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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】流体ヒーター
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/44 20060101AFI20220117BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H05B3/44
H05B3/40 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016203830
(22)【出願日】2016-10-17
(65)【公開番号】P2018067397
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-10-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼ウェブサイトのアドレス:http://www.fintech.co.jp/sah/FCM-N-frame.htm ウェブサイトの掲載日:平成28年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】515009697
【氏名又は名称】有限会社フィンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】浅田 茂
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164979(JP,A)
【文献】特開平09-115647(JP,A)
【文献】特開2016-129116(JP,A)
【文献】特開昭63-315855(JP,A)
【文献】特開2000-200671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/44
H05B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された流体を加熱して吹き出す流体ヒーターであって、
流体の供給口及び吹出し口をそれぞれ両端に有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング内に配設される絶縁体芯棒と、
前記絶縁体芯棒の周囲に配設される発熱体と、
温度測定用の温度センサーと、を備えており、
前記温度センサーは、温度検出点である第1温度測定点及び第2温度測定点を備えており、
前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の内部にそれぞれ位置しており、
前記温度センサーの前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の中心軸線を挟んだ両側の2カ所に位置することを特徴とする流体ヒーター。
【請求項2】
前記温度センサーは、熱電対であり、
前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、
前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3金属線を備えており、
前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点となる請求項1に記載の流体ヒーター。
【請求項3】
前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第3金属線は、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料とは異なる第3の金属材料から形成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体ヒーター。
【請求項4】
前記温度センサーは、前記絶縁体芯棒の先端部と前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体ヒーター。
【請求項5】
前記温度センサーは、熱電対であり、
前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、
前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3金属線を備えており、
前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点であり、
前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第3金属線は、
第1線部と第2線部との接続点が、前記第3温度測定点となることを特徴とする請求項4に記載の流体ヒーター。
【請求項6】
前記温度センサーは、前記絶縁体芯棒の先端部と前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点及び第4温度測定点を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の流体ヒーター。
【請求項7】
前記温度センサーは、熱電対であり、
前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、
前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3金属線を備えており、
前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点であり、
前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、
前記熱電対における前記第3金属線は、前記第1金属線との接続点において接続する前記第2の金属材料からなる第1線部と、前記第2金属線との接続点において接続する前記第1の金属材料からなる第2線部と、前記第1線部及び前記第2線部とを接続する第3線部とを備えており、
前記第3線部は、前記絶縁体芯棒の先端部と、前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に位置しており、
