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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ゲイン切替回路診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
G01R31/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017184295
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019060668
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100131521
【弁理士】
【氏名又は名称】堀口 忍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋明
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】山田 量也
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-153931(JP,A)
【文献】特開2011-164008(JP,A)
【文献】特開平8-189845(JP,A)
【文献】特開2012-247341(JP,A)
【文献】特開2009-122056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗にかかる電圧を増幅するプログラマブルゲインアンプのゲインを切り替えるゲイン切替回路が正常であるか否かを診断するゲイン切替回路診断装置であって、
前記プログラマブルゲインアンプのゲインを所定ゲインに切り替えるために前記ゲイン切替回路の動作を制御する制御部と、
前記制御部により前記プログラマブルゲインアンプのゲインを前記所定ゲインに切り替えさせているとき、前記プログラマブルゲインアンプの出力電圧から前記プログラマブルゲインアンプの基準電圧を減算した値を、前記出力電圧により求められる、前記シャント抵抗に流れる電流で除算した第1の電流感度と、前記所定ゲインに対応する、予め求められた第2の電流感度とを比較し、その比較結果により、前記ゲイン切替回路が正常であるか否かを診断する診断部と、
を備えるゲイン切替回路診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲイン切替回路診断装置であって、
前記診断部は、前記プログラマブルゲインアンプの電源電圧が第1の所定範囲内であると判断し、かつ、前記プログラマブルゲインアンプの基準電圧が第2の所定範囲内であると判断すると、前記ゲイン切替回路が正常であるか否かの診断を行う
ことを特徴とするゲイン切替回路診断装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゲイン切替回路診断装置であって、
一方端が電池と前記電池から電力が供給される負荷との接続点に接続される第1の抵抗と、
一方端が前記第1の抵抗の他方端と接続される第2の抵抗と、
一方端が前記第2の抵抗の他方端と接続され、他方端がグランドに接続されるスイッチと、
を備え、
前記シャント抵抗は、前記電池と前記グランドとの間に接続され、
前記診断部は、前記スイッチがオンすることにより前記シャント抵抗に流れる電流の増加分と、前記スイッチがオンすることにより前記第1及び第2の抵抗に流れる電流の増加分とが一致する場合、前記ゲイン切替回路が正常であるか否かの診断を行う
ことを特徴とするゲイン切替回路診断装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のゲイン切替回路診断装置であって、
前記診断部は、前記第1の電流感度と前記第2の電流感度との比較を、複数の前記所定ゲインに対して行い、全ての前記比較結果が一致を示す場合、前記ゲイン切替回路が正常であると診断する
ことを特徴とするゲイン切替回路診断装置。
【請求項5】
請求項に記載のゲイン切替回路診断装置であって、
前記診断部は、前記第1の電流感度と前記第2の電流感度との比較を、複数の前記所定ゲインに対して行い、全ての前記比較結果のうちの一部の前記比較結果が一致を示す場合、前記ゲイン切替回路が異常であると診断する
ことを特徴とするゲイン切替回路診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラマブルゲインアンプのゲインを切り替えるゲイン切替回路が正常であるか否かを診断するゲイン切替回路診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のゲイン切替回路として、互いに並列接続される複数の抵抗のうちの1つの抵抗に直列接続されるスイッチがオンすることで、プログラマブルゲインアンプのゲインを所定ゲインに切り替えるものがある。
【0003】
関連する技術として、例えば、特許文献1~3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許05209742号公報
【文献】特開2000-298152号公報
