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特許7005917繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20220203BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220203BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220203BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220203BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B32B15/08 105Z
C08J5/04 CFC
C09J163/00
C09J201/00
B32B15/092
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017060321
(22)【出願日】2017-03-27
(65)【公開番号】P2018161800
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-11-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長坂 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 健
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037061(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147257(WO,A1)
【文献】特開2016-221999(JP,A)
【文献】特開2010-143009(JP,A)
【文献】特開2006-297927(JP,A)
【文献】特開2013-177560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04- 5/10、 5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
C09J 1/00-5/10、 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記繊維強化樹脂成形体(1)と金属が、接着剤(2)を介して一体化している、繊維強化樹脂成型体と金属のハイブリット構造部材。
<繊維強化樹脂成形体(1)>
強化繊維が複数本束ねられた繊維束とマトリックス樹脂とを含有する繊維強化樹脂成形体であって、該繊維強化樹脂成形体はSMCが成形されたものであり、該強化繊維の繊維方向がランダムになっており、該強化繊維の平均繊維長が5~100mmであり、該繊維強化樹脂成形体の厚み方向の切断面における0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維含有率の変動係数が10%以上40%以下である。
<接着剤(2)>
エポキシ系接着剤。
【請求項2】
前記ハイブリット構造部材の23℃における引張接着せん断強度が14MPa以上である、請求項1に記載のハイブリット構造部材。
【請求項3】
前記0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維含有率の変動係数が15%以上30%以下である、請求項1または2に記載のハイブリット構造部材。
【請求項4】
前記強化繊維が炭素繊維である請求項1~のいずれか1項に記載のハイブリット構造部材。
【請求項5】
前記接着剤の厚みが0.1以上4mm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のハイブリット構造部材。
【請求項6】
前記接着剤の厚みが0.1以上1mm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のハイブリット構造部材。
【請求項7】
前記金属がアルミニウムである、請求項1~のいずれか1項に記載のハイブリット構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形品と金属からなるハイブリット構造部材に関し、特に車両において使用できるような異種材料構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材は、繊維強化樹脂成形品が持つ優れた軽量性、高力学特性等と金属が持つ耐衝撃性等の両方を発することが可能であり、繊維強化樹脂成形品と金属を一体化する方法として、繊維強化樹脂成形品と金属を接着一体化したり、ボルトなどで機械接合する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、単に繊維強化樹脂成形品と金属を接着した繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材は、接着強度が弱く、所定の特性を発現できないおそれがある。
【0004】
繊維強化樹脂成形品と金属との接着性を向上させた構造体(例えば特許文献1)や、接着剤自体の高靱性化して接着性を向上させた構造体(例えば特許文献2、3)が提案されているが、繊維強化樹脂成形品と接着剤層の界面で剥離したり、繊維強化樹脂成形品の基材が破壊されたりして、十分な接着強度が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-297927号公報
【文献】特開昭58-189277号公報
