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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】自己中央化ガイドカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019202275
(22)【出願日】2019-11-07
(62)【分割の表示】P 2018533741の分割
【原出願日】2017-03-02
(65)【公開番号】P2020018926
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/303,858
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/438,263
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サンデュ、グルプリート エス.
(72)【発明者】
【氏名】スプーン、ダニエル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】テフト、ブランドン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクゴーワン、ロジャー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイバーコスト、パトリック エイ.
(72)【発明者】
【氏名】グルフ、ジョエル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ラッドマン、ロイド
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ダニエル
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/013238(WO,A2)
【文献】特開2013-226245(JP,A)
【文献】特表2016-530916(JP,A)
【文献】特開昭62-197072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0058540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置において、
遠位端を有する管状部材と、
前記管状部材の前記遠位端に沿って配置される拡張可能なフレームであって、前記フレームは第一態様と拡張態様との間に切り換えられるよう設計されていて、近位部、遠位部及び前記近位部と前記遠位部との間に延びる複数のストラットを備え、前記ストラットは前記フレームに沿った複数の開口部を規定するフレームとを備え、
前記開口部の一部と前記フレームの一部とを露出させるため、前記フレームの前記近位部にはカバーがなく、前記フレームの前記遠位部にカバーが配置されている、医療装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記拡張態様における前記フレームのまわりで円錐台形状を有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記カバーがない前記フレームの前記近位部は、円錐形状を有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記フレームの外面、前記フレームの内面、又はその両方に沿って配置されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記複数の開口部の少なくとも一つの前記開口部は、四辺形である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記カバーは、前記カバーを貫く少なくとも一つのカバー開口部をさらに有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記カバーはシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリウレタンを有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
医療装置において、
遠位端を有する管状部材と、
前記管状部材の前記遠位端に沿って配置される拡張可能なフレームであって、前記フレームは第一態様と拡張態様との間に切り換えられるよう設計されている前記フレームの拡張可能部を有し、前記フレームに沿った複数の開口部を規定している複数のストラットを含むフレームと
前記フレームの前記拡張可能部に沿って配置され、前記フレームの表面領域全体より小さいサイズを有するカバーと、を備え、
前記開口部の一部と前記フレームの一部とを露出させるため、前記フレームの前記近位部には前記カバーがなく、前記フレームの前記遠位部に前記カバーが配置されている、医療装置。
【請求項9】
前記カバーは、前記拡張態様における前記フレームのまわりで円錐台形状を有する、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記カバーがない前記拡張可能部の残りの長さは、円錐形状を有する、請求項8に記載の医療装置。
【請求項11】
前記カバーは、前記フレームの外面、前記フレームの内面、又はその両方に沿って配置されている、請求項8に記載の医療装置。
【請求項12】
前記複数の開口部の少なくとも一つの前記開口部は、四辺形である、請求項8に記載の医療装置。
【請求項13】
前記カバーは、前記カバーを貫く少なくとも一つのカバー開口部をさらに有する、請求項8に記載の医療装置。
【請求項14】
医療装置において、
管状部材であって、その中に形成される内腔及びガイドワイヤポートを形成する遠位端部を有する管状部材と、
