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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両用強化部材の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20220114BHJP
   B60N 2/18 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/18
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019507982
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2017082407
(87)【国際公開番号】W WO2017186165
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】10201603457W
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】518382991
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ イースト エイジア リージョナル ヘッドクウォーターズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シャム,アンドリュー シー
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512180(JP,A)
【文献】特表2015-502873(JP,A)
【文献】特開平06-099506(JP,A)
【文献】米国特許第05567509(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/18
B29C 45/00
B29C 49/00
B29C 53/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバモールド組立品の形成方法であって、
前記方法は、
繊維強化材料の平面体からなる繊維強化材料体を形状規定部材の形状に一致させる工程であって、前記材料は複合母材内に連続繊維を有し且つ前記形状規定部材は車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する、一致工程と、
前記繊維強化材料体の第1の縁部と該繊維強化材料体の第2の縁部を接着して、それにより前記形状規定部材の周囲に前記車両用強化部材の前記閉断面部を形成する接着工程と、
前記閉断面部内に前記形状規定部材を保持しながら、前記車両用強化部材上のシェル及び繊維強化材料体を一体的に連結するように、前記シェル、車両用強化部材、及び更なる車両用強化部材をオーバモールドする、オーバモールド工程と、を有
前記繊維強化材料体の一致工程は、第1型部材を前記繊維強化材料体に接触させる工程、及び前記繊維強化材料が前記形状規定部材の形状に少なくとも部分的に一致するように、前記第1型部材及び形状規定部材を、それらの間に前記繊維強化材料体を伴って、一緒にする工程を有し、そして
前記第1型部材は、鉛直方向に傾斜して配置された表面を有し、前記第1型部材を前記繊維強化材料体に接触する工程は、前記傾斜表面上への前記繊維強化材料体の装着工程を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、先細りの車両用強化部材の形成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形状規定部材は、該形状規定部材の長手方向に先細りである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記形状規定部材は、前記車両用強化部材の前記閉断面部の先細りの内容積を規定する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
更に、
前記繊維強化材料体を少なくとも部分的に硬化する硬化工程と、
前記車両用強化部材の前記閉断面部の前記内容積から前記形状規定部材を引き抜く引き抜き工程と、を有する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1型部材は、前記形状規定部材の形状と協調する形状の窪み部分を有し、また前記第1型部材及び形状規定部材を一緒にする工程は、前記窪み部分及び形状規定部材間に前記繊維強化材料体を配置する工程を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
更に、前記第1及び第2縁部が前記窪み部分の外側に突出するように前記繊維強化材料体を配置する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1縁部の前記第2縁部への接着工程は、前記第1縁部及び第2縁部の1つを前記形状規定部材に寄せしめるように前記繊維強化材料体を第2型部材及び第3型部材と個々に接触させ、前記第1及び第2縁部が互いに重なり合う工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3型部材が加熱される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第3型部材は、前記繊維強化材料の接着温度まで加熱される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2型部材及び第3型部材は、往復動装置に取付けられ、前記往復動装置は、連続して、前記第2型部材を前記繊維強化材料体に接触させ、その後、前記第2型部材を前記繊維強化材料体との接触から離し、更に前記第3型部材を前記繊維強化材料体と接触させる、請求項乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
車両用強化部材は長手方向に延在し、且つ前記方法は更に、前記車両用強化部材の前記長手方向に前記形状規定部材を引き抜く工程を含む、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記接着工程は、前記第1縁部と前記第2縁部とを融解によって接着する工程を含む、請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
更に、前記車両用強化部材の硬化速度を調整するために前記形状規定部材の温度を制御する工程を含む、請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記形状規定部材の温度の制御工程は、前記形状規定部材の温度を制御し且つそれにより前記繊維強化材料体の温度を調整するために前記形状規定部材内の1つ以上のチャネルを通じて冷却材及び/又は放射材を流す工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法を用いて製造されたオーバモールド組立品において、前記車両用強化部材は、閉断面部、及び前記第1及び第2縁部を結合する継ぎ目を有する、オーバモールド組立品。
【請求項17】
車両用シートの補強構造部材の製造方法であって、前記車両用シートは、座面部及びチルト調整機構によって前記座面部に連結されたシートバックを有し、前記チルト調整機構は、前記座面部に対して前記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、前記2つのチルト調整部材の1つが前記座面部及びシートバックの夫々に存在し、
前記製造方法は、請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法を用いてシート要素のオーバモールド組立品を形成する形成工程であって、前記シート要素が前記座面部及びシードバックの1つである、形成工程と、
前記2つのチルト調整部材の1つを前記オーバモールド組立品に取付ける取付工程であって、前記オーバモールド組立品を前記2つのチルト調整部材の他方に連結し、それにより前記座面部及びシートバックを連結するための取付工程と、を有する、製造方法。
【請求項18】
前記シート要素は前記シートバックであり、前記チルト調整機構は、前記シートバックの対向する2つの側面の夫々の上にヒンジ機構を有し、前記ヒンジ機構の1つが、前記チルト調整部材を有し、且つ他方のヒンジ機構も、前記座面部に対して前記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、
前記製造方法は、請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法に従って更なる前記車両用強化部材を形成する形成工程であって、前記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材はそれぞれ、前記個々のヒンジ機構からのチルト調整部材を有すると共に、前記個々のヒンジ機構から該個々のヒンジ機構から離れた点まで前記シートバックの前記2つの対向する側面に沿って伸長する、形成工程と、
