(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】音声処理条件設定装置、無線通信装置、および音声処理条件設定方法
(51)【国際特許分類】
G10L 21/0208 20130101AFI20220117BHJP
【FI】
G10L21/0208 100B
(21)【出願番号】P 2018219537
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205831(JP,A)
【文献】国際公開第2007/126015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 21/034
G10L 21/0208
G10L 21/0364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの周囲の雑音に関する雑音信号に基準音声信号を重畳して生成された基準加工音声信号に対して、種類の異なる複数のノイズキャンセルフィルタを用いて畳み込み演算を実行し、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々に対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成するノイズキャンセル処理部と、
前記基準音声信号と、複数の前記フィルタ加工音声信号とに基づいて、複数の前記フィルタ加工音声信号の各々に対応する音声品質を算出する第1算出部と、
前記基準音声信号と、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々の処理負荷を、前記ノイズキャンセルフィルタの各々と対応付けた処理負荷情報とを記憶する記憶部と、
複数の前記音声品質と、前記記憶部に記憶された前記処理負荷情報とに基づいて、複数の前記ノイズキャンセルフィルタのうち、最適フィルタを決定して設定する設定部と、
を備える、音声処理条件設定装置。
【請求項2】
前記設定部は、複数の前記音声品質のうち予め定められた閾値を超え、かつ処理負荷の最も低い前記ノイズキャンセルフィルタを前記最適フィルタとして設定する、
請求項1に記載の音声処理条件設定装置。
【請求項3】
前記ユーザの音声信号に前記最適フィルタを適用した最適音声信号に対して、異なる複数のイコライザ処理を実行して、複数の調整音声信号を生成するイコライザ処理部と、
複数の前記調整音声信号のそれぞれについて音声品質を算出する第2算出部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の音声処理条件設定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の音声処理条件設定装置を備える、無線通信装置。
【請求項5】
ユーザの周囲の雑音に関する雑音信号に基準音声信号を重畳して生成された基準加工音声信号に対して、種類の異なる複数のノイズキャンセルフィルタを用いて畳み込み演算を実行し、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々に対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成するステップと、
前記基準音声信号と、複数の前記フィルタ加工音声信号とに基づいて、複数の前記フィルタ加工音声信号の各々に対応する音声品質を算出するステップと、
複数の前記音声品質と、前記基準音声信号と、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々の処理負荷を、前記ノイズキャンセルフィルタの各々と対応付けた処理負荷情報とに基づいて、複数の前記ノイズキャンセルフィルタのうち、前記雑音信号に設定すべき最適フィルタを決定するステップと、
を含む、音声処理条件設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理条件設定装置、無線通信装置、および音声処理条件設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカなどの音声出力装置において、ユーザの周囲のノイズを低減する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、処理負担を軽減しつつ、ノイズキャンセル処理の最適化を実現したヘッドホン装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、ヘッドホン装置においてユーザの周囲の環境に応じたノイズキャンセル信号を出力することで、ユーザの周囲で発生しているノイズ(騒音)を低減している。
【0006】
