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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】カテーテル、及び、カテーテルキット
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A61M25/00 630
A61M25/00 610
A61M25/00 620
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017162592
(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公開番号】P2019037572
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 康史
(72)【発明者】
【氏名】清水 太一
(72)【発明者】
【氏名】杉原 勇作
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236472(JP,A)
【文献】特開2010-88833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105377352(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0297010(US,A1)
【文献】米国特許第6210396(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップのショアD硬度が40以下であるとともに、前記先端チップには前記補強層が存在しておらず、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、4mm以上であるとともに、当該先端チップの最大外径の倍以上18倍以下であり、
前記先端チップの外径は、当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず一定であるカテーテル。
【請求項2】
ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップのショアD硬度が40以下であるとともに、前記先端チップには前記補強層が存在しておらず、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、4mm以上であるとともに、当該先端チップの最大外径の7倍以上18倍以下であり、
前記先端チップは、
当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域と、
前記第1一定径領域の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域と、
前記縮径領域の先端側に連なっていて当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域と、
を有し、
前記第2一定径領域が前記先端チップの最先端部であるカテーテル。
【請求項3】
前記補強層において前記カテーテル本体の先端部に配置されている部分は、ワイヤを編組したブレードにより構成されており、
前記ワイヤのピッチが、前記カテーテル本体の前記先端部の外径よりも大きい請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体は、
前記先端チップの基端側に連なっている第1先端領域と、
前記第1先端領域の基端側に連なっている第2先端領域と、
を有し、
前記第1先端領域は、前記先端チップと同一の樹脂材料により構成されており、
前記第2先端領域は、前記第1先端領域を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されており、
前記補強層が前記第1先端領域と前記第2先端領域とに亘って連続して設けられている請求項1からのいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテル本体は、
基端側に向けて前記ルーメンの内径と当該カテーテル本体の外径とが徐々に拡径している拡径領域を、前記第2先端領域よりも基端側に有している請求項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル本体における前記拡径領域よりも先端側から前記拡径領域よりも基端側にかけての領域では、前記樹脂層が同一の樹脂材料により構成されている請求項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテル本体において前記拡径領域の基端側に隣接している領域は、前記拡径領域の基端と同じ外径の小径領域であり、
前記カテーテル本体において前記小径領域の基端側に隣接している領域は、前記小径領域よりも大径の大径領域である請求項又はに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記補強層において前記カテーテル本体の長手方向における中間部から基端側の部分は、
ワイヤを編組することにより構成された第1ブレードと、
ワイヤを編組することにより構成され前記第1ブレードの外周囲に配置されている第2ブレードと、
を含んで構成されており、
前記第2ブレードを構成する個々のワイヤの断面積が、前記第1ブレードを構成する個々のワイヤの断面積よりも大きく、
前記第1ブレードを構成する前記ワイヤのピッチが前記カテーテル本体の先端の外径の2倍未満に設定されている請求項1からのいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項9】
請求項に記載のカテーテルと、
前記ルーメンに挿通して用いられるガイドワイヤと、
を備え、
前記第2一定径領域の内径が前記ガイドワイヤの先端部の外径と同等であるカテーテルキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、及び、カテーテルキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管等の体腔に挿入可能なカテーテルの開発が行なわれている(例えば特許文献1)。
一般に、カテーテルは、ガイドワイヤを用いたオーバーザワイヤという手法で体腔に挿入される。この手法では、カテーテルに挿通したガイドワイヤの先端部をカテーテルの先端から突出させ、該ガイドワイヤの先端を所望の分枝路に到達させた後、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを押し込むことによって、カテーテルを所望の分枝路に挿入させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-82802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトの血管のなかには相対的に大径の血管から分枝した相対的に細径の穿通枝と呼ばれる血管がある。所望の分枝路が穿通枝などの細い血管やAVM、脊椎動脈、又は、腫瘍に繋がる栄養血管である場合、市販のカテーテルでは、熟練した術者にとっても分枝路の十分な深さの位置に挿入させることは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤに先導させてカテーテルを穿通枝などの細い血管やAVM、脊椎動脈、又は、腫瘍に繋がる栄養血管に進入させる手技を好適に行うことが可能な構造のカテーテル及びカテーテルキットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップのショアD硬度が40以下であるとともに、前記先端チップには前記補強層が存在しておらず、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、4mm以上であるとともに、当該先端チップの最大外径の倍以上18倍以下であり、