前記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材の上に前記シェルをオーバモールドするオーバモールド工程であって、前記シェル、車両用強化部材及び更なる車両用強化部材を一体的に結合するオーバモールド工程とを有する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
車両用シートであって、
座面部と、
シートバックと、
前記シートバックを前記座面部に連結するチルト調整機構とを有し、
前記チルト調整機構は、前記座面部に対して前記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、前記2つのチルト調整部材の1つが前記座面部及びシートバックの夫々に存在し、
前記シートバック及び座面部の1つであるシート要素は、請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法を用いて形成された少なくとも1つのオーバモールド組立品を含み、前記少なくとも1つのオーバモールド組立品は、前記チルト調整部材の1つを含み、該チルト調整部材の1つは、他方のチルト調整部材に可動に連結され、それにより前記座面部及びシートバックが連結される、車両用シート。
【請求項20】
前記シート要素は、前記チルト調整機構から、該チルト調整機構から離れた点まで前記シート要素の対向する側面に沿って伸長するオーバモールド組立品を有する、請求項19に記載の車両用シート。
【請求項21】
前記チルト調整機構は2つのヒンジ機構を有し、1つのヒンジ機構が前記シート要素の対向する側面の夫々に存在し、前記チルト調整機構は、前記2つのヒンジ機構の1つの一部を形成し、他方の前記ヒンジ機構も前記座面部に対して前記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、またそれぞれの車両用強化部材は、それぞれの前記ヒンジ機構の前記2つのチルト調整部材の1つを有する、請求項20に記載の車両用シート。
【請求項22】
各車両用強化部材の前記閉断面部の断面は、実質的に楕円形である、請求項19乃至21の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項23】
オーバモールド組立品を作り上げるシステムであって、
車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する形状規定部材であって、前記車両用強化部材は、複合母材中に連続繊維を含む連続繊維強化材料の平面体からなる連続繊維強化材料体を使用して形成される、形状規定部材と、
第1型部材であって、前記第1型部材及び形状規定部材は、それらの間の前記連続繊維強化材料体を伴って一緒に、前記連続繊維強化材料体からなる閉断面部が形成されるように構成され、前記閉断面部は前記形状規定部材の周囲に形成される、第1型部材と、
前記第1型部材に可動に架設され、使用時には前記車両用強化部材を形成するために前記連続繊維強化材料体の第1縁部及び第2縁部を合わせて接着するように前記形状規定部材に向けて移動可能な接着装置と、
前記閉断面部内に前記先細りの形状規定部材を保持しながら前記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材の上にシェルをオーバモールドするのに使用するためのオーバモールド型であって、該車両用強化部材及び更なる車両用強化部材は前記シェル及び連続繊維強化材料体と一体的に連結される、オーバモールド型と、を有するシステム。
【請求項24】
前記システムは、先細りの車両用強化部材を作り上げるように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記形状規定部材は、該形状規定部材の長手方向に先細りである、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
前記形状規定部材は、前記車両用強化部材の前記閉断面部の先細り内容積を規定する、請求項23乃至25の何れか1項に記載のシステム。
【請求項27】
更に、前記第1型部材に可動に架設された第2型部材を有し、使用時には、前記形状規定部材と協働して前記連続繊維強化材料体の第1縁部を該連続繊維強化材料体に接触せしめるように前記第2型部材が移動可能とされる、請求項23乃至26の何れか1項に記載のシステム。
【請求項28】
更に、第3型部材を有し、前記第2型部材及び第3型部材は、前記第1型部材に取付けられた往復動装置に架設され、前記往復動装置は、使用時に、前記第2型部材を前記第1縁部に接触させ、その後、前記第2型部材を前記第1縁部との接触から離し、更に前記第3型部材を前記繊維強化材料体の第2縁部と接触させて該第2縁部を前記第1縁部に接着する、請求項27に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月29日に出願されたシンガポール特許出願10201603457Wに基づいて優先権を主張する。
【0002】
本開示は、車両用シートフレームのような車両用強化部材を形成するための方法に関する。本開示はまた、そうした方法によって形成された車両用強化部材及び車両用強化部材を含む車両用構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車産業では、安全に対する速度と性能の均衡の要求は重要な要素である。安全性を改善するために、エアバッグやクランプルゾーンのような付加的な安全対策が車両内に組み込まれている。
【0004】
付加的な安全対策は、典型的に、車両の重量を増し、それは、燃費の増大を招くと共に、生成汚染物質の総量を低減するという産業要求に反する。
【0005】
重量低減のために、金属構成要素が複合強化材料に置き換えられている。これらの構成要素は、しばしば、2-1/2次元形状として知られているものに形成される。2-1/2次元構成要素を創生するために、プレカット織繊維の平坦シート又はシート層が複合樹脂で含浸され(「プリプレグ」として知られている)、主に、そのプリプレグの厚さに応じた均一な厚さで、V、L、C、U、M、又は他の形状に折り曲げられる。これは、形成された構成要素の強度を改善すると共に、その複合強化材料構成要素を他の構成要素に取付可能とする取付箇所を提供する。この2-1/2次元部品は、その後、典型的に、リブ状強化部を提供するために、また取付箇所を付加するために、樹脂でオーバモールドされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に構造化及び安全性応用のために、関連する構成要素の必要強度を保持するように複合強化材料を使用すること、またそれらの材料から組立てられた構成要素を装備することは、典型的に、大変なコストがかかる。主として2-1/2次元構造物において、この結果は、複合強化材料の使用を伴う重量低減を制限すると同時に、複合強化材料構成要素の装備のコストが車両のコストを増大する。
【0007】
手ごろな価格の車両に適応する大量生産量に適応するために、重量低減を促進し、同時に製造が容易で、さらに構成要素の必要強度を保持する、複合強化材料からなる構成要素の効果的な組立方法の提供が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
種々の実施の形態に従って、オーバモールド組立品の形成方法が提供され得る。この方法は、繊維強化材料(CFRM)の平面体(CFRM体)を形状規定部材の形状に一致させる工程であって、上記材料は複合母材内に連続繊維を有し且つ上記形状規定部材は車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する、一致工程と、上記CFRM体の第1の縁部とそのCFRM体の第2の縁部を接着して、それにより上記形状規定部材の周囲に上記車両用強化部材の上記閉断面部を形成する接着工程と、上記閉断面部内に上記形状規定部材を保持しながら、上記車両用強化部材上のシェルをCFRM体と一体的に連結するように、上記シェル、車両用強化部材、及び更なる車両用強化部材をオーバモールドする、オーバモールド工程と、を含み得る。
【0009】
種々の実施の形態に従って、オーバモールド組立品を作り上げるためのシステムが提供され得る。このシステムは、車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する形状規定部材であって、上記車両用強化部材は、複合母材中に連続繊維を含む連続繊維強化材料(CFRM)の平面体(CFRM体)を使用して形成される、形状規定部材と、第1型部材であって、その第1型部材及び形状規定部材は、それらの間の上記CFRM体を伴って一緒に、上記CFRMからなる閉断面部が形成されるように構成され、上記閉断面部は上記形状規定部材の周囲に形成される、第1型部材と、上記第1型部材に可動に架設され、使用時には前記車両用強化部材を形成するために上記CFRM体の第1縁部及び第2縁部を合わせて接着するように上記形状規定部材に向けて移動可能な接着装置と、上記閉断面部内に先細りの上記形状規定部材を保持しながら上記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材の上にシェルをオーバモールドするのに使用するためのオーバモールド型であって、その車両用強化部材及び更なる車両用強化部材は上記シェル及びCFRM体と一体的に連結される、オーバモールド型と、を含み得る。
