(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/14 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
B01D3/14 Z
(21)【出願番号】P 2017113430
(22)【出願日】2017-06-08
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 正夫
(72)【発明者】
【氏名】温見 寿範
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉野谷 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜太郎
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-136280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00-10/00
B01J 19/00
C02F 1/02- 1/18
B81B 1/00
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から他端に延在する流路が内部に形成され
、前記一端から前記他端に向かって複数の領域に分割された本体と、
前記流路内に形成される液体層と気体層との界面以下の所定の位置に設けられた液体温度測定部と、
前記流路内における前記界面より上方に設けられた気体温度測定部と、
前記本体の底面を加熱する液体温度調整部と、
前記本体の上面を加熱する気体温度調整部と、
前記液体温度測定部によって測定された所定の前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部および前記気体温度調整部を制御する制御部と、
を備える分離装置。
【請求項2】
前記流路の上部において、前記一端から前記他端に向かって、または、前記他端から前記一端に向かって気体が流れており、
前記制御部は、前記所定の領域より、前記気体の流れ方向の上流側に位置する前記領域の温度に基づいて、前記気体温度調整部を制御する請求項
1に記載の分離装置。
【請求項3】
一端から他端に延在する流路が内部に形成され
、前記一端から前記他端に向かって複数の領域に分割された本体と、
前記流路内に形成される液体層と気体層との界面以下の所定の位置に設けられた液体温度測定部と、
前記流路内における前記界面より上方に設けられた気体温度測定部と、
前記本体の底面を冷却する液体温度調整部と、
前記本体の上面を冷却する気体温度調整部と、
前記気体温度測定部によって測定された所定の前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部および前記気体温度調整部を制御する制御部と、
を備える分離装置。
【請求項4】
前記流路の下部において、前記一端から前記他端に向かって、または、前記他端から前記一端に向かって液体が流れており、
前記制御部は、前記所定の領域より、前記液体の流れ方向の上流側に位置する前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部を制御する請求項
3に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料液を留出液と缶出液とに分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料、食用油、石油化学製品等の蒸留、アンモニアの除去、二酸化炭素の回収、および、医薬品の製造等に分離装置が用いられている。分離装置は、低沸点成分と高沸点成分とを含んで構成される原料液を、留出液と缶出液とに分離する装置である。このような分離装置として、複数の棚が内部に設けられた棚段塔と、リボイラと、コンデンサとを備えた装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1に記載されたような棚段塔においては、棚の構造上、棚間の距離(段の高さ)を、少なくとも数十cm(例えば、60cm程度)確保する必要がある。したがって、分離性能を向上させるために、段数を増加させると、装置自体が鉛直方向に高くなってしまう。また、棚段塔は、塔内の構造が複雑で装置自体に多大なコストを要してしまうという課題もある。
【0004】
そこで、一端側から他端側に向けて鉛直下方に傾斜させた流路の一端側を冷却するとともに他端側を加熱しておき、流路の中央部から原料液を導入して、原料液を分離する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。かかる技術では、流路の上方に形成される気体層の高さを数mm程度まで低くし、気体層の下方に形成される液体層の表面で気液接触させる。これにより、気液平衡に到達する時間を大幅に短縮することができ、分離性能を維持したまま、棚段塔より装置を小型化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2799650号公報
