(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】圧力パルスを能動的にキャンセルするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20220114BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220114BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20220114BHJP
【FI】
G01N1/02 W
A61B5/08
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2019542586
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018055991
(87)【国際公開番号】W WO2018166928
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ジェレティ ユージーン ピーター
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028551(JP,A)
【文献】特表2014-530701(JP,A)
【文献】特表2000-512414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/031224(US,A1)
【文献】特開平06-101793(JP,A)
【文献】特開平09-126383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
A61B 5/08
G01N 21/3504
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸空気のフローを吸い込むために接続されるポンプ、
前記呼吸空気のフローに応じた空気圧信号を測定するために接続される圧力センサ、
圧力トランスデューサ、
前記圧力センサを通したフローを測定するために動作可能なように接続される電気回路
であり、前記電気回路は、前記圧力センサを読み取り、前記呼吸空気のフローにおける圧力リップルを減少又は除去するために、前記圧力トランスデューサを駆動させ、リップルキャンセル圧力パルスを前記呼吸空気のフローに注入するように動作可能なように接続される、及び前記リップルキャンセル圧力パルスは、前記電気回路により、前記圧力センサにより測定された前記空気圧信号から決定される、電気回路並びに
前記呼吸空気のフローにある標的ガスを監視するために配されるガス成分センサ
を有する呼吸ガスモニタ
装置。
【請求項2】
前記電気回路は、前記圧力センサにより測定された前記空気圧信号をハイパス又はバンドパスフィルタリングすることを含む動作により、前記リップルキャンセル圧力パルスを決定する、請求項1に記載の呼吸ガスモニタ
装置。
【請求項3】
毛細管又はオリフィスを有する収縮部をさらに有する請求項1又は2に記載の呼吸ガスモニタ
装置において、
前記ポンプは、前記収縮部を介して前記呼吸空気のフローを吸い込むため接続される、及び前記圧力センサは、前記収縮部を通した圧力の変化を示す前記空気圧信号を測定するために接続される、呼吸ガスモニタ
装置。
【請求項4】
前記電気回路は、PID制御器
及びマイクロプロセッサの一方を含む、請求項1乃至3の何れか一項に記載の呼吸ガスモニタ
装置。
【請求項5】
前記ガス成分センサ
装置は、
前記呼吸空気のフローを通り赤外線光を伝送するように配される赤外線光源、
前記標的ガスにより吸収される波長を通過させるために、前記赤外線光をフィルタリングするように配されるバンドパスフィルタ、及び
前記呼吸空気のフローを通り伝送され、前記バンドパスフィルタによりフィルタリングされた後の前記赤外線光を検出するように配される光検出器
を含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載の呼吸ガスモニタ装置。
【請求項6】
前記圧力センサは、
(i)前記呼吸空気のフローの流路にある収縮部を通した差圧を測定するために接続される差圧センサ、又は
(ii)前記呼吸空気のフローのゲージ圧力を測定するために接続されるゲージ圧力センサ
の一方である、請求項1乃至5の何れか一項に記載の呼吸ガスモニタ
装置。
【請求項7】
測定領域から呼吸空気を吸い込むように構成されるポンプ、
