(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】弾性ポリマー-薬物マトリックス系を含む膀胱内薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220114BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20220114BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20220114BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20220114BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61M37/00 550
A61L31/06
A61L31/02
A61L31/14 400
A61L31/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020040265
(22)【出願日】2020-03-09
(62)【分割の表示】P 2016574388の分割
【原出願日】2015-06-26
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2014-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514274409
【氏名又は名称】タリス バイオメディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒジン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル,カレン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545505(JP,A)
【文献】国際公開第2013/013172(WO,A1)
【文献】特表2013-514837(JP,A)
【文献】特表2012-531277(JP,A)
【文献】国際公開第2013/177068(WO,A1)
【文献】米国特許第5062829(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61L 31/06
A61L 31/02
A61L 31/14
A61L 31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱内薬物送達デバイスであって、
第1の端部、反対の第2の端部、及び前記第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する細長本体を備え、
前記細長本体は、
前記第1の端部と第2の端部との間の方向に前記中間部分を通って延在し、薬物を含有する、第1のルーメンと、
前記第1の端部と第2の端部との間の方向に前記中間部分を通って延在する第2のルーメンであって、前記デバイスが、患者の尿道を通って膀胱内への前記デバイスの挿入に適した直線型の形状と、前記膀胱内の前記デバイスの保持に適したコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、前記細長本体を前記コイル型保持形状に付勢するように硬化される第1のシリコーンを含有する、第2のルーメンと、を備え、
前記第1のルーメン内の前記薬物は、前記薬物が第2のシリコーン中に分散したマトリックス系内にある、膀胱内薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記第2のシリコーンは、前記第1のシリコーンより低いデュロメータ値を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1のルーメンは第1のポリマー管により画定され、前記第2のルーメンは第2のポリマー管により画定され、
前記第2のポリマー管は、前記第1のポリマー管の内径より小さい外径を有し、
前記第2のポリマー管は前記第1のルーメン内に位置する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1のポリマー管は、水及び薬物透過性ポリマーを備える、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のシリコーンは、Shore75A~Shore88Aのデュロメータを有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
膀胱内薬物送達デバイスを作製するための方法であって、
薬物貯蔵部と、第1の端部、反対の第2の端部、及び前記第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する、細長弾性ポリマー管であって、前記中間部分は、前記第1の端部と第2の端部との間に延在する第1及び第2の細長ルーメンを備える、細長弾性ポリマー管とを有する、デバイス本体を提供することと、
薬物を前記第1の細長ルーメン内に入れることであって、前記第1のルーメン内に入れられた前記薬物は、第2のシリコーン中を含むマトリックス系内に分散されている、薬物を前記第1の細長ルーメン内に入れることと、
流体シリコーン材料を前記第2の細長ルーメン内に注入することと、
前記流体シリコーン材料を中に有する前記細長弾性ポリマー管を、コイル型膀胱保持形状に形成することと、
前記デバイス本体を備える膀胱内薬物送達デバイスが、患者の尿道を通って膀胱内への前記デバイスの挿入に適した直線型の形状と、前記膀胱内の前記デバイスの保持に適した前記コイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、前記デバイス本体を前記コイル型膀胱保持形状に付勢するように前記流体シリコーン材料を特定の温度範囲で固体弾性シリコーン材料に硬化することとを含む方法。
【請求項7】
前記流体シリコーン材料は、15℃から30℃の温度で硬化される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記固体弾性シリコーン材料は、Shore75A~Shore88Aのデュロメータを有する、請求項
6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の細長ルーメン内に入れられた前記薬物は、第2のシリコーンを含むマトリックス系中に分散される、請求項
6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のシリコーンは、前記第2の細長ルーメン内の前記硬化されたシリコーン材料より低いデュロメータ値を有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
膀胱内薬物送達デバイスであって、
第1の端部、反対の第2の端部、及び前記第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する細長本体を備え、
前記細長本体は、
前記第1の端部と第2の端部との間の方向に前記中間部分を通って延在し、薬物を含有する、第1のルーメンと、
前記第1の端部と第2の端部との間の方向に前記中間部分を通って延在する第2のルーメンであって、前記デバイスが、患者の尿道を通って膀胱内への前記デバイスの挿入に適した直線型の形状と、前記膀胱内の前記デバイスの保持に適したコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、前記細長本体を前記コイル型保持形状に付勢するように硬化される生体適合性ポリマーを含有する、第2のルーメンとを備え、
前記第1のルーメン内の前記薬物は、前記薬物が第2の生体適合性ポリマー中に分散したマトリックス系内にある、膀胱内薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記生体適合性ポリマーは、ポリウレタンを含む、請求項
11に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2014年6月26日に出願された米国仮特許出願第62/017,775号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して、薬物送達デバイスの分野に含まれ、より詳細には、長期間にわたる薬物の制御放出のために、患者内、例えば膀胱内に配置するためのデバイスの分野に含まれる。
【背景技術】
【0003】
膀胱への薬物の局所投与のためのデバイスが知られている。例えば、米国特許第8,679,094号は、長期間にわたる薬物の制御放出のために、患者の膀胱内に挿入され、そこで効果的及び許容可能に保持され得る、薬物送達用の膀胱内デバイスを説明している。しかしながら、例えば異なる種類の薬物の好適な放出動態を提供するために、代替の薬物送達デバイス設計を提供することが望ましい。
【0004】
さらに、患者の体内に挿入または移植されたデバイスからの強力な薬物の長期的な連続送達に関連し得る、用量ダンピング、原薬(API)の浪費、または他の課題等の潜在的問題を低減または排除するために、従来の薬物送達システムの代替設計を提供することが望ましい。特に、比較的製造/組立が容易であり、薬物の放出動態に悪影響を及ぼさないデバイスまたはシステムを提供することが望ましい。
【0005】
