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  • 特許-放射性廃棄物収容容器及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】放射性廃棄物収容容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/005 20060101AFI20220117BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20220117BHJP
   G21F 5/00 20060101ALI20220117BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G21F5/005
G21F3/00 G
G21F3/00 N
G21F5/00 K
G21F9/36 501
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017111832
(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公開番号】P2018205178
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2019-08-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】天野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野田 秀作
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-051093(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104021831(CN,A)
【文献】特表平08-507381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0176317(US,A1)
【文献】特開昭63-236998(JP,A)
【文献】特開2000-002791(JP,A)
【文献】米国特許第05406600(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
G21F 5/00
G21F 5/002
G21F 5/005
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を収容する収容室を有するコアと、
前記コアの前記収容室を塞ぐ蓋と、
前記コアの側壁部の外面に材質が互いに異なる少なくとも2種類以上の連続するシート状材料を積層した状態で1巻きより多く巻き付けてなり、前記2種類以上のシート状材料の一端が積層した状態の層の内側にあり、前記2種類以上のシート状材料の他端が積層した状態の層の外側にある遮蔽体と、を備え
前記2種類以上のシート状材料は、鋼板を含む放射性廃棄物収容容器。
【請求項2】
前記遮蔽体は、前記コアの前記側壁部の外面に前記2種類以上のシート状材料を少なく
とも2巻き巻き付けてなることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物収容容器。
【請求項3】
前記2種類以上のシート状材料は、前記鋼板を含むと共に、ガンマ線遮蔽材及び/又は中性子遮蔽材を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物収容容器。
【請求項4】
前記遮蔽体は、前記コアの上端部に設けられる第1鍔部と前記コアの下端部に設けられ
る第2鍔部との間に配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載
の放射性廃棄物収容容器。
【請求項5】
放射性廃棄物が収容され、蓋によって閉鎖可能な収容室を有するコアを用意する工程と、
前記コアの側壁部の外面に材質が互いに異なる少なくとも2種類以上の連続するシート状材料を積層した状態で1巻きより多く巻き付ける工程と、
を備え、
前記2種類以上のシート状材料の一端が積層した状態の層の内側にあり、前記2種類以
上のシート状材料の他端が積層した状態の層の外側にあり、
前記2種類以上のシート状材料は、鋼板を含む放射性廃棄物収容容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物を収容するための放射性廃棄物収容容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設、核燃料施設、放射線利用施設等では、放射性廃棄物(例えば放射性物質を含むコンクリート、金属、樹脂、紙、布、廃液等)が発生する。また、東日本大震災の放射能物質の除染等によっても、放射性廃棄物(例えば放射性物質で汚染された土壌、焼却灰等)が発生する。この放射性廃棄物は、必要な処理(例えば、切断、圧縮、固化、減容化等)が施された後、放射性廃棄物収容容器に収容される。放射性廃棄物収容容器は、放射線を遮蔽する能力を持ち、外部に漏洩する放射線量を人体に悪影響を与えないレベルに低減する。
【0003】
放射性廃棄物の放射能の強度に合わせて、放射線の遮蔽能力を調節することができる放射性廃棄物収容容器が知られている(特許文献1参照)。図6に示すように、この放射性廃棄物収容容器は、容器を多重構造11,12,13にしてなる。例えば、放射性廃棄物10の放射能の強度が高い場合には、容器を3重構造11,12,13にして容器の放射線の遮蔽能力を高くし、放射性廃棄物10の放射能の強度が低い場合には、容器を1重構造11又は2重構造11,12にして容器の放射線の遮蔽能力を低くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-104389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の放射性廃棄物収容容器にあっては、多重構造の容器を製造するのに、手間とコストがかかるという課題がある。また、遮蔽能力が3段階にしか調節できず、放射性廃棄物の放射能の強度に合わせて放射線の遮蔽能力を最適化するのが困難であるという課題がある。放射線の遮蔽能力を最適化するために、容器を4重構造以上にすることも考えられるが、この場合、容器の製造にさらに手間とコストがかかる。
