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特許7005784無線通信システム、入力側装置及び出力側装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】無線通信システム、入力側装置及び出力側装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/164 20140101AFI20220117BHJP
   H04N 19/115 20140101ALI20220117BHJP
   H04W 28/14 20090101ALI20220117BHJP
   H03M 7/30 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H04N19/164
H04N19/115
H04W28/14
H03M7/30 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548172
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2019032830
(87)【国際公開番号】W WO2020059406
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018175547
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
【審査官】山▲崎▼ 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301309(JP,A)
【文献】特開2011-199406(JP,A)
【文献】特開2004-158983(JP,A)
【文献】特開2006-157889(JP,A)
【文献】特開2008-263443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
H03M 3/00-9/00
H04W 28/14
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを符号化して無線により送信する入力側装置と、前記入力側装置から受信したデータを復号して出力する出力側装置とを有する無線通信システムにおいて、
前記入力側装置は、入力されたデータを設定された符号化レートに従って符号化する符号化手段と、前記符号化手段により符号化されたデータを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信手段と、前記符号化手段と前記送信手段の間に配置され、前記符号化手段により符号化されたデータを前記送信手段による送信のタイミングまで一時的に記憶する入力側バッファとを備え、
前記出力側装置は、前記入力側装置から無線により送信されたデータを受信する受信手段と、前記受信手段による受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する測定手段と、前記受信手段により受信されたデータを復号する復号手段と、前記復号手段により復号されたデータを前記入力側装置でのデータ入力に対する遅延が一定となるタイミングで出力する出力手段と、前記復号手段と前記出力手段の間に配置され、前記復号手段により復号されたデータを前記出力手段による出力のタイミングまで一時的に記憶する出力側バッファとを備え、
前記出力側装置が、前記入力側バッファに記憶されているデータ量と前記出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、前記測定手段により測定された無線伝搬路の品質と前記出力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて前記符号化レート及び前記無線伝送レートを決定し、前記入力側装置に送信して前記符号化手段及び前記送信手段の設定に反映させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
入力されたデータを符号化して無線により送信する入力側装置と、前記入力側装置から受信したデータを復号して出力する出力側装置とを有する無線通信システムにおいて、
前記入力側装置は、入力されたデータを設定された符号化レートに従って符号化する符号化手段と、前記符号化手段により符号化されたデータを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信手段と、前記符号化手段と前記送信手段の間に配置され、前記符号化手段により符号化されたデータを前記送信手段による送信のタイミングまで一時的に記憶する入力側バッファとを備え、
前記出力側装置は、前記入力側装置から無線により送信されたデータを受信する受信手段と、前記受信手段による受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する測定手段と、前記受信手段により受信されたデータを復号する復号手段と、前記復号手段により復号されたデータを前記入力側装置でのデータ入力に対する遅延が一定となるタイミングで出力する出力手段と、前記復号手段と前記出力手段の間に配置され、前記復号手段により復号されたデータを前記出力手段による出力のタイミングまで一時的に記憶する出力側バッファとを備え、
前記出力側装置が、前記測定手段により測定された無線伝搬路の品質を前記入力側装置に送信し、
前記入力側装置が、前記入力側バッファに記憶されているデータ量と前記出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、前記出力側装置から受信した無線伝搬路の品質と前記入力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて前記符号化レート及び前記無線伝送レートを決定し、前記符号化手段及び前記送信手段の設定に反映させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
