(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】免疫測定法におけるフック効果の干渉を最小化するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220203BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220203BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/68
G01N33/52 A
(21)【出願番号】P 2019560207
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 US2018031085
(87)【国際公開番号】W WO2018204784
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-03-19
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ズィンマーレ,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ラインハイマー,ゲイリー
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-500363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0219620(US,A1)
【文献】アトラス試薬カートリッジPRO12 添付文書,SIEMENS,2013年,https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ivd/PDF/341508_16100AMZ03365000_B_01_02.pdf
【文献】管崎幹樹 他,全自動尿化学分析装置を用いた尿試験紙法による尿中アルブミン測定の有用性,医学検査,2015年,Vol.64, No.1,pp.117-123
【文献】医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法(リガンド結合法)のバリデーションに関するガイドライン,2016年,pp.1-14,https://www.pmda.go.jp/files/000206206.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物
の濃度を検出するための方法であって、
(a)
(1)標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性があるサンプルと、
(2)前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって
、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると
その吸収帯がシフトする
色素と、
(3)前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬とを、
同時にまたは全体的若しくは部分的に順次組み合わせる
ステップであって、
(2)の前記少なくとも1つの色素が、(3)の前記少なくとも1つの免疫測定用試薬を検出するための測定と適合性がある、ステップと、
(b)
(1)
中に存在する前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物への(2)および(3)の結合を
可能にするステップと、
(c)
(i)前記免疫測定用試薬によって生成された信号と、
(ii)前記少なくとも1つの色素の吸収帯と、
を
同時に検出することにより、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物
の濃度を決定する
ための1ステップの測定を実行するステップの、各ステップを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの色素が、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの色素が、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの色素がpHインジケータである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの色素が、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびそれらの組合せを含む一群の中から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの免疫測定用試薬が、前記標的分析物に結合する捕獲抗体
と前記捕獲抗体に結合する検出抗体とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫測定用試薬によって生成されたシグナル
が凝集測定によって検出される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物が、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
免疫測定におけるフック効果の干渉を最小化する方法として定められる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(d)
(i)の生成された信号によって測定された濃度を(ii)の吸収帯のシフトによって測定された濃度と比較して、(i)でフック効果が観察されたかどうかを判断するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
免疫測定に使用するための試薬キットであって、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する
と直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する
とその吸収帯がシフトする
色素と、を含
み、
前記少なくとも1つの色素は、前記少なくとも1つの免疫測定用試薬を検出するための測定と適合性があるため、前記少なくとも1つの免疫測定用試薬による濃度の測定と前記少なくとも1つの色素による濃度の測定の2つの測定が同時に実行される、試薬キット。
【請求項12】
前記少なくとも1つの色素
が測定用緩衝液中に存在する、請求項
11に記載の試薬キット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの色素
が乾燥試薬の形態である、請求項
11に記載の試薬キット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの色素
が前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合する、請求項
11~13のいずれか一項に記載の試薬キット。
【請求項15】
前記少なくとも1つの色素
が前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合する、請求項
11~13のいずれか一項に記載の試薬キット。
【請求項16】
前記少なくとも1つの色素がpHインジケータである、請求項
11~15のいずれか一項に記載の試薬キット。
【請求項17】
前記少なくとも1つの色素が、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびこれらの組合せを含む一群の中から選択される、請求項
16に記載の試薬キット。
【請求項18】
前記少なくとも1つの免疫測定用試薬が、前記標的分析物に結合する捕獲抗体と、前記捕獲抗体に結合する検出抗体とを含む、請求項
11~17のいずれか一項に記載の試薬キット。
【請求項19】
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物が、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択される、請求項
11~18のいずれか一項に記載の試薬キット。
【請求項20】
サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物
の濃度を決定するための免疫測定装置であって、
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性があるサンプルを受け取ることができる少なくとも1つの区画を含み、前記少なくとも1つの区画は、
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する
と直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、