前記第1線部と前記第3線部との接続点、及び、前記第2線部と前記第3線部との接続点のそれぞれが、前記第3温度測定点、及び、前記第4温度測定点となることを特徴とする請求項6に記載の流体ヒーター。
【請求項8】
前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の中心軸線に対して線対称位置に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の流体ヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体ヒーターとして種々の形態のものが知られているが、その一つとして、コイル状電熱線からなる発熱体を通電加熱することにより加熱を行う熱風ヒーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような熱風ヒーターは、図10の概略構成断面図に示すように、コイル状電熱線からなる発熱体100と、当該発熱体100の内部空間に挿入される絶縁性材料からなる芯材101と、芯材101に発熱体をセットすることにより構成される構造物を被覆する管状のガラス管102等とを備えている。芯材101は中空状に形成されており、発熱体100の端部に接続する導線を芯材内部に配置できるように構成されている。また、このような構成のヒーターの一方端には、空気供給源が接続されており、供給された空気を加熱してヒーターの吹出し口から熱風を吹き出すことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-200671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の熱風ヒーターにおいては、吹き出される空気温度を一定に保つために、或いは、所望の空気温度に変更する等のために、熱風温度計測用の温度センサーをその内部に備え、当該温度センサーによる検出温度に基づいて、コントローラが、ヒーター内部の発熱体に供給される電力をコントロールし、発熱体の発熱温度が制御されている。熱風ヒーターの内部に配置された温度センサーは、発熱体100を通過した直後の空気温度を計測するために、図10に示されるように、芯材101の先端部と、熱風吹き出し口との間にある空間に、温度測定点103がセッティングされるように構成されている。
【0005】
しかしながら、このような従来構成の熱風ヒーターにおいては、発熱体を通過した熱風の流れが乱れていることに起因して、温度センサーによって測定される温度にバラつきが生じやすく、安定した温度測定が難しいという問題があった。従来構成の熱風ヒーターは、このように測定温度にバラつきが生じやすい温度センサーの検出温度に基づいて、ヒーター内部の発熱体に供給される電力をコントロールし、発熱体の発熱温度を制御するものであることから、熱風ヒーターから吹き出されワークに付与される熱量が大きくバラつき、ワークに対する加熱能力が一定にならないおそれがあった。
【0006】
また、従来構成の熱風ヒーターにおいて、仮に、空気供給源からの空気の供給がストップしたり、極端に供給空気量が減少するような異常事態が発生した場合、発熱体が発した熱を温度センサーの温度測定点に運ぶ熱キャリアが無くなる為、温度センサーは、低い温度しか指示しなくなる。その結果、熱風ヒーターの温度制御を行うコントローラは、熱風温度を上昇させようとして、多くの電力を発熱体に供給してしましい、短時間で熱暴走に発展し、発熱体が過熱焼損するというおそれもあった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、測定される温度にバラつきが発生することを効果的に抑制することができる流体ヒーターを提供することを目的とする。また、測定される温度にバラつきが発生することを効果的に抑制すると共に、発熱体の過熱焼損を効果的に抑制することができる流体ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、供給された流体を加熱して吹き出す流体ヒーターであって、流体の供給口及び吹出し口をそれぞれ両端に有する筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配設される絶縁体芯棒と、前記絶縁体芯棒の周囲に配設される発熱体と、温度測定用の温度センサーと、を備えており、前記温度センサーは、温度検出点である第1温度測定点及び第2温度測定点を備えており、前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の内部にそれぞれ位置しており、前記温度センサーの前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の中心軸線を挟んだ両側の2カ所に位置することを特徴とする流体ヒーターにより達成される。
【0010】
また、前記温度センサーは、熱電対であり、前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3金属線を備えており、前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点となることが好ましい。
【0011】
また、前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第3金属線は、前記第1の金属材料及び前記第2の金属材料とは異なる第3の金属材料から形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記温度センサーは、前記絶縁体芯棒の先端部と前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点を更に備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記温度センサーは、熱電対であり、前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3接続線を備えており、前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点であり、前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第3金属線は、前記第1金属線との接続点において接続する前記第2の金属材料からなる第1線部と、前記第2金属線との接続点において接続する前記第1の金属材料からなる第2線部とを備えており、前記第1線部及び前記第2線部は、前記絶縁体芯棒の先端部と、前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内において互いに接続されており、前記第1線部と前記第2線部との接続点が、前記第3温度測定点となることが好ましい、