最後に、いくつかの場合において、デバイスの形状付勢特性を付与するために保持フレーム要素を使用することなく、膀胱保持形状を維持することができる弾性膀胱内薬物送達デバイスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、膀胱内薬物送達デバイスであって、シリコーン中に分散した薬物のマトリックス系で形成された細長本体を含み、細長本体は、第1の端部、反対の第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有し、マトリックス系のシリコーンは、デバイスが、患者の尿道を通した、及び膀胱内へのデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形状と、膀胱内のデバイスの保持に好適なコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、細長本体をコイル型保持形状に付勢するように硬化される、膀胱内薬物送達デバイスが提供される。
【0007】
別の態様において、膀胱内薬物送達デバイスであって、第1の端部、反対の第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する細長本体を含み、細長本体は、(i)第1の端部と第2の端部との間の方向に中間部分を通って延在し、薬物を含有する、第1のルーメンと、(ii)第1の端部と第2の端部との間の方向に中間部分を通って延在し、デバイスが、患者の尿道を通した、及び膀胱内へのデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形状と、膀胱内のデバイスの保持に好適なコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、細長本体をコイル型保持形状に付勢するように硬化される第1のシリコーンを含有する、第2のルーメンとを含む、膀胱内薬物送達デバイスが提供される。第1のルーメン内の薬物は、薬物が第2のシリコーン中に分散したマトリックス系内にあってもよく、第2のシリコーンは、第1のシリコーンより低いデュロメータ値を有してもよい。
【0008】
さらに別の態様において、膀胱内薬物送達デバイスであって、シリコーン中に分散した薬物のマトリックス系で形成された細長本体であって、第1の端部、反対の第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する細長本体と;細長本体に関連し、細長本体をコイル型保持形状に付勢するのに効果的である、弾性保持フレームとを有する、膀胱内薬物送達デバイスが提供される。弾性保持フレームは、ニチノールワイヤまたは他の超弾性ワイヤを含んでもよく、これらは、細長本体を通るルーメン内、または細長本体に隣接するルーメン内に配置されてもよい。
【0009】
さらなる態様において、薬物を必要とする患者にそれを投与するための方法が提供される。方法は、上記膀胱内薬物送達デバイスの1つを、患者内の組織部位内に挿入することと;デバイスから患者内の組織部位に薬物を放出することとを含む。挿入するステップは、患者の尿道を通して、及び患者の膀胱内にデバイスを通過させることを含んでもよい。例えば、挿入するステップは、デバイスを、尿道を通したデバイスの通過に好適な比較的直線型の形状に弾性変形させることと、次いで、デバイスを、膀胱内でコイル型保持形状に弾性変形させることとを含んでもよい。
【0010】
別の態様において、膀胱内薬物送達デバイスを作製するための方法が提供される。一実施形態において、方法は、第1の端部、反対の第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する、細長弾性ポリマー管であって、中間部分は、第1の端部と第2の端部との間に延在する細長ルーメンを備える、細長弾性ポリマー管を提供することと;シリコーン材料中に分散した薬物を含む流体マトリックス系を調製することと;流体マトリックス系を細長ルーメン内に注入することと;流体マトリックス系を中に有する細長ポリマー管を、コイル型膀胱保持形状に形成することと;固体弾性マトリックス系を備える膀胱内薬物送達デバイスが、患者の尿道及び膀胱を通したデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形状と、膀胱内のデバイスの保持に好適なコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、細長管をコイル型膀胱保持形状に付勢するように流体マトリックス系を固体弾性マトリックス系に硬化することとを含む。マトリックス系のシリコーンは、任意選択で白金硬化系を使用して、15℃から30℃の温度で硬化されてもよい。細長弾性ポリマー管は、第1の端部と第2の端部との間に延在する第2の細長ルーメンをさらに含んでもよく、第2の細長ルーメンは、(i)膀胱内でのデバイスの浮力を促進するために、ガス充填され、その端部で封止されてもよく、(ii)ニチノールワイヤもしくは他の超弾性ワイヤを備える弾性保持フレームを含んでもよく、または(iii)薬物を含まない高デュロメータシリコーンを含有してもよい。
【0011】
別の実施形態において、作製するための方法は、薬物貯蔵部と、第1の端部、反対の第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間の中間部分を有する、細長弾性ポリマー管であって、中間部分は、第1の端部と第2の端部との間に延在する第1及び第2の細長ルーメンを備える、細長弾性ポリマー管とを有する、デバイス本体を提供することと;薬物を第1の細長ルーメン内に入れることと;流体シリコーン材料を第2の細長ルーメン内に注入することと;流体シリコーンを中に有する細長ポリマー管を、コイル型膀胱保持形状に形成することと;デバイス本体を備える膀胱内薬物送達デバイスが、患者の尿道及び膀胱を通したデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形状と、膀胱内のデバイスの保持に好適なコイル型保持形状との間で弾性変形可能であるように、デバイス本体をコイル型膀胱保持形状に付勢するように流体シリコーン材料を固体弾性シリコーン材料に硬化することとを含む。シリコーン材料は、任意選択で白金硬化系を使用して、15℃から30℃の温度で硬化されてもよい。シリコーン材料は、高デュロメータシリコーンを含む。第1の細長ルーメン内に入れられた薬物は、第2のシリコーンを含むマトリックス系中に分散されてもよく、第2のシリコーンは、第2の細長ルーメン内の硬化されたシリコーン材料より低いデュロメータ値を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
詳細な説明は、添付の図面を参照して記載される。同じ参照数字の使用は、同様または同一のものを示し得る。様々な実施形態は、図面に示されるもの以外の要素及び/または成分を利用し得、いくつかの要素及び/または成分は、様々な実施形態において存在しなくてもよい。図中の要素及び/または成分は、縮尺通りに描かれているとは限らない。
【0013】
【
図1A】一方のルーメンが薬物-マトリックス系を含有する2つのルーメンを含む細長本体を有する薬物送達デバイスの一実施形態の斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示される薬物送達デバイスの線1B-1Bに沿った断面図である。
【
図2】一方のルーメンが薬物-マトリックス系を含有する2つのルーメンを含む細長本体を有する薬物送達デバイスの別の実施形態の断面図である。
【
図3】保持フレームを有さない、
図1A及び1Bに示される薬物送達デバイスの代替の実施形態の断面図である。
【
図4】保持フレームを有さない、
図2に示される薬物送達デバイスの代替の実施形態の断面図である。
【
図5】薬物-マトリックス系を通して延在するルーメンを含む細長本体を有する薬物送達デバイスの一実施形態の断面図である。
【
図6】薬物-マトリックス系を通して延在するルーメンを含む細長本体、及び薬物-マトリックス系の周りに配置される外壁層を有する薬物送達デバイスの別の実施形態の断面図である。
【
図7】保持フレームを有さない、
図5に示される薬物送達デバイスの代替の実施形態の断面図である。
【
図8】保持フレームを有さない、
図6に示される薬物送達デバイスの代替の実施形態の断面図である。
【
図9】3つのルーメンを含む細長本体を有する薬物送達デバイスの一実施形態の断面図であり、より小さいルーメンを画定する管は、最大ルーメンを画定する管の外側表面に沿って延在する。
【
図10】3つのルーメンを含む細長本体を有する薬物送達デバイスの第2の実施形態の断面図であり、より小さいルーメンを画定する管は、最大ルーメンを画定する管の内側表面(環内)に沿って延在する。
【
図11】本明細書に記載のような非円筒形構成の形態の細長本体の実施形態の断面図である。
【
図12】本明細書に記載のような非円筒形構成の形態の細長本体の別の実施形態の断面図である。
【
図13】本明細書に記載のような非円筒形構成の形態の細長本体のさらに別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
シリコーン-薬物マトリックス系、コイル型保持形状を提供するように付勢された高デュロメータシリコーン部分、またはそれらの組み合わせを含む、特に膀胱内挿入及び薬物投与用に構成され得る薬物送達デバイスが開発された。実施形態において、薬物の放出は、シリコーン-薬物マトリックス系からの薬物の拡散により制御される。これらの系は従来の薬物送達システムの代替設計を有利に提供し、用量ダンピングまたはAPIの浪費等の潜在的問題を低減または排除し得、これによって、デバイスは、例えばがんの治療において使用される薬物のいくつか等の強力な薬物に特に良く適したものとなり得る。さらに、いくつかの実施形態において、システムは、デバイスの所望の形状付勢特性を付与するために弾性ワイヤ保持フレーム要素を使用することなく、膀胱保持形状を維持することができる弾性膀胱内薬物送達デバイスを可能にする。
