(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】真空プラズマ炉
(51)【国際特許分類】
G21B 1/11 20060101AFI20220114BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G21B1/11 F
H01R4/58 B
(21)【出願番号】P 2019515367
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 RU2017000639
(87)【国際公開番号】W WO2018063026
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
【住所又は居所原語表記】B. Ordynka st., 24 Moscow, 119017 Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】コルガノフ、ブラディミル・ユリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ポドゥブニー、イバン・イゴレビッチ
(72)【発明者】
【氏名】キリロフ、セルゲイ・ユリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】トロフィモビッチ、ピョートル・ドミトリエビッチ
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509472(JP,A)
【文献】ロシア国登録特許第2579444(RU,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1/11
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置であって、
前記装置は、互いに入れ子になっている複数の導電プレートの第1のスタックと、前記複数の導電プレートの前記第1のスタックと同一の第2のスタックとを備え、
前記第1のスタック及び第2のスタックの各々は、前記核融合炉チャンバの内側に位置する前記構成要素への取り付けのためのフランジ、及び前記真空容器への取り付けのためのフランジ
に接合されており、
前記第1のスタック及び第2のスタックにおける各導電プレートは両フランジに接合されており、各導電プレートは少なくとも一周期を有す
る対称波の形状を有し、
前記第1のスタック及び第2のスタックは、前記両フランジの対称中心を通る線に関して鏡面対称に設置されており、
前記第1のスタック及び第2のスタックのための両フランジは、前記核融合炉チャンバの内側に位置する前記構成要素と前記真空容器にそれぞれ接合されて
おり、
前記第1のスタック及び第2のスタックにおける前記複数の導電プレートは、前記対称波の母線が、前記核融合炉チャンバの内側に位置する前記構成要素と前記真空容器にそれぞれ接合されている前記両フランジと平行な平面内にあるように、配置されていることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱核融合に関し、核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置において使用されうる。
【背景技術】
【0002】
核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置が知られており、この装置は、1つのスタックに入れ子になっており、チャンバの内側に位置する構成要素および真空容器への取り付けのためのフランジ間に設けられた異なる方向を向いた表面領域を有する導電プレートを備える(国際原子力機関(IAEA)、ウィーン、2002年、ITER TECHNICAL BASIS, ITER EDA Documentation series No.24, Plant Description Document, Chapter 2.3, Page 10 - 2.3.4.3 Electrical Connection, Figure 2.3.4-4 One Strap of the Electrical Connection)。
【0003】
この既知の装置では、異なる方向を向いた表面領域を有するプレートの表面はL字形であり、穿孔されている。このプレートは、単一のU字型のスタックを形成するために互いに入れ子になっている。この既知の装置では、プレート内の穿孔および屈曲に起因して、導電プレートのスタックは、側部の平面に垂直な方向において十分な加工しやすさを提供しない。さらに、主(トロイダル)磁場成分へと電流を垂直に導く鉛直部分を導電プレートが有する限り、このことは、より高い電磁力が装置に作用する結果になりうる。
【0004】
既知の装置の欠点は、プラズマ崩壊の際、電流がそれを通って流れるとき、制限された電流負荷容量(current loading capacity)を有することである。磁場へと垂直に流れる電流(トカマク型の磁場トロイダル成分の最大値は約9Tに及びうる)は、数十キロニュートンに及びうる大きな力を装置に加える。磁場に対して垂直である導体には、最大の力が作用する。したがって、既知の装置の電流負荷容量は、導電プレート要素のスタックの加工しやすさおよび核融合炉の磁場トロイダル成分によって、ならびに磁場に対して垂直な装置の導電性領域の存在によって制限される。
【0005】
本発明に最も近い一連の特徴を有するのは、核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置であり、この装置は、互いに入れ子になっており、チャンバの内側に位置する構成要素および真空容器への取り付けのためのフランジに接続された、少なくとも1つの全周期(full period)を有する対称波の形状の導電プレートを備える(ロシア連邦特許2579444、IPC G21B1/17、2016年10月4日公開)。
【0006】