外部環境にノイズがある状況で無線通信装置などを使用して音声信号を受信者に送信する場合、送信者は受信者にどのような音声が届いているか把握することができない。通常、送信者は、周囲にノイズがある状況下においては、ノイズを低減するためのノイズキャンセルフィルタの種類を変更する操作を手動で実行した後、受信者に音声を送信する。この場合、適切なノイズキャンセルフィルタが設定されずノイズを低減できない可能性や、必要以上に処理負荷の高いフィルタを設定しまい消費電力が大きくなる可能性がある。そのため、無線通信装置などで音声を送信する場合に、自動で適切なノイズキャンセルフィルタを設定できる技術が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、自動で適切なノイズキャンセルフィルタを決定することのできる音声処理条件設定装置、無線通信装置、および音声処理条件設定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の音声処理条件設定装置は、ユーザの周囲の雑音に関する雑音信号に基準音声信号を重畳して生成された基準加工音声信号に対して、種類の異なる複数のノイズキャンセルフィルタを用いて畳み込み演算を実行し、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々に対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成するノイズキャンセル処理部と、前記基準音声信号と、複数の前記フィルタ加工音声信号とに基づいて、複数の前記フィルタ加工音声信号の各々に対応する音声品質を算出する第1算出部と、前記基準音声信号と、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々の処理負荷を、前記ノイズキャンセルフィルタの各々と対応付けた処理負荷情報とを記憶する記憶部と、複数の前記音声品質と、前記記憶部に記憶された前記処理負荷情報とに基づいて、複数の前記ノイズキャンセルフィルタのうち、最適フィルタを決定して設定する設定部と、を備える。
【0009】
本発明の無線通信装置は、本発明の音声処理条件設定装置を備える。
【0010】
本発明の音声処理条件設定方法は、ユーザの周囲の雑音に関する雑音信号に基準音声信号を重畳して生成された基準加工音声信号に対して、種類の異なる複数のノイズキャンセルフィルタを用いて畳み込み演算を実行し、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々に対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成するステップと、前記基準音声信号と、複数の前記フィルタ加工音声信号とに基づいて、複数の前記フィルタ加工音声信号の各々に対応する音声品質を算出するステップと、複数の前記音声品質と、前記基準音声信号と、複数の前記ノイズキャンセルフィルタの各々の処理負荷を、前記ノイズキャンセルフィルタの各々と対応付けた処理負荷情報とに基づいて、複数の前記ノイズキャンセルフィルタのうち、前記雑音信号に設定すべき最適フィルタを決定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動で適切なノイズキャンセルフィルタを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件設定装置が適用される無線通信装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件設定装置が適用される無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ノイズキャンセルフィルタの処理負荷を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件設定装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る音声処理条件設定装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。
【0014】
[第1実施形態]
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件設定装置が適用される無線通信装置について簡単に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件が適用される無線通信装置の一例を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、無線通信装置1は、集音部10と、アンテナ20と、操作部30と、表示部40とを備える。
【0016】
集音部10は、無線通信装置1の周囲の種々の音を集音する。集音部10は、例えば、ユーザの声や、ユーザの周囲のノイズ(騒音)を集音する。集音部10は、例えば、操作部30で受け付けたユーザからの操作に従って、ユーザの声やユーザの周囲のノイズを集音する。
【0017】
