(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220117BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220117BHJP
B60K 13/02 20060101ALI20220117BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/20 C
B60K13/02 C
B60R16/04 E
(21)【出願番号】P 2017186353
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】片山 智行
(72)【発明者】
【氏名】東條 浩也
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/054715(WO,A1)
【文献】特開2010-173554(JP,A)
【文献】特開2017-154549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
B60K 13/02
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部空間に、前記車両前部空間を延在する車体骨格部材を介して配置されるバッテリおよび車両搭載部品とを備えた車両の前部構造であって、
前記車体骨格部材に単一のトレイが設けられ、
前記トレイは、
前記車体骨格部材の上方の箇所に位置し前記バッテリが取り付けられるバッテリ取り付け板部と、
前記バッテリ取り付け板部から前記車体骨格部材の延在方向と交差する方向に離れた箇所に位置し前記車両搭載部品が取り付けられる車両搭載部品用第1取り付け板部と、
前記バッテリ取り付け板部と前記車両搭載部品用第1取り付け板部とを接続し前記車両搭載部品用第1取り付け板部を前記バッテリ取り付け板部と高さの異なる箇所に位置させる第1縦板部と
を備え、
前記車体骨格部材の延在方向と交差する方向に延在し
前記バッテリ取り付け板部から前記第1縦板部を経て前記車両搭載部品用第1取り付け板部に至る第1ビードが設けられている、
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
前記車両搭載部品は、エアフィルターが収容されたケース本体を有するエアクリーナーであり、
前記車両搭載部品は、前記車体骨格部材の延在方向と平行する方向に間隔をおいて配置された少なくとも2本のボルトで前記車両搭載部品の底部が前記車両搭載部品用第1取り付け板部に取着され、
前記車両搭載部品の底部が前記車両搭載部品用第1取り付け板部に取着された状態で、前記車両搭載部品の重心の前記車体骨格部材の延在方向の位置が前記車体骨格部材の延在方向一端に位置するボルトと他端に位置するボルトの間に位置している、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記バッテリ取り付け板部から前記車体骨格部材の延在方向に離れた箇所に、車両搭載部品が取り付けられる車両搭載部品用第2取り付け板部が設けられ、
前記バッテリ取り付け板部と両搭載部品用第2取り付け板部とを接続し前記車両搭載部品用第2取り付け板部を前記バッテリ取り付け板部および前記車両搭載部品用第1取り付け板部と高さの異なる箇所に位置させる第2縦板部が設けられ、
前記車両搭載部品用第1取り付け板部と前記車両搭載部品用第2取り付け板部とは、前記第1縦板部に連続する第3縦板部で接続されている、
ことを特徴とする請求項1
または2記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記車両搭載部品用第1取り付け板部は前記バッテリ取り付け板部よりも上下方向一方に位置し、
前記車両搭載部品用第2取り付け板部は前記バッテリ取り付け板部よりも上下方向他方に位置する、
ことを特徴とする請求項
3記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記車体骨格部材の延在方向において前記車両搭載部品用第2取り付け板部と反対に位置する前記バッテリ取り付け板部の端部の箇所から前記車体骨格部材の延在方向に沿って延在し前記第2縦板部を経て前記車両搭載部品用第2取り付け板部に至る第2ビードが設けられる、
ことを特徴とする請求項
3または4記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記トレイは、前記第2ビードの箇所で前記車体骨格部材に取着する
ことを特徴とする請求項
5記載の車両の前部構造。
【請求項7】
前記車体骨格部材は、前記前部空間の車幅方向の端部で車両前後方向に延在するフロントサイドメンバであり、