前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、前記少なくとも1つの色素の吸収帯は、前記標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する
とその吸収帯がシフトする
色素とを含
み、
前記少なくとも1つの色素は、前記少なくとも1つの免疫測定用試薬を検出するための測定と適合性があるため、前記少なくとも1つの免疫測定用試薬による濃度の測定と前記少なくとも1つの色素による濃度の測定の2つの測定は、前記少なくとも1つの区画内で同時に実行される、免疫測定装置。
【請求項21】
互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画を含み、前記少なくとも1つの免疫測定用試薬および少なくとも1つの色素が同じ前記区画内に配置されることを特徴とする、請求項
20に記載の免疫測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本出願は、2017年5月4日に出願された米国仮出願第62/501,284号に基づく優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定(イムノアッセイ)技術は、医療診断の分野、特に吸光度に基づく測定に基づくポイント・オブ・ケア(治療場所)分析器で広く使用されている。特に、これらの測定(アッセイ)は、生物学的サンプル(試料)中の種々の蛋白質分析物の検出に有用である。この分野で広く使用されているにもかかわらず、これらの測定では様々な種類の干渉(インタフェア)が依然として観察されている。例えば、免疫測定分析器の検出範囲は、「フック効果」として知られる干渉現象により制限を受けている。フック効果では、試験サンプル中の高い分析物濃度によって、実際に分析物に対する測定応答信号の低下がもたらされて、それによって偽(誤った)陰性または偽(誤った)低濃度結果の報告がされることがあった。
【0003】
フック効果は、抗原による抗体の飽和曲線に基づくものであり(例えば、
図1参照)、試験サンプル中の分析物の濃度が、測定用試薬中で使用される抗体の結合能を超えたときに生じて、それによって信号の生成に必要な免疫複合体の不完全な形成を生じさせている。例えば、過度に高濃度の分析物は、免疫測定において使用される捕獲抗体および検出抗体の両方を同時に飽和させることができるため、
図1に示される「フック」または誤って減少した濃度測定をもたらしている。これらの例では、偽陰性または偽低結果が報告されるため、分析器の精度に悪影響を及ぼし、患者の治療に重大な影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
多くの分析器は、較正(キャリブレーション)曲線、アルゴリズムなどの仕組みの使用によって、フック効果の補償を試みている。非常に大きな分析物濃度範囲を有する免疫測定法では、一般的に、慎重な分析の構成と、使用される抗体試薬および試験されるサンプルの量の調整が必要である。従って、結果の妥当性を保証するために、複数の分析が、1つのサンプルについて実施されなければならないことがある。フック効果を排除するために現在使用されている他の方法には、捕獲抗体によるサンプルのインキュベーション(潜伏)とその後の検出抗体の添加との間に洗浄ステップを加えることがある。しかしながら、洗浄ステップの追加は、測定を実施するために必要な時間および装置(機器)の両方を増加させる。むしろ、生物学的サンプルの高い処理量での分析のためには、1ステップの測定(両方の抗体が同時に添加されること)が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、高濃度の分析物が存在する場合に免疫測定で観察される、高用量のフック効果タイプの干渉を示す。
【
図2】
図2は、2つの異なる波長(595nmおよび455nm)での様々な濃度のアルブミンとチモールブルーとの相互作用で得られた、チモールブルーの構造と分光光度測定を示す。
【
図3】
図3は、552nmでの様々な濃度のアルブミンとフェノールフタレインとの相互作用で得られた、フェノールフタレインの構造と分光光度測定を示す。
【
図4】
図4は、2つの異なるpHと波長(617nmでpH8と、572nmでpH9)における様々な濃度のアルブミンとのユニバーサルpHインジケータとの相互作用で得られた分光光度測定を示す。
【
図5】
図5は、微量アルブミンの免疫測定(◇)および蛋白質測定用試薬(□)で得ることができるアルブミン濃度の例示的な分光光度測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の技術思想に係る少なくとも1つの実施形態について、例示的な用語および結果を用いて詳述する前に、本発明の技術思想は、本明細書の以下の詳細な説明に記載の構成および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明の技術思想は、他の実施形態でも可能であり、また様々な方法で実施することも可能である。したがって、本明細書で使用される用語は、可能な限り広範な範囲および意味を有することを想定しており、実施形態は、例示的であって、網羅的なものではないことを想定している。また、本明細書で使用される語句および用語は、説明の目的上用いられており、限定的ではないことを理解されたい。
【0007】
本明細書中に別途定義されない限り、本開示および/または特許請求の範囲内の発明の技術思想に関して使用される科学的及び技術的用語は、当業者に理解可能な意味を有するものとする。さらに、明細書中に別途必要とされる場合を除き、単数の用語は複数を含み得るとともに、複数の用語は単数を含み得るものとする。前述の技術および手順は、一般的に、当技術分野で公知であり、本明細書全体にわたって引用され、論じられる種々の一般的な従来の方法および具体的な参考文献に記載の従来の方法に従って実施され得る。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、および医薬・薬学化学に関連して利用される専門語、ならびに実験の手順および技術は、当技術分野で公知かつ一般的に使用されるものである。化学合成や化学分析には標準的な手法が用いられる。
【0008】
明細書に言及されるすべての特許、公開された特許出願、および非特許文献は、本発明について開示および/または主張がされている発明の技術思想に関する当業者の技術レベルを示すものである。本明細書中に参照される全ての特許、公表された特許出願、及び非特許文献は、それぞれ参照により本明細書に援用する。
【0009】
本明細書に開示および/または特許請求の範囲に係るすべての物品、組成物(構成物)、および/または方法は、本開示内容に照らして過度の実験を行うことなく作成および実行することができる。本発明の技術思想に係る物品、組成物、および方法は、特定の実施形態に関して記載されているが、本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、物品、組成物および/または方法に変更を加えることは可能であるとともに、本明細書に記載の方法のステップまたはステップのシーケンス(順番)に変更を加えることが可能なことは、当業者には自明だろう。当業者に明らかなこのような全ての類似の代替物(均等物)および変更物は、特許請求の範囲に記載の本発明の技術思想および範囲内にあるものとする。
【0010】
本開示内容では、特に明記がされない限り、以下の用語は、それぞれ以下の意味を有するとする。
【0011】
特許請求項の範囲および/または本明細書において、用語「含む」と共に使用される場合の、語句の「1つ」(冠詞「a」または「an」に相当)の使用は、「1つ」を意味するだけでなく、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたはそれ以上」の意味を含み得る。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、「および/または」を意味し得る。ただし、二者択一に限ること、または選択が相互排他的であると明示的に記載されている場合は除かれるが、明細書中に二者択一に限ることと「および/または」のついての定義がある場合はそれに従う。本明細書では、用語「約」は、その値が、装置(デバイス)の固有の誤差の変動、値を決定するために使用される方法、または調査対象中に存在する変動を含むことを示すために使用される。用語「少なくとも1つ」の使用は、1および任意の量を1以上含むと理解することができ、例えば、非限定的な例を挙げると、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む。用語「少なくとも1つ」は、それに関する用語に応じて、100または1000またはそれ以上に及び得る。さらに、より高い限度値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的ではないと考えられる。さらに、「X、Y、Zのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、Y、およびZの任意の組合せを含むと理解され、順序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つ以上の項目を区別する目的のみを有し、例えば、他の項目または追加の順序に対しての1つの項目の順序または順序または重要性を意味するものではない。