前記管状部材の前記遠位端部に沿って配置される拡張可能なフレームであって、前記フレームは第一態様と拡張態様との間に切り換えられるよう設計されていて、基部、端部領域及び前記基部と前記端部領域との間に延びる複数のストラットを備え、前記ストラットは前記フレームに沿った複数の開口部を規定する前記フレームと、
前記フレームの一部に取り付けられたカバーと、を備え、
前記管状部材の前記遠位端部は前記フレームの前記端部領域の中を延びる、医療装置。
【請求項15】
前記カバーは、前記拡張態様における前記フレームのまわりで円錐台の形状を有する、請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
前記フレームの前記基部と前記端部領域の間の前記フレームの一部は、前記カバーがない、請求項14に記載の医療装置。
【請求項17】
前記カバーは、前記フレームの外面、前記フレームの内面、又はその両方に沿って配置されている、請求項14に記載の医療装置。
【請求項18】
前記複数の開口部の少なくとも一つの前記開口部は、四辺形である、請求項14に記載の医療装置。
【請求項19】
前記カバーは、前記カバーを貫く少なくとも一つのカバー開口部をさらに有する、請求項14に記載の医療装置。
【請求項20】
前記カバーはシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリウレタンを有する、請求項14に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療用装置、及び医療用装置の製造方法に関する。特に、本開示は自己中央化カテーテルを伴う細長い医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁狭窄は心臓弁が狭められた(狭窄)状態である。例えば、僧帽弁狭窄症は僧帽弁の病的な狭窄であり、左心房から左心室への血流の制限につながる。大動脈弁狭窄症は心臓の大動脈弁が狭い時に引き起こされ、心臓が体へ血液を送り出すための仕事を難しくする。軽度から中程度の大動脈弁狭窄症の症状を和らげる薬物療法はあるが、重度の大動脈弁狭窄を治療する唯一の方法は弁を交換するという手順を経ることである。大動脈弁の修復や交換の治療には、数ある治療法のうち、トランスカテーテル大動脈弁交換(TAVR)がある。TAVRは、例えば大腿動脈、腋窩又は鎖骨下動脈を通って届けられる人工弁で大動脈弁を交換することを含む。
【0003】
しばしば、疾患がある心臓弁は弁膜周囲に深刻な石灰化が見られる。石灰化は本来の心臓の態様を大きく変える。例えば、健康な心臓では、弁口は一般的に心臓の弁膜の中央に配向している。しかし、石灰化は実際上、弁口の位置を「変えること」又は弁口を狭めることの少なくともいずれか一方をもたらす。TAVRを行う際に最も困難な過程の一つは、例えば、弁口の位置を特定し、かなり狭い弁を通ってガイドワイヤを通すことである。
【0004】
現在の技術ではしばしば、弁口の位置を特定しようと医師が弁の表面を横切ってガイドワイヤで探ることを伴う。弁の表面を探ることで、臨床医は狭窄した弁口を特定してそこを突き通すことを期待する。しかし、弁を通って高圧噴射される血液と心臓の鼓動が、探るという手法をより難しくしている。さらに、探るという手法は全体の手術時間を延ばし、それによって患者が放射線、造影剤及び麻酔にさらされる時間を長くする。それに加えて、探るという手法は弁の表面から石灰化した組織破片がはがれる危険性を増大させる。それ故に、ガイドワイヤを前進させることに先立って、効果的にガイドワイヤを弁口を越えて中央に寄せるガイドワイヤ中央化装置を利用することを、臨床医は望むだろう。
【0005】
本開示は血管内治療で心臓弁交換するための方法及び装置に関する。特に、本開示は疾患がある心臓弁の弁口を越えてガイドワイヤを中央化する方法や装置に関する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、医療装置のためのデザイン、材料、製造方法及び代替的使用を提供する。一例では、医療装置は、管状部材であって、その中に形成される内腔及びガイドワイヤポートを形成する遠位端部を有する管状部材を有する。本医療装置は又、管状部材の遠位端部に沿って配置される拡張可能なフレームを備え、拡張可能なフレームは第一態様と拡張態様との間に切り換えられるよう設計されている。フレームは基部、端部領域及び基部と端部領域との間に延びる複数のストラットを備え、ストラットはフレームに沿った複数の開口部を規定する。本医療装置は又、フレームの一部に取り付けられたカバーを有し、フレームが体管腔内に配置されている時、フレームがガイドワイヤポートを心臓弁の開口と整合させるように、カバーは一つ又はそれ以上の複数の開口部を覆うように構成されている。
【0007】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、フレームが拡張態様にある時に端部領域は放線状に拡張している。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、フレームが拡張態様にある時にフレームは円錐形状を有する。
【0008】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、フレームはニッケルチタン合金を含む。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーは血流を複数の開口部へ送り込むよう設計されている。
【0009】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーはフレームまわりに延びている。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーはフレームの端部領域に隣接して位置決めされている。