【文献】特開2015-223580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の分離装置は、流路内の温度を測定する温度測定部を備えているが、温度測定部が気体層の温度を測定しているか、液体層の温度を測定しているかが不明であった。このため、気体層の温度および液体層の温度をいずれも正確に測定することができなかった。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、原料液が収容される本体内の気体層および液体層の温度をそれぞれ測定することが可能な分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る分離装置は、一端から他端に延在する流路が内部に形成され、前記一端から前記他端に向かって複数の領域に分割された本体と、前記流路内に形成される液体層と気体層との界面以下の所定の位置に設けられた液体温度測定部と、前記流路内における前記界面より上方に設けられた気体温度測定部と、前記本体の底面を加熱する液体温度調整部と、前記本体の上面を加熱する気体温度調整部と、前記液体温度測定部によって測定された所定の前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部および前記気体温度調整部を制御する制御部と、を備える。
【0013】
また、前記流路の上部において、前記一端から前記他端に向かって、または、前記他端から前記一端に向かって気体が流れており、前記制御部は、前記所定の領域より、前記気体の流れ方向の上流側に位置する前記領域の温度に基づいて、前記気体温度調整部を制御してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る他の分離装置は、一端から他端に延在する流路が内部に形成され、前記一端から前記他端に向かって複数の領域に分割された本体と、前記流路内に形成される液体層と気体層との界面以下の所定の位置に設けられた液体温度測定部と、前記流路内における前記界面より上方に設けられた気体温度測定部と、前記本体の底面を冷却する液体温度調整部と、前記本体の上面を冷却する気体温度調整部と、前記気体温度測定部によって測定された所定の前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部および前記気体温度調整部を制御する制御部と、を備える。
【0015】
また、前記流路の下部において、前記一端から前記他端に向かって、または、前記他端から前記一端に向かって液体が流れており、前記制御部は、前記所定の領域より、前記液体の流れ方向の上流側に位置する前記領域の温度に基づいて、前記液体温度調整部を制御してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、原料液が収容される本体内の気体層および液体層の温度をそれぞれ測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】分離装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図3】
図2において上面および側面を閉じたときのIII-III線断面図である。
【
図4】気体温度調整部、液体温度調整部によって温度が調整される領域の一例を説明する図である。
【
図6】制御部の温度制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】制御部のうち、第2の気体温度調整部および第2の液体温度調整部の制御ブロックを抽出した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(分離装置100)
図1は、分離装置100の概略的な構成を説明する図である。なお、
図1中、液体の流れを実線の矢印で示し、気体の流れを破線の矢印で示す。分離装置100は、原料液を留出液と缶出液とに分離する装置である。原料液には、低沸点成分と、低沸点成分より沸点が高い高沸点成分とが含まれる。留出液は、原料液より低沸点成分が高濃度の液体である。缶出液は、原料液より高沸点成分が高濃度の液体である。分離装置100は、例えば、原料液の蒸留、原料液からのアンモニア除去、原料液からの二酸化炭素の分離等に利用することができる。
【0020】
図1に示すように、分離装置100は、原料液貯留タンク110と、原料液供給ポンプ112と、分離部120と、缶出液排出ポンプ130と、缶出液貯留タンク132と、留出液排出ポンプ140と、留出液貯留タンク142と、気体温度測定部Taと、液体温度測定部Tbと、制御部170とを含んで構成される。
【0021】
原料液貯留タンク110は、原料液を貯留する容器である。原料液供給ポンプ112は、吸入側が、配管を介して原料液貯留タンク110に接続される。原料液供給ポンプ112は、吐出側が、配管を介して分離部120(原料液供給口212c)に接続される。原料液供給ポンプ112は、原料液貯留タンク110に貯留された原料液を分離部120に供給する。
【0022】
分離部120は、原料液を留出液と缶出液とに分離する。分離部120は、分離ユニット200と、気体温度調整ユニット230と、液体温度調整ユニット240とを含んで構成される。分離ユニット200は、ステンレス鋼等の金属材料で構成され、内部に原料液を収容する。
【0023】
図2は、分離ユニット200の分解斜視図である。本実施形態の
図2では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。
図2に示すように、分離ユニット200は、本体210と、リブ220A、220Bとを含んで構成される。
【0024】
本体210は、金属材料で形成された角柱形状の中空部材である。本体210は、底面212と、上面214と、側面216とを含んで構成される。底面212の一端側には、留出液排出口212aが形成されている。底面212の他端側には、缶出液排出口212bが形成されている。また、底面212における留出液排出口212aと缶出液排出口212bとの間には、原料液供給口212cが形成されている。詳しくは後述するが、原料液供給口212cを通じて本体210内に原料液が供給されると、本体210内の一端から他端に亘って液体層bが形成され、液体層bの鉛直上方に気体層aが形成される。つまり、本体210の内部には一端から他端に延在する流路が形成される。
