(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】PTCヒータユニット及びPTCヒータユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/06 20060101AFI20220117BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20220117BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H05B3/06 B
H05B3/14 A
H05B3/03
(21)【出願番号】P 2017224206
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】512243007
【氏名又は名称】株式会社 加島
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】加島 裕次
(72)【発明者】
【氏名】道家 和貴
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188403(JP,A)
【文献】特開平07-050195(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011295(WO,A1)
【文献】特開平06-333705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02 -3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極板と、
下部電極板と、
前記上部電極板及び前記下部電極板の間に挟持され、前記上部電極板及び下部電極板の内側表面と接触する板状のPTCヒータ素子と、
前記上部電極板、前記下部電極板及び前記PTCヒータ素子により構成されるPTCヒータ部の周囲を被覆する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部が収容される外装ケーシングとを備え
、
前記上部電極板及び前記下部電極板の間には、前記PTCヒータ素子の両側にそれぞれ配置される第1絶縁材及び第2絶縁材が設けられており、
前記第1絶縁材及び第2絶縁材の厚み寸法は、前記PTCヒータ素子の厚み寸法と同一に形成されるPTCヒータユニット。
【請求項2】
前記上部電極板及び前記下部電極板は、前記外装ケーシングの外側に配置される端子部をそれぞれ備えており、
前記外装ケーシングは、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部を有する筒状の収容部を備えており、
前記上部電極板が有する端子部、及び、前記下部電極板が有する端子部は、前記筒状の収容部における一方の開口部、及び、他方の開口部のそれぞれを介して前記外装ケーシングの外側に配置される請求項1に記載のPTCヒータユニット。
【請求項3】
前記第1絶縁材は、前記PTCヒータ素子に対して前記収容部の一方の開口部側に配置され、
前記第2絶縁材は、前記PTCヒータ素子に対して前記収容部の他方の開口部側に配置されている請求項2に記載のPTCヒータユニット。
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、筒状のカプトンフィルムである請求項1から3のいずれかに記載のPTCヒータユニット。
【請求項5】
上部電極板及び下部電極板の間に板状のPTCヒータ素子を挟持してPTCヒータ部を形成するヒータ部形成ステップと、
前記PTCヒータ部の周囲を樹脂フィルムにより被覆する被覆ステップと、
前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部を有する筒状の収容部を備える外装ケーシングの該収容部に、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部を挿入する収容部挿入ステップと、
前記PTCヒータ部が収容された前記外装ケーシングに対してプレスを行い、前記PTCヒータ部及び前記外装ケーシングを一体化させるプレスステップとを備え
、
前記ヒータ部形成ステップは、前記上部電極板及び前記下部電極板の間であって、前記PTCヒータ素子の両側に、前記PTCヒータ素子の厚み寸法と同一寸法の第1絶縁材及び第2絶縁材を配置する絶縁材配置工程を備えているPTCヒータユニットの製造方法。
【請求項6】
前記上部電極板及び前記下部電極板は、板状の主面部と、前記主面部の側縁から該主面部の面方向に沿って突出する端子部とをそれぞれ備えており、
前記ヒータ部形成ステップは、前記上部電極板が有する端子部と、前記下部電極板が有する端子部とが、互いに反対方向を向くようにセットして前記PTCヒータ素子を挟持する工程を備えており、
前記収容部挿入ステップは、前記上部電極板が有する端子部、及び、前記下部電極板が有する端子部が、前記筒状の収容部における一方の開口部、及び、他方の開口部のそれぞれを介して前記外装ケーシングの外側に配置する工程を備えており、