【0010】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、フレームの基部に隣接するフレームの一部には前述のカバーがない。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーは布を有する。
【0011】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーはフレームの外面、又はフレームの内面、又はその両方に沿って配置されている。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーは膨張したポリテトラフルオロエチレンを有する。
【0012】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、管状部材のまわりに配置された挿入スリーブを更に有する。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、挿入スリーブは管状部材に関してスライド可能であり、挿入スリーブはフレームを第一態様にシフトするためにフレーム上をスライド可能である。
【0013】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、管状部材の近位領域に沿って配置されたマーカを更に有する。
医療装置の製造方法の一例に、その方法は、管状部材に拡張可能なフレームを取り付けることを含み、管状部材は、内腔を形成する管状部材及びガイドワイヤポートを形成する遠位端部を有し、拡張可能なフレームは、第一態様と拡張態様との間に切り換えられるよう設計されており、フレームは、基部、端部領域及び基部と端部領域との間に延びる複数のストラットを備え、ストラットはフレームに沿った複数の開口部を規定しており、前記方法は、フレームの一部にカバーを取り付けることを含み、カバーは、フレームが体管腔内に配置されている時、フレームがガイドワイヤポートを心臓弁の開口と整合させるように、一つ又はそれ以上の複数の開口部を覆うように構成されていることと、を含む。
【0014】
自己中央化医療装置の他の一例に、
ガイドワイヤ内腔がその中に形成された細長いシャフトであって、遠位ガイドワイヤポートを備えるシャフトと、
シャフトまわりにスライド可能に配置されたスリーブと、
シャフトに連結された自己拡張性のバスケットであって、第一態様と拡張態様との間に切り換えられよう設計されたバスケットと、
バスケットが第一態様にある時に、スリーブがバスケットまわりに配置され、
バスケットは、遠位ガイドワイヤポートに近接して配置される基部と、遠位ガイドワイヤポートに隣接して配置される端部領域と、フレームに沿って複数の開口部を規定する、基部と端部領域との間に延びる複数のストラットとを有し、
フレームに取り付けられたカバーであって、フレームが心臓弁に隣接した血管内に位置決めされる時に、遠位ガイドワイヤポートを心臓弁の開口と整合させるように、複数の開口部のうちいくつかを覆い、血流が複数の開口部へ向かうように構成されたカバーとを有する。
【0015】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、バスケットが拡張態様にある時にバスケットは円錐形状を有する。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーはバスケットの遠位部のまわりにおいて周方向に延び、バスケットの近位部にはカバーがない。
【0016】
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーはバスケットの外面、又はバスケットの内面、又はその両方に沿って配置されている。
上記例のいずれか一つに代替的にまたは追加的に、別例では、カバーは膨張したポリテトラフルオロエチレンを有する。
【0017】
いくつかの実施形態にかかる上記概要は、本開示に関する開示された実施形態またはすべての実施態様を説明することを意図したものではない。以下の図面及び詳細な説明は、本開示の実施形態をより具体的に例示するものである。
【0018】
本開示は、以下の添付の図面と合わせて以下の詳細な説明を考慮することにより深く理解することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】拡張態様にある血管内医療装置の一例の側面図である。
図2】折り畳み態様にある血管内医療装置の一例の側面図である。
図3】患者内に血管内医療装置を配置する一例を示す。
図4】心臓に配置された血管内医療装置の一例を示す。
図5】拡張態様にある血管内医療装置の他の一例を示す斜視図である。
図6】拡張態様にある血管内医療装置の他の一例を示す端面図である。
図7】体管腔に位置する血管内医療装置の一例を示す。
図8】体管腔に位置する血管内医療装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、様々な変更形態と代替形態とが可能であるが、それらのうちの特別なものが、図面に例示することを目的として図示され、かつ、詳細に説明されている。しかしながら、これは、本開示を説明した特定の実施形態に限定することを意図していると理解してはならない。逆に、本開示の主旨および範囲内に入るすべての変更形態と均等形態と代替形態とを包含させることを意図している。
【0021】
以下の用語については、請求項または本明細書において異なる定義が与えられない限り以下の定義が適用されるものとする。
すべての数値は、明示の記載の有無にかかわらず、「約」という用語で修飾されると想定されている。「約」という用語は、一般的に当業者が、記載された数値に等しい、つまり、同じ機能または結果を奏する、と考える数値範囲を示す。多くの場合、「約」には、最も近い有効数字に四捨五入される複数の数値が含まれる。
【0022】
