(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】BIMモデル検査支援方法及びBIMモデル検査支援システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20220117BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20220117BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20220117BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2017222967
(22)【出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-09-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月25日 日経BP社発行 「日経アーキテクチュア2017年5月25日号、第30~53項」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】池田 英美
(72)【発明者】
【氏名】檜山 知則
(72)【発明者】
【氏名】千田 尚一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】田垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 淳
(72)【発明者】
【氏名】松下 文
(72)【発明者】
【氏名】橘 浩二
(72)【発明者】
【氏名】今井 敬
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】得能 昌憲
(72)【発明者】
【氏名】端野 篤隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 努
(72)【発明者】
【氏名】中村 好影
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知浩
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123233(JP,A)
【文献】特開2014-010676(JP,A)
【文献】特開2014-174618(JP,A)
【文献】特開2014-170320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を表す3次元モデルである複数のBIM(Building Information Modeling)モデルを取得し、
取得された複数の前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させるBIMモデル検査支援方法
であって、
前記コンピュータは、前記検査情報を出力する際に、複数の前記BIMモデルの各々を重ね合わせて、複数の前記BIMモデルの各要素に付与された属性情報と複数の前記BIMモデルの各要素の形状を表す形状情報とに基づいて、前記検査情報を出力し、
前記検査情報は、複数の前記BIMモデルの各々が表す建物の外部に予め設定された、重ね合わせに関する基準情報を重ね合わせることにより生成され、
複数の前記BIMモデルには、建築主の要求事項に関する情報から定まる、建物の各要素の形状を表す形状情報及び建物の各要素の属性情報を付与した前記BIMモデルである基本要件モデルが含まれる、
BIMモデル検査支援方法。
【請求項2】
複数の職能の各々が使用する複数のクライアント端末とサーバとを含むBIMモデル検査支援システムであって、
複数の前記クライアント端末は、前記職能により作成されたBIMモデルをサーバへ送信し、
前記サーバは、複数の前記クライアント端末から送信された前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、
BIMモデル検査支援システム
であって、
複数の前記クライアント端末の各々は、設計職能及び施工職能の少なくとも一方によって操作され、
前記サーバは、前記設計職能及び前記施工職能とは異なる職能であって、かつ前記BIMモデルの重ね合わせ作業を担当する職能である重ね合わせ職能によって操作され、
前記サーバは、前記重ね合わせ職能から入力された、重ね合わせの実行に関する操作情報を受け付けた場合に、複数の前記クライアント端末から送信された前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、
BIMモデル検査支援システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記重ね合わせ職能から入力された前記操作情報を受け付ける毎に、前記検査情報を出力することを繰り返す、
