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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】自走式作業装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220117BHJP
   A01D 34/13 20060101ALI20220117BHJP
   A01B 63/12 20060101ALI20220117BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220117BHJP
【FI】
A01B69/00 303G
A01B69/00 303M
A01D34/13 A
A01B63/12
G05D1/02 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017076908
(22)【出願日】2017-04-07
(65)【公開番号】P2018174759
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510330541
【氏名又は名称】株式会社牛越製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 浩二郎
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-077486(JP,U)
【文献】特開2010-235091(JP,A)
【文献】特開平07-013625(JP,A)
【文献】特開2008-148655(JP,A)
【文献】特開平10-264636(JP,A)
【文献】特開平08-300902(JP,A)
【文献】実開昭63-075108(JP,U)
【文献】特開平09-128043(JP,A)
【文献】特開昭60-259573(JP,A)
【文献】特開2016-082914(JP,A)
【文献】特開2008-110689(JP,A)
【文献】米国特許第05974347(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 34/13
A01B 63/12
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を備えた移動体と、
前記移動体に支持され、前記移動体の正面から見た傾斜角(キャンバ角)をそれぞれ個別に調整可能な、少なくとも左右の前輪および左右の後輪を備えた走行車輪と、
前記走行車輪の傾斜角をそれぞれ個別に調整する可変操作部と、を含み、
前記移動体が傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記移動体の前記傾斜方向への横滑りを抑制するように、前記走行車輪の傾斜角を前記可変操作部で調整し、
前記傾斜方向への横滑りが抑制された状態で、前記傾斜方向に対して交差する方向に沿って、前記移動体が移動するときの前記移動体のモデルを姿勢モデルとしたとき、
前記移動体の姿勢を検出する姿勢検知部と、
前記姿勢検知部からの情報に基づいて前記移動体の姿勢変化である横滑り量が姿勢モデルの横滑り量より大きいか、小さいかを判断する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記移動体の姿勢変化である横滑り量が前記姿勢モデルの横滑り量より大きい場合、前記移動体の姿勢変化である横滑り量が前記姿勢モデルの横滑り量より小さくなるように前記左右の前輪および前記左右の後輪の傾斜角を調整する信号を前記可変操作部に送る、
ことを特徴とする自走式作業装置。
【請求項2】
前記姿勢検知部は、ジャイロ、加速度センサ、撮像部の少なくとも一つを備えている、
ことを特徴とする請求項に記載の自走式作業装置。
【請求項3】
前記作業部の姿勢を調整する作業部姿勢可変部を備え、
前記制御部は、
前記姿勢検知部からの情報に基づいて前記作業部の作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より大きいか小さいかを判断し、
前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が前記作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より大きい場合、前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が前記作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より小さくなるように前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度を調整する信号を前記作業部姿勢可変部に送る、
ことを特徴とする請求項2に記載の自走式作業装置。
【請求項4】
前記作業部は、草刈り機である、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自走式作業装置。
【請求項5】
前記走行車輪は、外周面と内側面との交差部、および前記外周面と外側面との交差部に、外側へ向けて突出する突部を有する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自走式作業装置。
【請求項6】
前記走行車輪は、外周面の周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記外周面から外側へ向けて突出され、前記走行車輪の幅方向に延びる複数の突条部を有する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自走式作業装置。
【請求項7】
前記走行車輪は、外周面が弾性変形可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自走式作業装置。
【請求項8】
前記走行車輪は、側面視でS字形に形成されている、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の自走式作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊り紐で身体の脇に草刈り機を密着させて設置し、身体を中心に切断刃を振りながら草を刈る草刈り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この草刈り機は、例えば、畦畔の草刈りにも使用される。畦畔は、水田と水田との境界に水田の中の泥土を盛って、水が外に漏れないようにしたものであり、側面が傾斜状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-82914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、畦畔の側面が傾斜状に形成されている。このため、傾斜状の側面に作業者が立ち、作業者の身体を中心に草刈り機を振りながら草を刈る作業は作業者の負担が大きい。特に、近年農業者の高齢化が進み、走行面における草刈り作業や、その他の運搬作業などの負担を軽減できる技術の実用化が望まれている。