前記先端チップの外径は、当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず一定であるカテーテルを提供するものである。
また、本発明は、ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップのショアD硬度が40以下であるとともに、前記先端チップには前記補強層が存在しておらず、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、4mm以上であるとともに、当該先端チップの最大外径の7倍以上18倍以下であり、
前記先端チップは、
当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域と、
前記第1一定径領域の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域と、
前記縮径領域の先端側に連なっていて当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域と、
を有し、
前記第2一定径領域が前記先端チップの最先端部であるカテーテルを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップのショアD硬度が40以下であるとともに、前記先端チップには前記補強層が存在しておらず、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、4mm以上であるとともに、当該先端チップの最大外径の倍以上18倍以下であり、
前記先端チップは、
当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域と、
前記第1一定径領域の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域と、
前記縮径領域の先端側に連なっていて当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域と、
を有し、
前記第2一定径領域が前記先端チップの最先端部であるカテーテルと、
前記ルーメンに挿通して用いられるガイドワイヤと、
を備え、
前記第2一定径領域の内径が前記ガイドワイヤの先端部の外径と同等であるカテーテルキットを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイドワイヤに先導させてカテーテルを穿通枝などの細い血管やAVM、脊椎動脈、又は、腫瘍に繋がる栄養血管に進入させる手技を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るカテーテルの全体図である。
図2】第1実施形態に係るカテーテルの縦断面図である。
図3図2の部分拡大図であり、カテーテルの先端部を示す。
図4図4(a)及び図4(b)は第1実施形態に係るカテーテルの第1動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は第1実施形態に係るカテーテルの第1動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態に係るカテーテルの第1動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図7図7(a)及び図7(b)は第1実施形態に係るカテーテルの第2動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図8】第1実施形態に係るカテーテルの第2動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図9】第2実施形態に係るカテーテルの先端チップの縦断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は比較形態に係るカテーテルの動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図11図11(a)及び図11(b)は比較形態に係るカテーテルの動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
図12】比較形態に係るカテーテルの動作例における一連の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
本実施形態に係るカテーテルの各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0011】
本発明の実施形態を説明する際に用いられる用語は、特段の断りがない限り、以下のとおり定義される。
実施形態の説明において、適宜、先端部および基端部という用語を使用する場合がある。先端部とは、カテーテルの各部において、カテーテルの挿入先端側の端(遠位端)を含む所定の長さ領域をいう。また基端部とは、カテーテルの各部において、カテーテルの基端側の端(近位端)を含む所定の長さ領域をいう。
また、軸心とは、カテーテル本体の長手方向に沿った中心軸を意味する。
カテーテルの縦断面とは、カテーテルを軸心に沿って切断した断面をいう。
【0012】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図9を用いて第1実施形態を説明する。
図1から図3のいずれかに示すように、本実施形態に係るカテーテル100は、ルーメン31を有する内層32と内層32の外周囲に形成されている外層33とを含む樹脂層30と、樹脂層30に埋設されているとともにルーメン31の周囲に配置されている補強層40と、を有する長尺なカテーテル本体10を備えている。
更に、カテーテル100は、放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカー70を備えている。マーカー70は、カテーテル本体10の先端において樹脂層30に埋設されているとともに補強層40の先端に固定され、ルーメン31の周囲に配置されている。
更に、カテーテル100は、カテーテル本体10の先端に連接されている樹脂製の先端チップ80を備えている。先端チップ80は、先端が開口している先端ルーメン81を有し、先端ルーメン81はルーメン31と連通している。以下、先端ルーメン81の先端の開口を先端開口82と称する。
カテーテル100は、カテーテル本体10の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、先端チップ80の最大外径が0.6mm以下の、非能動タイプのマイクロカテーテルである。
カテーテル本体10の軸方向におけるマーカー70の寸法(長さ寸法)が、先端チップ80の最大外径よりも小さい。
そして、先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さが、当該先端チップ80の最大外径の3倍以上18倍以下である。
本実施形態の場合、後述するように、カテーテル本体10の先端側に設けられた補強層がブレード(第1ブレード50)である。この場合、先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さが、当該先端チップ80の最大外径の4倍以上であることが好ましい。
先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さは、当該先端チップ80の最大外径の7倍以上15倍以下であることが更に好ましく、8倍以上12倍以下であることが一層好ましい。
なお、図1から図3の各図においては、カテーテル本体10及び先端チップ80の径方向の寸法を大幅に拡大して示している。
【0013】
このような構成のカテーテル100によれば、穿通枝などの細い血管やAVM、脊椎動脈、又は、腫瘍に繋がる栄養血管にカテーテル100を進入させる手技を好適に行うことができる。例えば図4(a)から図6にかけて、もしくは図7(a)から図8にかけて、それぞれ時系列的な動作例を示すように、相対的に大径の動脈(例えば内頸動脈301)から、当該動脈から分枝した細径の血管(例えば穿通枝302)にカテーテル100を進入させる手技を好適に行うことができる。