前記樹脂フィルムにより周囲が被覆され、前記収容部に収容されたPTCヒータ部に対し、前記各端子部を、前記主面部に対して垂直となる方向に屈曲させる端子部屈曲ステップを更に備える請求項5に記載のPTCヒータユニットの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁材配置工程は、前記第1絶縁材が、前記PTCヒータ素子に対して前記上部電極板が備える端子部側となるように、前記第2絶縁材が、前記PTCヒータ素子に対して前記下部電極板が備える端子部側となるように配置する工程を備えている請求項6に記載のPTCヒータユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータユニット及びPTCヒータユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、面状ヒータユニットの一種としてPTCヒータユニットが知られている。このPTCヒータユニットは、ある特定の温度領域に達すると急峻に抵抗値の上昇がみられ、自己温度調節機能を有するものであり、様々な分野で使用される用途幅の広いヒータユニットである。このようなPTCヒータユニットとしては、Y2O3を微量添加したBaTiO3等のセラミック系PTCヒータ素子と、ポリエチレンを代表とする結晶性高分子に導電性を有する一般的粒状のカーボンブラック粉末等を混練して成形した高分子系PTCヒータ素子を備えるものが一般的に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のPTCヒータユニットは、その製造方法が複雑であり、より簡便に効率よく製造できるように構成することが望まれていた、
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、効率よく製造することができるPTCヒータユニット、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、上部電極板と、
下部電極板と、
前記上部電極板及び前記下部電極板の間に挟持され、前記上部電極板及び下部電極板の内側表面と接触する板状のPTCヒータ素子と、前記上部電極板、前記下部電極板及び前記PTCヒータ素子により構成されるPTCヒータ部の周囲を被覆する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部が収容される外装ケーシングとを備え、前記上部電極板及び前記下部電極板の間には、前記PTCヒータ素子の両側にそれぞれ配置される第1絶縁材及び第2絶縁材が設けられており、前記第1絶縁材及び第2絶縁材の厚み寸法は、前記PTCヒータ素子の厚み寸法と同一に形成されるPTCヒータユニットにより達成される。
【0006】
また、このPTCヒータユニットにおいて、前記上部電極板及び前記下部電極板は、前記外装ケーシングの外側に配置される端子部をそれぞれ備えており、前記外装ケーシングは、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部を有する筒状の収容部を備えており、前記上部電極板が有する端子部、及び、前記下部電極板が有する端子部は、前記筒状の収容部における一方の開口部、及び、他方の開口部のそれぞれを介して前記外装ケーシングの外側に配置されることが好ましい。
【0007】
また、前記第1絶縁材は、前記PTCヒータ素子に対して前記収容部の一方の開口部側に配置され、前記第2絶縁材は、前記PTCヒータ素子に対して前記収容部の他方の開口部側に配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記樹脂フィルムは、筒状のカプトンフィルムであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の上記目的は、上部電極板及び下部電極板の間に板状のPTCヒータ素子を挟持してPTCヒータ部を形成するヒータ部形成ステップと、前記PTCヒータ部の周囲を樹脂フィルムにより被覆する被覆ステップと、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部を有する筒状の収容部を備える外装ケーシングの該収容部に、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆されたPTCヒータ部を挿入する収容部挿入ステップと、前記PTCヒータ部が収容された前記外装ケーシングに対してプレスを行い、前記PTCヒータ部及び前記外装ケーシングを一体化させるプレスステップとを備え、前記ヒータ部形成ステップは、前記上部電極板及び前記下部電極板の間であって、前記PTCヒータ素子の両側に、前記PTCヒータ素子の厚み寸法と同一寸法の第1絶縁材及び第2絶縁材を配置する絶縁材配置工程を備えているPTCヒータユニットの製造方法により達成される。
【0010】
また、このPTCヒータユニットの製造方法において、前記上部電極板及び前記下部電極板は、板状の主面部と、前記主面部の側縁から該主面部の面方向に沿って突出する端子部とをそれぞれ備えており、前記ヒータ部形成ステップは、前記上部電極板が有する端子部と、前記下部電極板が有する端子部とが、互いに反対方向を向くようにセットして前記PTCヒータ素子を挟持する工程を備えており、前記収容部挿入ステップは、前記上部電極板が有する端子部、及び、前記下部電極板が有する端子部が、前記筒状の収容部における一方の開口部、及び、他方の開口部のそれぞれを介して前記外装ケーシングの外側に配置する工程を備えており、前記樹脂フィルムにより周囲が被覆され、前記収容部に収容されたPTCヒータ部に対し、前記各端子部を、前記主面部に対して垂直となる方向に屈曲させる端子部屈曲ステップを更に備えることが好ましい。