【0015】
薬物送達デバイス
薬物送達デバイスの一実施形態を、
図1A~1Bに示す。デバイス100は、第1の端部104、反対の第2の端部106、及び第1の端部104と第2の端部106との間に延在する中間部分108を有する細長本体102を含む。デバイス100は、細長本体102と関連した弾性保持フレーム110をさらに含む。弾性保持フレーム110は、ニチノールワイヤまたは他の超弾性ワイヤであってもよい。保持フレームは、圧縮負荷がない場合に重なったコイル形状を有する。他の実施形態において、弾性保持フレーム110は、高デュロメータシリコーンで形成されてもよい。
【0016】
弾性保持フレーム110は、デバイス100を膀胱または別の体腔内に保持するのに好適な、図示される例示的な「プレッツェル」形状または別のコイル型形状等の保持形状に、細長本体102を付勢するのに効果的である。例えば、弾性保持フレーム110は、比較的直線型の形状でデバイス100が体腔内に導入されるのを可能にし、一旦体腔内に入ったらデバイス100を保持形状に復元させ、また予期される力に応じてデバイス100が体内で比較的直線型の形状となるのを妨げる、弾性限界、弾性率、及び/またはばね定数を有し得る。そのような構成は、予期される力によりデバイス100が体から偶発的に押し出されるのを制限または防止し得る。例えば、デバイス100は、排尿または排尿筋の収縮の間、膀胱内に保持され得る。具体的な実施形態において、薬物送達デバイス100は、患者の尿道を通した、及び患者の膀胱内へのデバイスの挿入に好適な比較的直線型の形態と、膀胱内のデバイスの保持に好適なコイル型保持形状との間で弾性変形可能である。この実施形態におけるデバイスは、カテーテルまたは膀胱鏡等の配置機器の狭い管状経路を通して適合するようなサイズ及び形状である。
【0017】
本明細書において使用される場合、「コイル型保持形状」という用語は、一般に、体内の意図される場所にデバイスを保持するのに好適な任意の形状を指し、例えば膀胱内にデバイスを保持するのに好適な
図1Aに示されるコイル型形状を含むが、これに限定されない。同様に、「比較的直線型の形状」という用語は、一般に、体内への薬物送達デバイスの配置に好適な任意の形状を指す。例えば、尿道等の体の内腔内に位置付けられたカテーテル、膀胱鏡、または他の配置機器の作業チャネルを通してデバイスを配置するのに好適な直線型または細長い形状である。実施形態において、薬物送達デバイスは、自然に保持形状となることができ、また手作業で、または外部装置の補助により、体内への挿入のための比較的直線型の形状に変形され得る。一旦配置されたら、デバイスは、体内での保持のために、自発的または自然に初期の保持形状に復元し得る。
【0018】
図1Bに示されるように、細長本体110は、第1のルーメン114を画定する第1の弾性管状構造または管112と、第2のルーメン122を画定する第2の弾性管状構造または管120とを含む。第1のルーメン114には、シリコーン(または別の可撓性生体適合性ポリマー)内に分散された薬物のマトリックス系124が入れられる。マトリックス系124は、マトリックス系からの薬物がin vivoでマトリックス系から管112の壁を通して拡散するように、一般に管112の内側表面116と直接接触している。第2のルーメン122は、この実施形態において、中に位置付けられた弾性保持フレーム110を含む。第1及び第2のルーメン114、122は、長手方向に配列し、管112及び120は、それらの長さに沿って、管の外側表面の領域で互いに結合されている、または互いに一体的に形成されている。管は、この領域において壁構造を共有する。管120は、管112の外側表面118に接続されているものとしてみなされてもよい。他の構成もまた想定される。例えば、管112は、離散した点で管120に取り付けられてもよく、他の点ではそこから離れていても、または離間してもよい。
【0019】
別の実施形態を
図2に示す。薬物送達デバイス200は、マトリックス系224で充填された第1のルーメン214を画定する第1の弾性管状構造または管212と、第2のルーメン222を画定する第2の弾性管状構造または管220とを有する、細長本体202を含む。マトリックス系224は、シリコーン(または別の可撓性生体適合性ポリマー)内に分散された薬物を含み、マトリックス系からの薬物がin vivoでマトリックス系から管212の壁を通して拡散するように、一般に管212の内側表面216と直接接触している。第2のルーメン222は、この実施形態において、中に位置付けられた弾性保持フレーム210を含む。第1及び第2のルーメン214、222は、長手方向に配列し、管212及び220は、それらの長さに沿って、管212の内側表面216、及び管220の外側表面の領域で互いに結合されている、または互いに一体的に形成されている。管は、この領域において壁構造を共有する。
【0020】
デバイス200においては、保持フレーム及びそのルーメンは、薬物マトリックス系と同じ(より大きい)ルーメン内に位置付けられており、一方、デバイス100においては、保持フレーム及びそのルーメンは、薬物マトリックス系を含有するルーメンの外側に位置付けられているため、デバイス200は、デバイス100より小さい断面プロファイルを有し得る。より小さいプロファイルは、配置及び回収の容易性を促進することができ、したがって、付随するマトリックス系体積(及び薬物搭載量)の損失が許容される場合には、好ましくなり得る。
【0021】
実施形態において、膀胱内デバイスは、ニチノールまたは別の超弾性合金または他の材料で作製されたもの等の弾性ワイヤの使用なしに弾性変形可能なコイル型保持形状を有することが望ましくなり得る。これは、材料が所望のコイル型保持形状にある間にシリコーン(または他の生体適合性弾性ポリマー)を硬化することを含む、いくつかの異なる手法の1つで達成され得、硬化したシリコーンは、十分であるが過度ではない弾性変形に対する抵抗性を有する。膀胱内デバイスの具体的な実施形態において、シリコーンは、高デュロメータ値を有するように選択される。本明細書において使用される場合、「高デュロメータ」という用語は、Shore 75AからShore 88Aを意味する。例えば、高デュロメータシリコーンは、シリコーンが対象となる薬物に適合する場合、マトリクス系内で使用され得る。薬物が高デュロメータシリコーンと適合しない実施形態においては、高デュロメータシリコーンは、膀胱内デバイスの薬物から離れた領域に、例えばそれ自身のデバイスルーメン内に含まれてもよい。1つの場合において、低デュロメータシリコーンは、デバイスの一部において薬物マトリックス系内で使用されてもよく、一方、より高い(及び高い)デュロメータのシリコーンは、所望の形状保持特性を付与するために、デバイスの別個の場所に提供される。
【0022】
図3及び4は、それぞれ、デバイス300及びデバイス400を示し、薬物マトリックス系324、424は、それら自身、デバイス300、400の弾性コイル状保持形状機能を付与するのに効果的である。細長本体302, 402は、それぞれ、薬物と、デバイスを十分なばね定数を有するコイル型保持形状に付勢するための好適なシリコーン(または他の生体適合性弾性ポリマー材料)、例えば高デュロメータシリコーンとで形成される、マトリックス系324、424を含む。ルーメン322及び422は、シリコーンの硬化中に弾性保持フレームを一時的に収納するために使用され得る。特に有利な実施形態において、ルーメン322及び422は、空気または別の生体適合性ガスで充填され、次いでそれらの端部で封止される。捕捉されたガスは、膀胱内の尿中でのデバイスの浮力を促進し、これは、膀胱内でのデバイスの保持を補助することができ、おそらくは、患者によるデバイスの耐容性または非認識性をさらに促進し得る。
【0023】
デバイス300及び400の相対的利点及び妥協点は、デバイス100及び200に関して上述されたものと同様である。別の実施形態において、図示されないが、ルーメン322及び422(ならびにこれらのルーメンを画定する壁構造)は省略される。
【0024】
薬物送達デバイスの別の実施形態を、
図5に示す。薬物送達デバイス500は、マトリックス系524(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)で形成された細長本体502を含み、細長本体の全長を通って延在する弾性環状管構造512を有する。環状管構造は、細長本体502の中間部分を通って反対の端部間に延在するルーメン514を画定する。ニチノールワイヤ等の弾性保持フレーム510が、ルーメン514内に配置される。代替の実施形態において、弾性保持フレーム510は、コイル型保持形状で硬化された高デュロメータシリコーンで置き換えられてもよい。
【0025】
図6は、
図5に示される薬物送達デバイス500の別の可能な変形例を示す。薬物送達デバイス600は、細長本体の全長を通って延在する弾性環状管構造612を有するマトリックス系624(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)で形成された細長本体602を含む。環状管構造は、細長本体602の中間部分を通って反対の端部間に延在するルーメン614を画定する。ニチノールワイヤ等の弾性保持フレーム610が、ルーメン614内に配置される。薬物送達デバイス600は、さらに、細長本体602の少なくとも中間部分を覆う外壁層626を含む。外壁層626は、マトリックス系624と共に弾性変形可能であり、例えばシリコーン、ポリウレタン、または別の水及び薬物透過性弾性材料で形成された環状管構造であってもよい。外壁層の厚さ及び組成は、マトリックス系の製造を容易化するために、薬物の放出を制御するために、またはその両方のために選択され得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、弾性保持フレームは省略される。そのようなデバイスの例を、