【0005】
そこで、この発明は、走行面における作業者の作業負担を軽減できる自走式作業装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、作業部を備えた移動体と、前記移動体に支持され、前記移動体の正面から見た傾斜角(キャンバ角)をそれぞれ個別に調整可能な、少なくとも左右の前輪および左右の後輪を備えた走行車輪と、前記走行車輪の傾斜角をそれぞれ個別に調整する可変操作部と、を含み、前記移動体が傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、前記移動体の前記傾斜方向への横滑りを抑制するように、前記走行車輪の傾斜角を前記可変操作部で調整し、前記傾斜方向への横滑りが抑制された状態で、前記傾斜方向に対して交差する方向に沿って、前記移動体が移動するときの前記移動体のモデルを姿勢モデルとしたとき、前記移動体の姿勢を検出する姿勢検知部と、前記姿勢検知部からの情報に基づいて前記移動体の姿勢変化である横滑り量が姿勢モデルの横滑り量より大きいか、小さいかを判断する制御部と、を含み、前記制御部は、前記移動体の姿勢変化である横滑り量が前記姿勢モデルの横滑り量より大きい場合、前記移動体の姿勢変化である横滑り量が前記姿勢モデルの横滑り量より小さくなるように前記左右の前輪および前記左右の後輪の傾斜角を調整する信号を前記可変操作部に送る、ことを特徴とする。
【0007】
このように、移動体の走行車輪の傾斜角を調整可能として、走行車輪の傾斜角を可変操作部で調整するようにした。よって、移動体が傾斜状の走行面の傾斜方向に対して交差する方向に移動する際に、走行車輪の傾斜角を可変操作部で調整できる。これにより、移動体が走行面の傾斜方向に横滑りすることを抑制できる。
よって、移動体に作業部を備えることにより、移動体を走行面に沿って正常に走行させながら作業部で作業ができる。これにより、走行面における作業者の作業負担を軽減できる。
【0009】
ここで、移動体の姿勢変化が姿勢モデルより小さい場合には、移動体は走行面に沿って正常に走行ができる状態にある。一方、移動体の姿勢変化が姿勢モデルを超えている場合には、移動体は走行面に沿って正常な走行が難しい状態にある。
そこで、移動体の姿勢変化が姿勢モデルより大きい場合、移動体の姿勢変化が姿勢モデルより小さくなるように制御部から可変操作部に信号を送る。送られた信号に基づいて可変操作部が作動して、左右の前輪および左右の後輪のなかから選択された車輪の傾斜角を調整する。これにより、移動体の姿勢変化が姿勢モデルより小さくなり、移動体は走行面に沿って正常な走行ができる。
【0010】
請求項に記載した発明は、前記姿勢検知部は、ジャイロ、加速度センサ、撮像部の少
なくとも一つを備えている、ことを特徴とする。
【0011】
よって、ジャイロ(角速度センサ)で移動体の回転運動の角速度を検知し、加速度センサで移動体の直線運動の速度変化を検知することができる。また、撮像部で移動体の前方を撮影することにより移動体の姿勢、走行面の状態を検知することができる。
これにより、ジャイロ、加速度センサ、撮像部で検知した上方に基づいて移動体の姿勢、走行面の状態を検知することができる。したがって、検知した移動体の姿勢、走行面の状態に基づいて、移動体の姿勢変化が姿勢モデルより小さくなるように左右の前輪および左右の後輪の傾斜角を調整できる。
【0012】
請求項に記載した発明は、前記作業部の姿勢を調整する作業部姿勢可変部を備え、前記制御部は、前記姿勢検知部からの情報に基づいて前記作業部の作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より大きいか小さいかを判断し、前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が前記作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より大きい場合、前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度が前記作業部姿勢モデルの前記走行面に対する前記作業部の角度より小さくなるように前記作業部姿勢変化である前記走行面に対する前記作業部の角度を調整する信号を前記作業部姿勢可変部に送る、ことを特徴とする。
【0013】
このように、移動体の姿勢検知部からの信号に基づいて作業部姿勢変化が作業部姿勢モデルより大きいか小さいかを判断する。作業部姿勢変化が作業部姿勢モデルより小さい場合、作業部で作業を継続する。一方、作業部姿勢変化が作業部姿勢モデルより小さい場合、作業部の姿勢を調整する信号を前記作業部姿勢可変部に送る。送られた信号に基づいて作業部姿勢可変部で作業部姿勢変化が作業部姿勢モデルより小さくなるように作業部の姿勢を調整する。これにより、作業部の姿勢を適正に保つことができる。
【0014】
請求項に記載した発明は、前記作業部は、草刈り機である、ことを特徴とする。
よって、移動体を走行面に沿って走行させながら、走行面の草を草刈り機で刈ることができる。これにより、走行面の草刈り作業において作業者の負担を軽減できる。
【0015】
請求項に記載した発明は、前記走行車輪は、外周面と内側面との交差部、および前記外周面と外側面との交差部に、外側へ向けて突出する突部を有する、ことを特徴とする。
このように、少なくとも左右の前輪および左右の後輪において、外周面と内側面との交差部、および外周面と外側面との交差部を外側に向けて突出する突部とした。よって、左右の前輪および左右の後輪を傾斜角に傾斜させることにより、突部を走行面に食い込ませることができる。これにより、走行面に対する左右の前輪および左右の後輪の滑りを抑えることができ、移動体を走行面に沿って正常に走行させることができる。
【0016】
請求項に記載した発明は、前記走行車輪は、前記外周面の周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記外周面から外側へ向けて突出され、前記走行車輪の幅方向に延びる複数の突条部を有する、ことを特徴とする。
【0017】
このように、少なくとも左右の前輪および左右の後輪において、外周面の周方向に間隔をおいて複数の突条部(グローサ)を設け、複数の突条部を外周面から外側へ向けて突出させた。すなわち、複数の突条部を走行面に接触させることができる。よって、複数の突条部を走行面に食い込ませ、あるいは、複数の突条部の接地圧を高くできる。これにより、走行面に対する左右の前輪および左右の後輪の滑りを抑えることができ、移動体を走行面に沿って正常に走行させることができる。
【0018】