アンテナ20は、例えば、音声信号を相手側から受信したり、音声を音声信号として送信したりする。具体的には後述するが、本実施形態においては、ユーザの周囲のノイズを低減した音声信号を相手側に送信する。
【0018】
操作部30は、無線通信装置1に対するユーザからの種々の操作を受け付ける。ユーザからの種々の操作には、ユーザの周囲のノイズを集音部10に集音させる操作が含まれる。
【0019】
表示部40は、無線通信装置1に関する種々の情報を表示する。表示部40は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含むディスプレイである。
【0020】
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件設定装置が適用される無線通信装置の構成について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る音声処理条件が適用される無線通信装置の一例を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、無線通信装置1は、集音部10と、増幅部(Amplifier;以下AMPと称する)11と、アナログデジタル変換部(Analog to Digital Converter;以下ADCと称する)12と、加算器13と、制御部(音声処理条件設定装置)14と、記憶部15と、AGC(Automatic Gain Control;以下、AGCと称する)回路16と、イコライザ(Equalizer;以下、EQと称する)17と、変調処理部18と、アンテナ20とを有する。
【0022】
集音部10は、上述したように、ユーザの声や、ユーザの周囲のノイズを集音する。集音部10は、例えば、集音したユーザの声をアナログの音声信号に変換したり、ユーザの周囲の雑音をアナログの雑音信号に変換したりする。集音部10は、例えば、通常のマイクロフォンで実現することできる。集音部10は、例えば、音声信号や、雑音信号をAMP11に出力する。
【0023】
AMP11は、入力されるアナログ信号を増幅する。AMP11は、例えば、集音部10から受けた音声信号や、雑音信号を増幅する。AMP11は、例えば、増幅した音声信号や、雑音信号をADC12に出力する。AMP11は、例えば、マイクアンプで実現することができる。
【0024】
ADC12は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。ADC12は、例えば、AMP11から受けた音声信号や、雑音信号をデジタル信号に変換する。ADC12は、例えば、デジタル信号に変換した音声信号や、雑音信号を加算器13に出力する。
【0025】
加算器13は、例えば、デジタル信号に変換された音声信号や、雑音信号をADC12から受ける。加算器13は、例えば、基準音声データ151を記憶部15から受ける。基準音声データ151は、例えば、ノイズがない環境で予め記憶部15に記憶されたユーザの音声である。加算器13は、例えば、雑音信号と、基準音声データを加算して、基準加工音声信号を生成する。加算器13は、例えば、基準加工音声信号をノイズキャンセル処理部141に出力する。
【0026】
制御部14は、ノイズキャンセル処理部141と、第1算出部142と、第1設定部143とを備える。制御部14は、例えば、記憶部15が記憶しているプログラムを展開して実行することで、ノイズキャンセル処理部141と、第1算出部142と、第1設定部143として機能する。制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む電子的な回路で実現することができる。
【0027】
ノイズキャンセル処理部141は、加算器13から基準加工音声信号を受ける。ノイズキャンセル処理部141は、例えば、基準加工音声信号に対して、複数のノイズキャンセルフィルタを畳み込み演算を実行し、各々のノイズキャンセルフィルタに対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成する。ノイズキャンセル処理部141は、例えば、生成した複数のフィルタ加工音声信号を第1算出部142に出力する。
【0028】
第1算出部142は、ノイズキャンセル処理部141から各ノイズキャンセルフィルタに対応する複数のフィルタ加工音声信号を受ける。第1算出部142は、記憶部15から基準音声データ151を受ける。第1算出部142は、フィルタ加工音声信号と、基準音声データ151に基づいて、フィルタ加工音声信号の音声品質を算出する。具体的には、第1算出部142は、例えば、フィルタ加工音声信号と、基準音声データ151を比較することで、フィルタ加工音声信号の音声品質を算出する。第1算出部142は、例えば、音声品質として、PESQ(Perceptual Evaluation of Speech Quality)値を算出する。ここで、PESQ値は、-0.5~4.5の範囲内で表現される音声品質の客観評価であり、点数が高いほど高品質であり、聞き取りやすい音声であることを意味している。第1算出部142は、算出したフィルタ加工音声信号の音声品質を第1設定部143に出力する。