図7及び8に示す。
図7において、薬物送達デバイス700は、マトリックス系724(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)で形成された細長本体702を含み、細長本体の全長を通って延在する弾性環状管構造712を有する。環状管構造は、細長本体702の中間部分を通って反対の端部間に延在するルーメン714を画定する。同様に、
図8において、薬物送達デバイス800は、マトリックス系824(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)で形成された細長本体802を含み、細長本体の全長を通って延在する弾性環状管構造812を有する。環状管構造は、細長本体802の中間部分を通って反対の端部間に延在するルーメン814を画定する。薬物送達デバイス800は、さらに、細長本体802の少なくとも中間部分を覆う外壁層826を含む。外壁層826は、マトリックス系824と共に弾性変形可能であり、例えばシリコーン、ポリウレタン、または別の水及び薬物透過性弾性材料で形成された環状管構造であってもよい。
【0027】
これらの実施形態において、マトリックス系724、824は、薬物と、デバイスを十分なばね定数を有するコイル型保持形状に付勢するための好適なシリコーン(または他の生体適合性弾性ポリマー材料)、例えば高デュロメータシリコーンとで形成されてもよい。そのような場合において、ルーメン714及び814は、シリコーンの硬化中に弾性保持フレームを一時的に収納するために使用され得る。特に有利な実施形態において、ルーメン714及び814は、空気または別の生体適合性ガスで充填され、次いでそれらの端部で封止される。捕捉されたガスは、膀胱内の尿中でのデバイスの浮力を促進し、これは、膀胱内でのデバイスの保持を補助することができ、おそらくは、患者によるデバイスの耐容性または非認識性をさらに促進し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、あらゆる理由で選択された薬物は、高デュロメータシリコーン中に分配するには好適でない可能性がある。そのような場合、高デュロメータシリコーンが、薬物を含有する区画から離れた区画内にある薬物送達デバイスを提供することが望ましくなり得、この薬物は、マトリックス系内にあっても、またはなくてもよい。そのようなデバイスの例を、
図9及び10に示す。
【0029】
そのような薬物送達デバイスの一実施形態を、
図9に示す。薬物送達デバイス900は、細長本体の端部の間に同じ方向に延在する3つのルーメン914、922、930を含む細長本体902を有する。第1のルーメン914は、部分的に第1の弾性管状構造または管912により画定され、部分的に第2の弾性管状構造または管920により画定される。第1のルーメン914には、マトリックス系924(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)が入れられている。第2のルーメン922は、第2の管920により画定され、デバイスを十分なばね定数を有するコイル型保持形状に付勢するための好適なシリコーン928(または他の生体適合性弾性ポリマー材料)、例えば高デュロメータシリコーンが入れられている。一実施形態において、シリコーン928は、マトリックス系924のマトリックス材料より大きいデュロメータ値を有する。第1及び第2の管912及び920は、それらの長さに沿った領域で互いに結合されている、または互いに一体的に形成されている。第3のルーメン930は、部分的に第3の弾性管状構造または管932により画定され、これもまた、それらの長さに沿った領域で管912及び/または920に結合され、または一体的に形成され、管912及び/または920の環の外側の位置で接続されている。示された実施形態において、管912、920及び932は、同じ領域で壁構造を共有している。第3のルーメン930は、シリコーン928の硬化中に弾性保持フレームを一時的に収納するために使用され得る。特に有利な実施形態において、ルーメン930は、空気または別の生体適合性ガスで充填され、次いでそれらの端部で封止される。捕捉されたガスは、膀胱内の尿中でのデバイスの浮力を促進し、これは、膀胱内でのデバイスの保持を補助することができ、おそらくは、患者によるデバイスの耐容性または非認識性をさらに促進し得る。
【0030】
図10は、3つのルーメンを有する薬物送達デバイスの別の実施形態を示す。薬物送達デバイス1000は、細長本体の端部の間に同じ方向に延在する3つのルーメン1014、1022、1030を含む細長本体1002を有する。第1のルーメン1014は、部分的に第1の弾性管状構造または管1022により画定され、部分的に第2の弾性管状構造または管1020により画定される。第1のルーメン1014には、マトリックス系1024(例えば、シリコーンマトリックス中に分散した薬物)が入れられている。第2のルーメン1022は、部分的に第2の管1020により、また部分的に第3の管状構造または管1032により画定される。第2のルーメン1022には、デバイスを十分なばね定数を有するコイル型保持形状に付勢するための好適なシリコーン1028(または他の生体適合性弾性ポリマー材料)、例えば高デュロメータシリコーンが入れられている。一実施形態において、シリコーン1028は、マトリックス系1024のマトリックス材料より大きいデュロメータ値を有する。第1、第2及び第3の管1012、1020及び1032は、それらの長さに沿った1つ以上の領域で互いに結合され、または一体的に形成され、管1032は、管1012及び1020の環内の位置で接続されている。第3のルーメン1030は、シリコーン1028の硬化中に弾性保持フレームを一時的に収納するために使用され得る。特に有利な実施形態において、ルーメン1030は、空気または別の生体適合性ガスで充填され、次いでそれらの端部で封止される。捕捉されたガスは、膀胱内の尿中でのデバイスの浮力を促進し、これは、膀胱内でのデバイスの保持を補助することができ、おそらくは、患者によるデバイスの耐容性または非認識性をさらに促進し得る。
【0031】
デバイス900及び1000がin vivoで操作される場合、薬物は、マトリックス系924、1024から、水及び薬物透過性エラストマー材料で形成された環912、1012の壁を通って拡散する。
【0032】
代替の実施形態において、マトリックス系924、1024は、マトリックス材料を含まなくてもよい別の形態の薬物と置き換えられる。例えば、薬物は、粉末形態、または、ルーメン内に挿入され得るフィルム等の成形形態であってもよい。
【0033】
図5~8に示されるデバイスの実施形態の操作において、薬物は、マトリックス系の円筒表面から拡散する(また、
図6及び8のデバイスの場合には、さらに外壁層を通して拡散する)。いくつかの薬物及びマトリックス系に関して、薬物放出特性を改変するために、マトリックス系の表面積を増加させることが望ましくなり得る。しかしながら、デバイス、特に尿道を通して挿入可能であることが意図される膀胱内デバイスは、全体的サイズの制限を有する。したがって、マトリックス系は、最大断面寸法を増加させずに増加した外側表面積を有するように設計され得る。そのような非円筒形細長本体の制限されない例を、
図11~13に示す。デバイス1102は、細長本体の端部の間に延在するルーメン1114を含むマトリックス系1124で形成される。デバイス1202は、細長本体の端部の間に延在するルーメン1214を含むマトリックス系1224で形成される。デバイス1302は、細長本体の端部の間に延在するルーメン1314を含むマトリックス系1324で形成される。他の形状も想定される。ルーメン1114、1214、1314は、保持フレーム、捕捉ガス、または、デバイスを十分なばね定数を有するコイル型保持形状に付勢するための好適なシリコーン(または他の生体適合性弾性ポリマー材料)、例えば高デュロメータシリコーンを含有してもよい。デバイス1102、1202、1302は、任意選択で、マトリックス系1124、1224、1324の上に外壁層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0034】
上述のデバイスの細長本体の長さは、配置する特定の部位、挿入経路、薬物、投薬計画、及びデバイスの治療応用を含む様々な因子に依存して選択され得る。一実施形態において、細長本体は、10cmから15cmの長さである。実施形態において、少なくとも部分的に細長本体を形成するために使用されるポリマー材料は、デバイスを比較的直線型の形状と保持形状との間で動かすことを可能にするために、弾性または可撓性であってもよい。細長本体は、弾性材料、またはデバイスを保持形状に付勢するために必要な弾性率もしくはばね定数を有する材料で形成されてもよい。
【0035】
マトリックス系
マトリックス系は、シリコーンまたは他の好適なポリマーマトリックス材料中に分散した1種以上の薬物を含む。マトリックス系は、さらに、当該技術分野において知られている1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。マトリックス系中の薬物の量は変動し得る。一実施形態において、薬物は、約1重量%から約20重量%の量でマトリックス系中に存在する。例えば、薬物の量は、マトリックス系の5重量%から20重量%の間、または5重量%から15重量%の間であってもよい。例えば薬物及びポリマー材料に依存して、より少ない、またはより多い薬物の量もまた可能である。