前記ポンプにより吸い込まれた前記呼吸空気の少なくとも一部が移動する収縮部、
前記収縮部を流れる空気の圧力値を測定する
、及び前記収縮部を流れる空気の差圧信号を測定するように構成される少なくとも1つの圧力センサ
であり、前記収縮部の吸気口及び排気口の各々に置かれる差圧センサを含んでいる前記少なくとも1つの圧力センサ、並びに
前記収縮部を流れる前記呼吸空気にある少なくとも1つの圧力リップルを減少又は除去するように構成されるリップルキャンセル装置
を有する、呼吸ガスモニタにおける圧力リップルを減少又は除去するための装置において、前記リップルキャンセル装置は、
前記圧力センサから前記圧力値を受信し、リップル信号を生成するために、前記圧力信号のAC成分を分離するように構成されるフィルタ、
前記リップル信号からトランスデューサ駆動信号を生成するように構成される制御器、及び
前記トランスデューサ駆動信号から逆位相圧力波形を生じさせ、前記空気にある前記脈動を無効にするために、前記逆位相圧力波形を前記収縮部から前記ポンプに流れる空気に適用するように構成される圧力トランスデューサ
をさらに含んでいる、呼吸ガスモニタにおける圧力リップルを減少又は除去するための装置。
【請求項8】
前記ポンプからの空気のフローを制御するように構成されるフロー制御機構をさらに含み、前記フロー制御機構は、
前記差圧センサから前記差圧信号を受信し、流量誤差信号を生成するために、所望する
流量設定信号から前記差圧信号を差し引くように構成される比較器、
ポンプ制御信号を生成するために、前記流量誤差信号を増幅及び処理するように構成されるポンプ制御器、並びに
ポンプ駆動信号を生成するために、前記ポンプ制御信号をバッファリングする、及び前記ポンプに前記ポンプ駆動信号を伝送するように構成されるポンプドライバ
を含む、
請求項7に記載の呼吸ガスモニタにおける圧力リップルを減少又は除去するための装置。
【請求項9】
前記ポンプドライバは、前記差圧信号が前記所望する流量設定信号よりも小さいとき、前記ポンプの速度を増大させるように構成される、及び
前記ポンプドライバは、前記差圧信号が前記所望する流量設定信号よりも大きいとき、前記ポンプの速度を減少させるように構成される
請求項
8に記載の呼吸ガスモニタにおける圧力リップルを減少又は除去するための装置。
【請求項10】
前記ポンプは、患者から最初に測定領域を通り、次いで前記収縮部を通り空気を吸い込むように構成され、それにより、前記収縮部は前記ポンプと前記測定領域との間に置かれる、
請求項7乃至9の何れか一項に記載の呼吸ガスモニタにおける圧力リップルを減少又は除去するための装置。
【請求項11】
呼吸ガス監視方法において、
ポンプを用いて、測定領域を通る呼吸空気を吸い込むステップであり、前記呼吸空気の少なくとも一部は収縮部を移動している、ステップ、
少なくとも1つの圧力センサを用いて、前記収縮部を流れる空気の圧力信号を測定するステップ、
リップルキャンセル装置を用いて、前記収縮部を流れる前記呼吸空気における少なくとも1つの圧力リップルを減衰させる又は除去するステップ
であり、当該ステップは、リップル信号を生成するために、フィルタを用いて前記圧力信号のAC成分を分離するステップ、制御器を用いて、前記リップル信号からトランスデューサ駆動信号を生成するステップ、及び圧力トランスデューサを用いて、前記トランスデューサ駆動信号から逆位相圧力波形を生じさせ、前記空気にある脈動を無効にするために、前記逆位相圧力波形を前記収縮部から前記ポンプに流れる空気に適用するステップを有する、ステップ、並びに
測定装置を用いて、前記呼気のフローにおける標的ガスを測定するステップ
を有する呼吸ガス監視方法。
【請求項12】
前記標的ガスを測定するステップは、
赤外線光源を用いて前記測定領域を通る赤外線光を放出するステップ、
前記標的ガスの吸収線を含む通過帯域を持つバンドパスフィルタを用いて、前記放出された赤外線光をフィルタリングするステップ、及び
光検出器を用いて、前記放出された及びフィルタリングされた赤外線光を検出するステップ
を有する請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
流量誤差信号を生成するために、比較器を用いて所望する流量設定信号から前記圧力信号を差し引くステップ、
ポンプ制御信号を生成するために、ポンプ制御器を用いて前記流量誤差信号を増幅及び処理するステップ、並びに