【0025】
リブ220Aは、底面212から立設し、原料液供給口212c側から缶出液排出口212b側に延在した部材である。リブ220Bは、底面212から立設し、留出液排出口212a側から原料液供給口212c側に延在した部材である。リブ220A、220Bは、それぞれ複数(ここでは、6)設けられる。本実施形態において、リブ220A、220Bは、基端222の幅(
図2中X軸方向の幅)が、先端224の幅より大きい。また、リブ220A、220Bの先端224は、上面214と離隔している。
【0026】
分離ユニット200の寸法関係について説明する。隣り合うリブ220Aの基端222間の距離は、例えば、1mm程度である。隣り合うリブ220Aの先端224間の距離は、例えば、2mm程度である。なお、隣り合うリブ220B間の距離は、隣り合うリブ220A間の距離と実質的に等しい。リブ220A、220Bの高さ(基端222から先端224までの高さ、
図2中Z軸方向の高さ)は、例えば、3mm程度である。また、リブ220A、220Bの先端224と上面214との距離は、例えば、100μm~10mm程度(ここでは、1mm)である。さらに、留出液排出口212aの中心から缶出液排出口212bの中心までの長さLは、例えば、300mmである。
【0027】
また、本実施形態において、分離ユニット200(底面212、上面214)は、留出液排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方(
図2中Z軸方向)に傾斜している。なお、分離ユニット200の傾斜角は、例えば、2.5度程度である。
【0028】
図1に戻って説明すると、気体温度調整ユニット230は、4つの気体温度調整部HCa(
図1中、第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2、第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4で示す)で構成される。液体温度調整ユニット240は、4つの液体温度調整部HCb(
図1中、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4で示す)で構成される。なお、ここでは、気体温度調整ユニット230が4つの気体温度調整部HCaで構成され、液体温度調整ユニット240が4つの液体温度調整部HCbで構成される場合を例に挙げて説明するが、気体温度調整部HCaの数、および、液体温度調整部HCbの数に限定はない。
【0029】
第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2は、例えば、電気ヒータ、オイルヒータ等で構成される。第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2は、分離ユニット200の本体210における原料液供給口212cと缶出液排出口212bとの間を、低沸点成分の沸点以上の所定の加熱温度に加熱する。
【0030】
第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2は、本体210の上面214を加熱する。つまり、第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2は、本体210内の気体層aを加熱する。第1の気体温度調整部HCa1は、第2の気体温度調整部HCa2よりも缶出液排出口212b側に配される。また、後述する制御部170によって、第1の気体温度調整部HCa1による加熱温度は、第2の気体温度調整部HCa2による加熱温度よりも高温に制御される。
【0031】
第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2は、本体210の底面212を加熱する。つまり、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2は、本体210内の液体層bを加熱する。第1の液体温度調整部HCb1は、第2の液体温度調整部HCb2よりも缶出液排出口212b側に配される。また、制御部170によって、第1の液体温度調整部HCb1による加熱温度は、第2の液体温度調整部HCb2による加熱温度よりも高温に制御される。
【0032】
第1の気体温度調整部HCa1と第1の液体温度調整部HCb1とは対向して設けられる。第2の気体温度調整部HCa2と、第2の液体温度調整部HCb2とは対向して設けられる。
【0033】
また、第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4は、例えば、水冷装置、油冷装置等で構成される。第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4は、分離ユニット200の本体210における原料液供給口212cと留出液排出口212aとの間を、低沸点成分の沸点未満の所定の冷却温度に冷却する。
【0034】
第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4は、本体210の上面214を冷却する。つまり、第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4は、本体210内の気体層aを冷却する。第4の気体温度調整部HCa4は、第3の気体温度調整部HCa3よりも留出液排出口212a側に配される。また、制御部170によって、第4の気体温度調整部HCa4の冷却温度は、第3の気体温度調整部HCa3の冷却温度よりも低温に制御される。
【0035】