請求項に記載した発明は、前記走行車輪は、外周面が弾性変形可能に形成されている、ことを特徴とする。
このように、少なくとも左右の前輪および左右の後輪の外周面を弾性変形可能に形成した。すなわち、外周面を走行面に沿って弾性変形させることができる。よって、外周面を走行面に沿って良好に接地させることができる。これにより、走行面に対する左右の前輪および左右の後輪の滑りを抑えることができ、移動体を走行面に沿って正常に走行させることができる。
【0019】
請求項に記載した発明は、前記走行車輪は、側面視でS字形に形成されている、ことを特徴とする。
よって、少なくとも左右の前輪および左右の後輪の各車輪において、車輪の接地部を周方向に180°の間隔をおいて2箇所に形成できる。これにより、走行面の傾斜方向に沿って走行面を良好に登ることができる。すなわち、走行面における自走式作業装置の走行を一層良好に確保できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、移動体の走行車輪の傾斜角を調整可能として、走行車輪の傾斜角を可変操作部で調整するようにした。よって、走行車輪の傾斜角を可変操作部で調整することにより、移動体が走行面の傾斜方向に横滑りすることを抑制できる。
移動体に作業部を備えることにより、移動体を走行面に沿って正常に走行させながら作業部で作業ができる。これにより、走行面における作業者の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における自走式作業装置を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態における自走式作業装置を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態における自走式作業装置を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の左前駆動部および左前輪を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態における図4の左前輪を移動体側見た状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の横滑り量と走行車輪の傾斜角との関係について説明するグラフである。
図7】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の草刈り機を示す斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の動作手順を示すシーケンス図であるである。
図9】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の移動体の動作を説明するフローチャート図である。
図10】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の草刈り機の動作を説明するフローチャート図である。
図11】本発明の第1実施形態における自走式作業装置の動作を説明するフローチャート図である。
図12】(a)は本発明の第1実施形態における自走式作業装置が走行面を滑る例を説明する正面図、(b)は自走式作業装置の滑りを抑える例を説明する正面図である。
図13】本発明の第2実施形態における自走式作業装置の移動体を示し斜視図である。
図14】本発明の第3実施形態における自走式作業装置の移動体を示し斜視図である。
図15】本発明の第4実施形態における自走式作業装置の移動体を示し正面図である。
図16】本発明の第5実施形態における自走式作業装置の左前輪を示す斜視図である。
図17】本発明の第6実施形態における自走式作業装置の左前輪を示す斜視図である。
図18】本発明の第7実施形態における自走式作業装置の左前輪を示す斜視図である。
図19】本発明の第8実施形態における自走式作業装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図面において、矢印FRは自走式作業装置の前方、矢印UPは自走式作業装置の上方、矢印LHは自走式作業装置の左側方を指すものとする。
【0023】
[第1実施形態]
図1図2に示すように、自走式作業装置10は、移動体11と、走行車輪12と、走行駆動部14と、可変操作部15と、姿勢検知部17と、移動量検知部18、作業部20と、作業部姿勢検知部22と、作業部姿勢可変部23と、制御部25とを備えている。
【0024】
図3に示すように、自走式作業装置10の移動体11は、走行面30の傾斜方向に対して交差する方向(矢印で示す方向)に移動することが可能である。移動体11は、平面視矩形体状に形成され、走行車輪12および走行駆動部14が可変操作部15を介して支持されている。走行面30は、例えば、傾斜角θ1の畦畔の傾斜状の走行面である。
可変操作部15は、左前可変操作部32と、右前可変操作部33と、右後可変操作部34と、右後可変操作部35とを備えている。
【0025】
左前可変操作部32は、左前ブラケット37と、左前可変モータ38とを備えている。左前可変モータ38の回転軸に左前ブラケット37の基端部が固定されている。左前可変モータ38を駆動して回転軸を回転することにより、左前ブラケット37が左前可変モータ38の回転軸を中心にして上下方向(すなわち、矢印A方向)に揺動する。
【0026】
右前可変操作部33は、左前可変操作部32と左右対称に形成されている。すなわち、右前可変操作部33は、右前ブラケット41と、右前可変モータ42とを備えている。右前可変モータ42の回転軸に右前ブラケット41の基端部が固定されている。右前可変モータ42を駆動して回転軸を回転することにより、右前ブラケット41が右前可変モータ42の回転軸を中心にして上下方向(すなわち、矢印B方向)に揺動する。
【0027】
右後可変操作部34は、左前可変操作部32と同様に形成されている。すなわち、右後可変操作部34は、左後ブラケット44と、左後可変モータ45とを備えている。左後可変モータ45の回転軸に左後ブラケット44の基端部が固定されている。左後可変モータ45を駆動して回転軸を回転することにより、左後ブラケット44が左後可変モータ45の回転軸を中心にして上下方向(すなわち、矢印C方向)に揺動する。
【0028】
右後可変操作部35は、右前可変操作部33と同様に形成されている。すなわち、右後可変操作部35は、右後ブラケット46と、右後可変モータ47とを備えている。右後可変モータ47の回転軸に右後ブラケット46の基端部が固定されている。右後可変モータ47を駆動して回転軸を回転することにより、右後ブラケット46が右後可変モータ47の回転軸を中心にして上下方向(すなわち、矢印D方向)に揺動する。
これにより、可変操作部15は、左前可変操作部32、右前可変操作部33、右後可変操作部34および右後可変操作部35をそれぞれ個別に操作することが可能になる。
【0029】