【0036】
マトリックス材料
好ましい実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、薬物に対する有害作用なしに、または無視できる有害作用を伴って薬物と混合され、形状設定(例えば硬化)され得るものであるように選択される。ある特定の実施形態において、ポリマーマトリックス材料は、生体適合性エラストマーを含む。限定されない例は、シリコーン及びポリウレタンを含む。好ましい実施形態において、シリコーンまたは他のマトリックス材料は、室温で、または室温付近で、例えば約15℃から約30℃で硬化され得るものである。いくつかの薬物に対して好適となり得る別の実施形態において、シリコーンまたは他のマトリックス材料は、約15℃から約65℃以下の温度で硬化され得るものである。好ましい実施形態において、シリコーンまたは他のマトリックス材料は、例えば過酸化物硬化系と比較して、有利にはいかなる抽出可能物質も生成しない白金硬化系を使用して硬化される。
【0037】
いくつかの実施形態において、シリコーンまたは他のマトリックス材料は、45 Shore Aから88 Shore Aのデュロメータ値を有する。好ましい実施形態において、シリコーンまたは他のマトリックス材料は、上で定義されたような高デュロメータ値を有する。
【0038】
マトリックス材料は、生体分解性または非生体分解性であってもよい。本明細書において使用される場合、「生体分解性」という用語は、材料が、溶解、酵素加水分解、浸食、吸収、またはそれらの組み合わせによりin-vivoで分解することを意味する。非生体分解性材料の例は、ポリ(エーテル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ウレタン)、セルロース、酢酸セルロース、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)及び他のフッ素化ポリマー、ポリ(シロキサン)、ならびにそれらのコポリマーを含む。生体分解性材料の例は、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、偽ポリ(アミノ酸)、ポリ(グリセロール-セバケート)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)(PC)誘導体、アミノアルコール系ポリ(エステルアミド)(PEA)、及びポリ(オクタン-ジオールシトレート)(POC)を含む。PC系ポリマーは、エラストマー特性を得るために、リシンジイソシアネートまたは2,2-ビス(ε-カプロラクトン-4-イル)プロパン等の追加的な架橋剤を必要とし得る。
【0039】
細長本体が1つ以上の壁構造、例えば管を含む実施形態において、壁構造は、上述のマトリックス材料と同じまたは異なる弾性ポリマー材料から形成されてもよい。患者への薬物放出が壁構造またはその一部を通過しなければばらないように、壁構造が薬物またはマトリックス系の上に位置付けられる実施形態においては、壁構造は、好ましくは、水及び薬物透過性材料で形成される。好ましい実施形態において、細長本体における1つ以上のルーメンを画定する壁(複数を含む)は、シリコーンで形成される。
【0040】
薬物
薬物は、膀胱に局所的に、または別の泌尿生殖器組織部位に局部的に送達するのに有用であるもの等の、本質的に任意の治療薬剤、予防薬剤または診断薬剤を含み得る。本明細書において使用される場合、本明細書に記載の任意の特定の薬物に関する「薬物」という用語は、その代替の形態、例えば塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、及び水和物を含む。薬物は、小分子薬物または生物学的であってもよい。薬物は、代謝産物であってもよい。当該技術分野において知られている薬学的に許容される賦形剤が、薬物と共にマトリックス系中に含まれてもよい。
【0041】
薬物は、様々な形態で生体適合性材料中に分散され得る。例えば、薬物は、粉末または顆粒形態であってもよい。薬物及びポリマーマトリックス材料は、当該技術分野において知られている任意の好適なプロセス及び機器を使用して互いに混合され得る。薬物は、均質または不均質にポリマーマトリックス材料中に分散されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、薬物は、高溶解度薬物である。本明細書において使用される場合、「高溶解度」という用語は、37℃で約10mg/mL超の水溶解度を有する薬物を指す。他の実施形態において、薬物は、低溶解度薬物である。本明細書において使用される場合、「低溶解度」という用語は、37℃で約0.01mg/mLから約10mg/mLの水溶解度を有する薬物を指す。薬物の溶解度は、少なくとも部分的にその形態により影響され得る。例えば、水溶性塩の形態の薬物は、高い溶解度を有し得、一方塩基形態の同じ薬物は、低溶解度を有し得る。
【0043】
一実施形態において、デバイスは、患者に鎮痛を提供する。種々の麻酔剤、鎮痛剤、及びこれらの組み合わせが使用されてもよい。実施形態において、デバイスは、1つ以上の麻酔剤を送達する。麻酔剤は、コカイン類似体でもよい。実施形態において、麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、またはこれらの組み合わせである。アミノアミドまたはアミド型麻酔薬の代表的な例は、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、及びトリメカインを含む。アミノエステルまたはエステル型麻酔薬の代表的な例は、アミロカイン、ベンゾカイン、ブタカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ヘキシルカイン、ラロカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、オルトカイン、ピペロカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、プロキシメタカイン、リソカイン、及びテトラカインを含む。これらの麻酔薬は、一般に弱塩基で、水溶性になるように塩酸塩等の塩として配合され得るが、麻酔薬もまた遊離塩基または水和物形態で使用され得る。ロントカイン(lontocaine)等の他の麻酔薬もまた、使用され得る。薬物はまた、オキシブチニンまたはプロピベリン等の麻酔薬効果を呈する抗ムスカリン化合物でもよい。薬物はまた、単独または麻酔剤と組み合わせて、本明細書に記載される他の薬物を含んでもよい。
【0044】
ある特定の実施形態において、鎮痛剤はオピオイドを含む。オピオイド作用薬の代表的な例は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼンフェンタニル(etonitazene fentanyl)、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロヒネ(myrophine)、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、阿片、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、これらの薬学的に許容される塩、及びこれらの混合物を含む。μ、κ、δ、及び痛覚オピオイド受容体作用薬等の他のオピオイド薬物が、企図される。
【0045】
他の好適な鎮痛剤の代表的な例は、サリチルアルコール、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサール、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、及びナプロキセンのような作用剤を含む。
【0046】
ある特定の実施形態において、薬物送達デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、術後痛、及び腎臓結石等の炎症状態を治療するために使用される。これらの状態に対する特定の薬物の限定されない例は、リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、硫酸コンドロイチン、スロデキシド)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、ケトロラク、またはそれらの組み合わせを含む。腎臓結石に対しては、薬物(複数種を含む)は、疼痛を治療するように、及び/または腎結石の溶解を促進するように選択され得る。
【0047】
ICの治療に使用され得る薬物の他の限定されない例は、神経成長因子モノクローナル抗体(MAB)拮抗薬、例えばタネズマブ、及びカルシウムチャネルα-2-δ調整薬、例えばPD-299685またはガベペンチン(gabepentin)を含む。
【0048】
他の膀胱内がん治療は、アパジコン、アドリアマイシン、AD-32、ドキソルビシン、ドキセタキセル(doxetaxel)、エピルビシン、ゲムシタビン、HTI-286(ヘミアスタリン類似体)、イダルビシン、γ-リノレン酸、ミトザントロン、メグルミン及びチオテパ等の小分子、活性化マクロファージ、活性化T細胞、EGF-デキストラン、HPC-ドキソルビシン、IL-12、IFN-a2b、IFN-γ、α-ラクトアルブミン、p53アデノベクター、TNFα等の大分子、エピルビシン+BCG、IFN+ファルマルビシン(farmarubicin)、ドキソルビシン+5-FU(経口)、BCG+IFN、及び百日咳毒素+膀胱切除術等の組み合わせ、マクロファージ及びT細胞等の活性化細胞、IL-2及びドキソルビシン等の膀胱内の注入、BCG+アンチフィリノリティクス(antifirinolytics)(パラメチル安息香酸またはアミノカプロン酸)及びドキソルビシン+ベラピミル(verapimil)等の化学療法増感剤、ヘキシルアミノレブリン酸、5-アミノレブリン酸、ヨードデキシウリジン(Iododexyuridine)、HMFG1Mab+Tc99m等の診断剤/画像化剤、ならびにホルマリン等の局所毒性(出血性膀胱炎)の管理用薬剤を含む。