無線により送信されたデータを受信する受信手段と、前記受信手段による受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する測定手段と、前記受信手段により受信されたデータを復号する復号手段と、前記復号手段により復号されたデータを入力側装置でのデータ入力に対する遅延が一定となるタイミングで出力する出力手段と、前記復号手段と前記出力手段の間に配置され、前記復号手段により復号されたデータを前記出力手段による出力のタイミングまで一時的に記憶する出力側バッファとを備えた出力側装置との間で無線による通信を行う入力側装置であって、
入力されたデータを設定された符号化レートに従って符号化する符号化手段と、
前記符号化手段により符号化されたデータを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信手段と、
前記符号化手段と前記送信手段の間に配置され、前記符号化手段により符号化されたデータを前記送信手段による送信のタイミングまで一時的に記憶する入力側バッファとを備えると共に、
前記出力側装置から前記測定手段により測定された無線伝搬路の品質を受信し、前記入力側バッファに記憶されているデータ量と前記出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、前記出力側装置から受信した無線伝搬路の品質と前記入力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて前記符号化レート及び前記無線伝送レートを決定し、前記符号化手段及び前記送信手段の設定に反映させることを特徴とする入力側装置。
【請求項4】
入力されたデータを設定された符号化レートに従って符号化する符号化手段と、前記符号化手段により符号化されたデータを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信手段と、前記符号化手段と前記送信手段の間に配置され、前記符号化手段により符号化されたデータを前記送信手段による送信のタイミングまで一時的に記憶する入力側バッファとを備えた入力側装置との間で無線による通信を行う出力側装置であって、
前記入力側装置から無線により送信されたデータを受信する受信手段と、
前記受信手段による受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する測定手段と、
前記受信手段により受信されたデータを復号する復号手段と、
前記復号手段により復号されたデータを前記入力側装置でのデータ入力に対する遅延が一定となるタイミングで出力する出力手段と、
前記復号手段と前記出力手段の間に配置され、前記復号手段により復号されたデータを前記出力手段による出力のタイミングまで一時的に記憶する出力側バッファとを備えると共に、
前記入力側バッファに記憶されているデータ量と前記出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、前記測定手段により測定された無線伝搬路の品質と前記出力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて前記符号化レート及び前記無線伝送レートを決定し、前記入力側装置に送信して前記符号化手段及び前記送信手段の設定に反映させることを特徴とする出力側装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像や音声などのデータを伝送する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーハイビジョン等の高精細映像の伝送需要が増加しており、移動映像伝送無線通信システムにおいても大容量かつ低遅延で安定した伝送が求められている。しかしながら、無線伝搬路はマルチパスやシャドウイング等の影響により伝搬路品質が大きく変動する。そのため、映像を常に安定して伝送するには、無線伝搬路の品質の最低値に対してマージンを持たせて運用する必要があった。特許文献1には、高アンテナ相関環境や狭帯域な干渉信号が混入する環境においても適切な変調方式及び符号化率を選択して伝送レートを改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/186000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動無線伝搬路の品質に応じて無線伝送レートと映像符号化レートを適応的に変更する映像無線伝送システムがあるが、無線伝送レートの変更頻度と映像符号化レートの変更頻度には大きな差がある。一般的に、無線伝送レートは比較的高速に無線伝搬路の品質に追従できるが、映像符号化レートの変更頻度は低く、無線伝送レートほど高速に追従することはできない。
【0005】
そのため、無線伝送レートと映像符号化レートとの不一致が発生する。この不一致を補償するには、映像の送信側と受信側のそれぞれにバッファを設ける必要がある。しかしながら、無線伝搬路の品質が急激に変動した場合には、無線伝送レートと映像符号化レートの乖離が大きくなり、各バッファ内のデータの枯渇による映像断や伝送効率低下が発生する可能性がある。また、十分なフレーム数の映像をバッファに蓄積すればデータ枯渇を防止できるが、その反面、映像伝送の遅延時間が増加してしまう問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、各バッファ内のデータが枯渇することを防止しつつ、バッファ容量の増大を抑制して低遅延でデータ伝送を行うことが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の目的を達成するために無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る無線通信システムは、入力されたデータを符号化して無線により送信する入力側装置と、入力側装置から受信したデータを復号して出力する出力側装置とを有する。
入力側装置は、入力されたデータを設定された符号化レートに従って符号化する符号化手段と、符号化手段により符号化されたデータを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信手段と、符号化手段と送信手段の間に配置され、符号化手段により符号化されたデータを送信手段による送信のタイミングまで一時的に記憶する入力側バッファとを備える。
