(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】無線装置、検査システム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/17 20150101AFI20220117BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20220117BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20220117BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B17/29 200
H04W24/06
(21)【出願番号】P 2018224744
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】山地 隆生
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-224290(JP,A)
【文献】特開2003-309528(JP,A)
【文献】実開平05-050500(JP,U)
【文献】国際公開第2015/029238(WO,A1)
【文献】特開2006-060762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/17
H04B 17/29
H04W 24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ音声が含まれた電波を復調する復調部と、
前記復調部における復調結果を復号することによってアナログ音声を生成する音声受信部と、
前記音声受信部において生成したアナログ音声を音声符号化することによって音声データを生成する音声符号化部と、
前記音声符号化部において生成した音声データを記録するデータ記録部と、
前記データ記録部に記録した音声データを符号化するデータ送信部と、
前記送信部において符号化された音声データを変調することによって、音声データが含まれた電波を生成する変調部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
音声符号化された音声データが含まれた電波を復調する復調部と、
前記復調部における復調結果を復号するデータ受信部と、
前記データ受信部において復号した音声データを記録するデータ記録部と、
前記データ記録部に記録した音声データを音声復号することによってアナログ音声を生成する音声復号部と、
前記音声復号部において生成したアナログ音声を符号化する音声送信部と、
前記音声送信部において符号化されたアナログ音声を変調することによって、アナログ音声が含まれた電波を生成する変調部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項3】
前記復調部は、制御コマンドが含まれた電波を復調し、
前記制御コマンドには、音声符号化の方式を指定するための情報が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記制御コマンドには、前記変調部において生成された電波を送信すべきタイミングの情報が含まれることを特徴とする請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
アナログ音声が含まれた電波を送信する検査装置と、
前記検査装置からの電波を受信する無線装置とを備え、
前記無線装置は、
電波を復調する復調部と、
前記復調部における復調結果を復号することによってアナログ音声を生成する音声受信部と、
前記音声受信部において生成したアナログ音声を音声符号化することによって音声データを生成する音声符号化部と、
前記音声符号化部において生成した音声データを記録するデータ記録部と、
前記データ記録部に記録した音声データを符号化するデータ送信部と、
前記送信部において符号化された音声データを変調することによって、音声データが含まれた電波を生成する変調部と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項6】
音声符号化された音声データが含まれた電波を送信する検査装置と、
前記検査装置からの電波を受信する無線装置とを備え、
前記無線装置は、
電波を復調する復調部と、
前記復調部における復調結果を復号するデータ受信部と、
前記データ受信部において復号した音声データを記録するデータ記録部と、
前記データ記録部に記録した音声データを音声復号することによってアナログ音声を生成する音声復号部と、
前記音声復号部において生成したアナログ音声を符号化する音声送信部と、