すなわち、先端チップ80が十分に柔らかく構成されている(後述するように、先端チップ80のショアD硬度が例えば40以下である)ことにより、先端チップ80をガイドワイヤ200の屈曲形状に良好に追従させつつ、先端チップ80をガイドワイヤ200に沿って穿通枝302等に進入させることができる。
特に、内径がおよそ5mmの内頸動脈301から穿通枝302にカテーテル100を進入させる手技を好適に行うことができる。
【0014】
以下、より詳細に説明する。
【0015】
カテーテル本体10を構成する樹脂層30は、本実施形態の場合、それぞれ樹脂材料により構成されている内層32と外層33とを含む層構造となっている。樹脂層30は、後述する親水性コートを含んで構成されていてもよい。
内層32は中空管構造のものである。ルーメン31は内層32の内部空間である。ルーメン31はカテーテル本体10の先端から基端に亘って連続的に形成されており、カテーテル本体10の先端と基端においてそれぞれ開口している。
外層33は内層32と同軸の中空管構造のものであり、外層33の内周面は内層32の外周面に対して接合している。
内層32を構成する樹脂材料と外層33を構成する樹脂材料とは互いに異なっていてもよいし、互いに等しくてもよい。
【0016】
先端チップ80は、カテーテル本体10の樹脂層30と同様の層構造となっている。すなわち、先端チップ80は、内層83と外層84との2層構造となっている。
内層83は中空管構造のものである。先端ルーメン81は内層83の内部空間である。先端ルーメン81は先端チップ80の先端から基端に亘って連続的に形成されている。先端ルーメン81の基端はルーメン31の先端と連通している。先端ルーメン81は、先端(先端開口82)において開口している。
内層83は内層32の先端側に連接されている。
外層84は外層33の先端側に連接されている。
カテーテル本体10の先端における内層32の内径及び外径は、先端チップ80の基端における内層83の内径及び外径と等しい。
カテーテル本体10の先端における外層33の内径及び外径は、先端チップ80の基端における外層84の内径及び外径と等しい。
【0017】
本実施形態の場合、先端チップ80の外径は、当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定である。
ここで、先端チップ80の内径及び外径が先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定であるとは、先端チップ80の軸方向における位置に応じた先端チップ80の外径の変化、及び内径の変化が、それぞれ±10%以内の範囲に収まっていることを意味し、好ましくはそれぞれ±5%以内の範囲に収まっている。
なお、先端チップ80の先端の外周側の角部はR面取形状とされていてもよく、その場合、先端チップ80の軸方向において角部がR面取形状とされている先端領域を除き、先端チップ80の外径が当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定となっている。
【0018】
また、先端チップ80のショアD硬度は、40以下である。先端チップ80のショアD硬度は、20以上であることが好ましい。
ここで、先端チップ80のショアD硬度は、先端チップ80の外面側のショアD硬度であり、本実施形態の場合、外層84のショアD硬度である。
【0019】
本実施形態の場合、補強層40は、内層32を包囲するように内層32の周囲に配置されている。
補強層40は、第1ブレード50と、第1ブレード50の外周囲に配置されている第2ブレード60と、を含んで構成されている。
より詳細には、例えば、第1ブレード50はカテーテル本体10の先端から基端に亘って連続的に配置されている(図2図3参照)。
一方、第2ブレード60は、例えば、カテーテル本体10の中間部から基端に亘って連続的に配置されているが、カテーテル本体10の先端部には配置されていない(図2参照)。
【0020】
第1ブレード50は、複数本のワイヤを編組することにより構成されている。好ましくは、複数本ずつのワイヤを互いに逆向きに巻回することにより第1ブレード50が構成されている。
【0021】
一例として、第1ブレード50は、第1ワイヤ51~第8ワイヤ58の8本のワイヤを編組することにより構成されている。ただし、第1ブレード50を構成するワイヤの本数は、この例に限らない。
これらワイヤの各々は、例えば単線(撚り線ではない)のワイヤである。これらワイヤの断面形状は、特に限定されないが、例えば円形となっている。すなわち、第1ブレード50を構成するワイヤは、例えば丸線である。第1ワイヤ51~第8ワイヤ58の外径は、例えば、互いに等しい。
第1ブレード50を構成するワイヤのうち、第1ワイヤ51、第2ワイヤ52、第3ワイヤ53及び第4ワイヤ54の4本のワイヤは、互いに並列に、且つ、それぞれ螺旋状に延在している。つまり、第1ワイヤ51~第4ワイヤ54は、カテーテル本体10の軸方向において互いに略等間隔を保って内層32の周囲に螺旋状に巻回されている。
また、残りの第5ワイヤ55、第6ワイヤ56、第7ワイヤ57及び第8ワイヤ58は、互いに並列に、且つ、それぞれ螺旋状に延在している。つまり、第5ワイヤ55~第8ワイヤ58は、カテーテル本体10の軸方向において互いに略等間隔を保って内層32の周囲に螺旋状に巻回されている。
ただし、第1ワイヤ51~第4ワイヤ54が形成する螺旋の周回方向と、第5ワイヤ55~第8ワイヤ58が形成する螺旋の周回方向とは、互いに反対方向(反対回り)となっている。したがって、第1ワイヤ51~第4ワイヤ54と、第5ワイヤ55~第8ワイヤ58とは、カテーテル本体10の軸方向において周期的に互いに交差している。
【0022】
本実施形態の場合、第1ブレード50を構成するワイヤの各々のピッチP(図3)は、カテーテル本体10の先端部(例えば、後述する先端側小径領域21)の外径よりも大きい。ここで、第1ワイヤ51についてのピッチPを図3に図示しているように、ピッチPは、個々のワイヤにおける隣り合う一対の巻回部の軸心間距離である。
【0023】
このように、補強層40においてカテーテル本体10の先端部(例えば先端側小径領域21)に配置されている部分は、ワイヤ(例えば第1ワイヤ51~第8ワイヤ58)を編組したブレード(第1ブレード50)により構成されており、ワイヤのピッチが、カテーテル本体10の先端部の外径よりも大きい。
この構造により、内層32の外表面に皺が形成されてしまうことを抑制でき、内層32の外表面を平坦にでき、カテーテル本体10の軸方向において内層32の層厚を均一にすることができる。また、この構造により、カテーテル本体10の先端部の適度なコシと柔軟性とが両立できる。
【0024】
なお、例えば、第1ブレード50は、当該第1ブレード50の先端から基端に亘って、ワイヤが一定のピッチで巻回されることにより構成されている。
【0025】
第2ブレード60は、複数本のワイヤを編組することにより構成されている。
一例として、第2ブレード60は、第1ワイヤ61~第8ワイヤ68の8本のワイヤを編組することにより構成されている。ただし、第2ブレード60を構成するワイヤの本数は、この例に限らない。
これらワイヤの各々は、例えば単線(撚り線ではない)のワイヤである。これらワイヤの断面形状は、特に限定されないが、例えば扁平な矩形状となっている。すなわち、第2ブレード60を構成するワイヤは、例えば、平角線である。第1ワイヤ61~第8ワイヤ68の断面形状及び断面積は、例えば、互いに等しい。
【0026】
第2ブレード60を構成するワイヤのうち、第1ワイヤ61、第2ワイヤ62、第3ワイヤ63及び第4ワイヤ64の4本のワイヤは、互いに並列に、且つ、それぞれ螺旋状に延在している。つまり、第1ワイヤ61~第4ワイヤ64は、カテーテル本体10の軸方向において互いに略等間隔を保って第1ブレード50の周囲に螺旋状に巻回されている。
