(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】緩衝体及び梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/113 20060101AFI20220117BHJP
B65D 77/26 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B65D81/113 140A
B65D77/26 S
(21)【出願番号】P 2018008152
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100204881
【氏名又は名称】土井 伸次
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 真久
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103434755(CN,A)
【文献】特開2002-160769(JP,A)
【文献】実開平3-26768(JP,U)
【文献】特開2014-93400(JP,A)
【文献】特開2014-151963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/113
B65D 77/26
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板収納用の容器を包装箱の長手方向に沿って配列するように収納する前記包装箱と前記容器との間に介在される緩衝体であって、
前記緩衝体は、
前記容器の下方部分を嵌合するように収納する下方収納空間と、隣接する前記下方収納空間の間に設けられる下方仕切り壁とを有する下方緩衝体と、
前記容器の上方部分を嵌合するように収納する上方収納空間と、隣接する前記上方収納空間の間に設けられる上方仕切り壁とを有する上方緩衝体と、を備え、
前記下方緩衝体及び前記上方緩衝体は、隣接する前記容器同士が互いに接触するように、前記容器を挟持可能である
ことを特徴とする緩衝体。
【請求項2】
前記容器は、ボックスタイプのものであり、周壁及び前記周壁から外側に突出するフランジ部を有し、
前記容器が前記下方緩衝体と前記上方緩衝体との間に挟持された状態において、前記下方仕切り壁の前記長手方向における寸法が、前記フランジ部同士が接触するとともに前記周壁が前記下方仕切り壁と接触するように、設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記下方仕切り壁は、前記長手方向における寸法が、隣接する前記容器の前記周壁間の距離に等しい
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記容器は、上面に開口部を有するトップオープンボックスタイプの容器本体であって、周壁及び前記周壁から外側に突出するフランジ部を有する容器本体と、前記開口部を閉止する蓋体とを備え、
前記容器が前記下方緩衝体と前記上方緩衝体との間に挟持された状態において、前記上方仕切り壁の前記長手方向における寸法が、前記フランジ部同士が接触するとともに前記蓋体が前記上方仕切り壁と接触するように、設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の緩衝体。
【請求項5】
前記上方仕切り壁は、前記長手方向における寸法が、隣接する前記容器の前記蓋体間の距離に等しい
ことを特徴とする請求項4に記載の緩衝体。
【請求項6】
前記下方収納空間及び前記上方収納空間は、基板が前記長手方向と交差する方向に沿って延在するように、前記容器を嵌合する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の緩衝体。
【請求項7】
複数の基板収納用の容器を包装箱の長手方向に沿って配列するように収納する前記包装箱と、前記包装箱と前記容器との間に介在される緩衝体と、を備える梱包体であって、
前記緩衝体は、
前記容器の下方部分を嵌合するように収納する下方収納空間と、隣接する前記下方収納空間の間に設けられる下方仕切り壁とを有する下方緩衝体と、
前記容器の上方部分を嵌合するように収納する上方収納空間と、隣接する前記上方収納空間の間に設けられる上方仕切り壁とを有する上方緩衝体と、を備え、
前記下方緩衝体及び前記上方緩衝体は、隣接する前記容器同士が互いに接触するように、前記容器を挟持可能である
ことを特徴とする梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納用の容器の輸送時に、基板収納用の容器を梱包するために用いられる緩衝体及びこの緩衝体を備える梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部を有するとともにウェーハからなる精密な基板を複数枚収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉止する蓋体とを備え、容器本体には、基板を支持する支持部が設けられる容器が、基板の輸送などに用いられている。
