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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/50 20210101AFI20220117BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20220117BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20220117BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20220117BHJP
【FI】
H01M50/50 101
H01M50/583
H01G11/10
H01M50/557
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017000746
(22)【出願日】2017-01-05
(65)【公開番号】P2018110083
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-03-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲つる▼田 彰吾
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081875(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128335(WO,A1)
【文献】特開2008-041393(JP,A)
【文献】特許第5607684(JP,B2)
【文献】特開2015-187910(JP,A)
【文献】特開2002-289160(JP,A)
【文献】特開2003-168409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01G 11/10
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、前記蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、
前記導電部材は、前記蓄電素子側の端部である第一端部を含む第一導電部材と、前記少なくとも1つの電気部品側の端部である第二端部を含む第二導電部材であって、前記第一導電部材と異なる電気抵抗率の材料で形成された第二導電部材とを有し、
前記第一導電部材及び前記第二導電部材の接合部は、前記導電部材における前記第一端部と前記第二端部との間の部分である中間部に配置されており、
前記導電部材における電流経路上において、前記接合部と前記少なくとも1つの電気部品と間の距離は、前記接合部と前記蓄電素子との間の距離よりも長い、
蓄電装置。
【請求項2】
前記接合部において、前記第一導電部材と前記第二導電部材との間には、前記第一導電部材及び前記第二導電部材それぞれのイオン化傾向の間のイオン化傾向を有する材料で形成された第三導電部材が介在している、
請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第三導電部材は、前記第一導電部材または前記第二導電部材に被膜したメッキ層である、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第三導電部材は、板材である、
請求項2記載の蓄電装置。
【請求項5】
電極体及び前記電極体を収容する容器を備える蓄電素子と、前記蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、
前記導電部材は、前記蓄電素子側の端部である第一端部を含む第一導電部材と、前記少なくとも1つの電気部品側の端部である第二端部を含む第二導電部材であって、前記第一導電部材と異なる電気抵抗率の材料で形成された第二導電部材とを有し、
前記第一導電部材及び前記第二導電部材の接合部であって、前記容器の外部に位置する接合部は、前記導電部材における前記第一端部と前記第二端部との間の部分である中間部に配置されており、
さらに、前記容器の外部における、前記接合部の側方の位置において、前記第一導電部材及び前記第二導電部材に挟まれて配置された封止部材を備える、
蓄電装置。
【請求項6】
前記第一導電部材と前記第二導電部材とはクリンチかしめによって接合されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば二次電池の端子と導電部材との接合部分に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。この二次電池では、正極側電流経路部材および負極側電流経路部材のいずれか一方には、異種金属同士を接合した変換部が設けられる。正負極外部端子の各接合部の表面には、いずれもバスバー等の導電部材と同種金属材料が露出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-123946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の二次電池のように、電流経路上において異種金属同士が接合された部分(接合部)を設けた場合、抵抗等の物性の違いに起因して接合部が発熱する場合がある。この点に関し、例えば上記従来の二次電池では、異種金属同士の接合部が、二次電池のケースに固定された電極端子に設けられているため、二次電池が接合部からの熱を受けやすい。このことは、例えば二次電池の性能または安全性の観点から好ましくない。
【0005】