【文献】特開2012-042402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スイッチが故障するなどゲイン切替回路が正常に動作することができなくなると、プログラマブルゲインアンプも正常に動作できなくなるため、ゲイン切替回路が正常であるか否かを診断することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、プログラマブルゲインアンプのゲインを切り替えるゲイン切替回路が正常であるか否かを診断することが可能なゲイン切替回路診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態であるゲイン切替回路診断装置は、制御部と、診断部とを備える。
制御部は、シャント抵抗にかかる電圧を増幅するプログラマブルゲインアンプのゲインを所定ゲインに切り替えるためにゲイン切替回路の動作を制御する。
【0008】
診断部は、制御部によりプログラマブルゲインアンプのゲインを所定ゲインに切り替えさせているとき、プログラマブルゲインアンプの出力電圧からプログラマブルゲインアンプの基準電圧を減算した値を、プログラマブルゲインアンプの出力電圧により求められる、シャント抵抗に流れる電流で除算した第1の電流感度と、所定ゲインに対応する、予め求められた第2の電流感度とを比較し、その比較結果により、ゲイン切替回路が正常であるか否かを診断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プログラマブルゲインアンプのゲインを切り替えるゲイン切替回路が正常であるか否かを診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のゲイン切替回路診断装置を含む電池パックの一例を示す図である。
図2】プログラマブルゲインアンプのゲインが所定ゲインである場合にシャント抵抗に流れる電流とプログラマブルゲインアンプから出力される出力電圧との関係を示す図である。
図3】診断処理の一例を示すフローチャートである。
図4】診断処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態のゲイン切替回路診断装置を含む電池パックの一例を示す図である。
図1に示す電池パック1は、例えば、エンジン車やハイブリッド車などの車両Veに搭載され、電池Bと、リレーReと、シャント抵抗Rsと、プログラマブルゲインアンプ2と、ゲイン切替回路3と、パルス放電回路4と、電池制御部5とを備える。
【0012】
電池Bは、例えば、1つ以上の二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、または電気二重層コンデンサなど)により構成される。
リレーReは、例えば、電磁式リレーにより構成され、電池Bに直列接続され、電池Bと補機Auとの間に接続されている。
【0013】
シャント抵抗Rsは、電池Bに直列接続され、電池Bとグランドとの間に接続されている。リレーReが閉状態であるとき、電池Bからスタータモータやエアコンディショナーなどの補機Auへ電力が供給されると、電池Bが放電する。電池Bの放電時、電池Bから補機Auへ向う方向の電流がシャント抵抗Rsに流れる。また、リレーReが閉状態であるとき、不図示のオルタネータなどから電池Bへ電力が供給されると、電池Bが充電する。電池Bの充電時、補機Auから電池Bへ向う方向の電流がシャント抵抗Rsに流れる。また、シャント抵抗Rsは電池Bに流れる電流を計測する電流センサとして使用される。
【0014】
プログラマブルゲインアンプ2は、例えば、オペアンプにより構成され、シャント抵抗Rsにかかる電圧を所定ゲインで増幅し出力電圧Voutとして出力端子OUTから電池制御部5の入力端子IN1へ出力する。なお、プログラマブルゲインアンプ2は、シャント抵抗Rsに流れる電流が0[A]であるとき、基準電圧Vrefを出力電圧Voutとして電池制御部5の入力端子IN1に出力する。また、スイッチSW1~SW3は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成される。
【0015】
プログラマブルゲインアンプ2のプラス側入力端子+INはシャント抵抗Rsの一方端とグランドとの接続点に接続され、プログラマブルゲインアンプ2のマイナス側入力端子-INはシャント抵抗Rsの他方端と電池Bのマイナス端子との接続点に接続されている。また、電源電圧(例えば、5[V])は、プログラマブルゲインアンプ2のプラス側電源端子+Vs及び電池制御部5の入力端子IN2に入力されている。また、プログラマブルゲインアンプ2のマイナス側電源端子-Vsにはグランドの電圧(例えば、0[V])が入力されている。また、電源電圧(例えば、5[V])は、抵抗R4、R5により分圧され基準電圧Vref(例えば、2.5[V])としてプログラマブルゲインアンプ2の基準電圧端子REF及び電池制御部5の入力端子IN3に入力されている。
【0016】
ゲイン切替回路3は、抵抗R1~R3と、スイッチSW1~SW3とを備える。なお、抵抗R1の抵抗値>抵抗R2の抵抗値>抵抗R3の抵抗値とする。
抵抗R1~R3のそれぞれの一方端は互いに接続されているとともにプログラマブルゲインアンプ2の一方のゲイン調整端子RGに接続されている。抵抗R1の他方端はスイッチSW1の一方端に接続され、抵抗R2の他方端はスイッチSW1の一方端に接続され、抵抗R3の他方端はスイッチSW3の一方端に接続されている。スイッチSW1~SW3のそれぞれの他方端は互いに接続されているとともにプログラマブルゲインアンプ2の他方のゲイン調整端子RGに接続されている。スイッチSW1の制御端子は電池制御部5の出力端子OUT1に接続され、スイッチSW2の制御端子は電池制御部5の出力端子OUT2に接続され、スイッチSW3の制御端子は電池制御部5の出力端子OUT3に接続されている。