また、残りの第5ワイヤ65、第6ワイヤ66、第7ワイヤ67及び第8ワイヤ68は、互いに並列に、且つ、それぞれ螺旋状に延在している。つまり、第5ワイヤ65~第8ワイヤ68は、カテーテル本体10の軸方向において互いに略等間隔を保って第1ブレード50の周囲に螺旋状に巻回されている。
ただし、第1ワイヤ61~第4ワイヤ64が形成する螺旋の周回方向と、第5ワイヤ65~第8ワイヤ68が形成する螺旋の周回方向とは、互いに反対方向(反対回り)となっている。したがって、第1ワイヤ61~第4ワイヤ64と、第5ワイヤ65~第8ワイヤ68とは、カテーテル本体10の軸方向において周期的に互いに交差している。
【0027】
ここで、第1ワイヤ61~第8ワイヤ68の断面積は、第1ワイヤ51~第8ワイヤ58の断面積よりも大きい。
すなわち、補強層40においてカテーテル本体10の長手方向における中間部から基端側の部分は、第1ブレード50と、第1ブレード50の外周囲において編組された第2ブレード60と、を含んで構成されており、第2ブレード60を構成する個々のワイヤの断面積が、第1ブレード50を構成する個々のワイヤの断面積よりも大きい。
これにより、カテーテル本体10の中間部から基端側の部分の剛性を十分に確保できるため、カテーテル100の良好なプッシャビリティを実現できる。
【0028】
リング状のマーカー70は、内層32及び外層33と同軸に、内層32の周囲に配置されている。
上述のように、マーカー70は、補強層40の先端に固定されている。より詳細には、例えば、マーカー70は、例えば、第1ブレード50の先端の周囲に配置され、第1ブレード50の先端に対してかしめ固定されている。ただし、マーカー70は、第1ブレード50の先端の先端側に接合されるなどにより第1ブレード50の先端側に連接されていてもよい。
上述のように、カテーテル本体10の軸方向におけるマーカー70の寸法、すなわちマーカー70の軸長が、先端チップ80の最大外径よりも小さい。
マーカー70の軸長は、0.2mm以上0.4mm以下であることが好ましく、典型的には0.3mm程度とすることができる。
また、マーカー70の軸長は、マーカー70の外径よりも短いことが好ましく、マーカー70の内径よりも短いことが更に好ましい。
【0029】
図3に示すように、カテーテル本体10は、先端チップ80の基端側に連なっている第1先端領域11と、第1先端領域11の基端側に連なっている第2先端領域12と、を有している。
第1先端領域11は、先端チップ80と同一の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第1先端領域11における内層32を構成する樹脂材料と先端チップ80の内層83を構成する樹脂材料とが同一の材料であるとともに、第1先端領域11における外層33を構成する樹脂材料と先端チップ80の外層84を構成する樹脂材料とが同一の材料である。
第2先端領域12は、第1先端領域11を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、内層32は、例えば、カテーテル本体10の先端から基端に亘って同一の樹脂材料により構成されている。このため、第2先端領域12における内層32を構成する樹脂材料と第1先端領域11における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料である。ただし、第2先端領域12における外層33を構成する樹脂材料は、第1先端領域11における外層33を構成する樹脂材料よりも高硬度である。
そして、補強層40が第1先端領域11と第2先端領域12とに亘って連続して設けられている。より詳細には、図3に示すように、第1ブレード50が第1先端領域11と第2先端領域12とに亘って連続して設けられている。
このような構成により、カテーテル本体10の先端部の剛性を基端側に向けて段階的に高くすることができることから、カテーテル本体10の先端部における適度なプッシャビリティを実現でき、且つ、第1先端領域11と第2先端領域12との境界で剛性が過度に不連続に変化することを抑制できる。
【0030】
なお、第2先端領域12のショアD硬度は、例えば、先端チップ80及び第1先端領域11のショアD硬度の1.1倍以上1.2倍以下とすることができる。
第1先端領域11及び第2先端領域12のショアD硬度は、各々の外面側のショアD硬度である。
【0031】
カテーテル本体10は、基端側に向けてルーメン31の内径と当該カテーテル本体10の外径とが徐々に拡径している拡径領域22を、第2先端領域12よりも基端側に有している。
例えば、拡径領域22においては、基端側に向けて直線テーパー状にルーメン31の内径とカテーテル本体10の外径とが徐々に拡径している。
このような構成により、拡径領域22において基端側に向けてカテーテル本体10の剛性を徐々に増大させることができ、カテーテル本体10の良好なプッシャビリティを実現できる。
また、ルーメン31を介してカテーテル本体10の先端部まで薬液等の液体をスムーズに供給できる。
【0032】
カテーテル本体10における拡径領域22よりも先端側から拡径領域22よりも基端側にかけての領域(図3に示す第4先端領域14)では、樹脂層30が同一の樹脂材料により構成されている。
より詳細には、第4先端領域14の先端から基端に亘って内層32の材料が同一の樹脂材料であるとともに、第4先端領域14の先端から基端に亘って外層33の材料が同一の樹脂材料である。
このような構成により、拡径領域22と、カテーテル本体10において拡径領域22の先端側に隣接する領域(図3に示す先端側小径領域21)との境界における剛性の不連続な変化を抑制できる。また、拡径領域22とカテーテル本体10において拡径領域22の基端側に隣接する領域(図3に示す小径領域23)との境界における剛性の不連続な変化を抑制できる。
よって、拡径領域22の先端と基端において、それぞれキンクの発生を抑制できる。
【0033】
図3に示すように、カテーテル本体10において拡径領域22の基端側に隣接している領域は、拡径領域22の基端と同じ外径の小径領域23であり、カテーテル本体10において小径領域23の基端側に隣接している領域は、小径領域23よりも大径の大径領域24である。
カテーテル本体10が基端側に大径領域24を備えていることにより、カテーテル本体10の基端側の部分の剛性を十分に確保でき、カテーテル100の良好なプッシャビリティを実現できる。
【0034】
なお、小径領域23と大径領域24との間には、例えば、基端側に向けて徐々に外径が増大する外径変化領域25が配置されている。
また、例えば、カテーテル本体10における拡径領域22よりも基端側の部分(小径領域23、外径変化領域25及び大径領域24)では、ルーメン31の内径が一定となっている。
【0035】
また、例えば、カテーテル本体10における拡径領域22よりも先端側の領域は、カテーテル本体10の軸方向における位置にかかわらず内径及び外径が一定の先端側小径領域21となっている。
先端側小径領域21の内径(ルーメン31の内径)及び外径は、拡径領域22の先端における内径及び外径と等しい。
ここで、先端側小径領域21の内径及び外径がカテーテル本体10の軸方向における位置にかかわらず一定であるとは、カテーテル本体10の軸方向における位置に応じた先端側小径領域21の外径の変化、及び内径の変化が、それぞれ±10%以内の範囲に収まっていることを意味し、好ましくはそれぞれ±5%以内の範囲に収まっている。
【0036】
先端側小径領域21には、例えば、上述の第1先端領域11と第2先端領域12とが含まれている他、第3先端領域13が含まれている。
第3先端領域13は、第2先端領域12の基端側に連なっている。第3先端領域13は、第2先端領域12を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第2先端領域12における内層32を構成する樹脂材料と第3先端領域13における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料であるが、第2先端領域12における外層33を構成する樹脂材料よりも、第3先端領域13における外層33を構成する樹脂材料の方が高硬度である。