【0010】
一例では、車両用強化部材を形成するための方法が提供され得る。この方法は、繊維強化材料(CFRM)のシートを形状規定部材の形状に一致させる工程であって、上記材料は複合母材内に連続繊維を有し且つ上記形状規定部材は上記車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する、一致工程と、上記CFRMシートの第1の縁部とそのCFRMシートの第2の縁部を接着して、それにより上記車両用強化部材の上記閉断面部を形成する接着工程と、を含み得る。
【0011】
一例では、先に又は本書の他の場所に記載の方法を用いて製造された車両用強化部材が提供され得る。この車両用強化部材は、閉断面部及び上記第1及び第2縁部を結合した継ぎ目を含み得る。
【0012】
一例では、車両用シートの強化構造部材の製造方法が提供され得る。この車両用シートは、座面部と、チルト調整機構によって上記座面部に連結されたシートバックと、を含み得る。上記チルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動であり、且つ座面部及びシートバックの夫々の上に1つずつ存在する2つのチルト調整部材を含み得る。この方法は、先に又は本書の他の場所に記載の方法を用いてシート要素の車両用強化部材を形成する形成工程であって、上記シート要素が上記座面部及びシードバックの1つである、形成工程と、上記2つのチルト調整部材の1つを上記車両用強化部材に取付ける取付工程であって、上記車両用強化部材を上記2つのチルト調整機構の他方に連結し、それにより上記座面部及びシートバックを連結するための取付工程と、を含み得る。
【0013】
一例では、車両用シートが提供され得る。この車両用シートは、座面部と、シートバックと、上記シートバックを上記座面部に連結するチルト調整機構であって、そのチルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記2つのチルト調整部材の1つが上記座面部及びシートバックの夫々の上に存在する、チルト調整機構と、を含み得、上記シートバック及び座面部の1つであるシート要素は、先に又は本書の他の場所に記載の方法を用いて形成された少なくとも1つの車両用強化部材を含み、その少なくとも1つの車両用強化部材は、上記チルト調整部材の1つを含み、そのチルト調整部材の1つは、他方のチルト調整部材に可動に連結され、それにより上記座面部及びシートバックが連結される。
【0014】
一例では、車両用シートが提供され得る。この車両用シートは、座面部と、シートバックと、上記シートバックを上記座面部に連結するチルト調整機構であって、そのチルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記2つのチルト調整部材の1つが上記座面部及びシートバックの夫々の上に存在する、チルト調整機構と、を含み得、上記シートバック及び座面部の1つであるシート要素は、先に又は本書の他の場所に記載の方法に従って形成され、その少なくとも1つの車両用強化部材は、上記チルト調整部材の1つを含み、そのチルト調整部材の1つは、他方のチルト調整部材に可動に連結され、それにより上記座面部及びシートバックが連結される。
【0015】
一例では、車両用強化部材を作り上げるためのシステムが提供され得る。このシステムは、上記車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する形状規定部材であって、上記車両用強化部材は、複合母材中に連続繊維を含む連続繊維強化材料(CFRM)のシート(CFRMシート)を使用して形成される、形状規定部材と、第1型部材であって、その第1型部材及び形状規定部材は、それらの間の上記CFRMシートを伴って一緒に、上記CFRMシートが上記形状規定部材に少なくとも部分的に一致する、第1型部材と、上記第1型部材に可動に架設され、使用時には上記車両用強化部材を形成するために上記CFRMシートの第1縁部及び第2縁部を合わせて接着するように上記形状規定部材に向けて移動可能な接着装置と、を含み得る。
【0016】
次に、幾つかの実施の形態が、限定されない例示のみの手法で記述されるであろう。これらの実施の形態は、以下の図面を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本教示に係る車両用シートの側面図である。
図2図2は、本教示に係る車両用強化部材の側面図である。
図3図3は、チルト調整部材が取付けられた図2の車両用強化部材の側面図である。
図4A図4Aは、荷重中の車両用強化部材の挙動を図示する車両用シートの平面図である。
図4B図4Bは、荷重中の車両用強化部材の挙動を図示する車両用シートの平面図である。
図5図5は、本教示に係る車両用強化部材を形成するための方法及び装置を図示する。
図6図6は、CFRMシート及びチルト調整部材間の接着された継手の一部詳細図を提示する。
図7図7は、上記車両用シートの一部を通過して上記車両用強化部材の長さに沿った寸法の変形例を図示する種々の断面と一緒に車両用シートの部分図を示す。
図8図8は、本教示に係る車両用強化部材を形成するための装置の幾つかの説明図を提示する。
図9図9は、羽板又はシェルを車両用強化部材にモールドするための型を通過する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本書に開示される実施の形態は、3次元の閉断面部を伴う車両用強化部材を提供する。こうした部材は、他の安全性、エネルギー吸収、及び補強用途と同様に、特に車両用シート及びバンパバーへの応用に適用することができる。とりわけ、本書に記述される方法に従って形成された構成要素の高い強度のおかげで、それらはまた、構造用途に、例えば、車両用シャシの置換要素に使用され得る。
【0019】
繊維に限っては「連続」繊維を用いる、この開示の実施の形態は、車両用強化部材の閉断面部の周りに切れ目なく伸展することができる。換言すれば、上記車両用強化部材は、関連する車両用強化部材の閉断面部の周りに伸展する繊維又はテープを伴って折繊維の平面体又は一方向テープが適用される場合に、それら繊維が上記閉断面の全外周の周りに切れ目なく進展し且つ始点又は終端の何れかを重ね合わせて終結するように形成される。
【0020】
本書に記述される上記CFRM材料は、連続繊維の平面体を有する。その平面体は、連続繊維の1つ以上のシート(例えば1つのシート、2つのシートなど)又は複合母材中の1つ以上のテープ(例えば1つのテープ、2つのテープなど)を有し得る。複数のシート又はテープが設けられる場合、少なくとも2つのシート又はテープは、重合構造であり得る。2以上のシート又はテープが設けられる場合、少なくとも1つのシート又はテープは、例えば、その少なくとも1つのシート又はテープが、上記閉断面部の周りに伸展するシート又はテープの繊維に対して、直角に、45°で、30°で、15°で、10°で、5°で、又は他のあらゆる角度で進展する繊維を有し得るように、上記車両用強化部材の上記閉断面部周り以外の方向に伸展する連続繊維を伴って配置され得る。
【0021】
図1は、車両用シート10を示す。この車両用シート10は、車の前席又はSUV又はMPVのような多列車両の中央席、航空機の客席、又はしかるべきその他のシートであり得る。この車両用シート10は、座面部12及びシートバック14を含み、座面部12及びシートバック14の夫々は、互いに交換可能に、「シート要素」と呼ばれ得る。この車両用シート10は更に、チルト調整機構16を有する。このチルト調整機構16は、上記シートバック14を座面部12に連結する。シートバック14及び座面部12間の連結を補助する他の構成要素があってもよい。
【0022】
上記座面部12は、シート基部24によって床22から離れた状態で、車両の床22上に架設されている。この座面部12は、例えば、上記車両用シート10が旅客機のシートである場合には、シート基部24を通じて上記床22に固定して架設されてもよい。この座面部12は、選択的に、前後方向調整機構を有するシート基部24を通じて上記床22に架設されてもよい。前後方向調整機構は、矢印X-X’の方向に、車両用シート10の前後方向位置の選択的な前後方向調整を許容する。
【0023】
上記チルト調整機構16は、可動に連結された2つのチルト調整部材又はブラケット18、20を有する。このチルト調整部材18、20は、上記座面部12に対する上記シートバック14のチルト調整を許容するために、互いに対して可動である。この目的のために、2つのチルト調整部材18、20の1つが、上記座面部12及びシートバック14の夫々に存在する。
【0024】