請求項2に記載のBIMモデル検査支援システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記検査情報を出力する際に、複数の前記BIMモデルの各々を重ね合わせて、複数の前記BIMモデルの各要素に付与された属性情報と複数の前記BIMモデルの各要素の形状を表す形状情報とに基づいて、前記検査情報を出力し、
前記検査情報は、複数の前記BIMモデルの各々が表す建物の外部に予め設定された、重ね合わせに関する基準情報を重ね合わせることにより生成され、
複数の前記BIMモデルには、建築主の要求事項に関する情報から定まる、建物の各要素の形状を表す形状情報及び建物の各要素の属性情報を付与した前記BIMモデルである基本要件モデルが含まれる、
請求項2又は請求項3に記載のBIMモデル検査支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BIMモデル検査支援方法及びBIMモデル検査支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木構造物又は建築物を表す三次元モデルデータを管理する情報管理装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。この情報管理装置は、他のコンピュータから三次元モデルデータが表すものに関する電子ファイルを受信した場合、当該電子ファイルのファイル名、当該電子ファイルの内容に含まれる文字列、及び他のコンピュータにおける当該電子ファイルの保存場所を示す階層構造を記憶装置に記憶させる。そして、情報管理装置は、要求、及びユーザによって入力される検索条件に基づくキーワードを用いて、記憶装置に記憶されたファイル名、文字列、及び階層構造を検索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の設計作業等は、複数の職能によって行われることが多い。複数の職能によって建物の設計作業が行われる場合、複数の職能の各々によって作成されたBIM(Building Information Modeling)モデルが存在する。
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、複数のBIMモデルが整合しているか否かに関しては考慮されていない。そのため、複数のBIMモデルが整合しているか否かを適切に検査することができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して、建物に関係するBIMモデルが複数存在する場合に、複数のBIMモデルが整合しているか否かの検査を支援することができるBIMモデル検査支援方法及びBIMモデル検査支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のBIMモデル検査支援方法は、建物を表す3次元モデルである複数のBIM(Building Information Modeling)モデルを取得し、取得された複数の前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、処理をコンピュータに実行させるBIMモデル検査支援方法である。これにより、複数のBIMモデルが整合しているか否かの検査を適切に行うことができる。
【0008】
また、本発明のBIMモデル検査支援方法は、前記検査情報を出力する際に、複数の前記BIMモデルの各々を重ね合わせて、複数の前記BIMモデルの各要素に付与された属性情報と複数の前記BIMモデルの各要素の形状を表す形状情報とに基づいて、前記検査情報を出力するようにすることができる。これにより、複数のBIMモデルの各要素間で、整合が取れているか否かを適切に検査することができる。
【0009】
また、本発明のBIMモデル検査支援方法は、複数の前記BIMモデルの各々は、予め設定された重ね合わせに関する基準情報に基づき作成され、前記重ね合わせに関する検査情報は、前記重ね合わせに関する基準情報に基づき生成されるようにすることができる。これにより、重ね合わせが適切に実行されるため、重ね合わせに関する検査情報を適切に生成することができる。
【0010】
また、本発明のBIMモデル検査支援方法において、複数の前記BIMモデルには、建築主の要求事項に関する情報から定まる、建物の各要素の形状を表す形状情報及び建物の各要素の属性情報を付与した前記BIMモデルである基本要件モデルが含まれるようにすることができる。重ね合わせの対象であるBIMモデルに基本要件モデルが含まれることにより、複数のBIMモデルの各々が、建築主の要求事項を満たしているか否かを適切に検査することができる。
【0011】