【文献】特開2004-263104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、繊維強化樹脂成形品と金属の接着性を向上させ、優れた軽量性と高度な耐衝撃性等を有する繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維強化樹脂成形品の繊維の分散性を向上させた繊維強化樹脂成形品と金属を用いることにより、優れた軽量性と高度な耐衝撃性等を有する繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材を提供することが出来ることを見出した。即ち本発明の要旨は、以下の[1]~[8]に存する。
【0008】
[1] 下記繊維強化樹脂成形体(1)と金属が、接着剤(2)を介して一体化している、繊維強化樹脂成型体と金属のハイブリット構造部材。
<繊維強化樹脂成形体(1)>
強化繊維が複数本束ねられた繊維束とマトリックス樹脂とを含有する繊維強化樹脂成形体であって、当該繊維強化樹脂成形体の厚み方向の切断面における0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維含有率の変動係数が40%以下である。
<接着剤(2)>
弾性率が2GPa以下である接着剤。
[2] 前記ハイブリット構造部材の23℃における引張接着せん断強度が14MPa以上である上記[1]に記載のハイブリット構造部材。
[3] 前記繊維強化樹脂成形体中の強化繊維の平均繊維長が5~100mmである、上記[1]または[2]に記載のハイブリット構造部材。
[4] 前記0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維含有率の変動係数が10%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のハイブリット構造部材。
[5] 前記強化繊維が炭素繊維である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のハイブリット構造部材。
[6] 前記接着剤の厚みが0.1以上4mm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のハイブリット構造部材。
[7] 前記接着剤の厚みが0.1以上1mm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のハイブリット構造部材。
[8] 前記接着剤がエポキシ系接着剤である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のハイブリット構造部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた軽量性と高度な耐衝撃性等を有する繊維強化樹脂成形体と金属のハイブリット構造部材を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維強化樹脂成型体と金属のハイブリット構造部材は、下記繊維強化樹脂成形体(1)と金属が、接着剤(2)を介して一体化している。
<繊維強化樹脂成形体(1)>
強化繊維が複数本束ねられた繊維束とマトリックス樹脂とを含有する繊維強化樹脂成形体であって、当該繊維強化樹脂成形体の厚み方向の切断面における0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維含有率の変動係数が40%以下である。
<接着剤(2)>
弾性率が2GPa以下である接着剤。
以下、本発明の繊維強化樹脂成形体と金属のハイブリット構造部材について詳細に説明する。
【0011】
(繊維強化樹脂成形体(1))
本発明のハイブリット構造部材に用いることができる繊維強化樹脂成形体は、強化繊維とマトリックス樹脂とを含有する。本発明の繊維強化樹脂成形体は、例えば、複数の繊維束からなる繊維束群にマトリックス樹脂が含有された繊維強化樹脂材料(SMC)が成形されることで得られる。
【0012】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂のみを用いてもよく、熱可塑性樹脂のみを用いてもよく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方を用いてもよい。
本発明の繊維強化樹脂成形体をSMCから製造する場合、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましい。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、尿素性樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリーエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(強化繊維)
本発明の繊維強化樹脂成形体に用いることができる強化繊維としては、強化繊維の種類は特に限定されず、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維が使用できる。無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステルなどが挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維を挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。これらの中では、最終成形物の強度等の機械特性を考慮すると、炭素繊維が好ましい。また、強化繊維の平均繊維直径は、1~50μmであることが好ましく、5~20μmであることがさらに好ましい。
【0016】
(炭素繊維)
炭素繊維には特に制限は無く、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特にPANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。これらは市販品として入手できる。
【0017】