ポンプ駆動信号を生成するために、ポンプドライバを用いて前記ポンプ制御信号をバッファリングし、前記ポンプ駆動信号を前記ポンプに伝送するステップ
をさらに含む、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧力信号が前記所望する流量設定信号よりも小さいとき、前記ポンプドライバを用いて、前記ポンプの速度を増大させるステップ、及び
前記圧力信号が前記所望する流量設定信号よりも大きいとき、前記ポンプドライバを用いて、前記ポンプの速度を減少させるステップ
を有する請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下のことは一般的に、監視技術、呼吸技術、圧力の脈動監視技術、圧力の脈動キャンセル技術、ガス濃度測定技術及び関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分流式呼吸ガスモニタ(diverting RGM)としても知られる、サイドストリーム式呼吸ガスモニタ(sidestream RGM)において、サンプルチューブの下方にいる患者からRGM(呼吸ガスモニタ)の測定領域に呼吸ガスのサンプルが吸い込まれ、この測定領域は、これらに限定されないが、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、亜酸化窒素(N2O)並びに例えばハロタン(halothane)、エンフルラン(enflurane)、イソフルラン(isoflurane)、セボフルラン(sevoflurane)及びデスフルラン(desflurane)のようなハロゲン化薬剤の1つ以上の成分の濃度を測定するための様々な技術の何れもが使用され得る。これらのガスの成分の濃度に関する変化のパターンは、患者の治療において臨床上重要である。その結果、様々な状態の診断及び治療に役立つために、監視されるガス濃度の一貫した、正確な時間的記録を提供することが望ましい。この目的のために、ガスのサンプリング方法は、RGMの性能及び精度に大きな影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、患者から測定領域へのガスのフローを作るために、小型のダイヤフラム式ポンプ又は同様の換気(air-moving)装置が使用される。これらの動作の往復運動性質により、そのようなポンプは、サンプルライン、特にポンプの近くで大きな圧力変動、すなわちリップル(ripple)を生じさせる脈動方式で、サンプルガスを移動させる傾向がある。他の種類の機械式の空気ポンプも同様に、ポンプ機構の周期性が原因により、通常は周期周波数又はその倍数で、例えば2倍の周期周波数で圧力リップルを生じさせる傾向がある。その大きさ及び周波数に依存するこれらの圧力変動は、流量測定及びガス濃度測定に干渉するる。
【0004】
これらの圧力の脈動(すなわちリップル)に対処するために以前に使用されていた2つの方法は、(1)脈動を吸収及び減衰させるための空気"リザーバ"を設けて、脈動の振幅を管理可能なレベルまで効率的に下げる方法、及び(2)脈動を減衰させるために、圧力降下の測定値をローパスフィルタリングする方法、を含む。これらの方法は共に欠点を持つ。リザーバ手法は、効果的である一方、なかりの物理的体積を追加し、これは、空間が非常に貴重である場合に欠点であり、このRGMの物理的体積を減らすことが大いに望まれる。
【0005】
ローパスフィルタリング手法は、わずかな物理的体積を追加する、ガスサンプリングシステムにおける圧力の脈動を減衰させる又は除去することを何もしない。脈動は、フローと関連付けられる圧力降下に比べ非常に大きく成り得るので、これは、非常に広い圧力検知範囲を持つセンサが用いられない限り、圧力センサが飽和する危険性を引き起こす。センサが飽和する場合、前記ローパス方法は、流量測定において誤差を生じさせるが、(所望する測定に比べて)広範囲のセンサを選択することは通常、非常に高価な高精度のセンサが選択されない限り、不十分な測定精度となる。さらに、この技術は、減衰しない圧力の脈動が測定領域に現れることを可能にして、ガス濃度の測定に誤差を生じさせる。
【0006】
本明細書に開示される改善は、呼吸ガス監視システム及び方法等の上述した及び他の欠点に対処している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある例示的な例に従って、呼吸ガス監視装置は、呼吸空気のフローを吸い込むために接続されるポンプ、呼吸空気のフローに応じた空気圧信号を測定するために接続される圧力センサ、及び圧力トランスデューサを含む。電気回路は、前記圧力センサを通したフローを測定するために動作可能なように接続される。ガス成分センサは、呼吸空気のフローにおける標的ガスを監視するために配される。