前記トレイは、前記フロントサイドメンバに取着されたトランスミッションマウントに取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1~
6の何れか1項記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部構造として、車両の前部空間の車幅方向の側部に配置された車体骨格部材(サイドメンバ)を介してバッテリおよび車両搭載部品(エアクリーナ)を配置することが提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、バッテリは、バッテリ用のトレイを介して車体骨格部材に取り付けられ、車両搭載部品は、車両搭載部品用のトレイを介して車体骨格部材に取り付けられている。
バッテリ用のトレイは、バッテリが取り付けられる平坦な取り付け面を有し、車両搭載部品用のトレイは、車両搭載用部品が取り付けられる平坦な取り付け面を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、2つのトレイを用いることから部品点数の削減を図る上で改善の余地がある。
そこで、バッテリおよび車両搭載部品の双方を取り付ける大きさの取り付け面を有するトレイを用いることで、部品点数の削減を図ることが考えられる。
しかしながら、上記トレイは、バッテリおよび車両搭載部品の双方を取り付けるために取り付け面の面積が大きくなる。
そのため、トレイの剛性、強度が低下し、車両搭載部品から発生する振動を抑制する上で、また、衝突時におけるバッテリおよび車両搭載部品の保護を図る上で不利が生じることが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、バッテリおよび車両搭載部品を単一のトレイを介して車体骨格部材に取り付けるにも拘わらず、トレイの剛性、強度を確保し振動の抑制、衝突時におけるバッテリおよび車両搭載部品の保護を図る上で有利な車両の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両前部空間に、前記車両前部空間を延在する車体骨格部材を介して配置されるバッテリおよび車両搭載部品とを備えた車両の前部構造であって、前記車体骨格部材に単一のトレイが設けられ、前記トレイは、前記車体骨格部材の上方の箇所に位置し前記バッテリが取り付けられるバッテリ取り付け板部と、前記バッテリ取り付け板部から前記車体骨格部材の延在方向と交差する方向に離れた箇所に位置し前記車両搭載部品が取り付けられる車両搭載部品用第1取り付け板部と、前記バッテリ取り付け板部と前記車両搭載部品用第1取り付け板部とを接続し前記車両搭載部品用第1取り付け板部を前記バッテリ取り付け板部と高さの異なる箇所に位置させる第1縦板部とを備え、前記車体骨格部材の延在方向と交差する方向に延在し前記バッテリ取り付け板部から前記第1縦板部を経て前記車両搭載部品用第1取り付け板部に至る第1ビードが設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記車両搭載部品は、エアフィルターが収容されたケース本体を有するエアクリーナーであり、前記車両搭載部品は、前記車体骨格部材の延在方向と平行する方向に間隔をおいて配置された少なくとも2本のボルトで前記車両搭載部品の底部が前記車両搭載部品用第1取り付け板部に取着され、前記車両搭載部品の底部が前記車両搭載部品用第1取り付け板部に取着された状態で、前記車両搭載部品の重心の前記車体骨格部材の延在方向の位置が前記車体骨格部材の延在方向一端に位置するボルトと他端に位置するボルトの間に位置していることを特徴とする。
また、本発明は、前記バッテリ取り付け板部から前記車体骨格部材の延在方向に離れた箇所に、車両搭載部品が取り付けられる車両搭載部品用第2取り付け板部が設けられ、前記バッテリ取り付け板部と両搭載部品用第2取り付け板部とを接続し前記車両搭載部品用第2取り付け板部を前記バッテリ取り付け板部および前記車両搭載部品用第1取り付け板部と高さの異なる箇所に位置させる第2縦板部が設けられ、前記車両搭載部品用第1取り付け板部と前記車両搭載部品用第2取り付け板部とは、前記第1縦板部に連続する第3縦板部で接続されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記車両搭載部品用第1取り付け板部は前記バッテリ取り付け板部よりも上下方向一方に位置し、前記車両搭載部品用第2取り付け板部は前記バッテリ取り付け板部よりも上下方向他方に位置することを特徴とする。
また、本発明は、前記車体骨格部材の延在方向において前記車両搭載部品用第2取り付け板部と反対に位置する前記バッテリ取り付け板部の端部の箇所から前記車体骨格部材の延在方向に沿って延在し前記第2縦板部を経て前記車両搭載部品用第2取り付け板部に至る第2ビードが設けられることを特徴とする。
また、本発明は、前記トレイは、前記第2ビードの箇所で前記車体骨格部材に取着することを特徴とする。