【0049】
一実施形態において、尿管ステント配置から生じる痛み、尿意切迫感、または頻尿を治療する等、尿管ステントの配置に関連して、薬物送達デバイスが使用される。処置のための特定の薬物の非限定的な例は、とりわけ、抗ムスカリン、β遮断薬、麻酔、及びフェナゾピリジンを含む。
【0050】
薬物送達デバイスは、例えば、切迫尿失禁及び神経因性失禁を含む、尿失禁、失禁、または尿意切迫感ならびに三角炎を治療するために使用され得る。使用され得る薬物は、抗コリン薬、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、β-2作用薬、αアドレナリン、抗痙攣薬、ノルエピネフリン吸収阻害剤、セロトニン吸収阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル開口薬、及び筋弛緩剤を含む。失禁の処置に好適な薬物の代表的な例は、オキシブチニン、S-オキシブチチン(S-oxybutytin)、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスシアミン(hyoscyamin)、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、臭化クリジニウム、ジサイクロミンHCl、グリコピロレートアミノアルコールエステル、臭化イプラトロピウム、臭化メペンゾラート、臭化メトスコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、臭化イオトロピウム(iotropium bromide)、フェソテロジンフマル酸塩、YM-46303(Yamanouchi Co.、Japan)、ランペリゾン(Nippon Kayaku Co.、Japan)、イナペリゾン、NS-21(Nippon Shinyaku Orion、Formenti、Japan/Italy)、NC-1800(Nippon Chemiphar Co.、Japan)、ZD-6169(Zeneca Co.、United Kingdom)、及びヨウ化スチロニウム(stilonium iodide)を含む。
【0051】
別の実施形態において、薬物送達デバイスは、膀胱がん及び前立腺がん等の尿路がんを治療するために使用される。使用され得る薬物は、抗増殖剤、細胞毒性剤、化学療法剤、またはそれらの組み合わせを含む。尿路がんの治療に好適となり得る薬物の代表例は、カルメットゲラン桿菌(BCG)ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、バルルビシン、ゲムシタビン、マイコバクテリア細胞壁-DNA複合体(MCC)、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、ロイプロリド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、選択的エストロゲン受容体調整薬(すなわち、タモキシフェン等のSERM)、ボツリヌス毒素及びシクロホスファミドを含む。薬物は、生物学的なものであってもよく、モノクローナル抗体、TNF阻害薬、アンチロイキン等を含んでもよい。薬物はまた、イミキモドまたは別のTLR7作動薬を含むTLR作動薬等の免疫調節薬であってもよい。薬物はまた、とりわけ、線維芽細胞成長因子受容体-3(FGFR3)-選択的チロシンキナーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤、もしくはマイトゲン活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)阻害剤、またはこれらの組み合わせ等のキナーゼ阻害剤でもよい。他の例は、セレコキシブ、エロロチニブ(erolotinib)、ゲフィチニブ、パクリタキセル、ポリフェノンE、バルルビシン、ネオカルチノスタチン、アパジコン、ベリノスタット、インゲノールメブテート、ウロシジン(MCC)、プロキシニウム(Proxinium)(VB4845)、BC819(BioCancell Therapeutics)、キーホールリンペットヘモシアニン、LOR2040(Lorus Therapeutics)、ウロカニン酸、OGX427(OncoGenex)及びSCH721015(Schering-Plough)を含む。薬物処置は、癌組織を標的とする従来の放射線または外科的治療法と組み合わされてもよい。
【0052】
別の実施形態において、薬物送達デバイスは、膀胱、前立腺及び尿道に関わる感染症を治療するために使用される。抗生物質、抗菌剤、抗真菌剤、抗原虫剤、防腐剤、抗ウイルス剤及び他の抗感染剤が、そのような感染症の処置のために投与され得る。感染症の処置用薬物の代表的な例は、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、スルホンアミドトリメトプリムスルファメトキサゾール、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、カナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、及びアミノグリコシドを含む。
【0053】
他の実施形態において、薬物送達デバイスは、膀胱または子宮等の泌尿生殖器部位の線維症の治療に使用される。線維症の処置用薬剤の代表的な例は、ペントクスフィリン(pentoxphylline)(キサンチン類似体)、抗TNF、抗TGF剤、GnRH類似体、外因性プロゲスチン、抗プロゲスチン、選択的エストロゲン受容体調節薬、ダナゾール、及びNSAIDを含む。
【0054】
薬物送達デバイスはまた、神経因性膀胱を治療するためにも使用され得る。神経因性膀胱の処置用の薬物の代表的な例は、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、及びロピバカイン等の鎮痛薬または麻酔薬、抗コリン薬、オキシブチニンまたはプロピベリン等の抗ムスカリン、カプサイシンまたはレシニフェラトキシン等のバニロイド、M3ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に作用するもの等の抗ムスカリン、バクロフェン等のGABAB作用薬を含む鎮痙薬、ボツリヌス毒素、カプサイシン、αアドレナリン拮抗薬、抗痙攣薬、アミトリプチリン等のセロトニン吸収阻害剤、ならびに神経成長因子拮抗薬を含む。様々な実施形態において、薬物は、Reitz et al.,Spinal Cord 42:267-72(2004)に記載されるとおり、膀胱求心性神経に作用するものまたは遠心性コリン作動性伝達に作用するものでもよい。
【0055】
一実施形態において、薬物は、神経病学的な排尿筋過活動及び/または排尿筋の低い柔軟性に起因する尿失禁の治療用として知られているものから選択される。これらの種類の薬物の例は、膀胱弛緩薬(例えば、オキシブチニン(顕著な筋弛緩活性及び局所麻酔活性を有する抗ムスカリン剤)、プロピベリン、インプラトロプリウム、チオトロピウム、トロスピウム、テロジリン、トルテロジン、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、フラボキセート及び三環系抗うつ薬、膀胱及び尿道を支配する神経を遮断する薬物(例えば、バニロイド(カプサイシン、レシニフェラトキシン)、ボツリヌス毒素A)、または排尿筋収縮強度、排尿反射、排尿筋括約筋協調不全を調整する薬剤(例えば、GABAb作動薬(バクロフェン)、ベンゾジアザピン)を含む。別の実施形態において、薬物は、神経病学的な括約筋不全に起因する尿失禁の治療用として知られているものから選択される。これらの薬物の例は、αアドレナリン作動薬、エストロゲン、βアドレナリン作動薬、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン)を含む。さらに別の実施形態において、薬物は、排尿を促進することが知られているものから選択される(例えば、αアドレナリン拮抗薬(フェントラミン)またはコリン作動薬)。さらに別の実施形態において、薬物は、抗コリン作動薬(例えば、ジサイクロミン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル)、トロパンアルカロイド(例えば、アトロピン、スコポラミン)、ノシセプチン/オルファニンFQ及びベタネコール(例えば、m3ムスカリン作動薬、コリンエステル)の中から選択される。
【0056】
弾性保持フレーム
上述のように、薬物送達デバイスのいくつかの実施形態は、デバイスの細長本体をコイル型保持形状に付勢するために、弾性ワイヤ、すなわち弾性保持フレームを含む。
【0057】