また、本発明のBIMモデル検査支援システムは、複数の職能の各々が使用する複数のクライアント端末とサーバとを含むBIMモデル検査支援システムであって、複数の前記クライアント端末は、前記職能により作成されたBIMモデルをサーバへ送信し、前記サーバは、複数の前記クライアント端末から送信された前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、BIMモデル検査支援システムである。
【0012】
また、本発明のBIMモデル検査支援システム前記サーバは、設計職能及び施工職能とは異なる職能であって、かつ前記BIMモデルの重ね合わせ作業を担当する職能である重ね合わせ職能によって操作され、前記サーバは、前記重ね合わせ職能から入力された、重ね合わせの実行に関する操作情報を受け付けた場合に、複数の前記クライアント端末から送信された前記BIMモデルの各々を重ね合わせ、複数の前記BIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する、ようにすることができる。重ね合わせ職能が複数のBIMモデルの重ね合わせ作業を担当することにより、重ね合わせ作業を適切に実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建物に関係するBIMモデルが複数存在する場合に、複数のBIMモデルが整合しているか否かの検査を支援することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】BIMモデルを用いた設計施工計画の概念図である。
【
図2】本実施形態の重ね合わせプラットフォームの概要を説明するための図である。
【
図3】本実施形態のBIMモデル検査支援システムの概要を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係るBIMモデル検査支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るクライアント端末の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】複数のBIMモデルを重ね合わせるための基準情報の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るサーバの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本実施形態に係るBIMモデル検査支援システムの作用の一例を示すである。
【
図9】BIMモデルの作成作業と重ね合わせ作業とのフローの一例を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の実施形態の概要>
【0016】
建物の設計施工計画の際に用いられるBIM(Building Information Modeling)では、建物を表す3次元モデルであるBIMモデルがコンピュータ上に生成される。BIMを用いて設計施工計画を作成する場合、複数の職能の各々は、自らの職能に応じたBIMモデルを作成し、各BIMモデルを連携させることにより建物の設計施工計画を作成する。
【0017】
なお、BIMモデルには、建物の各要素の形状を表す形状情報と建物の各要素の属性情報とが含まれる。例えば、建物に含まれる要素である「ドア」のオブジェクトは所定の形状で表現される。また、建物に含まれる要素である「ドア」のオブジェクトに対し、オブジェクトの名称「ドア」が付与され、更に「寸法」、「材質」等の情報が属性情報として付与される。
【0018】
図1に、BIMモデルを用いた設計施工計画の概念図を示す。
図1には、各BIMモデルの一例として、建築設計モデル、構造設計モデル、設備設計モデル、積算モデル、工事計画モデル、施工モデル、鉄骨モデル、設備施工モデル、及びFM(Facility Management)モデルが示されている。なお、建物の建設の際に生成されるBIMモデルは様々であり、
図1の例では、上記のBIMモデルが示されている。
【0019】
図1に示される基本要件モデルは、建築主の要求事項に関する情報から定まるBIMモデルである。基本要件モデルには、建築主の要求事項に関する情報から定まる、建物の各要素の形状を表す形状情報及び建物の各要素の属性情報が付与される。
【0020】
上記
図1に示す各BIMモデルは、各職能によって作成される。例えば、BIMモデルの一例としての建築設計モデルは、建築設計担当の職能によって作成される。また、各職能が自らのBIMモデルを作成する際には、基本要件モデルを参照する。各職能が基本要件モデルを参照してBIMモデルを作成することにより、建築主の要求事項が満たされた複数のBIMモデルが生成される。
【0021】
各職能によって作成された複数のBIMモデルは、各BIMモデル間で整合が取れているか否かを確認する必要がある。例えば、建築設計モデルと構造設計モデルとの間において天井内に梁が納まるか否かの確認、建築設計モデルと設備設計モデルとの間において天井内に配管設備が納まるか否かの確認、及び構造設計モデルと設備設計モデルとの間において配管が柱に当たってしまうか否かの確認等を行う必要がある。