【0012】
「約」という用語は、その値が、装置の固有の誤差の変動、値を決定するために使用される方法、および/または調査対象中に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、非限定的な例を挙げると、用語「約」が利用される場合、指定値は、プラスマイナスで、12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセントだけ変化し得る。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、用語「含む」(および「構成する」などの任意の語彙を含む)、または「含有する」(および「有する」などの任意の語彙を含む)は、包含的または開放的であり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外するものではない。。
【0014】
本明細書で使用される用語「またはそれらの組み合わせ」とは、用語の前に列挙された項目の全ての順列及び組み合わせを意味する。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図し、特定の状況において順位が重要である場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むことを意図する。この例に続いて、明示的に含まれる組合せは、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCC、CBBAAA、CABABBなど、1つまたは複数の項目または用語の繰り返しを含む組合せである。当業者であれば、文脈から明らかでない限り、いずれの組合せにおいても、典型的に、項目または用語の数に制限はないことを理解できるだろう。
【0015】
本明細書中で使用される「実質的に」という用語は、後に記載の事象または状況が完全に発生するか、または後に記載の事象または状況が大きな範囲にまたは程度で発生することを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、「実質的に」という用語は、後に記載の事象または状況が、時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%で生じることを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接しているが100%隣接していない範囲内にあること、または2つの項目の1つの一部が他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接している範囲内にあることを意味し得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「関係(関連)」は、2つ以上の項目の直接的または間接的な結びつきを意味すると理解される。本明細書中で使用される場合、「・・・と関係する」という語句は、2つの部分の互いへの直接的な関係と、2つの部分の間接的な関係の両方を含み得る。関係の非限定的な例を挙げると、直接結合によるかまたはスペーサー基を介するかのいずれかによる、1つの部分の別の部分への共有結合や、直接またはその部分に結合した対の部材の特異的結合対メンバーのいずれかによる、1つの部分の別の部分への非共有結合や、1つの部分の別の部分への組み込みであって、例えば、1つの部分を別の部分に溶解または合成することによって、1つの部分を別の部分上にコーティング(被覆)することが含まれる。
【0017】
ここで、特定の実施形態に移ると、本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想は、一般に、免疫測定の性能および信頼性を改善するためのキット、装置、および方法に関する。特に、本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想の特定の実施形態は、免疫測定におけるフック効果の干渉を最小限にするためのキット、装置、および方法に関する。
【0018】
本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想の非限定的な実施形態は、サンプル中の標的(目標)ペプチドまたは蛋白質分析物の存在(有無)および/または濃度を検出するための方法に関する。特定の実施形態において、その方法は、免疫測定におけるフック効果の干渉を最小限にする方法としてさらに定められ得る。
【0019】
本方法は、
(1)標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性があるサンプルと、
(2)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素(染料)であって、少なくとも1つの色素の吸収帯(吸収バンド)が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合するとシフトする、少なくとも1つの色素と、
(3)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬とを、同時にまたは全体的若しくは部分的に順次組み合わせることができる。
次いで、少なくとも1つの色素および少なくとも1つの免疫測定用試薬を、サンプル中に存在する標的ペプチドまたは蛋白質分析物と結合させる。
次いで、標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在(有無)および/または濃度を、(i)免疫測定用試薬によって生成された信号および(ii)少なくとも1つの色素の吸収帯の検出によって決定する。
【0020】
本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想に従って機能することができ、免疫測定においてフック効果の干渉を最小化し得るメカニズムを提供する、従来技術で公知または想定可能な色素は、本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想の範囲内に含まれる。例えば(非限定的な例を挙げると)、少なくとも1つの色素はpHインジケータ(pH指示薬)であってもよい。本開示および/または特許請求の範囲の発明の技術思想に従って利用され得るpHインジケータの例には、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分用析試薬、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
少なくとも1つの色素は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができる。あるいは、少なくとも1つの色素は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合することができる。
【0022】
本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従ってフック干渉を最小限に抑えるために利用される色素は、当技術分野で公知の、または他の方法で本明細書で想定可能な任意の免疫測定に組み込むことができる。例えば(非限定的な例を挙げると)、少なくとも1つの免疫測定用試薬は、標的分析物に結合する捕獲抗体(または捕捉抗体)および捕獲抗体に結合する検出抗体を含むことができる。しかしながら、当技術分野で公知または本明細書で想定されている他の免疫測定構成も、本明細書の開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想の範囲に含まれる。
【0023】
特定の非限定的な実施形態では、免疫測定用試薬によって生成された信号は、凝集測定を介して検出され得る。
【0024】
免疫測定によって検出可能な任意の標的ペプチドまたは蛋白質分析物は、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想の方法を介して検出することができる。標的分析物の例として、非限定的な例を挙げると、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)が含まれる。
【0025】