【0003】
このような容器を梱包するために用いられる梱包体は、複数の容器を収納する包装箱と、容器に加わる衝撃を緩和する、容器と包装箱の内部下方との間に介在する第1緩衝体と、容器に加わる衝撃を緩和する、容器と包装箱の内部上方との間に介在する第2緩衝体と、を備えるものがよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1に記載の梱包体では、第1緩衝体は、容器の下方部分を収納する下方収納空間と、隣接する下方収納空間の間に設けられる下方仕切り壁とを有し、第2緩衝体は、容器の上方部分を収納する上方収納空間と、隣接する上方収納空間の間に設けられる上方仕切り壁とを有し、下方収納空間及び上方収納空間に収納された、隣接する容器同士の間には、接触することなく、所定の間隔が形成されている。
【0005】
このような梱包体によれば、外部から容器に加わる衝撃が所定値以下であると、包装箱に収納された隣接する容器同士の間隔が狭まったとしても、隣接する容器同士のぶつかり合いを回避することができるが、外部から容器に加わる衝撃が所定値を超えると、包装箱に収納された隣接する容器同士の間隔がなくなり、隣接する容器同士がぶつかり合うことにより、基板が支持部から外れてしまう問題が起こる。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば、梱包体に含まれる包装箱及び緩衝体のサイズを大きくすることで、隣接する容器同士の間隔を大きくすることができ、これによって、隣接する容器同士のぶつかり合いを回避することが一般的に考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、包装箱及び緩衝体のサイズを大きくすると、その分、梱包体の材料コストが上がるとともに、輸送効率が低下するため、包装箱のサイズを大きくせずに、緩衝体のみを工夫することで、包装箱に収納された隣接する容器同士のぶつかり合いを確実に回避することが要求されている。
【0009】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、包装箱を大きくすることなく、外部から容器へ加わるより大きな衝撃を緩和できる緩衝体及び梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る一つの態様は、複数の基板収納用の容器を包装箱の長手方向に沿って配列するように収納する前記包装箱と前記容器との間に介在される緩衝体であって、前記緩衝体は、前記容器の下方部分を嵌合するように収納する下方収納空間と、隣接する前記下方収納空間の間に設けられる下方仕切り壁とを有する下方緩衝体と、前記容器の上方部分を嵌合するように収納する上方収納空間と、隣接する前記上方収納空間の間に設けられる上方仕切り壁とを有する上方緩衝体と、を備え、前記下方緩衝体及び前記上方緩衝体は、隣接する前記容器同士が互いに接触するように、前記容器を挟持可能であるものである。
(2)上記(1)の態様において、前記容器は、ボックスタイプのものであり、周壁及び前記周壁から外側に突出するフランジ部を有し、前記容器が前記下方緩衝体と前記上方緩衝体との間に挟持された状態において、前記下方仕切り壁の前記長手方向における寸法が、前記フランジ部同士が接触するとともに前記周壁が前記下方仕切り壁と接触するように、設定されてもよい。
(3)上記(2)の態様において、前記下方仕切り壁は、前記長手方向における寸法が、隣接する前記容器の前記周壁間の距離に等しくてもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの態様において、前記容器は、上面に開口部を有するトップオープンボックスタイプの容器本体であって、周壁及び前記周壁から外側に突出するフランジ部を有する容器本体と、前記開口部を閉止する蓋体とを備え、前記容器が前記下方緩衝体と前記上方緩衝体との間に挟持された状態において、前記上方仕切り壁の前記長手方向における寸法が、前記フランジ部同士が接触するとともに前記蓋体が前記上方仕切り壁と接触するように、設定されてもよい。
(5)上記(4)の態様において、前記上方仕切り壁は、前記長手方向における寸法が、隣接する前記容器の前記蓋体間の距離に等しくてもよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの態様において、前記下方収納空間及び前記上方収納空間は、基板が前記長手方向と交差する方向に沿って延在するように、前記容器を嵌合してもよい。