前記音声送信部において符号化されたアナログ音声を変調することによって、アナログ音声が含まれた電波を生成する変調部と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に通信機能の正常または異常を判定することができる無線装置、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける無線装置の通信路の正常または異常を判定するために、無線装置に対する試験がなされる。試験において、無線装置は、受信した音声のスピーカ出力をマイク入力に接続して返送する。その際、返送の音声信号に遅延を設けることで通信路の異常が検出されやすくされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査方法によれば通信路の異常は検出できるが、送信側通信路あるいは受信側通信路のどちらに異常があるかを特定できない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信側あるいは受信側における異常を区別して検出する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、アナログ音声が含まれた電波を復調する復調部と、復調部における復調結果を復号することによってアナログ音声を生成する音声受信部と、音声受信部において生成したアナログ音声を音声符号化することによって音声データを生成する音声符号化部と、音声符号化部において生成した音声データを記録するデータ記録部と、データ記録部に記録した音声データを符号化するデータ送信部と、送信部において符号化された音声データを変調することによって、音声データが含まれた電波を生成する変調部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、無線装置である。この装置は、音声符号化された音声データが含まれた電波を復調する復調部と、復調部における復調結果を復号するデータ受信部と、データ受信部において復号した音声データを記録するデータ記録部と、データ記録部に記録した音声データを音声復号することによってアナログ音声を生成する音声復号部と、音声復号部において生成したアナログ音声を符号化する音声送信部と、音声送信部において符号化されたアナログ音声を変調することによって、アナログ音声が含まれた電波を生成する変調部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、検査システムである。この検査システムは、アナログ音声が含まれた電波を送信する検査装置と、検査装置からの電波を受信する無線装置とを備える。無線装置は、電波を復調する復調部と、復調部における復調結果を復号することによってアナログ音声を生成する音声受信部と、音声受信部において生成したアナログ音声を音声符号化することによって音声データを生成する音声符号化部と、音声符号化部において生成した音声データを記録するデータ記録部と、データ記録部に記録した音声データを符号化するデータ送信部と、送信部において符号化された音声データを変調することによって、音声データが含まれた電波を生成する変調部と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様もまた、検査システムである。この検査システムは、音声符号化された音声データが含まれた電波を送信する検査装置と、検査装置からの電波を受信する無線装置とを備える。無線装置は、電波を復調する復調部と、復調部における復調結果を復号するデータ受信部と、データ受信部において復号した音声データを記録するデータ記録部と、データ記録部に記録した音声データを音声復号することによってアナログ音声を生成する音声復号部と、音声復号部において生成したアナログ音声を符号化する音声送信部と、音声送信部において符号化されたアナログ音声を変調することによって、アナログ音声が含まれた電波を生成する変調部と、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送信側あるいは受信側における異常を区別して検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例に係る検査システムの構成を示す図である。
【
図3】
図1の無線装置を使用する中継装置の構成を示す図である。
【
図4】
図1の検査システムにおける制御信号のデータフォーマットを示す図である。
【
図5】
図1の検査システムによる受信検査の手順を示すシーケンス図である。
【
図6】