また、本発明は、前記車体骨格部材は、前記前部空間の車幅方向の端部で車両前後方向に延在するフロントサイドメンバであり、前記トレイは、前記フロントサイドメンバに取着されたトランスミッションマウントに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車体骨格部材の上方に位置するバッテリ取り付け板部と、バッテリ取り付け板部から車体骨格部材の延在方向と交差する方向に離れた箇所に位置する車両搭載部品用第1取り付け板部とを有する単一のトレイによりバッテリと、バッテリ以外の車両搭載部品を支持するようにした。
そして、第1縦板部を設けてバッテリ取り付け板部と車両搭載部品用第1取り付け板部との高さを異ならせた。
そのため、第1縦板部、第1縦板部とバッテリ取り付け板部との間の稜線、第1縦板部と車両搭載部品用第1取り付け板部との間の稜線によりトレイの強度、剛性が高められており、単一のトレイによりバッテリと車両搭載部品との2つの車両搭載部品を支持するにも拘わらず、バッテリおよび車両搭載部品の振動を抑制する上で有利となり、それらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
また、トレイの強度、剛性が高められているので、車両搭載部品が水平方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、トレイの強度、剛性が高められているので、衝突時のトレイの変形を抑制しバッテリの保護を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、エアクリーナーの重心の車両骨格部材の延在方向の位置が車両骨格部材の延在方向の一端に位置するボルトと他端に位置するボルトの間に位置しているので、エアクリーナーが上下方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、重量の大きいバッテリと軽量なエアクリーナーとの2つの車両搭載部品を単一のトレイにより支持するので、車両前部空間に配置する軽量なエアクリーナーの振動を抑制する上で有利となり、それらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
また、本発明によれば、車体骨格部材の延在方向と交差する方向に延在しバッテリ取り付け板部から第1縦板部を経て車両搭載部品用第1取り付け板部に至る第1ビードを設けたので、第1ビードによりトレイの強度、剛性を高める上で、バッテリおよび車両搭載部品の振動を抑制しそれらによる走行中の騒音を低減する上で、車両搭載部品が水平方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、本発明によれば、バッテリ取り付け板部、車両搭載部品用第1取り付け板部、車両搭載部品用第2取り付け板部が互いに高さの異なる箇所に設けられ、トレイには、第1縦板部、第2縦板部、第3縦板部が形成されると共に、第1縦板部とバッテリ取り付け板部との間の稜線、第1縦板部と車両搭載部品用第1取り付け板部との間の稜線、第2縦板部とバッテリ取り付け板部との間の稜線、第2縦板部と車載部品用第2取り付け板部との間の稜線、第3縦板部と車両搭載部品用第1取り付け板部との間の稜線、第3縦板部と車載部品用第2取り付け板部との間の稜線が形成されているので、トレイの強度、剛性がさらに高められ、走行中の騒音を低減する上で、また、衝突時のトレイの変形を抑制しバッテリの保護を図る上で、また、車両搭載部品が水平方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、本発明によれば、車両搭載部品用第1取り付け板部と車両搭載部品用第2取り付け板部の上下方向の距離を大きくすることができ、車両搭載部品が水平方向を中心軸として回転することを抑制する上で更に有利となる。
また、本発明によれば、車体骨格部材の延在方向において車両搭載部品用第2取り付け板部と反対に位置するバッテリ取り付け板部の端部の箇所から車体骨格部材の延在方向に沿って延在し第2縦板部を経て車両搭載部品用第2取り付け板部に至る第2ビードが設けられている。
そのため、第2ビードによりトレイの強度、剛性がさらに高められ、走行中の騒音を低減する上で、また、衝突時のトレイの変形を抑制しバッテリの保護を図る上で、また、車両搭載部品が水平方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、本発明によれば、第2ビードで、トレイを車体骨格部材に取着するので、トレイを車体に強固に固定する上で有利となる。
