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  • 特許-空気圧縮機 図1
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  • 特許-空気圧縮機 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 41/02 20060101AFI20220117BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F04B41/02 A
F04B39/12 101A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020529859
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2018025879
(87)【国際公開番号】W WO2020012534
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大畠 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】紙屋 裕治
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127506(JP,A)
【文献】特開平07-054775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/02
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り込まれた空気を圧縮する機構を有する圧縮機本体と該圧縮機本体を駆動するモータと前記圧縮機本体で圧縮された空気を貯留する空気タンクを備える軽搬型の空気圧縮機であって、
前記空気圧縮機を制御する制御組と、
前記空気タンクに貯留された圧縮空気を前記空気圧縮機に吹き付ける清掃機構を備え
前記制御組は、ユーザの運転停止操作に連動して前記空気タンク内の圧縮空気を前記空気圧縮機に吹き付けるように前記清掃機構を制御することを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気圧縮機であって、
前記清掃機構は、前記空気タンクに設けられた減圧弁と電磁弁と該電磁弁に繋がれた配管であって、該配管は一端が前記電磁弁に固定され、他端は前記空気圧縮機に向いた自由端となっており、
前記制御組は、ユーザの運転停止操作に連動して前記電磁弁を開にすることで前記空気タンクから供給される圧縮空気を前記配管の自由端から前記空気圧縮機に吹き付けることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項3】
請求項に記載の空気圧縮機であって、
前記圧縮機本体は、圧縮する空気を取り込む空気取込口に配置された吸込みフィルタを有し、
前記配管の他端は前記空気圧縮機の前記制御組、前記モータ、前記吸込みフィルタの何れかに向いた自由端であることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項4】
請求項に記載の空気圧縮機であって、
前記減圧弁と電磁弁の間には吸湿部材を備え、前記吹き付けは除湿された空気が吹き付けられることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の空気圧縮機であって、
前記ユーザの運転停止操作に連動して前記空気タンク内の圧縮空気を前記空気圧縮機に吹き付ける動作を掃除モードとしてユーザがあらかじめON/OFF選択できるようにしたことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項6】
請求項に記載の空気圧縮機であって、
前記制御組は、ユーザの運転停止操作に連動して前記空気タンク内の圧縮空気を前記空気圧縮機に吹き付けるように前記清掃機構を制御した後に、前記空気タンク内に残った圧縮空気を全て抜く動作を所定時間行うことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項7】
請求項に記載の空気圧縮機であって、
前記空気タンク内に残った圧縮空気を全て抜く動作を圧縮空気自動全抜きモードとしてユーザがあらかじめON/OFF選択できるようにしたことを特徴とする空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
主に釘打ち機のエア源として建築現場で使用される軽搬型の空気圧縮機は、木くずや石膏ボードの粉などの様々な粉塵環境下で使用されることが多い。そのため、ユーザが作業終了後に空気圧縮機をエアブロー等により清掃を行わない場合には、粉塵が空気圧縮機に蓄積し、フィルタ目詰まりによる性能低下や温度上昇による寿命低下の問題があった。また、粉塵が空気圧縮機の制御部品やモータなどに堆積後、吸湿することによる電気部品の故障などの問題もあることから、粉塵が空気圧縮機内部に入り込まないようなカバーを施すなどの防塵対策を進めてきたが、カバーを更に密閉性の高いものにすると粉塵の混入は防げるが内部に熱がこもってしまい、同様に寿命低下の課題があり、更なる改善が必要であった。
【0003】