数値範囲を終点で記載されている場合には、その範囲に入る全ての数値が含まれる。例えば、1から5には、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,5が含まれる。
本明細書および添付の請求の範囲で使用する単数形の「a」、「an」、「the」には、反対のことが明記されていない限り複数の指示対象が含まれる。本明細書および添付の請求の範囲で使用する「or(又は)」は、反対のことが明記されていない限り「and/or(及び/又は)」を含む意味で使用する。
【0023】
本明細書において、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「その他の実施形態」にかかる記載は、記載されている実施形態が、一つ以上の特定の要素、構造、および特性のうちの少なくともいずれか一つを備えることを意味する。しかしながら、このような記載は、すべての実施形態が、特定の要素、構造、および特性のうちの少なくともいずれか一つを備えることを必ずしも意味しない。加えて、特定の要素、構造、および特性のうちの少なくともいずれか一つがある実施形態と関連付けて記載されている場合でも、それらの要素、構造、および特性のうちの少なくともいずれか一つは、明記されているか否かにかかわらず、反対のことが明示されていない場合には、他の実施形態と組み合わせて使用することが可能である。
【0024】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。異なる図面の類似する構造には同一の番号が付されている。図面は、必ずしも縮尺通りではないが、例示的実施形態を示すものであり、本願発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0025】
前述のように、疾患がある心臓弁は弁膜周囲に深刻な石灰化が見られる。石灰化は本来の心臓の態様を大きく変える。例えば、健康な心臓では、弁口は一般的に心臓の弁膜の中央に配向されている。しかし、石灰化は実際上、弁口の位置を「変えること」又は弁口を狭めることの少なくともいずれか一方をもたらす。TAVRを行う際に最も困難な過程の一つに、例えば、弁口の位置を特定し、かなり狭い弁を通ってガイドワイヤを通すことである。
【0026】
現在の技術ではしばしば、弁口の位置を特定しようと医師が弁の表面を横切ってガイドワイヤで探ることを伴う。弁の表面を探ることで、臨床医は狭窄した弁口を特定してそれを突き通すことを期待する。しかし、弁を通って高圧噴射される血液と心臓の鼓動が、探るという手法をより難しくしている。さらに、探るという手法は全体の手術時間を延ばし、それによって患者が放射線、造影剤及び麻酔にさらされる時間を長くする。それに加えて、探るという手法は弁の表面から石灰化した組織破片がはがれる危険性を増大させる。それ故に、ガイドワイヤを前進させることに先立って、効果的にガイドワイヤを弁口を越えて中央に寄せるガイドワイヤ中央化装置を利用することを、臨床医は望むだろう。以下の開示は疾患がある心臓弁の弁口を越えてガイドワイヤを中央化する方法や装置に関する。特に、以下の例示はしなやかなシャフトに取り付けられた、カバーを有するバスケットであって、疾患がある心臓弁を通る血流で自己中央化をするよう設計されたバスケット、を有する血管内医療装置を開示する。
【0027】
図1は血管内医療装置10の一例を示す。血管内医療装置10は様々の医療用目的で体管腔に配置されるよう設計される。例えば、血管内医療装置10は時に体管腔に人工弁又はフィルタを配置するために使用される。
【0028】
心臓弁を交換するために血管内医療装置10を使用する一例の第一ステップでは、血管系経由で体に入ることが含まれる。例えば、臨床医は初めに大腿動脈、腋窩又は鎖骨下動脈などから大動脈弓にガイドワイヤを配置する。次に、臨床医は、ガイドワイヤを使用してガイドカテーテルを押し上げ大動脈弓を越えさせる。臨床医は例えば、大動脈弁の流出路部分に実質的に隣接させてガイドカテーテルを配置することができる。臨床医は次に、内腔を通して、血管内医療装置10を前進させ、ガイドカテーテルの遠位端を出すことができる。臨床医は次に、血管内医療装置10を使用して弁口を越えてガイドワイヤを中央に位置させるために、ガイドワイヤを弁口を介して、左心室に進める。ガイドワイヤの位置を左心室に保つ間、臨床医はガイドカテーテル内で医療装置10を再び捉える。時には、臨床医はガイドカテーテル(再び捉えられた医療装置10を含む)を左心室まで前進させる。一旦、左心室内に配置(例えば脱出)されると、臨床医は元のガイドワイヤを第二ガイドワイヤと交換することができる。臨床医は医療装置10とガイドカテーテルを(第二ガイドワイヤの位置を保ちながら)、患者内から回収し、第二ガイドワイヤを使用して追加の医療装置を心臓に到達させることができる。
【0029】
図1の医療装置10は、近位端部14と遠位端部12を有するシャフト18を備える。シャフト18は、管状部材であって、その中に延在する内腔を有する管状部材と定義される。言い換えると、シャフト18はシャフト18の全長に沿って延びる内腔、又はシャフト18の一部分のみに沿って延びる内腔を含んでもよい。シャフト18の内腔は、その中に延在するガイドワイヤを収容するように、大きさ及び形状の少なくとも一方を決めることができる。
【0030】
シャフト18の近位部14はそれに取り付けられるハブ部材20を含む。ハブ部材20はそこを通って延びる内腔及び通路の少なくとも一方であって、シャフト18の内腔と実質的に整合する内腔又は通路を備える。シャフト18に関する説明と同様に、ハブ20の内腔は、それを通って延びるガイドワイヤの収容に適するように、大きさ及び形状の少なくとも一方を決めることができると考えられる。図1に示すハブ20の形状は、ここに開示された機能を発揮できる数ある形状及び態様の少なくとも一方のうちの、ほんの一つである。
【0031】
