(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】心筋繊維の向きをマッピングするためのシステム、及び、心筋繊維の向きをマッピングするためのシステムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/339 20210101AFI20220117BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20220117BHJP
【FI】
A61B5/339
A61B5/367
(21)【出願番号】P 2020542232
(86)(22)【出願日】2019-01-03
(86)【国際出願番号】 US2019012176
(87)【国際公開番号】W WO2019156755
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイルス ホーニッカー
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0027465(US,A1)
【文献】特開平06-063025(JP,A)
【文献】特開2001-061789(JP,A)
【文献】国際公開第2006/080349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318-5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋繊維の向きをマッピングする
ための電気解剖学的マッピングシステムの作動方法であって、
前記電気解剖学的マッピングシステム
が、
心臓領域の伝導速度マップを受信するステップと、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定するステップと、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度の比である最小-最大伝導速度比を計算するステップと、
前記心臓領域内の複数の位置について、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定するステップと、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比である局所伝導速度比を計算するステップと、
前記局所伝導速度比
と前記最小-最大伝導速度比とを使用して、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップ
であって、
前記局所伝導速度比が1に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記局所伝導速度比が前記最小-最大伝導速度比に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記局所伝導速度比が前記最小-最大伝導速度比と1との間にある場合に、補間によって前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きが決定される、
前記心筋繊維の向きのマップを生成するステップと、
を
実行する、
作動方法。
【請求項2】
前記
作動方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップを備える、請求項
1に記載の
作動方法。
【請求項3】
前記
作動方法は、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度マップのグラフ表示を出力するステップを備える、請求項
2に記載の
作動方法。
【請求項4】
心臓領域の伝導速度情報から前記心臓領域の心筋繊維の向きをマッピングする
ための電気解剖学的マッピングシステムの作動方法であって、
前記電気解剖学的マッピングシステムが、
前記心臓領域内の複数の位置において、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度と、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップ
であって、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度との間にある場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きと前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きとの間の向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定される、
前記心筋繊維の向きのマップを生成するステップを実行する、
作動方法。
【請求項5】
前記
作動方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップを備える、請求項
4に記載の
作動方法。
【請求項6】
前記
作動方法は、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度情報のグラフ表示を出力するステップを備える、請求項
5に記載の
作動方法。
【請求項7】
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度との間にある場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に
おける前記心筋繊維の向きは、線形補間を利用して決定される、請求項
6に記載の
作動方法。
【請求項8】
心筋繊維の向きをマッピングするためのシステムであって、
心臓領域の伝導速度マップを受信する処理と、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定する処理と、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度の比である最小-最大伝導速度比を計算する処理と、
前記心臓領域内の複数の位置について、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定する処理と、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比である局所伝導速度比を計算する処理と、
前記局所伝導速度比と前記最小-最大伝導速度比とを使用して、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成する処理
であって、
前記局所伝導速度比が1に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記局所伝導速度比が前記最小-最大伝導速度比に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記局所伝導速度比が前記最小-最大伝導速度比と1との間にある場合に、補間によって前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きが決定される、