図4に示すように、左前ブラケット37に左前輪51および左前駆動部56が支持されている。具体的には、左前ブラケット37の下先端部37aに回転軸61が回転自在に支持されている。回転軸61の先端部にフランジ62が形成され、フランジ62に左前輪51が固定されている。回転軸61には従動プーリ63が同軸上に固定されている。
また、左前ブラケット37に左前駆動モータ64が取り付けられ、左前駆動モータ64の駆動軸64aが左前ブラケット37から左前輪51側に延びている。駆動軸64aに駆動プーリ65が同軸上に固定されている。駆動プーリ65および従動プーリ63に無端状のベルト66が張設されている。
【0030】
左前駆動部56は、左前駆動モータ64、駆動プーリ65、回転軸61、従動プーリ63、およびベルト66で構成されている。
左前駆動モータ64が駆動することにより、左前駆動モータ64の駆動軸64aが回転する。駆動軸64aの回転が駆動プーリ65、ベルト66および従動プーリ63を介して回転軸61に伝えられる。回転軸61が回転することにより左前輪51が回転する。
【0031】
図3図4に示すように、右前ブラケット41に右前輪52および右前駆動部57が支持されている。右前駆動部57には右前駆動モータ57aが備えられている。左後ブラケット44に左後輪53および左後駆動部58が支持されている。左後駆動部58には左後駆動モータ58aが備えられている。右後ブラケット46に右後輪54および右後駆動部59が支持されている。右後駆動部59には右後駆動モータ59aが備えられている。
右前輪52および右後輪54は左前輪51と左右対称の部材である。左後輪53は左前輪51と同様の部材である。よって、右前輪52、右後輪54および左後輪53の詳しい説明を省略する。
左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54で走行車輪12が構成されている。
【0032】
また、右前駆動部57および右後駆動部59は左前駆動部56と左右対称の構成部材である。左後駆動部58は左前駆動部56と同様の構成部材である。よって、右前駆動部57、右後駆動部59および左後駆動部58の詳しい説明を省略する。
左前駆動部56、右前駆動部57、左後駆動部58および右後駆動部59で走行駆動部14が構成されている。
【0033】
可変操作部15は、左前可変操作部32、右前可変操作部33、右後可変操作部34および右後可変操作部35がそれぞれ個別に操作可能に構成されている
すなわち、左前可変操作部32の左前ブラケット37が矢印Aの如く上下方向に揺動することにより、左前輪51が矢印Eの如く移動体幅方向に傾斜する。左前可変モータ38には、ポテンショメータが内蔵されている。ポテンショメータで左前輪51の傾斜角を検知できる。
【0034】
左前輪51が傾斜することにより、移動体11の正面から見た左前輪51の傾斜角(キャンバ角)θ2を調整できる。左前輪51の傾斜角θ2は、一例として、左前輪51の下端部が移動体幅方向内側に45°まで傾斜可能で、かつ、車輪の下端部が移動体幅方向外側に45°まで傾斜可能に設定されている。移動体幅方向内側への傾斜を-で示し、移動体幅方向外側への傾斜を+で示す。
よって、左前輪51の傾斜角θ2は、一例として、-45°≦θ2≦+45°の範囲に設定されている。傾斜角θ2が-45°、+45°を超えないように設定することにより、傾斜した左前輪51と移動体11との干渉を抑えることができる。
【0035】
また、右前可変操作部33の右前ブラケット41が矢印Bの如く上下方向に揺動することにより、右前輪52が矢印Fの如く移動体幅方向に傾斜する。右前輪52が傾斜することにより、移動体11の正面から見た右前輪52の傾斜角(キャンバ角)を、左前輪51と同様に調整できる。
さらに、右後可変操作部34の左後ブラケット44が矢印Cの如く上下方向に揺動することにより、左後輪53が矢印Gの如く移動体幅方向に傾斜する。左後輪53が傾斜することにより、移動体11の正面から見た左後輪53の傾斜角(キャンバ角)を、左前輪51と同様に調整できる。
加えて、右後可変操作部35の右後ブラケット46が矢印Dの如く上下方向に揺動することにより、右後輪54が矢印Hの如く移動体幅方向に傾斜する。右後輪54が傾斜することにより、移動体11の正面から見た右後輪54の傾斜角(キャンバ角)を、左前輪51と同様に調整できる。
【0036】
すなわち、可変操作部15は、左前輪51の傾斜角θ2、右前輪52の傾斜角、左後輪53の傾斜角および右後輪54の傾斜角をそれぞれ個別に調整する機能を備えている。
また、走行車輪12は、左前輪51の傾斜角θ2、右前輪52の傾斜角、左後輪53の傾斜角および右後輪54の傾斜角をそれぞれ個別に調整可能に構成されている。
【0037】
図4図5に示すように、左前輪51は、円板状の外側壁71と、外側壁71の周縁部に沿って円筒状に形成された外周部72とを有する。外側壁71の中央に回転軸61のフランジ62がボルト74で固定されている。
また、左前輪51は、外側壁71の外側面と、外周部72の外周面との交差部に外突部(突部)75を有する。さらに、外周部72の内側面72aと、外周部72の外周面との交差部に内突部(突部)76を有する。外突部75および内突部76は、左前輪51の外側へ向けて断面V字状に突出されている。
【0038】
図3に示すように、左前輪51に外突部75、内突部76を有する。右前輪52に、左前輪51と同様に、外突部(突部)77、内突部(突部)78を有する。左後輪53に、左前輪51と同様に、外突部(突部)81、内突部(突部)82を有する。右後輪54に、左前輪51と同様に、外突部(突部)83、内突部(突部)84を有する。
よって、左右の前輪51,52および左右の後輪53,54を移動体幅方向に傾斜させることにより、外突部75,77,81,83、内突部76,78,82,84を走行面30に食い込ませることができる。これにより、走行面30に対する左右の前輪51,52および左右の後輪53,54の滑りを抑えることができる。
【0039】
図6のグラフにおいて、自走式作業装置10の横滑り量と走行車輪12の傾斜角との関係について説明する。図6のグラフは、縦軸が自走式作業装置10の横滑り量を示し、横軸が走行車輪12の傾斜角を示す。また、黒□は測定値を示し、白○は測定値の平均値を示す。図6に示すように、走行車輪12の傾斜角が大きくなると、自走式作業装置10の横滑り量が抑制される。
このように、走行車輪12の傾斜角を調整することにより、走行面30の傾斜方向に対して交差(具体的には、直交)する方向に沿わせて移動体11を矢印の如く正常に走行させることができる。
【0040】
なお、第1実施形態では、左前輪51の外突部75を外側壁71と外周部72との交差部で形成し、左前輪51の内突部76を内側面72aと外周部72との交差部で形成した例について説明したが、これに限定しない。その他の例として、外周部72の外端部全周から左前輪51の径方向外側に環状の外突条部を突出させ、外周部72の内端部全周から左前輪51の径方向外側に環状の内突条部を突出させることも可能である。右前輪52、左後輪53および右後輪54にも、左前輪51と同様に、外突条部および内突条部が形成されている。