【0014】
また、前記温度センサーは、前記絶縁体芯棒の先端部と前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点及び第4温度測定点を更に備えていることが好ましい。
【0015】
また、前記温度センサーは、熱電対であり、前記絶縁体芯棒は、その内部に、前記熱電対を構成する第1金属線、及び、前記熱電対を構成する第2金属線が独立してそれぞれ挿通される第1貫通孔及び第2貫通孔を備えており、前記熱電対は、前記ケーシングの前記吹出し口側において、前記第1金属線と前記第2金属線とを接続する第3接続線を備えており、前記第1金属線と前記第3金属線との接続点、及び、前記第2金属線と前記第3金属線との接続点のそれぞれが、前記第1温度測定点、及び、前記第2温度測定点であり、前記熱電対における前記第1金属線は、第1の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第2金属線は、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されており、前記熱電対における前記第3金属線は、前記第1金属線との接続点において接続する前記第2の金属材料からなる第1線部と、前記第2金属線との接続点において接続する前記第1の金属材料からなる第2線部と、前記第1線部及び前記第2線部とを接続する第3線部とを備えており、前記第3線部は、前記絶縁体芯棒の先端部と、前記ケーシングの前記吹出し口との間に形成される空間内に位置しており、前記第1線部と前記第3線部との接続点、及び、前記2線部と前記第3線部との接続点のそれぞれが、前記第3温度測定点、及び、前記第4温度測定点となることが好ましい。
【0016】
また、前記第1温度測定点及び前記第2温度測定点は、前記絶縁体芯棒の中心軸線に対して線対称位置に配置するように構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定される温度にバラつきが発生することを効果的に抑制することができる熱風ヒーターを提供することができる。また、測定される温度にバラつきが発生することを効果的に抑制すると共に、発熱体の過熱焼損を効果的に抑制することができる熱風ヒーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる流体ヒーターの概略構成図である。
図2図2に示す流体ヒーターにおける絶縁体芯棒に設けられる規制部材の正面図である。
図3】本願に係る流体ヒーター1が備える温度センサーの構成を説明するための説明図である。
図4】本願に係る流体ヒーター1が備える絶縁体心棒の正面図である。
図5】本願に係る流体ヒーター1を製造する方法の一部を説明するための説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る流体ヒーターが用いられる熱風ヒーターコントロールシステムの概略構成を示すブロック図である。
図7】本願に係る流体ヒーター1の変形例を示す要部拡大概略構成断面図である。
図8】本願に係る流体ヒーター1の他の変形例を示す要部拡大概略構成断面図である。
図9】本願に係る流体ヒーター1の更なる他の変形例を示す要部拡大概略構成断面図である。
図10】従来の熱風ヒーターの概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る流体ヒーターは、供給された流体(例えば、気体,液体,粉体)を加熱して吹き出すことによりワークを加熱する加熱手段であり、例えば、はんだ付けやろう付け、その他の加熱処理に供されるものである。以下、本発明の一実施形態に係る流体ヒーターについて、気体を加熱して吹き出す熱風ヒーターを例に採り添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる流体ヒーター1の概略構成図(断面図)である。この流体ヒーター1は、図1に示すように、ケーシング2と、絶縁体芯棒3と、発熱体4と、温度センサー5とを備えている。
【0022】
ケーシング2は、気体の供給口及び吹出し口をそれぞれ両端に有する筒状の形態を有しており、絶縁体芯棒3と、当該絶縁体芯棒3の外周を被覆するように配設された発熱体4とからなる構造物を更に被覆するための部材である。このケーシング2としては、例えば、石英ガラス管や、セラミックス管、金属管、石英ガラス管の外周を金属管で被覆した複合管等、種々の管体を使用することができる。本実施形態においては、ケーシング2として、石英ガラス管21の外周を金属管22で被覆した複合管を用いている。このケーシング2の一方端2aには、固定具5が設置されており、この固定具5によって、絶縁体芯棒3及び発熱体4により構成される構造物が、ケーシング2内において所定の位置に配置固定されている。なお、絶縁体芯棒3は、その長手方向が、筒状のケーシング2の長手方向に沿うようにしてケーシング2内に配置されている。好ましくは、絶縁体芯棒3の中心軸線が、筒状のケーシング2の中心軸線と重なるようにして、ケーシング2内に絶縁体芯棒3を配置する。
【0023】
ここで、絶縁体芯棒3及び発熱体4により構成される構造物をケーシング2内に設置するための固定具5が配設されるケーシング2の一方端2aには、ケーシング2の内外を連通する連通部が形成されており、固定具5及び連通部を介して、気体供給源から供給される気体が、ケーシング2内を通過して、ケーシング2の他方端2bから吹き出されるように構成されている。つまり、連通部が気体の供給口として機能し、ケーシング2の他方の端部2bが気体の吹出し口として機能する。そして、気体の供給口から導入された空気は、ケーシング2内部に導かれ、ケーシング2内部に配置される発熱体4によって加熱され、ケーシング2の他方の端部2b(吹出し口)から加熱された状態となって吹き出すこととなる。