本明細書に記載の免疫測定と共に使用するために当技術分野で公知の任意の生物学的サンプルを、本明細書の開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って利用することができる。利用可能な生物学的サンプルの例として、非限定的な例を挙げると、尿、全血(血液)またはその任意の部分(すなわち、血漿または血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)、腸液、腹腔内液、のう胞液、汗、間質液、涙液、粘液、膀胱洗浄液、精液、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0026】
本明細書に記載さの方法のステップのいずれも、例えば、使用者によって実施することができるが、それに限定されない。しかしながら、本明細書中で使用される用語「利用者」は、人間による使用に限定されるものではなく、むしろ、用語「利用者」は、コンピュータ、サーバ、ウェブサイト、プロセッサ(処理装置)、ネットワーク・インターフェイス、人間、利用者端末(ユーザーターミナル)、仮想コンピュータ、およびそれらの組み合わせなどを含むことができる(ただし、これらに限定されない)。
【0027】
本開示内容の概念の種々の実施形態は、本明細書に記載される方法に従って機能することができる(または機能するように修正された)任意の反射分光方式の診断機器と共に利用することができる。特定の非限定的な実施形態では、器具は治療場所(ポイント・オブ・ケア)の器具であってもよい。反射分光方式の診断機器は、本明細書に記載される方法/プロセスのロジック(論理)を具体化および/または実行することができるシステム(単数または複数)であってもよい。ソフトウェア命令(指示)および/またはファームウェアの形で具体化されたロジックは、任意の適当なハードウェア上で実行することができる。例えば、ソフトウェア命令および/またはファームウェアの形で具体化されたロジックは、専用システム(単数または複数)上の1つまたは複数の構成要素、パーソナルコンピュータ(PC)システム上の構成要素、分散処理コンピュータシステム上の構成要素、および/または同様の構成要素によって実行することができる。いくつかの実施形態において、全ロジックは、器具(例えば、非限定的な例を挙げると、治療場所の器具)上で動作する独立した環境下で実施され得る。他の実施形態では、ロジックは、データを分析し、分析の結果を機器に供給するために、中央コンピューターシステムに送信されるデータを複数の機器が収集する分散システムのようなネットワーク環境下で実施してもよい。機器の各要素は、部分的または完全にネットワークベースまたはクラウドベースであってもよく、単一の物理的場所に位置している場合とそうでない場合がある。
【0028】
本明細書で使用される回路には、アナログおよび/またはデジタル成分(構成要素)、または1つまたは複数の適切にプログラムされたプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)および関連するハードウェアやソフトウェア、またはハードウェアにより実現されるロジックが含まれる(ただし、これらに限定されない)。また、「構成要素」は、1つまたは複数の機能を行うことができる。用語「構成要素」は、例えば、非限定的な例を挙げると、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:field programmable gate array)、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せなどを含み得る。
【0029】
本明細書で利用されるソフトウェアは、1つまたは複数の構成要素によって実行されるとき、構成要素が特定の機能を実行させる、1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能な媒体(すなわち、コンピュータ読み取り可能な命令または指示)を含んでいてもよい。本明細書に記載されるアルゴリズムは、1つまたは複数の非一過性記憶装置(メモリ)上に保存できることを理解されたい。非限定的な例を示すと、非一過性記憶装置は、ランダムアクセス記憶装置、リードオンリー記憶装置、フラッシュ記憶装置、および/または類似物を含み得る。このような非一過性記憶装置は、電気的に基づくものでもよく、光学的に基づくものでもよく、また類似物に基づくものでもよい。
【0030】
本明細書の開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る実施形態の非限定的な例を挙げると、上述の免疫測定法を簡便に実施するために有用な試薬キットに関する。試薬キットは、上述したように、本明細書に詳述の少なくとも1つの免疫測定用試薬と、上述の少なくとも1つの色素とを含む。
【0031】
本明細書の開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る他の実施形態の非限定的な例を挙げると、上述の免疫測定法において使用される、上述の試薬キットを含む免疫測定装置(例えば、非限定的な例を挙げると、免疫測定用カートリッジ)に関する。例えば、免疫測定装置は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性のあるサンプルを受け取ることができる少なくとも1つの区画(室、チャンバ)を含むことができ、ここで、少なくとも1つの区画は、本明細書中で詳述される少なくとも1つの免疫測定用試薬、および本明細書中で詳述される少なくとも1つの色素を含む。
【0032】
さらに、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る試薬キットおよび/または免疫測定装置は、本明細書に記載または想定されている任意の特定の免疫測定を実施するための他の構成要素および/または試薬を含んでいてもよい。これらの追加の構成要素/試薬の性質は、特定の免疫測定形式に基づき、その認定は、当業者の技術範囲内に含まれる。本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る試薬キットおよび/または免疫測定装置中に存在し得る追加の試薬/構成要素の例としては、希釈剤、洗浄液(例えば、等張液、ただしこれに限定されない)、溶解可能な試薬または溶解剤(赤血球溶解用)、添加物(凍結乾燥試薬の再構成に利用される)、標識剤、干渉剤(溶液)、陽性対象物、陰性対象物、品質対象物、および/またはアクチュエーター、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る利用される試薬は、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って機能することを可能にする任意の形態及び/又は形式で提供することができる。例えば、非限定的な例を挙げると、単回使用試薬の形態で試薬を廃棄することが望ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の試薬を凍結乾燥することが望ましい場合がある。免疫測定装置における乾燥試薬の使用は、国際公開第2013/078130号(2013年5月30日、ニューヨーク州タリータウン所在のシーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッドにより公開され、その全内容を参照により本明細書に援用する)に記載されている。また、複数の成分を単一の製剤中に一緒に配置してもよく、そして/または所望ならば、単一の粒子中で凍結乾燥してもよい。
【0034】
特に(非限定的な)実施形態では、試薬キットおよび/または免疫測定装置は、さらに、少なくとも1つの色素を配置させた測定用バッファ(緩衝液)を含んでもよい。
【0035】
特に他では(非限定的な実施形態であるが)、少なくとも1つの色素は、乾燥試薬の形態で、試薬キットおよび/または免疫測定装置中に存在することができる。さらに、少なくとも1つの免疫測定用試薬が、乾燥試薬の形式で、試薬キットおよび/または免疫測定装置中に存在してもよい。
【0036】
構成要素/試薬は、試薬キットおよび/または免疫測定装置の別々の容器/区画内に配置されてもよく、または種々の構成要素/試薬は、抗体結合定数/効率の競合的性質および/または試薬の安定性などの要因に応じて(ただし、これらに限定されない)、1つまたは複数の容器/区画内に組み合わせられてもよい。さらに試薬キットおよび/または免疫測定装置は、測定を行うための他の別個にパッケージ(包装)された試薬を含み得る。
【0037】