少なくとも1つの車両用強化部材26、28、30(部材26、28は破線で示されており、また部材30は一点鎖線で示されている)は、上記シート要素の1つ又は双方に、換言すれば上記座面部12及びシートバック14の1つに、又はシート基部24又は上記床22を支持する構造内に設けられている。これらの車両用強化部材26、28、30(及び本書内に記述される他の部材)は上記車両用シートの一部を形成するので、用語「車両用強化部材」は、互いに交換可能に、「シート強化部材」として関連して使用され得る。こうした部材が使用され得る典型的な図を提供するために、ここでは、3つのこうした車両用強化部材26、28、30が示される。これらの車両強化部材26、28、30は、例えば図5A~5Dに示される処理工程を使用して形成される。
【0025】
何れの場合も、この車両用強化部材26、28、30は、旧来の強化又は構造部材の代わりに設けられる。大抵の場合、関連のある車両用強化部材は、安全システムの一部をも形成するだろう。例えば、上記座面部12の車両用強化部材28は、上記床22を経て車両の主要構造に架設される。この場合、座面部12は、上で説明したような機構24を経て上記床22に架設される。車両が前面衝突した場合、このシート10に座っている乗員の慣性は、乗員を、矢印Xで示す方向である前方に進めようとするだろう。乗員の臀部が上記車両用強化部材28を押し、その乗員の慣性の幾らかが吸収されるだろう。
【0026】
その際、上記車両用強化部材28は、座面部12の他の構成部材に構造的な補強を提供すると同時に、シート10に座っている乗員の前方へのエネルギーを吸収する安全機能を発揮し、前面衝突中の乗員のシートベルト下への潜行を防止する。
【0027】
同様に、上記シートバック14中の車両用強化部材26は、上記チルト調整機構16を経て、上記座面部12に架設されている。車両が後面衝突した場合、乗員の慣性は、それらをX’方向に、シートバック14内に押し込むだろう。この車両用強化部材26は、乗員によってシート10に加えられる力の幾らかを吸収するだろう。この座面部12は、同様に、車両の床22など内にその力の幾らかを伝送するだろう。
【0028】
再び、上記車両用強化部材26は、上記シート10のシートバック14の構造を補強し、同時に、安全機能を発揮する。特に、後面衝突中、エネルギーは、乗員からシートバック14内に、シートバック14からチルト調整機構18、20内に、その後、座面部12の内に、そして座面部12から車両の床22内に移る。残りの力は、上記車両用強化部材26及び上記車両用シート10の他の構成部材の変形中に吸収される。この車両用強化部材26はまた、上記シートバック14の構造を維持する。
【0029】
衝突及び破壊事象に関して使用される場合の節「構造の維持」、「形状の維持」及び同様の節は、関連する安全基準に従って実施される試験下の変化によって乗員が大けがするような範囲ではない範囲内の上記シート10の形状又は構造の幾らかの変化を含み得ることが認識されるだろう。換言すれば、これらの節は、事故において上記シートが破壊された(即ち、もはや目的に対して適合しない)場合でさえ、乗員の安全を確保するための形状及び構造を実質的に維持する範囲のシートの能力を含む。この節「構造の維持」は、衝突に耐え、同時に使用可能な状態を維持する能力をシート10が必要とするという制限は意図しない。
【0030】
上記車両用強化部材26は、上記チルト調整部材18、20の1つを備え、また車両用強化部材30は、上記チルト調整部材18、20の他方を備える。特に、車両用強化部材26は、チルト調整部材20を備える。このチルト調整部材18、20は、可動に連結され、それにより、座面部12とシートバック14を連結する。換言すれば、部材18は、種々のチルト位置で部材20を動かなくすることができると共に、それらの位置間で選択的に動かすことができる。
【0031】
上記車両用強化部材26は、(座面部12に対してシートバック14をチルトするための回転を可能とするヒンジ機構の一部を形成する)チルト調整部材18から、夫々のチルト調整部材18から遠く離れた点まで(即ち、関連するヒンジ機構から遠く離れた点まで)伸長する。図示された実施の形態の車両用強化部材26は、シート10の全高まで伸長する必要はない。この車両用強化部材26は、それに代えて、例えば、シート10に座った状態で標準的な身長の乗員の肩が見込まれる肩の高さまで伸長するか、又は、特定のシート設計のための工学による必要な範囲で伸長する。
【0032】
一方、幾つかの実施の形態では、上記車両用強化部材26は上記シート10の全高まで伸長し得るが、乗員の重量の多くは、典型的に、乗員の胴体の下部(例えば腹部)及び脚にあるために、ここではそうしない。従って、車両が後面衝突した場合に乗員によってシート10に加えられる力の多くは、シート10の下部にあるだろう。これは、とりわけ、シートベルトの巻き帯が乗員のヒップをシートバック14の座面部12に接する領域に近づけておく場合にそうである。従って、後面衝突からの力を制御するために、補強の大部分は、シートバック14の頂部よりもシートバック14の基部に要求される。
【0033】
図2は、車両用強化部材200の側面図を提供する。この車両用強化部材200は、例えば、図1の車両用強化部材26の箇所内のような、車両用シートのシートバック内での使用に適し得る。この車両用強化部材200は、閉断面部202を有する。この閉断面部202は、車両用強化部材200の全長に実質的に伸長する。幾つかの実施の形態では、この閉断面部202は、車両用強化部材200の全長未満に伸長し得る。例えば、この閉断面部202は、チルト調整部材に取付けられている下端204から、車両用強化部材200の長さに沿った途中までのみ伸長し得る。例えば、それは、下端204から、頂端208より低い上方点206まで上に伸長し得る。
【0034】
さらに、この車両用強化部材200の上方点206及び頂端208間の部分は、U型形状部又はC型形状部のみを有し得、それにより必要以上に高価な被覆材料を使用しないという目的に適合する実質的な構造剛性を提供する。
【0035】
上記車両用強化部材200は、伸長方向を有する。この例では、その方向は、上記下端204から離れるように矢印Yに従って進む。他の車両用強化部材に対しては、この長手方向は直線以外もあり得る。例えば、その車両用強化部材が、車のバンパバーの角部のような一定湾曲半径を伴う部材を有する場合、上記長手方向は、その湾曲半径又は複合された湾曲半径(即ち、湾曲部が2以上の湾曲半径か、又は一定でない湾曲半径を有する)に従い得る。
【0036】
上記車両用強化部材200は先細りである。この先細りは、上記下端204の近傍部、又は1つがこの車両用強化部材200に取付けられている場合の上記チルト調整部材の近傍部から上記車両用強化部材200の長手方向に離れるように伸長する。ここでは、上記先細りは、実質的に車両用強化部材200の全長に伸長する。
【0037】
この先細りは、上記車両用強化部材200からの形状規定部材(図5A~D参照)の引き抜きを補助する。この例では、上記引き抜きは、車両用強化部材200の長手方向に発生する。従って、この車両用強化部材200は、上記形状規定部材の周りに形成され得、また部分的に硬化され得、固化、冷却、又は第2型部材が引き抜かれるときにその形状が維持される十分な剛性を得る他の方法で、その後に上記形状規定部材が引き抜かれる。
【0038】
車両用強化部材300の更なる実施の形態が図3に示される。この実施の形態では、金属取付具302が上記車両用強化部材300に取付けられている。この金属取付具302は、上記車両強化部材300がもう1つの構造に取付けられることを可能とする。例えば、この車両用強化部材300が車のバンパの一部を有する場合、上記金属取付具302は、
その車のボディ又はシャシへのそのバンパの取付けを容易にし得る。同様に、上記車両用強化部材300が車両用シートの座面部の一部を有する場合、上記金属取付具302は、図1による前後方向調整機構を上記シート基部が有するか否かに関わらず、そのシート基部への上記座面部の取付を容易にし得る。この例では、上記車両用強化部材300は車両用シートのシートバックの一部を含み、また上記金属取付具は、上記車両用シートの座面部に対するシートバックのチルトを可能とするチルト調整機構のチルト調整部材である。換言すれば、上記車両用シートの座面部上に協働するチルト調整部材が設けられ、また、それらチルト調整部材は互いに可動に連結され、それにより、上記座面部とシートバックを、前者に対する後者のチルトを許容する様式で連結する。
【0039】
上記車両用強化部材300を一部に含むシートバック400を図4A及び4Bに示す。この実施の形態の車両用強化部材の閉断面のおかげで、U型形状又はC型形状部材のような開断面構造部材と比較した場合に、荷重が集中する、稜のような単一点がない。従って、この車両用強化部材300の閉断面は、複数の自由度で作用する力に対する抵抗を提供する。
【0040】
図4Aは、鉛直軸周りの捩り力又は曲げモーメント(即ち、図4Aが図示されるページの外側)に対する車両用強化部材300の応答を図示する。捩り力は、例えば、車両の側面衝突荷重中、又は上記シートバックが前方に押された場合に発生し得る。この車両用強化部材が楕円形又は実質的な楕円形断面、又は他の断面(例えば長方形又は長円)を有し得る限り、その断面の閉鎖性は、創生された力に対抗する結果をもたらし、上記断面の一部内の力がその断面のもう1つの部分内の力によって少なくとも部分的に弱められる。