本発明の繊維強化樹脂成形体に用いことができる炭素繊維は、表面処理、特に電解処理されたものが好ましい。表面処理剤としては、例えば、エポキシ系サイジング剤、ウレタン系サイジング剤、ナイロン系サイジング剤、オレフィン系サイジング剤等が挙げられる。表面処理することによって、引張り強度、曲げ強度が向上するという利点が得られる。
【0018】
(繊維含有率、繊維含有率の変動係数)
本発明の繊維強化樹脂成形体は、その厚みに沿った切断面における、0.1mm角の単位区画あたりの強化繊維の繊維含有率の変動係数(以下、「変動係数Q」とも言う。)が40%以下である。
【0019】
変動係数Qが40%以下であれば、繊維強化樹脂成形体中で繊維が均等に分散し、樹脂リッチ部が抑制されていることで、繊維強化樹脂成形体と金属との接着強度や破壊形態のバラツキが抑制される。
尚、変動係数Qは、繊維強化樹脂成形体を厚み方向に沿って切断し、その切断面において、0.1mm単位区画あたりの強化繊維の繊維含有率を2000箇所について測定し、その標準偏差と平均値(以下「平均値P」という)を算出し、標準偏差を平均値Pで除した値を意味する。
【0020】
本発明に用いる繊維強化樹脂成形体における変動係数Qの上限値は、40%であり、35%が好ましく、30%がより好ましい。
変動係数Qが上限値以下であれば、繊維強化樹脂成形体と金属との接着強度や破壊形態のバラツキが抑制された、繊維強化樹脂成形体と金属とのハイブリット構造部材が得られる。
【0021】
変動係数Qには、繊維強化樹脂成形体中の繊維の分散状態はもちろん、各繊維の繊維軸方向にも影響する。具体的に、例えば断面形状が円形状の繊維束の場合、該繊維束の繊維軸方向に対する切断面の角度が90°であれば、該切断面における繊維束の断面形状は円形状となる。一方、該繊維束の繊維軸方向に対する切断面の角度が90°よりも小さいと、該切断面における繊維束の断面形状が楕円形状となる。このように、各繊維束の繊維軸方向が変わると、各単位区画あたりの繊維束の断面形状が変わることで、その繊維束の断面に占める割合が変化するため、変動係数Qに影響する。
【0022】
変動係数Qは小さいほど、繊維強化樹脂成形体中で各繊維がより均等に分散していることを示す。しかし、変動係数Qがゼロに近いほど、各単位区画あたりの繊維束の断面形状の変化が小さい状態、即ち繊維強化樹脂成形体中で各繊維束の繊維軸方向が揃った状態になっている。
【0023】
繊維強化樹脂成形体と金属との接着強度や破壊形態のバラツキを抑制するには、各繊維の繊維方向がランダムになっていることが好ましい。このことから、変動係数Qの下限値は、10%が好ましく、12%が好ましく、15%がより好ましい。
【0024】
変動係数Qが下限値以上であれば、繊維強化樹脂成形体と金属との接着強度や破壊形態のバラツキが抑制された、繊維強化樹脂成形体と金属とのハイブリット構造部材が得られる。
【0025】
本発明で用いることができる繊維強化樹脂成形体の平均繊維長は、5~100mmが好ましく、20~60mmがより好ましい。
繊維強化樹脂成形体の平均繊維長が前記下限値以上であれば、物性に優れた繊維強化樹脂成形品が得られるため、より軽量性と物性のバランスに優れた繊維強化樹脂成形品と金属とのハイブリット構造部材が得られ、前記上限値以下であれば、成形時に繊維強化樹脂材料がより流動しやすくなるため、成形が容易になる。
【0026】
(接着剤(2))
本発明に用いられる接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系、ポリビニールアルコール系、ポリアセタール系、塩化ビニール系、アクリル系、ポリエチレン系、セルロース系、ユリア系、レゾルシノール系、メラミン系、フェノール系(ノボラック、水溶性)、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリイミド系、ポリアロマチック系、クロロブレン系、ニトリルゴム系、SBR系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコーンゴム系、エポキシ-ナイロン系、フェノール-ニトリル系、エポキシ-ニトリル系、エポキシ-フェノール系等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる接着剤の弾性率は、2GPa以下が好ましい。接着剤の弾性率が2GPa以上では、繊維強化樹脂成形体と金属の接着強度が高すぎて、繊維強化樹脂成形体が基材破壊される可能性がたかいうえ、構造部材に必要な耐疲労性が得られない。
【0028】
本発明で用いることができる接着剤の厚みは、0.1~4mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。接着層の厚みが前記下限値以下であれば、構造部材に必要な耐疲労性が得られず、前記上限値以上であれば、構造部材に必要な耐衝撃性等の物性が得られない。
【0029】
(繊維強化樹脂成形品と金属とのハイブリット構造部材の製造方法)
繊維強化樹脂成形品と金属とのハイブリット構造部材は、金属に接着剤(2)を塗布し、繊維強化樹脂成形品と重なるように貼り合せて、接着剤の使用法に応じて、室温もしくは適宜高温で加熱して接着剤を固化させ得られる。
【実施例
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。
【0031】
(繊維含有率平均値Pと繊維含有率変動係数Q)
実施例及び比較例の繊維強化樹脂成形体を厚み方向に切断し、その切断面が覆われるように切断面をメタクリル樹脂(製品名「テクノビット4004」、ヘレウス社製)で包埋した後、研磨を行って切断面を露出させた。次いで、切断面を光学顕微鏡(製品名「BX51M」、オリンパス社製)により、倍率100倍にて撮像した。切断面の画像を、画像処理ソフト(製品名「Winroof2015、三谷商事社製」により、0.1mm角の単位区画に分割した後、輝度の闘値を136として二値化処理を行って繊維とマトリックス樹脂とを区別した。次いで、2000箇所の単位区画のそれぞれについて、単位区画の面積に対して輝度が闘値以上である領域(繊維が占める領域)の面積が占める割合を測定し、繊維含有率を求めた。次いで、2000箇所の単位区画についての繊維含有率の平均値(平均値P)と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値Pで除して変動係数Qを算出した。