【0006】
そこで、本発明は、放射性廃棄物の放射能の強度に合わせて放射線の遮蔽能力を容易に最適化することができる放射性廃棄物収容容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、放射性廃棄物を収容する収容室を有するコアと、前記コアの前記収容室を塞ぐ蓋と、前記コアの側壁部の外面に材質が互いに異なる少なくとも2種類以上の連続するシート状材料を積層した状態で1巻きより多く巻き付けてなり、前記2種類以上のシート状材料の一端が積層した状態の層の内側にあり、前記2種類以上のシート状材料の他端が積層した状態の層の外側にある遮蔽体と、を備え、前記2種類以上のシート状材料は、鋼板を含む放射性廃棄物収容容器である。
【0008】
本発明の他の態様は、放射性廃棄物が収容され、蓋によって閉鎖可能な収容室を有するコアを用意する工程と、前記コアの側壁部の外面に材質が互いに異なる少なくとも2種類以上の連続するシート状材料を積層した状態で1巻きより多く巻き付ける工程と、を備え、前記2種類以上のシート状材料の一端が積層した状態の層の内側にあり、前記2種類以上のシート状材料の他端が積層した状態の層の外側にあり、前記2種類以上のシート状材料は、鋼板を含む放射性廃棄物収容容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
放射線の遮蔽能力は、材料の種類と厚さによって決定される。本発明によれば、シート状材料の巻き付け回数でこの厚さを任意に設定できる。このため、放射性廃棄物の放射能の強度に合わせて、放射線の遮蔽能力を最適化することができる。また、放射性廃棄物の放射能の強度が低い場合、厚さが小さくてよいので、放射性廃棄物収容容器の重量を軽くすることができる。このため、放射性廃棄物収容容器のハンドリングや輸送が容易になる。さらに、遮蔽体が材質が互いに異なる2種類以上のシート状材料を含むので、遮蔽体に強度を持たせたり、ガンマ線及び/又は中性子を遮蔽する能力を高めたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の放射性廃棄物収容容器の垂直断面図である。
図2】本実施形態の放射性廃棄物収容容器の水平断面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】本発明の一実施形態の放射性廃棄物収容容器の製造方法の工程図である。
図4図3のIV部拡大図である。
図5】本実施形態の放射性廃棄物収容容器の製造方法の他の例の工程図である。
図6】従来の放射性廃棄物収容容器の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の放射性廃棄物収容容器を詳細に説明する。ただし、本発明の放射性廃棄物収容容器は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の放射性廃棄物収容容器(以下、単に容器という)の垂直断面図を示し、図2は水平断面図を示す。1は放射性廃棄物、2はコア、3は蓋、4は遮蔽体である。
【0013】
放射性廃棄物1は、原子力施設、核燃料施設、放射線利用施設等で発生する廃棄物、及び/又は東日本大震災の放射能物質の除染等によって発生する廃棄物である。放射性廃棄物1の種類は限定されるものではなく、放射性廃棄物1の放射能レベルも限定されるものではない
【0014】
コア2は、鉄等の金属製であり、略有底筒状である。コア2の内部には、放射性廃棄物1を収容する収容室5が形成される。コア2は、底部2aと、側壁部2bと、を備える。側壁部2bの断面形状は、円形である(図2参照)が、4角形等の多角形にすることもできる。
【0015】
側壁部2bの上端部には、側壁部2bから外側に張り出す第1鍔部6が形成される。側壁部2bの下端部には、側壁部2bから外側に張り出す第2鍔部7が形成される。遮蔽体4は、第1鍔部6と第2鍔部7との間に配置される。第1鍔部6と第2鍔部7とは、側壁部2bの外面にシート状材料4a,4b,4cを巻き付けるとき、シート状材料4a,4b,4cがずれないようにする。
【0016】
コア2の底部2aには、遮蔽体4は巻き付けられていない。底部2aの厚さt1は、収容される放射性廃棄物1の最大の放射能レベルを想定したときに、底部2aから漏れ出る放射線量が十分に小さくなるように決定される。底部2aの厚さt1の算出方法は実施例で具体的に説明する。また、底部2aの上面2aの高さは、遮蔽体4の下端4よりも高くなるように設定される。放射性廃棄物1から水平方向に放出される放射線を遮蔽体4で遮蔽するためである。
【0017】
蓋3は、鉄等の金属製であり、コア2の側壁部2bの上面に載せられる本体部3aと、本体部3aに一体に形成される嵌合部3bと、を備える。嵌合部3bは、コア2の側壁部2bの内側にぴったりと嵌められる。蓋3には、遮蔽体4は巻き付けられていない。蓋3の厚さt2は、収容される放射性廃棄物1の最大の放射能レベルを想定したときに、蓋3から漏れ出る放射線量が十分に小さくなるように設定される。蓋3の厚さt2の算出方法は実施例で具体的に説明する。また、蓋3の嵌合部3bの下面3bの高さは、遮蔽体4の上端4の高さよりも低くなるように設定される。収容室5から水平方向に放出される放射線を遮蔽体4で遮蔽するためである。
【0018】
遮蔽体4は、コア2の側壁部2bの外面にシート状材料4a,4b,4cを巻き付けてなる。シート状材料4a,4b,4cの種類は、鋼板、ガンマ線遮蔽材、中性子遮蔽材のうちの1種類、又は2種類以上である。図1には、3種類のシート状材料4a,4b,4cをコア2に巻き付けた例を示すが、1種類のみのシート状材料をコア2に巻き付けることもできるし、2種類以上のシート状材料をコア2に巻き付けることもできる。シート状材料4a,4b,4cの巻き付け回数は、必要な遮蔽能力に応じて適宜設定され、1巻き、2巻き、3巻き、4巻き、…十巻き、数十巻き等適宜設定される。