(7)本発明に係る別の態様は、複数の基板収納用の容器を包装箱の長手方向に沿って配列するように収納する前記包装箱と、前記包装箱と前記容器との間に介在される緩衝体と、を備える梱包体であって、前記緩衝体は、前記容器の下方部分を嵌合するように収納する下方収納空間と、隣接する前記下方収納空間の間に設けられる下方仕切り壁とを有する下方緩衝体と、前記容器の上方部分を嵌合するように収納する上方収納空間と、隣接する前記上方収納空間の間に設けられる上方仕切り壁とを有する上方緩衝体と、を備え、前記下方緩衝体及び前記上方緩衝体は、隣接する前記容器同士が互いに接触するように、前記容器を挟持可能であるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、包装箱を大きくすることなく、外部から容器へ加わるより大きな衝撃を緩和できる緩衝体及び梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る梱包体を示す分解斜視図である。
【
図4】複数の容器が梱包体に梱包された状態を示す概略図である。
【
図6】複数の容器を梱包した梱包体の落下試験の落下方向を示す概略斜視図である。
【
図7】実施例の梱包体に梱包された容器に収納された基板の配列方向を示す概略平面図である。
【
図8】比較例の梱包体に梱包された容器に収納された基板の配列方向を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る梱包体1及び梱包体1の実施例について詳細に説明する。
【0014】
図1から
図5を参照して、本発明の実施形態に係る梱包体1について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る梱包体1の分解斜視図である。
図2は、下方緩衝体3の上面図である。
図3は、上方緩衝体4の下面図である。
図4は、複数の容器2が梱包体1に梱包された状態を示す概略図である。
図5は、容器2の分解斜視図である。なお、図中において、X軸に沿って延在するX方向を幅方向とし、Y軸に沿って延在するY方向を長手方向とし、Z軸に沿って延在するZ方向を上下方向とする。
【0015】
[梱包体の構造]
本発明の実施形態に係る梱包体1は、容器2を梱包するものであって、
図1に示すように、複数(2つ)の容器2を長手方向に沿って配列するように収納する包装箱5と、包装箱5と容器2との間に、容器2に加わる緩衝を緩和できるように介在される緩衝体10とを備えている。
【0016】
[容器の構造]
つぎに、
図5を参照して、容器2について詳細に説明する。
容器2は、ウェーハからなる精密な基板Wを複数枚収納するためのものであり、
図5に示すように、上面に開口部211を有するトップオープンボックスタイプの容器本体21と、容器本体21に着脱可能に収納され、基板Wを断面V字の支持溝22を介して所定のピッチで整列状態に収納するカセット23と、環状のパッキン24を介して開口部211を閉止する蓋体25と、蓋体25の内面に着脱可能に装着され基板Wの位置決めをするリテーナ26とを備え、カセット23には、支持溝22が形成される一対の支持部27の一端を連結するHバー28が設けられている。ここで、Hバー28は、支持溝22に支持される基板Wのミラー面とは反対側の面に対向しているものである。なお、本実施形態では、基板Wは、円形状に形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、角形状などに形成されてもよい。
【0017】
そして、容器本体21は、底壁(図示しない)、周壁212及び周壁212から外側に突出するフランジ部213を有し、フランジ部213によって囲まれることで、開口部211が形成されている。
【0018】
(包装箱)
包装箱5は、
図1に示すように、紙又はプラスチックのダンボールなどを使用して2つの容器2を長手方向に沿って配列して収納可能な大きさに形成され、上部が開口したフラップ51付きの直方体に形成されている。また、この包装箱5は、容器2の輸送に用いられる従来の包装箱と同じもの(内寸は、例えば、625mm×330mmである)で形成されている。
【0019】
(緩衝体)
本実施形態では、緩衝体10は、容器2と包装箱5の内部下方との間に介在する下方緩衝体3と、容器2と包装箱5の内部上方との間に介在する上方緩衝体4とからなっており、外部から容器2に加わる衝撃を緩和する発泡体(例えば、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレンなど)によって形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、外部から容器2に加わる衝撃を緩和する、シート材を型成形したシート成形体(例えば、ポリプロピレンシート成形体)などによって形成されてもよい。
【0020】