【0024】
絶縁体芯棒3は、ケーシング2内に配設される部材であり、その内部に、絶縁体芯棒3の中心軸線に沿う方向に伸びる複数の貫通孔が設けられた管体状に構成されている。この絶縁体芯棒3は、絶縁材料から形成されている。この絶縁体芯棒3を形成する材料としては、例えば、アルミナ(Al2O3) 等のセラミック材料を挙げることができる。また、この絶縁体芯棒3には、コイル状電熱線からなる発熱体4が外周に配置されることになるが、かかる発熱体4の位置決め行う規制部材6を設けることが好ましい。規制部材6は、絶縁体芯棒3の両端部に配置され、各規制部材6の間に発熱体4が配置されるように構成される。規制部材6は、図2に示すように、金属材料から形成したリング状部材6aの軸部にコイル状部材6bの中空軸部を挿通させることにより、コイル状部材6bがリング状部材6aを被覆するように構成されている(リング状部材6aの軸部の表面をコイル状部材6bが被覆するように構成されている)。コイル状部材6bで被覆されたリング状部材6aにより絶縁体芯棒3の外周部を挟み込むことにより、規制部材6を絶縁体芯棒3に設置する。また、コイル状部材6bにおける互いに隣接する線材間には、図2に示すように、隙間が形成されるように構成されている。なお、絶縁体芯棒3に配置される規制部材6は、互いに隣接する線材間に隙間が形成されるコイル状部材6bの中空軸部にリング状部材6aを挿入するようにして構成されているため、ケーシング2の内部に導かれた空気が、コイル状部材6bを構成する互いに隣接する線材間の隙間を通過して流れるため、空気がケーシング2内部で詰まることなくスムーズに流れることができる。
【0025】
発熱体4は、絶縁体芯棒3の周囲に配設されるコイル状電熱線により構成されており、当該コイル状電熱線としては、例えばニクロム線の表面に、薄い絶縁被膜を形成した線材を利用することができる。この電熱線としては、例えば、その直径が0.15mm~2.0mmの範囲のものを採用することが好ましい。なお、ニクロム線の代わりに、コイル状電熱線からなる発熱体4として従来から使用されている電熱線(例えば、タングステン線、カンタル線等)を利用することができる。また、電熱線表面に形成される絶縁被膜は、例えばアルミナ等のセラミックス材料により形成されている。
【0026】
この発熱体4(コイル状電熱線)の両端部には、外部の電源装置に接続する導線がそれぞれ接続している。当該発熱体4の一方の端部に接続する導線は、上述の絶縁体芯棒3の内部にある貫通孔に通され、発熱体4の他方の端部側に引き廻され、外部の電源装置に接続できるように構成されている。
【0027】
温度センサー5は、ケーシング2の吹出し口から吹き出される熱風温度を一定に保つために、或いは、所望の熱風温度に変更する等のために設けられる熱風温度計測手段である。温度センサー5としては、種々のセンサーを採用することができるが、製造時の効率化、安定的な温度計測の観点から、熱電対を採用することが好ましい。なお、熱電対の種類は特に限定されず、吹き出される熱風温度に対応して適宜選定することができるが、温度と熱起電力との関係が直線的であり、工業用として最も多く使用されているK型熱電対を採用することが好ましい。
【0028】
本発明においては、この温度センサー5の温度測定点を、従来のように、絶縁体芯棒3の先端部と熱風吹出し口との間にある空間に単一配置するのではなく、絶縁体芯棒3の中心軸線を挟んだ両側の2カ所に温度センサー5の第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bが位置するように構成している。特に、本実施形態においては、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bは、絶縁体芯棒3の中心軸線に対して線対称の位置となる2カ所に配置されており、更に、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bは、絶縁体芯棒3の内部に配置され、絶縁体芯棒3内の温度を計測できるようにして構成されている。温度センサー5の第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bの設置位置としては、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端部31近傍に設定することが好ましい。より具体的には、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端縁311から、絶縁体芯棒3の長さ寸法の30%以下の領域に、温度センサー5の第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bをそれぞれ配置することが好ましい。なお、流体ヒーター1における吹出し口から吹き出される熱風温度と、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端部31近傍における絶縁体芯棒3内の温度とは、相関関係にあり、また、略同一の温度を示すため、本発明のように絶縁体芯棒3内の温度を計測するように構成しても特に問題はない。
【0029】
また、本実施形態においては、温度センサー5は、熱電対を採用しており、図3に示すように、第1金属線51、第2金属線52、および、第3金属線53を備えるように構成されている。熱電対を構成する第1金属線51、及び、熱電対を構成する第2金属線52のそれぞれは、絶縁体芯棒3においてそれぞれ独立して形成される第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bに挿通されて配置されている。なお、第1金属線51及び第2金属線52の各先端部(ケーシング2の吹出し口側に配置される端部)は、第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bのそれぞれの内部に位置するように配置されている。熱電対を構成する第3金属線53は、ケーシング2の吹出し口側において、第1金属線51と第2金属線52とを互いに接続するように配置されている。より具体的には、第3金属の各端部は、それぞれ、第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bのそれぞれの内部に位置する第1金属線51の先端部、第2金属線52の先端部に接続しており、第3金属線53の中央部分が、絶縁体芯棒3の外部、つまり、絶縁体芯棒3の先端部(ケーシング2の吹出し口側に配置される端部)とケーシング2の吹出し口との間に形成される空間内に配置されるように構成されている。