【0041】
捩り荷重に対し、上記抵抗は、引張又は圧縮力よりもむしろ剪断力である傾向にある。その結果、捩り力の付加に対して、2つの剪断力領域が上記部材300内に創生される。2つの剪断力領域の発生によって、最大剪断が劇的に低減し、更に半減さえする(その2つの領域に等しい剪断力が発生した場合)。これは、1つの領域内に上記剪断を付与する力が同様に他の領域内に剪断を付加するためであり、その結果、あらゆる力が、U型形状又はC型形状構造部材のような開断面部材に対して有用であるだろう複数の領域で最大で2回まで吸収される。その結果は、U型形状又はC型形状構造部材に付与されるであろうあらゆる力に閉断面が対抗することを確実なものとし、そしてその最大力が効果的に低減し、更に半減さえする。車の衝突中のような大きな衝撃に対し、これは、その衝撃が凡そ2倍であることを可能とし、また上記部材300に故障が発生する前にその衝撃が凡そ2回の捩り力を付与することを可能とする。車の衝突の規則性を考慮した場合、極めて壊滅的な衝突よりも、壊滅よりもずっと小さい衝突が、もっとずっと頻繁である。衝突の他の形式よりもずっと発生の少ない、そうした衝突の形式に対して、部材300は耐える能力がある。更に、図4A及び4Bに関連して図示されるように、力は、複数の自由度について、即ち水平軸周りの曲げ及び鉛直軸周りの捩りが吸収される。
【0042】
先の考察は、捩り荷重中に付与される剪断力に関してなされたが、同様の力低減メカニズムが水平軸周りに付与される曲げ力の下にあてはまる。これは、引張のあらゆる領域に対する圧縮、及び反対に、上記断面周りに発生する圧縮の潜在的領域があるためである。この引張及び圧縮の対向する領域は、また剪断の上記領域に対しても同様に、上記断面の対向する側に発生する。
【0043】
とりわけ、上記シートバック400は、そのシートバックの対向側404、406に沿って伸長する2つの車両用強化部材300、402を有する。これらの車両用強化部材300、402は、上記チルト調整機構(図1の符号16を参照)から、そのチルト調整機構から離れた点(図1の符号32及び図2の符号208を参照)まで延在する。これら車両用強化部材300、402は、実質的に平行に延在する。
【0044】
上記車両用強化部材300、402は、同じ形状を有し得、又は、図2の矢印Y及びBで一般に規定される平面について、一方が他方の鏡像であり得る。強化部材300、402はまた、サイドエアバッグ又は電子装置のような幾つかの他の非対称機器のための場所を作るために要求される最も外側の部材であるような場合には、非対称形状としてもよい。
【0045】
上記2つの車両用強化部材300、402間の伸長部は、ウエブ又はシェル408である。このウエブ又はシェル408は、あらゆる要求様式で、車両用強化部材300、402に取付けられ得る。この場合では、上記ウエブ又はシェル408は、上記車両用強化部材300、402上にオーバモールドされる。このオーバモールド工程は、上記ウエブ又はシェル408、車両用強化部材300、及び更なる車両用強化部材402を一体的に連結する。
【0046】
上記ウエブ又はシェル408はまた、そのウエブ又はシェル内に凹部(図示せず)を形成することによって取付られ得、その凹部の内容積は、上記車両用強化部材300、402の外形に実質的に一致する形状として、前者内に後者が受け入れられるようにしてもよい。
【0047】
ここでは、2つの車両強化部材300、402がある。これらの車両用強化部材300、402は、通常のチルト調整機構に取付けられ得、その機構は、ここでは、2つのヒンジ機構410、412を有する。1つのヒンジ機構410、412がシートバック400の対向側404、406の夫々に存在する。
【0048】
各ヒンジ機構410、412は、2つのチルト調整部材を有する。各個のヒンジ機構の1つのチルト調整部材は、車両用強化部材300、402の夫々に取付けられている。他のチルト調整部材は、車両用シートの座面部に取付けられている。この座面部に取付けられているチルト調整部材は、個別の構成部材であってもよいし、通常の座面部チルト調整部を一緒に形成してもよい。同様に、上記シートバックに取付けられているチルト調整部材は、個別の構成部材であってもよいし、通常のシートバックチルト調整部を一緒に形成してもよい。この点について、車両用強化部材の1つの上だけにチルト調整機構があってもよい(例えば、一緒になって動きを止めることが可能なチルト調整部材の対、換言すれば、チルト調整止めであり、それにより、上記基部に対する位置でシートバックを止める)。上記他の車両用強化部材は、動きを止める代わりに、回転可能なヒンジを形成するチルト調整部材によって上記基部に連結され得る。それに代えて、上記基部に双方の車両用強化部材を取付ける単独のチルト調整機構があってもよい。ヒンジ機構、チルト調整機構、及びチルト調整部材の全ての変形例は、本開示の範囲内に入ると意図され、またそれは、本開示を考慮して、それらの変形例をどのようにして車両用シートに組み込むかを、当業者に容易に明らかにするだろう。
【0049】
とりわけ、上記シート要素がシートバックである代わりに座面部である場合、それにもかかわらず、上記ヒンジ機構410、412は、車両用強化部材30(図1参照)を上記シートバック400と相互連結するだろう。この構成では、第2の車両用強化部材30はなくてもよい。その代りに、車両用強化部材30は、座面部の全幅に伸長してもよい。
【0050】
図4Bは、後面衝撃の場合における上記車両用強化部材の応答を図示する。矢印Aは、着座者の慣性の動きの方向を示す。上記車両用強化部材300、402の断面は、矢印Cの方向よりも矢印A(及び同様に図2の矢印B)の方向に広い。従って、この車両用強化部材300、402は、矢印Y及びC(矢印Yは、図4Bが表示されるページの外まで伸長する)を含む平面内よりも矢印Y及びB(図2参照)を含む平面内で発生する力に対して、より大きな剛性と力の吸収を提供する。この理由のために、捩れ荷重下の上記車両用強化部材300、402の応答と比較した場合、矢印Aの方向への同程度の荷重下での応答(例えば変形)はずっと小さい。
【0051】
図5A~5Dは、車両用強化部材を形成するための方法500を図示し、この方法は、概して、工程502(図5A~5C):繊維強化材料(CFRM)のシート504を形状規定部材506の形状に一致する一致工程、及び工程508(図5D):上記CFRMシート504の第1縁部510をそのCFRMシート504の第2縁部512に接着する接着工程であって、それにより上記車両用強化部材の上記閉断面部を形成する接着工程を含む。
【0052】
工程502は、繊維強化材料のシート504を形状規定部材506の形状に一致する一致工程を含む。換言すれば、その繊維強化材料504が形状規定部材506の周囲にモールドされ、その結果、繊維強化材料504の内周面が形状規定部材506の外周面の形状に一致され、それはしばしば業界で「賦形」と呼ばれる。実質的に均一な厚さを有する繊維シート504を伴うと共に、形状規定部材506の形状にその繊維シート504の形状を一致する賦形工程を伴う。例えば、もし上記形状規定部材506が先細りであれば、図5A~5Dに図示する方法によって製造される車両用強化部材は先細りになるだろう。同様に、先細りの形状規定部材506を用いる場合にのみ、図5A~5Dに図示する方法によって先細りの車両用強化部材が製造され得る。この繊維強化材料は、複合母材中の連続繊維のシートで構成される。こうした材料は、連続繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRT)及びとりわけポリアミド化合物及び他のエンジニアリング熱可塑性プラスチック、又はエポキシ系樹脂中の連続繊維のシートを含む。幾つかの実施の形態では、上記CFRMは、熱可塑性プラスチックである。ウエブ又はシェル408が形成される場合の材料は、上記2つの間の接着を促進するように、上記CFRT母材の樹脂で両立すべきである。
【0053】
上記形状規定部材506は、上記車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する。上記CFRMシートは、形状規定部材506の外周面の周囲にモールドされる。そういうものとして上記形状規定部材は、その形状を上記CFRMシートの内容積に授ける。
【0054】
この場合には、上記形状規定部材506は、一般的に、図5A~5Dに示すように、斜角を有する長方形又は台形断面を有する。しかしながら、例えば、図7に図示するような、また工学的要求によって決定されるような他の断面も充当することができる。
【0055】
上記CFRMシート504の形状規定部材506への一致工程は、第1型部材514をCFRMシート504と接触すること、及びその第1型部材514と形状規定部材506を、それらの間のCFRMシート504を伴って一緒にすることによって達成される。その際、CFRMシート504は、形状規定部材506の形状に少なくとも部分的に一致する。
【0056】