図2に示すように、下方緩衝体3は、長手方向に沿って延在する長尺板状の底板31と、底板31の外周縁から立設される下方周壁32と、底板31の長手方向における中央位置に立設される下方仕切り壁33とを有し、下方周壁32及び下方仕切り壁33によって囲まれる空間が、各容器2の下方部分を嵌合するように収納する矩形の下方収納空間34となっている。つまり、下方仕切り壁33は、隣接する下方収納空間34の間に設けられるようになっている。
【0021】
そして、矩形の下方収納空間34は、容器2に収納された基板Wが長手方向に間隔を空けて配列されるように、容器2の下方部分を嵌合するように収納することができる。言い換えると、矩形の下方収納空間34は、容器2に収納された基板Wが幅方向に間隔を空けて配列されるように、容器2の下方部分を嵌合するように収納することができない。すなわち、下方収納空間34は、容器2に収納された基板Wが長手方向に間隔を空けて配列されるように、容器2の下方部分を嵌合している。
【0022】
長手方向に沿って延在する下方周壁32には、外側に突出し幅方向の衝撃を緩和するための第1スペーサ321が複数設けられており、幅方向に沿って延在する下方周壁32には、外側に突出し長手方向の衝撃を緩和するための第2スペーサ322が複数設けられている。なお、底板31の各下方収納空間34に対応する領域には、開口311が形成されてもよい。
【0023】
第2スペーサ322の長手方向における寸法(例えば、33mm)は、第1スペーサ321の幅方向における寸法(例えば、17mm)よりも大きくなるように、形成されている。なお、複数の第1スペーサ321及び複数の第2スペーサ322は、矩形の下方収納空間34のコーナーに対応する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、第1スペーサ321及び第2スペーサ322の合計数は、12個であるが、12個に限定されるものではなく、例えば、10個であってもよい。
【0024】
底板31の長手方向における寸法と第2スペーサ322の長手方向における寸法とを足し合わせた寸法L1(例えば、622mm)は、包装箱5の長手方向における内寸(例えば、625mm)に対応している。また、底板31の幅方向における寸法と第1スペーサ321の幅方向における寸法とを足し合わせた寸法C1(例えば、328mm)は、包装箱5の幅方向における内寸(例えば、330mm)に対応している。
【0025】
図3に示すように、上方緩衝体4は、下方緩衝体3と同様に、長手方向に沿って延在する長尺板状の天板41と、天板41の外周縁から立設される上方周壁42と、天板41の長手方向における中央位置に立設される上方仕切り壁43とを有し、上方周壁42及び上方仕切り壁43によって囲まれる空間が、各容器2の上方部分である蓋体25を嵌合するように収納する矩形の上方収納空間44となっている。つまり、上方仕切り壁43は、隣接する上方収納空間44の間に設けられるようになっている。
【0026】
そして、矩形の上方収納空間44は、容器2に収納された基板Wが長手方向に間隔を空けて配列されるように、蓋体25を嵌合するように収納することができる。言い換えると、矩形の上方収納空間44は、容器2に収納された基板Wが幅方向に間隔を空けて配列されるように、蓋体25を嵌合するように収納することができない。すなわち、上方収納空間44は、容器2に収納された基板Wが長手方向に間隔を空けて配列されるように、蓋体25を嵌合している。
【0027】
長手方向に沿って延在する上方周壁42には、外側に突出し幅方向の衝撃を緩和するための第3スペーサ421が複数設けられており、幅方向に沿って延在する上方周壁42には、外側に突出し長手方向の衝撃を緩和するための第4スペーサ422が複数設けられている。なお、天板41の各上方収納空間44に対応する領域には、開口411が形成されてもよい。
【0028】
第4スペーサ422の長手方向における寸法(例えば、33mm)は、第3スペーサ421の幅方向における寸法(例えば、17mm)よりも大きくなるように、形成されている。さらに、複数の第3スペーサ421及び複数の第4スペーサ422は、矩形の上方収納空間44のコーナーに対応する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、第3スペーサ421及び第4スペーサ422の合計数は、第1スペーサ321及び第2スペーサ322の合計数と同様に、12個であるが、12個に限定されるものではなく、例えば、10個であってもよい。
【0029】
天板41の長手方向における寸法と第4スペーサ422の長手方向における寸法とを足し合わせた寸法L2(例えば、622mm)は、包装箱5の長手方向における内寸(例えば、625mm)に対応している。また、天板41の幅方向における寸法と第3スペーサ421の幅方向における寸法とを足し合わせた寸法C2(例えば、328mm)は、包装箱5の幅方向における内寸(例えば、330mm)に対応している。
【0030】
[容器を包装箱で梱包する工程]
図1に戻り説明すると、各容器2を、各下方収納空間34及び各上方収納空間44に収納させるように下方緩衝体3及び上方緩衝体4で挟持し、下方緩衝体3及び上方緩衝体4によって挟持された2つの容器2を包装箱5に収納させるという工程で、容器2が梱包される。