第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4は、本体210の底面212を冷却する。つまり、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4は、本体210内の液体層bを冷却する。第4の液体温度調整部HCb4は、第3の液体温度調整部HCb3よりも留出液排出口212a側に配される。また、制御部170によって、第4の液体温度調整部HCb4の冷却温度は、第3の液体温度調整部HCb3の冷却温度よりも低温に制御される。
【0036】
第3の気体温度調整部HCa3と、第3の液体温度調整部HCb3とは対向して設けられる。第4の気体温度調整部HCa4と、第4の液体温度調整部HCb4とは対向して設けられる。
【0037】
缶出液排出ポンプ130は、吸入側が、配管を介して、缶出液排出口212bに接続される。缶出液排出ポンプ130は、吐出側が、配管を介して、缶出液貯留タンク132に接続される。缶出液排出ポンプ130は、缶出液排出口212bを通じて、分離ユニット200から缶出液を抜き出す。缶出液貯留タンク132は、缶出液排出ポンプ130によって抜き出された缶出液を貯留する。
【0038】
留出液排出ポンプ140は、吸入側が、配管を介して、留出液排出口212aに接続される。留出液排出ポンプ140は、吐出側が、配管を介して、留出液貯留タンク142に接続される。留出液排出ポンプ140は、留出液排出口212aを通じて、分離ユニット200から留出液を抜き出す。留出液貯留タンク142は、留出液排出ポンプ140によって抜き出された留出液を貯留する。
【0039】
気体温度測定部Taは、本体210内の気体層aの温度を測定する。本実施形態において、気体温度測定部Taは、第1気体温度測定部Ta1、第2気体温度測定部Ta2、第3気体温度測定部Ta3、第4気体温度測定部Ta4で構成される。詳しくは後述するが、第1気体温度測定部Ta1は、第1の気体温度調整部HCa1によって加熱される調整領域の温度を測定する。第2気体温度測定部Ta2は、第2の気体温度調整部HCa2によって加熱される調整領域の温度を測定する。第3気体温度測定部Ta3は、第3の気体温度調整部HCa3によって冷却される調整領域の温度を測定する。第4気体温度測定部Ta4は、第4の気体温度調整部HCa4によって冷却される調整領域の温度を測定する。
【0040】
液体温度測定部Tbは、本体210内の液体層bの温度を測定する。本実施形態において、液体温度測定部Tbは、第1液体温度測定部Tb1、第2液体温度測定部Tb2、第3液体温度測定部Tb3、第4液体温度測定部Tb4で構成される。詳しくは後述するが、第1液体温度測定部Tb1は、第1の液体温度調整部HCb1によって加熱される調整領域の温度を測定する。第2液体温度測定部Tb2は、第2の液体温度調整部HCb2によって加熱される調整領域の温度を測定する。第3液体温度測定部Tb3は、第3の液体温度調整部HCb3によって冷却される調整領域の温度を測定する。第4液体温度測定部Tb4は、第4の液体温度調整部HCb4によって冷却される調整領域の温度を測定する。
【0041】
気体温度測定部Taおよび液体温度測定部Tbの具体的な設置位置について説明する。
図3は、
図2において上面214および側面216を閉じたときのIII-III線断面図である。なお、
図3中、液体層bをクロスハッチングで示し、気体層aを白い塗りつぶしで示す。
【0042】
図3に示すように、分離ユニット200の本体210の上面214には、穴214aが複数(例えば4個)形成されている。穴214aは、例えば、水平断面(
図3中XY断面)が円形である。複数の穴214aは、上面214における
図3中X軸方向の中央に形成される。また、複数の穴214aは、互いに所定間隔離隔するとともに
図3中Y軸方向に並列して上面214に形成される。具体的に説明すると、穴214aは、上面214のうち、第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2、第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4に対応する箇所の中央に設けられる。穴214aには、気体温度測定部Ta(詳細には、第1気体温度測定部Ta1~第4気体温度測定部Ta4を構成する熱電対の熱接点)が設けられる。
【0043】
上面214に形成された穴214aに気体温度測定部Taを備える構成により、気体層aの最上部の温度を測定することができる。これにより、液体層bと気体層aとの界面がある程度変動しても、気体温度測定部Taの液体層bへの接触を防止することができる。したがって、液体層bの温度を測定してしまう事態を回避し、気体層aのみの温度を測定することが可能となる。
【0044】
また、分離ユニット200の本体210の底面212には、穴212dが複数(例えば4個)形成されている。穴212dは、例えば、水平断面(
図3中XY断面)が円形である。複数の穴212dは、底面212における
図3中X軸方向の中央に形成される。また、複数の穴212dは、互いに所定間隔離隔するとともに
図3中Y軸方向に並列して底面212に形成される。具体的に説明すると、穴212dは、底面212のうち、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4に対応する箇所の中央に設けられる。穴212dには、液体温度測定部Tb(詳細には、第1液体温度測定部Tb1~第4液体温度測定部Tb4を構成する熱電対の熱接点)が設けられる。
【0045】