前記心筋繊維の向きのマップを生成する処理と、
を実行するように構成された筋繊維の向きモジュールを備えるシステム。
【請求項9】
心筋繊維の向きをマッピングするためのシステムであって、
心臓領域の伝導速度マップを受信する処理と、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定する処理と、
前記心臓領域内の複数の位置について、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定する処理と、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成する処理
であって、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定され、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度との間にある場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きと前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きとの間の向きが前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きとして決定される、
前記心筋繊維の向きのマップを生成するステップと、
を実行するように構成された筋繊維の向きモジュールを備えるシステム。
【請求項10】
前記システムは、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するように構成されたマッピングプロセッサを備える、請求項
8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記マッピングプロセッサは、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度マップのグラフ表示を出力するように構成されている、請求項
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、本明細書に完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる、2018年2月12日に出願した米国仮出願第62/629,394号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般的に、心臓診断及び治療処理において実行され得るような、電気生理学的マッピングに関する。より具体的には、本開示は、心筋繊維の向きをマッピングするためのシステム、装置、及び、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気生理学的マッピング、より具体的には心電図マッピングは、多くの心臓診断、及び、治療処置の一部である。しかしながら、そのような処置の複雑さが増すにつれて、利用される電気生理学的マップは、品質、密度、並びに、それらが生成され得る速さ、及び、容易さを向上させなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の電気生理学的研究において、専門家が心筋繊維の向きを知ることが望ましい場合がある。例えば、専門家が心筋繊維の向きを知っている場合、患者が不整脈ではない場合でも、専門家は、不整脈巡回(arrhythmic circuits)の位置をより容易に検出することができる場合がある。別の例として、専門家は、ある筋基質から別の筋基質への接続(例えば、肺静脈接続、上大静脈接続、副伝導路、及び、傷痕と正常組織との間の境界面)を視覚化するために、心筋繊維の向きを使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
心筋繊維の向きをマッピングする方法が開示される。方法は、電気解剖学的マッピングシステムにおいて、心臓領域の伝導速度マップを受信するステップと、前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定するステップと、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度の比である最小-最大伝導速度比を計算するステップと、前記心臓領域内の複数の位置について、前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定するステップと、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比である局所伝導速度比を計算するステップと、前記局所伝導速度比を使用して、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップと、を備える。
【0006】
前記局所伝導速度比を使用して前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを割当てるステップを備えてもよい。例えば、前記局所伝導速度比が1に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てること、前記局所伝導速度が前記最小-最大伝導速度比に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てること、及び/又は、前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを補間(例えば、線形的に補間)することに適切であってもよい。
【0007】
本開示の観点において、方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップを備えてもよい。任意的に、方法は、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度マップのグラフ表示を出力するステップを備えてもよい。
【0008】
さらに、心臓領域の伝導速度情報から前記心臓領域の心筋繊維の向きをマッピングする方が開示される。方法は、前記心臓領域内の複数の位置において、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度と、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップを備える。方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップ、及び/又は、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度情報のグラフ表示を出力するステップを備えてもよい。
【0009】