【0019】
シート状材料4a(以下、鋼板4aという)は、炭素鋼板、ステンレス鋼板等である。シート状材料4b(以下、ガンマ線遮蔽材4bという)は、鉛板又は鉛、タングステン又はバリウムを含む樹脂シートである。シート状材料4c(以下、中性子遮蔽材4cという)は、ポリエチレンシートである。ガンマ線遮蔽材4b及び/又は中性子遮蔽材4cだけでは、遮蔽体4の強度が低下する。鋼板4aは、遮蔽体4の強度を向上させるために設けられる。もちろん、鋼板4aも放射線の遮蔽能力を持つ。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態の容器の製造方法の工程図を示す。図3に示すように、鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cは、コイル状に巻かれている。これらは支持機構に回転可能に支持されている。コア2は、駆動機構に支持されていて、駆動機構によって回転駆動される。
【0021】
鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cの一端を引き出し、コア2に取り付け、コア2を回転させると、コア2に鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cが積層した状態で巻き付けられる。鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cの一端は、積層した状態の層の内側にあり、鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cの他端は、積層した状態の層の外側にある。コア2に隙間無く巻き付けられるように、鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cの巻き付けは、これらの張力を調節しながら行われる。支持機構には、張力を調節するための機構が組み込まれる。図4は、遮蔽体4の詳細図を示す。コア2には、鋼板4a、ガンマ線遮蔽材4b、中性子遮蔽材4cが積層した状態で巻き付けられる。
【0022】
なお、最初に中性子遮蔽材4cを必要巻き数巻き付け、その後ガンマ線遮蔽材4bを必要巻き数巻き付け、その後鋼板4aを必要巻き数巻き付けることもできる。また、鋼板4aのみ、ガンマ線遮蔽材4bのみ、又は中性子遮蔽材4cのみを巻き付けることもできる。
【0023】
図3に示す容器の製造は、専用の工場で行われてもよいし、放射性廃棄物1が発生する原子力施設、核燃料施設、放射線利用施設等の現地で行われてもよい。現地で容器を製造すれば、発生する放射性廃棄物1に臨機応変に対応することができる。
【0024】
図5は、本実施形態の容器の製造方法の他の例の工程図を示す。図5では、コア2が4角形の筒状であり、遮蔽体4も4角形の筒状である例を示す。図5のように、コア2は4角形の筒状でもよい。その他の構成は、図3と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0025】
以上に本実施形態の容器及び容器の製造方法の構成を説明した。本実施形態の容器及び容器の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0026】
容器の放射線の遮蔽能力は、材料の種類と厚さによって決定される。本実施形態によれば、シート状材料4a,4b,4cの巻き付け回数でこの厚さを任意に設定できる。このため、放射性廃棄物1の放射能の強度に合わせて、放射線の遮蔽能力を最適化することができる。また、放射性廃棄物1の放射能の強度が低い場合、厚さが小さくてよいので、容器の重量を軽くすることができる。このため、容器のハンドリングや輸送が容易になる。
【0027】
シート状材料4a,4b,4cの巻き付け回数を少なくとも2巻きにすることで、放射線の遮蔽能力の調節範囲を大きくすることができる。
【0028】
遮蔽体4が材質が互いに異なる2種類以上のシート状材料4a,4b,4cを含むので、遮蔽体4に強度を持たせたり、ガンマ線及び/又は中性子を遮蔽する能力を高めたりすることができる。
【0029】
コア2の上端部及び下端部に第1鍔部6及び第2鍔部7を設けるので、シート状材料4a,4b,4cを巻き付けるとき、シート状材料4a,4b,4cがずれるのを防止できる。
【実施例
【0030】
図1に示す容器を製作するために、容器の各部の寸法を算出した。最初にコア2の底部2aと蓋3の厚さを算出した。算出にあたって、容器に収容される放射性廃棄物1の最大の放射能レベルを以下のように想定した。
放射能レベル 1015Bq/t
体積 IS Z 1600のドラム缶の容積相当(内径570mm、高さ870mm)
最大収容重量 400kg
コバルト:セシウム=2:1(重量比)
【0031】
容器表面線量当量率を最大2mSv/Hrとすると、コア2の底部2aと蓋3が鉄製の場合、遮蔽に必要な厚さは、それぞれ300mmであった。すなわち、コア2の底部2aの厚さt1を300mm、蓋3の厚さt2を300mmに設定すればよいことがわかった。
【0032】
次に、コア2の側壁部2bと遮蔽体4の厚さを算出した。算出にあたって、容器に収容される放射性廃棄物1の放射能レベルを以下のように想定した。
放射能レベル 1013Bq/t
重量 400kg
【0033】
容器表面線量当量率を最大2mSv/Hrとすると、コア2が鉄製でシート状材料が鋼板4aの場合、遮蔽に必要な厚さは200mmであった。コア2の側壁部2bの厚さを100mmとすると、遮蔽体4に100mmの厚さが必要であることがわかった。0.5mm(鋼板4aの厚さ)×200巻きで、100mmを確保できる。0.5mmの鋼板4aを200巻き巻き付ければよいことがわかった。
【符号の説明】
【0034】
1…放射性廃棄物
2…コア
2a…底部
2b…側壁部
3…蓋
4…遮蔽体
4a…鋼板(シート状材料)
4b…ガンマ線遮蔽材(シート状材料)
4c…中性子遮蔽材(シート状材料)
5…収容室
6…第1鍔部
7…第2鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6