【0041】
図1図7に示すように、移動体11の前部11aには作業部20として草刈り機が備えられている。以下、作業部20を草刈り機20として説明する。
草刈り機20は、駆動用のエンジン86が移動体11の前部11aに水平方向に回転自在に支持されたベース87と、ベース87に取り付けられたエンジン86および草刈刃88とを備えている。エンジン86が駆動することにより、草刈刃88が長手方向(すなわち、矢印I)に移動することにより、突出している刈刃88aで草を刈ることができる。この草刈刃88は、一般に使用されている公知の、いわゆるバリカン式のものである。
【0042】
ベース87には従動ギヤ91が設けられている。従動ギヤ91に駆動ギヤ92が噛み合わされ、駆動ギヤ92にスイングモータ93の回転軸が同軸上に固定されている。スイングモータ93を駆動することにより、草刈刃88が従動ギヤ91の中心を軸にして矢印Jの如くスイング移動する。すなわち、自走式作業装置10の全幅寸法W1を超える範囲の草を草刈刃88で刈ることができる。よって、草を刈った個所を走行車輪12(すなわち、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54)が走行できる。これにより、走行車輪12の走行が草で邪魔される虞がない。
草刈刃88の先端部88bにガイドローラ94が取り付けられている。ガイドローラ94は、自走式作業装置10の前進走行方向と、草刈刃88の矢印J方向との移動に追従するように形成されている。
【0043】
また、草刈り機20には作業部姿勢検知部22が備えられている。作業部姿勢検知部22として、ジャイロ(角速度センサ)、加速度センサを備えている。
なお、作業部姿勢検知部22として、ジャイロおよび加速度センサの少なくとも一つを備えることも可能である。ジャイロで草刈り機20の回転運動の角速度を検知し、加速度センサで草刈り機20の直線運動の速度変化を検知できる。
【0044】
また、草刈刃88は、作業部姿勢可変部23で作業部姿勢を調整可能に構成されている。すなわち、草刈刃88は、ベース87に長手方向の軸線95を中心にして矢印Kの如く回転可能に支持されている。草刈刃88の基端部88aが作業部姿勢可変部23に連結されている。作業部姿勢可変部23は作業部可変モータ97を備えている。作業部可変モータ97が駆動することにより、草刈刃88が軸線95を中心にして矢印Kの如く回転する。これにより、草刈刃88の作業部姿勢を作業部姿勢可変部23で調整できる。作業部姿勢可変部23は、制御部25から伝えられて信号に基づいて作動する。
【0045】
例えば、自走式作業装置10の左前輪51、左後輪53が走行面30の隆起部に乗り上げて、移動体11が走行面30に対して傾斜することが考えられる。この場合、草刈刃88も走行面30に対して傾斜する。この際に、草刈刃88の作業部姿勢を作業部姿勢可変部23で調整することにより、草刈刃88を走行面30に沿わせることが可能である。これにより、草刈刃88で走行面30の草を良好に刈ることができる。
さらに、移動体11には姿勢検知部17と、制御部25とが備えられている。
【0046】
つぎに、自走式作業装置10の動作手順を図1図8に基づいて説明する。
図1図8に示すように、姿勢検知部17は、移動体11の姿勢を検出するものである。具体的には、姿勢検知部17として、ジャイロ(角速度センサ)、加速度センサおよび撮像部(カメラ)を備えている。
なお、姿勢検知部17として、ジャイロ(角速度センサ)、加速度センサおよび撮像部(カメラ)の少なくとも一つを備えることも可能である。
ジャイロで移動体11の回転運動の角速度を検知し、加速度センサで移動体11の直線運動の速度変化を検知することができる。また、撮像部で移動体11の前方を撮影することにより移動体11の姿勢、走行面30の状態を検知できる。
【0047】
これにより、ジャイロ、加速度センサ、撮像部で検知した情報に基づいて移動体11の姿勢、走行面30の状態を検知できる。姿勢検知部17で検知した情報は制御部25に送られる。よって、検知した移動体11の姿勢、走行面30の傾斜角θ1(図3参照)に基づいて、移動体11の姿勢変化が姿勢モデルに対し小さくなるように左右の前輪51,52および左右の後輪53,54の傾斜角を調整できる。
移動体11の姿勢モデルは、制御部25に予め記憶されている。
【0048】
移動量検知部18は、移動体11の移動量を検知するものである。具体的には、移動量検知部18として、GPS(グローバルポジショニングシステム)、ロータリエンコーダを備えている。ロータリエンコーダは、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54にそれぞれ備えられている。
GPSで移動体11の位置を検出する。ロータリエンコーダで左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54のそれぞれ回転数、回転角度を検知する。
移動量検知部18で検知した情報は制御部25に送られる。
【0049】
制御部25には、予め移動体11の姿勢モデルと、草刈り機20の作業部姿勢モデルが情報として記憶されている。姿勢モデルとして、移動体11の好ましい走行状態の姿勢情報が制御部25に記憶されている。作業部姿勢モデルとして、草刈り機20の好ましい草刈り状態の姿勢情報が制御部25に記憶されている。
【0050】
走行駆動部14の左前駆動モータ64、右前駆動モータ57a、左後駆動モータ58a、および右後駆動モータ59aに電圧を印加して自走式作業装置10を走行させる。
制御部25は、ファジー制御により、姿勢検知部17からの情報に基づいて移動体11の姿勢変化が姿勢モデルに比べて大きいか、小さいかを判断する。
移動体11の姿勢変化が姿勢モデルに比べて大きい場合、移動体11の姿勢変化を姿勢モデルに比べて小さくするように、左右の前輪51,52および左右の後輪53,54の傾斜角を調整する信号を制御部25から可変操作部15に出力する。
姿勢変化が姿勢モデルに比べて小さい姿勢とは、自走式作業装置10が正常に走行できる姿勢をいう。姿勢変化が姿勢モデルに比べて大きい姿勢とは、自走式作業装置10が正常に走行することが難しい姿勢をいう。
【0051】
自走式作業装置10の姿勢変化が姿勢モデルに比べて小さい場合には、草刈り機20のスイングモータ93に電圧が印加される。草刈り機20の草刈刃88が矢印J方向にスイング移動する。自走式作業装置10が正常に走行した状態において草刈刃88で草を刈る。
一方、自走式作業装置10の姿勢変化が姿勢モデルに比べて大きい場合には、可変操作部15の左前可変モータ38、右前可変モータ42、左後可変モータ45、右後可変モータ47のうち、選択した可変モータに電圧を印加する。選択した可変モータの駆動で車輪の傾斜角が調整され、自走式作業装置10の姿勢変化が姿勢モデルに比べて小さくなる。
