メタ)アクリルアミド系単量体及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種以上の単官能単量体と、架橋性単量体との共重合体である前記(1)~(3)のいずれか一つに記載のゲルシート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲルシートの厚みAに対する中間基材の振幅Bの割合を0.4以内に制御することによって、粘着性のばらつきを小さくし、粘着力が均一なゲルシートを得ることができる。このゲルシートは、皮膚貼着用のハイドロゲルシートとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るゲルシートの一実施形態の断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1に、本発明のゲルシートの一実施形態の断面図を示す。このゲルシート1は、ゲル材10と、ゲル材10に埋め込まれた中間基材20とから概略構成されている。そして、ゲルシート1の厚みをA、中間基材20の振幅をBとするとき、
B/A≦0.4
の関係を満たすことを特徴とする。好ましくはB/A≦0.3、より好ましくはB/A≦0.2である。この範囲を満たすことにより、ゲルシート1は粘着力のばらつきが極めて小さくなり、被着体に粘着させた場合に容易に剥がれ落ちるのを防ぐことができる。なお、ここで振幅Bとは、ゲルシート1の断面を観察した場合にゲルシート1の内部でわずかに波打つ中間基材20の波高をいい、具体的には、幅50mmのゲルシートにおける中央及び両端の3か所の幅3mmに相当する部分の断面を観察し、観察部分におけるゲルシートの一方の面から中間基材までの最大及び最小距離を計測してその差を算出し、得られた差の3か所についての平均値をいう。また、中間基材はある程度の厚みを有するため、ゲルシートの一方の面から中間基材までの距離を計測する際には、中間基材の厚み方向の中央部までの距離を計測するものとする。
【0012】
ゲル材10は、粘着性を有していれば良く、各種のゲルから構成することができ特に限定されるものではないが、水を含むハイドロゲルであることが特に好ましい。ハイドロゲルは、柔軟性や保水性等に優れ、医療・医薬、食品、土木、バイオエンジニアリング、スポーツ関連等の多岐にわたる分野に対して用いることができる。
【0013】
前記ハイドロゲルとしては、従来知られた各種のハイドロゲルが適用可能である。例えば、高分子マトリックスと、水と、多価アルコールとを含むハイドロゲルが好ましく用いられる。
【0014】
高分子マトリックスは、一例として、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能単量体と、架橋性単量体との共重合体から形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
単官能単量体としては、(メタ)アクリルアミド系単量体や(メタ)アクリル酸エステル等の水溶性モノマーが好ましい。
【0016】
この(メタ)アクリルアミド系単量体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-オクトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有のカチオン性アクリルアミド系化合物;4-アクリロイルモルフォリン、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基含有アニオン性単官能単量体又はその塩;及びこれらの誘導体等が挙げられる。その中でも、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、4-アクリロイルモルフォリン、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種等が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル等の脂環式(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等の(ヒドロキシアルキル基にエーテル結合を介してアリール基が結合していてもよい)(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;モノ(メタ)アクリル酸グリセリン;モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体等のモノ(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0018】
上記単官能単量体は、上記(メタ)アクリルアミド系単量体に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等のビニルアミド系単官能単量体;アリルアルコール等の非イオン性単官能単量体、スチレン系単量体等を使用することができる。これらの単官能単量体は、それぞれ、単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0019】
ハイドロゲルにおける上記単官能単量体に由来する構造単位の含有量は、特に限定されないが、ハイドロゲル100重量部に対して、15重量部~50重量部の範囲であることが好ましく、15重量部~35重量部であることがより好ましい。上記単官能単量体に由来する構造単位の含有量が、ハイドロゲル100重量部に対して少な過ぎると、ハイドロゲルの保形性が不十分となり、柔らか過ぎたり、ちぎれ易くなったりするおそれがある。また、上記単官能単量体に由来する構造単位の含有量が、ハイドロゲル100重量部に対して多過ぎると、ハイドロゲルが硬くなり、柔軟性が損なわれてしまうおそれがあるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。