出力側装置は、入力側装置から無線により送信されたデータを受信する受信手段と、受信手段による受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する測定手段と、受信手段により受信されたデータを復号する復号手段と、復号手段により復号されたデータを入力側装置でのデータ入力に対する遅延が一定となるタイミングで出力する出力手段と、復号手段と出力手段の間に配置され、復号手段により復号されたデータを出力手段による出力のタイミングまで一時的に記憶する出力側バッファとを備える。
そして、本発明に係る無線通信システムは、測定手段により測定された無線伝搬路の品質と入力側バッファ又は出力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて符号化レート及び無線伝送レートを決定し、符号化手段及び送信手段の設定に反映させることを特徴とする。
【0008】
このように、本発明では、無線伝搬路の品質だけで符号化レート及び無線伝送レートを決定するのではなく、入力側装置や出力側装置のバッファの蓄積データ量を考慮して符号化レート及び無線伝送レートを決定する。これにより、各バッファ内のデータが枯渇することを防止しつつ、バッファ容量の増大を抑制して低遅延でデータ伝送を行うことが可能となる。
なお、本発明における「データ量」は、データのサイズや時間長などの量を直接又は間接的に表す数値である。例えば、映像のデータの場合には、後述する実施例のように、映像を構成するフレームの枚数を「データ量」として用いることができる。
【0009】
ここで、第1の構成例として、出力側装置が、入力側バッファに記憶されているデータ量と出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、測定手段により測定された無線伝搬路の品質と出力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて符号化レート及び無線伝送レートを決定し、入力側装置に送信して符号化手段及び送信手段の設定に反映させる構成としてもよい。
【0010】
また、第2の構成例として、出力側装置が、測定手段により測定された無線伝搬路の品質を入力側装置に送信し、入力側装置が、入力側バッファに記憶されているデータ量と出力側バッファに記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、出力側装置から受信した無線伝搬路の品質と入力側バッファに記憶されているデータ量とに基づいて符号化レート及び無線伝送レートを決定し、符号化手段及び送信手段の設定に反映させる構成としてもよい。この場合、入力側装置は、決定した無線伝送レートを出力側装置に伝達するために、本線信号(伝送データ)に無線伝送レートの信号を多重化して出力側装置に送信する構成とすることが好ましい。
なお、第1又は第2の構成例における「データ量の合計が一定になる関係」とは、データ量の合計が完全に一定になる関係のほか、データ量の合計が略一定になる関係も包含され得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各バッファ内のデータが枯渇することを防止しつつ、バッファ容量の増大を抑制して低遅延でデータ伝送を行うことが可能な無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例に係る無線通信システムの移動局及び基地局の構成を示す図である。
図2】本発明の第2実施例に係る無線通信システムの移動局及び基地局の構成を示す図である。
図3】無線伝送レートのシミュレーション結果を示す図である。
図4】映像エンコーダの出力レートのシミュレーション結果を示す図である。
図5】移動局側及び基地局側の各バッファの挙動のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。 〔第1実施例〕
図1には、本発明の第1実施例に係る無線通信システムの移動局及び基地局の構成を示してある。本システムは、移動局100と基地局200の間で双方向に無線信号を送受できる双方向通信システムである。また、本システムは、伝搬路適応型の可変レート映像伝送無線システムであり、カメラを搭載した車両などの移動局100にて撮影された映像を所定の拠点にある基地局200へ伝送すると共に、基地局200から移動局100にレート制御情報を送信するように構成されている。本例では、TDD(Time Division Duplex;時分割複信)方式により双方向通信を行うが、他の方式により双方向通信を実現しても構わない。
【0014】
移動局100は、カメラ部110、映像エンコーダ120、移動局ベースバンド部130、高周波部140、アンテナ150を備える。映像エンコーダ120は、映像符号化部121、映像制御情報付加部122、STC部123、映像制御情報生成部124を備える。移動局ベースバンド部130は、バッファ131、無線符号化部132、変調部133、復調部134、無線復号部135を備える。
【0015】
基地局200は、アンテナ210、高周波部220、基地局ベースバンド部230、映像デコーダ240、ディスプレイ250を備える。基地局ベースバンド部230は、復調部231、無線復号部232、伝搬路品質測定部233、レート制御部234、無線符号化部235、変調部236を備える。映像デコーダ240は、映像復号部241、バッファ242、STC再生部243を備える。
【0016】
以下では、移動局100から基地局200への映像信号の伝送について先に説明し、基地局200から移動局100へのレート制御情報の伝送については後述する。
移動局100では、カメラ部110から無圧縮の映像信号が、映像エンコーダ120に入力される。映像エンコーダ120は、カメラ部110から入力された映像信号に対して映像符号化部121にて映像符号化処理を行って、データを圧縮する。その際、映像エンコーダ120は、圧縮後の映像符号化レートの平均値が移動局ベースバンド130から入力される映像符号化レート設定値になるよう(近づくよう)に制御を行い、圧縮後の映像信号を映像制御情報付加部122に出力する。但し、映像符号化レートは映像符号化部121に入力される映像の複雑性に大きな影響を受けるため、映像符号化レートの平均値が映像符号化レート設定値と必ずしも一致するわけではない。
【0017】
