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特許7005895内部抵抗算出装置、内部抵抗算出方法および内部抵抗算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】内部抵抗算出装置、内部抵抗算出方法および内部抵抗算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20220117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220117BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220117BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
B60R16/04 W
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2016240873
(22)【出願日】2016-12-13
(65)【公開番号】P2018096803
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126538
【弁理士】
【氏名又は名称】嶺 直道
(72)【発明者】
【氏名】片岡 智美
(72)【発明者】
【氏名】武智 裕章
(72)【発明者】
【氏名】松浦 貴宏
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-178953(JP,A)
【文献】特開2010-230654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0063094(US,A1)
【文献】特開2011-128010(JP,A)
【文献】特開2013-172544(JP,A)
【文献】特開2007-033320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H01M 10/42
H02J 7/00
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
複数のタイミングで前記二次電池の総電圧を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、前記電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と
を備える内部抵抗算出装置。
【請求項2】
さらに、
エンジンの起動タイミングに関する情報を取得するエンジン情報取得部を備え、
前記内部抵抗算出部は、前記所定のタイミングとして、前記エンジン情報取得部が取得した前記エンジンの起動タイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記内部抵抗を算出する
請求項1に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項3】
前記総電圧取得部は、前記電流を計測した周期内における複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、当該電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出する
請求項1に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項4】
前記総電圧取得部は、前記電流を計測した周期よりも前の周期で計測した前記総電圧と、前記電流を計測した周期内で計測した前記総電圧とに基づいて、当該電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出する
請求項1に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項5】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
複数のタイミングで前記二次電池の電流を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出する電流計測部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が算出した前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と
を備える内部抵抗算出装置。
【請求項6】
前記電流計測部は、前記総電圧取得部が前記総電圧を計測した周期内における複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出する
請求項5に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項7】
前記電流計測部は、前記総電圧取得部が前記総電圧を計測した周期よりも前の周期で計測した前記電流と、当該総電圧を計測した周期内で計測した前記電流とに基づいて、前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出する
請求項5に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項8】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部と、
前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧を計測するための配線経路に生じる異常を検知する異常検知部と
を備える内部抵抗算出装置。
【請求項9】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部とを備え、
前記総電圧取得部は、前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧を補正する
内部抵抗算出装置。
【請求項10】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、
前記二次電池の電流を計測するステップと、
各セルの電圧を計測するステップと、
複数のタイミングで前記二次電池の総電圧を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、前記電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出することにより、当該総電圧を取得するステップと、
所定のタイミングに従って、計測された前記電流と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出するステップと
を含む内部抵抗算出方法。
【請求項11】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、
各セルの電圧を計測するステップと、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得するステップと、
複数のタイミングで前記二次電池の電流を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出するステップと、
所定のタイミングに従って、算出された前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出するステップと
を含む内部抵抗算出方法。
【請求項12】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、
前記二次電池の電流を計測するステップと、
各セルの電圧を計測するステップと、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得するステップと、
所定のタイミングに従って、計測された前記電流と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出するステップと、