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備えてもよい。同様に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備えてもよい。本開示の他の実施形態では、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度との間にある場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きと前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きとの間である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備えてもよい。例えば、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てられた前記心筋繊維の向きは、線形補間のような補間を利用して決定されてもよい。
【0010】
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度及び前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度の比と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度及び前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度の比と、1と、の間の関係に基づいて、心筋繊維の向きを決定するステップを備えてもよいことが考えられる。
【0011】
本開示は、さらに、心筋繊維の向きをマッピングするためのシステムを開示する。システムは、心臓領域の伝導速度マップを受信する処理と、前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定する処理と、前記心臓領域内の複数の位置について、前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を識別する処理と、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成する処理と、を実行するように構成された筋繊維の向きモジュールを備える。任意的に、システムは、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力、及び/又は、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するように構成されたマッピングプロセッサを備えてもよい。
【0012】
本開示の観点において、前記筋繊維の向きモジュールは、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における最小局所伝導速度の比と、を比較することによって、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きを決定するように構成されている。
【0013】
本開示の他の観点において、前記筋繊維の向きモジュールは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きが、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行であると決定し、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きが、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直であると決定するように構成されている。
【0014】
本発明の上記及び他の態様、特徴、詳細、有用性、及び、利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読み、添付図面を検討することから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例示的な電気解剖学的マッピングシステムの概略図である。
【
図2】本開示の態様に関連して使用することができる例示的なカテーテルを示す図である。
【
図3】本明細書に開示される例示的な実施形態に従い得る典型的なステップのフローチャート図である。
【
図4A】本開示による心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を示す図である。
【
図4B】本開示による心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
複数の実施形態が開示されるが、本開示のさらに他の実施形態が、例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。従って、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0017】
本開示は、心筋繊維の向きに関する情報(本明細書では「心筋繊維の向きのマップ」と呼ばれる)を提供する電気生理学的マップ(例えば、心電図マップ)の作成のためのシステム、装置、及び、方法を提供する。説明の目的のために、本開示の態様は、本明細書で、電気生理学的マッピングシステムを使用して(例えば、Abbott LaboratoriesからのEnSite Precision(商標)心臓マッピングシステムなどの電気解剖学的マッピングシステムを使用して)実行される心臓マッピング処置の状況で詳細に説明される。
【0018】
図1は、心臓カテーテルをナビゲートし、患者11の心臓10に生じる電気的活動を測定し、電気的活動、及び/又は、そのように測定された電気的活動に関連する情報又はその電気的活動を3次元マッピングすることによって、心臓電気生理学的検査を行うための例示的な解剖学的マッピングシステム8の概略図を示す。システム8は、例えば、1つ又は複数の電極を使用して、患者の心臓10の解剖学的モデルを作成するために使用することができる。システム8は、例えば、患者の心臓10の診断データマップを作成するために、心臓表面に沿った複数の点において電気生理学的データを測定し、電気生理学的データが測定された各測定点に関する位置情報と関連付けて測定データを記憶するために使用することができる。
【0019】
当業者が認識し、以下でさらに説明するように、システム8は、典型的には3次元空間内の物体の位置と、いくつかの実施形態では向きと、を決定し、少なくとも1つの基準に対して決定された位置情報としてそれらの位置を表す。
【0020】
説明を簡単にするために、患者11は、概略的に楕円形として描かれている。
図1に示す実施形態では、3つのセットの表面電極(例えば、パッチ電極)が患者11の表面に適用されて示されている。本明細書では、x軸、y軸、及び、z軸と呼ばれる3つの略直交する軸が画定される。他の実施形態では、電極は、他の配置、例えば、複数の電極を特定の身体表面上に配置することができる。さらなる代替として、電極は、身体表面上にある必要はなく、身体の内部に配置することができる。
【0021】