本技術分野の背景技術として特許文献1がある。特許文献1記載の圧縮機では、空気タンクに貯留された圧縮空気は減圧弁を介し取り出すが、従来からあるカプラを介し釘打ち等に使用するエア回路に加え、新たに減圧弁の先にプッシュ式のエアダスタ部を設け、エアダスタ部のボタンを押すことで、エアブロー用の圧縮空気を取り出せるエア回路を設け、エア回路より取り出した圧縮空気にて釘打ち機等の工具を清掃する機能が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-70583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、作業者は、エアダスタ部のボタンを押圧した状態で、粉塵等で汚れた工具類をエアダスタ吐出口に近づけることにより、エアダスタ吐出口から吐出されるタンク内に残った圧縮空気によって工具類を清掃することができる。すなわち、清掃の対象は、空気圧縮機に接続された釘打ち機等のその他工具であって、空気圧縮機自体を清掃するものではない。また、作業者は手動で、清掃するためのタンク内に残った圧縮空気を吐出させる必要があった。このように、特許文献1記載の空気圧縮機は、空気圧縮機自体を清掃する点について考慮されておらず、さらには、手動で行う必要があったので、清掃を行わない場合には粉塵が蓄積してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、圧縮機本体と空気タンクを備える軽搬型の空気圧縮機であって、圧縮機本体に圧縮空気を吹き付ける機能を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自動で清掃が行うことができるため、ユーザの手を煩わすことなく性能維持、製品保護を行うことができ、ユーザの使い勝手向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機のカバーを外した外観図である。
図2】実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の外観上面図である。
図3】実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の断面図である。
図4】実施例における圧縮機本体の構造図である。
図5図1の背面側からの外観図である。
図6】実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機のカバーを外した外観図である。図1に示すように、タンク一体式空気圧縮機は、空気タンク24、25の上に、主として圧縮機本体が配置された構造となっている。圧縮する空気を取り込む空気取込口に配置された吸込みフィルタ34を介して取込まれた空気は、モータ6で駆動される圧縮機本体1で圧縮され空気タンク24、25に貯留される。図1に示すタンク一体式空気圧縮機は、2段直列型の圧縮機であって、1段目の圧縮機で圧縮した圧縮空気を2段目の圧縮機で圧縮して、高圧圧縮空気を得る。35が1段目の圧縮機の圧力調整を行う一般圧調整ハンドル、36が一般圧空気取出口、37が一般圧用圧力計である。38が2段目の圧縮機の圧力調整を行う高圧調整ハンドル、39が高圧空気取出口、40が高圧用圧力計である。10は冷却ファンであって、冷却風を供給し、圧縮機本体1、空気タンク24、25などのタンク一体式空気圧縮機の構成要素を冷却する。
【0011】
図2は、本実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の外観図である。図2は外観の上面図であって、圧縮機本体がカバー26で覆われている。また、圧縮機操作部29により、ユーザは圧縮機の稼働や停止を操作する。
【0012】
図3は、図2におけるA-A断面図である。図3において、圧縮機本体1はモータ6と圧縮部を有する。また、30はタンク一体式空気圧縮機を制御する制御組である。
【0013】
図4は、本実施例における圧縮機本体の構造図である。図4において、1は空気を圧縮する圧縮機本体である。圧縮機本体1は、クランクケース1Aとクランクケース1Aに取り付けられたシリンダ18を備えている。クランクケース1A内にはモータ6のシャフト(回転軸)6Aが貫通している。
【0014】
1Aは圧縮機本体1及びモータ6を覆うクランクケースである。クランクケース1Aの一端側にはステータ2が直接固定され、ベアリング3が装着されており、ステータ2の取り付け側と反対側には、ベアリング4が装着された軸受箱5が勘合される構造となっている。また、クランクケース1A内を貫通するシャフト6Aの中央部にはキー12を有する。また、空気をシール、圧縮するためのピストンリング13を有した連接棒組14が、ベアリング15と偏心したエキセントリック16を介してバランス17と共に挿入される。連接棒組14およびバランス17は、クランクケース1Aおよび軸受箱5に装着された2個のベアリング3、4によって両側から支持されている。
【0015】
6は圧縮機本体1を駆動するモータである。モータ6はステータ2、ベアリング3、シャフト6A、キー7、ロータ8、ワッシャ9を有し、シャフト6Aの端部には冷却ファン10が設けられている。また、シャフト6Aの一端側にキー7を介してロータ8が装着されている。ロータ8はワッシャ9と冷却ファン10を取り付けるためのファンシャフト11によって、軸方向に固定されている。
【0016】
10はカバー26の内部に冷却風を供給し、圧縮機本体1、空気タンク24、25などのタンク一体式空気圧縮機の構成要素を冷却するための冷却ファンである。冷却ファン10はファンシャフト11によってシャフト6Aの端部に設けられ、モータ6によって駆動される。
【0017】
18はクランクケースに取り付けられたシリンダである。本実施例ではシリンダ18を2つ設け、一対のシリンダ18がクランクケースを挟んで互いに対向するように取り付けた。シリンダ18は、フランジ19、空気弁20、通しボルト22を備える。クランクケース1Aにはシリンダ18を取り付けるためのフランジ19が設けられており、シリンダ18、空気弁20、シリンダヘッド21が、通しボルト22によって前記フランジ19に固定され、圧縮室23を形成している。
【0018】
本実施例における圧縮機本体1の動作について説明する。本実施例における圧縮機本体1は前記ロータ8の駆動によりシャフト6Aが回転すると、エキセントリック16によって連接棒組14およびピストンリング13が圧縮室23内を往復運動する。このピストンリング13が上死点から下死点へ向かう吸い込み工程では、吸込みフィルタ34を介してシリンダヘッド21、空気弁20を通じて圧縮室23内へ空気を吸い込み、逆に上死点へ向かう吐き出し工程では吸い込んだ空気を圧縮しつつ、空気弁20、シリンダヘッド21を通じて吐き出す構造である。シリンダヘッド21を通じて吐き出された空気は空気タンク24、25に貯留される。