底面212に形成された穴212dに液体温度測定部Tbを備える構成により、液体層bの最下部の温度を測定することができる。これにより、液体層bと気体層aとの界面がある程度変動しても、液体温度測定部Tbの気体層aへの接触を防止することができる。したがって、気体層aの温度を測定してしまう事態を回避し、液体層bのみの温度を測定することが可能となる。
【0046】
図1に戻って説明すると、制御部170は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部170は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して分離装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部170は、気体温度測定部Taおよび液体温度測定部Tbによる測定値に基づいて、第1の気体温度調整部HCa1~第4の気体温度調整部HCa4、第1の液体温度調整部HCb1~第4の液体温度調整部HCb4を制御する。制御部170による具体的な制御処理(温度制御処理)については、後に詳述する。
【0047】
続いて、分離装置100による原料液の分離について説明する。まず、原料液供給ポンプ112によって、原料液貯留タンク110から分離ユニット200の原料液供給口212cに原料液を供給する。上記したように分離ユニット200は、留出液排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方に傾斜している。このため、原料液は、分離ユニット200内(リブ220A間)を缶出液排出口212bに向かって流れる。
【0048】
分離ユニット200内における原料液供給口212cと缶出液排出口212bとの間は、第1の気体温度調整部HCa1、第2の気体温度調整部HCa2、第1の液体温度調整部HCb1、第2の液体温度調整部HCb2によって、低沸点成分の沸点以上に加熱されている。このため、原料液は、分離ユニット200内を原料液供給口212cから缶出液排出口212bに向かって流れる過程で加熱される。これにより、分離ユニット200において、原料液から、低沸点成分を多く含む蒸気(気体)が生成される。
【0049】
なお、原料液供給口212cから缶出液排出口212bに向かうに従って、低沸点成分を多く含む蒸気(以下、単に「蒸気」と称する)の生成量が増加する。このため、分離ユニット200内における原料液供給口212c側と、缶出液排出口212b側とで圧力差が生じる。つまり、缶出液排出口212b側の方が、原料液供給口212c側よりも圧力が高くなる。したがって、分離ユニット200内において生成された蒸気は、液体の流れと逆方向、すなわち、原料液供給口212c(留出液排出口212a)に向かって流れる。
【0050】
分離ユニット200内における原料液供給口212cと留出液排出口212aとの間は、第3の気体温度調整部HCa3、第4の気体温度調整部HCa4、第3の液体温度調整部HCb3、第4の液体温度調整部HCb4によって、低沸点成分の沸点未満に冷却されている。このため、蒸気は、分離ユニット200内を原料液供給口212cから留出液排出口212aに向かって流れる過程で冷却される。これにより、分離ユニット200において、蒸気に含まれる低沸点成分および高沸点成分が凝縮して液体(凝縮液)となる。そして、凝縮液は、分離ユニット200内(リブ220B間)を缶出液排出口212bに向かって自重で流れる。これにより、還流が為され、低沸点成分と高沸点成分の分離効率を向上することが可能となる。
【0051】
そして、分離ユニット200内における留出液排出口212aの上方の領域において凝縮された液体は、留出液として留出液排出口212aを通じて、留出液排出ポンプ140によって分離ユニット200外に抜き出される。留出液排出ポンプ140によって抜き出された留出液は、留出液貯留タンク142に貯留される。
【0052】
一方、分離ユニット200において蒸気が取り除かれた液体(蒸発しなかった液体)は、缶出液として缶出液排出口212bを通じて、缶出液排出ポンプ130によって分離ユニット200外に抜き出される。缶出液排出ポンプ130によって抜き出された缶出液は、缶出液貯留タンク132に貯留される。
【0053】
(温度制御処理)
続いて、制御部170による温度制御処理について説明する。
図4は、気体温度調整部HCa、液体温度調整部HCbによって温度が調整される領域Diの一例を説明する図である。
図4中、本体210内における熱の伝達の流れを実線の矢印で示し、冷熱の伝達の流れを破線の矢印で示す。なお、熱の伝達は、気体の流れによる伝達と、気体層aと液体層bとの熱交換とが含まれる。また、冷熱の伝達は、液体の流れによる伝達と、気体層aと液体層bとの熱交換とが含まれる。
【0054】
上記したように、分離装置100では、1対の気体温度調整部HCaと液体温度調整部HCbとが対向して、本体210の一端から他端に亘って複数設けられる。このため、本体210内には、所定の気体温度調整部HCaと、これに対向して配される所定の液体温度調整部HCbとによって温度が調整される領域Di(iは順番を示す)が複数形成される。領域Diは、本体210の一端から他端に亘って複数形成される。例えば、本体210の他端側(缶出液排出口212b側)に形成される領域を領域D1とし、一端側(留出液排出口212a側)に向かって昇順にすると、
図4に示す例では、右から順に領域D1、領域D2、領域D3、領域D4となる。
【0055】
制御部170は、例えば、第1気体温度測定部Ta1によって測定された、
図4に示す領域D1における気体層a(調整領域D1a)の温度の測定値PV(Process Variable)に基づいて、第1の気体温度調整部HCa1を制御する。また、制御部170は、第1液体温度測定部Tb1によって測定された、
図4に示す領域D1における液体層b(調整領域D1b)の温度の測定値PVに基づいて、第1の液体温度調整部HCb1を制御する。