【0022】
そこで、本実施形態のBIMモデル検査支援システムは、複数のBIMモデルの各々を重ね合わせ、複数のBIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する。本実施形態では、複数のクライアント端末とサーバとを含むBIMモデル検査支援システムによって、BIMモデルの重ね合わせプラットフォームが実現される。
【0023】
図2に、本実施形態の重ね合わせプラットフォームの概念図を示す。
図2の例では、敷地モデル、基本計画モデル、基本設計モデル、詳細設計モデル(建築)、詳細設計モデル(構造)、詳細設計モデル(設備)、施工モデル(躯体)、施工モデル(外装)、施工モデル(設備)、施工モデル(内装)、竣工モデル、FMモデルが示されている。
【0024】
図2に示されるように、各BIMモデルが生成される際には、基本要件モデルが参照される。各職能が基本要件モデルを参照することにより、建築主の要求事項を満たしたBIMモデルが作成される。そして、BIMモデル検査支援システムによる重ね合わせプラットフォームにおいて、各BIMモデルの重ね合わせが行われる。これにより、各BIMモデルが互いに整合しているか否かを適切に検査することができる。
【0025】
図3に、本実施形態のBIMモデル検査支援システムの概念図を示す。
図3に示されるように、本実施形態では、複数の職能によって作成された複数のBIMモデルを、重ね合わせ職能が操作するサーバへ送信する。そして、重ね合わせ職能が操作するサーバによって、複数のBIMモデルを重ね合わせ、重ね合わせに関する検査情報を、各職能のクライアント端末へ送信する。重ね合わせに関する検査情報には、例えば、
図3に示されるように、各BIMモデル間で不整合が発生している箇所Kが含まれる。
【0026】
これにより、設計及び施工等の各職能は、自らが作成したBIMモデルが、他のBIMモデル(基本要件モデルを含む)と整合しているか否かを確認することができる。そのため、建物の設計施工計画を適切かつ効率的に作成することができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
<BIMモデル検査支援システムのシステム構成>
【0029】
図4に示すように、BIMモデル検査支援システム10は、複数の職能の各々が使用する複数のクライアント端末12とサーバ14とを備えている。複数のクライアント端末12は、複数の職能に対応しており、各職能は自身のクライアント端末12を用いてBIMモデルを作成する。
【0030】
複数のクライアント端末12とサーバ14とは、例えばインターネットやLANなどのネットワーク16を介して接続されている。
【0031】
[クライアント端末]
【0032】
図5は、クライアント端末12の構成の一例を示すブロック図である。クライアント端末12は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んで構成されている。クライアント端末12は、機能的には、
図5に示すように、操作部120、コンピュータ122、及び表示部130を含んだ構成で表すことができる。
【0033】
操作部120は、職能であるユーザから入力された操作情報を受け付ける。操作部120は、例えばキーボードやマウス等である。具体的には、各職能は、建物の設計情報を操作部120により入力する。
【0034】
コンピュータ122は、機能的には、
図5に示すように、BIMモデル生成部124、BIMモデル記憶部126、及び送受信部128を備えている。
【0035】
BIMモデル生成部124は、操作部120によって受け付けた設計情報に基づいて、BIMモデルを生成する。
【0036】
各職能は、操作部120による操作に応じてBIMモデル生成部124を操作し、自らの職能に応じたBIMモデルを作成する。なお、各職能は、BIMモデルを作成する際に、重ね合わせに関する基準情報の一例として、BIMモデルの空間内に基準立方体を予め設定する。
【0037】
複数のBIMモデルを重ね合わせる際には、各BIMモデルの座標系を合わせる必要がある。そのため、本実施形態では、複数のBIMモデルの各々を作成する際に、BIMモデル毎に基準立方体を設定する。
【0038】
図6に、重ね合わせに関する基準立方体を説明するための説明図を示す。各職能は、例えば
図6に示されるように、BIMモデルBMが作成される空間の特定箇所に、重ね合わせに関する基準情報に対応する立方体を設定する。BIMモデルBMが作成される空間は3次元であるため、例えば、1m×1m×1mの立方体が基準情報として設定される。例えば、
図6に示されるように、A通りと1通りとの交点から10m反原点側で1FLが頂点となる1mの立方体が、複数のBIMモデルの空間毎に予め設定される。
【0039】
BIMモデル記憶部126には、職能の操作に応じてBIMモデル生成部124によって生成されたBIMモデルが格納される。