計測された前記各セルの電圧と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出するステップと、
算出された前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧を計測するための配線経路に生じる異常を検知するステップと
を含む内部抵抗算出方法。
【請求項13】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、
前記二次電池の電流を計測するステップと、
各セルの電圧を計測するステップと、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得するステップと、
所定のタイミングに従って、計測された前記電流と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出するステップと、
計測された前記各セルの電圧と、取得された前記総電圧とに基づいて、前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出するステップとを含み、
前記総電圧を取得するステップにおいて、算出された前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧を補正する
内部抵抗算出方法。
【請求項14】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、
コンピュータを、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
複数のタイミングで前記二次電池の総電圧を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、前記電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と
して機能させるための内部抵抗算出プログラム。
【請求項15】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、
コンピュータを、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
複数のタイミングで前記二次電池の電流を計測し、前記複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出する電流計測部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が算出した前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と
して機能させるための内部抵抗算出プログラム。
【請求項16】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、
コンピュータを、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部と、
前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧を計測するための配線経路に生じる異常を検知する異常検知部と
して機能させるための内部抵抗算出プログラム。
【請求項17】
複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、
コンピュータを、
前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、
各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、
前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、
所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部として機能させ、
前記総電圧取得部は、前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧を補正する
内部抵抗算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置、内部抵抗算出方法および内部抵抗算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド自動車)及びEV(Electric Vehicle:電気自動車)等の車両が普及しつつある。HEV及びEVは二次電池を搭載している。このような車両の走行に伴って、二次電池の充電と放電の切り替えが繰り返される。過放電又は過充電を行うと二次電池を劣化させることになるため、二次電池の充電量を把握しながら充放電を制御する必要がある。また、二次電池の劣化を判定するためには、二次電池の内部抵抗を正確に把握する必要がある。
【0003】
特許文献1には、車両に搭載された二次電池について、短期間に大きな電流変化および電圧変化が生じるエンジン起動時に計測した電流・電圧特性を用いて内部抵抗を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-216018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の内部抵抗を算出するためには、二次電池の両端電圧である総電圧を計測する必要がある。しかし、一般には、内部抵抗算出時には、二次電池を構成するセルごとにセル電圧を計測し、計測したセル電圧を合計することにより二次電池の総電圧を算出している。このため、エンジン起動時のような電流および電圧が急激に変化する場合には、最初のセル電圧計測時から最後のセル電圧計測時までの間に電流および電圧が変化してしまう。つまり、同一のタイミングでセル電圧を計測することができず、内部抵抗の推定精度が低くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、電流および電圧が急激に変化する場合であっても、高精度に内部抵抗を算出することのできる内部抵抗算出装置、内部抵抗算出方法および内部抵抗算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明の一実施態様に係る内部抵抗算出装置は、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部とを備える。
【0008】
(11)本発明の他の一実施態様に係る内部抵抗算出方法は、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、前記二次電池の電流を計測する電流計測ステップと、各セルの電圧を計測するセル電圧計測ステップと、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得ステップと、所定のタイミングに従って、前記電流計測ステップにおいて計測された前記電流と、前記総電圧取得ステップにおいてが取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップとを含む。
【0009】
(12)本発明の他の一実施態様に係る内部抵抗算出プログラムは、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、コンピュータを、前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部として機能させる。
【0010】