【0056】
以下、分離装置100において領域D1~領域DN(N個の領域)が形成され、また、原料液供給口212cから缶出液排出口212bまでに領域がM個形成されるとして、制御部170による制御処理を説明する。つまり、原料液供給口212cから留出液排出口212aまでのN-M個の領域が形成されるとする。
【0057】
図5は、制御部170の具体的な構成を説明する図である。
図5に示すように、制御部170は、調整領域D1a~DNa、D1b~DNbごとの温度の測定値PVa(1)~PVa(N)、測定値PVb(1)~PVb(N)に基づいて、各気体温度調整部HCa1~HCaNおよび各液体温度調整部HCb1~HCbNの操作量MV(Manipulated Variable)をそれぞれ算出する。そして、制御部170は、算出した操作量MVを、対応する気体温度調整部HCaまたは液体温度調整部HCbに出力する。
【0058】
具体的に説明すると、制御部170は、設定値参照部310、偏差算出部312、設定値補償部314、加除熱量算出部316とを含んで構成される。
【0059】
図6は、制御部170の温度制御処理の流れを説明するフローチャートである。この温度制御処理は、所定時間間隔の割込処理として実行される。
図7は、制御部170のうち、第2の気体温度調整部HCa2および第2の液体温度調整部HCb2の制御ブロックを抽出した図である。なお、制御部170において、第1の気体温度調整部HCa1~第Nの気体温度調整部HCaN(第2の気体温度調整部HCa2を除く)、第1の液体温度調整部HCb1から第Nの液体温度調整部HCbN(第2の液体温度調整部HCb2を除く)の制御ブロックについても
図7と同様に展開されている。
【0060】
(ステップS110)
設定値参照部310は、不図示のメモリに記憶された温度設定値SV(Set Value)を参照する。温度設定値(目標値)SVは、領域D1~領域DNごとに予め定められている。温度設定値SVは、分離効率(缶出液中の高沸点成分の濃度、または、留出液中の低沸点成分の濃度)に基づいて、予め決定される値である。温度設定値SVは、水平方向(本体210の一端から他端に向かう方向)に隣り合う領域D1~領域DN間で異なる。具体的に説明すると、温度設定値SVは、原料液供給口212cから缶出液排出口212bに向かうに従って大きい値に決定される。また、温度設定値SVは、原料液供給口212cから留出液排出口212aに向かうに従って小さい値に決定される。
【0061】
(ステップS120)
偏差算出部312は、温度設定値SVと、測定値PVとの偏差を算出する。設定値補償部314は、偏差算出部312によって算出された偏差と、所定の調整ゲインとに基づいてフィードフォワード成分を算出する。
【0062】
(ステップS130)
設定値補償部314は、算出したフィードフォワード成分に基づいて温度設定値SVを補償する。以下、温度設定値SVの補償処理について説明する。上記したように、気体層aにおける気体の流れの方向から、気体層aでは上流段がi-1番目となる。また、液体層bにおける液体の流れ方向から、液体層bでは上流段がi+1番目となる。i番目の領域Diにおいて、フィードフォワード成分の調整ゲインを以下のとおり定義する。液体層bから気体層aへのフィードフォワード成分の調整ゲイン(制御パラメータ)をKba(i)とする。気体層aから液体層bへのフィードフォワード成分の調整ゲインをKab(i)とする。上流側の気体層aからのフィードフォワード成分の調整ゲインをKa(i,i-1)とする。上流側の液体層bからのフィードフォワード成分の調整ゲインをKb(i,i+1)とする。また、気体温度測定部Taiの測定値をPVa(i)とし、液体温度測定部Tbiの測定値をPVb(i)とする。
【0063】
(i番目(1≦i≦N)の領域Diの温度設定値SVの補償処理)
(A)加熱側(原料液供給口212cから缶出液排出口212bまでの流路)の補償処理
調整領域Diaでは、上流段の調整領域D(i-1)aから受ける温度変動、および、調整領域Dib(液体層b)からの蒸発による気体層aの温度変動を補償するフィードフォワード成分を温度設定値SVに加算する。一方、加熱側において、調整領域Dibでは、調整領域Dia(気体層a)からの気体の凝縮は無視できる程度に小さい。このため、加熱側において、調整領域Dibでは、上流段の調整領域D(i+1)bから受ける温度変動のみを補償するフィードフォワード成分を温度設定値SVに加算する。
【0064】
(A-1)i=1の場合
調整領域D1aの温度設定値SV(1)の補償値SVa(1)は、下記式(1)から算出することができる。
SVa(1)=SV(1)+Kba(1){SV(1)-PVb(1)} …式(1)
上記式(1)において、第2項は、液体層bから気体層aへのフィードフォワード成分である。
【0065】
調整領域D1bの温度設定値SV(1)の補償値SVb(1)は、下記式(2)から算出することができる。
SVb(1)=SV(1)+Kb(1,2){SV(2)-PVb(2)} …式(2)
上記式(2)において第2項は、上流段(i=2)からのフィードフォワード成分である。
【0066】
(A-2)2≦i≦Mの場合
調整領域Diaの温度設定値SV(i)の補償値SVa(i)は、下記式(3)から算出することができる。
SVa(i)=SV(i)+Kba(i){SV(i)-PVb(i)}+Ka(i,i-1){SV(i-1)-PVa(i-1)} …式(3)
上記式(3)において、第2項は、液体層bから気体層aへのフィードフォワード成分である。第3項は、上流段(i-1)からのフィードフォワード成分である。
【0067】
調整領域Dibの温度設定値SV(i)の補償値SVb(i)は、下記式(4)から算出することができる。