【0017】
パルス放電回路4は、抵抗R6(第1の抵抗)と、抵抗R7(第2の抵抗)と、スイッチSW4(スイッチ)とを備える。なお、スイッチSW4は、例えば、MOSFETにより構成される。
【0018】
抵抗R6の一方端はリレーReと補機Auとの接続点に接続され、抵抗R6の他方端は抵抗R7の一方端に接続されている。抵抗R7の他方端はスイッチSW4の一方端に接続され、スイッチSW4の他方端はグランドに接続されている。スイッチSW4の制御端子は電池制御部5の出力端子OUT4に接続されている。抵抗R6と抵抗R7との接続点は電池制御部5の入力端子IN4に接続されている。
【0019】
リレーReが閉状態であるとき、スイッチSW4がオフからオンに切り替わると、電池Bから抵抗R6、R7へ流れる電流分、シャント抵抗Rsに流れる電流Isが増加するとともに、抵抗R6と抵抗R7に流れる電流Irが増加する。また、シャント抵抗Rsに流れる電流Isが増加する分、出力電圧Voutが高くなるとともに、抵抗R6、R7に流れる電流Irが増加する分、抵抗R7にかかる電圧が高くなる。
【0020】
電池制御部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)など)により構成され、制御部51と、診断部52とを備える。例えば、CPU、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイスが不図示の記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、制御部51及び診断部52が実現される。ゲイン切替回路診断装置は、例えば、制御部51及び診断部52を備えて構成される。または、ゲイン切替回路診断装置は、例えば、制御部51、診断部52、抵抗R6、抵抗R7、及びスイッチSW4を備えて構成される。
【0021】
制御部51は、出力端子OUT5から出力される制御信号により、リレーReを閉状態または開状態にさせる。例えば、制御部51は、電池Bの電圧が電圧閾値以下になると、または、電池Bの充電率(電池Bの満充電容量に対する現在の充電容量の比率)が充電率閾値以下になると、リレーReを閉状態から開状態にさせて、電池Bから補機Auを切り離す。これにより、電池Bが過放電状態になることを防止することができる。
【0022】
また、制御部51は、後述するように、出力電圧Voutに基づいて、シャント抵抗Rsに流れる電流Isを求める。
また、制御部51は、電流Isに基づいて、プログラマブルゲインアンプ2のゲインが所定ゲインになるように、出力端子OUT1~OUT3からそれぞれ出力される制御信号により、スイッチSW1~SW3のオン、オフを制御する。
【0023】
図2は、プログラマブルゲインアンプ2のゲインが所定ゲインである場合にシャント抵抗Rsに流れる電流Isとプログラマブルゲインアンプ2から出力される出力電圧Voutとの関係を示す図である。
【0024】
例えば、制御部51は、電流Isが第1のレンジに対応する場合、スイッチSW1をオンにするとともにスイッチSW2、SW3をそれぞれオフにする。すると、プログラマブルゲインアンプ2のゲインは、電流Isと出力電圧Voutとの関係が図2に示す実線となるような所定ゲインG1に切り替わる。そして、制御部51は、この状態において、電流Isと出力電圧Voutとの関係を使って、出力電圧Voutに対応する電流をシャント抵抗Rsに流れる電流Isとする。また、制御部51は、この状態において、出力電圧Voutから基準電圧Vrefを減算した値を、その出力電圧Voutにより求められる電流Isで除算した電流感度(傾き)を、電流感度Csaとする。
【0025】
また、例えば、制御部51は、電流Isが第1のレンジよりも小さい第2のレンジに対応する場合、スイッチSW2をオンにするとともにスイッチSW1、SW3をそれぞれオフにする。すると、プログラマブルゲインアンプ2のゲインは、電流Isと出力電圧Voutとの関係が図2に示す破線となるような所定ゲインG2に切り替わる。そして、制御部51は、この状態において、電流Isと出力電圧Voutとの関係を使って、出力電圧Voutに対応する電流をシャント抵抗Rsに流れる電流Isとする。また、制御部51は、この状態において、出力電圧Voutから基準電圧Vrefを減算した値を、その出力電圧Voutにより求められる電流Isで除算した電流感度(傾き)を、電流感度Csbとする。
【0026】
また、例えば、制御部51は、電流Isが第2のレンジよりも小さい第3のレンジに対応する場合、スイッチSW3をオンにするとともにスイッチSW1、SW2をそれぞれオフにする。すると、プログラマブルゲインアンプ2のゲインは、電流Isと出力電圧Voutとの関係が図2に示す一点鎖線となるような所定ゲインG3に切り替わる。そして、制御部51は、この状態において、電流Isと出力電圧Voutとの関係を使って、出力電圧Voutに対応する電流をシャント抵抗Rsに流れる電流Isとする。また、制御部51は、この状態において、出力電圧Voutから基準電圧Vrefを減算した値を、その出力電圧Voutにより求められる電流Isで除算した電流感度(傾き)を、電流感度Cscとする。なお、電流感度Csa<電流感度Csb<電流感度Cscとする。
【0027】