なお、内部抵抗算出プログラムを、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。また、本発明は、内部抵抗算出装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、内部抵抗算出装置を含むシステムとして実現したりすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、電流および電圧が急激に変化する場合であっても、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態の内部抵抗算出装置としての電池監視装置を搭載した車両の要部の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施の形態の内部抵抗算出装置としての電池監視装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】配線抵抗算出部による配線抵抗の算出方法を説明するための図である。
図4】配線経路に異常がない場合の配線抵抗の時間変化を示す図である。
図5】配線経路に異常がある場合の配線抵抗の時間変化を示す図である。
図6】二次電池ユニットの電流波形の一例を示す図である。
図7図6に示す電流波形の時間軸を拡大した二次電池ユニットの電流波形の一例を示す図である。
図8】二次電池ユニットの総電圧波形の一例を示す図である。
図9図8に示す総電圧波形の時間軸を拡大した二次電池ユニットの総電圧波形の一例を示す図である。
図10】状況に応じた電圧計測手段の使い分けについて説明するための図である。
図11】セル電圧計測部が算出するセル電圧を用いて内部抵抗を算出するのに要する時間と、総電圧取得部が算出する総電圧を用いて内部抵抗を算出するのに要する時間とを比較するための図である。
図12】実施の形態1に係る電池監視装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】配線抵抗による異常検知処理の処理手順を示すフローチャートである。
図14】実施の形態2に係る総電圧取得部による総電圧の取得処理について説明するための図である。
図15】実施の形態3に係る総電圧取得部による総電圧の取得処理について説明するための図である。
図16】実施の形態4に係る電流計測部による電流の取得処理について説明するための図である。
図17】実施の形態5に係る電流計測部による電流の取得処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本願発明の実施形態の概要]
最初に本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本発明の一実施形態に係る内部抵抗算出装置は、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出装置であって、前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部とを備える。
【0014】
この構成によると、総電圧取得部が取得する総電圧は、セル電圧の合計値ではなく、二次電池の総電圧の計測値である。電圧が急激に変化するタイミングにおいて、セル電圧を順次計測した場合には、同時にセル電圧を計測できないことにより、これらのセル電圧を合計しても正確な総電圧とはならない場合がある。しかし、総電圧を計測することにより、正確な二次電池の総電圧を取得することができる。また、内部抵抗算出部は、総電圧取得部が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および電圧が急激に変化する場合には、総電圧取得部が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出することにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0015】
(2)好ましくは、上述の内部抵抗算出装置は、さらに、エンジンの起動タイミングに関する情報を取得するエンジン情報取得部を備え、前記内部抵抗算出部は、前記所定のタイミングとして、前記エンジン情報取得部が取得した前記エンジンの起動タイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記内部抵抗を算出する。
【0016】
この構成によると、内部抵抗算出部は、エンジンの起動タイミングを取得した場合に、総電圧取得部が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出することができる。また、大電流が流れるエンジンの起動タイミングの計測値を用いることで、電流および総電圧の計測誤差の影響を少なくした上で、内部抵抗を算出することができる。よって、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0017】
(3)さらに好ましくは、前記総電圧取得部は、さらに、複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、前記電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出し、前記内部抵抗算出部は、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が算出した当該電流の計測タイミングにおける前記総電圧とに基づいて、前記内部抵抗を算出する。
【0018】
電流計測部による電流計測と、総電圧取得部による総電圧計測とを並列実行できない場合には、異なる計測タイミングで電流と総電圧とが計測される。このため、この電流と総電圧とを用いて内部抵抗を算出すると、正確な値にならない場合がある。しかし、この構成によると、複数のタイミングで計測した総電圧から、電流の計測タイミングにおける総電圧を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0019】
(4)例えば、前記総電圧取得部は、前記電流を計測した周期内における複数のタイミングで計測した前記総電圧に基づいて、当該電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出してもよい。
【0020】
この構成によると、時間的に接近した複数のタイミングで計測した総電圧に基づいて、総電圧を補正することができる。このため、電流の計測タイミングにおける総電圧を高精度に算出することができる。
【0021】
(5)また、前記総電圧取得部は、前記電流を計測した周期よりも前の周期で計測した前記総電圧と、前記電流を計測した周期内で計測した前記総電圧とに基づいて、当該電流の計測タイミングにおける前記総電圧を算出してもよい。
【0022】
この構成によると、前の周期で計測した総電圧を用いて、現在の周期で計測した総電圧を補正することができる。このため、総電圧の補正のために、同一周期内で総電圧を複数回計測する必要がなくなる。これにより、総電圧の計測負荷を増加させることなく、電流の計測タイミングにおける総電圧を高速に算出することができる。
【0023】
(6)また、前記電流計測部は、さらに、複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出し、前記内部抵抗算出部は、前記電流計測部が算出した前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記内部抵抗を算出してもよい。
【0024】
電流計測部による電流計測と、総電圧取得部による総電圧計測とを並列実行できない場合には、異なる計測タイミングで電流と総電圧とが計測される。このため、この電流と総電圧とを用いて内部抵抗を算出すると、正確な値にならない場合がある。しかし、この構成によると、複数のタイミングで計測した電流から、総電圧の計測タイミングにおける電流を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0025】
(7)例えば、前記電流計測部は、前記総電圧取得部が前記総電圧を計測した周期内における複数のタイミングで計測した前記電流に基づいて、前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出してもよい。
【0026】
この構成によると、時間的に接近した複数のタイミングで計測した電流に基づいて、電流を補正することができる。このため、総電圧の計測タイミングにおける電流を高精度に算出することができる。