【0030】
このような構成により、第1金属線51と第3金属線53との接続点P1、及び、第2金属線52と第3金属線53との接続点P2のそれぞれが、温度検出点である第1温度測定点5a、及び、第2温度測定点5bを形成することになる。ここで、絶縁体芯棒3が有する第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bは、絶縁体芯棒3の中心軸線を挟んだ両側において、該絶縁体芯棒3の中心軸線に平行となるように構成されている。つまり、図4の正面図(ケーシング2の吹出し口側から絶縁体芯棒3の端縁311を見た図)に示すように、絶縁体芯棒3の正面視においては、第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bは、絶縁体芯棒3の中心軸線に対して点対称となる位置関係に構成されている(図3の側面断面視においては、第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bは、絶縁体芯棒3の中心軸線に対して線対称となる位置関係に構成されている)。したがって、第1温度測定点5a、及び、第2温度測定点5bは、絶縁体芯棒3の中心軸線を挟んだ両側の2カ所に配置されることとなる(図4に示すように、絶縁体芯棒3の中心軸線に対して略点対称となる位置関係となる。また、第1温度測定点5a、及び、第2温度測定点5bの位置関係としては、特に限定されない。例えば、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端縁311からの距離が異なる位置となるように両者を配置してもよく、或いは、上記距離が同じ位置となるように両者を配置してもよい。
【0031】
また、熱電対における第1金属線51は、第1の金属材料から形成されており、熱電対における第2金属線52は、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料から形成されている。また、熱電対における第3金属線53は、熱電対を構成する第1金属線51及び第2金属線52に対してのいわゆる中間金属線であり、第1の金属材料及び第2の金属材料とは異なる第3の金属材料から形成されている。熱電対をK型熱電対によって構成する場合には、第1金属線51は、クロメル(第1の金属材料)から形成され、第2金属線52は、アルメル(第2の金属材料)から形成される。また、熱電対における第3金属線53は、中間熱起電力を持つ合金線から形成することが好ましいが、例えば、ニクロム(第3の金属材料)から形成することもできる。
【0032】
また、このような構成の温度センサー5(熱電対)を採用する場合、該温度センサー5にて検出される温度は、第1温度測定点5aにおける温度(T1)、及び、第2温度測定点5bにおける温度(T2)の平均値(温度算出式:(T1+T2)/2))として検出される。
【0033】
ここで、絶縁体芯棒3の内部に温度センサー5の第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bを配置して本願に係る流体ヒーター1を製造する方法としては、特に限定されないが、製造の容易化の観点から以下のようにして製造することが好ましい。まず、図5(a)の断面図に示すように、内部に、第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bを有する絶縁体芯棒3を準備する。第1貫通孔3a及び第2貫通孔3bは、絶縁体芯棒3の一方端から他方端に向けて貫通する孔であり、それぞれが独立した内部空間を有するように構成されている。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、第1貫通孔3aに、熱電対を構成する第1金属線51を挿通し、同様に、第2貫通孔3bに熱電対を構成する第2金属線52を挿通する。第1金属線51の一方端は、第1貫通孔3aを介して、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端縁311から突出するように配置し、同様に、第2金属線52の一方端も、第2貫通孔3bを介して、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端縁311から突出するように配置する。
【0035】
次いで、図5(b)(c)に示すように、ケーシング2の吹出し口側における絶縁体芯棒3の端縁311からそれぞれ突出している第1金属線51の一方端と、第2金属線52の一方端との間に第3金属線53を配置して溶接することによって、第1金属線51の一方端と第3金属線53の一方端とを結合し、第2金属線52の一方端と第3金属線53の他方端とを結合する。
【0036】
その後、第1金属線51の他方端、及び、第2金属線52の他方端を牽引することにより、図5(d)に示すように、第1金属線51と第3金属線53との接続点P1(第1温度測定点5a)を第1貫通孔3aの内部に配置し、第2金属線52と第3金属線53との接続点P2(第2温度測定点5b)を第2貫通孔3bの内部に配置する。
【0037】
このような方法によれば、熱電対における第1金属線51と第3金属線53との接続点P1(第1温度測定点5a)、及び、第2金属線52と第3金属線53との接続点P2(第2温度測定点5b)を容易に形成すると共に、両接続点P1,P2を絶縁体芯棒3の所望の位置に配設することができ、本発明に係る流体ヒーター1を効率よく製造することが可能となる。
【0038】
上述のように構成された本発明に係る流体ヒーター1は、例えば、図6のブロック図に示すような熱風ヒーターコントロールシステム9の一構成機器として用いることができる。ブロック図中における電力設定器91は、電源装置と流体ヒーター1との間に配設される機器であり、発熱体4に供給する電力を設定する機器である。この電力設定器91には、発熱体4に供給する電力量を調節する調節部が設けられており、使用者はこの調節部を適宜操作することにより発熱体4に供給する電力量を所望の値に設定することができ、電力設定器91は、設定された一定の電力を発熱体4に供給する。なお、電力設定器91を電源装置内に組み込んで構成することもできる。