また、二次電池等の蓄電素子から延びる電流経路上には、他の蓄電素子だけでなく、ヒューズもしくはリレー等の電気部品、または、複数の電気部品を含む電気回路などが配置される場合もある。そのため、異種金属同士の接合部の熱によって、1以上の電気部品を劣化させる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、蓄電素子と、蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、信頼性の高い蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、前記導電部材は、前記蓄電素子側の端部である第一端部を含む第一導電部材と、前記少なくとも1つの電気部品側の端部である第二端部を含む第二導電部材であって、前記第一導電部材と異なる物性の材料で形成された第二導電部材とを有し、前記第一導電部材及び前記第二導電部材の接合部は、前記第一端部と前記第二端部との間の中間部に配置されている。
【0008】
この構成によれば、例えば、第一導電部材の材料として、蓄電素子の電極端子との接合性がよい材料を選択し、かつ、第二導電部材の材料として、第一導電部材よりも抵抗が小さな材料を選択するなど、蓄電装置の信頼性を向上させるための設計が容易である。
【0009】
また、接合部で発生する熱から、例えば制御、監視、もしくは装置保護を目的とする電気・電子回路または電気部品を保護することができ、かつ、接合部で発生する熱の、蓄電素子への伝導量を抑制することができる。
【0010】
このように、本態様の蓄電装置は、蓄電素子と、蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、信頼性の高い蓄電装置である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置では、前記導電部材における電流経路上において、前記接合部と前記少なくとも1つの電気部品と間の距離は、前記接合部と前記蓄電素子との間の距離よりも長い、としてもよい。
【0012】
この構成によれば、導電部材に接続された少なくとも1つの電気部品を、接合部で発生する熱から、より的確に保護することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置の前記接合部において、前記第一導電部材と前記第二導電部材との間には、前記第一導電部材及び前記第二導電部材のいずれとも異なる物性の材料で形成された第三導電部材が介在している、としてもよい。
【0014】
この構成によれば、例えば、第一導電部材の材料のイオン化傾向と、第二導電部材の材料のイオン化傾向との間のイオン化傾向を有する材料で、第三導電部材を形成することで、接合部において接触している材料間におけるイオン化傾向の差を縮小することができる。その結果、例えば、接合部における腐食が抑制される。
【0015】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記第三導電部材は、前記第一導電部材または前記第二導電部材に被膜したメッキ層である、としてもよい。
【0016】
この構成によれば、例えば、第三導電部材が薄く形成されるため、接合部の厚みが、第三導電部材を含むことによって増加することが抑制される。また、第三導電部材が、第一導電部材または第二導電部材と一体化されるため、接合部の形成のための作業(溶接、かしめ、または締結など)の際において、第三導電部材の位置決めまたは仮押さえ等を行うことなく当該作業を適切に実行することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記第三導電部材は、板材である、としてもよい。
【0018】
この構成によれば、例えば、第三導電部材が、第一導電部材または第二導電部材にメッキ層として配置されている場合とは異なり、接合時の振動等に起因する剥がれ落ちの問題が生じない。また、例えば、一枚の金属板を切断することで複数の第三導電部材を得ることができる。このことは、例えば第三導電部材の品質の統一または管理の観点から有利である。
【0019】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置は、さらに、前記接合部の側方の位置において、前記第一導電部材及び前記第二導電部材に挟まれて配置された封止部材を備える、としてもよい。
【0020】
この構成によれば、封止部材が存在することで、接合部に外気または水分が到達する可能性が低下する。その結果、例えば、異種金属同士が接合された部分である接合部の腐食が抑制される。
【0021】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記第一導電部材と前記第二導電部材とはクリンチかしめによって接合されている、としてもよい。
【0022】
この構成によれば、例えば、ボルト及びナット、またはリベット等の他の部材を用いずに、第一導電部材と第二導電部材とを接合することができる。また、第一導電部材及び第二導電部材を機械的に噛合わせるため、例えば溶接の際に発生する熱の問題が生じない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄電素子と、蓄電素子及び少なくとも1つの電気部品を電気的に接続する導電部材とを備える蓄電装置であって、信頼性の高い蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図4】実施の形態に係る導電部材の構成を示す断面図である。
図5】実施の形態の具体例1に係る導電部材の構成を示す断面拡大図である。
図6】実施の形態の具体例2に係る導電部材の構成を示す断面拡大図である。
図7】実施の形態の具体例3に係る導電部材の構成を示す断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、以下の実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造方法における各工程、各工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0026】