図1の検査システムによる送信検査の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、遠隔地に設置された無線装置の送信側あるいは受信側における異常の有無を検査する検査システムに関する。無線通信システムを構成する各無線装置が異常なく正常に動作していることを日常的に検査し、異常の発生を発見した場合には速やかに無線装置を修理する必要がある。無線装置の検査として、受信電界強度や送信出力など客観的な品質検査だけではなく、スピーカ出力の受信音声や、マイク入力の送信音声の主観的な音声品質検査も重要である。音声品質検査を実行するために、検査作業員が無線装置を設置した現地に派遣される。しかしながら、無線装置の1つである中継装置は山岳地帯など交通の不便な場所に設置されることがある。このような場所への検査作業員の立ち入りは厳しく、かつ派遣のためのコストが高くなる。そのため、検査作業員を現地に派遣せずに検査を行うことが求められる。前述した特許文献1による検査方法では、無線装置は、受信した音声のスピーカ出力をマイク入力に接続して返送するので、検査作業員を現地に派遣せずに、主観的な音声の劣化を検出可能である。しかしながら、前述の検査方法では、音声の劣化が送信側に起因するか、あるいは受信側に起因するかを特定できない。
【0014】
本実施例に係る検査システムでは、検査を実行する無線装置を「検査装置」と呼び、検査装置によって検査される中継装置等の無線装置を「無線装置」と呼ぶ。検査システムでは、無線装置に対する受信検査と送信検査とが独立して実行される。受信検査において、検査装置は、無線装置に対して受信検査開始命令を送信した後、アナログ音声が含まれた音声信号を送信する。無線装置は、検査装置からの受信検査開始命令を受信した後に音声信号を受信すると、アナログ音声のスピーカ出力をデジタル化して音声データとして記録する。無線装置は、音声データが含まれたデータ信号を検査装置に送信し、検査装置は、無線装置からのデータ信号を受信すると、音声データを記録する。ここで、データ信号の通信において音声データの欠損が発生しても、データ信号の再送がなされるので、検査装置は、完全な音声データを取得可能である。検査装置は、無線装置に受信検査終了命令を送信し、無線装置は、検査装置からの受信検査終了命令を受信すると処理を終了する。検査装置において、記録された音声データはアナログ音声に変換され、アナログ音声がスピーカから出力される。以上の手順により、無線装置のスピーカ出力と同等の品質のアナログ音声が、検査装置のスピーカ出力で聴取されるので、無線装置の受信側に対する主観評価が可能になる。
【0015】
一方、送信検査において、検査装置は、無線装置に対して送信検査開始命令を送信した後、音声データが含まれたデータ信号を送信する。無線装置は、検査装置からの送信検査開始命令を受信した後にデータ信号を受信すると、音声データを記録する。無線装置は、記録した音声データをアナログ音声に変換し、アナログ音声が含まれた音声信号を検査装置に送信する。検査装置は、無線装置からの音声信号を受信すると、アナログ音声をスピーカから出力する。検査装置は、無線装置に送信検査終了命令を送信し、無線装置は、検査装置からの送信検査終了命令を受信すると処理を終了する。アナログ音声がスピーカ出力で聴取されるので、無線装置の送信側に対する主観評価が可能になる。
【0016】
図1は、検査システム100の構成を示す。検査システム100は、検査装置10、無線装置20を含む。検査装置10と無線装置20は、所定の無線通信方式に準拠しており、互いに無線通信が可能である。無線通信の1つの形態が、アナログ音声が含まれた音声信号(電波)による音声通信であり、無線通信の別の1つの形態が、音声データが含まれたデータ信号(電波)によるデータ通信である。無線装置20は、音声品質検査の検査対象となる装置であり、検査装置10は、無線装置20に対する音声品質検査を実行する装置である。以下では、無線装置20において受信したアナログ音声の品質検査を「受信検査」と呼び、無線装置20から送信されるアナログ音声の品質検査を「送信検査」と呼ぶ。検査システム100においては、受信検査と送信検査とが独立して実行される。
【0017】
受信検査において、検査装置10は音声信号を送信し、無線装置20は音声信号を受信する。また、無線装置20はデータ信号を送信し、検査装置10はデータ信号を受信する。つまり、検査装置10から無線装置20への音声通信がなされるとともに、無線装置20から検査装置10へのデータ通信がなされる。送信検査において、検査装置10はデータ信号を送信し、無線装置20はデータ信号を受信する。また、無線装置20は音声信号を送信し、検査装置10は音声信号を受信する。つまり、検査装置10から無線装置20へのデータ通信がなされるとともに、無線装置20から検査装置10への音声通信がなされる。
【0018】