【0011】
また、前記絶縁材配置工程は、前記第1絶縁材が、前記PTCヒータ素子に対して前記上部電極板が備える端子部側となるように、前記第2絶縁材が、前記PTCヒータ素子に対して前記下部電極板が備える端子部側となるように配置する工程を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、効率よく製造することができるPTCヒータユニット、および、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るPTCヒータユニットの分解斜視図である。
【
図2】本発明に係るPTCヒータユニットの平面図である。
【
図3】本発明に係るPTCヒータユニットの正面図である。
【
図4】本発明に係るPTCヒータユニットの側面図である。
【
図5】ヒータ部形成ステップにおいて供される上部電極板または下部電極板を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るPTCヒータユニットについて、添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明に係るPTCヒータユニット1の分解斜視図であり、
図2は、PTCヒータユニット1の平面図である。
図3はPTCヒータユニット1の正面図であり、
図4はその側面図である。本発明に係るPTCヒータユニット1は、
図1~
図4に示すように、PTCヒータ素子2と、上部電極板3と、下部電極板4と、第1絶縁材6と、第2絶縁材7と、樹脂フィルム8と、外装ケーシング9とを備えている。
【0015】
PTCヒータ素子2は、板状の形態を有しており、温度変化に対して抵抗値が変化する抵抗体であって、正の温度係数を有する。このPTCヒータ素子2は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に所定の添加物(例えば、Y2O3等)を加えたセラミック材料からなり、チタン酸バリウムのキュリー温度付近(例えば90℃付近や230℃付近)で抵抗値が変化する特性を備えている。なお、PTCヒータ素子2の種類は特に限定されず、上記セラミック系PTCヒータ素子2の代わりに、ポリエチレンを代表とする結晶性高分子に導電性を有する一般的粒状のカーボンブラック粉末等を混練して成形した高分子系PTCヒータ素子を採用してもよい。
【0016】
上部電極板3及び下部電極板4は、それぞれ、平面視矩形状の板状の主面部31,41と、当該主面部31,41の一の側縁から外方に突出する端子部32,42とを備えている。上部電極板3及び下部電極板4を構成する主面部31,41及び端子部32,42は、例えば、ステンレスのように酸化し難い金属材料から形成することが好ましい。また、端子部32,42は、電力供給用のリード線と電気的に接続する端子であり、当該リード線に対するはんだ付け加工を容易にするために、その表面に適宜メッキ加工を施してもよい。メッキとしては、例えば、ニッケル・銀メッキを好適に例示することができる。また、各端子部32,42には、電気絶縁のための絶縁チューブ5が挿入されている。絶縁チューブ5は、各端子部32,42の先端部(リード線との接続部分)のみを露出させた状態で、当該先端部以外の部分を被覆するように配置されている。なお、絶縁チューブ5を構成する材料としては、電気絶縁性に優れるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン材料やゴム材料から形成することが好ましい。
【0017】
上記構成の上部電極板3及び下部電極板4の間にPTCヒータ素子2が挟持されており、上部電極板3の内側表面と板状のPTCヒータ素子2の一方面とが接触し、下部電極板4の内側表面とPTCヒータ素子2の他方面とが接触するように構成されている。上部電極板3及び下部電極板4の間に電圧を印加することにより、上部電極板3及び下部電極板4を通じてPTCヒータ素子2に電流が流れ、PTCヒータ素子2で電気エネルギーが熱に変換される。変換された熱は後述の外装ケーシング9に伝達され、当該外装ケーシング9の外表面から放熱され、PTCヒータユニット1の周囲を加熱することになる。
【0018】
また、上部電極板3及び下部電極板4の間には、PTCヒータ素子2に隣接して配置される第1絶縁材6及び第2絶縁材7が設けられている。第1絶縁材6は、PTCヒータ素子2に対して上部電極板3が備える端子部32側に配置されており(PTCヒータ素子2に対して後述の収容部91の一方の開口部91a側に配置されており)、第2絶縁材7は、PTCヒータ素子2に対して下部電極板4が備える端子部42側に配置されている(PTCヒータ素子2に対して後述の収容部91の他方の開口部91a側に配置されている)。これら第1絶縁材6及び第2絶縁材7は、それぞれ直方体状に構成されており、その厚みは、PTCヒータ素子2と同一となるように形成され、後述のプレスステップ(カシメ工程)を経た状態で、上部電極板3及び下部電極板4の内側表面と接触するように構成されている。また、第1絶縁材6及び第2絶縁材7を構成する材料としては、電気絶縁性に優れるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン材料やセラミック材料から形成することが好ましい。