そして、第1ブレード50が第2先端領域12と第3先端領域13とに亘って連続して設けられている。
【0037】
更に、先端側小径領域21には、第4先端領域14の先端部が含まれている。
第4先端領域14の基端は、上述の小径領域23の先端と基端との中間に位置している。
第4先端領域14は、第3先端領域13を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第3先端領域13における内層32を構成する樹脂材料と第4先端領域14における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料であるが、第3先端領域13における外層33を構成する樹脂材料よりも、第4先端領域14における外層33を構成する樹脂材料の方が高硬度である。
【0038】
カテーテル本体10は、更に、第4先端領域14の基端側に連なっている第5先端領域15と、第5先端領域15の基端側に連なっている第6先端領域16と、第6先端領域16の基端側に連なっている中間・基端領域17と、を備えている。
第5先端領域15は、第4先端領域14を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第4先端領域14における内層32を構成する樹脂材料と第5先端領域15における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料であるが、第4先端領域14における外層33を構成する樹脂材料よりも、第5先端領域15における外層33を構成する樹脂材料の方が高硬度である。
第6先端領域16は、第5先端領域15を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第5先端領域15における内層32を構成する樹脂材料と第6先端領域16における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料であるが、第5先端領域15における外層33を構成する樹脂材料よりも、第6先端領域16における外層33を構成する樹脂材料の方が高硬度である。
中間・基端領域17は、第6先端領域16を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されている。より詳細には、第6先端領域16における内層32を構成する樹脂材料と中間・基端領域17における内層32を構成する樹脂材料とが同一の材料であるが、第6先端領域16における外層33を構成する樹脂材料よりも、中間・基端領域17における外層33を構成する樹脂材料の方が高硬度である。
【0039】
小径領域23には、第5先端領域15の先端部が含まれている。
外径変化領域25は、第5先端領域15の他の一部分により構成されている。
大径領域24の先端部は、第5先端領域15の更に他の一部分により構成されている。
大径領域24は、更に、第6先端領域16と中間・基端領域17とを含んで構成されている。
第2ブレード60の先端は、例えば、第6先端領域16の基端部に位置している。
【0040】
また、カテーテル本体10の先端側部分の外表層、及び、先端チップ80の外表層には、必要に応じて、親水性コートが形成されていてもよい。例えば、中間・基端領域17の先端部からカテーテル本体10の先端までの外表層と、先端チップ80の外表層に、親水性コートが形成されている。
【0041】
ここで、カテーテル100の各部の寸法の例を説明する。
先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さは、2.5mm以上7mm以下であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、4mm以上6mm以下であることが一層好ましく、典型的には5mm程度とすることができる。先端チップ80の長さは、穿通枝等の細径の血管に分枝する前の相対的大径の血管(内頸動脈等)の内径と同等の長さに設定されていることが好ましい。
カテーテル本体10の軸方向における第1先端領域11の長さは、3mm以上7mm以下であることが好ましく、典型的には5mm程度とすることができる。
カテーテル本体10の軸方向における第2先端領域12の長さは、5mm以上15mm以下であることが好ましく、典型的には10mm程度とすることができる。
先端チップ80とカテーテル本体10において体腔内に挿入可能な部分とを合わせたカテーテル100の有効長は、130cm以上200cm以下であることが好ましく、典型的には165cm程度とすることができる。
先端チップ80の最大外径は、上記のように0.6mm以下である。先端チップ80の最大外径は、より好ましくは0.5mm以下である。先端チップ80の最大外径は、0.35mm以上であることが好ましく、典型的には、0.4mm以上0.45mm以下とすることができる。
先端側小径領域21の外径は、上記のように0.6mm以下である。先端側小径領域21の外径は、より好ましくは0.5mm以下である。先端側小径領域21の外径は、0.35mm以上であることが好ましく、典型的には、0.4mm以上0.45mm以下とすることができる。
先端チップ80の内径(先端ルーメン81の内径)、及び、先端側小径領域21の内径(先端側小径領域21におけるルーメン31の内径)は、0.25mm以上0.45mm以下であることが好ましい。
【0042】
第1ブレード50を構成する各ワイヤ(第1ワイヤ51~第8ワイヤ58)の外径は、5μm以上30μm以下であることが好ましく、典型的には15μm程度とすることができる。
第1ブレード50を構成する各ワイヤのピッチは、0.3mm以上0.8mm以下であることが好ましく、0.5mm以上とすることができる。
第1ブレード50を構成する各ワイヤのピッチは、カテーテル本体10の先端部(例えば先端側小径領域21)の外径の2倍未満であることが好ましく、このようにすることにより、カテーテル本体10の先端部の良好な屈曲性を実現できる。
第2ブレード60を構成する各ワイヤ(第1ワイヤ61~第8ワイヤ68)の矩形状の断面の寸法は、短辺が5μm以上30μm以下であることが好ましく、また、長辺が30μm以上70μm以下であることが好ましい。
第2ブレード60を構成する各ワイヤのピッチは、2mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0043】
次に、カテーテル100の各部の材料の例を説明する。
内層32及び内層83の材料としては、PTFE等の樹脂材料を用いることができる。
外層33及び外層84の材料としては、ナイロン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、フッ素系樹脂(例えばe-PTFEなど)を用いることができる。外層33及び外層84を構成する樹脂材料には、BaSO等の放射線不透過性の添加剤が添加されていても良い。添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、20質量%以上50質量%以下とすることができる。
マーカー70の材料は、放射線不透過性の金属材料であれば特に限定されない。
第1ブレード50を構成する各ワイヤ(第1ワイヤ51~第8ワイヤ58)の材料としては、例えば、タングステンを用いることができる。
第2ブレード60を構成する各ワイヤ(第1ワイヤ61~第8ワイヤ68)の材料としては、例えば、SUS304を用いることができる。
【0044】