草刈り機20のスイングモータ93に電圧が印加される。草刈り機20の草刈刃88が矢印J方向にスイング移動する。自走式作業装置10が正常に走行した状態において草刈刃88で草を刈る。
【0052】
自走式作業装置10の正常の走行において草刈刃88で草を刈る状態において、移動量検知部18で自走式作業装置10の移動量を検知する。移動量検知部18で自走式作業装置10の移動量を検知した情報に基づいて制御部25で自走式作業装置10の移動量が大きいか、小さいかを判断する。
自走式作業装置10の移動量が小さい場合、例えば、草刈り機20による草刈り作業が良好におこなわれていない可能性がある。そこで、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54を駆動する各駆動モータ64,57a,58a,59aにブレーキをかけて自走式作業装置10を停止する。
【0053】
一方、自走式作業装置10の移動量が大きい場合、走行駆動部14の左前駆動モータ64、右前駆動モータ57a、左後駆動モータ58a、および右後駆動モータ59aへの電圧の印加を継続させる。自走式作業装置10が正常に走行した状態において継続させて草刈刃88で草を刈ることができる。
【0054】
ついで、自走式作業装置10の横滑りを抑える例を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、走行面30(図3参照)の草を刈りながら走行中の自走式作業装置10に横滑りが発生した場合、ステップ01において、姿勢モデルを基準にして自走式作業装置10の姿勢変化をファジー制御する。
ステップ02において、可変操作部15の左前可変モータ38、右前可変モータ42、左後可変モータ45、右後可変モータ47のうち、選択した可変モータに電圧を印加する。選択した可変モータの駆動で車輪の傾斜角が調整され、自走式作業装置10の姿勢変化が姿勢モデルに比べて小さくなる。
ステップ03において、走行駆動部14の左前駆動モータ64、右前駆動モータ57a、左後駆動モータ58a、および右後駆動モータ59aに電圧を印加する。
ステップ04において、自走式作業装置10の姿勢、位置を検知する。
【0055】
つぎに、草刈り機20の作業部姿勢を調整する例を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、ステップ10において、自走式作業装置10を正常に走行させながら草刈刃88で草を刈る作業中に、移動量検知部18で自走式作業装置10の移動量を検知する。ステップ11において、自走式作業装置10の移動量に基づいて、作業部姿勢モデルを基準にして草刈り機20の作業部姿勢変化をファジー制御する。
ステップ12において、作業部姿勢可変部23の作業部可変モータ97に電圧を印加する。ステップ13において、自走式作業装置10の姿勢情報を獲得する。獲得した姿勢情報に基づいてステップ10の移動量を検知する。
【0056】
ついで、自走式作業装置10を自走させながら草刈り機20で草を刈る例を図1図11図12に基づいて説明する。
ステップ20において、走行駆動部14の左前駆動モータ64、右前駆動モータ57a、左後駆動モータ58a、および右後駆動モータ59aに電圧を印加する。図12(a)に示すように、自走式作業装置10を走行面30の傾斜方向に対して交差する方向に前進走行させる。
ステップ21において、自走式作業装置10の移動体11の姿勢、位置を検知する。ステップ22において、自走式作業装置10の姿勢変化や位置変化が姿勢モデルより大きいか、小さいかを判断する。自走式作業装置10の姿勢変化や位置変化が姿勢モデルより大きい場合、ステップ23において、可変操作部15の左前可変モータ38、右前可変モータ42、左後可変モータ45、右後可変モータ47のうち、選択した可変モータに電圧を印加する。
【0057】
選択した可変モータを、便宜的に、左前可変モータ38、右前可変モータ42とする。図12(b)に示すように、走行車輪12の左前輪51の傾斜角θ2と、右前輪52の傾斜角θ3とが調整される。よって、左前輪51の内突部76が走行面30に食い込み、かつ、右前輪52の外突部77が走行面30に食い込む。これにより、左前輪51と右前輪52との滑りが抑えられる。
ステップ24において、自走式作業装置10の姿勢変化が姿勢モデルより大きいと判断した場合、ステップ23に戻る。
一方、ステップ24において、自走式作業装置10の姿勢変化や、位置変化が姿勢モデルより小さいと判断した場合、ステップ25に進む。ステップ25において、草刈り機20のスイングモータ93に電圧が印加される。
草刈り機20の草刈刃88が矢印J方向にスイング移動する(図1参照)。自走式作業装置10の移動体11が正常に走行した状態において草刈刃88で草を刈ることができる。
【0058】
この状態において、ステップ26において、移動量検知部18で自走式作業装置10の移動量を検知した情報に基づいて制御部25で自走式作業装置10の移動量が大きいか、小さいかを判断する。自走式作業装置10の移動量が小さい場合、草刈り機20による草刈り作業が良好におこなわれていない可能性がある。そこで、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54を駆動する各駆動モータ64,57a,58a,59aにブレーキをかけて自走式作業装置10を停止する。
【0059】
ステップ27において、移動体11の姿勢情報、位置情報と、移動体11の姿勢モデルとに基づいて作業部可変モータ97に電圧を印加する。
ステップ28において、作業部姿勢モデルを基準にして草刈り機20の作業部姿勢変化をファジー制御する。作業部姿勢モデルに対して作業部姿勢変化が大きい場合、ステップ27に戻る。作業部姿勢モデルに対して作業部姿勢変化が小さく、位置変化が小さい場合、ステップ29に進む。
このように、作業部姿勢可変部97で作業部姿勢変化が作業部姿勢モデルに対して小さくなるように作業部姿勢を調整する。これにより、草刈り機20の作業部姿勢を走行面30に対して適正に保つことができる。
【0060】
ステップ29において、左右の前輪51,52および左右の後輪53,54を駆動する各駆動モータ64,57a,58a,59aのブレーキを解放する。一方、ステップ26において、自走式作業装置10の移動量が大きいと判断した場合、ステップ21に戻る。
よって、移動体11を走行面30に沿って走行させながら、走行面30の草を草刈り機20で刈ることができる。これにより、走行面30の草刈り作業において作業者の負担を軽減できる。
【0061】
第1実施形態では、自走式作業装置10を畦畔の走行面30の傾斜方向に対して交差(具体的には、直交)する方向に走行させる例について説明したが、これに限定しない。その他の例として、畦畔の走行面30と頂部(すなわち、畦道)とに自走式作業装置10を跨がせた状態で走行させることも可能である。換言すれば、走行面30と畦道との交差部が突状に形成され、この突条に形成された個所を走行させることも可能である。