上記第1型部材514は、傾斜面516を備える。この傾斜面516は、鉛直方向に傾斜している -鉛直方向は図5Aに矢印Dで図示される。上記CFRMシート504を形づくるために、それは傾斜面516上に搭載される。この面516の傾斜は、幾つかの機能を果たす。第1に、それは、上記CFRMシート504が第1型部材514と形状規定部材506の間に捉えられるまでの位置にそれを維持するための僅かな摩擦を提供する。第2に、この傾斜面516には、窪み部又は凹部518がある。図5Bに示すように、この窪み部518の上方隅部524(即ち、この窪み部518の隅部は、鉛直方向に関する窪み部518の最上点を含む)からCFRMシート504の一部520が飛び出す場合、その一部520は、重力により、形状規定部材506の方に賦形するだろう、換言すれば、その一部520は、形状規定部材506との一致に向けて少なくとも部分的に移動する。これは、上記CFRMシート504の形状規定部材506への一致の実質的な完遂の工程を補助する。
【0057】
従って、図5Aに示す工程は、形状規定部材506と第1型部材514の間のCFRMシート504の一部のプレス加工前に、傾斜面516上へのCFRMシートの搭載を含む。
【0058】
上記形状規定部材506及び第1型部材が一緒にされたとき、上記CFRMシート504は、図5Bに示す上記窪み部508内に受け入れられる。この窪み部518は、上記形状規定部材506の形状に協調して形成されている。そうしたものとして、この窪み部518の形状は、上記形状規定部材506の形状に密に近似し、両者の間には、ほぼ上記CFRMシート504の厚さの許容量がある。従って、形状規定部材506がCFRMシート504を窪み部518内に押し込んだときに、そのCFRMシートは、形状規定部材の形状に部分的に一致される(一致部分を符号520で示す)。
【0059】
とりわけ、上記第1型部材514と形状規定部材506が図5Bに示す配置になったとき、一致部分520は、第1型部材514及び形状規定部材506から突出する。この配置が達成されると、上記CFRMシート504は第1型部材514上に配置又は載置され、その結果、CFRMシート504は上記窪み部518の上方隅部524に重合する。図5Bに示す工程のあと、図5C及び5Dに示す、部分522は、上記CFRMシート504の接着のような更なる工程を実行しやすく後に残る。
【0060】
図5Cに図示するように、上記部分520を形状規定部材506の形状に一致するために、第2型部材526が部分520に接触される。窪み部518の形状を伴うようにして、第2型部材526の面528は、形状規定部材506の形状に密に一致するように形成されている。部分520は、上記車両用強化部材の閉断面部を形成するために一緒に接着される2つの縁部510、512の1つである第1縁部510を含む。
【0061】
上記第2型部材526は、上記形状規定部材506に対して上記第1縁部510をプレス加工するために、その第1縁部510に接触し得る。選択的に、図5Cに示すように、その第1縁部510は、第2型部材526に接触しなくてもよい。その代りに、上記CFRMシート504は、上記第1型部材514及び第2型部材526を用いた形状規定部材506への一致の後に、部分520が形状規定部材506の実質的に平坦な表面542に沿って伸長するように第1型部材上に配置され得る。これは、前記表面が、第2型部材526の先導隅部530のすぐ内側に上記第2型部材526の上記表面528の一部と平行にあるか、又は接線方向である場合に達成され得る。これは、上記第2型部材526が上記第1縁部510に接触することなく、その第1縁部510を上記形状規定部材506に対して配置することを可能とする。従って、この第1縁部510は、上記第2型部材526が上記CFRMシート504と接触したままの場合であっても、むき出しのままであり、また上記第2縁部512と接着することができる。
【0062】
図5Dに示すように、上記CFRMシート504は、第3型部材532と接触する。この第3型部材532は、接着の間中、上記第1縁部510と第2縁部512を接触状態に維持するために、第1縁部510に対して第2縁部512を押し付ける。この第3型部材532の接触面534は、再び、上記形状規定部材506の形状に一致するように形成されている。
【0063】
上記第2型部材526とは対照的に、この第3型部材は、接着の間中、第1縁部510に対して第2縁部512を押し付けるために、第2縁部512に接触する。接着をなすために、それらの縁部510、512は、重合配置にあるか、又はともかく接着中に継ぎ目が形成される位置にある。
【0064】
上記第2型部材526及び第3型部材632は、上記第1型部材514に対して個別に架設され得る。図5C及び5Dに示す実施の形態では、それらは、往復動装置(図8の符号812参照)に取付けられている。この往復動装置800は、連続して、上記第2型部材526を上記CFRMシート504に接触させ、その後、その第2型部材526をCFRMシート504との接触から離し、更に上記第3型部材532をCFRMシート504と接触させる。従って、単一の機構的な往復動装置800が、上記第1型部材514に沿った第2及び第3型部材526、532の摺動を制御する。
【0065】
上記第1型部材514上に搭載されるとき、上記CFRMシート504は、そのCFRMシート504に損傷を与えることなく、上記形状規定部材506の周りにモールド可能な温度に予め加熱される。モールドの間中、このCFRMシート504は、典型的に冷却するだろう。第1縁部510を第2縁部512に接着するために、それらの部分510、512の温度を十分に高く確保する必要がある。これは、特に、例えば共同密着接着、換言すれば類似する2つの材料の接着、及び溶融接着の場合である。
【0066】
上記第3型部材532は、表面534の近傍に加熱要素536を有する。この加熱要素536は、電気的負荷の下で加熱するフィラメントを有する。それに代えて、この加熱要素は、過熱液体を受け入れるための導管のようなもう1つの加熱装置を有し得る。この加熱要素536は、上記表面534を上記CFRMシート504の必須接着温度にする。選択的に、上記形状規定部材506及び/又は型部材514、526は、CFRMシート504の温度を維持するように制御可能に加熱され得る。
【0067】
ひとたび接着がなされると、上記CFRMシート504は、形状が固まるために硬化又は冷却される。硬化又は冷却の間中、例えばCFRMシート504が部分的に硬化又は冷却されるとき、そのCFRMシート504から上記形状規定部材506を引き抜くことができる。もし、この形状規定部材506の引き抜きが速すぎると、換言すれば、形状規定部材506なしにCFRMシート504が自身の形状を十分に維持するほど固まる前では、そのCFRMシート504は崩壊するかもしれない。もし、形状規定部材506を引き抜こうとする試みが遅すぎると、CFRMシート504が硬化又は冷却した車両用強化部材の高い強度及び剛性は、形状規定部材506の引き抜きを不可能にする。
【0068】
この硬化又は冷却の速度を正確に制御するために、上記形状規定部材506の温度が制御され得る。形状規定部材506の温度の制御は、硬化又は冷却の間中のCFRMシート504の温度を調整する。この目的のために、形状規定部材506は、加熱及び/又は冷却要素536を備える。この加熱及び/又は冷却要素は、フィラメントを備えることができ、又は、形状規定部材506の温度を制御するための冷却材及び/又は放射材が通過する連続した導管又はチャネルを備えることができる。
【0069】
前述の硬化又は冷却の工程は、能動的な冷却であり、その硬化又は冷却工程は能動的に制御される。幾つかの実施の形態では、この硬化行程は、受動的であってもよいし、また単純に、雰囲気への及び上記形状規定部材506内への熱の消散を通じたCFRMシート504の冷却の待機を含んでもよい。
【0070】
幾つかの実施の形態では、上記形状規定部材は、上記車両用強化部材を含む構成要素の一部を形成してもよい。幾つかの実施の形態におけるこの形状規定部材は、ひとたび形成されたCFRM車両用強化部材の閉断面から引き抜く必要はない。
【0071】
図3を参照して説明されるように、図5A~5Dに関して記述される方法は、上記CFRMシート504への金属取付具538の接着を含んでもよい。この金属取付具538は、上記CFRMシート504からなる車両用強化部材の、座面部の上記チルト調整部材のような他の構造への取付けを可能とする。
【0072】
この金属取付具538は、リベット止め、ボルト止めのような既存の方法を用いて、又は、締り嵌め可能に車両用強化部材を形成することによって取付けることができる。図5Dでは、この金属取付具538は、チルト調整機構のチルト調整部材を含み、また接着剤を用いて前処理されている。この接着剤は、金属取付具538の金属に適合し、それにより金属取付具538に密着して接着する。この接着剤はまた、上記CFRMシート504の複合母材とも相性が良い。従って、図5Dに示すように、前処理された金属取付具538をCFRMシート504に密着して接着することができる。
【0073】
上記CFRMシート504との接着のための十分な温度に上記金属取付具538を維持するために、金属取付具538は、加熱パッド540又は産業で一般に使用される加熱プレス及び本開示の観点において当業者に明らかになるであろう本方法に有用なものにより、CFRMシート504に対して加圧される。この加熱パッド540の温度は、密着接合の間中、金属取付具538の必要又は最適結合温度を維持するように制御される。