映像制御情報付加部122には、映像符号化部121による圧縮後の映像信号が入力されるほか、映像制御情報も入力される。映像制御情報は、基準時間信号となるSTC(System Time Clock)を生成するSTC部123からの信号を基準にして映像制御情報生成部124で生成され、映像制御情報付加部122に出力される。映像制御情報には、PCR(Program Clock Reference)やPTS(Presentation Time Stamp)などがある。PCRは、基地局200の映像デコーダ240にて基準時間信号となるSTCを再生するために使用されるデータである。PTSは、映像の再生時刻を示すデータである。映像制御情報付加部122は、圧縮後の映像信号に映像制御情報を付加し、TS(Transport Stream)信号として移動局ベースバンド部130のバッファ131に出力して記憶させる。
【0018】
一般的に、映像符号化レートは、無線伝送レートに比べてレート変更周期が長く、遅延も大きい。また、先述の通り、映像符号化レートは入力映像の複雑性に大きな影響を受けるため、移動局ベースバンド130から通知される映像符号化レート設定値とは必ずしも一致しない。そのため、映像エンコーダ120からのTS信号を蓄積するバッファ131を用いて、無線伝送レートと映像符号化レートの不一致を補償する必要がある。
【0019】
移動局ベースバンド部130では、バッファ131に蓄積されているTS信号が、無線符号化部132からのデータ要求信号に従って読み出され、無線符号化部132へ出力される。バッファ131内のTS信号は、無線符号化部132への出力に伴って削除される。つまり、バッファ131には、TS信号が無線符号化部132に出力されるタイミングまで一時的に記憶される。なお、バッファ131のデータが枯渇した場合には、バッファ131はダミーデータとしてNULLパケットを無線符号化部132へ出力するため、無線伝送可能な最大容量を利用できないことになる。
【0020】
無線符号化部132は、入力された信号(バッファ131から読み出した信号)に対して無線符号化処理を行って冗長性を持たせ、符号化後の信号を変調部133に出力する。その後、無線符号化部132は、次に処理するデータの要求信号をバッファ131に出力する。なお、無線符号化部132には、無線符号化処理の際に使用する無線符号化率が、移動局100から通知される無線符号化率情報に基づいて設定される。無線符号化率情報の詳細については後述する。
【0021】
変調部133は、無線符号化部132から入力された信号に対して変調処理を行い、変調後の信号を高周波部140に出力する。高周波部140は、変調部133から入力された信号をRF周波数に変換して増幅し、アンテナ150に出力する。アンテナ150は、高周波部140から入力された信号を空間に送信する。
【0022】
移動局100のアンテナ150から送信された信号は、基地局200のアンテナ210にて受信され、高周波部220に出力される。高周波部220は、アンテナ210で受信された信号を増幅して周波数変換し、基地局ベースバンド部230の復調部231と伝搬路品質測定部233に出力する。
【0023】
復調部231は、高周波部220から入力された信号に対して復調処理を行い、復調後の信号を無線復号部232と伝搬路品質測定部233に出力する。伝搬路品質測定部233は、基地局200から移動局100に送信するレート制御情報の生成に関する処理(後述する)を行う。
【0024】
無線復号部232には、後述のレート制御部234から、移動局100の無線符号化部132で用いた無線符号化率情報と同じ情報が入力される。無線復号部232は、レート制御部234から入力された無線符号化率情報を用いて、復調部231から入力された信号に対して無線復号処理を行い、復号されたTS信号を映像デコーダ240の映像復号部241とSTC再生部243に出力する。
【0025】
映像復号部241は、無線復号部232から入力されたTS信号に対して映像復号処理を行い、復号後の映像信号をバッファ242に出力して記憶させる。STC再生部243は、無線復号部232から入力されたTS信号内のPCRに基づいてSTCを再生し、基準時間を表す基準時間信号をバッファ242に出力する。
【0026】
バッファ242は、移動局100でのカメラ撮影(映像データの入力)に対する基地局200での再生出力の遅延時間が常に一定になるように、STC再生部243から入力される基準時間信号とPTSが一致したデータを、ディスプレイ250に出力して表示させる。バッファ242内のTS信号は、ディスプレイ250への出力に伴って削除される。つまり、バッファ242には、TS信号がディスプレイ250に出力されるタイミングまで一時的に記憶される。
以上が、移動局100から基地局200への映像信号の伝送についての説明である。
【0027】
次に、基地局200から移動局100へのレート制御情報の伝送について説明する。
レート制御情報は、移動局100から基地局200へ映像信号を伝送する際の無線伝送レートRRを決定する無線符号化率情報と、映像符号化の際の映像符号化レート設定値VRとを含んでおり、基地局ベースバンド部230のレート制御部234にて決定される。
【0028】
レート制御部234には、映像デコーダ240のバッファ242に蓄積されている映像信号のフレーム数FBSと、伝搬路品質測定部233にて測定された無線伝搬路の品質を示す情報とが入力される。伝搬路品質測定部233は、受信信号のSNR(Signal to Noise Ratio)やCNR(Carrier to Noise Ratio)、MER(Modulation Error Ratio)、MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送時の指標である固有値等を算出して無線伝搬路の品質を測定し、無線伝搬路の品質情報をレート制御部234に出力する。レート制御部234は、入力された情報に基づいて、無線伝送レートRRと映像符号化レート設定値VRを決定し、無線伝送レートRRを実現できる無線符号化率情報と映像符号化レート設定値VRとを含むレート制御情報を、無線符号化部235に出力する。各レートの具体的な決定方法については後述する。
【0029】