図2は、無線装置20の構成を示す。無線装置20は、処理部30、スピーカ32、制御部34、表示部36、操作部38、I/F40、マイク42を含む。処理部30は、復調部50、音声受信部52、データ受信部54、スイッチ部56、音声符号化部58、データ記録部60、音声復号部62、音声送信部64、データ送信部66、変調部68を含む。ここでは、(1)受信検査、(2)送信検査、(3)その他の処理の順に説明する。
【0019】
(1)受信検査
復調部50は、アンテナを介して検査装置10(図示なし)からの音声信号を受信する。音声信号の一例は、受信検査のためのアナログ音声が含まれた電波である。復調部50は音声信号を復調する。復調部50は復調結果を音声受信部52に出力する。音声受信部52は、復調部50における復調結果を復号することによってアナログ音声を生成する。復調結果の復号は通信用の音声圧縮技術であるVocoderを含む。音声受信部52はアナログ音声をスイッチ部56に出力する。スイッチ部56は、アナログ音声を音声受信部52から受けつけると、アナログ音声を音声符号化部58に出力する。
【0020】
音声符号化部58は、スイッチ部56からのアナログ音声に対してアナログ/デジタル変換を実行することによって、アナログ音声をデジタル音声に変換する。音声符号化部58は、デジタル音声を音声符号化することによって音声データを生成する。音声データは、データ列によって構成される。音声符号化部58における音声符号化の方式は限定されるものではないが、例えばMPEG-4 ALS(MPEG-4 Audio Lossless Coding)などの方式により可逆圧縮すると共にファイル化したものが利用される。これは、アナログ音声をリニアPCM(Pulse Code Modulation)によりデジタル化し、オープンソース(BSDライセンス)のFLAC(Free Lossless Audio Codec)やISO/IEC 14496-3 Subpart 11で定義されている。つまり、音声品質の主観評価が可能なレベルの音声符号化の方式を採用することが望ましい。
【0021】
データ記録部60は、データを記憶可能な記憶素子であり、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)である。データ記録部60は、音声符号化部58において生成した音声データを記録する。音声符号化がなされた音声データをデータ記録部60に記録することは「録音」とも呼ばれる。音声データの記録が終了した後、データ記録部60は、音声データをスイッチ部56に出力する。スイッチ部56は、音声データをデータ記録部60から受けつけると、音声データをデータ送信部66に出力する。データ送信部66は、スイッチ部56からの音声データを符号化する。データ送信部66は、符号化された音声データを変調部68に出力する。
【0022】
変調部68は、データ送信部66からの音声データを変調することによってデータ信号を生成する。データ信号は、音声データが含まれた電波といえる。その際、復調部50で受信した電波の搬送波とは異なる周波数の搬送波による変調がなされる。変調部68は、検査装置10に向かってアンテナからデータ信号を送信する。データ信号は検査装置10に受信され、検査装置10においてアナログ音声に変換され、アナログ音声としてスピーカから出力される。このアナログ音声の出力によって、無線装置20の受信側に対する主観評価がなされる。
【0023】
(2)送信検査
復調部50は、アンテナを介して検査装置10(図示なし)からのデータ信号を受信する。データ信号の一例は、送信検査のための音声データが含まれた電波である。音声データには音声符号化がなされている。復調部50はデータ信号を復調する。復調部50は復調結果をデータ受信部54に出力する。データ受信部54は、復調部50における復調結果を復号することによって音声データを生成する。データ受信部54は音声データをスイッチ部56に出力する。スイッチ部56は、音声データをデータ受信部54から受けつけると、音声データをデータ記録部60に出力する。
【0024】
データ記録部60は、データ受信部54において復号した音声データを記録する。受信した音声データをデータ記録部60に記録することは「データ記録」とも呼ばれる。音声データの記録が終了した後、データ記録部60は、音声データを音声復号部62に出力する。音声復号部62は、データ記録部60からの音声データを音声復号することによってデジタル音声を生成する。音声復号には、音声データに対してなされた音声符号化の方式に対応した復号の方式が使用される。音声復号部62はデジタル音声に対してデジタル/アナログ変換を実行することによって、デジタル音声をアナログ音声に変換する。音声復号部62はアナログ音声をスイッチ部56に出力する。
【0025】