キットおよび/または免疫測定装置における種々の構成要素/試薬の相対量は、測定方法の間に生じる必要がある反応を実質的に最適化し、さらに測定の感度を実質的に最適化する構成要素/試薬の濃度を提供するために、幅広く変化することができる。適切な状況下では、キット/装置内の構成要素/試薬の1つまたは複数を乾燥した形態、例えば凍結乾燥粒子(球体、マイクロ錠剤、粉末、マイクロスポットなどを含むが、これらに限定されない)で提供することができ、かつ試薬キット/装置は、乾燥試薬の溶解のための添加物をさらに含むこともでき、この仕方で、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って方法または測定を行うための適切な濃度を有する試薬溶液を、これらの構成要素から得ることができる。
【0038】
本開示及び/又は特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る試薬キットは、さらに、キットの使用方法を説明する一連の文書化された指示書を含むことができる。この性質のキットは、免疫測定装置のいずれかと共に、および/または本明細書に記載されているかまたは想定されている方法のいずれかと共に使用することができる。
【0039】
免疫測定装置は、それに関連する1つまたは複数の手動機能(すなわち、1つまたは複数の試薬の添加のために必要な注出(ピペッティング)および/または2つの区画間の混合物の移動)を含んでいてもよい。あるいは、免疫測定装置は、完全に自動化されたシステムであってもよく、その際、免疫測定装置の構築中に必要な試薬/成分が様々な区画内に配置されて(様々な区画が連続的な流通するか、または連続的な流通が可能である)、免疫測定装置にサンプルが添加された後の測定の実行のために、サンプルおよび/または試薬の手動操作が必要とされなくてもよい。
【0040】
免疫測定装置は、本明細書に記載の構成要素を含む1つまたは複数の区画を含み、免疫測定装置は、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って装置が機能できる限り、任意の数の区画、任意の区画の配置、およびそれらの間の構成要素の任意の分布(配置)を備えることができる。複数の区画が提供される場合、区画は互いに完全に分離されていてもよく、または1つまたは複数の区画は互いに流体連絡(流通)することができる。本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って使用することができる免疫測定装置の種々の構造は、当技術分野において公知であるため、それ以上の説明は割愛する。
【0041】
特定の非限定的な実施形態では、免疫測定装置は、互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画を含むことができ、少なくとも1つの免疫測定用試薬および少なくとも1つの色素は、同じ区画に配置され得る。別の方法では、免疫測定装置は、互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画を含み得、その際、少なくとも1つの免疫測定用試薬および少なくとも1つの色素は複数の区画に配置され得る。
【0042】
免疫測定装置は、さらに、試料を適用/配置することができるサンプル適用チャンバ(室)および/または入口チャンネル(管)を含み得る。サンプル適用チャンバ/入口チャネルは、免疫測定装置の1つまたは複数の区画と流体連絡することができる。さらに、免疫測定装置にサンプル適用チャンバおよび入口チャネルの両方が設けられている場合、サンプル適用チャンバは入口チャネルと流体連絡をとることができ、入口チャネルは、試薬が配置されている1つまたは複数の区画と流体連絡をとることができる。
【0043】
特定の実施形態において、免疫測定装置は、少なくとも第1および第2の区画を含む。第1の区画は、生物学的サンプルを受け取ることができ、必要に応じて(ただし、それに限定されない)、サンプルのかたまり(または大部分)から蛋白質/ペプチドを分離するためのメカニズムを含み得る。この分離機構は、免疫測定装置の技術分野において公知であるため、それ以上の説明は割愛する。第2の区画は、第1の区画と流体連絡することが可能であり、少なくとも1つの免疫測定用試薬および/または上述の免疫測定法を実施するための少なくとも1つの色素を含む。別の方法法では、免疫測定装置は、第3の区画を含み得、この際、少なくとも1つの免疫測定用試薬および少なくとも1つの色素が、第2および第3の区画の間で分離される。
【0044】
免疫測定装置はまた、分光計(スペクトロメータ)によって光学的に調査することができる光学的読み取りチャンバを含んでいてもよい。光学的読み取りチャンバは、本明細書に記載されたいずれの区画とも関連していてもよく、または光学的読み取りチャンバは、上記に記載されたものとは別の区画と関連していてもよい。
【0045】
特定の実施形態では、免疫測定装置は、必要に応じて装置の特定の部分を解放可能に移動させる(例えば、非限定的な例を挙げると、サンプル適用チャンバから免疫測定チャンバおよび/または光学的読み取りチャンバまで分離膜を移動させる)ための1つまたは複数のアクチュエーターをさらに含むことができる。アクチュエーターは、用いられる場合には、手動および/または自動的に作動されてもよい。
【0046】
免疫測定装置の区画のいずれかを密封して、その使用まで実質的に密閉された(気密の)環境下に置かれた試薬を維持してもよい。例えば、凍結乾燥(された)試薬を含む区画を密封して、想定されてい(不本意な)な試薬の再構成を防止させてもよい。入口チャネルおよび区画、ならびに2つの区画は、互いに「流体連絡をする(流通する)ことができる」と記載され得るこの表現は、区画が依然として密封され得ることを示しているが、2つの区画は、その中またはその間に形成されたシールが破れたた際に、その間に流体の流れを有することができる。
【0047】
本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係るキット/免疫測定装置は、当技術分野で公知または本明細書で想定されている他の所望の特徴を備えることができる。例えば、本明細書に開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係るキット/免疫測定装置は、他の溶液を含む1つまたは複数の追加の区画をさらに含むことができるが、たとえば、希釈剤、洗浄溶液、溶解剤(赤血球を溶解するための)、添加物(凍結乾燥試薬の再構成のために利用される)、標識剤、干渉溶液、陽性対象物、陰性対象物、品質対象物、および/またはアクチュエーター、ならびにそれらの任意の組合せなどを含むが、それらに限定されない。例えば、キット/免疫測定装置は、希釈剤を含む1つまたは複数の追加の区画を含み得るが、これらの追加の区画は、装置の任意の他の区画と流体連絡することが可能である。別の例では、キット/免疫測定装置は、さらに、1つまたは複数の凍結乾燥試薬の再構成のための少なくとも1つの添加物を含む1つまたは複数の追加の区画を含むことができ、追加の区画は、(凍結乾燥試薬を含む区画などの)装置の任意の他の区画/チャネルと流体連絡をとることができる。さらに、キット/免疫測定装置は、洗浄溶液を含む1つまたは複数の追加の区画を含むことができ、区画は、キット/装置の任意の他の区画/チャネルと流体連絡を行うことができる。
【0048】
加えて、本明細書に記載された、または他に企図されたキット/免疫測定装置のいずれも、単一のキット/装置に重ね合わせられた複数の測定を含み得る。複数の測定が存在する場合、測定の両方を構築することができ、本明細書に記載されるように機能することができる。別法として、本明細書に記載される測定は、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係るキット/免疫測定装置内に含まれ得る、当該技術分野で公知の任意の他のタイプの測定を重ね合わせる(複合化する)ことができる。単一のキット/免疫測定装置に複数の測定が存在する場合、2つ以上の測定を、同時におよび/または順次に(全体的にまたは部分的に順次であることを含む)実行することができる。2つ以上の測定が同時に実行される場合、異なる質量および/または波長で検出される2つ以上の検出用試薬を利用することが望ましい場合がある。
【0049】
単一の免疫測定装置に複数の測定が存在する場合、複数の入口チャネルをサンプル適用チャンバに接続することができる。ある実施形態では、サンプルの一部を、その内容に関係なく、サンプル適用チャンバから複数の入口チャネルに通すことができる。別の方法として、サンプル全体から特定の成分を分離し、その成分を複数の測定まで送出することを可能にする、サンプル適用チャンバ、入口チャネル、および/またはそれらの間の接続内に構造を存在させてもよい。本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って利用可能なサンプル分配装置の非限定的な例は、米国特許出願公開第2016/0008813号公報および第2016/0318019号公報に記載されている(それぞれ、2016年1月14日および2016年11月3日にニューヨーク州タリータウンに所在のシーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッドにより公開されており、それぞれの内容を参照により本明細書に援用する)。