【0027】
(8)また、前記電流計測部は、前記総電圧取得部が前記総電圧を計測した周期よりも前の周期で計測した前記電流と、当該総電圧を計測した周期内で計測した前記電流とに基づいて、前記総電圧の計測タイミングにおける前記電流を算出してもよい。
【0028】
この構成によると、前の周期で計測した電流を用いて、現在の周期で計測した電流を補正することができる。このため、電流の補正のために、同一周期内で電流を複数回計測する必要がなくなる。これにより、電流の計測負荷を増加させることなく、総電圧の計測タイミングにおける電流を高速に算出することができる。
【0029】
(9)さらに好ましくは、上述の内部抵抗算出装置は、さらに、前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部と、前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧を計測するための配線経路に生じる異常を検知する異常検知部とを備える。
【0030】
配線経路に断線や接触不良等が生じた場合には配線抵抗が大きくなる。このため、この構成によると、配線抵抗に基づいて、配線経路に生じる異常を検知することができる。
【0031】
(10)また、上述の内部抵抗算出装置は、さらに、前記セル電圧計測部が計測した前記各セルの電圧と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記総電圧取得部による前記総電圧の取得経路に生じる配線抵抗を算出する配線抵抗算出部を備え、前記総電圧取得部は、前記配線抵抗算出部が算出した前記配線抵抗に基づいて、前記二次電池の総電圧を補正してもよい。
【0032】
この構成によると、総電圧の取得経路に生じる配線抵抗による電圧降下の影響を排除するように、総電圧を補正することができる。これにより、本来の総電圧を算出することができ、内部抵抗を正確に算出することができる。
【0033】
(11)本発明の他の一実施形態に係る内部抵抗算出方法は、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出方法であって、前記二次電池の電流を計測する電流計測ステップと、各セルの電圧を計測するセル電圧計測ステップと、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得ステップと、所定のタイミングに従って、前記電流計測ステップにおいて計測された前記電流と、前記総電圧取得ステップにおいてが取得された前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップとを含む。
【0034】
この構成は、上述した内部抵抗算出装置の各処理部に対応するステップを含む。このため、上述した内部抵抗算出装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0035】
(12)本発明の他の一実施形態に係る内部抵抗算出プログラムは、複数のセルが接続された二次電池の内部抵抗を算出するための内部抵抗算出プログラムであって、コンピュータを、前記二次電池の電流を計測する電流計測部と、各セルの電圧を計測するセル電圧計測部と、前記二次電池の総電圧を計測することにより、当該総電圧を取得する総電圧取得部と、所定のタイミングに従って、前記電流計測部が計測した前記電流と、前記総電圧取得部が取得した前記総電圧とに基づいて、前記二次電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部として機能させる。
【0036】
この構成によると、上述した内部抵抗算出装置の各処理部としてコンピュータを機能させることができる。このため、上述した内部抵抗算出装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0037】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲によって特定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の内部抵抗算出装置としての電池監視装置100を搭載した車両の要部の構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
図1に示すように、車両は、電池監視装置100の他に、二次電池ユニット50、リレー61、62、63、発電機(ALT)71、スタータモータ(ST)72、電池73、電気負荷74、75などを備える。
【0040】
二次電池ユニット50は、例えば、リチウムイオン電池であり、複数のセル51が直列に接続されている。二次電池ユニット50は、複数のセル51の端部に接続された電流センサ52を備える。なお、二次電池ユニット50には、図示しない温度センサが備えられていてもよい。
【0041】
電流センサ52は、例えば、シャント抵抗又はホールセンサ等で構成され、二次電池ユニット50の充電電流及び放電電流を検出する。電流センサ52は、電流検出線50cを介して検出した電流を電池監視装置100へ出力する。
【0042】
各セル51の端部と電池監視装置100とは、電池監視装置100によるセル電圧計測のために、セル電圧検出線50aにより接続されている。また、二次電池ユニット50の両端と電池監視装置100とは、電池監視装置100による二次電池ユニット50の両端電圧検出のために総電圧検出線50bにより接続されている。以下では、二次電池ユニット50の両端電圧のことを総電圧とも呼ぶ。なお、総電圧検出線50bと、二次電池ユニット50の両端のセル電圧検出線50aとを共通の信号線としてもよい。
【0043】
電池73は、例えば、鉛電池であり、車両の電気負荷74(例えば、ライト、各種モータ、各種コントローラ等)への電力供給を行うとともに、リレー63がオンした場合には、スタータモータ72を駆動するための電力供給を行う。発電機71は、車両のエンジンの回転により発電し、内部に設けられた整流回路により直流を出力して電池73を充電する。また、発電機71は、リレー61、62がオンしている場合、電池73及び二次電池ユニット50を充電する。二次電池ユニット50は、リレー61がオンした場合には、電気負荷75(例えば、エンジン系電装、オーディオ等)へ電力を供給する。なお、リレー61、62、63のオン・オフは、電池73及び二次電池ユニット50の充放電バランスや負荷の程度に応じて、供給する電力を分配すべく不図示のリレー制御部が行う。
【0044】
図2は、本実施の形態の内部抵抗算出装置としての電池監視装置100の構成の一例を示すブロック図である。電池監視装置100は、装置全体を制御する制御部10、電流計測部11、セル電圧計測部12、総電圧取得部14、内部抵抗算出部15、通信部16、配線抵抗算出部17、異常検知部18、所定の情報を記憶する記憶部19、計時のためのタイマ20などを備える。なお、電池監視装置100には、図示しない温度計測部が備えられていてもよい。
【0045】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等で構成される。
【0046】
電流計測部11は、二次電池ユニット50の電流(充電電流及び放電電流)を計測する。つまり、電流計測部11は、AD(Analog to Digital)変換器を備え、電流センサ52から電流検出線50cを介して取得した電流を、所定のサンプリング周期でデジタル値に変換し、変換したデジタル値を制御部10へ出力する。サンプリング周期は、例えば、第1サンプリング周期(例えば、10ms)及び第1サンプリング周期より短い第2サンプリング周期(例えば、1ms)とすることができる。なお、サンプリング周期10ms、1msは一例であって、かかる数値に限定されるものではない。これにより、制御部10は、第1サンプリング周期及び第2サンプリング周期で二次電池ユニット50の電流値を読み取ることができる。
【0047】