スイッチ部56は、アナログ音声を音声復号部62から受けつけると、アナログ音声を音声送信部64に出力する。音声送信部64は、スイッチ部56からのアナログ音声を符号化する。アナログ音声の符号化は通信用の音声圧縮技術であるVocoderを含む。音声送信部64は、符号化されたアナログ音声を変調部68に出力する。変調部68は、音声送信部64からのアナログ音声を変調することによって音声信号を生成する。音声信号は、アナログ音声が含まれた電波といえる。その際、復調部50で受信した電波の搬送波とは異なる周波数の搬送波による変調がなされる。変調部68は、検査装置10に向かってアンテナから音声信号を送信する。音声信号は検査装置10に受信され、検査装置10においてアナログ音声としてスピーカから出力される。このアナログ音声の出力によって、無線装置20の送信側に対する主観評価がなされる。
【0026】
(3)その他の処理
制御部34は、処理部30の動作を制御する。特に、制御部34は、処理部30における受信検査と送信検査の動作を制御する。検査装置10からの受信検査開始命令を処理部30が受信した場合、制御部34は、受信検査開始命令を受けつける。制御部34は、受信検査開始命令を受けつけると、処理部30が音声通信あるいはデータ通信を実行しているか否かを確認する。処理部30が音声通信およびデータ通信を実行していない場合、制御部34は、処理部30を受信検査開始状態に遷移にさせる。受信検査開始状態において処理部30は前述の受信検査の処理を実行する。また、制御部34は、処理部30に対して、開始OKが示された受信検査開始応答を検査装置10に送信させる。検査装置10は、受信検査開始応答を受信し、受信検査開始応答において開始OKが示されていれば、受信検査のための音声信号の送信を開始する。一方、処理部30が音声通信およびデータ通信を実行している場合、制御部34は、処理部30に対して、開始NGが示された受信検査開始応答を検査装置10に送信させる。検査装置10は、受信検査開始応答を受信し、受信検査開始応答において開始NGが示されていれば、受信検査のための音声信号の送信を開始しない。その際、検査装置10は、検査作業員に対して、検査不可であることを通知してもよい。
【0027】
受信検査状態において音声データを送信する前に、制御部34は、処理部30に対して、音声データ送信開始命令を検査装置10に送信させる。受信検査状態において音声データの送信を終了した場合に、制御部34は、処理部30に対して、音声データ送信終了命令を検査装置10に送信させる。さらに、検査装置10からの受信検査終了命令を処理部30が受信した場合、制御部34は、受信検査終了命令を受けつける。これに応じて、制御部34は、処理部30を通常状態に遷移にさせる。通常状態において、処理部30は、音声通信あるいはデータ通信を実行する。また、制御部34は、処理部30に対して受信検査終了応答を検査装置10に送信させる。
【0028】
検査装置10からの送信検査開始命令を処理部30が受信した場合、制御部34は、送信検査開始命令を受けつける。制御部34は、送信検査開始命令を受けつけると、処理部30が音声通信あるいはデータ通信を実行しているか否かを確認する。処理部30が音声通信およびデータ通信を実行していない場合、制御部34は、処理部30を送信検査開始状態に遷移にさせる。送信検査開始状態において処理部30は前述の送信検査の処理を実行する。また、制御部34は、処理部30に対して、開始OKが示された送信検査開始応答を検査装置10に送信させる。検査装置10は、送信検査開始応答を受信し、送信検査開始応答において開始OKが示されていれば、送信検査のためのデータ信号の送信を開始する。一方、処理部30が音声通信およびデータ通信を実行している場合、制御部34は、処理部30に対して、開始NGが示された送信検査開始応答を検査装置10に送信させる。検査装置10は、送信検査開始応答を受信し、送信検査開始応答において開始NGが示されていれば、送信検査のためのデータ信号の送信を開始しない。
【0029】
送信検査状態において音声データを受信する前に、制御部34は、処理部30を介して、音声データ送信開始命令を検査装置10から受けつける。送信検査状態において音声データの送信が終了した場合に、制御部34は、処理部30を介して、音声データ送信終了命令を検査装置10から受けつける。さらに、検査装置10からの送信検査終了命令を処理部30が受信した場合、制御部34は、送信検査終了命令を受けつける。これに応じて、制御部34は、処理部30を通常状態に遷移にさせる。通常状態において、処理部30は、音声通信あるいはデータ通信を実行する。また、制御部34は、処理部30に対して送信検査終了応答を検査装置10に送信させる。
【0030】