【0008】
もう1つの例示的な例に従って、呼吸ガスモニタにおいて圧力リップルを減衰させる又は除去するための装置が設けられる。この装置は、測定領域から呼吸空気を吸い込むために構成されるポンプ、及びこのポンプにより吸い込まれる呼吸空気の少なくとも一部が移動する収縮部(constrictor)を含む。少なくとも1つの圧力センサは、この収縮部を流れる空気の圧力値を測定するように構成される。リップルキャンセル装置は、収縮部を流れる呼吸空気における少なくとも1つの圧力リップルを減衰させる又は除去するように構成される。
【0009】
もう1つの例示的な例に従って、呼吸ガス監視方法は、ポンプを用いて、測定領域を通る呼吸空気を吸い込むステップあり、前記呼吸空気の少なくとも一部は収縮部を通り移動している、ステップ、少なくとも1つの圧力センサを用いて、前記収縮部を流れる空気の圧力信号を測定するステップ、リップルキャンセル装置を用いて、前記収縮部を流れる呼吸空気における少なくとも1つの圧力リップルを減衰させる又は除去するステップ、及び測定装置を用いて、呼気のフローにおける標的ガスを測定するステップを含む。
【0010】
1つの利点は、空気圧信号における圧力の脈動を取り除くことにある。
【0011】
もう1つの利点は、圧力の脈動のない空気にあるガスを測定することにある。
【0012】
もう1つの利点は、圧力の脈動を取り除くことにより、ポンプにおけるフローを制御することにある。
【0013】
も1つの利点は、呼吸空気にある異なるガスの濃度を測定することにある。
【0014】
以下の詳細な説明を読み及び理解すると、当業者は、本開示の他の利点が分かるだろう。所与の実施例は、これらの利点を何も、利点の1つ、2つ又はそれ以上を提供することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示は、様々な構成要素及び構成要素の配置、並びに様々なステップ及びステップの配置の形式をとってもよい。図面は、好ましい実施例を例示することだけが目的であり、本開示を限定するとは考えるべきではない。
【
図1】ある態様に従う、呼吸ガス監視装置を概略的に例示する。
【
図2】
図1の装置の較正処理のフローチャートを概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
RGMにおいて、呼吸ガスのフローは通例、ガス濃度の記録(すなわち波形)の時間的な歪みを避けるために、比較的一定の速度に調整される。このフローの調整はしばしば、ガスの流路内に収縮部(例えばオリフィス又は毛細管)を導入することにより達成され、ポンプの駆動レベルを制御することは、この収縮部を通した一定の圧力降下を維持するように制御される。この圧力降下は、流量の直接的な関数であるため、一定の圧力降下を維持することが一定の流量を作り出す。しかしながら、ポンプにより誘発される圧力の脈動が存在する場合、圧力降下における脈動の振幅は大きく、フローにより誘発される圧力降下の大きさをさらに超え、これは流量の測定及び制御の制度にとって問題である。
【0017】
サンプルラインにおける圧力の脈動により生じる可能性があるもう1つの問題は、RGMの測定領域にあるガスサンプルに圧力の脈動が現れることである。ガスの濃度の測定は、測定領域にあるガスの温度及び圧力の影響を受け、従って、何れかの大きな圧力の脈動がこれらの測定値の精度に干渉することがある。
【0018】
以下のことは、サイドストリーム式(すなわち分流式)フロー機構を用いる呼吸ガスモニタ(RGM)装置における改良に関し、この機構において、メインの呼吸回路からサイドストリームに、RGM装置に供給するサンプルガスを吸い込むためのポンプが設けられる。このポンプは、フローをサイドストリームに吸い込む負圧("真空")を作り出す。"リップル"の圧力変動成分を重畳した一定又は平均の負圧を作り出すダイヤフラム式ポンプが一般に使用される。平均の負圧は、約1psiとすることができるのに対し、リップルは同等、例えば0.5psiでもよい。他の種類のポンプも、同様に圧力リップルを一般に生じさせる周期的ポンプサイクルを使用して動作する。このリップは、サンプリングチャンバ内に圧力の変動を生じさせる。CO2又は他のガスの測定は圧力に依存するため、リップルは呼吸ガスの測定誤差を生じさせ得る。