すなわち、制御部51は、シャント抵抗Rsに流れる電流Isが小さくなるほど、電流感度Csが大きくなるように、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを切り換える。これにより、出力電圧Voutから電流Isを求める際にその電流Isにノイズが含まれることを抑えることができるため、電流Isを精度良く求めることができる。
【0028】
また、図1に示す診断部52は、診断タイミングになると、ゲイン切替回路3が正常であるか否かを診断するための診断処理を実行する。
図3は、診断処理の一例を示すフローチャートである。なお、電池Bから補機Auへ電力が供給されているものとする。
【0029】
まず、診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内であるか否かを判断する(S1)。
診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内でないと判断すると(S1:No)、今回の診断処理を終了する。
【0030】
例えば、電源電圧+Vsが5.2[V]であり、第1の所定範囲が4.9~5.1[V]である場合、診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内でないと判断する。
また、診断部52は、基準電圧Vrefが第2の所定範囲内でないと判断すると(S1:Yes、S2:No)、今回の診断処理を終了する。
【0031】
例えば、基準電圧Vrefが2.60[V]であり、第2の所定範囲が2.45~2.55[V]である場合、診断部52は、基準電圧Vrefが第2の所定範囲内でないと判断する。
【0032】
また、診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内であると判断し(S1:Yes)、かつ、基準電圧Vrefが第2の所定範囲内であると判断すると(S2:Yes)、スイッチSW4を一定時間オンさせ(S3)、スイッチSW4がオンすることによりシャント抵抗Rsに流れる電流Isの増加分Isaと、スイッチSW4がオンすることにより抵抗R6、R7に流れる電流Irの増加分Iraとが互いに一致するか否かを判断する(S4)。
【0033】
例えば、電源電圧+Vsが5.0[V]であり、第1の所定範囲が4.9~5.1[V]である場合、診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内であると判断する。
例えば、基準電圧Vrefが2.50であり、第2の所定範囲が2.45~2.55[V]である場合、診断部52は、基準電圧Vrefが第2の所定範囲内であると判断する。
【0034】
例えば、診断部52は、スイッチSW4をオンさせた後にシャント抵抗Rsに流れる電流Isと、スイッチSW4をオンさせる前にシャント抵抗Rsに流れていた電流Isとの差を、スイッチSW4がオンすることによりシャント抵抗Rsに流れる電流Isの増加分Isaとする。
【0035】
例えば、診断部52は、スイッチSW4をオンさせた後に抵抗R7にかかる電圧(入力端子IN4に入力される電圧)を、抵抗R7の抵抗値で除算した結果を、スイッチSW4がオンすることにより抵抗R6、R7に流れる電流Irの増加分Iraとする。
【0036】
次に、診断部52は、増加分Isaと、増加分Iraとが互いに一致しないと判断すると(S4:No)、プログラマブルゲインアンプ2が異常であると診断し(S5)、今回の診断処理を終了する。
【0037】
また、診断部52は、増加分Isaと、増加分Iraとが互いに一致すると判断すると(S4:Yes)、プログラマブルゲインアンプ2が正常であると診断する(S6)。
次に、診断部52は、制御部51によりプログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインに切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1(第1の電流感度)と、所定ゲインに対応する、予め求められた電流感度Cs2(第2の電流感度)とを比較し、その比較結果が、一致を示す場合(S7:Yes)、ゲイン切替回路3が正常であると診断し(S8)、今回の診断処理を終了する。
【0038】
なお、電流感度Cs2は、実験やシミュレーションなどにより予め求められているものとする値であり、プログラマブルゲインアンプ2のゲインが所定のゲインで正常に動作しているときに求められる値である。例えば、実験やシミュレーションなどによりプログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替え、かつ、プログラマブルゲインアンプ2が所定ゲインG1で正常に動作しているときに求めた電流感度Cpaを、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2(第2の電流感度)とする。また、実験やシミュレーションなどによりプログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG2に切り替え、かつ、プログラマブルゲインアンプ2が所定ゲインG2で正常に動作しているときに求めた電流感度Cpbを、所定ゲインG2に対応する電流感度Cs2(第2の電流感度)とする。また、実験やシミュレーションなどによりプログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG3に切り替え、かつ、プログラマブルゲインアンプ2が所定ゲインG3で正常に動作しているときに求めた電流感度Cpcを、所定ゲインG3に対応する電流感度Cs2(第2の電流感度)とする。電流感度Cs2(第2の電流感度)は、誤差を考慮して所定の幅を持つ値でもよい。