無線符号化部235は、レート制御部234から入力されたレート制御情報を誤りなく移動局100に通知するために、無線符号化処理を行って冗長性を持たせ、符号化後の信号を変調部236に出力する。変調部236は、無線符号化部235から入力された信号に対して変調処理を行い、変調後の信号を高周波部220に出力する。高周波部220は、変調部236から入力された信号をRF周波数に変換して増幅し、アンテナ210に出力する。アンテナ210は、高周波部220から入力された信号を空間に送信する。
【0030】
基地局200のアンテナ210から送信された信号は、移動局100のアンテナ150にて受信され、高周波部140に出力される。高周波部140は、アンテナ150で受信された信号を増幅して周波数変換し、移動局ベースバンド部130の復調部134に出力する。
【0031】
復調部134は、高周波部140から入力された信号に対して復調処理を行い、復調後の信号を無線復号部135に出力する。無線復号部135は、復調部134から入力された信号に対して無線復号処理を行って、無線符号化率情報と映像符号化レート設定値VRを含むレート制御情報を復号する。無線復号部135は、無線符号化率情報については無線符号化部132に出力し、映像レート設定値VRについては映像エンコーダ120の映像符号化部121に出力する。
【0032】
先にも説明したが、無線符号化部132では、無線符号化率情報に基づいて設定される無線符号化率を使用して本線信号の無線符号化処理を行い、映像符号化部121では、映像符号化レートの平均値が映像符号化レート設定値VRになるように映像符号化処理を行う。
以上の処理により、移動局100と基地局200の間の無線伝搬路の品質と、基地局200のバッファ242に蓄積されている映像信号のフレーム数とを考慮した無線伝送レートRRと映像符号化レート設定値VRを適用して、映像信号の伝送を行うことができる。
【0033】
次に、基地局200のレート制御部234で無線伝送レートRRと映像符号化レート設定値VRを決定する方法について説明する。
無線伝送レートRRは、下記(式1)により算出することができる。
【数1】
raw はエラーフリーで伝送可能な最大レート(想定値)であり、無線伝搬路の品質に基づいて算出される。Mはマージン、GBSはFBS_UD に乗じるゲイン、GMSはFMS_UD に乗じるゲインであり、これらは予め設定される。
【0034】
また、FBS_UD は、下記(式2-1)又は(式2-2)で算出される値である。
【数2】
THRBSは映像デコーダ240のバッファ242のデータ枯渇を防ぐための残フレーム数の閾値であり、予め設定される。FBSは映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数である。
【0035】
また、FMS_UD は、下記(式3-1)又は(式3-2)で算出される値である。
【数3】
THRMSは移動局ベースバンド部130のバッファ131のデータ枯渇を防ぐための残フレーム数の閾値であり、予め設定される。FMSは移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数である。
【0036】
以上の数式に示したように、レート制御部234は、無線伝搬路の品質に基づいて算出した最大レートに所定のマージンを持たせた値を、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMS及び映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSに基づいて補正して、無線伝送レートRRを算出する。具体的には、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSが閾値THRBSを下回った場合には、バッファ242のデータ枯渇を防ぐために無線伝送レートRRを上げる方向に補正する。また、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSが閾値THRMSを下回った場合には、バッファ131のデータ枯渇を防ぐために無線伝送レートRRを上げる方向に補正する。
【0037】
ただし、第1実施例(図1)の構成では、レート制御部234が移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSを直接観測することはできない。そこで、レート制御部234は、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSを、以下に説明する関係を用いて算出する。
【0038】
基地局200では、バッファ242に蓄積されている映像信号を、映像デコーダ240のSTC再生部243で再生されたSTC信号に従ってディスプレイ250に表示出力している。このため、移動局100での撮像から基地局200での表示までの遅延フレーム数FALL は常に一定となる。したがって、下記(式4)の関係式が成り立つ。
【数4】
【0039】
撮像から表示までの遅延フレーム数FALL はシステム運用時に予め設定されるため、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSは、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSが得られれば、下記(式5)により算出することができる。
【数5】
【0040】
従って、(式3-1)、(式3-2)は、下記(式6-1)、(式6-2)のように表すことができる。
【数6】
【0041】
また、映像レート設定値VRは、下記(式7)により算出することができる。
【数7】
Sは映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数の制御目標値であり、GVRは(FBS-S)に乗じるゲインであり、これらは予め設定される。
【0042】
すなわち、レート制御部234は、無線伝搬路の品質に基づいて算出した最大レートに所定のマージンを持たせた値を、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSに基づいて補正して、映像レート設定値VRを算出する。具体的には、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSが制御目標値Sに近づく方向に映像レート設定値VRを補正する。
【0043】