セル電圧計測部12は、セル電圧検出線50aに接続され、二次電池ユニット50の各セル51の電圧を計測する。例えば、セル電圧計測部12は、AFE(Analog Front End)を含む電圧監視用IC(Integrated Circuit)を含んで構成され、電圧監視用ICが計測した電圧を所定のサンプリング周期でデジタル値に変換し、変換したデジタル値を制御部10へ出力する。サンプリング周期は、例えば、第1サンプリング周期(例えば、10ms)とすることができる。なお、サンプリング周期10msは一例であって、かかる数値に限定されるものではない。これにより、制御部10は、第1サンプリング周期で各セル51の電圧値を読み取ることができる。
【0048】
総電圧取得部14は、二次電池ユニット50の総電圧を計測することにより、二次電池ユニット50の総電圧を取得する。例えば、総電圧取得部14は、マイコンを含んで構成され、マイコンが計測した電圧を所定のサンプリング周期でデジタル値に変換し、変換したデジタル値を制御部10へ出力する。サンプリング周期は、例えば、第1サンプリング周期より短い第2サンプリング周期(例えば、1ms)とすることができる。なお、サンプリング周期1msは一例であって、かかる数値に限定されるものではない。これにより、制御部10は、第2サンプリング周期で二次電池ユニット50の総電圧を読み取ることができる。
【0049】
内部抵抗算出部15は、所定のタイミングに従って、電流計測部11が計測した電流と、総電圧取得部14が取得した二次電池ユニット50の総電圧とに基づいて、二次電池ユニット50の内部抵抗を算出する。つまり、内部抵抗算出部15は、エンジンの起動タイミング前のあるタイミングにおいてセル電圧計測部12が計測した各セル51の電圧の合計値である総電圧V0および電流計測部11が計測した電流I0と、エンジンの起動タイミング後の電流がピークとなるタイミングにおける総電圧取得部14が取得したピーク総電圧Vpおよび電流計測部11が計測したピーク電流Ipとに基づいて、二次電池ユニット50の内部抵抗を算出する。
【0050】
二次電池ユニット50は、電解液バルクの抵抗Rs、界面電荷移動抵抗Rc、電気二重層キャパシタンスC、拡散インピーダンスZwで構成される等価回路で表すことができる。そして、二次電池ユニット50の内部抵抗は、電解液バルクの抵抗Rs及び界面電荷移動抵抗Rcが主要部分を占める。一方、交流インピーダンス法を用いて二次電池ユニット50のインピーダンスを複数の周波数で計測した値をプロットしたインピーダンススペクトルにおいて、周波数を高周波数から低周波数へ変化させた場合、ある境界周波数域で、拡散インピーダンスZwが増加し、二次電池ユニット50のインピーダンスが増加する。
【0051】
充放電の切替前後の2点間の電圧、電流から求められる直線の傾きの絶対値が、二次電池ユニット50の内部抵抗を示す。そこで、内部抵抗Rは、例えば、R=(Vp-V0)/(Ip-I0)で算出する。
【0052】
通信部16は、エンジン情報取得部としての機能を有し、エンジンの起動タイミングに関する情報を取得する。例えば、通信部16は、車両のイグニッションスイッチをオンしたタイミング情報を、車内LANを介してECU(Electronic Control Unit)やジャンクションボックスなどから取得してもよい。
【0053】
配線抵抗算出部17は、セル電圧計測部12が計測した各セル51の電圧と、総電圧取得部14が取得した二次電池ユニット50の総電圧とに基づいて、総電圧取得部14による総電圧の取得経路(セル電圧検出線50aを含む)に生じる配線抵抗を算出する。
【0054】
図3は、配線抵抗算出部17による配線抵抗の算出方法を説明するための図である。セル電圧計測部12が計測したセル51の電圧をVck(k=1~n)とし、総電圧取得部14が計測した二次電池ユニット50の総電圧をVmとする。また、二次電池ユニット50を流れる電流をiとする。また、二次電池ユニット50の一方の端部からセル電圧計測部12までの総電圧検出線50bに生じる配線抵抗をrh1とし、二次電池ユニット50の他方の端部からセル電圧計測部12までの総電圧検出線50bに生じる配線抵抗をrh2とする。ここでいう配線抵抗rh1およびrh2は、総電圧検出線50bに生じる配線抵抗に加え、総電圧取得部14および二次電池ユニット50を接続する接続部品の接触抵抗を含むものとする。
【0055】
配線抵抗算出部17は、総電圧取得部14による総電圧の取得経路に生じる配線抵抗rhを以下の式1により算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
異常検知部18は、配線抵抗算出部17が算出した配線抵抗に基づいて、総電圧取得部14による総電圧を計測するための配線経路に生じる異常を検知する。例えば、総電圧検出線50bが断線したり、接触部品の接触不良が生じたりした場合には、配線抵抗の値が大きくなる。このため、異常検知部18は、配線抵抗算出部17が算出した配線抵抗と予め定められた異常判定閾値とに基づいて、異常検知を行う。
【0058】
次に、異常検知部18による異常検知について具体的に説明する。図4は、配線経路に異常がない場合の配線抵抗の時間変化を示す図である。図5は、配線経路に異常がある場合の配線抵抗の時間変化を示す図である。図4および図5の横軸は時間を示し、縦軸は配線抵抗算出部17が算出した配線抵抗の値を示す。図4は、配線経路に異常がない場合の配線抵抗の変化を示し、図5は、配線経路に異常が生じた場合の配線抵抗の変化を示す。
【0059】
図4に示すように、配線経路に異常がない場合には、配線抵抗の値は異常判定閾値未満となる。一方、図5に示すように、配線経路に異常が生じた場合には、配線抵抗の値は異常判定閾値以上となり、その状態が継続する。このため、例えば、異常検知部18は、配線抵抗が異常判定閾値以上となったことを所定回数(例えば、10回)以上連続して検知した場合に、異常を検知する。または、異常検知部18は、配線抵抗が異常判定閾値以上となったことを所定時間(例えば、100msec)以上連続して検知した場合に、異常を検知する。
【0060】
図6は、二次電池ユニット50の電流波形の一例を示す図である。図6において、横軸は時間を示し、縦軸は電流を示す。電流が正の場合は放電電流を示し、電流が負の場合は充電電流を示す。図7は、図6に示す電流波形の時間軸を拡大した二次電池ユニット50の電流波形の一例を示す図である。図7は、エンジン起動時の前後の電流波形を示している。なお、図7の横軸および縦軸の意味は、図6と同様である。図6および図7に示すように、エンジン起動時には、二次電池ユニット50から大電流が放電され、二次電池ユニット50の放電電流が急峻に変化していることが分かる。
【0061】
図8は、二次電池ユニット50の総電圧波形の一例を示す図である。図8において、横軸は図6と同じ時間を示し、縦軸は二次電池ユニット50の総電圧を示す。図9は、図8に示す総電圧波形の時間軸を拡大した二次電池ユニット50の総電圧波形の一例を示す図である。図9は、エンジン起動時の前後の総電圧波形を示している。なお、図9において、横軸は図7と同じ時間を示し、縦軸は二次電池ユニット50の総電圧を示す。図8および図9に示すように、エンジン起動時には、二次電池ユニット50の電圧が急峻に降下する。
【0062】
エンジンの起動時間は、電流および電圧の変化が大きいため、高精度に内部抵抗を求めることができる。その一方、電流および電圧の変化が急峻であるため、総電圧計測に必要な時間の要求が厳しい。
【0063】
図10は、状況に応じた電圧計測手段の使い分けについて説明するための図である。
【0064】
電圧の計測手段には、図2に示したようにセル電圧計測部12と総電圧取得部14とが存在する。電池監視装置100は、状況に応じてこれらを使い分ける。つまり、図10に示すように、エンジン起動時は、電圧計測の要求精度が低いが、電圧計測の要求時間が小さい。このため、内部抵抗算出処理の処理周期は、例えば、1msecとされる。一方、エンジン起動時以外の通常時においては、電圧計測の要求精度は高いが、電圧計測の要求時間は比較的大きい。このため、内部抵抗算出処理の処理周期は、例えば、10msecとされる。内部抵抗の算出に必要な二次電池ユニット50の総電圧を計測するためには、セル電圧計測部12は、セル51の個数分だけ電圧を計測しなければならない。一方、総電圧取得部14は、1回で二次電池ユニット50の総電圧を計測することができる。その一方、通常は、セル電圧計測部12の方が、計測精度が高い。そのため、エンジン起動時には、総電圧取得部14により高速に二次電池ユニット50の総電圧を計測し、通常時には、セル電圧計測部12により高精度に各セル51の電圧を計測する。