【0039】
また、流量調節器92は、気体供給源から供給される気体の流量を調節して流体ヒーター1の供給口に導く機能を有する機器であり、例えば、電気信号の入力によりバルブ開度を変更することができる弁体を使用することができる。好ましくは、バルブ開度を変更するモータを有するニードルバルブや、バルブ開度が変更可能な電磁弁を使用することができる。なお、流量調節器92における流量調節は、後述の制御部94の作動により行われるように構成されている。
【0040】
また、温度設定器93は、流体ヒーター1の吹出し口から吹き出される気体の温度に関して、例えば、700℃、800℃、900℃といった使用者が所望する温度条件を設定することができる機器である。なお、温度設定器93において設定された設定温度情報は、後述の制御部94に出力できるように構成されている。
【0041】
また、制御部94は、流量調節器92、温度設定器93、及び、温度センサー5に電気的に接続しており、温度センサー5の検出温度が温度設定器93において設定された設定温度となるように、流量調節器92を制御して、流体ヒーター1の供給口に供給する気体流量を変化させる機能を有する機器である。例えば、流量調節器92としてバルブ開度を変更するモータを有するニードルバルブを採用する場合には、制御部94は、モータを駆動させることによってニードルバルブのバルブ開度を変化させることにより、熱風温度センサー5の検出温度が温度設定器93において設定された設定温度となるように、ニードルバルブが流体ヒーター1の供給口に供給する気体流量を変化させる。また、流量調節器92としてバルブ開度を変更可能な電磁弁を採用する場合には、制御部94は、電磁弁のバルブ開度を変化させることにより、温度センサー5の検出温度が温度設定器93において設定された設定温度となるように、ニードルバルブが流体ヒーター1の供給口に供給する気体流量を変化させる。
【0042】
制御部94の具体的構成としては、設定温度記憶部と、演算部と、制御信号出力部とを備えるものを好ましく例示することができる。設定温度記憶部は、温度設定器93において使用者が設定した設定温度を記憶する機能を有しており、演算部は、設定温度記憶部において記憶された設定温度と、熱風温度センサー5が検出した検出温度との温度差を演算する機能を有している。制御信号出力部は、演算部にて算出した温度差が0となるように流量調節器92におけるバルブ開度を変化させる電気信号を流量調節器92に出力する機能を有している。このような制御部94は、例えば、温度センサー5が検出した検出温度が設定温度よりも低い場合には、流量調節器92のバルブを閉じる方向に作動させる制御信号を流量調節器92に出力し、流量調節器92を介してヒータ2に供給される気体流量を減じる作動を行わせる。逆に、温度センサー5が検出した検出温度が設定温度よりも高い場合には、流量調節器92のバルブを開ける方向に作動させる制御信号を流量調節器92に出力し、流量調節器92を介して流体ヒーター1に供給される気体流量を増加させる作動を行わせる。
【0043】
ここで、制御部94は、図6に示すように独立して構成してもよいが、上述の流量調節器92内に組み込まれるように構成してもよい。或いは、温度設定器93内に組み込まれるように構成してもよい。また、制御部94は、温度センサー5によって、所定時間内に計測された温度の平均値を計測温度として出力できるように構成してもよい。
【0044】
本発明にかかる流体ヒーター1は、上述のように、温度センサー5の温度検出点である第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bを備えているため、温度センサー5は、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bにおけるそれぞれの温度の平均値を検出することとなる。この結果、温度センサー5によって測定される温度にバラつきが生じにくく、安定した温度測定を行うことが可能となり、流体ヒーター1から吹き出されワークに付与される熱量のバラつきが小さくなり、ワークに対する加熱能力が均一化されることとなる。また、上記実施形態においては、温度センサー5が有する第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bが、が、絶縁体芯棒3の内部に配置されるように構成されているため、発熱体4を通過した熱風の流れの乱れの影響を受けることなく、温度計測を行うことが可能となる。また、温度センサー5の温度検出点である第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bは、絶縁体芯棒3の中心軸線を挟んだ両側の2カ所に位置するように構成されているため、温度センサー5が検出する温度は、流体ヒーター1から吹き出される熱風温度の平均温度により近い温度となる。この結果、温度センサー5によって測定される温度にバラつきが生じにくく、安定した温度測定を行うことが可能となる。これにより、流体ヒーター1から吹き出されワークに付与される熱量のバラつきが小さくなり、ワークに対する加熱能力がより一層均一化されることとなる。また、温度センサー5の各温度測定点を絶縁体芯棒3の内部に配置しているため、温度センサー5は、その周りにおける絶縁体芯棒3の平均的な温度を検出することになるため、より一層、バラつきの少ない測定温度を検出することが可能となる。
【0045】
また、仮に、空気供給源からの空気の供給がストップしたり、極端に供給空気量が減少するような異常事態が発生した場合であっても、温度センサー5の第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bが内部に配置される絶縁体芯棒3は、比較的熱伝導率が良いため、温度センサー5は比較的高い温度の検出を維持することになる。その結果、発熱体4への過剰な電力供給が行われず、発熱体4の熱暴走は効果的に抑制され、当該発熱体4が過熱焼損することを防ぐことが可能となる。
【0046】