SVb(i)=SV(i)+Kb(i,i+1){SV(i+1)-PVb(i+1)} …式(4)
上記式(4)において第2項は、上流段(i+1)からのフィードフォワード成分である。
【0068】
(B)冷却側(原料液供給口212cから留出液排出口212aまでの流路)の補償処理
調整領域Dibでは、上流段の調整領域D(i+1)bから受ける温度変動、および、調整領域Dia(気体層a)からの凝縮による液体層bの温度変動を補償するフィードフォワード成分を温度設定値SVに加算する。一方、冷却側において、調整領域Diaでは、調整領域Dib(液体層b)からの液体の蒸発は無視できる程度に小さい。このため、冷却側において、調整領域Diaでは、上流段の調整領域D(i-1)aから受ける温度変動のみを補償するフィードフォワード成分を温度設定値SVに加算する。
【0069】
(B-1)M+1≦i≦N-1の場合
調整領域Diaの温度設定値SV(i)の補償値SVa(i)は、下記式(5)から算出することができる。
SVa(i)=SV(i)+Ka(i,i-1){SV(i-1)-PVa(i-1)} …式(5)
上記式(5)において、第2項は、上流段(i-1)からのフィードフォワード成分である。
【0070】
調整領域Dibの温度設定値SV(i)の補償値SVb(i)は、下記式(6)から算出することができる。
SVb(i)=SV(i)+Kab(i){SV(i)-PVa(i)}+Kb(i,i+1){SV(i+1)-PVb(i+1)} …式(6)
上記式(6)において第2項は、気体層aから液体層bへのフィードフォワード成分である。第3項は、上流段(i+1)からのフィードフォワード成分である。
【0071】
(B-2)i=Nの場合
調整領域DNaの温度設定値SV(N)の補償値SVa(N)は、下記式(7)から算出することができる。
SVa(N)=SV(N)+Ka(N,N-1){SV(N-1)-PVa(N-1)} …式(7)
上記式(7)において、第2項は、上流段(N-1)からのフィードフォワード成分である。
【0072】
調整領域DNbの温度設定値SV(N)からの補償値SVb(N)は、下記式(8)から算出することができる。
SVb(N)=SV(N)+Kab(N){SN(N)-PVa(N)} …式(8)
上記式(8)において、第2項は、気体層aから液体層bへのフィードフォワード成分である。
【0073】
(ステップS140)
そして、加除熱量算出部316は、上記式(1)~式(8)に基づいて算出された補償値SV(i)から、フィードバック成分(測定値PVa(i)、測定値PVb(i))を減算し、所定のアルゴリズム(例えば、PID制御)を用いて、気体温度調整部HCa、および、液体温度調整部HCbの操作量MVをそれぞれ算出する。加除熱量算出部316は、算出した操作量MVを、対応する気体温度調整部HCa、液体温度調整部HCbにそれぞれ出力する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の分離装置100は、気体温度測定部Taと、液体温度測定部Tbとを備える構成により、本体210内の気体層aの温度と、液体層bの温度とをそれぞれ独立して測定することができる。
【0075】
鉛直方向に配される気体層aと液体層bとの気液平衡状態を維持し、分離効率を向上させるために、上記領域Diの温度設定値SVは1つに決定される。つまり、鉛直方向に配される気体層a(調整領域Dia)と液体層b(調整領域Dib)との温度設定値SVは、同一に決定される。
【0076】
しかし、気体層aは、液体層bと比較して、温度変化の応答速度が速い(伝達関数が異なる)。このため、気体層aの温度のみに基づいて、気体層aおよび液体層bの温度を調整すると、液体層bの加熱や冷却が不十分となる。一方、液体層bの温度のみに基づいて、気体層aおよび液体層bの温度を調整すると、気体層aの加熱や冷却が過剰となる。
【0077】
そこで、本実施形態では、気体温度調整部HCaおよび液体温度調整部HCbを備える構成により、気体層aの温度と、液体層bの温度とを独立して調整することができる。これにより、伝達関数の異なる気体層aおよび液体層bを両方とも温度設定値SVに維持することができ、低沸点成分と高沸点成分の分離効率を向上させることができる。特に、原料液の温度、流量、圧力、組成が変動した場合であっても、気体層aおよび液体層bを両方とも温度設定値SVに維持することが可能となる。
【0078】
また、上記したように、制御部170は、上流段の領域の偏差を下流段の領域の温度設定値SVに加算して補償値を算出する。これにより、上流段の温度変動が、下流段に与える影響をフィードフォワードとして補償することができる。また、制御部170は、加熱側において、液体層bの偏差を加算して補償値を算出し、冷却側において、気体層aの偏差を加算して補償値を算出する。これにより、気体層aの温度変動が液体層bに与える影響と、液体層bの温度変動が気体層aに与える影響とをフィードフォワードとして補償することができる。したがって、本体210内において温度変動が生じたとしても、本体210全体に温度変動が伝搬してしまう事態を回避することが可能となる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
例えば、上記実施形態において、制御部170は、隣接する領域からのフィードフォワード成分を加算して補償値を算出する構成を例に挙げて説明した。しかし、制御部170は、少なくとも流体(液体、気体)の流れ方向の上流側の領域のうち、いずれか1または複数の領域を複合してフィードフォワード成分を加算し、補償値を算出すればよい。
【0081】