また、以下の説明及び図面中において、複数の蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、当該容器の厚さ方向をX軸方向と定義する。また、1つの蓄電素子における電極端子の並び方向、または、蓄電素子の容器の短側面の対向方向をY軸方向と定義する。また、蓄電装置の外装体本体と蓋体との並び方向、蓄電素子の容器本体と容器蓋部との並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向やZ軸方向についても同様である。
【0027】
(実施の形態)
まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置10を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。なお、図2では、蓄電素子ユニット380の正極側の電流経路が点線で概念的に図示されており、蓄電素子ユニット380の負極側の電流経路が一点鎖線で概念的に図示されている。
【0028】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置である。例えば、蓄電装置10は、電力貯蔵用途や電源用途などに使用される電池モジュールである。具体的には、蓄電装置10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械などの移動体の駆動用またはエンジン始動用のバッテリ等として用いられる。
【0029】
図1及び図2に示すように、蓄電装置10は、蓋体100及び外装体本体200からなる外装体11と、外装体11内方に収容される複数の蓄電素子300及び複数のバスバー400とを備えている。なお、外装体11の内方には、バスバーフレーム等の他の要素が配置されていてもよい。
【0030】
外装体11は、蓄電装置10の外装体を構成する矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体11は、複数の蓄電素子300及びバスバー400等の外方に配置され、これら蓄電素子300等を所定の位置に配置し、衝撃などから保護する。また、外装体11は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはABS樹脂等の絶縁材料により構成されている。外装体11は、これにより、蓄電素子300等が外部の金属部材などに接触することを回避する。
【0031】
蓋体100は、外装体本体200の開口を閉塞する扁平な矩形状の部材であり、正極外部端子110と負極外部端子120とが設けられている。蓄電装置10は、この正極外部端子110と負極外部端子120とを介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。また、外装体本体200は、開口が形成された有底矩形筒状のハウジングである。
【0032】
蓄電素子300は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子300は、扁平な直方体形状(角型)の形状を有しており、本実施の形態では、8個の蓄電素子300がX軸方向に配列されている。なお、蓄電素子300の形状や、配列される蓄電素子300の個数は限定されない。また、蓄電素子300は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよく、さらに、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。この蓄電素子300の構成の詳細な説明については、後述する。
【0033】
バスバー400は、複数の蓄電素子300上に配置され、複数の蓄電素子300の電極端子同士を電気的に接続する矩形状の板状部材である。本実施の形態では、バスバー400は、アルミニウム合金により形成されている。
【0034】
また、本実施の形態では、バスバー400は、蓄電素子300を2個ずつ並列に接続して4セットの蓄電素子群を構成し、当該4セットの蓄電素子群を直列に接続する。このように接続された複数の蓄電素子300を1つの蓄電素子ユニット380とした場合、蓄電素子ユニット380の正極(X軸方向プラス側に配置された2個の蓄電素子300の正極端子(後述の正極端子320))は、正極外部端子110と電気的に接続されている。具体的には、本実施の形態では、蓄電素子ユニット380の正極は、導電部材500及び保護回路800等を介して正極外部端子110と電気的に接続されている。
【0035】
また、蓄電素子ユニット380の負極(X軸方向マイナス側に配置された2個の蓄電素子300の負極端子(後述の負極端子330))は、導電部材550等を介して負極外部端子120と電気的に接続されている。
【0036】
なお、複数の蓄電素子300の接続形態は、図2に示すものに限定されず、例えば、隣り合う2つの蓄電素子300の異極同士がバスバーで接続されることで、8個全てが直列に接続されてもよい。
【0037】
本実施の形態において、導電部材500は第一導電部材510と第二導電部材520とを含む。第一導電部材510の一端には蓄電素子300(図2では2つの蓄電素子300)が接続され、第二導電部材520の一端には、保護回路800が接続されている。また、第一導電部材510の他端と第二導電部材520の他端とは接合されている。本実施の形態では、第一導電部材510と第二導電部材520とは、板厚方向に接合されている。
【0038】
また、第一導電部材510と第二導電部材520とは、これらの間に第三導電部材600が介在した状態で接合されている。負極側の導電部材550も同様に、第一導電部材560と第二導電部材570とが第三導電部材600が介在した状態で、板厚方向に接合されている。
【0039】
保護回路800には、例えばヒューズが内蔵されており、保護回路800に通常の範囲を超える大電流が流れた場合に、ヒューズが溶断することで保護回路800を含む電流経路が遮断される。つまり、蓄電装置10において、短絡等に起因して通常ではない大きさの電流が流れた場合、蓄電装置10からの放電及び蓄電装置10への充電が停止される。なお、保護回路800は、第二導電部材520と電気的に接続される「少なくとも1つの電気部品」の一例であるが、保護回路800が有するヒューズ等の回路部品が、「少なくとも1つの電気部品」であるということもできる。