また、本発明にかかる流体ヒーター1によれば、該流体ヒーター1に一定電力を消費させておいてエアー流量をコントロールして所定の熱風温度を得るというコントロール方法においては、流体ヒーター1の始動直後に大きな温度値が検出される結果、早めに多くのエアーが供給されることになる為、発熱体4温度のオーバーシュートの発生を防止して、安全な流体ヒーター1のコントロールが可能となる。また、温度のオーバーシュートを抑えるためには、従来、最低限の気体(エアー)を常に流体ヒーター1内に流しておくという対策をとってきたが、その必要が無くなることから気体(エアー)の無駄が無くなるという効果を得ることもできる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態に係る流体ヒーター1について説明したが、流体ヒーター1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、絶縁体芯棒3の内部の2カ所に温度検出点である第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bを配置するように構成しているが、図7の要部拡大概略構成断面図に示すように、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bが、絶縁体芯棒3の先端部311とケーシング2の吹出し口2bとの間に形成される空間内にそれぞれ位置するように構成してもよい。なお、図7においては、絶縁体芯棒3の周囲に配置される発熱体4を書略して記載している。また、第1温度測定点5aを絶縁体芯棒3の内部に配置し、第2温度測定点5bを、絶縁体芯棒3の先端部とケーシング2の吹出し口2bとの間に形成される空間内に配置するように構成してもよい。また、第1貫通孔3a又は第2貫通孔3bのいずれか一方の内部に第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bのそれぞれを配置するように構成してもよい。また、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bを絶縁体芯棒3の外表面上に設置するようにして構成してもよい。このような構成であっても、温度センサー5が検出する温度は、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bにおける平均温度となる結果、温度センサー5によって測定される温度にバラつきが生じにくくなる。
【0048】
また、上記実施形態においては、温度検出点である第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bを絶縁体芯棒3の中心軸線に対して線対称位置となるように構成してもよい。このような構成を採用することにより、流体ヒーター1の吹出し口からの第1温度測定点5aまでの距離、及び、流体ヒーター1の吹出し口からの第2温度測定点5bまでの距離が、同一となり、より一層、温度センサー5は、流体ヒーター1が吹き出す熱風温度の平均値に近い温度を検出することが可能となり、安定した温度測定を行うことが可能となり、流体ヒーター1から吹き出されワークに付与される熱量のバラつきが小さくなり、ワークに対する加熱能力がより一層均一化されることとなる。
【0049】
また、図8の要部拡大概略構成断面図に示すように、温度センサー5が、絶縁体芯棒3の先端部とケーシング2の吹出し口2bとの間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点5cを更に備えるように構成してもよい。具体的に説明すると、第1金属線51と第2金属線52とを接続する第3金属線53が、第2金属線52を形成する材料である第2の金属材料からなる第1線部531と、第1金属線51を形成する材料である第1の金属材料からなる第2線部532と、備えるように構成されている。第3金属線53の第1線部531は、第1金属線51との接続点P1に接続しており、第3金属線53の第2線部532は、第2金属線52との接続点P2に接続している。また、第1線部531及び第2線部532は、絶縁体芯棒3の先端部311と、ケーシング2の吹出し口2bとの間に形成される空間内において互いに接続して構成され、この第1線部531と第2線部532との接続点P3が、第3温度測定点5cを構成している。なお、第1金属線51と第3金属線53の第1線部531との接続点P1、及び、第2金属線52と第3金属線53の第2線部532との接続点P2のそれぞれが、第1温度測定点5a、及び、第2温度測定点5bを構成している。なお、図8においては、絶縁体芯棒3の周囲に配置される発熱体4を省略して記載している。
【0050】
このような構成の温度センサー5は、第1温度測定点5aにおける温度(T1)、と第2温度測定点5bにおける温度(T2)とを加えた値から、第3温度測定点5cにおける温度(T3)を減じた値(温度算出式:T1+T2-T3)として検出されることとなる。
【0051】
ここで、流体ヒーター1の設定温度Tを800℃に設定した場合の挙動を例に採ると、通常の状態の場合、第1温度測定点5aにおける温度(T1)、第2温度測定点5bにおける温度(T2)、及び、第3温度測定点5cにおける温度(T3)、は略同一の温度となるため(T1≒T2≒T3)、温度センサー5は、熱風温度の平均的な値を検出する。つまり、熱風温度は温度設定器の設定温度Tの通りになり、約800℃の熱風を噴出する。一方、空気供給源からの空気の供給がストップしたような異常状態の場合、通常、絶縁体芯棒3の先端部とケーシング2の吹出し口2bとの間に形成される空間内に配置される第3温度測定点5cにおける温度は、絶縁体芯棒3の内部に配置される第1温度測定点5aや第2温度測定点5bの温度(T1,T2)の約40%程度まで低下するため、温度センサー5が検出する温度(T1+T2-T3)は、800+800-800×0.4=1280℃ となり、設定温度T(800℃)を大きく超えた値として温度センサー5は温度を検出する。この結果、ヒーターコントロールシステム9における制御部94は、流量調節器92のバルブを開ける方向に作動させる制御信号を流量調節器92に出力して、流量調節器92を介して流体ヒーター1に供給される気体流量を増加させる作動を行い、発熱体4の温度を低下させる、或いは、発熱体4への電力供給を停止して発熱体4の温度を低下させることとなる。つまり、図8に示すような構成の流体ヒーター1の場合、空気供給源からの空気の供給がストップしたり、極端に供給空気量が減少するような異常事態が発生した際に、温度センサー5が、実際の温度よりも高い温度を検出温度として検知することが可能となるため、発熱体4が過熱焼損するような事態を効果的に回避することが可能となる。