シャフト18は遠位端領域12を含む。バスケット部材50はシャフト18の遠位端領域12に沿って配置されている。バスケット部材50は一般的にフレーム22を含む。時には、フレーム22は金属(例えばニチノール)チューブから形成される(例えばレーザーカット)。例えば、時にはバスケット50は自己拡張性の形状記憶バスケットと定義される。しかし、フレーム22はニチロール以外の材料から構成されることが期待される。例えば、フレーム22は代替可能な金属、高分子及びセラミック材料の少なくとも一つ、及び、それらの組み合わせで構成されることができる。
【0032】
いくつかの例として、フレーム22は骨格を形成するために配置された一つ又はそれ以上のストラット部材26を含む。以下でより詳細に説明するが、ストラット部材26は様々な様式、形状、幾何学模様などを有する骨格を形成するために配置される。加えて、フレーム22がシャフト18の外面の全周に延びる(例えば、360度)ことを明確にするように、一般的にストラット部材26を配置させることが考えられる。
【0033】
バスケット部材50(フレーム部材22を含む)は、さらに基部部材24を形成する。基部部材24は前述のフレーム22を形成するために使用されるチューブ(例えばニチノールチューブ)の一部(例えば単一の部材)となることができる。代替的に、基部部材24はフレーム22から分離して取り付けられている別個の構成要素であることも考えられる。例えば、基部部材24はフレーム22を形成している一つ又はそれ以上のストラット部材26に対して溶接、接合などを行える。加えて、基部部材24はシャフト18に取り付けられてもよい。いくつかの例として、ストラット部材26は基部部材24と単一の構造を構成することができる。さらに、ストラット部材26は基部部材24とフレーム22の間に配置できる。
【0034】
例として、バスケット部材50はさらにフレーム22の全体又はフレーム22の一部のみに沿って配置されたカバー28(図1中にドットパターンで示している)を含む。言い換えれば、カバー28はフレームの表面領域全体を覆うことも、又はフレーム22の一部のみを覆うこともできる。以下に、より詳細に説明するが、カバー28がフレーム22の選択された部分のみを覆うことにより、フレーム22の一部がカバー28に覆われないようにすることができる。カバー28がないフレーム22の一部は、バスケット部材50の開口部、開口、穴など44と特徴付けられることができる。しかし、バスケット部材50の開口部、開口、穴など44を形成するために取り除かれたカバー28の選択された部分と共に、フレーム22の表面全体はカバー28を含むことが可能であると考えられる。例えば、ストラット部材26の間に形成された開口部44にはカバー28がない一方で、ストラット部材26のある部分のある表面はカバー28を含んでもよい。
【0035】
カバー28は適切な材料から形成されることができる。例えば、カバー28はシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、又は同等の材料、又は本開示中の材料を含む他の材料を含むことができる。時には、カバー部材28はフレーム22の外面に沿って配置されることができる。他の例では、カバー部材28はフレームの内面及び外面の両方に沿って配置されることができる。これらの例又は他の例では、カバー部材28はフレーム22を封入すること(例えばラミネート)又はそうでなければカバー部材にフレーム22を埋め込むことができる。フレーム22にカバー28を結合させることは、積層、熱連結、成形、塗装、浸漬塗装、押し出し成形、又は同等の方法を含む。加えて、図1に示していないが、カバー28のあらゆる部分は流体がそこを通って流れることを可能にするために、スリット、カット、穴、開口部などを含んでもよい。例えば、カバー28の一部分は、血液がそこを通って流れることを可能にするために「T型」に開いたスリットを備えることが可能である。これは一例にすぎず、他の開口部の形状を制限する意図ではないことは理解されよう。
【0036】
図1はさらに、医療装置10が一つ又はそれ以上のマーカ56を含んでもよいことを示している。マーカ56はX線不透過性の物質を含んでいても、そうでなくてもよい。例えば、図1はシャフト部材18に沿って配置される(取り付けられる、固定される、位置を決められる)マーカ56を示している。図1はシャフト18に沿って配置されるマーカ56を示しているが、マーカ56は医療装置10の他の部分に配置されていてもよい。例えば、マーカはバスケット部材50及びハブ20の少なくともいずれか一方に配置されていてもよい。マーカ56は、患者の心臓及び/又は医療行為で用いられる追加の医療装置に関しての医療装置10の相対的な位置を、視覚化するために用いられることができる。例えば、バスケット50がガイドカテーテルの遠位端にある時、及びそこから配備されようとしている時を、特定するためにマーカ56を使用することができる。
【0037】
追加的に、図1はシャフト18に沿って配置される挿入スリーブ30を示す。挿入スリーブ30は一般的に長さと、そこを通って延びる内腔とを有する管状部材として定義される。例として、挿入スリーブの寸法(内腔の直径)はシャフト18が挿入スリーブ30の内腔を通るように設計されている。さらに、挿入スリーブ30はシャフト18に沿ってスライド又は移動の少なくとも一方ができるように設計されていることが考えられる。
【0038】
スリーブ30はシャフト18の遠位端12に向かってスライドするよう設計される。加えて、いくつかの例として挿入スリーブはバスケット部材50を越えてスライドできるよう設計されてもよい。例えば、バスケット50は図1に示すような拡張態様から折り畳み態様に放射状に折り畳まれるよう設計されてもよい。言い換えると、フレーム22のストラット部材26はシャフト18の長手方向軸に向かって放射方向内側に畳まれてもよい。フレーム22の拡張態様は、基部部材24の外径と実質的に均等(例えば面一な)外径になるように折り畳まれることが考えられる。
【0039】