図1において、x軸表面電極12、14は、患者の胸郭領域の側部上など、第1の軸に沿って患者(例えば、各腕の下の患者の皮膚)に適用され、左電極及び右電極と呼ぶことができる。y軸電極18、19は、患者の内腿領域及び頸部領域に沿うなど、x軸に略直交する第2の軸に沿って患者に適用され、左脚電極及び頸部電極と呼ぶことができる。z軸電極16、22は、胸郭領域において患者の胸骨及び脊椎に沿うなど、x軸とy軸の両方に略直交する第3の軸に沿って適用され、胸部電極及び背部電極と呼ぶことができる。心臓10は、これらの表面電極のペア12/14、18/19、及び、16/22の間に位置する。
【0022】
追加の表面基準電極(例えば、「腹部パッチ」)21は、システム8のための基準電極及び/又は接地電極を提供する。腹部パッチ電極21は、以下でさらに詳細に説明する固定心臓内電極31の代替であってもよい。加えて、患者11は、従来の心電図(「ECG」又は「EKG」)システムリード線の大部分又はすべてを定位置に有してもよいことも理解されるべきである。特定の実施形態では、例えば、患者の心臓10の心電図を感知するために12個のECGリード線の標準セットが利用されてもよい。このECG情報は、システム8で利用可能である(例えば、コンピュータシステム20への入力として提供することができる)。ECGリード線が十分に理解されている限りにおいて、図面の明瞭化のために、単一のリード線6、及び、コンピュータ20への接続のみが、
図1において図示されている。
【0023】
少なくとも1つの電極17を有する典型的なカテーテル13も示されている。この典型的なカテーテル電極17は、本明細書全体にわたって「ロービング電極」、「移動電極」、又は、「測定電極」と呼ばれる。典型的には、カテーテル13上、又は、複数のカテーテル上の複数の電極17が使用される。一実施形態では、例えば、システム8は、患者の心臓、及び/又は、脈管構造内に配置される12個のカテーテル上の64個の電極を備えていてもよい。他の実施形態では、システム8は、複数の(例えば、8個の)スプラインを含む単一のカテーテルを利用してもよく、複数のスプラインの各々が複数の(例えば、8個の)電極を含んでもよい。
【0024】
前述の実施形態は、単なる例であり、任意の数の電極及び/又はカテーテルが使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、Abbott LaboratoriesのEnsite(商標)Array(商標)非接触マッピング・カテーテル又はAdvisor(商標)HDグリッド・マッピング・カテーテルなどの高密度マッピング・カテーテルを利用することができる。
【0025】
同様に、カテーテル13(又は複数のカテーテル)は、典型的には、1つ又は複数の導入器を介して、よく知られた手順を使用して心臓、及び/又は、脈管構造内に導入されることが理解されるべきである。本開示の目的のために、例示的なカテーテル13のセグメントが
図2に示されている。
図2において、カテーテル13は、経中隔シース35を介して患者の心臓10の左心室50内に延びる。左心室50への経中隔アプローチの使用は、周知であり、当業者によく知られており、本明細書でさらに説明する必要はない。もちろん、カテーテル13は、任意の他の適切な方法で心臓10に導入することもできる。
【0026】
カテーテル13は、その遠位先端上に電極17、及び、図示の実施形態ではその長さに沿って離間された複数の追加の測定電極52、54、56を備える。典型的には、隣接する電極間の間隔は既知であるが、電極は、カテーテル13に沿って均一に離間されていなくてもよいし、互いに等しいサイズでなくてもよいことが理解されるべきである。これらの電極17、52、54、56の各々が患者内にあるので、位置データが、システム8によって電極の各々について同時に収集されてもよい。
【0027】
同様に、各電極17、52、54、56は、心臓表面から電気生理学的データ(例えば、表面電位図)を収集するために使用することができる。当業者は、そのさらなる議論が本明細書で開示された技術を理解するために必要がないように、(例えば、接触電気生理学的マッピングと非接触電気生理学的マッピングとの両方を含む)電気生理学的データ点の獲得及び処理のための様々な様式に精通しているであろう。同様に、当該技術分野でよく知られている様々な技法を、複数の電気生理学的データ点から心臓の幾何学的形状及び/又は心臓の電気的活動のグラフ表示を生成するために使用することができる。さらに、当業者が電気生理学的データ点から電気生理学的マップを作成する方法を理解する限り、その態様は、本開示を理解するのに必要な程度にのみ本明細書で説明される。
【0028】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、(例えば、心臓10の壁に取り付けられる)任意の固定基準電極31が第2のカテーテル29上に示されている。この電極31は、較正の目的のため、(例えば、心臓の壁に取り付けられる、又は、近接して)静止していてもよいし、又は、ロービング電極(例えば、電極17)と固定された空間関係に配置されてもよく、「ナビゲーション基準」又は「局所基準」と呼ばれることがある。固定基準電極31は、上記で説明した表面基準電極21に加えて、又は、その代替として使用されてもよい。多くの場合、心臓10においての冠状静脈洞電極又は他の固定電極が、電圧及び変位を測定するための基準として使用することができる。即ち、以下で説明するように、固定基準電極31は、座標系の原点を定義してもよい。
【0029】
各表面電極は、多重スイッチ24に接続されている。表面電極のペアは、表面電極を信号発生器25に接続するコンピュータ20で実行されるソフトウェアによって選択される。代替的には、スイッチ24は、省略されてもよく、信号発生器25の複数(例えば、3つ)のインスタンスが、測定軸毎に(即ち、表面電極ペア毎に)1つ設けられてもよい。
【0030】
コンピュータ20は、例えば、従来の汎用コンピュータ、専用コンピュータ、分散コンピュータ、又は、任意の他のタイプのコンピュータを備えていてもよい。コンピュータ20は、本明細書に記載された様々な態様を実施するための命令を実行することができる単一の中央処理装置(「CPU」)、又は、一般に並列処理環境と呼ばれる複数の処理装置などの1つ又は複数のプロセッサ28を備えていてもよい。
【0031】
一般に、生物学的導体におけるカテーテルのナビゲーションを実現するために、3つの名目上の直交電場が、一連の駆動及び感知電気双極子(例えば、表面電極ペア12/14、18/19、及び、16/22)によって生成される。代替的には、これらの直交電場は、分解することができ、表面電極の任意のペアは、有効な電極三角測量を提供するための双極子として駆動することができる。同様に、電極12、14、18、19、16、22(又は任意の数の電極)は、心臓内の電極に電流を駆動するため、又は、心臓内の電極からの電流を感知するための任意の他の有効な位置に配置することができる。例えば、複数の電極は、患者11の背部、側部、及び/又は、腹部に配置することができる。加えて、そのような非直交方法論は、システムの柔軟性を増す。任意の所望の軸について、駆動(ソースシンク)構成の所定のセットから結果として生じるロービング電極にわたって測定される電位は、直交軸に沿って均一な電流を単に駆動することによって得られるのと同じ有効電位を生じさせるために、代数的に組み合わせられてもよい。