次に、カテーテル本体10の近位側に設けられた把持部90について説明する。図1に示す通り、カテーテル本体10の基端部に把持部90が設けられている。把持部90は、その基端から図示しない注入器(シリンジ)を挿入するための連結部91を有している。連結部91の外周には、シリンジを着脱可能に固定できるようにねじ溝が形成されている。把持部90の中央部には、ハブ92が設けられている。把持部90には当該把持部90を先端から基端に亘って軸心方向に貫通する中空が形成されており、この中空における先端側の部分にカテーテル本体10の基端部が挿入されて、把持部90に対してカテーテル本体10の基端部が固定されている。ハブ92は、把持部90の軸心を介して対向する2枚の羽部93を有している。把持部90の軸心を中心として羽部93を回転させることにより、カテーテル本体10の全体を軸回転させるトルク操作が可能であり、体腔に侵入したカテーテル本体10の先端の向きを調整することができる。
ハブ92の先端側には、プロテクタ94が設けられており、カテーテル本体10の基端部の周囲を覆っている。
【0045】
カテーテル100は、例えば、血流に乗って前進するフローダイレクトカテーテルである。
なお、カテーテル100は、典型的には、被験者の大腿の付け根の動脈から体内に挿入し、心臓及び内頸動脈を介して、内頸動脈から分枝した穿通枝にカテーテル本体10の先端部を挿入する手技を行うために用いられる。このため、カテーテル本体10は、そのような手技に対応した長さに作製される。ただし、本発明は、この例に限らず、カテーテル100は、他の部位への挿入に適した長さに作製されていてもよい。
【0046】
次に、模擬的な内頸動脈301(図4(a)等)と模擬的な穿通枝302(図4(a))等とを備える血管内手術シミュレータ(血管モデル)を用いて、本実施形態に係るカテーテル100を穿通枝302に進入させる手技を行った実験例について説明する。
内頸動脈301の内径は約5mm程度であった。穿通枝302は、内頸動脈301から分枝している。穿通枝302の内径はおよそ0.4mmから0.6mm程度であった。
【0047】
先ず、図4(a)から図6を用いて、第1動作例を説明する。第1動作例としては、穿通枝302の十分に奥深い位置までガイドワイヤ200の先端を到達させた状態(図4(a))から手技を始めた例を説明する。
【0048】
図4(a)の段階では、カテーテル100に先行してガイドワイヤ200が内頸動脈301から穿通枝302に進入していた。先端チップ80の先端は、未だ穿通枝302に進入しておらず、内頸動脈301内に位置していた。
ここで、ガイドワイヤ200は、内頸動脈301の内周壁に対して接触点P1にて接触し、当該接触点P1から反力を得て、接触点P1と対向する側に分枝している穿通枝302に進入していた。一方、カテーテル100の先端すなわち先端チップ80の先端は、図4(a)の段階では接触点P1に未到達であった。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、カテーテル100をガイドワイヤ200に沿って押し込み、前進させた。図4(b)の段階では、先端チップ80の先端が接触点P1を超え、且つ、接触点P1の近傍に位置していた。また、マーカー70は接触点P1に未到達である。
後述するように、ガイドワイヤ200において接触点P1と穿通枝302との間に位置する部位は、僅かな力により撓んでしまうが、本実施形態では先端チップ80が十分に柔らかく(ショアD硬度が40以下に)構成されているため、先端チップ80がガイドワイヤ200に沿って前進する際におけるガイドワイヤ200の撓みを抑制できた。
【0050】
次に、図5(a)及び図5(b)に示すように、カテーテル100をガイドワイヤ200に沿って更に押し込み、更に前進させた。図5(a)及び図5(b)の段階では、先端チップ80の先端が穿通枝302に入り込んでいた。また、マーカー70は接触点P1を超えていた。
本実施形態では、十分に柔らかい先端チップ80が十分な長さ(先端チップ80の最大外径の7倍以上の長さ)を有するとともに、マーカー70が十分に短い(カテーテル本体10の軸方向におけるマーカー70の寸法が、先端チップ80の最大外径よりも小さい)。これにより、先端チップ80の先端を穿通枝302に進入させる過程で、ガイドワイヤ200において接触点P1と穿通枝302との間に位置する部位がカテーテル100に押されることによる撓みが抑制された。すなわち、マーカー70が接触点P1を超える際や、図5(a)及び図5(b)に示すようにマーカー70が接触点P1を超えた後において、ガイドワイヤ200において接触点P1と穿通枝302との間に位置する部位をマーカー70が図5(a)及び図5(b)における上方(矢印A方向)に押圧する力を抑制できた。このため、先端チップ80をガイドワイヤ200の屈曲形状に良好に追従させつつ、先端チップ80をガイドワイヤ200に沿って穿通枝302等に進入させることができた。
【0051】
また、本実施形態では、補強層40においてカテーテル本体10の先端部に配置されている部分は、ワイヤを編組したブレード(第1ブレード50)により構成されており、これらワイヤのピッチが、カテーテル本体10の先端部の外径の2倍未満に設定されている。つまり、カテーテル本体10においてマーカー70の基端側に連なる部分において、第1ブレード50を構成するワイヤのピッチがカテーテル本体10の先端部の外径の2倍未満に設定されている。
これにより、図5(a)及び図5(b)のようにカテーテル本体10においてマーカー70の基端側に連なる部分が接触点P1に接触しながらカテーテル100が前進する際に、カテーテル本体10において接触点P1に接触する部分がスムーズに屈曲することができた。
すなわち、カテーテル本体10には第1ブレード50が設けられていることから、カテーテル本体10の曲げ剛性は先端チップ80の曲げ剛性よりも高いが、第1ブレード50のワイヤのピッチが十分に小さいことから、第1ブレード50ひいてはカテーテル本体10が接触点P1から受ける反力によってスムーズに屈曲できた。特に、第1ブレード50を構成するワイヤの断面形状が円形であることから、ワイヤどうしの交点においてワイヤどうしが容易に僅かに回転(転動)できるため、第1ブレード50ひいてはカテーテル本体10の屈曲がよりスムーズとなった。
よって、ガイドワイヤ200において接触点P1と穿通枝302との間に位置する部位をカテーテル本体10が図5(a)及び図5(b)における上方(図5(b)に示す矢印B方向)に押圧する力を抑制できた。
その結果、図6に示すように、カテーテル本体10の先端、すなわちマーカー70の配置領域についても、スムーズに穿通枝302内に進入させることができた。
【0052】
次に、図7(a)から図8を用いて、第1実施形態に係るカテーテルの第2動作例について説明する。第2動作例は、穿通枝302の入口の近傍までガイドワイヤ200の先端を到達させた状態(図7(a))から手技を始めた例を説明する。
この場合でも、本実施形態に係るカテーテル100によれば、図7(a)、図7(b)及び図8に示すように、カテーテル100をスムーズに穿通枝302内に進入させることができ、図示は省略するが、カテーテル本体10についてもスムーズに穿通枝302内に進入させることができた。
また、図示は省略するが、図8に示す状態よりも穿通枝302の奥深くまでカテーテル100の先端部を挿入させることができた。
【0053】
次に、比較形態のマイクロカテーテルを用いて、第1動作例及び第2動作例と同様の手技を行った場合について説明する。
比較形態のマイクロカテーテル(以下、カテーテル400:図10(a)等)としては、血管選択性が比較的良いとされる代表的な市販のマイクロカテーテルを用いた。カテーテル400においては、先端チップ480の軸方向における当該先端チップ480の長さが、当該先端チップ480の最大外径の1倍未満であり、カテーテル本体410の軸方向におけるマーカー470の寸法が、先端チップ480の最大外径よりも大きい。つまり、本実施形態に係るカテーテル100と比べて、カテーテル400においては、先端チップ480の長さ比率が大幅に小さく、マーカー470の長さ比率は大きい。また、マーカー470から基端側に向けて補強層が延びている。
【0054】
図10(a)の段階では、図4(a)の段階と同様に、カテーテル400に先行してガイドワイヤ200が内頸動脈301から穿通枝302に進入していた。先端チップ480の先端は、未だ穿通枝302に進入しておらず、内頸動脈301内に位置しており、接触点P1にも未到達であった。