【0040】
なお、第一導電部材510(560)と第二導電部材520(570)との接合は、溶接、かしめ、締結など各種の手法が採用し得る。第一導電部材510及び第二導電部材520を有する導電部材500に関する詳細については、図4図7を用いて後述する。
【0041】
次に、蓄電素子300の構成について、詳細に説明する。図3は、実施の形態に係る蓄電素子300の斜視図である。なお、図3では、蓄電素子300の容器310を透視して、蓄電素子300の内部が図示されている。
【0042】
図3に示すように、蓄電素子300は、容器310と、正極端子320と、負極端子330とを備えている。また、容器310内方には、電極体340、正極集電体350及び負極集電体360が配置されている。なお、容器310の内方には、電解液(非水電解質)も封入されているが、図示は省略する。また、上記の構成要素の他、正極端子320、負極端子330、正極集電体350及び負極集電体360と容器310との間にガスケットが配置されていてもよいし、電極体340と容器310との間にスペーサが配置されていてもよい。
【0043】
容器310は、容器本体311と容器蓋部312とを有する。具体的には、容器310は、図3におけるZ軸方向マイナス側に底面部315、X軸方向両側の側面に長側面部314、Y軸方向両側の側面に短側面部313、及び、Z軸方向プラス側に容器蓋部312を有する直方体形状(角型)の容器である。つまり、容器310は、底面部315と2つの長側面部314と2つの短側面部313とで、矩形筒状で底を備える容器本体311を構成し、容器本体311の開口を容器蓋部312が閉塞する構成となっている。
【0044】
具体的には、容器310は、電極体340等を容器本体311の内方に収容後、容器本体311と容器蓋部312とが溶接等によって接合されることで、内部を密封することができる構造を有している。なお、容器310(容器本体311及び容器蓋部312)の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能(接合可能)な金属であるのが好ましい。
【0045】
電極体340は、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)であり、正極板と負極板とセパレータとを備え、当該正極板、負極板及びセパレータがX軸方向に積層されて形成されている。具体的には、電極体340は、正極板、負極板及びセパレータが巻回軸(電極体340の中心を貫くY軸方向の仮想軸)まわりに巻回されて形成された巻回型の電極体であり、正極集電体350及び負極集電体360と電気的に接続される。
【0046】
正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極合材層が形成された電極板である。負極板は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極合材層が形成された電極板である。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、正極合材層及び負極合材層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。セパレータについても、蓄電素子300の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。
【0047】
より詳細には、電極体340は、正極板と負極板とが、セパレータを介して、巻回軸の方向(Y軸方向)に互いにずらして巻回されている。そして、正極板及び負極板は、それぞれのずらされた方向の端部に、合材層が形成されず基材層が露出した部分である合材層非形成部を有している。具体的には、電極体340は、巻回軸方向の一端(Y軸方向プラス側の端部)に、正極板の合材層非形成部が積層された正極側端部341を有している。また、同様に、電極体340は、巻回軸方向の他端(Y軸方向マイナス側の端部)に、負極板の合材層非形成部が積層された負極側端部342を有している。
【0048】
正極集電体350は、電極体340の正極板と容器310の側壁との間に配置され、正極端子320と電極体340の正極板とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。また、負極集電体360は、電極体340の負極板と容器310の側壁との間に配置され、負極端子330と電極体340の負極板とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。具体的には、正極集電体350は、電極体340の正極側端部341に溶接などによって接合され、負極集電体360は、電極体340の負極側端部342に溶接などによって接合されている。なお、正極集電体350は、正極板の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成され、負極集電体360は、負極板の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0049】
正極端子320は、正極集電体350を介して、電極体340の正極板に電気的に接続された電極端子であり、負極端子330は、負極集電体360を介して、電極体340の負極板に電気的に接続された電極端子である。具体的には、正極端子320は、例えば、正極端子320から延設されたリベット部が容器蓋部312及び正極集電体350を貫通した状態でかしめられることで、正極集電体350と機械的及び電気的に接続される。負極端子330も同様に、負極端子330から延設されたリベット部が容器蓋部312及び負極集電体360を貫通した状態でかしめられることで、負極集電体360と機械的及び電気的に接続される。