【0019】
上部電極板3と、下部電極板4と、当該上部電極板3及び下部電極板4の間に挟持されるPTCヒータ素子2と、第1絶縁材6と、第2絶縁材7とにより構成される積層構造体は、PTCヒータ部を構成し、このPTCヒータ部の周囲は樹脂フィルム8により被覆されている。樹脂フィルム8は、筒状に形成されることが好ましく、また、電気絶縁性を備えるとともに耐熱性を備える材料により形成されることが好ましい。例えば、筒状のカプトンフィルムから形成されることが好ましい。なお、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部においては、上部電極板3及び下部電極板4が備える各端子部32,42の先端は、樹脂フィルム8の外側に配置されている。また、筒状の樹脂フィルム8の両端部は、絶縁の観点、及び、異物混入防止の観点から外装ケーシング9における収容部91の開口部91aの外側に配置されるように構成されている。
【0020】
外装ケーシング9は、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部が収容される部材であり、その表面から熱を放熱する放熱部材としても機能するものである。外装ケーシング9を形成する材料としては、特に限定されないが、放熱性能に富む金属材料から形成することが好ましく、例えば、アルミニウムやステンレスを例示することができる。この外装ケーシング9は、収容部91と固定部92とを備えている。収容部91は、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部を挿入して収容する機能を有しており、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部91aを有する筒状体である。この収容部91は、平面視矩形状の形態を有している。また、収容部91は、できるだけ薄く扁平になるように構成され、その内部空間の高さは、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部の高さ(厚み)よりもわずかに大きくなるように構成されている。固定部92は、収容部91において互いに対向する一対の側壁に連接し、当該側壁の外方に突出するように構成されている。なお、各固定部92の底面と収容部91の底面とは、面一となるように構成されている。また、各固定部92には、ボルト等の固定手段が挿通可能な貫通孔93が形成されている。
【0021】
この外装ケーシング9の収容部91にPTCヒータ部を収容した状態においては、上部電極板3及び下部電極板4が備える各端子部32,42は、外装ケーシング9の外側に配置されることとなる。より具体的には、上部電極板3が有する端子部32は、筒状の収容部91における一方の開口部を介して外装ケーシング9の外側に配置され、下部電極板4が有する端子部42は、収容部91の他方の開口部を介して外装ケーシング9の外側に配置されることとなる。
【0022】
次に本発明にかかるPTCヒータユニット1の製造方法について説明する。このPTCヒータユニット1の製造方法は、ヒータ部形成ステップと、被覆ステップと、収容部挿入ステップと、プレスステップと、端子部屈曲ステップとを備えている。
【0023】
ヒータ部形成ステップは、上述の上部電極板3及び下部電極板4の間に板状のPTCヒータ素子2を挟持してPTCヒータ部を形成する工程である。ここで、ヒータ部形成ステップにおいて供される上部電極板3及び下部電極板4は、
図5に示すように、板状の主面部31,41と、当該主面部31,41の一の側縁から該主面部31,41の面方向に沿って突出する端子部32,42とをそれぞれ備えるように構成されている。なお、各端子部32,42には、予め、絶縁チューブ5が挿入されている。また、ヒータ部形成ステップは、上部電極板3が有する端子部32と、下部電極板4が有する端子部42とが、互いに反対方向を向くようにセットしてPTCヒータ素子2を挟持する工程を備えている。また、このヒータ部形成ステップは、PTCヒータ素子2に隣接して上部電極板3及び下部電極板4の間に第1絶縁材6及び第2絶縁材7を配置する絶縁材配置工程を備えている。絶縁材配置工程は、第1絶縁材6が、PTCヒータ素子2に対して上部電極板3が備える端子部32側となるように、第2絶縁材7が、PTCヒータ素子2に対して下部電極板4が備える端子部42側となるように配置する工程を備えている。
【0024】
また、被覆ステップは、上部電極板3及び下部電極板4の間に、板状のPTCヒータ素子2、第1絶縁材6、第2絶縁材7を挟持して構成されるPTCヒータ部の周囲を樹脂フィルム8(特に、筒状のカプトンフィルム)により被覆する工程である。この被覆ステップにおいては、PTCヒータ部に含まれる上部電極板3及び下部電極板4が備える各端子部32,42が、樹脂フィルム8の外側において露出するようにPTCヒータ部の周囲を被覆する。この被覆ステップを経ることにより、上部電極板3と、下部電極板4と、当該上部電極板3及び下部電極板4の間に挟持されるPTCヒータ素子2、第1絶縁材6及び第2絶縁材7からなるPTCヒータ部は樹脂フィルム8を介して一体化されることとなる。より具体的には、互いに重ね合わされた上部電極板3、PTCヒータ素子2及び下部電極板4を、筒状の樹脂フィルムの一方の開口側から当該樹脂フィルムの内部に挿入することにより、樹脂フィルムでPTCヒータ部を被覆(囲繞)する。