【0019】
以下のことは、ポンプにより生じる圧力リップルを減らす又は除去するための音響トランスデューサが設けられる改良されたRGM装置を説明する。幾つかの例示的な実施例において、トランスデューサの制御回路は、収縮部(例えばオリフィス又は毛細管)にわたる圧力降下を測定するための差圧センサ、及びリップルを抽出するために、前記測定された圧力をフィルタリングするためのハイパス又はバンドバスフィルタを含む。ポンプにより生じたリップルを減らす又はキャンセルする対向リップル(opposing ripple)を生成するために、ハイパスフィルタリングされた信号は反転され、前記音響トランスデューサを駆動させるために印加される。トランスデューサは故に、流体ポンプからより均一な圧力の出力を提供するのに使用される。
【0020】
フローを検出する様々な方法が存在し、これらに限定されないが、とりわけ熱線式(hot-wire)、差動時間遅延による超音波検出、及び流路内にある障害を通した圧力降下を測定することを含む。以下のことは、圧力降下/障害方法を説明するが、他のフロー検出技術が適用されることもできる。フロー検出の圧力降下/障害方法を用いる場合、"収縮部"装置が使用される。この収縮部は本質的に、流路内に置かれる何らかの障害である。フローに対する障害は、空気(ガス)がそれを通過するとき、障害の"風下"側に相対的な圧力の降下を生じさせる。この圧力の差は、フローの関数である。圧力センサは、障害の前及び後における圧力の差を測定し、それにより、障害を通過した空気流に応じた及びその空気流を表す電気信号を作り出す。
【0021】
最も一般的な収縮部の種類はオリフィスである。オリフィスは、非常に安価であるが、極めて非線形であり、温度及び様々なガス特性に対し非常に敏感であるという欠点を持つ。収縮部のもう1つの種類は、毛細管である。毛細管は、極めて線形であり、温度及び他の誤差の供給源に対しそれほど敏感ではない。このように用いられる毛細管は時々、"線形フロー変換器"と呼ばれる。
【0022】
ここで
図1を参照すると、圧力リップルを減衰させる又は除去するための構成要素を含む呼吸ガスモニタ(RGM)装置100の概略的な例示を示す。RGM装置100は、患者が呼吸空気のフローを吸い込むために接続される換気装置、例えばダイヤフラム式ポンプ110を含む。一般的なサイドストリームの構成において、この呼吸空気は、鼻カニューレ、気管挿管又は他の患者アクセサリーから吸い出される。RGM装置100は、ポンプにより吸い出される呼吸空気の少なくとも一部が移動するフロー収縮部140も含む。ポンプ110は、呼吸ガスのフローを、患者からサンプルチューブセグメント120aを通り、測定領域130に吸い込むために接続される。この空気は次いで、ポンプ110と測定領域130との間に置かれる収縮器140に流れる。ポンプ110は次いで、収縮器140から前記空気を受け取る。最後に、ポンプ110により吸い込まれた空気は、任意で洗浄装置(図示せず)を通過した後、周囲空気に放出される。サンプルチューブセグメント120bは、収縮部140を通した差圧を測定するための差圧センサ150の接続、及び任意のゲージ圧力センサ(gauge pressure sensor)160の接続を提供する。幾つかの例において、収縮部140は、毛細管又はオリフィスとすることができる。
【0023】
装置100は、収縮部140を通る呼吸空気のフローに応じた空気圧信号を測定するために接続される少なくとも1つの圧力センサ150も含む。例えば、収縮部140を通る呼吸ガスのフローは、収縮部を通した圧力損失を作り出す。この例において、圧力センサ150は、収縮部140の吸気口から排気口までの圧力の減少を測定する差圧センサである。圧力センサ150は、この圧力降下を測定し、収縮部140を通した圧力降下を表す(故に、収縮部を通るガス流の速度を示す)差圧信号175aを作り出すように構成される。幾つかの例において、ポンプ110は、収縮部140を通る呼吸空気のフローを吸い込むために接続され、圧力センサ150は、この収縮部を通した圧力の変化を示す空気圧信号を測定するために接続される。収縮部140及び圧力センサ150は、空気流を一定の速度に保つのに役立つ。制御機構、例えばポンプ制御器(図示せず)は、(前記差圧センサにより測定されるような)収縮部を通した一定の圧力降下を維持するようにポンプ110を駆動させる。装置100は任意で、呼吸空気の圧力を監視するために配されるゲージ圧力センサ160をさらに含む。