【0050】
つまり、正極端子320及び負極端子330は、電極体340に蓄えられている電気を蓄電素子300の外部空間に導出し、また、電極体340に電気を蓄えるために蓄電素子300の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。なお、正極端子320及び負極端子330の材料としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金などが採用される。本実施の形態では、正極端子320及び負極端子330は、アルミニウムで形成されている。
【0051】
ここで、正極端子320及び負極端子330がアルミニウム製である場合、バスバー400等の、正極端子320及び負極端子330の少なくとも一方と溶接される導電体も、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成される。
【0052】
具体的には、本実施の形態では、正極端子320及び負極端子330の少なくとも一方と溶接されるバスバー400並びに第一導電部材510及び560は、アルミニウムによって形成されている。すなわち、正極端子320及び負極端子330と接続される導電体の材料は、これら電極端子との溶接部分の信頼性を考慮すると、これら電極端子と同種の金属(本実施の形態ではアルミニウム)であることが有利である。
【0053】
しかし、その一方で、電気抵抗を抑制するという観点からは、導電体の材料として、例えば銅を採用することが好ましい。つまり、蓄電装置10内の電流経路における電気抵抗の大きさは、エネルギー損失の拡大及び発熱等の問題につながるため、電気抵抗は小さいことが好ましい。
【0054】
そこで、本実施の形態では、正極端子320と接続される導電部材500のうち、正極端子320と接続される第一導電部材510の材料としてアルミニウムが採用され、保護回路800と接続される第二導電部材520の材料として銅が採用される。また、負極端子330と接続される導電部材550のうち、負極端子330と接続される第一導電部材560の材料としてアルミニウムが採用され、第一導電部材560と負極外部端子120との間の電流経路の一部を形成する第二導電部材570の材料として銅が採用される。
【0055】
以下、図4図7を参照しながら、蓄電素子ユニット380の正極側に配置された導電部材500の構成の詳細及び具体例について説明する。なお、蓄電素子ユニット380の負極側に配置された導電部材550の基本的な構成は、導電部材500と共通するため、導電部材550についての説明は省略する。
【0056】
図4は、実施の形態に係る導電部材500の構成を示す断面図である。なお、図4では、導電部材500のXZ平面に平行な断面が図示されており、蓄電素子300及び保護回路800については側面が図示されている。また、導電部材500と蓄電素子300及び保護回路800それぞれとの接合は、締結、かしめ、及び溶接等の各種の手法が用いられるが、図4では、これらの接合箇所は簡易化されて(接合の態様を示さずに)図示されている。また、本実施の形態では、第一導電部材510には、蓄電素子ユニット380の正極を構成する、2つの蓄電素子300それぞれの正極端子320(例えば図2参照)が、例えばレーザ溶接によって接合される。しかし、導電部材500の構成の明確化のため、2つの蓄電素子300のうちの内側(X軸方向マイナス側)の蓄電素子300についての図示及び説明は省略する。
【0057】
図4に示すように、本実施の形態に係る蓄電装置10は、蓄電素子300と、蓄電素子300及び少なくとも1つの電気部品(本実施の形態では保護回路800)を電気的に接続する導電部材500とを備える。導電部材500は、蓄電素子300側の端部である第一端部511を含む第一導電部材510と、保護回路800側の端部である第二端部521を含む第二導電部材520とを有する。第二導電部材520は、第一導電部材510と異なる物性の材料で形成されている。第一導電部材510及び第二導電部材520の接合部580は、第一端部511と第二端部521との間の中間部に配置されている。
【0058】
この構成によれば、第一導電部材510の材料として、蓄電素子300の正極端子320との接合性がよい材料を選択し、かつ、第二導電部材520の材料として、第一導電部材510よりも抵抗が小さな材料を選択することができる。具体的には、上述のように、第一導電部材510はアルミニウムで形成され、第二導電部材520は銅で形成される。これにより、導電部材500と、アルミニウム製である正極端子320との溶接部分についての信頼性が確保され、導電部材500全体としての電気抵抗が抑制される。これにより、蓄電装置10の信頼性が向上される。
【0059】
なお、第一導電部材510の材料としてアルミニウム合金が採用され、第二導電部材520の材料として銅合金が採用されてもよい。この場合であっても、導電部材500と、アルミニウム製である正極端子320との溶接部分についての信頼性の確保、及び、導電部材500全体としての電気抵抗の抑制という効果を得ることがきる。
【0060】
また、第一導電部材510及び第二導電部材520の接合部580は、電気抵抗が互いに異なる異種金属同士が接合されている部分であるため発熱しやすい部分である。しかし、この接合部580は、蓄電素子300及び保護回路800のそれぞれから離間して配置されている。
【0061】
具体的には、第一導電部材510は、蓄電素子300の正極端子320とレーザ溶接等によって接合された第一端部511を有し、かつ、第一端部511から延設された第一延設部512を有する。接合部580は、第一延設部512の、保護回路800側(電流経路において保護回路800に近い側の意味、以下同様)の端部に設けられている。
【0062】
また、第二導電部材520は、保護回路800の回路本体部810に設けられたリード板820と接合された第二端部521を有し、かつ、第二端部521から延設された第二延設部522を有する。接合部580は、第二延設部522の、蓄電素子300側の端部に設けられている。