また、本発明によれば、トレイの車両搭載部品用第2取り付け板部は、ボルトにより第2ブラケットと共に剛性が高いトランスミッションマウントに取り付けられているので、バッテリおよび車両搭載部品の振動を抑制しそれらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る車両の前部構造の斜視図であり、トレイおよび第2ブラケットが省略されている。
【
図2】実施の形態に係る車両の前部構造を車幅方向内側から見た斜視図である。
【
図3】トレイおよび第2ブラケットの取付状態を車幅方向内側から見た斜視図である。
【
図4】バッテリおよびエアクリーナーがトレイを介してフロントサイドメンバに取り付けられた状態を車両前方から見た正面図である。
【
図5】エアクリーナーがトレイに取り付けられた状態を車幅方向外側かつ上方から見た斜視図である。
【
図6】エアクリーナーがトレイに取り付けられた状態を車幅方向内側かつ下方から見た斜視図である。
【
図7】第1ブラケットを車幅方向内側から見た斜視図である。
【
図8】(A)はトレイの平面図、(B)はトレイを車両前方から見た正面図、(C)はトレイを車幅方向内側から見た側面図である。
【
図9】トレイを車幅方向外側から見た斜視図である。
【
図10】トレイを車幅方向内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において、符号FRは車両前方、符号UPは車両上方、符号INは車幅方向内側、符号OUTは車幅方向外側を示す。
図1に示すように、車両10は、車室の前方にダッシュパネルで仕切られる車両前部空間12を有している。
図2に示すように、車両前部空間12には、エンジン(不図示)、ラジエータ(不図示)、バッテリ14、エアクリーナー16が配置されている。
図1に示すように、車両前部空間12の車幅方向両側部に、車両の前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバ18が配置されている。
それらフロントサイドメンバ18の前端には、上下方向に延在する左右のランプサポート20の中間部が連結されている。
さらに、左右のランプサポート20の中間部は、車幅方向に延在するバンパビーム22で連結されている。
また、それらフロントサイドメンバ18の上方に車両の前後方向に延在する左右のアッパーバーサイド24が配置されている。
それら左右のアッパーバーサイド24の前端および左右のランプサポート20の上端は車幅方向に延在するアッパーバー(フロントエンドアッパーバー)26によって連結されている。
【0009】
図2に示すように、バッテリ14とエアクリーナー16は、一対のフロントサイドメンバ18のうちの一方のフロントサイドメンバ18と、トレイ28を介して配置されている。
フロントサイドメンバ18は、車体骨格部材をなし上述のように車両前部空間12で車両前後方向に延在している。
図3、
図4に示すように、トレイ28は、第1ブラケット30、第2ブラケット32を介してフロントサイドメンバ18の上方箇所に配置されている。
【0010】
図7に示すように、第1ブラケット30は、フロントサイドメンバ18の車両前後方向に間隔をおいた2箇所からそれぞれ起立する2つの脚部3002と、それら2つの脚部3002を接続する上面部3004とを有している。
2つの脚部3002の車両前後方向の端部にそれぞれフランジ3006が突設され、
図2に示すように、それらフランジ3006のボルト挿通孔3008に挿通したボルトN1がフロントサイドメンバ18の雌ねじに締結されることで第1ブラケット30がフロントサイドメンバ18に取り付けられている。
また、脚部3002の車幅方向端部の縁部3002Aは、衝突時などにバッテリ14のハーネスがあたることで断線しないように、かつ、脚部3002の強度を向上させるために、先端がハーネスの延在方向を向くように湾曲している。なお、ハーネスは、トレイ28の下を、第1ブラケット30と後述するトランスミッションマウント34との間を車幅方向に延在している。
上面部3004は車幅方向に延在しており、上面部3004には車幅方向に間隔をおいて3つのボルト挿通孔3010が形成されている。
【0011】
図3に示すように、第2ブラケット32は、フロントサイドメンバ18の上面に配置されたトランスミッションマウント34上で車幅方向に延在する上部3202と、上部3202の車幅方向端部から下方に変位しつつ車幅方向外側に延在する傾斜部3204とを有している。
上部3202の車幅方向に間隔をおいてボルト挿通孔が2つ形成され、傾斜部3204の端部にボルト挿通孔が形成されている。
2つのボルト挿通孔のうち車幅方向外側のボルト挿通孔に挿通されたボルトN2がトランスミッションマウント34に締結され、傾斜部3204のボルト挿通孔に挿通されたボルトN3がホイールハウス36の壁部に締結されている。
なお、
図2、
図3において符号37はスプリングハウスを示す。
【0012】
図8、
図9、