【0032】
このため、表面電極12、14、16、18、19、22のうちの任意の2つは、腹部パッチ21のような接地基準に対する双極子ソース及びドレインとして選択されてもよく、非励起電極は、接地基準に対する電圧を測定する。心臓10内に配置されたロービング電極17は、電流パルスからの場にさらされ、腹部パッチ21などの接地に対して測定される。実際には、心臓10内のカテーテルは、図示の16個よりも多い又は少ない電極を含んでもよく、各電極電位が測定されてもよい。前述したように、少なくとも1個の電極が、固定基準電極31を形成するために心臓の内側表面に固定されてもよく、これも、腹部パッチ21のような接地に対して測定され、システム8が位置を測定する座標系の原点として定義されてもよい。表面電極、内部電極、及び、仮想電極の各々からのデータセットは、すべて、心臓10内のロービング電極17の位置を決定するために使用することができる。
【0033】
測定された電圧は、基準電極31などの基準位置に対して、ロービング電極17などの心臓内部の電極の3次元空間における位置を決定するために、システム8によって使用されてもよい。即ち、基準電極31において測定された電圧は、座標系の原点を定義するために使用されてもよいし、ロービング電極17において測定された電圧は、原点に対するロービング電極17の位置を表すために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、座標系は、3次元(x、y、z)デカルト座標系であるが、極座標系、球面座標系、及び、円筒座標系等の他の座標系も考えられる。
【0034】
前述の議論から明らかであるように、心臓内の電極の位置を決定するために使用されるデータは、表面電極ペアが心臓に電場を印加しながら測定される。電極データは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,263,397号に記載されているように、電極位置のための生の位置データを改善するために使用される呼吸補償値を作成するために使用されてもよい。電極データは、例えば、同じく参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,885,707号に記載されているように、患者の身体のインピーダンスにおける変化を補償するために使用されてもよい。
【0035】
したがって、1つの典型的な実施形態では、システム8は、最初に表面電極のセットを選択し、次いで、それらを電流パルスで駆動する。電流パルスが送達されている間、残りの表面電極及び生体内電極のうちの少なくとも1つを用いて測定される電圧などの電気的活動が測定され、記憶される。上記のように、呼吸、及び/又は、インピーダンスシフトなどのアーティファクトの補償が実行されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、システム8は、Abbott LaboratoriesのEnSite Velocity(商標)、又は、EnSite Precision(商標)心臓マッピング及び視覚化システムである。しかしながら、例えば、Boston Scientific CorporationのRHYTHMIA HDX(商標)マッピングシステム、Biosense Webster, Inc.のCARTOナビゲーション及び位置特定システム、Northern Digital Inc.のAURORA(登録商標)システム、SterotaxisのNIOBE(登録商標)磁気ナビゲーションシステム、ならびに、Abbott LaboratoriesからのMediGuide(商標)Technologyを含む他の位置特定システムが、本教示に関連して使用されてもよい。
【0037】
(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)以下の特許、米国特許第6,990,370号、第6,978,168号、第6,947,785号、第6,939,309号、第6,728,562号、第6,640,119号、第5,983,126号、及び、第5,697,377号に記載の位置特定及びマッピングシステムも、本明細書と共に使用することができる。
【0038】
本開示の態様は、心筋繊維の向きをマッピングすることに関し、より具体的には、伝導速度情報(例えば、心臓領域の伝導速度マップ)を使用して心筋繊維の向きをマッピングすることに関する。従って、システム8は、筋繊維向きモジュール58を含むこともできる。筋繊維向きモジュール58は、とりわけ、以下で詳細に説明するように、伝導速度情報から筋肉繊維の向きを決定するために使用することができる。
【0039】
本教示による、心筋繊維の向きを決定するステップ、及び、心筋繊維の向きのマップを生成するステップの1つの例示的な方法について、
図3として提示される典型的なステップのフローチャート300を参照して説明する。いくつかの実施形態では、例えば、フローチャート300は、
図1の電気解剖学的マッピングシステム8(例えば、プロセッサ28及び/又は筋繊維向きモジュール58)によって実行することができるいくつかの例示的なステップを表すことができる。以下で説明される典型的なステップは、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実施することができることが理解されるべきである。説明のために、「信号プロセッサ」という用語は、本明細書の教示のハードウェアベースの実装形態とソフトウェアベースの実装形態の両方を説明するために本明細書で使用される。
【0040】
ブロック302において、システム8は、心臓領域に関する伝導速度マップを受信する。当業者は、伝導速度マップの作成に精通しているであろう。しかしながら、例として、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第62/478,377号は、心臓活動波面の方向を決定することを含む、局所伝導速度をマッピングするための様々な例示的なシステム及び方法を説明している。
【0041】
ブロック304において、システム8は、心臓領域内の最大局所伝導速度(CVmax)と、心臓領域内の最小局所伝導速度(CVmin)と、を特定する。任意的に、システム8は、最小-最大伝導速度比CVmin/CVmaxを計算することもできる。
【0042】
ブロック306において、システム8は、心臓領域内のある点における心筋繊維の向きを決定する。本教示は、伝導速度が心臓の筋肉の縦軸に沿って最大であり、心臓の筋肉の縦軸に垂直に沿って最小であることを活用する。このため、システム8は、心臓領域内の所与の点における心筋繊維の向きを決定するために、以下の値、心臓領域内のある点における局所伝導速度(CVloc)、CVmax、及び、CVminの間の関係を利用することができる。
【0043】
本開示の一態様では、ある点における心筋繊維の向きは、局所伝導速度比CVloc/CVmaxを使用して決定することができる。具体的には、局所伝導速度比が1に近いほど、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して平行に近くなる。局所伝導速度比が1に等しい場合、心筋繊維は、伝導速度ベクトルの方向に対して平行に向けられている。