この場合、例えば、自走式作業装置10の左前輪51や左後輪53の傾斜角を走行面30に合わせて調整し、右前輪52や右後輪54の傾斜角を畦道に合わせて調整することにより、自走式作業装置10を良好に走行させながら、草刈り機20で草を刈ることができる。
【0062】
また、自走式作業装置10をV字窪みに沿って走行させることも可能である。この場合、例えば、自走式作業装置10の左前輪51や左後輪53の傾斜角をV字窪みの一方の走行面に合わせて調整し、右前輪52や右後輪54の傾斜角をV字窪みの他方の走行面に合わせて調整することが可能である。これにより、自走式作業装置10を良好に走行させることができる。
【0063】
さらに、第1実施形態では、移動体11の姿勢を検出する姿勢検知部17として、ジャイロ、加速度センサおよび撮像部を備えた例について説明したが、これに限定するものではない。その他の例として、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54の各車軸に荷重センサ(加圧センサ)を取り付け、各車軸に入力する荷重を検知することにより、左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54の傾斜角を調整することも可能である。
また、前記第1実施形態では、作業部をバリカン式の草刈り機20を移動体11に備えた例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、草刈り機の先端部に回転刃を取り付けたものを移動体11に備えることも可能である。また、移動体11の底部に回転刃を取り付けることも可能である。
【0064】
さらに、前記第1実施形態では、作業機として草刈り機20を例示したが、これに限定するものではない。例えば、草刈り機20に代えて、移動体11を荷物の運搬に使用することも可能である。特に、林檎園、桃園、ぶどう園などで収穫した果物を運搬する場合、走行面を移動することが考えられる。この場合、移動体11を使用することにより、走行面を良好に運搬できる。このため、運搬車の負担を軽減することができる。
【0065】
また、前記第1実施形態では、走行車輪12として左前輪51、右前輪52、左後輪53および右後輪54の4輪を備えた例について説明したが、これに限定するものではない。例えば、左右にそれぞれ3輪以上の車輪を備える構成とすることも可能である。
【0066】
つぎに、第2実施形態~第8実施形態を図13図19に基づいて説明する。なお、第2実施形態~第8実施形態において第1実施形態の自走式作業装置10と同一、類似構成部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
[第2実施形態]
図13に示すように、自走式作業装置100は、左前輪51、右前輪52、左後輪53、および右後輪54が、第1実施形態の自走式作業装置10と同様に、それぞれ個別に移動体幅方向の傾斜角を調整可能に構成されている。
具体的には、左前可変モータ38の回転軸38aの先端部に、左前ブラケット37の基端部が取り付けられている。左前ブラケット37に左前駆動モータ64が取り付けられている。左前駆動モータ64の駆動軸が左前ブラケット37の先端部から移動体幅方向外側に突出され、駆動軸に左前輪51が取り付けられている。
よって、左前可変モータ38を駆動することにより、左前ブラケット102を回転軸38aを軸にして上下方向に揺動することができる。これにより、左前輪51が移動体幅方向に傾斜される。
【0068】
左前可変モータ38の回転軸38aに駆動プーリ103が同軸上に取り付けられている。駆動プーリ103と従動プーリ104とに無端状のベルト105が張設されている。従動プーリ104は、回転軸106に同軸上に取り付けられている。回転軸106にポテンショメータ107が取り付けられている。
ポテンショメータ107は、回転軸106(すなわち、左前可変モータ38の回転軸38a)の角度の変位を検知するものである。これにより、左前輪51の傾斜角を検知することができる。
また、左前駆動モータ64が駆動することにより左前輪51を回転することができる。
【0069】
自走式作業装置100は、右前輪52、右後輪54および左後輪53も左前輪51と同様に、移動体幅方向に傾斜可能で、回転可能に構成されている。
【0070】
[第3実施形態]
図14に示すように、自走式作業装置110は、左前輪51、右前輪52、左後輪53、および右後輪54(図示せず)が、第1実施形態の自走式作業装置10と同様に、それぞれ個別に移動体幅方向の傾斜角を調整可能に構成されている。
すなわち、左前輪51は、軸線112を軸にして移動体幅方向の傾斜角が調整可能である。右前輪52は、軸線113を軸にして移動体幅方向の傾斜角が調整可能である。左後輪53は、軸線114を軸にして移動体幅方向の傾斜角が調整可能である。右後輪54(図示せず)は、軸線112を軸にして移動体幅方向の傾斜角が調整可能である。
【0071】
また、自走式作業装置110は、左前ガススプリング117、右前ガススプリング118、左後ガススプリング119、および右後ガススプリングが備えられている。
左前ガススプリング117は、前軸線122を軸にして、左前輪51の上下方向の移動を吸収する。右前ガススプリング118は、前軸線122を軸にして右前輪52の上下方向の移動を吸収する。左後ガススプリング119は、後軸線123を軸にして左後輪53の上下方向の移動を吸収する。右後ガススプリングは、後軸線123を軸にして右後輪54(図示せず)の上下方向の移動を吸収する。
すなわち、左前輪51、右前輪52、左後輪53、および右後輪54(図示せず)が上下方向へ移動可能に移動体11に支持されている。
【0072】
さらに、自走式作業装置110は、移動体11の底部の前側に設けられた移動体幅方向変位量吸収部125と、移動体11の底部の後側に設けられた後側の移動体幅方向変位量吸収部126とを備えている。
前側の移動体幅方向変位量吸収部125は、左前輪51と右前輪52との移動体幅方向の変位量を吸収する。後側の移動体幅方向変位量吸収部126は、左前輪51と右前輪52との移動体幅方向の変位量を吸収する。
すなわち、左前輪51、右前輪52、左後輪53、および右後輪54(図示せず)が移動体幅方向へ移動可能に移動体11に支持されている。
【0073】
このように、左前輪51、右前輪52、左後輪53、および右後輪54(図示せず)が上下方向へ移動可能で、移動体幅方向に移動可能とすることにより、自走式作業装置110の姿勢変化を姿勢モデルに対して小さく抑えることが可能になる。これにより、自走式作業装置110を走行面30(図3参照)に沿って一層安定させた状態で走行させることができる。
【0074】
[第4実施形態]
図15に示すように、自走式作業装置130は、第1実施形態の自走式作業装置10と同様に、左前輪131が移動体幅方向の傾斜角を調整可能に構成されている。