【0039】
図3のS7において、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csaが、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpaと同じである場合を想定する。
【0040】
この場合、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致するため、診断部52は、比較結果が一致を示すと判断し、ゲイン切替回路3が正常であると診断する。
また、診断部52は、電流感度Cs1と電流感度Cs2の比較結果が不一致を示す場合(S7:No)、ゲイン切替回路3が異常であると診断し(S9)、今回の診断処理を終了する。なお、ゲイン切替回路3の異常としては、例えば、スイッチSW1~SW3の抵抗値異常や抵抗R1~R3の抵抗値異常などが考えられる。
【0041】
図3のS7において、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csaが、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpaと異なる場合を想定する。
【0042】
この場合、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致しないため、診断部52は、比較結果が不一致を示すと判断し、ゲイン切替回路3が異常であると診断する。
なお、図3に示すフローチャートにおいて、S1とS2の順番を入れ替えてもよい。
【0043】
また、図3に示すフローチャートにおいて、S1及びS2を省略してもよい。このように構成する場合、診断タイミングになると、まず、診断部52は、S3を実行する。
また、図3に示すフローチャートにおいて、S3~S6を省略してもよい。このように構成する場合、診断部52は、電源電圧+Vsが第1の所定範囲内である場合(S1:Yes)で、かつ、基準電圧Vrefが第2の所定範囲内である場合(S2:Yes)、次に、S7を実行する。
【0044】
また、図3に示すフローチャートにおいて、S1~S6を省略してもよい。このように構成する場合、診断タイミングになると、まず、診断部52は、S7の処理を実行する。
このように、実施形態のゲイン切替回路診断装置では、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインに切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1と、所定ゲインに対応する、予め求められた電流感度Cs2との比較結果により、ゲイン切替回路3が正常であるか否かを診断することができる。
【0045】
また、実施形態のゲイン切替回路診断装置では、プログラマブルゲインアンプ2の電源電圧が第1の所定範囲内である場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2の基準電圧が第2の所定範囲内である場合、ゲイン切替回路3が正常であるか否かの診断を行う構成であるため、電源電圧や基準電圧が正常であることを確認してから、ゲイン切替回路3が正常であるか否かを診断することができ、ゲイン切替回路3が正常であるか否かの診断精度を向上させることができる。
【0046】
また、実施形態のゲイン切替回路診断装置では、スイッチSW4がオンすることによりシャント抵抗Rsに流れる電流Isの増加分Isaと、スイッチSW4がオンすることにより抵抗R6、R7に流れる電流Irの増加分Iraとが一致する場合、ゲイン切替回路3が正常であるか否かの診断を行う構成であるため、プログラマブルゲインアンプ2が正常であることを確認してから、ゲイン切替回路3が正常であるか否かを診断することができ、ゲイン切替回路3が正常であるか否かの診断精度をさらに向上させることができる。
【0047】
また、実施形態のゲイン切替回路診断装置では、リレーReを開状態にさせることなく、ゲイン切替回路3が正常であるか否かを診断することができるため、電池パック1から補機Auへの電力供給をできるだけ停止させたくない場合に対して特に有効である。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
図4は、診断処理の他の例を示すフローチャートである。なお、電池Bから補機Auへ電力が供給されているものとする。また、図4のS1~S6は、図3のS1~S6と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
診断部52は、制御部51によりプログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインに切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1(第1の電流感度)と、所定ゲインに対応する、予め求められた電流感度Cs2(第2の電流感度)との比較を、所定ゲインG1~G3(複数の所定ゲイン)に対して行い、全ての比較結果が、一致を示す場合(S10:Yes)、ゲイン切替回路3が正常であると診断し(S11)、今回の診断処理を終了する。
【0050】