【0063】
つまり、接合部580は、電流経路において、第一導電部材510の蓄電素子300から遠い側の端部(第一延設部512の端部)と、第二導電部材520の保護回路800から遠い側の端部(第二延設部522の端部)とが接合された部分である。なお、導電部材500における電流経路は、第一端部511と第二端部512とを結ぶ方向であって、かつ、ともに板状の部材である導電部材510及び第二導電部材520の板厚方向に直交する方向に形成されている。
【0064】
従って、接合部580で発生する熱の、蓄電素子300への伝導量を抑制することができ、かつ、接合部580で発生する熱から、1以上の電気部品(本実施の形態では保護回路800)を保護することができる。従って、仮に接合部580が発熱した場合であっても、その熱に起因する熱暴走等の不具合の発生が抑制される。このように、本実施の形態に係る蓄電装置10は、信頼性の高い蓄電装置10である。
【0065】
また、本実施の形態では、導電部材500における電流経路上において、接合部580と、少なくとも1つの電気部品(本実施の形態では保護回路800)との間の距離L1は、接合部580と蓄電素子300との間の距離L2よりも長い。
【0066】
この構成によれば、導電部材500に接続された保護回路800を、接合部580で発生する熱から、より的確に保護することができる。
【0067】
ここで、本実施の形態に係る接合部580において、第一導電部材510と第二導電部材520との間には、第一導電部材510及び第二導電部材520のいずれとも異なる物性の材料で形成された第三導電部材600が介在している。つまり、第一導電部材510と第二導電部材520とは、図4に示すように、第三導電部材600を介して接合されている。
【0068】
本実施の形態では、第三導電部材600の材料としてニッケルが採用されている。ニッケルは、第一導電部材510の材料であるアルミニウムよりもイオン化傾向が小さく、かつ、第二導電部材520の材料である銅よりもイオン化傾向が大きい。
【0069】
従って、接合部580において、第一導電部材510と第二導電部材520とが直接的に接触している場合より、異種金属間(アルミニウム-ニッケル間、ニッケル-銅間)におけるイオン化傾向の差が小さくなる。
【0070】
その結果、接合部580において、接触している異種金属間におけるイオン化傾向が大きいことに起因する腐食(酸化)が抑制される。すなわち、接合部580において、第一導電部材510と第二導電部材520との間に第三導電部材600を介在させることで、蓄電装置10の品質または信頼性の低下が抑制される。
【0071】
また、ニッケルで形成された第三導電部材600は、アルミニウムで形成された第一導電部材510、及び、銅で形成された第二導電部材520のそれぞれと溶接しやすい。そのため、第一導電部材510と第二導電部材520との間に第三導電部材600を介在させることで、接合部580cの接合強度を向上させることができる。
【0072】
なお、第三導電部材600の材料は、ニッケルに、例えば、アルミニウム、鉄、または銅などが添加されたニッケル合金であってもよい。
【0073】
また、第三導電部材600の材料として採用される、アルミニウムよりもイオン化傾向が小さく、かつ、銅よりもイオン化傾向が大きい材料としては、ニッケルの他に、亜鉛及びクロム等がある。
【0074】
なお、第三導電部材600は、複数の部材が積層されることで形成されていても構わない。例えば、ニッケルと亜鉛などの2種の材料が積層されることで第三導電部材600が形成されていても構わないし、ニッケルの他に亜鉛とクロムなどの3種以上の材料が積層されることで第三導電部材600が形成されていても構わない。例えば、第三導電部材600において、アルミニウムで形成された第一導電部材510側から、銅で形成された第二導電部材520側に向かって、複数の部材が、イオン化傾向の順番(降順)で並んで配置されていても構わない。このように複数の層からなる第三導電部材600を、第一導電部材510と第二導電部材520との間に介在させることで、隣り合う異種金属間におけるイオン化傾向の差がより小さくなり、より効果的に腐食(酸化)が抑制される。
【0075】
また、本実施の形態では、第三導電部材600は、例えば図2に示すように、板材である。これにより、例えば、第三導電部材600が、第一導電部材510または第二導電部材520にメッキ層として配置されている場合とは異なり、接合時の振動等に起因する剥がれ落ちの問題が生じない。また、例えば、一枚の金属板を切断することで複数の第三導電部材600を得ることができる。このことは、例えば第三導電部材600の品質の統一または管理の観点から有利である。
【0076】
ここで、本実施の形態では、第一導電部材510及び第二導電部材520のそれぞれは、板状の部材であり、接合部580では、第一導電部材510の第一延設部512と、第二導電部材520の第二延設部522とが板厚方向に重ねられた状態で接合されている。また、その接合の手法としては、上述のように各種の手法を採用し得る。そこで、実施の形態に係る第一導電部材510及び第二導電部材520の接合手法(接合態様)の具体例について、図5図7を用いて説明する。なお、以下の具体例1~3に示される導電部材500a~500cは、基本的な構成は上記実施の形態に係る導電部材500と同一であり、かつ、接合部における接合態様が互いに異なる部材である。
【0077】
(具体例1)
図5は、実施の形態の具体例1に係る導電部材500aの構成を示す拡大断面図である。図5に示す導電部材500aが有する接合部580aは、第一導電部材510の第一延設部512と、第二導電部材520の第二延設部522とが重ねられた状態で、締結具900によって締結されることで形成されている。
【0078】
締結具900は、一対のボルト910及びナット920を有し、例えば図5に示すように、ボルト910の軸部が、第一導電部材510、第三導電部材600、及び第二導電部材520を貫通した状態で、ボルト910の軸部に螺合するナット920が締め付けられる。これにより、第一導電部材510及び第二導電部材520が、第三導電部材600が介在した状態で締結される。