【0020】
前記架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する二重結合を2以上有している単量体を使用することが好ましい。具体的には、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、ジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記分子内に重合性を有する二重結合を2以上有する架橋性単量体として、特許第2803886号公報に記載された、2個以上の(メタ)アクリロイル基又はビニル基を有しかつ分子量が400以上の多官能化合物であるポリグリセリン誘導体も使用することができる。
【0021】
架橋性単量体の添加量は、高分子マトリックス総量に対して、0.02重量%~1.5重量%の範囲内であることが好ましい。添加量が少な過ぎる場合、架橋密度が低くなり、形状安定性が乏しくなると同時に、凝集力が低下し、ゲル材自体の保持力が低下し、粘着力が低くなることがある。また、剥離時に、被着体にゲル材の一部が残留する等、ゲルシートの取り扱い性が悪化する。また、架橋性単量体の添加量が多過ぎると、粘着力が弱くなるとともに、硬く脆いゲルになる可能性がある。なお、ここでいう高分子マトリックスとは、上記単官能単量体と架橋性単量体とを重合架橋したマトリックスを指す。
【0022】
また、ハイドロゲルにおける水の含有量は、特に限定されないが、ハイドロゲル100重量部に対して、10~60重量部であることが好ましく、15~30重量部であることがより好ましい。水の含有量が少な過ぎると、ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が少なくなり、ハイドロゲルの吸湿性が強くなり、ハイドロゲルが経時的に変質(例えば、膨潤)することがある。また、水の含有量が多過ぎると、ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が多くなり、乾燥によるハイドロゲルの収縮や物性変化を生じることがある。
【0023】
多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体;ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が挙げられる。
【0024】
多価アルコールの中でも、ハイドロゲルの使用温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状である多価アルコールを用いることが好ましく、具体的には、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン及びグリセリン等が好適である。
【0025】
ハイドロゲルにおける上記多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、ハイドロゲル100重量部に対して、20~70重量部の範囲内であることが好ましく、25~65重量部の範囲内であることがより好ましい。上記多価アルコールの含有量が少な過ぎると、得られるハイドロゲルの保湿力、可塑性が乏しく、水分の蒸散が著しくなり、ハイドロゲルの経時安定性に欠けるとともに、柔軟性にも欠けるため、十分な粘着性が得られないことがある。また、上記多価アルコールの含有量が多過ぎると、高分子マトリックスが保持できる多価アルコールの量を超えてしまい、ハイドロゲルの表面から多価アルコールがブリードアウトすることによる物性変動が生じて、十分な粘着性が得られないことがあるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。
【0026】
また、ゲル材10は、必要に応じて電解質を含有することができ、これにより、ゲル材に導電性を付与することができる。
【0027】
ゲル材に導電性を付与する場合において、ゲル材における上記電解質の含有量は、前記ゲル材100重量部に対して、0.05~10重量部であることが好ましく、0.1~6重量部であることがより好ましい。電解質の含有量が少な過ぎると、インピーダンスが高くなり、導電性が良いとはいえなくなる。また、電解質の含有量が増えるに従ってインピーダンスは低下するが、電解質の含有量が多過ぎると、インピーダンスはもはや低下しなくなり、コスト的にも無駄である。
【0028】
上記電解質としては特に限定されず、例えば、ハロゲン化ナトリウム(例えば塩化ナトリウム)、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属;その他の金属ハロゲン化物等が挙げられる。また、上記電解質として、各種金属の、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩も好適に用いられる。また、上記電解質として、アンモニウム塩、各種錯塩等の無機塩類;酢酸、安息香酸、乳酸等の一価有機カルボン酸の塩;酒石酸等の多価有機カルボン酸の塩;フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩;スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩;有機アンモニウム塩等も好適である。
【0029】
また、ゲル材10には、pHを調整する目的で水酸化ナトリウム等の塩基を適宜添加しても良い。
【0030】
さらに、ゲル材10は、必要に応じて、他の添加剤を含有していても良い。他の添加剤としては、例えば、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、界面活性剤、着色剤等を挙げることができる。
【0031】