以上のように、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMS及び映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSに基づいて無線伝送レートRRを調整することで、以下の2つの効果が得られる。
第1の効果として、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSが減少してデータ枯渇による映像途切れの可能性が高まってきた場合は、無線伝送のマージンを削って無線伝送レートRRを増加させることで、データ枯渇を防止することができる。
第2の効果として、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSが減少してデータ枯渇しそうな場合は、無線伝送レートRRを減少させることで、ダミーデータとしてのNULLパケットが送出されないようにして伝送効率の低下を防止することができる。
【0044】
第1の効果は、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSを直接監視して制御を行うことで実現し、第2の効果は、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSを映像遅延が一定の関係性に基づいて映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSから算出して制御を行うことで実現している。
【0045】
また、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSに基づいて映像レート設定値VRも調整することで、無線伝送レートRRの変更に対する映像レートの変更の遅延に起因してバッファFBSのデータが枯渇して映像途切れが発生することを抑制することができる。
【0046】
〔第2実施例〕
図2には、本発明の第2実施例に係る無線通信システムの移動局及び基地局の構成を示してある。第1実施例は、基地局ベースバンド部230が映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSを観測するためのインタフェースを設ける必要があったが、第2実施例は、そのようなインタフェースが不要な構成にしてある。なお、第2実施例の処理構成は第1実施例と似ているので、主に差分のみを説明する。
【0047】
第2実施例では、移動局ベースバンド部130は、バッファ131、無線符号化部132A,132B、変調部133A,133B、多重部136、復調部134、無線復号部135、レート制御部137を備える。また、基地局ベースバンド部230は、分離部237、復調部231A,231B、無線復号部232A,232B、伝搬路品質測定部233、無線符号化部235、変調部236を備える。
【0048】
第1実施例と第2実施例の主な差分は、以下の3点である。
一点目は、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSを基地局ベースバンド部230に通知する手段がない点である。
二点目は、基地局ベースバンド部230ではレート制御を行わず(レート制御部234を備えず)、無線伝搬路の品質情報を移動局100に通知し、移動局ベースバンド部130に設けたレート制御部137で、基地局ベースバンド部230から通知された無線伝搬路の品質情報と移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSを用いてレート制御を行う点である。
三点目は、移動局ベースバンド部130のレート制御部137で算出された無線伝送レートRRに対応する無線符号化率を基地局ベースバンド部230と共有するための手段を追加した点である。
【0049】
まず、移動局100への無線伝搬路の品質情報の通知について説明する。伝搬路品質測定部233で算出された無線伝搬路の品質情報は、第1実施例とは異なって無線符号化部235に入力され、移動局ベースバンド部130の無線復号部135へ伝送される。無線符号化部235から無線復号部135までの伝送処理の流れは第1実施例と同様のため、説明を省略する。無線復号部135で復号された無線伝搬路の品質情報は、レート制御部137に入力される。
【0050】
レート制御部137には、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSも入力される。レート制御部137は、無線伝搬路の品質情報と蓄積フレーム数FMSに基づき、無線伝送レートRRと映像符号化レート設定値VRを第1実施例と同様に(式1)及び(式7)に従って算出する。
【0051】
ここで、FBS_UD 、FMS_UD の計算方法は、第1実施例の(式2-1)又は(式2-2)、(式3-1)又は(式3-2)と同様である。但し、第2実施例では、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSを直接観測することができ、逆に映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSを直接観測できない。
【0052】
第1実施例で説明したように、移動局100での撮像から基地局200での表示までの遅延フレーム数FALL は常に一定となるため、(式4)の関係式が成り立つ。このことから、映像デコーダ240のバッファ242の蓄積フレーム数FBSは、移動局ベースバンド部130のバッファ131の蓄積フレーム数FMSが得られれば算出できることが分かる。
【0053】
従って、(式2-1)、(式2-2)は、下記(式8-1)、(式8-2)のように表すことができる。
【数8】
【0054】
また、(式7)は、下記(式9)のように表すことができる。
【数9】
【0055】
レート制御部137には、上記の計算式で無線伝送レートRRと映像符号化レートVRを算出すると、映像符号化レートVRを映像エンコーダ121の映像符号化部121に出力し、無線伝送レートRRを実現できる無線符号化率情報を無線符号化部132A,132Bに出力する。無線符号化部132A及び変調部133Aの処理内容は、第1実施例の無線符号化部132及び変調部133と同様であるため、説明は省略する。
【0056】