【0065】
図11は、セル電圧計測部12が算出するセル電圧を用いて内部抵抗を算出するのに要する時間と、総電圧取得部14が算出する総電圧を用いて内部抵抗を算出するのに要する時間とを比較するための図である。
【0066】
図11の(A)に示すように、セル電圧計測部12が算出するセル電圧を用いて内部抵抗を算出する場合には、まず、電流計測部11が電流を計測し、その後、セル電圧計測部12が、セル51ごとにセル電圧を計測する。内部抵抗算出部15が、セル電圧を合計することにより二次電池ユニット50の総電圧を算出し、計測電流と、算出した総電流に基づいて内部抵抗を算出し、算出結果を制御部10に送信する。ただし、電流計測とセル電圧計測の順序は逆であってもよい。
【0067】
一方、図11の(B)に示すように、総電圧取得部14が算出する総電圧を用いて内部抵抗を算出する場合には、まず、電流計測部11が電流を計測し、その後、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧を計測する。次に、内部抵抗算出部15が、計測した電流および総電圧を用いて内部抵抗を算出し、算出結果を制御部10に送信する。ただし、電流計測とセル電圧計測の順序は逆であってもよい。
【0068】
図11の(A)に示すように、セル電圧計測部12を用いた場合には、セル電圧を複数回計測しなければならないのに対し、図11の(B)に示すように、総電圧取得部14を用いた場合には、総電圧を1回計測するのみで良い。このため、総電圧を取得するのに要する時間を大幅に短縮することができる。また、図11(A)に示すように、セル電圧計測部12を用いた場合には、各セル51の電圧の計測タイミングが異なるため、これらのセル電圧を合計しても正確な総電圧とはならない場合がある。特に、エンジン起動時など、セル電圧が急峻に変化するタイミングにおいては、正確な総電圧を算出することが困難である。このため、エンジン起動時には、図11の(B)に示すように、総電圧取得部14を用いて総電圧を1回で計測した方が、正確に総電圧を算出することができる。
【0069】
図12は、実施の形態1に係る電池監視装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0070】
制御部10は、電流および電圧のサンプリング周期を10msecに設定する(S2)。また、制御部10は、電流計測部11による電流の計測レンジを200Aに設定する(S4)。これにより、電流計測部11は、±200Aの範囲内で放電電流を計測することができる。
【0071】
電流計測部11は、10msec間隔で二次電池ユニット50の電流を計測し、セル電圧計測部12は、10msec間隔で、二次電池ユニット50を構成する複数のセル51の電圧を、セル51ごとに計測する(S6)。
【0072】
制御部10は、通信部16がエンジンの起動タイミングに関する情報を取得することにより、エンジンの起動を検知したか否かを判断する(S8)。エンジンの起動が検知されるまで、ステップS6の処理が繰り返し実行される。
【0073】
エンジンの起動が検知されると(S8でYES)、制御部10は、最後に計測した電流を基準電流I0として記憶部19に記憶する。また、制御部10は、最後に計測した複数のセル51の電圧の合計値である基準総電圧V0を記憶部19に記憶する(S10)。
【0074】
制御部10は、電流および電圧のサンプリング周期を1msecに設定する(S12)。また、制御部10は、電流計測部11による電流の計測レンジを1600Aに設定する(S14)。これにより、電流計測部11は、±1600Aの範囲内で放電電流を計測することができる。ただし、計測レンジが200Aの場合と比較すると、検出電流の分解能は低くなる。
【0075】
電流計測部11は、1msec間隔で二次電池ユニット50の電流を計測し、総電圧取得部14は、1msec間隔で、二次電池ユニット50の総電圧を計測する(S16)。計測した電流および総電圧は、一定期間、記憶部19に保持される。
【0076】
制御部10は、電流計測部11が計測した電流がピークに到達したか否かを判定する(S20)。つまり、制御部10は、電流計測部11が計測した電流が予め定められたエンジン起動判定閾値以上であり、かつ、今回計測した電流が、前回計測した電流よりも小さくなっているか否かを判定する。エンジン起動判定閾値は、例えば、150Aとすることができる。ただし、エンジン起動判定閾値は150Aに限定されるものではなく、それ以外の値であってもよい。図7を参照して、例えば、電流31は、エンジン起動判定閾値以上であり、かつ、1つ前のサンプリング周期で計測された電流30よりも小さくなっている。このため、電流31が上記条件を満たすため、1つ前のサンプリング周期で計測された電流30がピーク電流Ipとされる。また、ピーク電流と同一のサンプリング周期で計測された図9に示す総電圧40がピーク総電圧Vpとされる。
【0077】
内部抵抗算出部15は、基準電流I0と、基準総電圧V0と、ピーク電流Ipと、ピーク総電圧Vpとを記憶部19から読み出すことにより取得する(S22)。
【0078】
内部抵抗算出部15は、読み出したこれらの値を用いて、内部抵抗Rを算出する(S24)。内部抵抗Rは、例えば、R=(Vp-V0)/(Ip-I0)で算出する。
【0079】
制御部10は、電流および電圧のサンプリング周期を10msecに設定する(S26)。
【0080】
電流計測部11は、10msec間隔で二次電池ユニット50の電流を計測し、セル電圧計測部12は、10msec間隔で、二次電池ユニット50を構成する複数のセル51の電圧を、セル51ごとに計測する(S28)。
【0081】
制御部10は、計測した電流の値が安定状態判定閾値(例えば、120~200Aの間の値(例.150A))を下回ったか否かを判定する(S30)。なお、安定状態判定閾値の値は一例であり、その他の範囲から選択されてもよい。
【0082】
電流値が安定状態判定閾値を下回っていなければ(S30でNO)、ステップS28に戻る。電流値が安定状態判定閾値を下回っていれば(S30でYES)、エンジン起動時に急激に増加した電流が安定したと判断できる。このため、制御部10は、電流の計測レンジを200Aに設定直す(S32)。
【0083】
その後、は、10msec間隔で二次電池ユニット50の電流を計測し、セル電圧計測部12は、10msec間隔で、二次電池ユニット50を構成する複数のセル51の電圧を、セル51ごとに計測する(S34)。
【0084】
以上説明した処理の流れにより、エンジン起動時のピーク電流Ipおよびピーク総電圧Vpを用いて、二次電池ユニット50の内部抵抗を正確に算出することができる。
【0085】
図13は、配線抵抗による異常検知処理の処理手順を示すフローチャートである。図13に示す処理は、図12に示す内部抵抗算出処理と並列に実行される。
【0086】
セル電圧計測部12は、二次電池ユニット50を構成する複数のセル51の電圧を、セル51ごとに計測する(S51)。
総電圧取得部14は、二次電池ユニット50の総電圧を計測する(S52)。
【0087】
配線抵抗算出部17は、上述した式1に従い、総電圧取得部14による総電圧の取得経路に生じる配線抵抗rを算出する(S53)。
【0088】
異常検知部18は、配線抵抗rが異常判定閾値以上となったことを所定回数(例えば、10回)以上連続して検知したか否かを判定する(S54)。判定の結果が否定的であれば(S54でNO)、ステップS51に戻る。
【0089】
判定の結果が肯定的であれば(S54でYES)、制御部10は、通信部16を介して、二次電池ユニット50に充放電の停止の指示信号を送信する(S55)。これにより、二次電池ユニット50は、充放電を停止させる。
【0090】