【0029】
第1設定部143は、第1算出部142からフィルタ加工音声信号の音声品質の算出結果を受ける。第1設定部143は、例えば、記憶部15が記憶している基準音声データ151を加算器13に入力する。第1設定部143は、例えば、フィルタ加工音声信号の音声品質の算出結果に基づいて、設定すべきノイズキャンセルフィルタを決定し設定する。第1設定部143は、例えば、フィルタ加工音声信号の音声品質の算出結果と、記憶部15が記憶しているノイズキャンセルフィルタの処理負荷に基づいて、設定すべきノイズキャンセルフィルタを決定し設定する。具体的には、第1設定部143は、音声品質が予め定められた閾値以上であり、かつ処理負荷の最も小さい(消費電力の最も小さい)ノイズキャンセルフィルタを決定し設定する。ここで、閾値以上の音声品質とは、基準加工音声信号に含まれるノイズが除去されて、受け手側が聞き取りやすいと感じる音声品質であることを意味している。すなわち、音声品質が予め定められた閾値以上となるフィルタ加工音声信号を生成するノイズキャンセルフィルタは、ノイズをキャンセルする効果が高いノイズキャンセルフィルタである。言い換えれば、閾値は、ノイズキャンセルフィルタによる基準加工音声信号に対するノイズキャンセルの効果を示す評価値を意味している。
【0030】
より具体的には、閾値は、PESQ値を例に説明すると、-0.5~4.5の間で設定することができる。この場合、閾値以上とは、ノイズキャンセルフィルタによってノイズが除去され、受け手側が聞き取りやすいと感じる点数以上であることを意味している。しかしながら、ユーザが周囲のノイズを聞かせたいと考える場合には、閾値を低く設定するようにしてもよい。すなわち、閾値は、例えば、無線通信装置1が使用される環境に応じて、任意に変動させてもよい。この場合、閾値は、例えば、ユーザからの操作によって第1設定部143が変動させるようにすればよい。
【0031】
図3を用いて、ノイズキャンセルフィルタと、ノイズキャンセルフィルタの処理負荷の関係について説明する。
図3は、ノイズキャンセルフィルタと処理負荷との対応関係を示す模式図である。
【0032】
図3には、ノイズキャンセルフィルタの一例が示されている。
図3に示されているように、本実施形態において、ノイズキャンセルフィルタとして、例えば、ライト、スタンダード、パワフル、プロフェッショナル、カスタムの5種類のフィルタを有している。ライトと、スタンダードと、パワフルとは、それぞれ、種類の異なるノイズをキャンセルするために用いられるフィルタである。プロフェッショナルは、ノイズの種類をリアルタイムで算出し、算出結果に基づいて、その都度設定値を変更しながらノイズをキャンセルするフィルタである。カスタムは、ユーザによって設定された設定値でノイズをキャンセルするフィルタである。
【0033】
図3に示す例の場合、第1算出部142は、例えば、ライト、スタンダード、パワフル、プロフェッショナル、カスタムのそれぞれのPESQ値を算出する。この場合、ノイズを低減する効果の高いノイズキャンセルフィルタのPESQ値が高く算出され、ノイズを低減する効果の低いノイズキャンセルフィルタのPESQ値は低く算出される。
【0034】
図3に示すように、ライトには第1負荷情報が対応付けられている。スタンダードには第2負荷情報が対応付けられている。パワフルには第3負荷情報が対応付けられている。プロフェッショナルには第4負荷情報が対応付けられている。カスタムには第5負荷情報が対応付けられている。ここで、第1負荷情報~第5負荷情報には、処理負荷に関する情報が含まれている。そのため、第1設定部143は、例えば、
図3の対応関係を参照することで、各ノイズキャンセルフィルタの処理負荷に関する情報を得ることができる。
図3に示すような、対応表は、例えば、記憶部15が記憶していればよい。
【0035】
再び
図2を参照する。第1設定部143は、
図3の対応関係に基づいて、ノイズキャンセル処理部141に設定すべきノイズキャンセルフィルタを決定する。そして、第1設定部143は、決定したノイズキャンセルフィルタをノイズキャンセル処理部141に設定する。ノイズキャンセル処理部141は、設定されたノイズキャンセルフィルタを用いて、ユーザの音声信号に対してノイズキャンセル処理を実行し、AGC回路16に出力する。
【0036】
記憶部15は、例えば、ノイズキャンセル処理部141と、第1算出部142と、第1設定部143を実現させるためのプログラムを記憶している。この場合、制御部14は、記憶部15に記憶されているプログラムを展開して実行することで、各部の機能を実現する。記憶部15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、光ディスクなどの記憶装置で実現することができる。記憶部15は、複数の異なるメモリ等で構成されてもよい。記憶部15は、例えば、基準音声データ151を記憶している。記憶部15は、例えば、各ノイズキャンセルフィルタの処理負荷に関する処理負荷情報152を記憶している。