【0040】
送受信部128は、サーバ14との間で情報の送受信を行う。具体的には、送受信部128は、操作部120に入力された操作に応じて、BIMモデル記憶部126に格納されたBIMモデルを、ネットワーク16を介してサーバ14へ送信する。また、送受信部128は、サーバ14から送信された検査情報を受信する。検査情報については後述する。
【0041】
[サーバ]
【0042】
サーバ14は、CPU、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含むサーバで構成されている。サーバ14は、機能的には、
図7に示すように、操作部140、コンピュータ141、及び表示部150を含んだ構成で表すことができる。
【0043】
サーバ14は、設計職能及び施工職能とは異なる職能であって、かつ複数のBIMモデルの重ね合わせ作業を担当する職能である重ね合わせ職能によって操作される。
【0044】
操作部140は、重ね合わせ職能から入力された操作情報を受け付ける。コンピュータ141は、操作部140により受け付けた操作情報に応じて、各処理を実行する。
【0045】
コンピュータ141は、機能的には、
図7に示すように、送受信部142、重ね合わせ部144、及び複数モデル記憶部146を備えている。
【0046】
送受信部142は、クライアント端末12との間で情報の送受信を行う。具体的には、送受信部142は、各職能の操作によってクライアント端末12から送信された複数のBIMモデルを、ネットワーク16を介して受信する。そして、送受信部142は、受信した複数のBIMモデルを複数モデル記憶部146に格納する。
【0047】
複数モデル記憶部146には、複数のクライアント端末12から送信された複数のBIMモデルが格納される。なお、基本要件モデルについても複数モデル記憶部146に格納される。
【0048】
基本要件モデルについては、例えば、複数モデル記憶部146に格納され、各職能のクライアント端末12から送信された情報に応じて、逐次更新される。具体的には、各職能は、自らの職能に応じたBIMモデルを作成する際に、建築主の要求事項を表す情報から定まる建物の情報を基本要件モデルへ反映する。これにより、基本要件モデルが生成される。また、各職能は、基本要件モデルから得られる各情報を参照して自らの職能に応じたBIMモデルを生成する。
【0049】
重ね合わせ部144は、操作部140によって受け付けられた操作情報を取得する。そして、重ね合わせ職能によって入力された操作情報が重ね合わせの実行に関する操作情報である場合に、複数モデル記憶部146に格納された複数のBIMモデルを取得する。そして、重ね合わせ部144は、取得した複数のBIMモデルの各々を重ね合わせ、複数のBIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する。
【0050】
具体的には、重ね合わせ部144は、複数のBIMモデルに含まれる基準立方体を一致させるように、複数のBIMモデルの各々を重ね合わせる。これにより、複数のBIMモデルを適切に重ね合わせることができるため、各BIMモデル間での不整合及び干渉している箇所等が判明する。
【0051】
なお、各BIMモデルに含まれる各要素(オブジェクト)には属性情報が付与されている。オブジェクトに付与された属性情報には、オブジェクトが何であるかを示す属性情報が含まれている。例えば、オブジェクトが柱であるのか、配管であるのかといった情報が属性情報として付与されている。そのため、重ね合わせ部144は、複数のBIMモデルの各オブジェクトに付与された属性情報と複数のBIMモデルの各オブジェクトの形状を表す形状情報とに基づいて、検査情報を生成する。例えば、オブジェクトである柱と配管とが干渉しているか否かについての検査情報が生成される。
【0052】
なお、本実施形態においては、複数のBIMモデルが重ね合わされる際には、各々のBIMモデルを統合することなく、複数のBIMモデルを単に重ね合わせる。
【0053】
例えば、複数のBIMモデルが整合しているか否かを検査する場合、複数のBIMモデルを統合させ、1つの統合モデルとすることが考えられる。この場合には、統合モデルにおいて干渉等の箇所が特定され、その特定箇所の修正作業が行われる。
【0054】
しかし、複数のBIMモデルは各職能によって作成されるため常に変化する。そのため、統合モデルを修正する間にも、各職能によって各BIMモデルは更新されてしまう。このため、複数のBIMモデルから統合モデルを生成した後、統合モデルを修正することは適切ではない。
【0055】
そこで、本実施形態では、複数のBIMモデルを重ね合わせる際には、各々のBIMモデルを統合することなく単に重ね合わせ、重ね合わせに関する検査情報を生成する。これにより、各職能によって各BIMモデルが更新される場合であっても、複数のBIMモデルの検査を適切に行うことができる。