【0050】
実施例
以下に実施例を示す。ただし、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想は、特定の実験、結果および臨床検査手順への適用に限定されるものではないと理解されたい。むしろ、実施例は、単に様々な実施形態の1つとして提供されており、例示的であって、網羅的でないことを意味する。
【0051】
実施例1:微量アルブミンノフック効果の保証の調査
pH指示薬(pHインジケータ)とは、その局所環境のpHについての比色測定(比色的)に応答する色素(染料)である。アルブミンのような蛋白質に結合すると、局所環境のpHが変化して、この応答は蛋白質の存在と結びつけることができる。現在のIgM抗体捕獲(MAC)免疫測定法は、「フック」効果を有する、すなわち凝集が実際に減少して、偽陰性結果をもたらす可能性のある高濃度領域を有する(
図1参照)。対照的に、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に係る検出システムを使用することにより、用量反応勾配(スロープ)を増大させることができる(及びフックを減少又は除去することができる)。本明細書の開示および/または特許請求の範囲に記載の検出システムにおいて、フック効果を軽減し、用量反応を延長することができるように、凝集測定と同時に色素結合測定を加える。この仕方での色素pHインジケータの使用によって、通常、現在の微量アルブミン測定で見られるフック効果をもたらす高蛋白質レベルの付加を検出することができる。
【0052】
種々のタイプの色素結合測定を、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従って利用することができる。例えば(非限定的だが)、色素結合測定の2つの異なるカテゴリーについて、以下にデータを示す。第1のタイプの測定は、典型的には蛋白質検出に使用されないが、現在の微量アルブミン測定と適合するように構成された色素を利用する。第二のタイプの測定の仕方は、標準的な蛋白質を検出する色素測定を利用するが、これは免疫測定システムでのフック効果を除去するためにも使用することができる。
【0053】
材料:
色素指示薬(色素インジケータ)
ここでは3つの色素インジケータを利用したが、それらはチモールブルー、フェノールフタレイン、およびユニバーサルpHインジケータを含む。
【0054】
チモールブルー(その構造を
図2、左側に示す)は、シグマ・アルドリッチ社から入手した(ミゾーリ州セントルイス所在、ロット・ナンバーはMKBR0446V)から入手し、紫色の粉末形態および8.9のpKaを有していた。この実施例で利用した色素製剤(色素調製物)は、0.1gのチモールブルーを21.5mLの0.01MのNaOHに溶解して調製し、それを精製水(浄水)を用いて250mLに希釈した。
【0055】
フェノールフタレイン(その構造を
図3、左側に示す)は、シグマ・アルドリッチ社から入手した(ミゾーリ州セントルイス所在、ロット・ナンバーはMKBP2993V)から入手し、無色の液体様式と、9.4のpKaを有していた。色素は、製造業者から提供される調製様式で利用した。
【0056】
ユニバーサルpHインジケータ溶液はフルカ・アナリティカル(Fluka Analytical、ハネウェル・リサーチ・ケミカルズ、メキシコ合衆国メキシコシティ、ロット・ナンバーはSZBG0080V)から入手し、赤色の液体様式を有していたが、pKaは不明であった。色素は、製造業者から提供される調製様式で利用した。
【0057】
蛋白質測定
クーマシー蛋白質測定用試薬(Coomassie Protein Assay reagent)は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州ウォルサム、レファレンス・ナンバーはRE234426)から入手し、液体の様式を有していた。この測定は、製造業者から提供される調製様式で利用した。
【0058】
ピアース660nm蛋白質測定(Pierce 660 nm Protein Assay)は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州ウォルサム、ロット・ナンバーはR623191)から入手し、液体の様式を有していた。この測定は、製造業者から提供される調製様式で利用した。
【0059】
結果:
色素インジケータ
本手順は、微量アルブミン測定に用いられたものと似て構成されており、例えば、(非限定的な例を挙げると)DCAバンテージ(登録商標)分析器(ペンシルベニア州モルバーン所在のシーメンスメディカル ソリューションズUSA社)に使用される微量アルブミン測定用カートリッジがある。この装置は本質的に分光光度計であるので、以下の条件はこのタイプのシステムに組み込むことができる。これらの色素は、測定緩衝液(バッファ)に組み込まれるか、またはカートリッジ内で乾燥試薬として添加され得る。
【0060】
各インジケータについて、分光光度計で容易に読み取ることができる色の強度を得るために、緩衝液に十分な物質を加えた。これらの濃度は、上記の「材料」の説明で記載されている。この溶液を分光光度計で測定し、ピーク波長と吸光度が記録された。蛋白質を添加して、再度溶液を測定し、結果を記録した。チモールブルーとフェノールフタレインのpKa値は9付近であるため、これらをpHが9の緩衝液で試験した。ユニバーサルpHインジケータ溶液はpHレベルの範囲をカバーするため、このインジケータを7、8、9のpHで試験した。各色素と種々の濃度のアルブミン添加物との相互作用から得られたデータを
図2~4に示すが、それぞれチモールブルー、フェノールフタレイン、およびユニバーサルpHインジケータ溶液についてのものである。ストック(原液)アルブミン濃度添加後、各溶液のpHを確認したところ、各測定溶液のpH変化は無視することができた。したがって、
図2~4に示された観察された相違は、各色素のアルブミンへの結合に決定的に起因し得る。
【0061】
各インジケータは蛋白質添加により変化した。例えば、
図4に示すように、ユニバーサルpHインジケータ溶液をpH8で試験した場合、ピークは617nmであり、吸光度は0.131であった。蛋白質添加後、ピークは418nmに変化し、617nm吸光度は0.045に低下した。
【0062】
上記の色素は、pHが8~9の範囲で生じる現在の微量アルブミン測定との適合性のために選択された。しかしながら、(標準的な商業的に入手可能な蛋白質システムを含めて)当該技術分野で公知または想定可能な、より酸性の性質を有する他の多くの蛋白質検出システムがあるが、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従う免疫測定と組み合わせて利用することができる。これらの蛋白質検出システムのいずれも、アルブミンのフック効果の存在下で、自動化システムで使用することができる。
【0063】
蛋白質測定
蛋白質測定は、メーカーの推奨手順に従って実施した。ピアース660nm蛋白質測定では、1.5mLの試薬に0.1mlの蛋白質を添加した。室温で5分間潜伏(または培養)した後、660nmで分光光度計上で溶液を読み取った。クーマシー蛋白質測定用試薬の使用も同様の手順を用いた。1.5mLの試薬に0.03mlの蛋白質を加え、室温で10分間潜伏した後、595nmで分光光度計上で溶液を読み取った。サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州ウォルサム所在)から入手した200mg/dLのアルブミン標準と共に、30、300、5000mg/dLのアルブミンのサンプルを、それぞれ2つの反復を用いて試験した。
【0064】
5000mg/dLのサンプルを、3つのDCAバンテージ(登録商標)分析器(ペンシルベニア州モルバーン所在のシーメンス メディカルソリューションズUSA社)で試験したところ、各測定は、15mg/dLよりも大きなアルブミン値を戻した。
【0065】
試験した蛋白質測定の両方で蛋白質を増加させると、分光光度の吸光度の増加が観察された。ピアース測定は、2つの最高レベルのスケールから外れていた。対照的に、DCAバンテージ(登録商標)分析器で典型的に観察されたフック効果は、5000mg/dLのサンプルが15mg/dL未満のアルブミンレベルが得られた場合に観察された。
【0066】