【0037】
AGC回路16は、受けた信号の強度を増幅する。AGC回路16は、例えば、ノイズキャンセル処理部141から受けた、ノイズフィルタ処理が実行された音声信号の強度を増幅する。AGC回路16は、例えば、増幅した音声信号をEQ17に出力する。
【0038】
EQ17は、受けた信号の特定の周波数帯域部分を調整する。EQ17は、例えば、AGC回路16から受けた音声信号の特定の周波数帯域部分を調整する。具体的には、EQ17は、例えば、AGC回路16から受けた音声信号の特定の周波数帯域部分の強度を強くしたり、弱くしたりする。EQ17は、例えば、調整した音声信号を変調処理部18に出力する。
【0039】
変調処理部18は、受けた信号に対し、所定の変調方式を用いて変調処理を実行する。変調処理部18は、例えば、EQ17から受けた信号を直交変調して、IF(Intermediate Frequency)信号を生成する。また、変調処理部18は、IF信号からRF(Radio Frequency)信号を生成する。このような、変調処理部18は、例えば、局部発振器、移送器、乗算器、合成器などから実現することができる。変調処理部18は、例えば、RF信号をアンテナ20に出力する。
【0040】
アンテナ20は、例えば、RF信号を相手側に送信する。アンテナ20は、例えば、相手側から送信されたRF信号を受信する。
【0041】
次に、
図4を用いて、本実施形態に係る制御部14の処理について説明する。
図4は、本実施形態に係る制御部14の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
まず、制御部14は、集音部10が集音したノイズを基準音声データ151に重畳させて、基準加工音声信号を生成する(ステップS101)。具体的には、制御部14は、第1設定部143によって、基準音声データ151を加算器13に入力することによって、環境ノイズと、基準音声データ151とを重畳させて、基準加工音声信号を生成する。そして、制御部14は、ステップS102に進む。
【0043】
次に、制御部14は、基準加工音声信号と、基準音声データに基づいて、基準PESQ値データを算出する(ステップS102)。具体的には、制御部14は、第1算出部142によって、基準PESQ値データを算出する。そして、制御部14は、ステップS103に進む。
【0044】
次に、制御部14は、基準加工音声信号に複数のノイズキャンセルフィルタを畳み込んで、各々のノイズキャンセルフィルタに対応する複数のフィルタ加工音声信号を生成する(ステップS103)。具体的には、制御部14は、ノイズキャンセル処理部141によって、基準加工音声信号にノイズキャンセルフィルタを畳み込んで、フィルタ加工音声信号を生成する。そして、制御部14は、ステップS104に進む。
【0045】
次に、制御部14は、フィルタ加工音声信号に基づいて、各ノイズキャンセルフィルタに対応する、フィルタPESQ値データを算出する(ステップS104)。具体的には、制御部14は、第1算出部142によって、フィルタPESQ値データを算出する。そして、制御部14は、ステップS105に進む。
【0046】
次に、制御部14は、ステップS105において、全てのノイズキャンセルフィルタについて、フィルタPESQ値データを算出したか否かを判定する。
【0047】
全てのノイズキャンセルフィルタのフィルタPESQ値データを算出した場合(ステップS105の「Yes」)、制御部14は、ステップS106に進む。一方、全てのノイズキャンセルフィルタのフィルタPESQ値データを算出していない場合(ステップS105の「No」)、制御部14は、ステップS103に戻り、上述の処理を実行する。
【0048】
次に、制御部14は、ステップS106において、予め定められた閾値以上のフィルタPESQ値データはあるか否かを判定する。
【0049】
予め定められた閾値以上のフィルタPESQ値データがあった場合(ステップS106の「Yes」)、制御部14は、ステップS107に進み、閾値を超えているフィルタPESQ値データ複数あるか否かを判定する。
【0050】
一方、予め定められた閾値以上のフィルタPESQ値データがない場合(ステップS106の「No」)、制御部14は、ステップS108に進み、デフォルトのノイズキャンセルフィルタを選出する(ステップS108)。具体的には、制御部14は、第1設定部143によって、デフォルトのノイズキャンセルフィルタを選出する。そして、制御部14は、ステップS110に進む。
【0051】