【0019】
図5は、図1の背面側からの外観図である。図5において、空気タンク25には、減圧弁27を介し電磁弁28が設けられている。減圧弁27は取り出し圧力固定式、調整式どちらでも構わないが、固定式が望ましい。また、32および33は電磁弁28に繋がれた配管である。配管32は一端が電磁弁28に固定され、他端はモータ方向を向いた自由端となっている。配管33は配管32同様に一端が電磁弁28に固定され、もう一端は制御組30方向を向いた自由端となっている。
【0020】
次に本実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の動作について以下説明する。図6は、本実施例における軽搬型のタンク一体式空気圧縮機の動作フロー図である。
【0021】
図6において、まずステップ1(S1)でユーザが電源コードをコンセントにつなぎ空気圧縮機に通電した後、圧縮機操作部29の運転スイッチボタンを押し(S2)、圧縮機を稼働させ(S3)、空気タンクに圧縮空気を貯留し、圧縮空気の圧力が所定値、例えば4.2MPa、になると圧縮機は停止する(S4)。ユーザは、空気タンク内の圧縮空気を用いて作業を開始する(S5)。空気タンク内の圧縮空気を使用して圧縮空気の圧力が所定値まで低下すると、圧縮機は再起動して所定の圧力を保つように動作する(S6、S7)。例えば、パワフルモードであれば3.8MPa、ノーマルモードであれば3.2MPaまで低下すると4.2MPaになるまで圧縮機を稼働させる。
【0022】
そして、作業終了(S8)後にユーザは、運転停止操作として圧縮機操作部29の運転停止ボタンを押し(S9)、圧縮機を停止させる。圧縮機操作部29の運転停止ボタンを押すと、制御組30がモータ6への電圧供給を停止することで、圧縮機本体1は停止する。圧縮機本体1を停止させた後、制御組30は通常時閉(N/C)の電磁弁28へ通電を行い、電磁弁28を開く。通電している間は、電磁弁28は開放を続けるが、一定時間(例えば2秒)のみ通電を行い(S10)、一定時間後は電磁弁28への通電をやめ、電磁弁28を閉じる(S12)。
【0023】
電磁弁28に通電が開始されると、電磁弁28が開き、空気タンク25に貯留した圧縮空気が減圧弁27、電磁弁28を介し、清掃用の配管32および配管33に送られる。配管32および配管33の一端は自由端となっているため、圧縮空気はモータ6および制御組30に吹き付けられ清掃を行うことができる(S11)。その後、ユーザは電源コードをコンセントから抜く(S13)。
【0024】
軽搬型のタンク一体式空気圧縮機は建築現場で使用されることが多いため、木くずや石膏ボードの粉など、粉塵が多い環境下で用いられる。制御組30やモータ6に粉塵が蓄積した後、吸湿することで、短絡などにより基板の破損などの不具合が発生する可能性がある。そこで、本実施例では、上記した機能を用いることにより、ユーザの作業終了後に運転停止操作に連動して自動で制御組30やモータ6を清掃することで故障を防止することができる。
【0025】
ただし、圧縮空気には水分が含まれており、それを直接制御組30やモータ6に吹き付けると別の故障をもたらすリスクがある。そこで減圧弁27、電磁弁28の間に吸湿部材を入れ、除湿した圧縮空気を利用し制御組30やモータ6の清掃を行なってもよい。この場合、清掃が終了し、電磁弁28が閉じた後に、吸湿部材(ゼオライト等)をシリンダ部や吐出口での圧縮熱で加熱し脱水することで再度吸湿可能となるようにしてもよい。
【0026】
なお、別の観点で考えれば、電磁弁を開き清掃するのは、吸込みフィルタ34でもよい。すなわち、粉塵により吸込みフィルタが目詰まりすることで、クランクケース内の温度が上昇し、圧縮機の性能が低下する。自動で清掃を行うことでフィルタ目詰まりによる性能低下を防止する。また、フィルタ清掃にあたっては、フィルタにクランクケースの外部から風を当てても良いし、クランクケースの内部から風を吹き出してもよい。
【0027】
また、通常、電源コードをコンセントから抜くまえに、空気タンク内に残った圧縮空気を手動で吐出させていたが、運転停止ボタンを押したこと(S9)をトリガとして、電磁弁28の開放(S10)、清掃(S11)、電磁弁28を閉鎖(S12)の後に、自動的に圧縮空気を全て抜く動作を所定時間、例えば2分、行うようにしてもよい。
【0028】
また、上記した運転停止ボタンを押したことをトリガとして清掃を行う動作をお掃除モードとしてユーザがあらかじめON/OFF選択できるようにしてもよいし、上記、自動的に圧縮空気を全て抜く動作を圧縮空気自動全抜きモードとしてユーザがあらかじめON/OFF選択できるようにしてもよい。
【0029】
以上のように、本実施例によれば、ユーザが作業終了後に自身で圧縮機の清掃を行うことなく、製品の特に清掃を行った方が良い部分について、自動で清掃が行うことができるため、ユーザの手を煩わすことなく性能維持、製品保護を行うことができ、ユーザの使い勝手向上につながる。
【0030】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであって、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1:圧縮機本体、2:ステータ、3,4:ベアリング、5:軸受箱、6:モータ、6A:シャフト、10:冷却ファン、13:ピストンリング、14:連接棒組、16:エキセントリック、18:シリンダ、20:空気弁、21:シリンダヘッド、24、25:空気タンク、26:カバー、27:減圧弁、28:電磁弁、29:圧縮機操作部、30:制御組、32,33:配管、34:吸込みフィルタ、35:一般圧調整ハンドル、36:一般圧空気取出口、37:一般圧用圧力計、38:高圧調整ハンドル、39:高圧空気取出口、40:高圧用圧力計
図1
図2
図3
図4
図5
図6