以上説明したように、実施の形態1によると、総電圧取得部14が取得する総電圧は、セル電圧の合計値ではなく、二次電池ユニット50の総電圧の計測値である。エンジンの起動時のように電流および電圧が急激に変化するタイミングにおいて、セル電圧を順次計測した場合には、同時にセル電圧を計測できないことにより、これらのセル電圧を合計しても正確な総電圧とはならない場合がある。しかし、総電圧取得部14が総電圧を計測することにより、正確な二次電池の総電圧を取得することができる。また、内部抵抗算出部15は、総電圧取得部14が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および電圧が急激に変化する場合には、総電圧取得部14が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出することにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0091】
また、内部抵抗算出部15は、通信部16がエンジンの起動タイミングを取得した場合に、総電圧取得部14が取得した総電圧の計測値に基づいて、内部抵抗を算出している。このように、大電流が流れるエンジンの起動タイミングの計測値を用いることで、電流および総電圧の計測誤差の影響を少なくした上で、内部抵抗を算出することができる。よって、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0092】
また、異常検知部18は、配線抵抗算出部17が算出した、総電圧取得部14による総電圧の取得経路に生じる配線抵抗に基づいて、配線経路の異常を検知している。配線経路に断線や接触不良等が生じた場合には配線抵抗が大きくなる。このため、異常検知部18によると、配線経路に生じる異常を正確に検知することができる。
【0093】
なお、総電圧取得部14は、配線抵抗算出部17が算出した配線抵抗に基づいて、計測した二次電池ユニット50の総電圧を補正してもよい。例えば、配線抵抗をrh、総電圧の計測値をVm、電流の計測値をIm、総電圧の補正後の値をVcとした場合、総電圧取得部14は、以下の式2により総電圧Vmを総電圧Vcに補正する。これにより、配線抵抗rhによる電圧降下が無かった場合の総電圧Vcを算出することができる。
Vc=Vm+Im×rh …(式2)
【0094】
つまり、総電圧の取得経路に生じる配線抵抗による電圧降下の影響を排除するように、総電圧を補正することができる。これにより、本来の総電圧を算出することができ、内部抵抗を正確に算出することができる。
【0095】
また、総電圧取得部14は、エンジン起動時以外のタイミングで予め求めておいた配線抵抗rhを用いて、総電圧を補正するようにしてもよい。これにより、エンジン起動時の計測時間を増やすことなく、電圧計測精度を向上させることができる。
【0096】
(実施の形態2)
以下の実施の形態では、実施の形態1と同様の構成要素については同一の参照符号を付す。その機能も同様であるため、適宜説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0097】
実施の形態1では、総電圧取得部14が二次電池ユニット50の総電圧を計測することにより、電流および電流が急峻に変化した場合であっても正確に総電圧を計測することができる。
【0098】
しかし、図11の(B)に示すように、電流と総電圧とをシーケンシャルにしか計測することができず、電流の計測タイミングと総電圧の計測タイミングとが一致しない場合がある。異なる計測タイミングで計測された電流と総電圧を用いて二次電池ユニット50の内部抵抗を算出すると、計測タイミングの違いにより算出誤差が生じる場合がある。そこで、実施の形態2では、電流と総電圧とがシーケンシャルにしか計測できない場合であっても、同じ計測タイミングでの電流および総電圧を用いて内部抵抗を算出する方法について説明する。
【0099】
図14は、実施の形態2に係る総電圧取得部14による総電圧の取得処理について説明するための図である。
【0100】
例えば、内部抵抗算出処理の処理周期nにおいて、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V1(n)を計測する。その後、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A(n)を計測する。その後、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V2(n)を計測する。つまり、1処理周期内において、電流計測の前後でそれぞれ総電圧を計測する。
【0101】
総電圧取得部14は、以下の式3により電流A(n)の計測タイミングにおける二次電池ユニット50の総電圧Vfix(n)を算出する。
Vfix(n)=(V1(n)+V2(n))/2 …(式3)
【0102】
これは、総電圧が局所的には直線的に変化すると仮定することで、電流A(n)の計測タイミングにおける総電圧を算出するものである。
【0103】
内部抵抗算出部15は、電流計測部11が計測した電流A(n)と、総電圧取得部14が算出した電流A(n)の計測タイミングにおける総電圧Vfix(n)とに基づいて、内部抵抗を算出する。例えば、内部抵抗算出部15は、内部抵抗Rを、R=(Vfix(n)-V0)/(A(n)-I0)で算出する。ここで、I0およびV0は、それぞれ、基準電流および基準総電圧である。
【0104】
なお、処理周期(n+1)などの他の処理周期においても同様の処理が実行される。
【0105】
実施の形態2によると、複数のタイミングで計測した総電圧から、電流の計測タイミングにおける総電圧を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0106】
また、時間的に接近した複数のタイミングで計測した総電圧に基づいて、総電圧を補正することができる。このため、電流の計測タイミングにおける総電圧を高精度に算出することができる。
【0107】
(実施の形態3)
実施の形態3では、同じ計測タイミングでの電流および総電圧を用いて内部抵抗を算出する他の方法について説明する。
【0108】
図15は、実施の形態3に係る総電圧取得部14による総電圧の取得処理について説明するための図である。
【0109】
例えば、内部抵抗算出処理の処理周期nにおいて、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A(n)を計測する。その後、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V(n)を計測する。内部抵抗算出処理の処理周期(n+1)において、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A(n+1)を計測する。その後、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V(n+1)を計測する。
【0110】
総電圧取得部14は、以下の式4により電流A(n+1)の計測タイミングにおける二次電池ユニット50の総電圧Vfix(n+1)を算出する。ここで、総電圧V(n)および総電圧V(n+1)の計測タイミングを、それぞれ、Tv(n)およびTv(n+1)とし、電流A(n+1)の計測タイミングを、Ta(n+1)とする。
【数2】
【0111】
これは、総電圧が局所的には直線的に変化すると仮定することで、電流A(n+1)の計測タイミングにおける総電圧を算出するものである。
【0112】
内部抵抗算出部15は、電流計測部11が計測した電流A(n+1)と、総電圧取得部14が算出した電流A(n+1)の取得タイミングにおける総電圧Vfix(n+1)とに基づいて、内部抵抗を算出する。例えば、内部抵抗算出部15は、内部抵抗Rを、R=(Vfix(n+1)-V0)/(A(n+1)-I0)で算出する。ここで、I0およびV0は、それぞれ、基準電流および基準総電圧である。
なお、他の処理周期においても同様の処理が実行される。
【0113】