閾値を超えているPESQ値データが複数ある場合(ステップS107の「Yes」)、制御部14は、ステップS109に進む。この場合、制御部14は、複数のPESQ値データのうち、最も処理負荷の低いノイズキャンセルフィルタを適用したPESQ値データを選出する(ステップS109)。具体的には、制御部14は、第1設定部143によって、最も処理負荷の低いノイズキャンセルフィルタを適用したPESQ値データを選出する。そして、制御部14は、ステップS110に進む。一方、閾値を超えているPESQ値が1つだけであった場合(ステップS107の「No」)、制御部14は、ステップS110に進む。
【0052】
次に、制御部14は、ノイズキャンセルフィルタのうち、適用すべき最適フィルタを決定する(ステップS110)。具体的には、制御部14は、第1設定部143によって、最適フィルタを決定する。そして、制御部14は、ステップS111に進む。
【0053】
そして、制御部14は、ノイズキャンセル処理部141に対し、最適フィルタを設定する(ステップS111)。具体的には、制御部14は、制御部14は、第1設定部143によって、ノイズキャンセル処理部141に対し、最適フィルタを設定する。そして、制御部14は、
図4の処理を終了する。
【0054】
上述のとおり、第1実施形態は、集音したノイズと、基準音声データとに基づいて、処理負荷の最も小さな最適なノイズキャンセルフィルタを自動で設定することができる。その結果、第1実施形態は、例えば、消費電力を不必要に悪化させることなく、無線通信装置などを使用することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。第2実施形態に係る無線通信装置の構成は、
図2に図示の、無線通信装置1と同じであり、制御部の構成が異なっている。
【0056】
第2実施形態は、例えば、ノイズキャンセル処理部141によって最適フィルタが適用された最適音声信号に対して、EQ17を適切に設定するためのイコライザ処理を実行する。
【0057】
図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る制御部の構成について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【0058】
図5に示すように、制御部14A(音声処理条件設定装置)は、ノイズキャンセル処理部141と、第1算出部142と、第1設定部143と、イコライザ処理部144と、第2算出部145と、第2設定部146とを備える。すなわち、制御部14Aは、イコライザ処理部144と、第2算出部145と、第2設定部146とを備えている点で、制御部14とは異なっている。
【0059】
第2実施形態においては、ノイズキャンセル処理部141は、例えば、雑音が含まれるユーザの音声信号に対して最適フィルタを適用した最適音声信号をイコライザ処理部144に出力する。
【0060】
イコライザ処理部144は、ノイズキャンセル処理部141から最適音声信号を受ける。イコライザ処理部144は、例えば、最適音声信号に対して、調整する帯域の異なる複数のイコライザ処理を実行し、各々のイコライザ処理に対応する複数の調整音声信号を生成する。イコライザ処理部144は、例えば、生成した複数の調整音声信号を第2算出部145に出力する。
【0061】
第2算出部145は、イコライザ処理部144から複数の調整音声信号を受ける。第1算出部142は、各調整音声信号の音声品質を算出する。具体的には、第2算出部145は、例えば、音声品質として、PESQ値を算出する。第2算出部145は、算出した調整音声信号の音声品質を第2設定部146に出力する。
【0062】
第2設定部146は、第2算出部145から調整音声信号の音声品質の算出結果を受ける。第2設定部146は、例えば、調整音声信号の音声品質の算出結果に基づいて、EQ17に設定すべき設定値を決定し設定する。第2設定部146は、例えば、音声品質が予め定められた閾値以上となるようにEQ17に設定すべき設定値を決定し設定する。
【0063】
上述のとおり、本発明の第2実施形態は、ノイズキャンセルフィルタが適用された音声信号に基づいて、イコライザを適切に設定することができる。その結果、第2実施形態は、より高音質な音声信号を生成する条件を設定することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、上述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 無線通信装置
10 集音部
11 増幅部(AMP)
12 アナログデジタル変換部(ADC)
13 加算器
14,14A 制御部(音声処理条件設定装置)
141 ノイズキャンセル処理部
142 第1算出部
143 第1設定部(設定部)
144 イコライザ処理部
145 第2算出部
146 第2設定部
15 記憶部
151 基準音声データ
152 処理負荷情報
16 AGC回路
17 イコライザ(EQ)
20 アンテナ
30 操作部
40 表示部