処理部30における受信検査と送信検査の動作に加えて、制御部34は、次のような制御を実行してもよい。制御部34は、処理部30においてアナログ音声あるいは制御データをスピーカ32から出力させたり、表示部36に表示させたり、データ記録部60に記録させたりする。また、制御部34は、マイク42から取り込んだアナログ音声を処理部30に出力したり、操作部38から入力した情報をデータとして処理部30に出力したりする。
【0031】
操作部38は、例えば、キーボード、ボタン、タッチパネル等であり、無線装置20の動作に関する操作をユーザから受けつける。表示部36は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やLED(Light Emitting Diode)であり、処理されたデータ、動作の状況などを表示する。スピーカ32は、アナログ音声を出力する。マイク42は、アナログ音声を取り込む。スピーカ32、マイク42は無線装置20に備えられなくてもよい。I/F40は、複数の無線装置20を接続する場合に、他の無線装置20との間で情報を入出力する。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
以下では、これまで説明した無線装置20が中継装置であるとして、複数の中継装置で構成される無線中継システムについて説明する。無線中継システムには、制御チャネル(Control Channel)(以下、「CCH」という)と、複数の通話チャネル(Traffic Channel)(以下、「TCH」という)が設定される。各チャネルにおいて互いに異なる送受信周波数を使用して、個別またはグループの端末装置間の通話を中継する。CCHは、端末装置からの送信要求を受けて通話に使用するTCHを通知するなど、音声通信を制御するために使用される。CCH用の中継装置にTCHの機能も持たせるなど、無線中継システムには様々な構成が可能であるが、本実施例では、説明を簡易にするために、
図3に示す構成を想定する。
【0034】
図3は、無線装置20を使用する中継装置80の構成を示す。図示のごとく、第1中継装置80a、第2中継装置80b、第3中継装置80c、第4中継装置80dが無線中継システムに含まれる。第1中継装置80aから第4中継装置80dは中継装置80と総称される。第1中継装置80aはCCH用の中継装置80であり、第2中継装置80bから第4中継装置80dは、TCH用の中継装置80である。TCH用の中継装置80の数は「3」に限定されない。第1中継装置80aは第1I/F40aを含み、第2中継装置80bは第2I/F40bを含み、第3中継装置80cは第3I/F40cを含み、第4中継装置80dは第4I/F40dを含む。第1I/F40aは第2I/F40bに接続され、第2I/F40bは第3I/F40cに接続され、第3I/F40cは第4I/F40dに接続される。2つのI/F40間の接続は例えば有線によりなされる。このようなI/F40の接続によって、複数の中継装置80は直列に接続される。その結果、第1中継装置80aは、端末装置からの送信要求を受信すると、通話に使用する第2中継装置80bから第4中継装置80dのいずれかを制御する。
【0035】
次に、検査装置10から中継装置80あるいは無線装置20に送信される制御信号に含まれるデータ(以下、「制御コマンド」という)の定義を説明する。ここで、制御信号は、制御コマンドが含まれた電波に相当する。第1中継装置80aにおける復調部50は、制御信号を復調することによって、制御コマンドを取得する。
図4は、検査システム100における制御信号のデータフォーマットを示す。これは、制御コマンドの一例であるが、制御コマンドはこれに限定されない。コマンド部には、受信検査開始、受信検査終了、送信検査開始、送信検査終了、データ送信開始、データ送信終了を示す値が格納される。ターゲットチャネル部には、検査したい中継装置80、特に中継装置(TCH)を示す値が格納される。なお、複数の中継装置80が指定されてもよい。ソースアドレス部には、制御コマンドの送信元の端末IDが格納される。例えば、検査装置10を特定する端末IDが格納される。
【0036】
ファイルフォーマット部には、符号化された音声データを格納するファイルフォーマットを指定する情報が格納される。音声符号化方式部には、音声符号化の方式、例えば前述のFLACなどを指定する値が格納される。つまり、制御コマンドには、音声符号化の方式を指定するための情報が含まれる。サンプリング周波数部と量子化ビット数部には、アナログ音声をリニアPCMに変換する際のパラメータが格納される。遅れ量部には、第2中継装置80bから第4中継装置80dのそれぞれが、受信検査の場合のデータ信号あるいは送信検査の場合の音声信号を送信する場合の遅延量が含まれる。これは、中継装置(TCH)が、変調部68において生成された電波を送信すべきタイミングの情報であるといえる。ここで、遅れ量(TCH1)は第2中継装置80bに対する遅延量であり、遅れ量(TCH2)は第3中継装置80cに対する遅延量であり、遅れ量(TCH3)は第4中継装置80dに対する遅延量である。また、ターゲットチャネル部において指定された中継装置80に対する遅れ量が含まれる。