【0055】
カテーテル400においては、カテーテル400の先端近傍にマーカー470が位置しており、マーカー470の軸長が長く、マーカー470から基端側に向けて補強層が延びている。このため、カテーテル400の先端近傍まで剛性が高い。
このため、図10(a)の段階からカテーテル400をガイドワイヤ200に沿って押し込むと、ガイドワイヤ200において接触点P1と穿通枝302との間に位置する部位がカテーテル400の先端部に押されて撓み、ガイドワイヤ200が穿通枝302から外れる場合があった。
また、比較形態のカテーテル400では、カテーテル400の先端部が接触点P1において内頸動脈301の内周面に引っ掛かってそれ以上前進しない場合もあった。
【0056】
また、カテーテル400をガイドワイヤ200に沿って押し込み、図10(b)に示すように、先端チップ480の先端が穿通枝302の入口近傍に入り込ませることができた場合にも、以下に説明するように、それ以上深くカテーテル400を穿通枝302に進入させることができなかったり、最終的にガイドワイヤ200及びカテーテル400が穿通枝302から外れたりする場合があった。
【0057】
すなわち、図10(b)の状態の後、図11(a)及び図11(b)に示すように、カテーテル400を更に押し込こもうとしても、カテーテル400の先端部が穿通枝302の入口付近に引っ掛かった状態となり、カテーテル本体410が図11(a)及び図11(b)の矢印B方向に撓んだ。この際に、ガイドワイヤ200の先端部は徐々にカテーテル400内に引き込まれた。
このような動作となる理由は、カテーテル400の先端部の柔らかい部分である先端チップ480が短いことから、カテーテル400の先端部がごわついて穿通枝302の入口の壁面に対して突っ張って引っ掛かってしまうためと考えられる。
更に、カテーテル400の先端部の可撓性が乏しいことから、カテーテル400の先端部が屈曲した状態においては、カテーテル400に対する押し込み力が、屈曲部よりも基端側でのカテーテル400の進行方向に付与されるため、押し込み力が先端部の縦(長手方向)の動きではなく横(長手方向に対して交差する方向)の動きに消費される割合が高まってしまうことも、図11(a)及び図11(b)に示すような動作となる理由と考えられる。
その後もカテーテル400を押し込むと、図12に示すように、一旦は穿通枝302の入口近傍に進入したカテーテル400も穿通枝302から脱落して、内頸動脈301内において更に矢印B方向に押し込まれた。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、図9を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係るカテーテル(全体図示略)は、先端チップ80の構造が第1実施形態に係るカテーテル100と相違しており、その他の構成については、第1実施形態に係るカテーテル100と同様に構成されている。
【0059】
本実施形態の場合、先端チップ80は、先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域85と、第1一定径領域85の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域86と、縮径領域86の先端側に連なっていて先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域87と、を有する。
【0060】
第1一定径領域85の外径及び内径は、第1実施形態における先端チップ80の外径及び内径と同様である。
第1一定径領域85の外径及び内径が先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定であるとは、先端チップ80の軸方向における位置に応じた第1一定径領域85の外径の変化、及び内径の変化が、それぞれ±10%以内の範囲に収まっていることを意味し、好ましくはそれぞれ±5%以内の範囲に収まっている。
【0061】
縮径領域86の基端の外径及び内径は、第1一定径領域85の先端の外径及び内径と等しい。
縮径領域86の外径及び内径は、先端側に向けて徐々に縮径している。
【0062】
第2一定径領域87の基端の外径及び内径は、縮径領域86の先端の外径及び内径と等しい。
第2一定径領域87の外径及び内径が先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定であるとは、先端チップ80の軸方向における位置に応じた第2一定径領域87の外径の変化、及び内径の変化が、それぞれ±10%以内の範囲に収まっていることを意味し、好ましくはそれぞれ±5%以内の範囲に収まっている。
なお、第2一定径領域87の先端の外周側の角部はR面取形状とされていてもよく、その場合、第2一定径領域87の軸方向において角部がR面取形状とされている先端領域を除き、第2一定径領域87の外径が先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定となっている。
【0063】
本実施形態によれば、先端チップ80の第2一定径領域87の内径が第1一定径領域85の内径と比べて小さいことにより、ガイドワイヤ200を用いた手技を行う際において、第2一定径領域87の内周面とガイドワイヤ200の外周面とのクリアランスを小さくすることができる。
これにより、ガイドワイヤ200と先端チップ80との相対的な位置の変動(バタツキ)を抑制でき、高精度の手技を安定的に行うことができる。
なお、カテーテルのルーメン31及び先端ルーメン81を通して先端チップ80の先端開口82から薬液等の液体を吐出させる際には、液体の圧力によって第2一定径領域87の内径が一時的に拡径し、液体をスムーズに吐出できるようになっている。
【0064】
第2一定径領域87の外径は、第1一定径領域85の内径よりも小さいことが好ましい。
ただし、第2一定径領域87の外径は、第1一定径領域85の内径と等しくてもよいし、第1一定径領域85の内径よりも大きくてもよい。
【0065】
本実施形態の場合、第2一定径領域87の内径がガイドワイヤ200の先端部の外径と同等である。
ここで、本実施形態に係るカテーテルとガイドワイヤ200とのセット(キット)は、本実施形態に係るカテーテルキットとなっている。
【0066】
すなわち、本実施形態に係るカテーテルキットは、ルーメン31を有する内層32と内層32の外周囲に形成されている外層33とを含む樹脂層30と、樹脂層30に埋設されているとともにルーメン31の周囲に配置されている補強層40と、を有する長尺なカテーテル本体10(図1図3参照)と、放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカー70であってカテーテル本体10の先端において樹脂層30に埋設されているとともに補強層40の先端に固定されルーメン31の周囲に配置されているマーカー70(図1図3)と、カテーテル本体10の先端に連接されている樹脂製の先端チップ80であってルーメン31と連通していて先端が開口している先端ルーメン81を有する先端チップ80(図9)と、を備え、カテーテル本体10の先端の外径が0.6mm以下であるとともに先端チップの最大外径が0.6mm以下である非能動タイプのマイクロカテーテルであって、カテーテル本体10の軸方向におけるマーカー70の寸法が先端チップ80の外径よりも小さく、先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さが当該先端チップ80の最大外径の7倍以上15倍以下であり、先端チップ80は、当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域85と、第1一定径領域85の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域86と、縮径領域86の先端側に連なっていて当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域87と、を有するカテーテルと、ルーメン31に挿通して用いられるガイドワイヤ200と、を備え、第2一定径領域87の内径がガイドワイヤ200の先端部の外径と同等である。