【0032】
(接着強度の測定法)
実施例及び比較例の繊維強化樹脂成形体(長さ100mm×幅25mm×厚さ2mm)の先端部に接着剤を塗布し、金属としてアルミニウム基材(長さ100mm×幅25mm×厚さ2mm)の先端部へ重なるよう貼り合せて、重ねた上から1kgのおもりをのせ、140℃1時間加熱硬化させて、繊維強化樹脂成形体と金属とのハイブリット部材を得て、試験片とした。
【0033】
この試験片の両端を機械名で固定して、室温で速度5mm/minで引張り、せん断強度を測定及び破壊形態を観察した。
尚、せん断強度が10MPa以上で、破壊形態が接着剤の凝集破壊○、せん断強度が10MPa以下で、破壊形態が接着剤の凝集破壊△、破壊形態が繊維強化樹脂成形品の基材破壊もしくは繊維強化樹脂成形品と金属との界面で剥離が起こっている場合×とした。
【0034】
(実施例1)
繊維として(商品名「TR50S15L」、三菱レイヨン社製)を使用した。
熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂(製品名:ネオポール8051、日本ユピカ社製)100質量部に対して、硬化剤として1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンの75%溶液(製品名:パーヘキサC-75、日本油脂社製)0.5質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの74%溶液(製品名:カヤカルボンBIC-75、化薬アクゾ社製)0.5質量部とを添加し、内部離型剤として、リン酸エステル系誘導体組成物(製品名:MOLD WIZ INT-EQ-6、アクセルプラスチックリサーチラボらトリー社製)0.35質量部を添加し、増粘剤として、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:コスモネートLL、三井化学社製)15.5質量部を添加し、安定剤として、1.4-ベンゾキノン、和光純薬工業社製)0.02質量部を添加して、これらを十分に混合撹拌してマトリックス樹脂を含むペーストを得た。
【0035】
搬送している第1キャリアシート上に前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第1樹脂シートを形成した。又、開繊及び分繊を行った厚み0.05mm、幅7.5mmの炭素繊維束を裁断機で裁断し、平均繊維長が50.8mmのチョップド繊維束として落下させ、厚み1.3mmのシート状繊維束群を形成した。第1樹脂シートと裁断機の間には、直径3mmの断面円形状の複数の傾斜コームを第1樹脂シートの走行方向と平行するように並べて配置した。傾斜コームの第1樹脂シートからの高さは400mm、隣り合う傾斜コームの間隔は65mm、傾斜コームの水平方向に対数傾斜角度を15°とした。ライン速度は1.5m/分とした。
【0036】
第1キャリアシートの上方で、第1キャリアシートの逆方向に搬送している第2キャリアシート上の前記ペーストを塗工して厚み0.45mmの第2樹脂シートを形成し、搬送方向を反転させて第2樹脂シートを前記シート状繊維束群の上に貼り合せて積層した。さらに、第1樹脂シート、シート状繊維束群及び第2樹脂シートの積層体に対して、予備含浸と本含浸を行い、厚み2mmのシート状の繊維強化樹脂材料を得た。予備含浸は、ロール外周面に円柱状の凸部(凸部の高さ:3mm、凸部の先端部の面積:38mm2、凸部のピッチ:8mm)が千鳥状に設けられた凹凸ロールと、平面ロールとを組み合わせた5対のロールによって行った。本含浸は11対の平面ロールより行った。
【0037】
得られた繊維強化樹脂材料を25±5℃の温度で1週間養生したものを250mm×250mmに切断し、端部に嵌合号を有するパネル成形用金型(300mm×300mm×2mm、表面クロムメッキ仕上げ)に、製造装置での繊維強化樹脂材料の搬送方向(MD方向)を揃えて、2枚(合計およそ156g)を金型中央に投入した。そして、金型内で繊維強化樹脂材料を140℃、8MPa、5分の条件で加熱加圧し、繊維強化樹脂成形体を得た。
得られた繊維強化樹脂成形体の繊維含有率Pは55.7%、繊維含有率変動係数Qは26.1%であった。
【0038】
次に得られた繊維強化材料成形体を長さ100mm×幅25mmに切出し、先端部から12.5mm×幅25mmの面積にIW2190(3M社製エポキシ系接着剤)を塗布し、金属としてアルミニウム#6000(長さ100mm×幅25mm×厚さ2mm)の先端部へ重なるよう貼り合せて、重ねた上から1kgのおもりをのせ、140℃1時間加熱硬化させて、繊維強化樹脂成形体と金属とのハイブリット部材を得て、試験片とした。
【0039】
(比較例1)
繊維強化樹脂材料としてSTR120N131-KA6N(三菱レイヨン社製)を使用し、厚み2mmの25cm角の試験片を2枚切出して重ね、プレス成形して30cm角の板上の繊維強化樹脂成形体を得た。得られた成形体の繊維含有率の平均値Pは44.2%、変動係数Qは47.1%であった。
【0040】
実施例1と同様の方法で繊維強化樹脂成形品と金属とのハイブリット部材を得て、試験片とした。
【0041】
【表1】
【0042】
表1より明らかなように、実施例1は、せん断強度が高く、破壊形態も良好であった。
【0043】
本発明の繊維強化樹脂成形品と金属のハイブリット構造部材は、接着強度及び破壊形態に優れるため、航空機部材、自動車部材、スポーツ用具等に広い分野で利用可能である。