【0079】
このように、第一導電部材510及び第二導電部材520の接合に締結具900を用いることで、第一導電部材510及び第二導電部材520を簡易な構成で強固に接合することができる。
【0080】
ここで、接合部580aにおける外周部(図5では、接合部580aの上端部及び下端部)は、ボルト910及びナット920による締結力が直接的に作用しないため、第一導電部材510及び第二導電部材520の間に隙間が生じる可能性がある。この隙間に、例えば水分が進入した場合、接合部580の腐食が発生することが考えられる。しかしながら、本具体例では、第一導電部材510及び第二導電部材520の間には、ニッケルを材料とする第三導電部材600が介在しており、接合部580aにおいて接触している材料間におけるイオン化傾向の差が比較的小さくなっている。これにより、接合部580aにおける腐食の発生が抑制される。
【0081】
なお、第一導電部材510及び第二導電部材520を締結する締結具900として、ボルト910及びナット920ではなく、例えばリベットが採用されてもよい。また、複数の締結具900によって第一導電部材510及び第二導電部材520が締結されてもよい。
【0082】
(具体例2)
図6は、実施の形態の具体例2に係る導電部材500bの構成を示す断面拡大図である。図6に示す導電部材500bが有する接合部580bは、第一導電部材510の第一延設部512と、第二導電部材520の第二延設部522とが重ねられた状態で、例えばレーザ溶接によって溶接されることで形成されている。
【0083】
本具体例では、第一延設部512に、第二延設部522に向かって突出した凸部512aが形成されており、凸部512aの先端面と、第二導電部材520の第二延設部522とが接合されている。
【0084】
また、本具体例では、接合部580bの側方の位置において、第一導電部材510及び第二導電部材520に挟まれて配置された封止部材700が備えられている。封止部材700は、例えばシリコーンゴムまたはエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の、弾性を有し、かつ、耐熱性が比較的に高い材料で形成されている。
【0085】
このように封止部材700が配置されていることで、例えば、外部から接合部580bに外気または水分が到達する可能性が低下する。その結果、例えば、異種金属同士が接合された部分である接合部580bの腐食が抑制される。
【0086】
また、本具体例において、封止部材700は、環状(X軸方向から見た場合)に形成されており、接合部580bを囲むように配置されている。これにより、接合部580bにおける部材間(第一導電部材510と第二導電部材520との間)の境界の封止がより確実化される。つまり、接合部580bは、封止部材700により形成された密閉空間内に置かれる。従って、接合部580bが腐食する可能性がより低下される。
【0087】
なお、図6に示す構成を有する接合部580bは、例えば、以下の工程によって形成される。まず、凸部512aに環状の封止部材700を配置して、第一導電部材510及び第二導電部材520の一方を他方側に押す。これにより、凸部512aの先端面が第二導電部材520の第二延設部522に押し当てられ、かつ、封止部材700が第一導電部材510及び第二導電部材520のそれぞれに密着する。さらに、その状態を維持しながら、例えばレーザ光を凸部512aの裏側(X軸方向プラス側)から照射することで、凸部512aと第二延設部522とを溶接する。これにより、封止部材700によって周囲が囲まれた接合部580bが形成される。
【0088】
なお、接合部580bにおいて、第一導電部材510と第二導電部材520との間に、例えばニッケルで形成された第三導電部材が配置されていてもよい。この場合であっても、第一導電部材510と第二導電部材520とが突き合わされた部分であって、かつ、溶接されていない部分に第三導電部材が存在することで、接触している材料間におけるイオン化傾向の差を縮小することができる。その結果、例えば、接合部580bにおける腐食が抑制される。また、第一導電部材510及び第二導電部材520のそれぞれと溶接しやすいニッケルで形成された第三導電部材が存在することで、接合部580bの接合強度を向上させることができる。
【0089】
(具体例3)
図7は、実施の形態の具体例3に係る導電部材500cの構成を示す断面拡大図である。図7に示す導電部材500cが有する接合部580cは、第一導電部材510の第一延設部512と、第二導電部材520の第二延設部522とが重ねられた状態で、かしめられることで形成されている。
【0090】
本具体例では、第一導電部材510と第二導電部材520とは、クリンチかしめによって接合されている。より詳細には、ともに平板状の第一延設部512と第二延設部522とが重ねられた状態でかしめられ、これにより、第一延設部512に凸部512bが形成され、かつ、第二延設部522に、凸部512bが圧入された状態の凹部522aが形成される。
【0091】
つまり、本具体例では、例えば、ボルト及びナット、またはリベット等の他の部材を用いずに、第一導電部材510と第二導電部材520とが接合される。そのため、蓄電装置10の製造に必要な部品点数の増加が抑制される。また、第一導電部材510及び第二導電部材520を機械的に嵌合させるため、例えばレーザ溶接等の溶接の際に発生する熱の問題が生じない。
【0092】
また、本具体例では、第一導電部材510と第二導電部材520との間に第三導電部材610が介在しており、第三導電部材610は、第二導電部材520に被膜したメッキ層である。例えば第二導電部材520において、少なくとも、第一導電部材510と対向する面のクリンチかしめられる領域にニッケルメッキが施されており、これにより形成されるニッケルのメッキ層が第三導電部材610として配置されている。
【0093】