ゲージ圧力センサ160は、測定領域130の排気口における圧力を測定するように構成され、故に測定領域130内の呼吸空気の圧力を示す。このゲージ圧力測定は任意で、ある時点において測定領域130内に存在している呼吸ガスサンプルにおける標的ガス(例えばRGM装置100がカプノメーターである場合は二酸化炭素)の濃度の計算に使用される。例示的な例において、標的ガス測定装置は、赤外線光源190、光検出器192、バンドパスフィルタ194を含む光学測定装置である。赤外線光源190は、測定領域130を通り、及び特に測定領域130を通る呼吸空気のフローを通り伝送される赤外線を放出するように配される。バンドパスフィルタ194は、標的ガスにより吸収される波長を通過させるように赤外線光をフィルタリングするために配される(すなわち、バンドパスフィルタ194は、標的ガスの吸収線、例えばカプノメーターの場合、二酸化炭素の4.3ミクロンの吸収線を含む通過帯域を持つ。光検出器192は、呼吸空気のフローを通り伝送され、バンドパスフィルタ194によりフィルタリングされた後の赤外線光を検出するために配される。検出された赤外線光の強度に基づいて、例えばマイクロプロセッサ又は他の電子プロセッサ196により、標的ガスの濃度又は分圧が計算される。呼吸空気における標的ガスの濃度が高いほど、より多くの吸収を引き起こし、従って、伝送及びバンドバスフィルタリングされた赤外線光の減少した強度をもたらす。任意で、標的ガスの濃度又は分圧の決定は、測定に影響を及ぼし得る既知の要因、例えばゲージ圧力センサ160により測定されるような呼吸空気の圧力及び/又は、呼吸空気のフローが無いときに測定される較正用赤外線強度を考慮している。電子プロセッサ196は、臨床的に重要な値、例えばカプノグラフィーを実装するRGM装置100の場合、呼気終末炭酸ガス濃度(etCO2: end-tidal CO2)も任意で計算する。標的ガスの測定及び/又は導出される臨床値、例えばetCO2がRGMディスプレイ198(例えば標的ガスの濃度若しくは分圧、及び/又は導出される臨床的な数量、例えばリアルタイムの数値、及び/又は傾向線等を示すLCDディスプレイ)に表示される。それに加えて又はそれに代わって、有線又はワイヤレスの通信リンク(図示されないが、例えば有線又はワイヤレスのイーサーネット(登録商標)リンク、Bluetooth(登録商標)リンク等)を介してデータがRGM装置100から移されてもよい。電子プロセッサ196は任意で、様々なRGM装置の制御機能、例えば流量制御機構170に所望する流量を出力することを行ってもよい。
【0024】
例示的な光学式標的ガス測定装置190、192、194は単なる例示的な例であり、より一般的には、測定領域130を流れる呼吸空気にある標的ガスの濃度又は分圧を測定するのに、如何なる種類の標的ガス測定装置が用いられてもよい。
【0025】
幾つかの例において、ポンプ110は、空気(すなわち呼吸ガス)を脈動方式で移動させ、それにより、チューブセグメント120cにかなりの圧力の脈動(すなわち圧力リップル)を生じさせる往復式又は周期的に動作する装置である。これらの圧力の脈動が収縮部140及びサンプルチューブセグメント120bを介して、測定領域130に伝送される場合、このとき、圧力の脈動が測定誤差をまねくことがある。脈動の振幅は、チューブセグメント120c、120b及び収縮部140を通過した後、若干減少する可能性が高いが、この減衰は、ゲージ圧力センサ160により行われる測定に大きな脈動の波形が現れるのを防ぐほど十分ではない。これらの脈動は、測定領域130に存在する呼吸ガスのサンプルの成分の測定される濃度に誤差を作り得る。
【0026】
装置100は、この装置の様々な動作(例えばフロー制御及びパルスのキャンセル等)を制御するために構成される電子回路も含むことができる。フローの動作を制御するために、装置100の電気回路は、フィードバック制御形態で配される、比較器170a、ポンプ制御器170b及びポンプドライバ170cを備えるフロー制御機構170を含むことができる。比較器170aは、差圧センサ150から差圧信号175aを受信するように構成される。これから、比較器170aは、所望する流量と実際の流量との差を示す流量誤差信号175bを生じさせる又は生成するために、所望する流量の設定信号から、前記差圧信号175a(すなわち、収縮部140を通る流量)を差し引くように構成される。ポンプ制御器170bは、ポンプドライバ170cを駆動させるのに使用される、ポンプ制御信号175cを生じさせる又は生成するために、前記流量誤差信号175bを増幅及び処理するように構成される。