【0037】
以上の構成による検査システム100の動作を説明する。
図5は、検査システム100による受信検査の手順を示すシーケンス図である。これは、
図3の第2中継装置80bから第4中継装置80dのうちの第2中継装置80bについて受信検査を行う場合の処理フローを示す。ここで、検査装置10と第1中継装置80aとの通信にはCCHの周波数が使用され、検査装置10と第2中継装置80bとの通信にはTCHの周波数が使用され、第1中継装置80aと第2中継装置80bとの通信にはI/F部40により接続された有線が使用される。
【0038】
検査装置10は、受信検査を開始すると、第1中継装置80aに対して受信検査開始要求コマンドを送信する(S10)。第1中継装置80aは、受信検査開始要求コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して受信検査開始を指示する(S12)。受信検査開始要求コマンドと受信検査開始の指示の少なくとも1つが、前述の受信検査開始命令に相当する。第2中継装置80bは、受信検査開始の指示を受けつけ、受信検査可能であれば受信検査状態に遷移する(S14)。第2中継装置80bは、受信検査開始を第1中継装置80aに応答する(S16)。第1中継装置80aは、受信検査開始の応答を受けつけると、検査装置10に対して受信検査開始応答コマンドを送信する(S18)。受信検査開始応答コマンドと受信検査開始の応答の少なくとも1つが、前述の受信検査開始応答に相当する。
【0039】
検査装置10は、受信検査開始応答コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して音声の送信を開始する(S20)。第2中継装置80bは、音声を受信すると、録音を実行する(S22)。第2中継装置80bは、記録した音声データを検査装置10に送信するため、検査装置10に対して、音声データ送信開始コマンドを送信し(S24)、続けて音声データを送信する(S26)。音声データ送信開始コマンドは、前述の音声データ送信開始命令に相当する。検査装置10は、音声データ送信開始コマンドを受信すると、続けて音声データを記録する(S28)。第2中継装置80bは、音声データを送信し終えたら、検査装置10に対して、音声データ送信終了コマンドを送信する(S30)。音声データ送信終了コマンドは、前述の音声データ送信終了命令に相当する。
【0040】
検査装置10は、音声データ送信終了コマンドを受信すると、音声データの記録を停止し、続けて第1中継装置80aに対して、受信検査終了要求コマンドを送信する(S32)。第1中継装置80aは、受信検査終了要求コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して、受信検査終了を指示する(S34)。受信検査終了要求コマンドと受信検査終了の指示の少なくとも1つが、前述の受信検査終了命令に相当する。第2中継装置80bは、受信検査終了の指示を受けつけると、通常状態に遷移し(S36)、受信検査終了を応答する(S38)。第1中継装置80aは、受信検査終了の応答を受けつけると、検査装置10に対して、受信検査終了応答コマンドを送信する(S40)。受信検査終了応答コマンドと受信検査終了の応答の少なくとも1つが、前述の受信検査終了応答に相当する。検査装置10は、受信検査終了応答コマンドを受信すると、検査作業員に対して、受信検査終了であることを通知して終了する。
【0041】
図6は、検査システム100による送信検査の手順を示すシーケンス図である。検査装置10は、送信検査を開始すると、第1中継装置80aに対して送信検査開始要求コマンドを送信する(S100)。第1中継装置80aは、送信検査開始要求コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して送信検査開始を指示する(S102)。送信検査開始要求コマンドと送信検査開始の指示の少なくとも1つが、前述の送信検査開始命令に相当する。第2中継装置80bは、送信検査開始の指示を受けつけ、送信検査可能であれば送信検査状態に遷移する(S104)。第2中継装置80bは、送信検査開始を第1中継装置80aに応答する(S106)。第1中継装置80aは、送信検査開始の応答を受けつけると、検査装置10に対して送信検査開始応答コマンドを送信する(S108)。送信検査開始応答コマンドと送信検査開始の応答の少なくとも1つが、前述の送信検査開始応答に相当する。