【0031】
[容器が梱包体に梱包された状態]
図4に示すように、容器2が梱包体1に梱包された状態において、下方緩衝体3及び上方緩衝体4が、隣接する容器2同士のフランジ部213が互いに接触するように、容器2を挟持している。また、緩衝性能向上の観点から隣接する容器2同士のフランジ部213の接触は、長手方向の断面視で、線接触であることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、下方緩衝体3及び上方緩衝体4が容器2を挟持した状態において、下方周壁32及び上方周壁42が、上下方向に離間するように形成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、接触するように形成されてもよい。
【0033】
そして、下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された、隣接する容器2同士のフランジ部213の接触を実現するために、下方仕切り壁33の長手方向における寸法D1を、容器2が下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された状態においてフランジ部213同士が接触するとともに周壁212が下方仕切り壁33と接触するように、設定しつつ、上方仕切り壁43の長手方向における寸法D2を、容器2が下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された状態においてフランジ部213同士が接触するとともに蓋体25が上方仕切り壁43と接触するように、設定する必要がある。
【0034】
すなわち、下方仕切り壁33は、長手方向における寸法D1が、下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された、隣接する容器2の周壁212間の距離に等しく、上方仕切り壁43は、長手方向における寸法D2が、下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された、隣接する容器2の蓋体25間の距離に等しい。
【0035】
[実施形態の効果]
以上のように構成された本実施形態の梱包体1によれば、複数の基板W収納用の容器2を包装箱5の長手方向に沿って配列するように収納する包装箱5と、包装箱5と容器2との間に介在される緩衝体10と、を備えるものであって、緩衝体10は、容器2の下方部分を嵌合するように収納する下方収納空間34と、隣接する下方収納空間34の間に設けられる下方仕切り壁33とを有する下方緩衝体3と、容器2の蓋体25を嵌合するように収納する上方収納空間44と、隣接する上方収納空間44の間に設けられる上方仕切り壁43とを有する上方緩衝体4と、を備え、下方緩衝体3及び上方緩衝体4は、隣接する容器2同士が互いに接触するように、容器2を挟持可能であるので、包装箱5を大きくすることなく、外部から容器2へ加わるより大きな衝撃を緩和することができる。
【0036】
詳細には、隣接する容器2同士のフランジ部213が接触しているため、外部から衝撃が加わっても、隣接する容器2同士が一体となってその衝撃を受けることで、隣接する容器2同士のぶつかり合いが発生することなく、容器2に収納された基板Wが容器2同士のぶつかり合いによって支持溝22から外れてしまうことを低減することができ、これによって、梱包体1の緩衝性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の梱包体1によれば、包装箱5に収納された隣接する容器2同士に間隔が形成される従来の緩衝体に比べ、下方仕切り壁33及び上方仕切り壁43の長手方向における寸法D1、D2を小さくすることができ、また、上述のように、包装箱5は、容器2の輸送に用いられる従来の包装箱と同じもので形成されているため、従来の緩衝体に比べ、長手方向における容器2と包装箱5との間の間隔Bを大きくすることができ、これによって、外部から容器2へ加わるより大きな衝撃を緩和することができる。
【0038】
さらに、本実施形態の梱包体1によれば、2つの容器2が、基板Wが長手方向と交差(直交)する方向に沿って延在するように、梱包体1に梱包されているため、外部から長手方向の衝撃が加わる際に、基板Wが幅方向と交差(直交)する方向に沿って延在するように容器2を梱包する梱包体に比べ、基板Wが、長手方向の衝撃を受けにくく、支持部27の支持溝22から外れにくくなっている。
【0039】
以上、具体的な実施形態に基づき、本発明の緩衝体について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲には、本発明の目的が達成される範囲での様々な変形や改良などが含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0040】