ポンプドライバ170cは、ポンプ110に伝送され、ポンプを駆動させるのに使用されるポンプ駆動信号175dを生じさせる又は生成するために、ポンプ制御信号175cをバッファリングするように構成される。差圧信号175aが、前記流量は所望する流量よりも少ないことを示す場合、結果として得られる誤差信号170bは、ポンプ110の速度を増大させることにより流量が増大されるべきこと示す。これが起こるとき、ポンプドライバ170cは、ポンプ110の速度を増大させるように構成される。その反対に、差圧信号170bが、前記流量は所望する流量よりも多いことを示す場合、結果として得られる誤差信号170bは、ポンプ110の速度を減少させることにより流量が減少されるべきことを示す。これが起こるとき、ポンプドライバ170cは、ポンプ110の速度を減少させるように構成される。ポンプ制御器170bは、安定した一定の流量を作り出すようにポンプ110を制御するように構成される。ポンプ110の他の種類のフィードバック制御も検討される。フィードバック制御を持たない、すなわち開ループ方法でポンプ110を操作することをさらに検討される。
【0027】
明細書に記載されるように、ポンプ110の周期的動作により生じた圧力リップルをキャンセルし、それにより前記圧力リップルを減少又は除去するために、閉ループ制御のリップルキャンセル装置180が設けられる。圧力の脈動のキャンセルを提供するために、装置100は、ポンプ110の圧力リップルをキャンセルするために、ポンプ110により作られる"逆の"圧力リップルを生じさせる圧力トランスデューサ(又は他の適切な装置)を含む。電子回路180a、180bは、圧力センサ150を読み取る、及び呼吸空気のフローにある圧力リップルを減少又は除去するために、圧力トランスデューサ180cを駆動させ、呼吸空気のフローにリップルをキャンセルする圧力パルスを注入するために動作可能なように接続される。リップルをキャンセルする圧力パルスは、電気回路180a、180bにより圧力センサ150が測定した空気圧信号から決定される。他の検討される実施例において、ゲージ圧力センサ160により測定されるゲージ圧力が使用され、その代わりに、これらのリップルが制御される。これは、リップル制御ドライバをカプノグラフィーセンサのより近くに配置するという利点を有する。圧力の脈動のキャンセルは、収縮部140を流れる呼吸空気における少なくとも1つの圧力リップルを減衰させる又は除去するために構成される閉ループ制御のリップルキャンセル装置180を用いて達成される。例示的なリップルキャンセル装置180は、ハイパスフィルタ180a、制御器180b及び音響トランスデューサ(又は同様の換気装置)180cを含む。差圧センサ150により測定される差圧信号175aのAC成分は、ポンプ110により作られる圧力の脈動を表す。ハイパスフィルタ180aは、圧力センサ150から圧力値を受信し、差圧信号175aの流量関連成分に関係なく、これらの脈動のみを示す脈動又はリップル信号185aを生成するために、前記信号のAC成分を分離及び取り出すように構成される。ハイパスフィルタ180aの遮断周波数は、圧力リップルに対応するAC成分を通過させるように選択される。ハイパスフィルタ180aは、リップル信号がその帯域内にあるように、下方及び上方の遮断周波数が選択されるバンドパスフィルタに置き替えられてもよいことが分かる。他方、バンドパスフィルタ180aの(下方の)遮断周波数は、DC圧力成分を取り除くのに十分な高さであるため、フィルタ180aの出力は、圧力リップルの成分のみに対応している。制御器180bは、音響トランスデューサ180cを駆動させるためのトランスデューサ駆動信号185bをリップル信号から生じさせる又は生成するようにプログラム又は調整される。音響トランスデューサ180cは、トランスデューサ駆動信号185bから、ポンプ110により作られる圧力の脈動(リップル)を打ち消す及び略無効にする逆位相圧力波形185cを生じさせる又は生成し、その目的は、ハイパスフィルタ180aから最小限の信号出力を生じさせることである。トランスデューサ180cは、空気中にある脈動を無効にするために、収縮部170からポンプ110に流れる空気に前記逆位相圧力波形を適用するように構成される。幾つかの実施例において、制御器180bは、比例(P)、積分(I)及び微分(D)パラメタを持つPID制御器である。PID制御器は、アナログ回路(例えばオペアンプ)及び/又はデジタル回路、例えばマイクロプロセッサ或いはマイクロ制御器を用いて実施されてよい。制御器180bは、他の何らかの種類のフィードバック制御器(例えばPI制御器)とすることもできる。