図4のS10において、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csaが、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpaと同じである場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG2に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csbが、所定ゲインG2に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpbと同じある場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG3に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Cscが、所定ゲインG3に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpcと同じである場合を想定する。
【0051】
この場合、所定ゲインG1~G3に対して、それぞれ、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致するため、診断部52は、全ての比較結果が一致を示すと判断し、ゲイン切替回路3が正常であると診断する。
【0052】
また、診断部52は、全ての比較結果のうちの一部の比較結果が一致を示す場合(S10:No、S12:Yes)、ゲイン切替回路3が異常であると診断し(S13)、今回の診断処理を終了する。
【0053】
図4のS12において、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csaが、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpaと同じである場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG2に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csbが、所定ゲインG2に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpbと同じである場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG3に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Cscが、所定ゲインG3に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpcと異なる場合を想定する。
【0054】
この場合、所定ゲインG1、G2に対して、それぞれ、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致し、所定ゲインG3に対して、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致しないため、診断部52は、一部の比較結果が一致を示すと判断し、ゲイン切替回路3が異常であると診断する。
【0055】
また、診断部52は、全ての比較結果が不一致を示す場合(S10:No、S12:No)、シャント抵抗Rsが異常であると診断し(S14)、今回の診断処理を終了する。なお、シャント抵抗Rsの異常としては、例えば、シャント抵抗Rsの抵抗値異常などが考えられる。
【0056】
図4のS12において、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG1に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csaが、所定ゲインG1に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpaと異なる場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG2に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Csbが、所定ゲインG2に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpbと異なる場合で、かつ、プログラマブルゲインアンプ2のゲインを所定ゲインG3に切り替えさせているときに求められる電流感度Cs1としての電流感度Cscが、所定ゲインG3に対応する電流感度Cs2としての電流感度Cpcと異なる場合を想定する。
【0057】
この場合、所定ゲインG1~G3に対して、それぞれ、電流感度Cs1と電流感度Cs2が一致しないため、診断部52は、全ての比較結果が不一致を示すと判断し、シャント抵抗Rsが異常であると診断する。
【0058】
このように、実施形態のゲイン切替回路診断装置は、電流感度Cs1と電流感度Cs2との比較を、複数の所定ゲインに対して行い、全ての比較結果が、一致を示す場合、ゲイン切替回路3が正常であると診断を行う構成であるため、ゲイン切替回路3が正常であるか否かの診断精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 電池パック
2 プログラマブルゲインアンプ
3 ゲイン切替回路
4 パルス放電回路
5 電池制御部
B 電池
Au 補機
Re リレー
Rs シャント抵抗
R1~R7 抵抗
SW1~SW4 スイッチ
図1
図2
図3
図4