【0044】
逆に、局所伝導速度比が最小-最大伝導速度比に近いほど、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して垂直に近くなる。局所伝導速度比が最小-最大伝導速度比に等しい場合、心筋繊維は、伝導速度ベクトルの方向に対して垂直に向けられている。
【0045】
局所伝導速度比が1と最小-最大伝導速度比との間である場合、心筋繊維の向きは、同様に、伝導速度ベクトルの方向に対して平行と垂直との間になる。具体的な向きは、例えば、線形補間などの補間を使用して決定することができる(例えば、局所伝導速度比が1と最小-最大伝導速度比との間のほぼ中間である場合、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して約45度、等である)。
【0046】
本開示の別の態様では、ある点における心筋繊維の向きは、CVlocの値を、CVmaxとCVminの両方と比較することによって決定することができる。具体的には、CVlocがCVmaxに近いほど、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して平行に近くなる。CVlocがCVmaxに等しい場合、心筋繊維は、伝導速度ベクトルの方向に対して平行に向けられている。
【0047】
逆に、CVlocがCVminに近いほど、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して垂直に近くなる。CVlocがCVminに等しい場合、心筋繊維は、伝導速度ベクトルの方向に対して垂直に向けられている。
【0048】
CVmin<CVloc<CVmaxである場合、心筋繊維の向きは、同様に、伝導速度ベクトルの方向に対して平行と垂直との間になる。具体的な向きは、例えば、補間を使用して決定することができる(例えば、CVlocがCVminとCVmaxとの間のほぼ中間である場合、心筋繊維の向きは、伝導速度ベクトルの方向に対して約45度、等である)。
【0049】
決定ブロック308は、心筋繊維の向きを決定する追加の位置が存在するかどうかを検討する。そうである場合、ブロック306が繰り返される。そうでない場合、ブロック310で、心筋繊維の向きのマップが出力される。
【0050】
ブロック312において、例えば、ディスプレイ23上に、心臓領域の3次元幾何学的モデルに心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力することができる。任意的に、同じ3次元モデルにおける伝導速度マップのグラフ表示も出力することができ、それによって、専門家が心筋繊維の向きと心臓活動波面とを同時に視覚化することを可能にする。
【0051】
図4A及び
図4Bは、前述の教示による心筋繊維の向きのマップの例示的なグラフ表示である。
図4A及び
図4Bは、3次元心臓モデル404上に描かれた線条402の心筋繊維の向きの一般的なグラフ表示を示す。
図4Aと
図4Bの両方は、心筋繊維の向きのマップを決定するために使用される伝導速度マップのグラフ表示も示す。
図4Aは、等時線406を示し、
図4Bは、伝導速度ベクトル408を示す。
図4A及び
図4Bは、専門家が心筋繊維の向きのマップ上の距離を測定することを可能にする、10mm間隔の巻き尺マーカ410も示す。
【0052】
図4Bに示すように、伝導速度ベクトル408がより長く、より高い局所伝導速度を表す場合、それらは、一般的に、心筋繊維の向きの線条402に対して平行により近い。逆に、伝導速度ベクトル408がより短く、より低い局所伝導速度を表す場合、それらは、一般的に、心筋繊維の向きの線条402に対して垂直により近い。
【0053】
いくつかの実施形態について、ある程度の詳細で上記に説明したが、当業者は、本発明の要旨又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を加えることができる。
【0054】
例えば、本明細書の教示は、リアルタイムで(例えば、電気生理学的検査中に)、又は、後処理中に(例えば、以前に実行された電気生理学的検査中に収集された電気生理学的データ点に対して)適用することができる。
【0055】
すべての方向の参照(例えば、上部、下部、上向き、下向き、左、右、左側、右側、上部、下部、より上、より下、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は、本発明の読者の理解を助ける識別目的のためにのみ使用され、特に発明の位置、向き、又は使用に関して制限をするものではない。接合の参照(例えば、取り付けられた、結合された、接続されたなど)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対的な移動との間に中間部材を含む場合がある。そのように、接合の参照は、必ずしも、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを意味するものではない。
【0056】
上記の説明に含まれる、又は添付図面に示されるすべての事項は、単なる例示として解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではない。詳細又は構造の変化は、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の要旨から逸脱することなくなされ得る。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
心筋繊維の向きをマッピングする方法であって、
電気解剖学的マッピングシステムにおいて、心臓領域の伝導速度マップを受信するステップと、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定するステップと、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度の比である最小-最大伝導速度比を計算するステップと、
前記心臓領域内の複数の位置について、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定するステップと、
前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比である局所伝導速度比を計算するステップと、
前記局所伝導速度比を使用して、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップと、
を備える、方法。
(項目2)