【0056】
そして、重ね合わせ部144は、送受信部142を介して、重ね合わせに関する検査情報を各クライアント端末12へ送信する。
【0057】
表示部150は、コンピュータ141から出力される情報を、例えば、サーバ14のユーザである重ね合わせ職能に対し表示する。例えば、表示部150は、操作部140により受け付けた操作情報に応じて、重ね合わせに関する検査情報を表示させること等ができる。
【0058】
<BIMモデル検査支援システムの作用>
【0059】
次に、
図8を参照して、BIMモデル検査支援システム10の作用を説明する。
【0060】
まず、ステップS10において、各クライアント端末12が各職能によって操作される。そして、操作部120は、職能から入力された設計情報を受け付ける。BIMモデル生成部124は、操作部120によって受け付けた設計情報に基づいて、BIMモデルを作成する。そして、BIMモデルはBIMモデル記憶部126に格納される。
【0061】
ステップS12において、各クライアント端末12の操作部120は、職能から入力された、BIMモデル送信の指示情報を受け付けると、送受信部128は、上記ステップS10でBIMモデル記憶部126に格納されたBIMモデルを、サーバ14へ送信する。
【0062】
ステップS14において、サーバ14の送受信部142は、上記ステップS12で各クライアント端末12から送信されたBIMモデルの各々を受信する。そして、サーバ14の送受信部142は、各クライアント端末12から送信されたBIMモデルの各々を複数モデル記憶部146に格納する。
【0063】
ステップS16において、重ね合わせ部144は、操作部140によって重ね合わせの実行に関する操作情報が入力されると、複数モデル記憶部146に格納された複数のBIMモデルを取得する。
【0064】
ステップS18において、重ね合わせ部144は、上記ステップS16で取得された複数のBIMモデルに含まれる、重ね合わせに関する基準立方体を一致させるように、複数のBIMモデルの各々を重ね合わせる。そして、重ね合わせ部144は、上記ステップS16で取得された複数のBIMモデルの各オブジェクトに付与された属性情報と複数のBIMモデルの各オブジェクトの形状を表す形状情報とに基づいて、検査情報を生成する。
【0065】
ステップS20において、送受信部142は、上記ステップS18で生成された検査情報を、各クライアント端末12へ送信する。
【0066】
ステップS22において、各クライアント端末12の送受信部128は、上記ステップS20でサーバ14から送信された検査情報を受信する。
【0067】
ステップS24において、各クライアント端末12の表示部130は、上記ステップS22で受信した検査情報を表示する。
【0068】
各職能は、表示部130に表示された検査情報を確認し、自らのBIMモデルの修正等を行う。
【0069】
以上詳細に説明したように、本実施形態では、建物を表す3次元モデルである複数のBIMモデルを取得し、取得された複数のBIMモデルの各々を重ね合わせ、複数のBIMモデルの重ね合わせに関する検査情報を出力する。これにより、建物に関係するBIMモデルが複数存在する場合に、複数のBIMモデルが整合しているか否かの検査を適切に支援することができる。
【0070】
また、本実施形態では、複数のBIMモデルの各オブジェクトに付与された属性情報と複数のBIMモデルの各オブジェクトの形状を表す形状情報とに基づいて、検査情報を生成する。これにより、複数のBIMモデルのオブジェクト間で、整合が取れているか否かを適切に検査することができる。例えば、構造物の一例である柱と設備の一例である配管とが干渉しているか否かを検査することができる。
【0071】
また、本実施形態では、複数のBIMモデルの各々は、予め設定された重ね合わせに関する基準立方体に基づき作成される。そして、検査情報は、重ね合わせに関する基準立方体に基づき生成される。具体的には、複数のBIMモデルの各々に存在する、重ね合わせに関する基準立方体を一致させることにより、複数のBIMモデル間の検査情報が生成される。重ね合わせに関する基準立方体を一致させるように複数のBIMモデルを重ね合わせることにより、重ね合わせを適切に実行することができる。これにより、重ね合わせに関する検査情報を適切に生成することができる。
【0072】
また、本実施形態では、複数のBIMモデルには、建築主の要求事項に関する情報から定まる、建物の各オブジェクトの形状を表す形状情報及び建物の各オブジェクトの属性情報を付与したBIMモデルである基本要件モデルが含まれる。重ね合わせの対象であるBIMモデルに基本要件モデルが含まれることにより、複数のBIMモデルの各々が、建築主の要求事項を満たしているか否かを適切に検査することができる。
【0073】