上述のように、時にはバスケット部材50を拡張態様から折り畳み態様にシフトすることが望ましい。例えば、臨床医が患者内で医療装置10を前進させること、及び、位置決めすることの少なくとも一方を補助するために、バスケット部材50を折り畳み態様に位置決めすることが望ましい。図2は折り畳み態様の医療装置10を示す。図2に示すように、挿入スリーブ30はシャフト18の遠位部に向かって前進されている(例えば、スライドしている、移されている)。更に、挿入スリーブ30はバスケット部材50を越えて位置決めされている(例えば、スライドしている)。図2に示していないが、バスケット部材50は挿入スリーブ30の下方に折り畳まれ、収められていることが考えられる。それに応じて、バスケット部材50を放射状に拡張させるために、挿入スリーブをシャフト18の近位領域にスライドさせることが更に考えられる。言い換えると、シャフト18に沿ってシャフト18の近位端に向かって挿入スリーブを移動させることで、バスケット部材50の覆いを取ることができる。
【0040】
図3は医療装置10の送達システム及び方法論の例を示している。図3は患者40の外側の位置から患者40の内側の位置へと延びる、ガイドカテーテル36の一例を示している。ガイドカテーテル36は遠位端(患者の内側に位置決めされる)と、近位端(臨床医に最も近い)と、近位端から遠位端へと、ガイドカテーテルの内部を延びる内腔とを有することが考えられる。更に、ガイドカテーテル36は、ガイドカテーテル36の近位端に沿って配置されるハブ部材52を有する。ハブ52はルア又は他のタイプのコネクタを有する。ハブ52はまた、止血弁を有してよい(示していない)。図3は更に、医療装置10はガイドカテーテル36の内腔に挿入され、そこを通って延びることを示している。図3に示すように、医療装置10は患者内に配置されている間、ガイドカテーテル36の遠位端の外に前進させられてもよい。
【0041】
バスケット50が拡張態様にある間、バスケット部材50をガイドカテーテル36のハブ52に挿入することは難しいことが考えられる。それ故に、臨床医が簡単に医療装置10をガイドカテーテル36に挿入することを可能にするために、バスケット部材50が折り畳み態様にある間、バスケット部材50をガイドカテーテル36のハブ52に挿入することが望ましい。
【0042】
医療装置10をガイドカテーテル36に挿入する方法論の一例は、挿入スリーブ30を使用しガイドカテーテル36のハブ52と効果的に「架橋する」ことを含んでもよい。言い換えると、バスケット部材50が挿入スリーブ30を経由して折り畳み態様に保たれている間に、挿入スリーブ30はガイドカテーテル36のハブ52に部分的に挿入されていてもよい。挿入部材30をガイドカテーテル36に「部分的に挿入」することは、挿入部材30にハブ52を隣接させることと、挿入部材30をハブ52に部分的に挿入することと、又は、挿入部材30の一部がガイドカテーテル36の内腔に位置決めされるよう、挿入部材30をハブ52に部分的に挿入することと、を含むことが考えられる。しかし、挿入部材30がハブ52に進入及び/又は通過する度合いにかかわらず、挿入スリーブ30の一部は近位の(例えば、外側の)ハブ52に残っている。
【0043】
一旦、挿入スリーブ30が十分にガイドカテーテル36内に配置された時、臨床医はハブ52の外側に延びている挿入スリーブ30の部分をつかむことができる。ガイドカテーテル36に対し静止している挿入スリーブ30を保持している間に、臨床医は医療装置10を遠位に前進させることができる。遠位に前進させることは、医療装置10を挿入スリーブ30の遠位端から効果的に押し出すことであると理解される。しかし、挿入スリーブ30の遠位端は、ハブ52内及びガイドカテーテル36の内腔の少なくとも一方に位置決めされるので、医療装置10もまた、ハブ52内及びガイドカテーテル36の内腔の少なくとも一方に位置決めされる。臨床医は次に、バスケット部材50が標的部位に隣接するガイドカテーテル36の遠位端から出るまで、医療装置10を遠位方向に前進させ続ける。
【0044】
図4は、患者の大動脈60に配置されているガイドカテーテルの一例を示す。加えて、図4はガイドカテーテル36を通って、ガイドカテーテル36の遠位端から出た(例えば前進して、配備してなど)後に、心臓弁46に隣接している医療装置10を示す。示すように、心臓34は弁膜62を有する心臓弁46を含む。心弁膜62は弁口48を規定する(例えば、弁膜62によって規定される開口)。心弁膜はバスケット部材50に向かって開口していることが、図4から分かる。言い換えると、左心室58から大動脈60へ血液が送り出される時、血液は左心室58から流れて、弁膜62を通って医療装置10のバスケット部材50へ向かう。図4は更に医療装置10のシャフト18の内腔から延びるガイドワイヤ38を示している。ガイドワイヤ38は医療装置10から離れて前進し、心臓弁46を通って(例えば、弁口48を通って左心室58に入る)、左心室58に入る。
【0045】
上述したように、医療装置10のバスケット部材50は、疾患がある心臓弁の開口を越えて自己配置されるように、設計されている。特に、医療装置10はバスケット50の形状が、カバー28及び開口部44と組み合わせて、弁口を通る血流に引っ張られるように設計されている。特に、バスケット50は血流の最速部分で自己中央化するよう設計されている。後に図7-8に関して説明されるように、もし血流がその速度を表す一連のベクトルで表される場合、バスケット部材50は最も大きいベクトルに沿って自己配置するであろう。
【0046】