ゲル材10は、上述の各材料と、重合開始剤、溶媒等を溶解又は均一分散し、加熱又は紫外線照射等を行うことにより重合架橋して得ることができる。重合開始剤は、熱重合開始剤でも光重合開始剤でも良い。また、重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、重合前の組成物(モノマー配合液)から重合開始剤を除いたもの100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、1重量部以下であることが好ましい。さらに、紫外線照射により重合する場合には、紫外線の積算照射量は、重合開始剤の含有量等によっても異なるが、例えば1000mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、2000mJ/cm2~10000mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。
【0032】
ゲル材10中に埋め込まれる中間基材20は、ゲルシートの補強、裁断時の保形性の改善等のために用いられるものであり、具体的な態様として、不織布又は織布から構成することができる。不織布及び織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維や、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、又はそれらの混紡が使用可能であり、必要に応じて、バインダーを用いても良く、さらに、必要に応じて着色しても良い。
【0033】
上記不織布の製造方法は特に限定されないが、乾式法や湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法が挙げられる。目付や材質に応じた製法を採用し、目付ムラがないことが中間基材の位置制御のためにより好ましい。織布についても、平織やトリコット、ラッセル等、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0034】
また、上記織布又は不織布の目付は、中間基材としての所定の物性を得ることができる目付であれば特に限定されないが、例えば、10~40g/m2であることが好ましく、10~28g/m2であることがより好ましい。上記織布又は不織布の目付が小さ過ぎると、ゲルシートの補強等を図ることができなかったり、目付ムラが大きくなることでゲルシート製造時における液の浸透性が場所によって変わり、それによって中間基材の位置が変動する可能性がある。また、目付が大き過ぎると、中間基材20が硬くなり、ゲルシート1の皮膚への追従性等が損なわれるおそれや導通性に悪影響を与える可能性があるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。
【0035】
中間基材20の厚みは、厚過ぎると液の浸透性が悪くなり、導通性に悪影響を及ぼす場合があり、逆に薄過ぎると、目付が小さ過ぎる場合と同様にゲルシートの補強等を図ることができなくなったり、中間基材の位置が変動する可能性があるため、これらを考慮して適宜設定される。好ましくは0.05mm~2.0mmの範囲内である。また、0.05mm~0.5mmであることがより好ましく、0.08mm~0.3mmであることが特に好ましい。
【0036】
ゲルシート1の厚みは、厚過ぎるとずり応力が低下して不適であり、薄過ぎると凝集力が低下し、ゲル面が破壊される可能性があるため、これらを考慮して適切な厚みが選択される。好ましくは0.2mm~2.0mmの範囲内である。特に、0.3mm~1.2mmであることが好ましく、0.3mm~1.0mmであることがより好ましい。
【0037】
ゲルシート1の製造方法としては、ゲル材の組成、中間基材の材質、厚み等によって細かい条件が異なり、特に限定されるものではない。例えば、中間基材の振幅が最小限になるように一定以上のテンションをかけた状態で中間基材を空中で保持し、その中間基材の上側及び下側に、モノマー配合液を流し込み、光照射等により重合してシート状とする方法、表面が平滑なシート状のゲル材を2つ作製した後、一定以上のテンションをかけた状態で保持している中間基材をこれらのゲル材で挟持し、複合化する方法、あるいは、表面が平滑なシート状のゲル材を作製し、このゲル材の上に、一定以上のテンションをかけた状態で中間基材を載置し、その中間基材の上にモノマー配合液を流し込み、光照射等によりさらに重合させる方法等を適宜採用することができる。また、前述の製造プロセスが連続して重合される場合、ロール化してからシートを取り出しても良い。
【0038】
必要に応じて、ゲルシート1の片面にはベースフィルムを設け、また、ベースフィルムが設けられた面の裏面にはトップフィルムを設けることができる。
【0039】
上記ベースフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂からなる樹脂フィルム、紙、前記樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。
【0040】
これらベースフィルムのゲルシート1と接する面は、離型処理がなされていることが好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティング等が挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。離型処理が施されるフィルムとしては、二軸延伸したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム等が特に好ましい。
【0041】
上記トップフィルムとしては、基本的にベースフィルムと同じ材質のものを使用することも可能であるが、トップフィルムを設けた状態で、その上から紫外線照射等を行って重合させる場合には、光重合を妨げないために、光を遮断しない材質のフィルムを選択することが好ましい。
【0042】