無線符号化部132B、変調部133B、多重部136は、基地局ベースバンド部230に無線符号化率情報を通知するために追加された機能部である。無線符号化部132Bは、レート制御部137から入力された無線符号化率情報に対して無線符号化処理を行い、符号化後の信号を変調部133Bに出力する。変調部133Bは、無線符号化部132Bから入力された信号に対して変調処理を行い、変調後の信号を多重部136に出力する。多重部136は、映像信号を変調した変調部133Aからの信号も入力され、それらの信号を多重化して高周波部140に出力する。
【0057】
高周波部140に入力された信号は、第1実施例と同様の手順を経て基地局200に伝送され、基地局ベースバンド部230の分離部237に出力される。分離部237は、入力された信号(受信信号)から映像信号と無線符号化率情報の信号を分離し、映像信号は復調部231Aに出力し、無線符号化率情報の信号は復調部231Bに出力する。
【0058】
復調部231Aの処理内容は、第1実施例の復調部231と同様であるため、説明は省略する。復調部231Bは、分離部237から入力された信号に対して復調処理を行い、復調後の信号を無線復号部232Bに出力する。無線復号部232Bは、復調部231Bから入力された信号に対して無線復号処理を行い、復号された無線符号化率情報を無線復号部Aに出力する。無線復号部Aは、無線復号部232B入力された無線符号化率情報を用いて、復調部231Aから入力された信号に対して無線復号処理を行う。
【0059】
以上の処理により、第2実施例では、移動局100側にてレート制御を行い、無線伝送レートRRを実現する無線符号化率情報を基地局200に通知することができる。これにより、第2実施例においても、第1実施例と同様な機能を実現することができる。
【0060】
第1実施例では、基地局200で算出された無線伝送レートRR及び映像レート設定値VRを含むレート制御情報を移動局100に通知するだけでよい。しかしながら、基地局200に設けるバッファ242は、その役割上、映像デコーダ240に配置する必要があるため、基地局ベースバンド部230と映像デコーダ240の間に、バッファ242の蓄積フレーム数FBSを基地局ベースバンド部230にリアルタイムに通知するためのインタフェースが必要となる。
【0061】
一方、第2実施例では、上記のインタフェースは不要であるが、無線伝搬路の品質情報を基地局200から移動局100に通知することに加え、移動局100で算出された無線伝送レートRRに基づく無線符号化率情報を移動局100から基地局200に通知する手段が必要となる。
上述した2つの実施例では、無線伝送の誤り耐性を可変にするために誤り訂正の符号化率を可変にしたが、変調多値数を可変にする等、他の方法により無線伝送の誤り耐性を可変にすることができる。
【0062】
次に、これまで説明したレート制御によるシミュレーション結果について、図3図5を参照して説明する。ここでは、無線伝搬路の品質が低い状態から急激に高くなり、再び急激に低下した場合についてシミュレーションを行った。図3は無線伝送レートを示し、図4は映像エンコーダの出力レート(映像符号化レート)を示し、図5は移動局側及び基地局側の各バッファの挙動を示している。なお、映像エンコーダの出力レートは、無線伝搬路の品質に対して制御遅延を加味している。各図において、上段(A)は無線伝搬路の品質のみでレート制御した場合(つまり、従来方式の場合)であり、下段(B)は無線伝搬路の品質とデコーダの蓄積フレーム数でレート制御した場合(つまり、本発明の提案方式の場合)である。
【0063】
まず、無線伝搬路の品質のみでレート制御した場合のシミュレーション結果について説明する。
無線伝搬路の品質が低い状態から急激に高くなった場合(a1)には、無線伝送レートは無線伝搬路の品質の変化に高速に追従して増加する(a2)が、映像エンコーダの出力レートは遅延して変動するのでしばらく増加しない(a3)。この遅延の際に、基地局側のバッファ内の蓄積フレーム数が予め設定したシステム全体の遅延フレーム数(本例では60フレーム)に達し(a4)、移動局側のバッファ内の蓄積フレーム数は0となり(a5)、NULLパケットが送出されてしまう。
【0064】
そして、映像エンコーダの出力レートが無線伝搬路の品質に応じて増加すると(a6)、基地局側のバッファ内の蓄積フレーム数は徐々に制御目標値のレベルに戻り(a7)、移動局側のバッファ内の蓄積フレーム数も徐々に制御目標値のレベルに戻る(a8)。
その後、無線伝搬路の品質が急激に低下した場合には、無線伝送レートの急激な減少(a9)に対して映像エンコーダの出力レートの減少が遅延する(a10)。その際に、単位時間あたりに送信できるフレーム数が一時的に減少し、移動局側のバッファ内の蓄積フレームが枯渇してしまい(a11)、映像が途絶えてしまう。
【0065】
次に、無線伝搬路の品質とデコーダの蓄積フレーム数でレート制御した場合のシミュレーション結果について説明する。
無線伝搬路の品質が低い状態から急激に高くなり(b1)、移動局側のバッファ内の蓄積フレームが減少して枯渇しそうな場合(b2)は、無線伝送レートを減少させて(b3)、NULLパケットが送出されないように制御する。逆に、無線伝搬路の品質が急激に低下した場合(b4)は、基地局側のバッファ内の蓄積フレーム数が減少するが(b5)、移動局側のバッファ内の蓄積フレームが減少して枯渇する前に無線伝送マージンを削り、無線符号化率を上げて無線伝送レートを高めることで(b6)基地局側のバッファ内の蓄積フレームの枯渇を防止できていることが分かる。
【0066】
以上説明したように、各実施例に係る無線通信システムは、カメラ100から入力された映像データを符号化して無線により送信する移動局100と、移動局100から受信したデータを復号してディスプレイ250に出力する基地局200とを有する。移動局100は本発明に係る入力側装置の一例であり、基地局200は本発明に係る出力側装置の一例である。
【0067】
移動局100は、入力された映像データを設定された映像符号化レートに従って符号化する映像符号化部121と、映像符号化部121により符号化された映像データを設定された無線伝送レートに従って無線により送信する送信ブロック(無線符号化部132、変調部133、高周波部140及びアンテナ150)と、映像符号化部121と送信ブロックの間に配置され、映像符号化部121により符号化された映像データを送信ブロックによる送信のタイミングまで一時的に記憶するバッファ131とを備える。
【0068】