先に示唆したように、血流内で自己中央化するバスケット50の能力は、カバー28及び開口部44と組み合わされるストラット部材26の幾何学的な分布によるだろう。図5は、ストラット26、開口部44、及びカバー28を含むバスケット部材50の一例の斜視図である。図5に示すバスケット部材50は、実質的に円錐状の形状であることがわかる。更に一般的なバスケット50の円錐状の形状は、バスケット50が血液の流れの中に「引き込まれる」能力を補助すると考えられる。言い換えれば、バスケット50の円錐状の形状は、速く移動する血流をその縁で「捉える」能力、及び、縁から開口部44内へ放射状に血流の全部又は一部を「漏斗を通じて入れる」という能力を増大させる。更に、血流はバスケット50内に続けて入り、開口部44へ集められ、開口部44を通って出ていくことが考えられる。本質として、血流が弁を通って流れ続ける時、血流の最も早い部分がバスケット50を定位置につかせ、ゆえに、医療装置10を弁口の中央に維持させる。
【0047】
図5は、一般的にダイヤモンドのような形状の開口部を有するフレーム22を示しているが、フレーム22は種々の形状、大きさ、模様、配置、幾何学模様などを含むことを理解されるだろう。更に、いくつかの例として、フレーム22は種々の形状及び幾何学的配置の少なくとも一方を含む。例えば、上述の説明は図5に示すフレーム22の形状に焦点を置いているが、これに限定されない。例えば、ストラット部材26は、一つ又はそれ以上の開口部44を形成するようにフレーム22内に配置される(例えば、バスケット50内に)。ストラット部材26及び開口部44の少なくとも一方の、数、形、態様、及び配置の少なくとも一つは、バスケット50内でバランスを取ることが望まれるような特別な効能上の特性によって決められる。例えば、バスケット50の頑丈さを増強するために、追加のストラット部材26はフレーム22に追加されてもよい。他の例として、ストラット部材26は、バスケット50内の血液の流れ方を増やしたり又は減らしたり(例えば、調節)するために、特別な幾何学模様を有してよい。
【0048】
同様に、カバー28はフレーム22の全体にわたって様々な形態で設置する(例えば、配置する)ことが可能であり、血流及び血管の少なくとも一方に適合した応答を示す。言い換えると、特別に設計された効能上の特性を医療装置10に与えるために、ストラット22及びカバー28の異なる形状及び配置の少なくとも一方における広範囲にわたる多様性が、バスケット50には含まれる。例えば、時には、開口部44の大部分を覆うようにカバー28を含むことが望ましい。しかし、時には、開口部44の小部分を覆うようにカバー28を含むことが望ましい。前述のように、医療装置10に特別な効能を与えるために、多くの異なるフレーム22、開口部44及びカバーの組み合わせが考えられる。例えば、時にカバー28は実質的にフレーム22の遠位部12に沿って(例えば、遠位端領域に沿って)配置される(例えば、図1に示すように)。
【0049】
図5は更に、実質的にバスケット50の中央に配置されるガイドワイヤポート42を示す。ガイドワイヤポート42はシャフト18の遠位端に形成される。更に、図5はシャフト18の内腔54を示す。内腔54はガイドワイヤがそこに延在するよう設計されている。例えば、ガイドワイヤポート42の遠位端は、バスケット50の遠位端を越えて延びなくてよい。他の例として、ガイドワイヤポート42の遠位端はバスケット50の遠位端と実質的に面一でもよい。更に別の例として、ガイドワイヤポート42の遠位端はバスケット50の端部を越えて遠位方向に延びてもよい。
【0050】
図6はフレーム幾何学模様22とカバー28の一例を有するバスケット50の一例の端面図である。図6に示すように、ストラット26は一般的なダイヤモンド形の開口部44を作るよう配置されている。更に、開口部44は外部縁(例えば、外周)からバスケット50の中心部に移動する時に大きさを減らしているとわかる。これらは単に例示である。上述のように、多くの幾何学模様、パターン及びカバーデザインの組み合わせが考えられる。
【0051】
図7及び8は、血流内でどのように医療装置10が自己中央化するのかに関する説明の図を提供する。図7は弁口48を含む弁46の一例を示している。更に、血液が弁46を通って流れる時、血流の流れに応じて、様々な大きさを有する速度ベクトルの勾配が観察される。図7に示すように、医療装置10の一例では、医療装置10は、最初は最も大きな速度ベクトルから偏倚して配置される(最も大きな速度を有する血流の部分に応じて)。しかし、図7に示すように、バスケット50の外部縁の一部は最も大きな速度ベクトルを「捉える」ことができる。血流のその部分は次に、バスケット50を弁口48の中央に向かって効果的に「引っ張る」(図7の矢印が示すように)ことができ、それによって、弁口を越えてバスケット50を中央化させる。
【0052】
一旦弁口を越えて中央化された後は、(そして最も大きな速度流のベクトルに応じて)、バスケット50は最も大きな速度を有する血流部分にのって中央化され続ける。血流の最も速く移動する部分は、弁口に関連していると考えられる。それ故に、図8に示す上向き及び下向きの矢印によって示されるように、バスケット50は速度ベクトルの位置変化に応じてその位置を変える。言い換えると、バスケット50の中心は一般的に弁口を通って流れる血流の最も早い移動部分に応じて自己配置する。ガイドワイヤポートは実質的にバスケット50の中央に位置しているため、ガイドワイヤポートから前進させられるガイドワイヤは、弁口を通って直接前進させられる。
【0053】
装置10(及び本開示の他の装置の少なくとも一方)の様々な構成要素、及び本開示の様々な管状部材に使われることができる材料には、医療装置に関する共通の材料が含まれる。簡単にする目的のために、以下の説明は装置10及び装置10の他の構成要素に言及している。しかし本説明は、他の類似する管状部材及びここに示す管状部材及び装置の構成要素の、少なくとも一方に応用されてもよいため、ここで説明される装置及び方法に限定する目的ではない。
【0054】