【0042】
検査装置10は、送信検査開始応答コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して、音声データ送信開始コマンドを送信し(S110)、続けて音声データを送信する(S112)。音声データ送信開始コマンドは、前述の音声データ送信開始命令に相当する。第2中継装置80bは、音声データ送信開始コマンドを受信すると、音声データを記録する(S114)。検査装置10は、音声データを送信し終えたら、第2中継装置80bに対して、音声データ送信終了コマンドを送信する(S116)。音声データ送信終了コマンドは、前述の音声データ送信終了命令に相当する。第2中継装置80bは、音声データ送信終了コマンドを受信すると、音声データの記録を停止して、続けて音声データを再生した音声を検査装置10に送信する(S118)。検査装置10は、音声の記録を開始する(S120)。
【0043】
検査装置10は、音声の記録を停止すると、続けて第1中継装置80aに対して、送信検査終了要求コマンドを送信する(S122)。第1中継装置80aは、送信検査終了要求コマンドを受信すると、第2中継装置80bに対して、送信検査終了を指示する(S124)。送信検査終了要求コマンドと送信検査終了の指示の少なくとも1つが、前述の送信検査終了命令に相当する。第2中継装置80bは、送信検査終了の指示を受けつけると、通常状態に遷移し(S126)、送信検査終了を応答する(S128)。第1中継装置80aは、送信検査終了の応答を受けつけると、検査装置10に対して、送信検査終了応答コマンドを送信する(S130)。送信検査終了応答コマンドと送信検査終了の応答の少なくとも1つが、前述の送信検査終了応答に相当する。検査装置10は、送信検査終了応答コマンドを受信すると、検査作業員に対して、送信検査終了であることを通知して終了する。
【0044】
本実施例によれば、受信したアナログ音声を音声データに変換して記録してから、音声データを検査装置に送信するので、検査装置において、無線装置での受信時と同等の品質でアナログ音声をスピーカから聴取できる。また、検査装置において、無線装置での受信時と同等の品質でアナログ音声をスピーカから聴取されるので、無線装置の受信側における異常を検出できる。また、検査装置において、無線装置での受信時と同等の品質でアナログ音声をスピーカから聴取されるので、無線装置の設置場所へ行かなくても無線装置での受信音声の主観的な音声品質を検査できる。また、音声品質の主観評価が可能なレベルの符号化方式を採用するので、無線装置から送られてきた音声データを検査装置側でアナログ音声に復号すれば、検査装置において無線装置の受信側の音声品質を検査できる。
【0045】
また、受信した音声データをアナログ音声に変換し、アナログ音声を検査装置に送信するので、検査装置において、無線装置の送信側における異常を検出できる。また、受信した音声データをアナログ音声に変換し、アナログ音声を検査装置に送信するので、無線装置での送信音声の主観的な音声品質を検査できる。また、受信音声の品質評価と同等のレベルで音声符号化された音声データをアナログ音声に変換すれば、無線装置側に検査作業員を派遣することなく検査装置において無線装置からの音声送信の品質を検査できる。また、これまで無線装置の設置位置に検査作業員を派遣しなければできなかった無線装置における音声の主観評価を、検査作業員を派遣することなく実施できる。また、制御コマンドに、音声符号化の方式を指定するための情報を含めるので、音声符号化の方式を変更できる。また、制御コマンドに、電波を送信すべきタイミングの情報を含めるので、信号を送信するタイミングを無線装置毎に変えることができる。
【0046】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0047】
本実施例における無線装置20は、受信検査の際、アナログ音声に復号してから、再び符号化している。しかしながらこれに限らず例えば、アナログ音声に復号する前の符号化された音声を送信周波数で変調して電波として送信してもよい。本変形例によれば、構成の自由度を拡大できる。
【符号の説明】
【0048】
10 検査装置、 20 無線装置、 30 処理部、 32 スピーカ、 34 制御部、 36 表示部、 38 操作部、 40 I/F、 42 マイク、 50 復調部、 52 音声受信部、 54 データ受信部、 56 スイッチ部、 58 音声符号化部、 60 データ記録部、 62 音声復号部、 64 音声送信部、 66 データ送信部、 68 変調部、 80 中継装置、 100 検査システム。