基地局200は、移動局100から無線により送信された映像データを受信する受信ブロック(アンテナ210、高周波部220、復調部231及び無線復号部232)と、受信ブロックによる受信結果に基づいて無線伝搬路の品質を測定する伝搬路品質測定部233と、受信ブロックにより受信された映像データを復号する映像復号部241と、映像復号部241により復号された映像データを移動局100での映像データの入力に対する遅延が一定となるタイミングで表示出力するディスプレイ250と、映像復号部241とディスプレイ250の間に配置され、映像復号部241により復号された映像データをディスプレイ250による表示出力のタイミングまで一時的に記憶するバッファ242とを備える。
【0069】
そして、第1実施例では、基地局200が、移動局100のバッファ131に記憶されているデータ量と基地局200のバッファ241に記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、伝搬路品質測定部233により測定された無線伝搬路の品質と自身のバッファ241に記憶されているデータ量とに基づいて映像符号化レート及び無線伝送レートを決定し、移動局100に送信して映像符号化部121及び無線符号化部132の設定に反映させる構成となっている。
【0070】
また、第2実施例では、基地局200が、伝搬路品質測定部233により測定された無線伝搬路の品質を移動局100に送信し、移動局100が、移動局100のバッファ131に記憶されているデータ量と基地局200のバッファ241に記憶されているデータ量の合計が一定になる関係を用いて、基地局200から受信した無線伝搬路の品質と自身のバッファ131に記憶されているデータ量とに基づいて映像符号化レート及び無線伝送レートを決定し、映像符号化部121及び無線符号化部132の設定に反映させる構成となっている。
【0071】
このように、第1実施例及び第2実施例のいずれにおいても、無線伝搬路の品質に基づいて算出された映像符号化レート及び無線伝送レートを、移動局100のバッファ131や基地局200のバッファ241の蓄積データ量を考慮して調整する。具体的には、例えば、基地局200のバッファ241の蓄積データ量が0に近づくような場合には、無線伝搬路の品質に基づいて算出した無線伝送レートに対して、レートを高める方向の調整を施す。逆に、移動局100のバッファ131の蓄積データ量が0に近づくような場合には、無線伝搬路の品質に基づいて算出した無線伝送レートに対して、レートを低める方向の調整を施す。ただし、明らかに無線伝送によるエラーが発生してしまうような無線伝送レートが設定されないように調整する。
【0072】
このような制御を行うことで、移動局100のバッファ131や基地局200のバッファ241のデータが枯渇することを防止しつつ、バッファ容量の増大を抑制して低遅延でデータ伝送を行うことができる。これにより、各バッファのデータ枯渇による映像途切れや、NULLパケット送信による伝送効率の低下を防止することが可能となる。また、各バッファに蓄積するデータ量(フレーム数)を最小限に設定することができ、低遅延の映像伝送を実現することが可能となる。
【0073】
以上、本発明について実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムにも広く適用できることは言うまでもない。
例えば、上記の各実施例では、移動局が映像データの入力部となるカメラを一体的に備え、基地局が映像データの出力部となるディスプレイを一体的に備えているが、これら入力部や出力部は移動局や基地局とは別体の装置に設けられてもよい。
また、上記の各実施例では、移動局から基地局へ映像データを伝送する上り方向のデータ伝送を行っているが、基地局から移動局へ映像データを伝送する下り方向のデータ伝送にも、本発明を適用することができる。
【0074】
また、映像データに代えて/又は映像データと共に音声データを伝送する無線通信システムに、本発明を適用してもよい。すなわち、例えば、音声を集音するマイクロホンを有する移動局が、マイクロホンから入力された音声データを符号化して無線により基地局に送信し、基地局が、移動局での音声データの入力に対する遅延が一定となるタイミングで音声データを再生して出力する無線通信システムにおいて、無線伝搬路の品質に基づいて算出された音声符号化レート及び無線伝送レートを、移動局のバッファや基地局のバッファの蓄積データ量を考慮して調整する構成としてもよい。また、映像データや音声データ以外のデータを符号化して伝送する無線通信システムに、本発明を適用してもよい。
【0075】
また、本発明は、上記のような無線通信システムを構成する送信局(入力側装置)や受信局(出力側装置)として把握することもできる。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0076】
この出願は、2018年9月20日に出願された日本出願特願2018-175547を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、入力されたデータを符号化して無線により送信する入力側装置と、入力側装置から受信したデータを復号して出力する出力側装置とを有する無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
100:移動局、 110:カメラ、 120:映像エンコーダ、 121:映像符号化部、 122:映像制御情報付加部、 123:STC部、 124:映像制御情報生成部、 130:移動局ベースバンド部、 131:バッファ、 132,132A,132B:無線符号化部、 133,133A,133B:変調部、 134:復調部、 135:無線復号部、 136:多重部、 137:レート制御部、 140:高周波部、 150:アンテナ 200:基地局、 210:アンテナ、 220:高周波部、 230:基地局ベースバンド部、 231,231A,231B:復調部、 232,232A,232B:無線復号部、 233:伝搬路品質測定部、 234:レート制御部、 235:無線符号化部、 236:変調部、 237:分離部、 240:映像デコーダ、 241:映像復号部、 242:バッファ、 243:STC再生部、 250:ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5