図5は、微量アルブミン免疫測定(◇)および蛋白質測定用試薬(□)から得ることができるアルブミン濃度の例示的な分光光度測定を比較したグラフである。同図から理解できるように、微量アルブミン免疫測定でフック効果が観察された。というのは、分析物の高濃度が捕獲抗体と検出抗体の双方を同時に飽和させ、その結果、最高濃度での濃度測定値が誤って低下するからである。しかしながら、蛋白質測定では、フック効果は観察されなかった。蛋白質測定における分析物濃度を増加させるための分光学的な(分光)測定は、上部平坦域に達するまで、いくぶん直線的に増加し続ける。蛋白質測定は単一の試薬に依存しているので(双方とも飽和する2つの抗体ではなく)、蛋白質測定を妨害しうる競合は存在せず、したがって、高い分析物濃度での分光測定の減少はない。分析結果物の飽和レベルは、免疫測定による測定値の低下をもたらすが、蛋白質測定における分析物の飽和レベルは、上部平坦域レベルにおいて実質的に同じ測定値をもたらし得る。
【0067】
従って、これらの実施例は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる試薬の免疫測定への添加を示しており、この際、標的ペプチドまたは蛋白質分析物への結合時に色素の吸収帯がシフトすることによって、免疫測定におけるフック効果の干渉を最小限にし得る。
【0068】
本発明の技術思想に係る非限定的な例示的実施形態
特定の実施形態は、サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を検出する方法に関する。本方法は、(a)同時にまたは全体的若しくは部分的に順次組み合わせられる、以下のステップを含む。
(1)標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性のあるサンプルと、(2)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、少なくとも1つの色素の吸収帯が標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合するとシフトする、少なくとも1つの色素と、(3)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、を含む。
【0069】
本方法はまた、(b)(1)の標的ペプチドまたは蛋白質分析物に対する(2)および(3)の結合を可能にするステップと、(c)(i)免疫測定用試薬によって生成される信号と、(ii)少なくとも1つの色素の吸収帯とを検出することによって、標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を決定するステップと、を含む。
【0070】
本方法において、少なくとも1つの色素は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に対して、特異的または非特異的に結合し得る。
【0071】
特定の実施形態において、少なくとも1つの色素は、pHインジケータであって、たとえば、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびそれらの組合せを含む一群の中から選択されるもの等である(ただし、これらに限定されない)。
【0072】
特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫測定用試薬は、標的分析物に結合する捕獲抗体および捕獲抗体に結合する検出抗体を含む。特定の実施形態において、免疫測定用試薬によって生成された信号は、凝集測定を介して検出され得る。
【0073】
本方法によって検出される標的ペプチドまたは蛋白質分析物は、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択することができる。
【0074】
本方法は、免疫測定におけるフック効果の干渉を最小限にする方法としてさらに定義され得る。
【0075】
特定の実施形態は、さらに免疫測定に使用される試薬キットに関するが、これは、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる、少なくとも1つの免疫測定用試薬と、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素とを含み、この際、少なくとも1つの色素の吸収帯は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合するとシフトする。
【0076】
キットの少なくとも1つの色素は、測定緩衝液(バッファ)中に存在してもよい。あるいは、少なくとも1つの色素は、乾燥試薬の様式であってもよい。
【0077】
キット中に存在する少なくとも1つの色素は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的または非特異的に結合することができる。
【0078】
キットの特定の実施形態において、少なくとも1つの色素は、pHインジケータであって、たとえば、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびこれらの組合せを含む一群の中から選択される(ただし、これらに限定されない)。
【0079】
キットの特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫測定用試薬は、標的分析物に結合する捕獲抗体および捕獲抗体に結合する検出抗体を含む。特定の実施形態において、免疫測定試薬によって生成された信号は、凝集測定を介して検出され得る。
【0080】
キットの特定の実施形態において、検出すべき標的ペプチドまたは蛋白質分析物は、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択することができる。
【0081】
特定の実施形態は、サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を決定するための免疫測定装置(デバイス)に関し、免疫測定装置は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性のあるサンプルを受容することができる少なくとも1つの区画(コンパートメント)を含み、少なくとも1つの区画は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると少なくとも1つの色素とを含み、その際、少なくとも1つの色素の吸収帯は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合するとシフトする。
【0082】
免疫測定装置は、さらに、互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画を含むものと定めることができ、この際、少なくとも1つの免疫測定試薬および少なくとも1つの色素は、同じ区画内に配置される。別の仕方として、免疫測定装置は、互いに流体連絡することが可能な少なくとも2つの区画を含むものと定めることができ、この際、少なくとも1つの免疫測定用試薬および少なくとも1つの色素が異なる区画内に配置される。
【0083】
免疫測定装置の少なくとも1つの色素は、測定用緩衝液中に存在してもよい。あるいは、少なくとも1つの色素は、乾燥試薬の様式であってもよい。
【0084】
免疫測定装置中に存在する少なくとも1つの色素は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的または非特異的に結合することができる。
【0085】
免疫測定装置の特定の実施形態において、少なくとも1つの色素は、pHインジケータであって、たとえば、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質測定用試薬、660nm蛋白質測定用試薬、およびこれらの組合せを含む一群の中から選択される(ただし、これらに限定されない)。
【0086】
免疫測定装置の特定の実施形態において、少なくとも1つの免疫測定用試薬は、標的分析物に結合する捕獲抗体および捕獲抗体に結合する検出抗体を含む。特定の実施形態において、免疫測定用試薬によって生成された信号は、凝集測定によって検出され得る。
【0087】
免疫測定装置の特定の実施形態において、検出対象の標的ペプチドまたは蛋白質分析物は、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択することができる。
【0088】
従って、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想に従い、上記の目的および利点を十分に満足するキット、免疫測定装置、および方法が提供される。本発明の技術思想は、上述した特定の語彙に関連して説明されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかになるだろう。従って、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想は、全てのそのような代替、修正、及び変形であって、本開示および/または特許請求の範囲に記載の発明の技術思想及び広範な範囲に含まれるものを含むことを意図している。
【0089】
以下は、例示的な実施形態に係る非限定的なリストである。