弾性保持フレームは、デバイスが保持形状と比較的直線型の形状との間で弾性変形可能であるように、デバイス構造に弾性を付与するように動作可能である。一実施形態において、弾性保持フレームは、コイル型保持形状を有するように付勢され(すなわち、自然にその形状となり)、体内への挿入のために比較的直線型の形状に操作されてもよく、次いで、患者の膀胱または他の体腔内への挿入後、保持形状に回復する。比較的直線型の形状の弾性保持フレームは、カテーテルまたは膀胱鏡等の配置機器の作業チャネルを通して体内に挿入するための形状であってもよい。この機能を達成するために、弾性保持フレームは、一旦デバイスが患者内に設置されたらそれが比較的直線型の形状となるのを妨げるように選択された、弾性限界、弾性率及び/またはばね定数を有する。そのような構成は、予期される力によりデバイスが体から偶発的に押し出されるのを制限または防止し得る。例えば、デバイスは、排尿または排尿筋の収縮の間、膀胱内に保持され得る。弾性保持フレームの様々な例は、米国特許出願公開第2009/0149833号及び米国特許出願公開第2011/0152839号に記載されている。
【0058】
弾性保持フレームは、細長本体に、ひいてはデバイスに好適な弾性率またはばね定数を付与するのに効果的な任意の弾性材料で形成され得る。弾性ワイヤは、ニチノール等の超弾性合金、または別の超弾性合金から形成され得る。
【0059】
実施形態において、弾性保持フレームは、デバイスを膀胱等の体腔内に保持するのに十分高いばね定数を有する形態であってもよい。高弾性率材料、または低弾性率材料が使用されてもよい。特に、低弾性率材料が使用される場合、弾性保持フレームは、ばね定数を提供する直径及び/または形状を有してもよく、このばね定数がないと、フレームは排尿の力の作用下で著しく変形する。例えば、弾性保持フレームは、所望のばね定数、例えば約3N/mから約60N/mの範囲内、またはより具体的には約3.6N/mから約3.8N/mの範囲内のばね定数を達成するために特に設計された、1つ以上の巻回、コイル、螺旋、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。プレッツェル形状をとる弾性保持フレームは、圧縮力に対して比較的抵抗性となり得る。プレッツェル形状は、本質的に、それぞれが独自のより小さい弓状部を有し、また共通したより大きな弓状部を共有する、2つの部分円構造を備える。プレッツェル形状が最初に圧縮されると、より大きな弓状部が圧縮力の大部分を吸収して変形し始めるが、圧縮を継続すると、より小さな弓状部が重なり、その後、3つ全ての弓状部が圧縮力に抵抗する。2つの部分円が重なると、デバイスの圧縮に対する抵抗は全体として増加し、排尿中に膀胱が収縮する際にデバイスが潰れて空となるのを妨げる。
【0060】
他のデバイス特徴
薬物送達デバイスはまた、例えばデバイスが非吸収性である、または別様に除去することが必要である場合に、患者からのデバイスの引き出しを容易化するための回収ストリングを含んでもよい。例えば、回収ストリングは、患者の膀胱にあるデバイスの手作業による除去を容易とするように、患者の尿道から延在してもよい(または選択的に延在可能であってもよい)。
【0061】
一実施形態において、デバイスは、移植、挿入、または回収手順の一部としての医療従事者によるデバイスの検出または視認(例えばX線画像化または蛍光透視法)を容易化するために、少なくとも1つの放射線不透過性部分または構造を含む。一実施形態において、デバイスは、少なくとも部分的に、放射線不透過性充填材料、例えば硫酸バリウムまたは当該技術分野において知られている別の放射線不透過性材料を含む材料で構築される。蛍光透視法は、手順を実行している従事者に、デバイスの位置及び方位の正確なリアルタイムの画像化を提供することにより、デバイスの配置及び/または回収の間使用され得る。
【0062】
デバイスを作製する方法
本明細書に記載のデバイスは、一般に、薬物及びポリマー材料、ならびに任意選択で弾性保持フレームを組み立てることにより作製され得る。
【0063】
一実施形態において、方法は、管の端部間に延在する細長ルーメンを有する細長弾性ポリマー環状管を提供することと;シリコーン材料(または他の好適なエラストマー材料もしくは前駆体)中に分散した薬物を含む流体マトリックス系を調製することと;流体マトリックス系を細長ルーメン内に注入することと;流体マトリックス系を中に有する細長ポリマー管を、コイル型膀胱保持形状に形成することと;細長管をコイル型膀胱保持形状に付勢するように流体マトリクス系を固体弾性マトリックス系に硬化することとを含む。環状管は、当該技術分野において知られている押出プロセスにより生成されたシリコーンであってもよい。マトリックス系のシリコーンは、任意選択で当該技術分野において知られている白金硬化系を使用して、15℃から30℃の温度で硬化されてもよい。好適となり得る他の材料及び硬化系もまた、当該技術分野において知られている。細長弾性ポリマー管は、管を通って延在する第2の細長ルーメンをさらに含んでもよい。その第2のルーメンは、任意選択で、ガス(例えば空気)で充填され、次いでその端部で封止されてもよい。また、第2のルーメンには、任意選択で、ニチノールワイヤまたは他の超弾性ワイヤ等の弾性保持フレームが入れられてもよく、次いで、ルーメンの内部にフレームを保持するために封止されてもよい。別の実施形態において、第2のルーメンは、薬物を含まない高デュロメータシリコーンで充填されてもよく、これは、例えば薬物マトリックス系自体は細長管をコイル型膀胱保持形状に付勢するのに効果的でない場合、そのように効果的な固体弾性形態に硬化される。
【0064】
いくつかの実施形態において、弾性保持フレームは、マトリックス材料、シリコーン、またはコイル型保持形状を提供する他のエラストマー材料の硬化中に、流体マトリックス材料の形状、流体シリコーン(薬物を含まない)の形状、またはその両方を保持するために使用され得る。具体的な実施形態において、弾性保持フレームは、別個のルーメンに、すなわち硬化する材料を含有しないルーメンに一時的に挿入される。別の実施形態において、流体材料の形状は、型または他の剛性支持構造内に一時的に保持されることにより、硬化中に維持される。
【0065】
別の実施形態において、膀胱内薬物送達デバイスを作製するための方法は、薬物貯蔵部と、第1の端部、反対の第2の端部、及び端部間の中間部分を有する、細長弾性ポリマー管であって、中間部分は、第1の端部と第2の端部との間に延在する第1及び第2の細長ルーメンを備える、細長弾性ポリマー管とを有する、デバイス本体を提供することと;薬物を第1の細長ルーメン内に入れることと;流体シリコーン材料を第2の細長ルーメン内に注入することと;流体シリコーンを中に有する細長ポリマー管を、コイル型膀胱保持形状に形成することと;次いで、デバイス本体をコイル型膀胱保持形状に付勢するように流体シリコーン材料を固体弾性シリコーン材料に硬化することとを含む。薬物は、流動化形態または固体形態で第1のルーメン内に入れられてもよい。流動化形態は、その後第1のルーメン内で固化されてもよい。
【0066】
弾性保持フレームを形成することは、例えば超弾性合金または形状記憶材料から弾性ワイヤを形成し、自然に比較的拡張した形状となるように弾性ワイヤを「再プログラム」することを含んでもよい。拡張した形状となるように弾性ワイヤをプログラムするために、熱処理が使用されてもよい。例えば、弾性保持フレームは、弾性ワイヤをコイル型(例えば「プレッツェル」)形状に形成し、弾性ワイヤを500℃超の温度で5分間にわたる期間熱処理することにより形成され得る。弾性保持フレームが高弾性率エラストマーを含む実施形態において、保持フレームを形成するステップは、フレームがばねとして機能するように、フレーム内に1つ以上の巻回、コイル、ループまたは螺旋を形成することを含んでもよい。例えば、保持フレームは、中でも、押出、液体射出成形、トランスファー成形、またはインサート成形により形成されてもよい。保持フレームに関連することなく保持形状となることができる細長本体を形成するために、同様の技術が使用されてもよい。
【0067】
細長本体を弾性保持フレームに関連付けることは、保持フレームを細長本体のルーメン内に挿入すること、または、接着剤、ゴムバンド、もしくは機械的締結具により弾性保持フレームを細長本体の外側表面に固定することを含んでもよい。
【0068】
薬物送達デバイスを作製する方法のいくつかのステップまたはサブステップは、他の順番で、または同時に行われてもよい。
【0069】
薬物送達デバイスの使用及び用途
実施形態において、本明細書に記載の薬物送達デバイスは、1種以上の薬物を、それを必要とする患者に投与するために使用される。本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、主に、人間の成人または小児を指すが、例えば前臨床試験または獣医医療における他の好適な哺乳動物を含んでもよい。有利には、方法は、長期間にわたる治療有効量での体内への1種以上の薬物の局所的連続送達を可能にする。
【0070】
デバイスは、それを必要とする患者の膀胱内または体腔もしくは内腔内を含む任意の所望の部位に、移植、挿入、または配置され得る。本明細書において提供される薬物送達デバイスはまた、皮下、筋肉内、眼内、腹腔内、及び/または子宮内移植用に構成され得る。その後、デバイスは、1つ以上の状態の治療用の1種以上の薬物を、配置部位における1つ以上の組織に局所的に、及び/または配置部位から遠位の他の組織に局部的に放出し得る。その後、デバイスは、回収される、吸収される、分泌される、またはそれらのいくつかの組み合わせが行われてもよい。
【0071】
一例において、デバイスは、薬物送達デバイスを配置機器に通し、配置機器から体内にデバイスを解放することにより患者内に挿入される。デバイスが膀胱等の体腔内に挿入される場合、デバイスが配置機器から腔内に出ると、デバイスは保持形状となる。
【0072】