【0074】
図6は、図5A~5Dを参照して記述された上記方法に従って形成されたCFRMシート600とチルト調整部材602(図1の符号18も参照)の結合の詳細例を示す。このCFRMシート600は、上記チルト調整部材602に形成されたリブ又はディンプルを受け入れるためのノッチ(位置604)が形成されている。このチルト調整部材602はまた、そのチルト調整部材602の前及び後表面上に補強フランジ606、608を含む。他の種々のブラケットシステムを用いてもよく、上記形状規定部材の形状及びCFRMシートの構造(例えばノッチ)がそれらのブラケットシステムを収容する。上記チルト調整部材602は、図6に示すようにCFRM構造600と外部であっても、又はCFRM構造600の内面(図示せず)とであっても結合することができる。このチルト調整部材602と構造600の配置は、工学的要求によって決定されるだろう。
【0075】
図7は、本教示に係る車両用強化部材700の代替の実施の形態を提供する。この部材700は、実質的にL型形状の閉断面部702を有する。図1の車両用強化部材26と同様に、部材700は、その下端704から離れる方に先細りである。この先細りは、参照番号706、708、710、712で示されるL字形状閉断面の次第に減少する断面積によって示される - これらの断面は、夫々が部材700を通過する箇所D-D、C-C、B-B、A-Aで得られている。
【0076】
図8は、車両用強化部材を作り上げるためのシステム800を示す。このシステム800は、形状規定部材804、第1型部材514、及び接着装置802を含む。
【0077】
この形状規定部材804は、上記第1型部材514の窪み部808内にCFRMのシートを押し込むために、第1型部材514に対して可動である。この形状規定部材804は、上記窪み部808内への形状規定部材804の動きを案内するロボットの(又は、その他、自動化された又は遠隔操作される)腕部806上に架設される。
【0078】
上記接着装置802は、往復動フレーム812によって第1型部材514に可動に架設される。この往復動フレーム812は、前述のように、上記CFRMシートの第1及び第2縁部を一緒に接着するために、接着装置802を形状規定部材804に向けて動かす。
【0079】
このシステム800は、第2型部材526を含む。この第2型部材526は、再び、往復動フレーム812によって可動に、第1型部材514に架設される。この往復動フレーム812の動きを通じて、第2型部材526が上記CFRMシートと接触するように、第2型部材526は可動である。
【0080】
上記第3型部材532は、上記第1及び第2縁部を接着するための接着装置802を備える。ここでは、接着装置802は、第3型部材532の一致表面534、及びその表面534の裏側の加熱システム810を備える。この加熱システム810は、上記CFRMシートの接着温度まで上記表面534を加熱する。
【0081】
上記往復動装置又はフレーム812は、この場合には、第1型部材514のフレーム814に取付けられることによって、第1型部材514に取付けられる。この往復同装置812は、表面(例えば図5Aの傾斜面516)に沿って第2及び第3型部材526、532を摺動で動かす。往復動中、この往復動装置812は、使用時、連続的に、上記第2型部材526をCFRMシート(図示せず)の上記第1縁部に接触させ、その後、その第2型部材526をそのCFRMシートとの接触から離し、更に上記第3型部材532を上記CFRMシートの第2縁部と接触させてその第2縁部を上記第1縁部に接着する。
【0082】
図9は、オーバモールド工程の間中に使用されている形状規定部材900を示す。この形状規定部材900は、上記車両用強化部材904の内容積の形状に一致する形状のコア902を有する。この形状規定部材900は更に、上にコア902が配置されるシャフト906を含む。このシャフト906は、形状規定部材900を掴むための部位を提供し得る。
【0083】
上記形状規定部材は更に、位置決め子908の対を有する。この位置決め子908は、上記シャフト906上に配置される。この位置決め子908は、シャフト906に沿った間隔を設けて上記コア902から離れている。形成された車両用強化部材904と一緒にオーバモールド(例えば射出成型)型(型半分又は型部910によって形成される)内に上記形状規定部材900が配置されているとき、これら位置決め子908は溝914内に位置し、それにより、溝914に対して形状規定部材900を正確に位置決めする。とりわけ、位置決め子908の三角形状及び溝914の協調形状は、それらの位置決め子908の夫々が溝914内に中心に正確に置かれることを確保する。
【0084】
このようにして上記コア又は部材902は、空洞部924の中央に置かれ得る。しかしながら、このコア又は部材902は、同様に、上記部材904の上にオーバモールドされるべきシェル又はウエブの必要な厚みと位置が達成されるために型910、912に対して中央でない位置又は他の位置に配置され得る。
【0085】
上記シャフト906は、スプリングの一端916で付勢され、その結果、上記形状規定部材900を型910、912内で容易に位置決めすることができるが、スプリング918の上記端916が支持台910に対して偏っているときに、射出成型又はオーバモールド工程の間中の長手方向の遊びが防止される。
【0086】
上記型の半分910、912は、型空洞924を一緒に形成する窪みに形成されている。この形成された空洞924は、上記シャフト906及び位置決め子908の形状に密に対応するが、半分910、912が合わされたとき、上記車両用強化部材904と型の間に隙間922が残る。この隙間922は、内部に射出されるであろうオーバモールド材料に一致する容積を形成する。図5A~5Dを参照して記述される型部材は、単一のモールド工程で単一の車両用強化部材を形成するだけであり得る(第1型部材に沿ってそこかしこに配置された窪み部を伴って任意個数が形成されるけれども)一方、本モールド工程は、例えばシートバックフレームを形成するために上記型空間924内に配置されるべき2つの予め形成された車両用強化部材を要求するだろう。
【0087】
この工程を用いて、上記形状規定部材は、上記ウエブ又はシェル408のオーバモールドの間中、形成された車両用強化部材中にとどまる。型(910、912)内への加圧された溶融プラスチックの射出の間中、予め形成された車両用強化部材904の形状は、上記形状規定部材900内に維持される。これはまた、もし、上記形状規定部材900内に冷却システムが設けられるならば(図5Dの符号536参照)、それはまた、上記車両用強化部材904の周囲の領域内で射出成型プラスチックの冷却にも用いることができることを意味する。これはまた、完成したオーバモールド組立品が冷えて寸法安定性を維持する間、上記形状規定部材900の引き抜き(実際に、それらが引き抜かれるべき場合)を容易にするために、上記型(910、912)の内部から上記射出成型プラスチック及び車両用強化部材904の冷却速度を制御することができることを意味する、換言すれば、複数の車両用強化部材が上記形状規定部材の引き抜きを許容する十分な剛性まで硬化又は冷却されるまでの間、それらの崩壊が防止される。この型(910、912)は、同様に、冷却システムが設けられ得る。種々の実施形態によって、自在な加熱/冷却を得るための熱管理システムが設けられ得る。
【0088】
種々の実施の形態によれば、上記車両用強化部材は、例えば車両用強化部材の長手方向に先細りである。
【0089】
種々の実施の形態によれば、先細りの車両用強化部材が形成され得る。
【0090】
種々の実施の形態によれば、上記形状規定部材は、形状規定部材の長手方向に先細りであり得る。
【0091】
種々の実施の形態によれば、上記形状規定部材は、車両用強化部材の閉断面部の先細りの内容積を規定し得る。
【0092】
以下の例は、更なる実施の形態に属する。
【0093】
例1は、車両用強化部材を形成するための方法であり、この方法は、繊維強化材料(CFRM)の平面体(CFRM体)を形状規定部材の形状に一致させる工程であって、上記材料は複合母材内に連続繊維を有し且つ上記形状規定部材は車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する、一致工程と、上記CFRM体の第1の縁部とCFRM体の第2の縁部を接着して、それにより上記車両用強化部材の上記閉断面部を形成する接着工程と、を有する。
【0094】
例2では、例1の主題が更に、上記一致されたCFRMを少なくとも部分的に硬化する硬化工程と、上記車両用強化部材の上記閉断面部の上記内容積から上記形状規定部材を引き抜く引き抜き工程と、を有し得る。
【0095】
例3では、例1又は例2の何れかの主題が更に、上記CFRM体の一致工程は、第1型部材を上記CFRM体に接触する工程、及び上記CFRMが上記形状規定部材の形状に少なくとも部分的に一致するように、上記第1型部材及び形状規定部材を、それらの間に上記CFRM体を伴って、一緒にする工程を含み得る。