具体的には、移動体11に支持軸132を介してブラケット133が上下方向に回転自在に支持されている。ブラケット133にケース134が取り付けられ、ケース134の下端部に従動プーリ135が回転自在に支持されている。従動プーリ135に前輪131の車軸が同軸上に取り付けられている。
【0075】
また、ケース134の上端部に駆動プーリ136が回転自在に支持されている。駆動プーリ136に左前駆動モータ64の駆動軸64aが同軸上に取り付けられている。さらに、駆動プーリ136と従動プーリ135とに無端状のベルト137が張設されている。
よって、左前駆動モータ64を駆動することにより、駆動プーリ136、従動プーリ135、およびベルト137を介して左前輪131が回転する。
さらに、移動体11の支持軸132を軸にしてブラケット133を上下方向に揺動することにより、左前輪131が移動体幅方向に傾斜角θ4で傾斜させることができる。
【0076】
左前輪131は、弾性変形可能な車輪移動体131aと、車輪移動体131aの移動体幅方向外側に設けられた外板部131bと、車輪移動体131aの移動体幅方向内側に設けられた内板部131cとを備えている。外板部131b、内板部131cは硬質な樹脂、または金属で形成されている。
よって、左前輪131の下端部が移動体幅方向外側に移動して、左前輪131が傾斜角θ4まで傾斜した状態において(図15に示す状態)、内板部131cの外周部131dを走行面30に食い込ませることができる。一方、左前輪131の下端部が移動体幅方向内側に移動して、左前輪131が傾斜角θ4まで傾斜した状態において、外板部131bの外周部131eを走行面30に食い込ませることができる。
【0077】
[第5実施形態]
図16に示すように、自走式作業装置140は、左前輪142の幅寸法W1を、第1実施形態の左前輪51の幅寸法に比べて小さくしたものである。
左前輪142の幅寸法W1が小さく形成されることにより、走行面30に対する左前輪142の接地圧を高めることができる。よって、左前輪142を走行面30に対して好適に食い込ませることが可能になる。右前輪、左後輪、および右後輪も左前輪142と同様に、幅寸法が小さく形成されている。
これにより、自走式作業装置140は、を走行面30に沿って一層安定させた状態で走行させることができる。
【0078】
[第6実施形態]
図17に示すように、自走式作業装置150は、左前輪152の外周部153からグローサ(突条部)154が設けられ、突出されている。
具体的には、左前輪152は、外周部153の周方向に間隔をおいて複数のグローサ154が左前輪152の外側に向けて放射状に突出され、かつ、左前輪152の幅方向に延びている。よって、グローサ154を走行面30に対して好適に食い込ませることが可能になる。右前輪、左後輪、および右後輪も左前輪152と同様に、複数のグローサ154が形成されている。
よって、複数のグローサ154を走行面30に食い込ませ、あるいは、複数のグローサ154の接地圧を高くできる。これにより、走行面30に対する左右の前輪152および左右の後輪の滑りを抑えることができ、自走式作業装置150を走行面30に沿って一層好適に走行させることができる。
【0079】
[第7実施形態]
図18に示すように、自走式作業装置160は、左前輪162の外周部(外周面)163が弾性変形可能に形成され、外周部163からグローサ(突条部)164が突出され、かつ、左前輪162の幅方向に延びている。
具体的には、左前輪162は、外側壁の中央に車軸166が同軸上に配置され、車軸166の周囲に複数の筒体167が車軸166の周方向に取り付けられている。さらに、複数の筒体167の外側に外周部163が取り付けられている。外周部163は、外側辺が外側壁の外辺に連結されている。外周部(外周面)163は弾性変形可能に形成されている。右前輪、左後輪、および右後輪も左前輪162と同様に形成されている。
左前輪162の外周部163は、一例として、弾性変形可能なゴム材で形成されている。
【0080】
すなわち、外周部163を走行面30に沿って弾性変形させることができる。よって、外周部163を走行面30に沿って良好に接地させることができる。これにより、左前輪162、右前輪、左後輪、および右後輪の滑りを抑えることができ、自走式作業装置160を走行面30に沿って一層安定させた状態で走行させることができる。
【0081】
[第8実施形態]
図19に示すように、自走式作業装置170は、移動体11の左側に設けられた左前輪171、左中央輪172および左後輪173と、移動体11の右側に設けられた右前輪174、右中央輪175および右後輪176と、を備えている。
左前輪171、左中央輪172および左後輪173は、それぞれ同様に形成された車輪である。右前輪174、右中央輪175および右後輪176は、左前輪171、左中央輪172および左後輪173と左右対称の車輪である。よって、左前輪171について詳しく説明して、左中央輪172、左後輪173、右前輪174、右中央輪175および右後輪176の詳しい説明を省略する。
【0082】
左前輪171は、第1実施形態の左前輪51と同様に、移動体幅方向に対して傾斜角を調整可能に構成されている。これにより、走行面30に対する左前輪171の滑りを抑えることができ、移動体11を走行面30に沿って正常に走行させることができる。
さらに、左前輪171は、側面視でS字形に形成されている。具体的には、左前輪171は、移動体11の前左側部11b側に配置され、駆動モータの駆動軸178に中央部171aが取り付けられている。左前輪171は、中央部171aから湾曲状に延びる第1湾曲部171bと、中央部171aから第1湾曲部171bの反対側に湾曲状に延びる第2湾曲部171cと、有する。
【0083】
左前輪171が第1湾曲部171bと第2湾曲部171cとで側面視S字状に形成されることにより、左前輪171の接地部171dを周方向に180°の間隔をおいて2箇所に形成できる。よって、走行面30の傾斜方向に沿って走行面30を良好に登ることができる。これにより、走行面30における自走式作業装置170の走行を一層良好に確保できる。
【0084】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の調整を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10,100,110,130,140,150,160,170…自走式作業装置
11……移動体
12……走行車輪
15……可変操作部
17……姿勢検知部
20……草刈り機(作業部)
22……作業部姿勢検知部
23……作業部姿勢可変部
25……制御部
30……走行面
51,131,171…左前輪
52,174……右前輪
53,173……左後輪
54,176……右後輪
75,77,81,83…外突部(突部)
76,78,82,84…内突部(突部)
154、164…グローサ(突条部)
163…外周部(外周面)
172…左中央輪
175…右中央輪
図1
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