また、本実施形態では、サーバ14は、設計職能及び施工職能とは異なる職能であって、かつBIMモデルの重ね合わせ作業を担当する職能である重ね合わせ職能によって操作される。重ね合わせ職能が複数のBIMモデルの重ね合わせ作業を担当することにより、重ね合わせ作業を効率的に実施することができる。また、重ね合わせ職能が独立の立場で重ね合わせ作業を行い、重ね合わせ結果である検査情報を、設計職能及び施工職能を含む関係者全員に周知することができる。また、重ね合わせ職能が重ね合わせ作業を行うことにより、各BIMモデルの作成及び修正に関する責任は各職能とすることができる。
【0074】
また、重ね合わせ職能による重ね合わせ作業は、
図9に示されるように、1つの建物の計画・設計・施工・FMの各段階において繰り返し行うようにすることもできる。
【0075】
この場合には、まず、ステップS1において、設計及び施工等の各職能は各クライアント端末12を操作して、自らの職能に応じたBIMモデルを作成する。そして、設計及び施工等の各職能は、各クライアント端末12を操作して、自ら作成したBIMモデルをサーバ14へ送信する。
【0076】
次に、ステップK1において、重ね合わせ職能は、サーバ14を操作して、各職能によって作成された複数のBIMモデルの各々を重ね合わせて、重ね合わせに関する検査情報を生成する。そして、サーバ14は、重ね合わせに関する検査情報を各クライアント端末12へ送信する。また、ステップK2において、重ね合わせ職能は、重ね合わせに関する検査情報に基づき、各BIMモデル間での干渉チェックを行う。
【0077】
ステップSK1において、重ね合わせ職能は、重ね合わせ検討会を設定する。この重ね合わせ検討会には、設計及び施工等の各職能と重ね合わせ職能とが参加し、重ね合わせに関する検査情報に基づき、各BIMモデルについての検討を行う。
【0078】
ステップK3において、重ね合わせ職能は、ステップSK1での重ね合わせ検討会での検討結果に基づき、検討結果をまとめたレポートを作成し各職能に対して配布する。
【0079】
ステップS2において、設計及び施工等の各職能は、ステップK3で配布されたレポートに基づき、自らのBIMモデルの干渉箇所を確認し、BIMモデルへフィードバックを行う。そして、ステップS1において、設計及び施工等の各職能は、自らのBIMモデルの作成を継続する。
【0080】
図9に示されるサイクルは、1つの建物の計画・設計・施工・FMの各段階において定期的に実施される。これにより、複数のBIMモデル間で整合していない箇所を早期に発見することができ、各BIMモデルを適切に修正することができる。このため、複数のBIMモデルをコンカレント(並列)に作成することができる。また、例えば、設計段階であっても施工モデルを早期に着手することできる。
【0081】
また、打合せ時間の短縮、施工図の修正時間の削減、工数の削減をすることができ、かつ手戻り・手直しを低減することができる。また、意思決定及び合意形成をスムーズに進めることができる。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態では、重ね合わせ職能によってサーバ14が操作される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、重ね合わせ職能は、1つのクライアント端末12を操作し、サーバ14は、重ね合わせ職能が操作するクライアント端末12から送信された操作情報に応じて、複数のBIMモデルの重ね合わせを行い、検査情報を出力するようにしてもよい。
【0084】
また、重ね合わせ部144は、操作部140によって受け付けられた操作情報に応じて、重ね合わせの対象となるBIMモデルを設定するようにしてもよい。例えば、重ね合わせ部144は、複数のBIMモデルのうち、構造設計モデル及び設備設計モデルを設定し、構造設計モデルと設備設計モデルとの間の整合性を確認するようにしてもよい。
【0085】
また、重ね合わせ部144は、操作部140によって受け付けられた操作情報に応じて、重ね合わせの対象となる特定箇所を設定するようにしてもよい。例えば、重ね合わせ部144は、BIMモデルの1階部分を設定し、その箇所について、複数のBIMモデルを重ね合わせ、重ね合わせに関する検査情報を生成するようにしてもよい。
【0086】
また、重ね合わせ部144は、重ね合わせの対象となる建物の要素であるオブジェクトを設定するようにしてもよい。例えば、重ね合わせ部144は、配管と柱とを重ね合わせの対象のオブジェクトとして設定し、そのオブジェクト間について、重ね合わせに関する検査情報を生成するようにしてもよい。これにより、配管と柱との干渉を取り敢えずチェックしたい場合に、簡易にチェックすることができる。
【符号の説明】
【0087】
10 BIMモデル検査支援システム
12 クライアント端末
14 サーバ
16 ネットワーク
120,140 操作部
122,141 コンピュータ
124 BIMモデル生成部
126 BIMモデル記憶部
128,142 送受信部
130,150 表示部
144 重ね合わせ部
146 複数モデル記憶部