【0025】
収容部挿入ステップは、樹脂フィルム8により一体化されたPTCヒータ部を外装ケーシング9が備える収容部91に挿入する工程である。つまり、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部の厚み方向断面形状に対応する開口部91aを有する筒状の収容部91を備える外装ケーシング9の該収容部91に、樹脂フィルム8により周囲が被覆されたPTCヒータ部を挿入する工程である。この収容部挿入ステップは、上部電極板3が有する端子部32、及び、下部電極板4が有する端子部42が、筒状の収容部91における一方の開口部、及び、他方の開口部のそれぞれを介して外装ケーシング9の外側に配置されるように、上部電極板3(又は下部電極板4)の端子部32(42)側を先端側として収容部91に挿入する。
【0026】
プレスステップは、PTCヒータ部が収容された外装ケーシング9に対してプレスを行い、外装ケーシング9を圧縮変形させて、PTCヒータ部及び外装ケーシング9を一体化させる工程である。このようなプレスステップとしては、いわゆるカシメ工程を例示することができる。
【0027】
また、端子部屈曲ステップは、樹脂フィルム8により周囲が被覆され、外装ケーシング9の収容部91に収容されたPTCヒータ部に対し、上部電極板3が有する端子部32、及び/又は、下部電極板4が有する端子部42を、上部電極板3や下部電極板4が有する主面部31,41に対して垂直となる方向に屈曲させる工程である。なお、この端子部屈曲ステップは、上記プレスステップの前工程として実施してもよく、あるいは、後工程として実施してもよい。
【0028】
本発明に係るPTCヒータユニット1は、上述のような構成、つまり各部材を積層構造として構成できるため、極めて簡便に製造することが可能となり、製造コストを下げ、また、短時間で製造することが可能となる。特に、外装ケーシング9の収容部91に挿入する前段階で、樹脂フィルム8によって、上部電極板3、下部電極板4、PTCヒータ素子2、第1絶縁材6及び第2絶縁材7を予め一体化できるため、狭い開口部91aを有する収容部91への挿入工程が簡便化され、製造効率を向上させることができる。
【0029】
また、上記実施形態においては、上部電極板3と下部電極板4との間に、第1絶縁材6及び第2絶縁材7を配置するように構成しているため、これら各絶縁材が、スペーサ及び衝撃吸収材としての機能を果たすため、プレスステップにおけるプレスによって、PTCヒータ素子2に過大な圧縮力が作用することを抑制して損傷が生じることを効果的に防止することが可能となり、PTCヒータユニット1の製造効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0030】
また、本発明に係るPTCヒータユニット1においては、端子部32,42を外装ケーシング9の外側に配置するように構成しているため、外部の電力供給装置から導かれるリード線との接続作業を簡便に行うことが可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態に係るPTCヒータユニット1、及び、その製造方法について説明したが、PTCヒータユニット1、及び、その製造方法の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記PTCヒータユニット1の実施形態においては、上部電極板3及び下部電極板4が備える端子部32,42の構成として、主面部31,41に対して垂直に屈曲するように構成しているが、このような構成に特に限定されず、主面部31,41の面方向に沿って突出する形態として端子部32,42を構成してもよい。つまり、PTCヒータユニット1の製造方法において、端子部屈曲ステップを省略してもよい。
【0032】
また、上述のPTCヒータユニット1の製造方法においては、ヒータ部形成ステップに供される上部電極板3及び下部電極板4の各端子部32,42に予め絶縁チューブ5を挿入するように構成されているが、この絶縁チューブ5の各端子部32,42に対する挿入工程は、ヒータ部形成ステップのタイミングに限定されるものではなく、例えば、収容部挿入ステップやプレスステップが行われる前後のタイミングや、端子部屈曲ステップが行われる前後のタイミングであっても構わない。
【0033】
また、上記実施形態においては、第1絶縁材6及び第2絶縁材7を備える構成であるが、これら各絶縁材を省略してPTCヒータユニット1を構成してもよい。
【0034】
また、上述のPTCヒータユニット1の製造方法が備えるヒータ部形成ステップにおいて、上部電極板3と下部電極板4とでPTCヒータ素子2を挟む込む際、予め、PTCヒータ素子2の表面に、例えば、導電性のシリコン材を薄く塗布してから上部電極板3と下部電極板4とで張り合わせるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 PTCヒータユニット
2 PTCヒータ素子
3 上部電極板
31 主面部
32 端子部
4 下部電極板
41 主面部
42 端子部
5 絶縁チューブ
6 第1絶縁材
7 第2絶縁材
8 樹脂フィルム
9 外装ケーシング
91 収容部
91a 開口部
92 固定部
93 貫通孔