実施の形態3によると、複数のタイミングで計測した総電圧から、電流の計測タイミングにおける総電圧を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0114】
また、前の処理周期で計測した総電圧を用いて、現在の処理周期で計測した総電圧を補正することができる。このため、総電圧の補正のために、同一処理周期内で総電圧を複数回計測する必要がなくなる。これにより、総電圧の計測負荷を増加させることなく、電流の計測タイミングにおける総電圧を高速に算出することができる。
【0115】
(実施の形態4)
実施の形態4では、同じ計測タイミングでの電流および総電圧を用いて内部抵抗を算出する他の方法について説明する。
【0116】
図16は、実施の形態4に係る電流計測部11による電流の取得処理について説明するための図である。
【0117】
例えば、内部抵抗算出処理の処理周期nにおいて、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A1(n)を計測する。その後、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V(n)を計測する。その後、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A2(n)を計測する。つまり、1処理周期内において、総電圧計測の前後でそれぞれ電流を計測する。
【0118】
電流計測部11は、以下の式5により総電圧V(n)の計測タイミングにおける二次電池ユニット50の電流Afix(n)を算出する。
Afix(n)=(A1(n)+A2(n))/2 …(式5)
【0119】
これは、電流が局所的には直線的に変化すると仮定することで、総電圧V(n)の計測タイミングにおける電流を算出するものである。
【0120】
内部抵抗算出部15は、電流計測部11が算出した総電圧v(n)の計測タイミングにおける電流Afix(n)と、総電圧取得部14が計測した総電圧V(n)とに基づいて、内部抵抗を算出する。例えば、内部抵抗算出部15は、内部抵抗Rを、R=(V(n)-V0)/(Afix(n)-I0)で算出する。ここで、I0およびV0は、それぞれ、基準電流および基準総電圧である。
【0121】
なお、処理周期(n+1)などの他の処理周期においても同様の処理が実行される。
【0122】
実施の形態4によると、複数のタイミングで計測した電流から、総電圧の計測タイミングにおける電流を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0123】
また、時間的に接近した複数のタイミングで計測した電流に基づいて、電流を補正することができる。このため、総電圧の計測タイミングにおける電流を高精度に算出することができる。
【0124】
(実施の形態5)
実施の形態5では、同じ計測タイミングでの電流および総電圧を用いて内部抵抗を算出する他の方法について説明する。
【0125】
図17は、実施の形態5に係る電流計測部11による電流の取得処理について説明するための図である。
【0126】
例えば、内部抵抗算出処理の処理周期nにおいて、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V(n)を計測する。その後、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A(n)を計測する。内部抵抗算出処理の処理周期(n+1)において、総電圧取得部14が、二次電池ユニット50の総電圧V(n+1)を計測する。その後、電流計測部11が、二次電池ユニット50の電流A(n+1)を計測する。
【0127】
電流計測部11は、以下の式6により総電圧V(n+1)の計測タイミングにおける二次電池ユニット50の電流Afix(n+1)を算出する。ここで、電流A(n)および電流A(n+1)の計測タイミングを、それぞれ、Ta(n)およびTa(n+1)とし、総電圧V(n+1)の計測タイミングを、Tv(n+1)とする。
【数3】
【0128】
これは、電流が局所的には直線的に変化すると仮定することで、総電圧V(n+1)の計測タイミングにおける電流を算出するものである。
【0129】
内部抵抗算出部15は、電流計測部11が算出した総電圧v(n)の計測タイミングにおける電流Afix(n+1)と、総電圧取得部14が計測した総電圧V(n+1)とに基づいて、内部抵抗を算出する。例えば、内部抵抗算出部15は、内部抵抗Rを、R=(V(n+1)-V0)/(Afix(n+1)-I0)で算出する。ここで、I0およびV0は、それぞれ、基準電流および基準総電圧である。
なお、他の処理周期においても同様の処理が実行される。
【0130】
実施の形態5によると、複数のタイミングで計測した電流から、総電圧の計測タイミングにおける電流を算出し、当該計測タイミングにおける電流および総電圧に基づいて、内部抵抗を算出することができる。このため、電流および総電圧の計測タイミングの違いにより生じる内部抵抗の算出誤差を減少させることができる。これにより、高精度に内部抵抗を算出することができる。
【0131】
また、前の周期で計測した電流を用いて、現在の周期で計測した電流を補正することができる。このため、電流の補正のために、同一周期内で電流を複数回計測する必要がなくなる。これにより、電流の計測負荷を増加させることなく、総電圧の計測タイミングにおける電流を高速に算出することができる。
【0132】
以上、本発明の実施の形態に係る電池監視装置100について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0133】
たとえば、上述の実施の形態では、二次電池ユニット50を構成するセル51が直列接続されているものとしたが、セル51が直並列されていてもよい。
【0134】
上記の電池監視装置100は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成されるコンピュータとして構成されてもよい。RAMまたはROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、電池監視装置100は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0135】
さらに、電池監視装置100を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSIから構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMまたはROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0136】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、本発明は、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよい。
【0137】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムをコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体、例えば、HDD、CD-ROM、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。
さらに、上記実施の形態および上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
10 制御部
11 電流計測部
12 セル電圧計測部
14 総電圧取得部
15 内部抵抗算出部
16 通信部
17 配線抵抗算出部
18 異常検知部
19 記憶部
20 タイマ
50 二次電池ユニット
50a セル電圧検出線
50b 総電圧検出線
50c 電流検出線
51 セル
52 電流センサ
61~63 リレー
71 発電機
72 スタータモータ
73 電池
74、75 電気負荷
100 電池監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17