以上のようなゲルシートは、振幅が制御された中間基材を含むことにより、粘着力にばらつきがなく、そのため、均一な粘着性を有することが求められる用途に好適に用いられる。例えば、創傷被覆材、生体用粘着材又は生体電極等の皮膚に貼着されるハイドロゲルシートとして用いることができる。その他、薬剤を含浸することにより経皮吸収剤の基材として、また、工業用途としては工業計測用の電極材や工業用粘着材、建材用途、例えば、地盤あるいは岩盤の表面に設置して電気的に地質調査を行うための無分極電極、廃棄物処理場に用いられる遮水シートの破損検出用等の導電材、コンクリート構造物の電気防食方法において、コンクリート構造物と陽極としての金属との間に設置される導電粘着材料等として好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
アクリルアミド20重量部、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.04重量部、塩化ナトリウム2重量部、グリセリン60重量部を計量し、イオン交換水を加えて100重量部とした。この混合液100重量部に対して、光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1―フェニル-プロパン-1-オン(商品名:イルガキュアIR1173)0.13重量部を加え、混合溶解してモノマー配合液を得た。続いて、厚み0.1mmのシリコーンフィルムを10枚重ね、中央部を切り抜いて120mm×120mm×1.0mmの空間を設け、その空間内において、中間基材として厚み0.15mm、目付18g/m2のポリエステル系不織布を、一端はシリコーンフィルム5層目の上に、他端もシリコーンフィルム5層目の上に載せて挟み込み、接着材で固定して型枠を作製した。次に、150mm角のガラス基板上に少量のイオン交換水を滴下し、150mm角にカットした厚み100μmのシリコーンコーティングされたPETフィルムを貼付して密着させた。そして、PETフィルムの上面に、先に作製した型枠を置き、この枠内にモノマー配合液を滴下した。さらにその上面を150mm角にカットした厚み40μmのシリコーンコーティングされたPETフィルムで覆い、その上面にガラス基板を載せてクリップで固定した。これを、紫外線照射装置(JATEC社製、JU-C1500、メタルハライドランプ、コンベアスピード0.4m/分、総照射エネルギー量3000mJ/cm2)にて重合させ、ゲルシートを得た。
【0045】
(実施例2)
中間基材の一端をシリコーンフィルム6層目の上に、他端をシリコーンフィルム4層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0046】
(実施例3)
中間基材の一端をシリコーンフィルム6層目の上に、他端をシリコーンフィルム3層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0047】
(実施例4)
中間基材の一端をシリコーンフィルム7層目の上に、他端をシリコーンフィルム3層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0048】
(実施例5)
型枠作製時に用いるシリコーンフィルムを6枚とし、中間基材として厚み0.1mm、目付14g/m2のポリエステル系不織布を用い、中間基材の一端をシリコーンフィルム4層目の上に、他端をシリコーンフィルム3層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0049】
(比較例1)
中間基材の一端をシリコーンフィルム8層目の上に、他端をシリコーンフィルム3層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0050】
(比較例2)
型枠作製時に用いるシリコーンフィルムを6枚とし、中間基材の一端をシリコーンフィルム5層目の上に、他端をシリコーンフィルム2層目の上に載せて挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてゲルシートを得た。
【0051】
(ゲルシートの粘着力評価)
ゲルシートを120mm×20mmに切り出し、厚み100μmのPETフィルムを剥がして現れたゲル面にベークライト板を貼り付けて、2kgの圧着ローラーを1往復して圧着させ、試験片とした。測定にはレオメーター(サン科学社製、CR-500DX)を用い、測定条件は、角度90度、速度300mm/分で行った。測定開始点から所定の引き剥がし時点(30、40、50、60、70mm)における応力値(N/20mm)を測定値とし、3試験(計15点)の値から下記式により変動係数CV値を算出し、この値をゲルシートの粘着力のばらつきの指標とした。
CV値(%)=(標準偏差×100)/平均値
測定環境としては、温度23±5℃、湿度55%±10%の環境下で実施した。
【0052】
(中間基材の振幅測定)
ゲルシートを剃刀で裁断して50mm×20mmのサイズとし、その断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、VH-Z100R)で50mm幅における中央、両端の3か所を倍率100倍にて観察した。それぞれの観察画面(幅3mm分に相当)における100μmPETフィルム側の端面から中間基材までの最大及び最小距離を計測し、その差を算出し、算出した差の3か所についての平均値を中間基材の振幅とした。
【0053】
(ゲルシート厚みの測定)
ゲルシート両面に貼着しているPETフィルムを剥がし、マイクロメーターで測定を行った。
【0054】
測定結果を表1にまとめて示す。表1の結果から明らかなように、ゲルシートの厚みAに対する中間基材の振幅Bの割合(B/A)を0.4以内に制御することで、粘着性のばらつき(CV値)が小さくなった。
【0055】
【符号の説明】
【0056】
1 ゲルシート
10 ゲル材
20 中間基材
A ゲルシートの厚み
B 中間基材の振幅