装置10及び装置10の他の構成要素の少なくとも一方は、金属、金属合金、ポリマ(いくつかの例は以下に開示)、金属ポリマ複合体、セラミック、それらの組み合わせ、及び同様の、又は他の適切な物質から作られることができる。いくつかの適切なポリマの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、DuPontから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えば、DSM エンジニアリング プラスチックスから入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル又はエステル系コポリマ(例えば、DuPontから入手可能なHYTREL(登録商標)のような、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/又は他のポリエステルエラストマ)、ポリアミド(例えば、Bayerから入手可能なDURETHAN(登録商標)又はElf
Atochemから入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマ系ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、商品名PEBAX(登録商標))、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex高密度ポリエチレン、Marlex低密度ポリエチレン、直鎖状低密度プリエチレン(例えばREXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMS American Grilonから入手可能なGRILAMID(登録商標))、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS 50A)、ポリカーボネート、アイオノマ、生体適合性ポリマ、他の適切な材料、またはそれらの混合物、組み合わせ、それらのコポリマ、ポリマ/金属複合物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、シースを液晶ポリマ(LCP)とブレンドすることができる。例えば、混合物は約6%までのLCPを含むことができる。
【0055】
適切な金属および金属合金のいくつかの例には、304V、304L及び316LVステンレス鋼のようなステンレス鋼、軟鋼、線状弾性及び/又は超弾性ニチノールなどのニッケルチタン合金、ニッケルクロムモリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625のようなUNS N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)のようなUNS N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)のようなUNS N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400などのUNS N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのようなUNS R30035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)のようなUNS N10665)、他のニッケルクロム合金、他のニッケルモリブデン合金、他のニッケルコバルト合金、他のニッケル鉄合金、他のニッケル銅合金、他のニッケルタングステン又はタングステン合金など、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS R30003)、プラチナ富化ステンレス鋼、チタン、それらの組み合わせなど、又は任意の他の適切な材料を含む。
【0056】
少なくともいくつかの実施形態では、装置10の一部または全体は、X線不透過性の物質を、ドープされ、又はそれから作られ、又はそれを含む。X線不透過性の物質は、医療行為の間、X線透視スクリーンに比較的暗い画像を生成すること、又は他の造影技術を生成することができる物質であると理解される。この比較的明るい映像は、装置10の使用者がその位置を特定することを助ける。X線不透過物質のいくつかの例として、しかしこれらに限定されないが、金、プラチナ、パラジウム、タンタル、タングステン合金、X線不透過性の充填剤を含有するポリマ物質などを含む。加えて、他のX線不透過性のマーカバンド及びコイルの少なくとも一方は又、同様の結果を達成するために装置10のデザインに組み込まれている。
【0057】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴画像診断(MRI)との適合性が装置10に付与されている。例えば、装置10、又はその一部は、実質的に画像を歪ませたり、実質的なアーチファクト(例えば、画像に欠落部)を生み出したりしないような物質で作られる。いくつかの強磁性体は、例えば、MRI画像にアーチファクトを作り出すため適していない。装置10又はその一部は、又、MRI装置が撮影できるような物質で作られることができる。これらの特性を示す物質としては、例えば、タングステン、コバルトクロムモリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS R30003など)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのUNS R30035)、ニチノールなどが挙げられる。
【0058】
本開示は、多くの点において単なる例示に過ぎないと解されたい。詳細において、特には形状、サイズ、及び工程の配列において、本開示の範囲を逸脱することなく変更することが可能である。これには、適当な範囲内で、例示の実施形態の任意の要素をその他の実施形態に使用することが含まれる。言うまでもないが、本開示の範囲は、添付の請求項で表現される文言において定義される。
図1
図2
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図8