[変形例]
上記実施形態では、梱包体1は、2つの容器2を包装箱5に収納することが可能に形成されたが、これに限定されるものではなく、例えば、3つの容器2を包装箱5に収納することが可能に形成されてもよい。この場合、下方収納空間34及び上方収納空間44は、それぞれ、3つ形成されるとともに、下方仕切り壁33及び上方仕切り壁43は、ぞれぞれ、2つ形成される。
【0041】
また、上記実施形態では、下方収納空間34及び上方収納空間44に収納された、隣接する容器2同士のフランジ部213が、直接に接触しているが、これに限定されるものではなく、例えば、各容器2を包む包装袋などを介して、間接に接触してもよい。
【実施例】
【0042】
つぎに、
図6を参照して、本発明に係る容器2を挟持した緩衝体10及びこれを備える梱包体1の実施例を比較例とともに説明する。
図6は、複数の容器2を梱包した梱包体1の落下試験の落下方向を示す概略斜視図である。
図7は、実施例の梱包体1に梱包された容器2に収納された基板Wの配列方向を示す概略平面図である。
図8は、比較例の梱包体に梱包された容器2に収納された基板Wの配列方向を示す概略平面図である。
【0043】
[落下試験]
まず、
図6を参照して本発明に係る梱包体1の実施例及び比較例の落下試験を説明する。
25枚の基板Wを収納した容器2を2つ梱包した梱包体1を実施例とし、日本工業規格の〔包装貨物及び容器の落下試験方法(JIS Z 0202)〕、〔包装貨物の落下試験(JIS Z 0200)〕に従い、
図6に示した11の落下方向で、それぞれ、地上高さ40cm,50cm,100cmの位置からコンクリート床に落下させ、基板Wが支持溝22から外れたかどうかを確認し、その結果を表1にまとめた。なお、この実施例では、
図7に示すように、容器2は、基板Wが長手方向に間隔を空けて配列されるように、梱包体1に梱包されている。この状態では、Hバー28が長手方向と交差(直交)する方向に沿って延在している。
【0044】
一方、25枚の基板Wを収納した容器2を2つ梱包した上記特許文献1に記載の梱包体を比較例とし、実施例と同様に、
図6に示した落下方向で、それぞれ、地上高さ40cm,50cmの位置からコンクリート床に落下させ、基板Wが支持溝22から外れたかどうかを確認し、その結果を表2にまとめた。なお、この比較例では、
図8に示すように、容器2は、基板Wが幅方向に間隔を空けて配列されるように、梱包体1に梱包されている。この状態では、Hバー28が幅方向と交差(直交)する方向に沿って延在している。
【0045】
【表1】
〇:異常なし ×:基板Wが支持溝22から外れた
【0046】
【表2】
〇:異常なし ×:基板Wが支持溝22から外れた
【0047】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に係る実施例の緩衝体10及びこれを備える梱包体1によっては、全ての落下方向で、高度40cm、高度50cmからの落下による衝撃のみならず、高度100cmからの落下による衝撃も緩和できるのに対し、比較例の緩衝体及びこれを備える梱包体によっては、全ての落下方向で、高度40cmからの落下による衝撃を緩和できるものの、側面の落下方向で、高度50cm以上からの落下による衝撃を緩和できない。このため、本発明に係る実施例の緩衝体10及びこれを備える梱包体1は、比較例の緩衝体及びこれを備える梱包体に比べ、優れた緩衝性を得られることが裏付けられている。
【0048】
[振動試験]
つぎに、本発明に係る梱包体1の実施例の振動試験を説明する。
25枚の基板Wを収納した容器2を2つ梱包した梱包体1を振動試験機(例えば、IDEX社製:BF-70UA-E-T)に載置し、以下の振動試験条件で振動試験を行ったところ、
(振動試験条件)
周波数:Sweep 5-55-5Hzへと掃引させる。
振幅:1.5mm(上下方向)
掃引時間:60s
サイクル:10cycle
2つの容器2に収納された基板Wは、いずれも回転しなかった。ただし、5mm以下の回転(約2°以下の回転)を回転なしと見做す。
【0049】
よって、本発明に係る実施例の緩衝体10及びこれを備える梱包体1は、優れた緩衝性に加えて、優れた耐振動性を得ることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 梱包体
2 容器
21 容器本体
211 開口部、212 周壁、213 フランジ部
22 支持溝
23 カセット
24 パッキン
25 蓋体
26 リテーナ
27 支持部
28 Hバー
10 緩衝体
3 下方緩衝体
31 底板、32 下方周壁、33 下方仕切り壁、34 下方収納空間
311 開口、321 第1スペーサ、322 第2スペーサ
4 上方緩衝体
41 天板、42 上方周壁、43 上方仕切り壁、44 上方収納空間
411 開口、421 第3スペーサ、422 第4スペーサ
5 包装箱
51 フラップ
W 基板