この既知の装置の欠点は、非永続(交流またはパルス)電流がそれを通って流れる間の低減された電流負荷容量である。このことは、スタックの中心の導電プレートが、スタックの外側のプレートよりも著しく少ない非永続電流を伝えることによって説明することができ、これは表面効果または表皮効果によってもたらされる。既知の装置のさらなる欠点は、プレートとフランジとの間の連結(移行)地点、すなわち電流の供給および排流場所に最も近接した地点で起こる、導電プレートの電流密度の局所増加に伴う低減された電流負荷容量である。このことは、プレートの対称波の母線(generatrix)がフランジ接触面に対して垂直な平面上にあるように、スタック内のプレートが配置されることによって説明することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置において、非永続(交流またはパルス)電流が導電プレートを通って流れるとき、該装置の電流負荷容量を増大させることである。
【0008】
本発明の技術的結果は、装置の全ての導電プレートに対して、実質的に同一の表皮効果を保証することである。さらに、このことの技術的効果は、最外のプレートと中央のプレートとの間の引力(一方向電流を通す導体間の引力)を低減させ、各導電プレートにおいて均一な電流密度分布を提供することである。
【0009】
該技術的効果は、核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置であって、互いに入れ子になっており、チャンバの内側に位置する構成要素および真空容器への取り付けのためのフランジに接続された、少なくとも1つの全周期を有する対称波の形状の導電プレートを備えている、本発明にしたがった既知の装置に、導電プレートの第2の同一のスタックが設けられており、該スタックが、フランジの対称中心を通る線の周りに鏡面対称に設置されることによって達成される。
【0010】
さらに、スタックされた複数のプレートは、導電プレート波の母線がフランジ接触面と平行な平面上にあるように配置される。
【0011】
一般に、スタック内のプレートの数は、装置内のそれよりも2倍未満なので、装置内の2つのスタックは、最外の導電プレートと中央の導電プレートとの間の引力(一方向電流を有する導体の引力)を低減させる。鏡面対称に設置された2つのプレートスタックおよび、フランジ接触面に平行な平面上の母線に沿って設置された複数のプレートは、表皮効果に伴うプレート間の不均等な電流分布を最小限に抑えることを可能にする。さらに、本発明にしたがった装置では、Z字型の接続方式を実現することが可能であり、よって、プレート間での可能な限りの均等な電流分配を保証する。該技術的効果は、従来技術と同じ負荷容量を維持しながら、装置の負荷容量を増大させる、または装置の寸法を縮小させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の主題は、図面によって説明される。
【
図1】
図1は、核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を、炉の真空容器に電気的に接続するための装置(側面図)である。
【
図4】
図4は、装置を通るZ字型の電流の流れの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置は、導電プレート1の同一の2つのスタックと、真空容器4およびチャンバの内側に位置する構成要素5へのそれぞれの取り付けのためのフランジ2、3を備える。該導電プレートのスタックは、フランジ2、3の対称中心を通る線の周りに鏡面対称に設置される。複数の導電プレート1は、少なくとも1つの一周期を有する対称波の形状である。設計ニーズに基づき、複数の導電プレート1の表面は、2以上の一周期を有する対称波の形状にされうる。各スタックにおいて、複数の導電プレート1は、舌部および対応する溝部によって互いに入れ子になっており、たとえば機械的接合、ろう付け接合、または溶接接合によって、チャンバの内側に位置する構成要素4への取り付けのためのフランジ2、3に接合されているか、またはフランジと一体化(ひとつなぎに)されている。スタックされた複数のプレート1は、導電プレート1の波形の母線がフランジ2、3の接触面と平行な平面上を通るように配置されている。フランジ2、3には、真空容器4および炉のチャンバ(ブランケット・モジュール)の内側に位置する構成要素5への取り付けのための設置穴が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
装置は以下のように機能する。
【0015】
プラズマが崩壊すると、劇的な表皮効果をもたらす周波数において一定条件下で変化する大きな過渡電流が、チャンバの内側に位置する構成要素5から核融合炉の真空容器4へと排流される必要がある。電流は、チャンバ内に位置する構成要素5から、フランジ2を通って装置内へと流れる。フランジ2から、電流は複数の導電プレート1の2つのスタックを介してフランジ3に向かって装置の内側を流れる。装置から、そしてフランジ3を介して、電流は核融合炉の真空容器4内へと流れる。電流が複数の導電プレート1を介して流れるとき、装置のすべての導電プレート1について、複数の導電プレート1の2つのスタックおよび母線がフランジ2、3の接触面に平行であるために、表皮効果が実質的に均一になりうる。さらに、一方向の電流に伴う最外の導電プレート1と中央の導電プレートとの間の引力は、1つのスタック内よりもむしろ2つのスタック内に集められた導電プレート1の場合の方が小さく、導電プレート1あたりの電流密度分布が均一になる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 核融合炉チャンバの内側に位置する構成要素を炉の真空容器に電気的に接続するための装置であって、前記装置は、互いに入れ子になっており、前記核融合炉チャンバの内側に位置する前記構成要素への取り付けのための、及び前記真空容器への取り付けのためのフランジに接合された、少なくとも1つの一周期を有する対称波の形状の複数の導電プレートを備えており、前記装置には、複数の導電プレートの同一の第2のスタックが設けられており、前記複数のスタックは、前記フランジの対称中心を通る線の周りに鏡面対称に設置されることを特徴とする、装置。
[2] スタックされた前記複数のプレートは、導電プレート波の母線が前記フランジ接触面と平行な平面内にあるように配置されていることを特徴とする、[1]に記載の装置。