また、上記実施形態において、加除熱量算出部316が、PID制御を行う構成を例に挙げて説明した。しかし、加除熱量算出部316は、気体温度調整部HCaや液体温度調整部HCbをオンオフ制御してもよいし、カスケード制御してもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、底面212に穴212dが設けられ、上面214に穴214aが設けられる構成を例に挙げて説明した。しかし、穴212d、214aは必須の構成ではない。穴212d、214aを備えない場合、気体温度測定部Taは、上面214の平滑面に設けられてもよい。また、液体温度測定部Tbは、底面212の平滑面に設けられてもよい。いずれにせよ、液体温度測定部Tbは、本体210(流路)内に形成される液体層bと気体層aとの界面以下の所定の位置に設けられ、気体温度測定部Taは、本体210内における液体層bと気体層aとの界面より上方に設けられればよい。
【0083】
また、上記実施形態では、設定値補償部314が、加熱側の調整領域Dibにおいて、上流段の調整領域D(i+1)bから受ける温度変動のみを補償するフィードフォワード成分を加算する場合を例に挙げて説明した。しかし、設定値補償部314は、加熱側の調整領域Dibにおいて、調整領域Diaと同様に、上流段の調整領域D(i-1)aから受ける温度変動、および、調整領域Dib(液体層b)からの蒸発による気体層aの温度変動を補償するフィードフォワード成分を加算してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、設定値補償部314が、冷却側の調整領域Diaにおいて、上流段の調整領域D(i-1)aから受ける温度変動のみを補償するフィードフォワード成分を加算する場合を例に挙げて説明した。しかし、設定値補償部314は、冷却側の調整領域Diaにおいて、調整領域Dibと同様に、上流段の調整領域D(i+1)bから受ける温度変動、および、調整領域Dia(気体層a)からの凝縮による液体層bの温度変動を補償するフィードフォワード成分を加算してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、制御部170が気体温度測定部Taの測定値、および、液体温度測定部Tbの測定値に基づいて、フィードフォワード成分を算出する構成を例に挙げて説明した。しかし、原料液の温度を測定する測定部を設けておき、原料液の温度の測定値の偏差を用いて温度設定値SVを補償してもよい。
【0086】
また、上記実施形態において、制御部170が、状態量として、温度の測定値に基づいて、フィードフォワード成分を算出する構成を例に挙げて説明した。しかし、制御部170は、温度に加えて、または、代えて、流量、圧力、原料液の組成、缶出液の組成、および、留出液の組成のうちいずれか1または複数の測定値に基づいて、フィードフォワード成分を算出してもよい。ただし、温度以外の状態量の偏差は、温度への伝達係数を乗じてから温度設定値SVに加算するとよい。
【0087】
また、上記実施形態において、気体層aの流れと、液体層bの流れとが対向流である構成を例に挙げて説明した。しかし、気体層aの流れと、液体層bの流れとが平行流であってもよい。いずれにせよ、制御部170は、流体(液体、気体)の流れ方向の上流側の領域のうち、いずれか1または複数の領域からのフィードフォワード成分を加算して補償値を算出すればよい。
【0088】
また、温度設定値SV、気体温度測定部Taおよび液体温度測定部Tbによる測定値、設定値補償部314が算出した補償値を不図示の表示部に表示してもよい。
【0089】
また、上記実施形態において、分離ユニット200の底面212が留出液排出口212aから缶出液排出口212bに向かって鉛直下方に傾斜している構成について説明した。しかし、底面212は、水平方向に延在していてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、分離ユニット200の寸法関係や傾斜角について説明した。しかし、分離ユニット200は、原料液における低沸点成分と高沸点成分との割合、目的とする分離効率、原料液供給ポンプ112による原料液の供給流速(処理速度)に基づいて、適宜設定されればよい。
【0091】
また、上記実施形態において、分離ユニット200がリブ220A、220Bを備える構成を例に挙げて説明した。しかし、リブ220A、220Bに代えて多孔質体を本体210上に載置してもよい。多孔質体を載置することで、リブ220A、220Bを設ける構成と同様に、流路の端部側を流れる液体の流速と、流路の中央側を流れる液体の流速との差を小さくすることができる。
【0092】
また、上記実施形態において、留出液排出口212a、缶出液排出口212b、および、原料液供給口212cが底面212に形成される構成を例に挙げて説明した。しかし、留出液排出口212a、缶出液排出口212b、および、原料液供給口212cの群から選択される1または複数は、側面216に形成されてもよい。
【0093】
また、分離装置100は、本体210が2つに分割されて構成されてもよい。具体的に説明すると、原料液供給口212cと、缶出液排出口212bと、上面に形成された通過口を備える第1の本体と、第1の本体の通過口から排出された蒸気(気体)が導入される通過口と、留出液排出口212aとを備える第2の本体とを備え、第1の本体と、第2の本体とが別体で構成される分離装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、原料液を留出液と缶出液とに分離する分離装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
100 分離装置
170 制御部
210 本体
HCa 気体温度調整部
HCb 液体温度調整部
Ta 気体温度測定部
Tb 液体温度測定部