【0052】
また、図8に示す流体ヒーター1の場合、急速立ち上がりの熱風ヒーターとして使用することができる。具体的に説明すると、例えば、流体ヒーター1の設定温度Tを800℃に設定して通常の温調状態(吹き出される熱風温度が800℃を維持する作動状態)から、供給される気体を停止する場合、発熱体4の温度は、設定温度(800℃)の60%程度の温度に保持されることになる。より具体的には、設定温度T=800℃=(T1+T2)-0.4×(T3)において、T3≒T1≒T2より、設定温度T=800℃=(T1+T2)-0.4×(T1+T2)×0.5となり、(T1+T2)=1000℃となる。T1≒T2であることから、T1≒T2=500℃となり、供給される気体を停止する場合、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bの温度(T1、T2)が500℃程度の温度(設定温度Tに対して60%程度の温度)にコントロールされて流体ヒーター1は作動を継続することになる。このため、発熱体4はもちろん、付属する各種電線などの焼損を抑制しつつ、次に気体を流し始めた時の熱風温度立ち上がりを非常に急速なものとすることが可能となる(設定温度である800℃に昇温するまでの時間を短くすることができる)。
【0053】
また、図9の要部拡大概略構成断面図に示すように、温度センサー5が、絶縁体芯棒3の先端部とケーシング2の吹出し口との間に形成される空間内に配置される温度検出点である第3温度測定点5c及び第4温度測定点5dを更に備えるように構成してもよい。具体的に説明すると、第1金属線51と第2金属線52とを接続する第3金属線53が、第2金属線52を形成する材料である第2の金属材料からなる第1線部531と、第1金属線51を形成する材料である第1の金属材料からなる第2線部532と、第1線部531及び第2線部532との間に配置され第1線部531及び第2線部532を接続する第3線部533とを備えるように構成されている。第3金属線53の第1線部531は、第1金属線51との接続点P1に接続しており、第3金属線53の第2線部532は、第2金属線52との接続点P2に接続している。また、第3線部533は、絶縁体芯棒3の先端部とケーシング2の吹出し口との間に形成される空間内に位置しており、第1線部531と第3線部533との接続点P3、及び、第2線部532と第3線部533との接続点P4のそれぞれが、第3温度測定点5c、及び、第4温度測定点5dを構成している。なお、第1金属線51と第3金属線53の第1線部531との接続点P1、及び、第2金属線52と第3金属線53の第2線部532との接続点P2のそれぞれが、第1温度測定点5a、及び、第2温度測定点5bを構成している。なお、図9においては、絶縁体芯棒3の周囲に配置される発熱体4を省略して記載している。ここで、第3線部533は、第1金属線51を形成する材料である第1の金属材料、及び、第2金属線52を形成する材料である第2の金属材料とは異なる第3の金属材料から形成されている。温度センサー5における第1金属線51をクロメル(第1の金属材料)から形成し、第2金属線52をアルメル(第2の金属材料)から形成するような場合、第3金属線53の第3線部533は、例えば、ニクロム(第3の金属材料)から形成することができる。
【0054】
このような構成の温度センサー5は、第1温度測定点5aにおける温度(T1)、と第2温度測定点5bにおける温度(T2)とを加えた値から、第3温度測定点5cにおける温度(T3)×0.5、及び、第4温度測定点5dにおける温度(T4)×0.5を減じた値(温度算出式:T1+T2-T3×0.5-T4×0.5)として検出されることとなる。
【0055】
この図9に示すような流体ヒーター1の場合も、図8に示す流体ヒーター1と同様に、空気供給源からの空気の供給がストップしたり、極端に供給空気量が減少するような異常事態が発生した際に、温度センサー5が、実際の温度よりも高い温度を検出温度として検知することが可能となるため、発熱体4が過熱焼損するような事態を効果的に回避することが可能となる。また、第3温度測定点5c及び第4温度測定点5dを更に備えるように構成することにより、第3温度測定点5cのみを更に備える図8に示す流体ヒーター1よりも、絶縁体芯棒3の先端部311とケーシング2の吹出し口との間に形成される空間内の温度分布の影響(温度不均一の影響)を受けにくくなり、温度計測上の誤差を低減するができ、より一層、発熱体4が過熱焼損するような事態を効果的に回避することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態においては、熱電対を温度センサー5として用いた場合について説明したが、温度センサー5は、熱電対に特に限定されず、測温抵抗体等種々の温度測定手段を採用することができる。
【0057】
また、上記実施形態において、第1温度測定点5a及び第2温度測定点5bにおける各温度を個別の熱電対等によってそれぞれ検出し、検出された値を制御部94にて平均化するように構成してもよい。第3温度測定点5cや第4温度測定点5dを更に設けるように構成する場合も同様であり、各温度測定点における温度をそれぞれ個別に検出し、制御部94にて上述の温度算出式に基づく演算を行い、流体ヒーター1から吹き出される流体の温度とするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 熱風ヒーター
2 ケーシング
2a ケーシングの一方端(気体の供給口)
2b ケーシングの他方(気体の吹出し口)
3 絶縁体芯棒
4 発熱体
5 温度センサー
5a 第1温度測定点
5b 第2温度測定点
5c 第3温度測定点
5d 第4温度測定点
51 第1金属線
52 第2金属線
53 第3金属線
531 第1線部
532 第2線部
533 第3線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10