この構成によれば、例えば、第三導電部材610が薄く形成されるため、接合部580cが、第三導電部材610を含むことによる厚みの増加が抑制される。また、第三導電部材610が、例えば第二導電部材520と一体化されるため、接合部580cの形成のための作業(本具体例ではクリンチかしめ)の際において、第三導電部材610の位置決めまたは仮押さえ等を行うことなく当該作業を適切に実行することができる。
【0094】
なお、メッキ層である第三導電部材610は、第一導電部材510に形成されていてもよい。また、第一導電部材510と第二導電部材520との間に第三導電部材610が介在せずに、第一導電部材510と第二導電部材520とがクリンチかしめによって接合されてもよい。
【0095】
また、第一導電部材510及び第二導電部材520がクリンチかしめによって接合される場合に、メッキ層として形成される第三導電部材610に換えて、板材である第三導電部材600(例えば図2参照)が、第一導電部材510及び第二導電部材520の間に配置されてもよい。
【0096】
また、例えば図5に示すように、第一導電部材510及び第二導電部材520がボルト910及びナット920によって締結される場合に、第一導電部材510及び第二導電部材520の間に、第一導電部材510または第二導電部材520に被覆したメッキ層が、第三導電部材として配置されていてもよい。
【0097】
また、例えば図6に示すように、第一導電部材510及び第二導電部材520が溶接によって接合される場合に、第一導電部材510及び第二導電部材520の間に、第一導電部材510または第二導電部材520に被覆したメッキ層が、第三導電部材として配置されていてもよい。
【0098】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態及びその具体例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及びその具体例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態またはその具体例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
例えば、導電部材500に電気的に接続される少なくとも1つの電気部品の種類に特に限定はない。蓄電装置10の充電及び放電を制御する制御回路、複数の蓄電素子300の電圧を計測する電圧計測回路、または、蓄電素子300等の温度を計測するためのサーミスタ等が、導電部材500に電気的に接続される少なくとも1つの電気部品として、蓄電装置10に備えられてもよい。また、導電部材500に電気的に接続される少なくとも1つの電気部品は、蓄電装置10の外部に配置されていてもよい。いずれの場合であっても、少なくとも1つの電気部品は、導電部材500の接合部580と離間した位置に配置されるため、接合部580が発する熱の影響は受け難い。
【0100】
また、導電部材500は、少なくとも1つの蓄電素子300と、少なくとも1つの電気部品との間の電流経路を形成する部材として、第一導電部材510、第二導電部材520、及び第三導電部材600以外の部材を有してもよい。
【0101】
例えば、第二導電部材520と少なくとも1つの電気部品(例えば保護回路800)との間に、第二導電部材520とは別体の導電部材(第四導電部材)が配置されてもよい。言い換えると、第一導電部材510及び第二導電部材520のそれぞれは、互いに別体の複数の導電部材で構成されてもよい。いずれの場合であっても、第一端部511と第二端部521(例えば図4参照)との間の中間部に接合部580が設けられることで、接合部580を、蓄電素子300及び少なくとも1つの電気部品から離間させることができる。
【0102】
また、図2及び図4等に示される第一導電部材510及び第二導電部材520の形状及びサイズは例示であり、これらの形状及びサイズは、例えば、外装体11のサイズ、外装体11に収容される保護回路800等の他の要素の位置等に応じて適宜決定されてもよい。
【0103】
また、図5図7に示す、接合部の具体例1~3(接合部580a、580b、580c)の特徴が組み合わされてもよい。例えば、図6に示す封止部材700が、図7に示される第一導電部材510の凸部512bを囲むように配置されてもよい。この場合、クリンチかしめによって形成される接合部580cが配置された空間が封止部材700によって密閉され、これにより、接合部580cの腐食がより確実に抑制される。
【0104】
また。例えば、図6に示される第一導電部材510の凸部512aの内側(凹んだ部分)に対して、クリンチかしめが行われてもよい。この場合であっても、接合部580bが配置された空間が封止部材700によって密閉されるため、接合部580bの腐食がより確実に抑制される。
【0105】
また、蓄電素子300が有する電極体340は、正極板と負極板とセパレータとが縦方向に巻回(図3においてY軸方向に平行な巻回軸にて巻回)されて形成された縦巻きの巻回型形状であるとした。しかし、電極体340は、正極板と負極板とセパレータとが横方向に巻回(Z軸方向に平行な巻回軸にて巻回)されて形成された横巻きの巻回型形状であってもよいし、平板状極板を積層した積層型形状であってもよい。
【0106】
また、本発明は、このような蓄電装置10として実現することができるだけでなく、蓄電装置10が備える導電部材等としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0108】
10 蓄電装置
300 蓄電素子
500、500a、500b、500c、550 導電部材
510、560 第一導電部材
511 第一端部
512 第一延設部
520、570 第二導電部材
521 第二端部
522 第二延設部
580、580a、580b、580c 接合部
600、610 第三導電部材
700 封止部材
800 保護回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7