【0090】
1.サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を検出するための方法であって、
(a)
(1)標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性があるサンプルと、
(2)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、少なくとも1つの色素の吸収帯が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合するとシフトする、少なくとも1つの色素と、
(3)標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合すると直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬とを、
同時にまたは全体的若しくは部分的に順次組み合わせることと、
(b)(1)の標的ペプチドまたは蛋白質分析物への(2)および(3)の結合を行うことと、
(c)
(i)免疫測定用試薬によって生成された信号と、
(ii)少なくとも1つの色素の吸収帯と、
を検出することにより、標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を決定することの、各ステップを含む方法。
【0091】
2.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合する、実施形態1に記載の方法。
【0092】
3.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合する、実施形態1に記載の方法。
【0093】
4.少なくとも1つの色素が、pHインジケータである、例示的な実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
【0094】
5.少なくとも1つの色素が、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびそれらの組合せを含む一群の中から選択される、例示的実施形態4に記載の方法。
【0095】
6.少なくとも1つの免疫測定用試薬が、標的分析物に結合する捕獲抗体と、捕獲抗体に結合する検出抗体とを含む、例示的実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
7.免疫測定用試薬によって生成された信号が、凝集測定を介して検出される、例示的な実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法。
【0097】
8.標的ペプチドまたは蛋白質分析物が、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択される、例示的実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
9.免疫測定におけるフック効果の干渉を最小化する方法としてさらに定められる、例示的な実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
10.免疫測定に使用するための試薬キットであって、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する際に直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、この際、少なくとも1つの色素の吸収帯は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する際にシフトするもの、とを含む。
【0100】
11.少なくとも1つの色素が、測定用緩衝液中に存在する、例示的な実施形態10に記載の試薬キット。
【0101】
12.少なくとも1つの色素が、乾燥試薬の形態である、例示的な実施形態10に記載の試薬キット。
【0102】
13.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合する、例示的な実施形態10~12のいずれか1つに記載の試薬キット。
【0103】
14.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合する、例示的な実施形態10~12のいずれか1つに記載の試薬キット。
【0104】
15.少なくとも1つの色素が、pHインジケータである、例示的な実施形態10~14のいずれか1つに記載の試薬キット。
【0105】
16.少なくとも1つの色素が、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質分析用試薬、660nm蛋白質分析用試薬、およびこれらの組合せを含む一群の中から選択される、例示的実施形態15に記載の試薬キット。
【0106】
17.少なくとも1つの免疫測定用試薬が、標的分析物に結合する捕獲抗体と、捕獲抗体に結合する検出抗体とを含む、例示的な実施形態10-16のいずれか1つに記載の試薬キット。
【0107】
18.標的ペプチドまたは蛋白質分析物が、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択される、例示的実施形態10-17のいずれか1つに記載の試薬キット。
【0108】
19.サンプル中の標的ペプチドまたは蛋白質分析物の存在と濃度の双方または一方を決定するための免疫測定装置であって、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物を含む可能性があるサンプルを受け取ることができる少なくとも1つの区画を含み、少なくとも1つの区画は、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合することができ、かつ標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する際に直接的または間接的に信号を生成することができる少なくとも1つの免疫測定用試薬と、
標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合することができる少なくとも1つの色素であって、少なくとも1つの色素の吸収帯は、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に結合する際にシフトするもの、とを含む。
【0109】
20.互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画をさらに含み、この際、少なくとも1つの免疫測定用試薬と少なくとも1つの色素が同じ区画内に配置されることを特徴とする、例示的な実施形態19に記載の免疫測定装置。
【0110】
21.互いに流体連絡することができる少なくとも2つの区画をさらに含み、この際、少なくとも1つの免疫測定用試薬と少なくとも1つの色素が異なる区画内に配置されることを特徴とする、例示的な実施形態19に記載の免疫測定装置。
【0111】
22.少なくとも1つの色素が、乾燥試薬の形態で、少なくとも1つの区画内に存在する、例示的な実施形態19~21のいずれか1つの免疫測定装置。
【0112】
23.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に特異的に結合する、例示的な実施形態19~22のいずれか1つに記載の免疫測定装置。
【0113】
24.少なくとも1つの色素が、標的ペプチドまたは蛋白質分析物に非特異的に結合する、例示的な実施形態19~23のいずれか1つに記載の免疫測定装置。
【0114】
25.少なくとも1つの色素がpHインジケータである、例示的な実施形態19~24のいずれか1つに記載の免疫測定装置。
【0115】
26.少なくとも1つの色素が、チモールブルー、フェノールフタレイン、ユニバーサルpHインジケータ、クーマシー蛋白質測定用試薬、660nm蛋白質測定用試薬、およびそれらの組み合わせを含む一群の中から選択される、例示的実施形態25に記載の免疫測定装置。
【0116】
27.少なくとも1つの免疫測定用試薬が、標的分析物に結合する捕獲抗体と、捕獲抗体に結合する検出抗体とを含む、例示的な実施形態19~26のいずれか1つに記載の免疫測定装置。
【0117】
28.標的ペプチドまたは蛋白質分析物が、アルブミン、クレアチニン、ケトン、ビリルビン、ウロビリノーゲン、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1C)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェリチン、成長ホルモン、プロラクチン、およびチログロブリン(Tg)を含む一群の中から選択される、例示的実施形態19~27のいずれか1つに記載の免疫測定装置。