前記局所伝導速度比を使用して前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを割当てるステップを備える、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを割当てるステップは、前記局所伝導速度比が1に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備える、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを割当てるステップは、前記局所伝導速度が前記最小-最大伝導速度比に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備える、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを割当てるステップは、前記局所伝導速度比と、前記最小-最大伝導速度比と、1と、の間の関係に従って、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを補間するステップを備える、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップを備える、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記方法は、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度マップのグラフ表示を出力するステップを備える、項目6に記載の方法。
(項目8)
心臓領域の伝導速度情報から前記心臓領域の心筋繊維の向きをマッピングする方法であって、
前記心臓領域内の複数の位置において、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度と、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成するステップを備える、方法。
(項目9)
前記方法は、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するステップを備える、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記方法は、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度情報のグラフ表示を出力するステップを備える、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備える、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備える、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度との間にある場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行な向きと前記それぞれの位置における前記伝導速度ベクトルの方向に対して垂直な向きとの間である心筋繊維の向きを、前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てるステップを備える、項目8に記載の方法。
(項目14)
前記心臓領域内の前記それぞれの位置に割当てられた前記心筋繊維の向きは、線形補間を利用して決定される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定するステップは、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度及び前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度の比と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度及び前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度の比と、1と、の間の関係に基づいて、心筋繊維の向きを決定するステップを備える、項目8に記載の方法。
(項目16)
心筋繊維の向きをマッピングするためのシステムであって、
心臓領域の伝導速度マップを受信する処理と、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内の最大局所伝導速度と前記心臓領域内の最小局所伝導速度とを特定する処理と、
前記心臓領域内の複数の位置について、
前記伝導速度マップを使用して、前記心臓領域内のそれぞれの位置における局所伝導速度を特定する処理と、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度と、前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度と、の間の関係に基づいて、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における心筋繊維の向きを決定し、それによって、心筋繊維の向きのマップを生成する処理と、
を実行するように構成された筋繊維の向きモジュールを備えるシステム。
(項目17)
前記システムは、さらに、前記心臓領域の3次元幾何学的モデルに前記心筋繊維の向きのマップのグラフ表示を出力するように構成されたマッピングプロセッサを備える、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記マッピングプロセッサは、さらに、前記心臓領域の前記3次元幾何学的モデルに前記伝導速度マップのグラフ表示を出力するように構成されている、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記筋繊維の向きモジュールは、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度の比と、前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に対する前記心臓領域内の前記それぞれの位置における最小局所伝導速度の比と、を比較することによって、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きを決定するように構成されている、項目16に記載のシステム。
(項目20)
前記筋繊維の向きモジュールは、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最大局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きが、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して平行であると決定し、
前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記局所伝導速度が前記心臓領域内の前記最小局所伝導速度に等しい場合に、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における前記心筋繊維の向きが、前記心臓領域内の前記それぞれの位置における伝導速度ベクトルの方向に対して垂直であると決定するように構成されている、項目16に記載のシステム。