【0067】
このようなカテーテルキットによれば、第2一定径領域87の内径がガイドワイヤ200の先端部の外径と同等であることにより、ガイドワイヤ200を用いた手技を行う際において、第2一定径領域87の内周面とガイドワイヤ200の外周面とのクリアランスを極めて小さくすることができる。
これにより、ガイドワイヤ200と先端チップ80との相対的な位置の変動(バタツキ)をより一層抑制でき、高精度の手技をより一層安定的に行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態に係るカテーテルは、上述したカテーテルキットのガイドワイヤ200と組み合わせて用いることに限らず、キット化されていない単体のガイドワイヤ200(本実施形態に係るカテーテルとは別個に流通しているガイドワイヤ200)と組み合わせて用いてもよい。
【0069】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0070】
例えば、上記の各実施形態では、補強層の先端部がブレード(第1ブレード50)である例を説明したが、補強層の先端部が線材(ワイヤ)を螺旋状に巻回することにより構成されたコイルであっても良い。この場合、先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さが、当該先端チップ80の最大外径の3倍以上12倍以下であることが好ましく、6倍以上10倍以下であることが更に好ましい。
なお、補強層の先端部がコイルである場合、コイルよりも基端側にはコイルと同層にブレードが配置されていて、当該ブレードの先端とコイルの基端とが溶接により相互に接続されていてもよい。
または、内側補強層(上記の各実施形態において第1ブレード50の代わりに配置される補強層)を全長に亘ってコイルとし、外側補強層をブレード(上記の各実施形態における第2ブレード60)にしてもよい。
【0071】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0072】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ルーメンを有する内層と前記内層の外周囲に形成されている外層とを含む樹脂層と、前記樹脂層に埋設されているとともに前記ルーメンの周囲に配置されている補強層と、を有する長尺なカテーテル本体と、
放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状のマーカーであって、前記カテーテル本体の先端において前記樹脂層に埋設されているとともに前記補強層の先端に固定され、前記ルーメンの周囲に配置されているマーカーと、
前記カテーテル本体の先端に連接されている樹脂製の先端チップであって、前記ルーメンと連通していて先端が開口している先端ルーメンを有する先端チップと、
を備え、
前記カテーテル本体の先端の外径が0.6mm以下であるとともに、前記先端チップの最大外径が0.6mm以下である、非能動タイプのマイクロカテーテルであって、
前記カテーテル本体の軸方向における前記マーカーの寸法が、前記先端チップの最大外径よりも小さく、
前記先端チップの軸方向における当該先端チップの長さが、当該先端チップの最大外径の7倍以上15倍以下であるカテーテル。
(2)前記補強層において前記カテーテル本体の先端部に配置されている部分は、ワイヤを編組したブレードにより構成されており、
前記ワイヤのピッチが、前記カテーテル本体の前記先端部の外径よりも大きい(1)に記載のカテーテル。
(3)前記先端チップの外径は、当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず一定である(1)又は(2)に記載のカテーテル。
(4)前記先端チップは、
当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第1一定径領域と、
前記第1一定径領域の先端側に連なっていて先端側に向けて外径及び内径が縮径する縮径領域と、
前記縮径領域の先端側に連なっていて当該先端チップの軸方向における位置にかかわらず外径及び内径が一定の第2一定径領域と、
を有する(1)又は(2)に記載のカテーテル。
(5)前記カテーテル本体は、
前記先端チップの基端側に連なっている第1先端領域と、
前記第1先端領域の基端側に連なっている第2先端領域と、
を有し、
前記第1先端領域は、前記先端チップと同一の樹脂材料により構成されており、
前記第2先端領域は、前記第1先端領域を構成する樹脂材料よりも高硬度の樹脂材料により構成されており、
前記補強層が前記第1先端領域と前記第2先端領域とに亘って連続して設けられている(1)から(4)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(6)前記カテーテル本体は、
基端側に向けて前記ルーメンの内径と当該カテーテル本体の外径とが徐々に拡径している拡径領域を、前記第2先端領域よりも基端側に有している(5)に記載のカテーテル。
(7)前記カテーテル本体における前記拡径領域よりも先端側から前記拡径領域よりも基端側にかけての領域では、前記樹脂層が同一の樹脂材料により構成されている(6)に記載のカテーテル。
(8)前記カテーテル本体において前記拡径領域の基端側に隣接している領域は、前記拡径領域の基端と同じ外径の小径領域であり、
前記カテーテル本体において前記小径領域の基端側に隣接している領域は、前記小径領域よりも大径の大径領域である(6)又は(7)に記載のカテーテル。
(9)前記先端チップのショアD硬度が40以下である(1)から(8)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(10)前記補強層において前記カテーテル本体の長手方向における中間部から基端側の部分は、
第1ブレードと、
前記第1ブレードの外周囲において編組された第2ブレードと、
を含んで構成されており、
前記第2ブレードを構成する個々のワイヤの断面積が、前記第1ブレードを構成する個々のワイヤの断面積よりも大きい(1)から(9)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(11)(4)に記載のカテーテルと、
前記ルーメンに挿通して用いられるガイドワイヤと、
を備え、
前記第2一定径領域の内径が前記ガイドワイヤの先端部の外径と同等であるカテーテルキット。
【符号の説明】
【0073】
10 カテーテル本体
11 第1先端領域
12 第2先端領域
13 第3先端領域
14 第4先端領域
15 第5先端領域
16 第6先端領域
17 中間・基端領域
21 先端側小径領域
22 拡径領域
23 小径領域
24 大径領域
25 外径変化領域
30 樹脂層
31 ルーメン
32 内層
33 外層
40 補強層
50 第1ブレード(ブレード)
51 第1ワイヤ
52 第2ワイヤ
53 第3ワイヤ
54 第4ワイヤ
55 第5ワイヤ
56 第6ワイヤ
57 第7ワイヤ
58 第8ワイヤ
60 第2ブレード
61 第1ワイヤ
62 第2ワイヤ
63 第3ワイヤ
64 第4ワイヤ
65 第5ワイヤ
66 第6ワイヤ
67 第7ワイヤ
68 第8ワイヤ
70 マーカー
80 先端チップ
81 先端ルーメン
82 先端開口
83 内層
84 外層
85 第1一定径領域
86 縮径領域
87 第2一定径領域
90 把持部
91 連結部
92 ハブ
93 羽部
94 プロテクタ
100 カテーテル
200 ガイドワイヤ
301 内頸動脈
302 穿通枝
400 カテーテル
410 カテーテル本体
470 マーカー
480 先端チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12