【0096】
例4では、例3の主題が更に、上記第1型部材は、鉛直方向に傾斜して配置された表面を有し、上記第1型部材を上記CFRM体に接触する工程は、上記傾斜表面上への上記CFRM体の装着工程を含み得る。
【0097】
例5では、例3又は4の主題が更に、上記第1型部材は、上記形状規定部材の形状と協調する形状の窪み部分を有し、また上記第1型部材及び形状規定部材を一緒にする工程は、上記窪み部分及び形状規定部材間に上記CFRM体を配置する工程を有することを含み得る。
【0098】
例6では、例5の主題が更に、上記第1及び第2縁部が上記窪み部分の外側に突出するように上記CFRM体を配置する工程を含み得る。
【0099】
例7では、例6の主題が更に、上記第1縁部の上記第2縁部への接着工程は、上記第1縁部及び第2縁部の1つを上記形状規定部材に寄せしめるように上記CFRM体を第2型部材及び第3型部材と個々に接触させ、上記第1及び第2縁部が互いに重なり合う工程を有することを含み得る。
【0100】
例8では、例7の主題が更に、上記第3型部材が加熱されることを含み得る。
【0101】
例9では、例8の主題が更に、上記第3型部材は、上記CFRMの接着温度まで加熱されることを含み得る。
【0102】
例10では、例7乃至9の何れか1つの主題が更に、上記第2型部材及び第3型部材は、往復動装置に取付けられ、上記往復動装置は、連続して、上記第2型部材を上記CFRM体に接触させ、その後、上記第2型部材を上記CFRM体との接触から離し、更に上記第3型部材を上記CFRM体と接触させることを含み得る。
【0103】
例11では、例1乃至10の何れか1つの主題が更に、金属取付具を上記CFRM体に密着して接着する接着工程であって、上記金属取付具は、上記車両用強化部材を他の構造に取付可能とする、接着工程を含み得る。
【0104】
例12では、例1乃至11の何れか1つの主題が更に、上記車両用強化部材は長手方向に延在し、且つ上記方法は更に、上記車両用強化部材の上記長手方向に上記形状規定部材を引き抜く工程を含み得る。
【0105】
例13では、例1乃至12の何れか1つの主題が更に、上記接着工程は、上記第1縁部と上記第2縁部とを融解によって接着する工程を備えることを含み得る。
【0106】
例14では、例2乃至13の何れか1つの主題が更に、上記車両用強化部材の硬化速度を調整するために上記形状規定部材の温度を制御する工程を含み得る。
【0107】
例15では、例14の主題が更に、上記形状規定部材の温度の制御工程は、上記形状規定部材の温度を制御し且つそれにより上記CFRM体の温度を調整するために上記形状規定部材内の1つ以上のチャネルを通じて冷却材及び/又は放射材を流す工程を備えることを含み得る。
【0108】
例16は、上記何れかの方法を用いて製造された車両用強化部材において、上記車両用強化部材は、閉断面部、及び上記第1及び第2縁部を結合する継ぎ目を有する。
【0109】
例17は、車両用シートの補強構造部材の製造方法であって、上記車両用シートは、座面部及びチルト調整機構によって上記座面部に連結されたシートバックを有し、上記チルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記2つのチルト調整部材の1つが上記座面部及びシートバックの夫々に存在し、この製造方法は、例1乃至15の何れか1つの方法を用いてシート要素の車両用強化部材を形成する形成工程であって、前記シート要素が上記座面部及びシードバックの1つである、形成工程と、上記2つのチルト調整部材の1つを上記車両用強化部材に取付ける取付工程であって、上記車両用強化部材を上記2つのチルト調整部材の他方に連結し、それにより上記座面部及びシートバックを連結するための取付工程と、を有する製造方法である。
【0110】
例18では、例17の主題が更に、上記取付工程が接着剤を用いて達成されることを含み得る。
【0111】
例19では、例17又は18の主題が更に、上記シート要素は上記シートバックであり、上記チルト調整機構は、上記シートバックの対向する2つの側面の夫々の上にヒンジ機構を有し、上記ヒンジ機構の1つが、上記チルト調整部材を有し、且つ他方のヒンジ機構も、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記製造方法は、例1乃至15の何れか1つの方法に従って更なる車両用強化部材を形成する形成工程であって、上記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材はそれぞれ、上記個々のヒンジ機構からのチルト調整部材を有すると共に、上記個々のヒンジ機構からその個々のヒンジ機構から離れた点まで前記シートバックの前記2つの対向する側面に沿って伸長する、成形工程と、上記車両用強化部材及び更なる車両用強化部材の上にシェルをオーバモールドするオーバモールド工程であって、上記シェル、車両用強化部材及び更なる車両用強化部材を一体的に結合するオーバモールド工程とを有することを含み得る。
【0112】
例20は、座面部と、シートバックと、上記シートバックを上記座面部に連結するチルト調整機構とを有する車両用シートであって、上記チルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記2つのチルト調整部材の1つが上記座面部及びシートバックの夫々の上に存在し、上記シートバック及び座面部の1つであるシート要素は、請求項1乃至15の何れか1つに記載の方法を用いて形成された少なくとも1つの車両用強化部材を含み、上記少なくとも1つの車両用強化部材は、上記チルト調整部材の1つを含み、そのチルト調整部材の1つは、他方のチルト調整部材に可動に連結され、それにより上記座面部及びシートバックが連結される、車両用シートである。
【0113】
例21は、座面部と、シートバックと、上記シートバックを上記座面部に連結するチルト調整機構とを有する車両用シートであって、上記チルト調整機構は、上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、上記2つのチルト調整部材の1つが上記座面部及びシートバックの夫々に存在し、上記シートバック及び座面部の1つであるシート要素は、請求項19又は20に記載の製造方法を用いて形成され、上記少なくとも1つの車両用強化部材は、上記チルト調整部材の1つを含み、そのチルト調整部材の1つは、他方のチルト調整部材に可動に連結され、それにより上記座面部及びシートバックが連結される、車両用シートである。
【0114】
例22では、例20又は21の主題が更に、上記チルト調整機構は2つのヒンジ機構を有し、1つのヒンジ機構が上記シート要素の対向する側面の夫々に存在し、上記チルト調整機構は、上記2つのヒンジ機構の1つの一部を形成し、他方の上記ヒンジ機構も上記座面部に対して上記シートバックのチルト調整を許容するために可動に連結された互いに対して可動な2つのチルト調整部材を有し、またそれぞれの車両用強化部材は、それぞれの上記ヒンジ機構の上記2つのチルト調整部材の1つを有することを含み得る。
【0115】
例24では、例20乃至23の何れか1つの主題が更に、各車両用強化部材の上記閉断面部の断面は、実質的に楕円形であることを含み得る。
【0116】
例25は、車両用強化部材を作り上げるシステムであって、上記車両用強化部材の閉断面部の内容積を規定する形状規定部材であって、上記車両用強化部材は、複合母材中に連続繊維を含む連続繊維強化材料(CFRM)の平面体(CFRM体)を使用して形成される、形状規定部材と、第1型部材であって、上記第1型部材及び形状規定部材は、それらの間の上記CFRMを伴って、上記形状規定部材に上記CFRM体が少なくとも部分的に一致するために一緒にされる、第1型部材と、上記第1型部材に可動に架設され且つ上記車両用強化部材を形成するために上記CFRM体の第1縁部及び第2縁部を合わせて接着するように使用時に上記形状規定部材に向けて移動可能な接着装置と、を有するシステムである。
【0117】
例26では、例25の主題が更に、上記第1型部材に可動に架設された第2型部材を有し、使用時には、上記形状規定部材と協働して上記CFRM体の第1縁部をそのCFRM体に接触せしめるように上記第2型部材が移動可能とされることを含み得る。
【0118】
例27では、例26の主題が更に、第3型部材を有し、上記第2型部材及び第3型部材は、上記第1型部材に取付けられた往復動装置に架設され、上記往復動装置は、使用時に、上記第2型部材を上記第1縁部に接触させ、その後、上記第2型部材を上記第1縁部との接触から離し、更に上記第3型部材を上記CFRM体の第2縁部と接触させてその第2縁部を上記第1縁部に接着することを含み得る。
【0119】
広く記述される本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、上記特定の実施の形態に示されるように、本発明に対する多数の変形例及び/又は変更例がなされ得ることが、当業者に認識されるだろう。従って、本実施の形態は、図示されるものに限定されることなく、すべての点で考慮されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9