【0028】
ここで
図2を参照すると、RGM装置100は、呼吸ガス監視方法10を行うように構成される。12において、ポンプ110を用いて、呼吸空気が測定領域130を介して吸い込まれる。呼吸空気の少なくとも一部は収縮部140を介して移動する。14において、少なくとも1つの圧力センサ150を用いて、収縮部140を流れる空気の圧力信号175aが測定される。
【0029】
16において、リップルキャンセル装置180a、180b、180cを用いて、収縮部140を流れる呼吸空気にある少なくとも1つの圧力リップルが減衰する又は除去される。減衰又は除去は、フィルタ180aを用いて、前記圧力信号のAC成分を分離して、リップル信号185aを生成することを含む。トランスデューサ駆動信号185bは、制御器180bを用いてリップル信号185aから生成される。逆位相圧力波形185cは、圧力トランスデューサ180cを用いてトランスデューサ駆動信号185bから生成される。前記逆位相圧力波形185cは次いで、空気中にある脈動を無効にするために、トランスデューサ180cにより、収縮部140からポンプ110に流れる空気に適用される。逆位相圧力波形185cは、サンプルチューブセグメント120C内において、ポンプ110により作られた圧力リップルをキャンセルするので、このキャンセルは、サンプルチューブセグメント120cの"上流"、特に収縮部140内及びさらに"上流"の測定領域130の全ての地点に対し、ポンプ110により作られた圧力リップルも取り除く。
【0030】
18において、空気のフローは任意で、フロー制御機構170a、170b、170cを用いて制御される(動作16及び18は同時に行われることを述べておく)。そうするために、比較器170aは、流量誤差信号175bを生成するために、所望する流量設定信号175aから前記圧力信号を差し引くように構成される。ポンプ制御器170bは、ポンプドライバ170cを駆動させるのに使用されるポンプ制御信号175cを生じさせる又は生成するために、前記流量誤差信号175bを増幅及び処理するように構成される。ポンプドライバ170cは、ポンプ110に伝送され、このポンプを駆動させるのに使用されるポンプ駆動信号175dを生じさせる又は生成するために、ポンプ制御信号175cをバッファリングするように構成される。差圧信号175aが、前記流量は所望する流量よりも少ないことを示すとき、ポンプドライバ170cは、ポンプ110の速度を増大させるように構成される。差圧信号175aが、前記流量は所望する流量よりも多いことを示すとき、ポンプドライバ170cは、ポンプ110の速度を減少させるように構成される。
【0031】
20において、ゲージ圧力センサ160を用いて、呼気のフローにある標的ガスが測定される(再び、動作20は、動作16、18と同時に行われる)。
【0032】
図1に戻り参照すると、装置100の電気回路(例えば、比較器170a、ポンプ制御器170b及びポンプドライバ170c、ハイパスフィルタ180a及び制御器180b並びに電子プロセッサ196を持つフロー制御機構)は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロ制御器、FPGA又は他のデジタル装置として、及び/又はアナログ回路により実施されることができる。
【0033】
装置100の例示的なコンピュータによるデータ処理又はデータインターフェース構成要素は、開示される動作を行うために電子プロセッサ(例えば電子プロセッサ196)により実行可能な命令を記憶する非一時的な記憶媒体として具現化されてよいことも分かる。この非一時的な記憶媒体は例えば、ハードディスクドライブ、RAID若しくは他の磁気記憶媒体、つまりソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、EEROM又は他の電子メモリ、光学ディスク或いは他の光学記憶装置、又はそれらの様々な組み合わせ等を有してよい。
【0034】
本開示は、好ましい実施例を参照して説明される。上記詳細な説明を読み、理解すると、他の者に修正案又は代替案が思い浮かぶことがある。本開示は、それらが付随する特許請求の範囲内又はそれに同等なものの範囲内にある限り、そのような修正案及び代替案の全てを含むと考えられることが意図される。