挿入されると、デバイスは、例えばマトリックス系からの薬物の拡散により、薬物を放出し得る。デバイスは、望ましい所定の期間にわたり、所望量の薬物の長期、継続的、断続的、または周期的放出を提供し得る。実施形態において、デバイスは、長期間、例えば12時間、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、または20、25、30、45、60、もしくは90日間、またはそれ以上にわたり、所望の投薬量の薬物を送達し得る。一実施形態において、薬物は、治療有効量で、約1日から約30日の期間にわたり継続的に放出される。薬物の送達速度よび用量は、送達されている薬物、及び治療されている疾患または状態に依存して選択され得る。
【0073】
デバイスが膀胱内に挿入される場合、デバイスは、独立した手順で、または別の泌尿器学的もしくは他の手順もしくは手術と併せて、他の手順の前、間または後に配置されてもよい。デバイスは、術中、術後、またはその両方において、治療または予防のために局所及び/または局部組織に送達される1種以上の薬物を放出し得る。
【0074】
一実施形態において、デバイスは、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、骨盤痛、過活動膀胱症候群、膀胱癌、神経因性膀胱、神経障害性もしくは非神経障害性の膀胱括約筋機能障害、感染症、術後痛、または膀胱に送達される薬物で治療される他の疾患、障害及び状態を治療するための、膀胱内への1種以上の薬物の局所投与において使用するための膀胱内挿入用に構成される。デバイスは、膀胱容量、伸展性、及び/または無抑制収縮の頻度等の膀胱機能を改善する薬物、膀胱内もしくは他の近くの範囲における痛み及び不快感を低減させる薬物、または他の効果を有する薬物、またはこれらの組み合わせの薬物を送達し得る。膀胱で展開されたデバイスはまた、治療有効量の1つ以上の薬物を、数ある中でも特に、腎臓のうちの1つまたは両方、尿道、尿管のうちの1つまたは両方、陰茎、精巣、精嚢のうちの1つまたは両方、輸精管のうちの1つまたは両方、射精管のうちの1つまたは両方、前立腺、膣、子宮、卵巣のうちの1つまたは両方、卵管のうちの1つまたは両方、またはこれらの組み合わせを含む身体の泌尿器官または生殖系内の他の場所等、体内の他の泌尿生殖器へ送達し得る。例えば、膀胱内薬物送達デバイスは、数ある他の疾患、障害、及び症状の中でも特に、腎臓結石または線維症、勃起不全の処置に使用され得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、1つ以上の隣接泌尿生殖器部位への局部薬物送達のために、患者の膀胱内に配置される。デバイスは、膀胱に局所的に、及び膀胱の近くの他の部位に局部的に薬物を放出し得る。そのような送達は、望ましくない副作用を伴うか、薬物の不十分な生物学的利用能を生じ得る全身投与の代替手段を提供し得る。
【0076】
本発明は、下記の非限定的な実施例に関連して、さらに理解され得る。
【0077】
実施例1-コイル形状シリコーンデバイスプロトタイプの製造
二重ルーメンシリコーン管から、2つの異なるデバイス本体を形成した。管はそれぞれ、大型ルーメン(2.64mmの内径を有する)及び小型ルーメン(0.51mmの内径を有する)を有していた。管はそれぞれ、0.2mmの壁厚を有し、弾性変形可能であった。二重ルーメンシリコーン管の大型ルーメンに、注入によりシリコーンを実質的に充填した:一方の大型ルーメンには、50 Shore Aのデュロメータ(硬度)を有するMED-6015(NuSil、Carpinteria、CA)、他方の大型ルーメンには、55(000) Shore Aのデュロメータ(硬度)を有するMED-4286(NuSil、Carpinteria、CA)。次いで、注入されたシリコーンを、37℃で約3日間、管を直線形状に維持しながら硬化させた。次いで、二重楕円コイル型形状を有し、0.011インチ(約0.27mm)の直径を有するニチノールワイヤを、それぞれの小型ルーメン内に挿入し、シリコーン管にコイル型形状を付与した。
【0078】
実施例2-コイル形状シリコーン薬物送達デバイスの製造
予測的な例において、実施例1に記載の方法が繰り返されるが、但し、MED-6015(NuSil、Carpinteria、CA)及びMED-4286(NuSil、Carpinteria、CA)は、それぞれ、シリコーン管の大型ルーメン内に注入される前に薬物と混合され、流体マトリックス系を形成する。薬物マトリックス系を含む得られる弾性細長構造は、薬物送達デバイスとして好適である。
【0079】
実施例3-コイル形状シリコーンデバイスプロトタイプの製造
二重ルーメンシリコーン管から、2つの異なるデバイス本体を形成した。管はそれぞれ、大型ルーメン(2.64mmの内径を有する)及び小型ルーメン(0.51mmの内径を有する)を有していた。管はそれぞれ、0.2mmの壁厚を有し、弾性変形可能であった。まず、二重楕円コイル型形状を有し、0.011インチ(約0.27mm)の直径を有するニチノールワイヤを、それぞれの小型ルーメン内に挿入し、シリコーン管に二重楕円(コイル型)形状を付与した。次いで、二重ルーメンシリコーン管の大型ルーメンに、注入によりシリコーンを実質的に充填した:一方の大型ルーメンにはMED-6015(NuSil、Carpinteria、CA)、他方の大型ルーメンにはMED-4286(NuSil、Carpinteria、CA)。次いで、注入されたシリコーンを、37℃で約3日間、管をコイル型形状にしながら硬化させた。硬化したシリコーン及び二重楕円形状ニチノールワイヤ(ワイヤフォーム)が充填されたそれぞれの管は、膀胱内デバイスとして機能するのに好適な機械的特性を有していることが観察された。
【0080】
実施例4-隣接ワイヤフォームを有するシリコーン薬物送達デバイスの製造
予測的な例において、実施例3に記載の方法が繰り返されるが、但し、MED-6015(NuSil、Carpinteria、CA)及びMED-4286(NuSil、Carpinteria、CA)は、それぞれ、シリコーン管の大型ルーメン内に注入される前に薬物と混合され、流体マトリックス系を形成する。薬物マトリックス系を含む得られる弾性細長構造は、薬物送達デバイスとして好適である。
【0081】
実施例5-中央ワイヤフォームを有するシリコーンデバイスプロトタイプの製造
0.020インチの内径及び0.037インチ(約0.93mm)の外径を有するシリコーン管を、0.118インチ(約2.99mm)の内径及び0.020インチ(約0.50mm)の壁厚を有する犠牲9Gポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管(Zeus、Standard Wall Tubing)のルーメンに挿入した。シリコーン管の両端は、PTFE管から延在していた。シリコーン管の外側のPTFE管のルーメン内の環状空間に、注入によりシリコーン(MED-6015、NuSil、Carpinteria、CA)を充填し、次いでこれを150℃で30分間、または室温で24時間硬化させた。次いで、PTFE管を切って剥がすことにより除去すると、注入/硬化されたシリコーンで画定された本体内に埋設されたシリコーン管が得られた。次いで、0.011インチ(約0.27mm)の厚さを有する二重楕円形状のニチノールワイヤフォームをシリコーン管内に挿入し、細長シリコーン-シリコーン構造にコイル型形状を付与した。
【0082】
実施例6-隣接ワイヤフォームを有するシリコーン薬物送達デバイスの製造
予測的な例において、実施例5に記載の方法が繰り返されるが、但し、MED-6015(NuSil、Carpinteria、CA)は、PTFE管のルーメン内の環状空間内に注入される前に薬物と混合され、流体マトリックス系を形成する。薬物マトリックス系を含む得られる弾性細長構造は、薬物送達デバイスとして好適である。
【0083】
実施例7-ワイヤフォームを有さない形状化シリコーンデバイスプロトタイプの製造
1.52mmの大型ルーメン内径、0.51mmの小型ルーメン内径、及び0.2mmの壁厚を有する二重ルーメンシリコーン管を使用して、プロトタイプ弾性デバイスを構築した。0.011インチ(約0.27mm)の厚さを有する二重楕円形状ニチノールワイヤを、まず二重ルーメンシリコーン管の小型ルーメン内に挿入し、これによりシリコーン管にコイル型保持形状が付与された。次いで、二重ルーメンシリコーン管の大型ルーメンに、注入により75 Shore Aのデュロメータを有するシリコーン(MED-6019、NuSil、Carpinteria、CA)を充填した。次いで、注入されたシリコーンを、150℃で約2時間、コイル型保持形状で硬化させた。次に、ニチノールワイヤを小型ルーメンから除去すると、注入/硬化されたシリコーンにより付勢されたコイル型保持形状のシリコーン管が得られた。
【0084】
次いで、この手順を、それぞれ異なる大型ルーメン内径(ID)を有する他の2つの二重ルーメンシリコーン管を用いて繰り返したが、一方は2.16mmのIDを有し、一方は2.64mmのIDを有していた。
【0085】
ニチノールワイヤ(ワイヤフォーム)を有さない硬化したシリコーンが充填されたそれぞれの管は、膀胱内デバイスとして機能するのに好適な機械的特性を有していることが観察された。
【0086】
実施例8-ワイヤフォームを有さないシリコーン薬物送達デバイスの製造
予測的な例において、実施例7に記載の方法が繰り返されるが、但し、MED-6019(NuSil、Carpinteria、CA)は、シリコーン管の大型ルーメン内に注入される前に薬物と混合され、流体マトリックス系を形成する。薬物マトリックス系を含む得られる弾性細長構造は、薬物送達デバイスとして好適である。
【0087】
本明細書に引用される公開及び引用される材料は、具体的に参照により組み込まれる。本明細書に記載される方法及びデバイスの変更及び変形は、前述の詳述される説明から、当業者にとって明白になるであろう。そのような変更及び変形は、添付の請求の範囲内に該当することが意図される。