図10に示すように、トレイ28は、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、第1縦板部42、車両搭載部品用第2取り付け板部44、第2縦板部46、第3縦板部48を有している。
トレイ28が第1ブラケット30、第2ブラケット32を介してフロントサイドメンバ18の上方箇所に配置された状態で、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、車両搭載部品用第2取り付け板部44はほぼ水平面上を延在している。
さらに、トレイ28の全周に下方に突出するフランジ50が形成されている。
【0013】
バッテリ取り付け板部38は、バッテリ14の底部が載置され取り付けられる箇所である。
トレイ28が第1ブラケット30、第2ブラケット32を介してフロントサイドメンバ18の上方箇所に配置された状態で、トレイ28を平面視した場合、バッテリ取り付け板部38は、フロントサイドメンバ18の上方箇所に位置している。
【0014】
車両搭載部品用第1取り付け板部40は、エアクリーナー16のケース本体1602の底部が載置され、取り付けられる箇所である。
車両搭載部品用第1取り付け板部40は、バッテリ取り付け板部38の車幅方向内側の箇所に位置し、また、バッテリ取り付け板部38よりも下方の箇所に位置している。
図8(A)に示すように、車両搭載部品用第1取り付け板部40は、平面視した場合、略直角となる角を車両後方かつ車幅方向外側に有するほぼ直角三角形状を呈している。
車両搭載部品用第1取り付け板部40の後端は、バッテリ取り付け板部38よりも車両後方に突出している。
【0015】
車両搭載部品用第2取り付け板部44は、エアクリーナー16のケース本体1602の取り付けフランジ1604(
図5参照)が取り付けられる箇所である。
車両搭載部品用第2取り付け板部44は、バッテリ取り付け板部38の車両後方の箇所に位置し、かつ、車両搭載部品用第1取り付け板部40の車幅方向外側に位置し、フロントサイドメンバ18の上方箇所に位置している。
車両搭載部品用第2取り付け板部44は、バッテリ取り付け板部38よりも上方の箇所に位置している。
すなわち、車両搭載部品用第1取り付け板部40はバッテリ取り付け板部38よりも上下方向一方(本実施の形態では下方)に位置し、車両搭載部品用第2取り付け板部44はバッテリ取り付け板部38よりも上下方向他方(本実施の形態では上方)に位置している。
【0016】
第1縦板部42は、バッテリ取り付け板部38の車幅方向内側の端部と、この端部の車幅方向内側に位置する車両搭載部品用第1取り付け板部40とを接続している。
第2縦板部46は、バッテリ取り付け板部38の車両後方の端部と、車両搭載部品用第2取り付け板部44の車両前方の端部とを接続している。
第3縦板部48は、車両搭載部品用第2取り付け板部44の車幅方向内側の端部と、この端部の車幅方向内側に位置する車両搭載部品用第1取り付け板部40とを接続している。
【0017】
バッテリ取り付け板部38と第2縦板部46と車両搭載部品用第2取り付け板部44とにわたって車両前後方向に延在する第2ビード64と第3ビード66が車幅方向に間隔をおいて設けられ、さらに第2ビード66の車幅方向内側にバッテリ取り付け板部38と第2縦板部46にわたって車両前後方向に延在する第4ビード68が設けられている。
それら第2、第3、第4ビード64、66、68は、下方に凸状に形成されている。
第2ビード64は、車両前後方向に延在する縦部6402と、縦部6402の車両前方端かつバッテリ取り付け板部38の車両前方端に位置し縦部6402に接続される横部6404とを有している。
【0018】
バッテリ取り付け板部38と第1縦板部42と車両搭載部品用第1取り付け板部40とにわたって車幅方向に延在する第1ビード70が設けられている。
第3縦板部48と車両搭載部品用第1取り付け板部40とにわたって車幅方向に延在する第5ビード72と第6ビード74が車両前後方向に間隔をおいて設けられている。
【0019】
図8(A)に示すように、第2ビード64の横部6404の底面には車幅方向に間隔をおいて2つのボルト挿通孔6410が設けられている。
第2ビード64の横部6404の底面は第1ブラケット30の上面部3004に載置され、底面の2つのボルト挿通孔6410、6410と、第1ブラケット30の上面部3004の2つのボルト挿通孔3010(
図7参照)とにボルトN4(
図3参照)が挿通され、上面部3004の下面でこのボルトN4にナットが締結されている。
これによりバッテリ取り付け板部38の前端は第1ブラケット30を介してフロントサイドメンバ18に取着されている。
【0020】
第2ビード64の縦部6402の車両後方端の底面にはボルト挿通孔6420が設けられ、また、車両搭載部品用第2取り付け板部44の車両後方の箇所で車幅方向内側の端部にはボルト挿通孔4402が形成されている。
図3、
図8(A)に示すように、車両搭載部品用第2取り付け板部44は、第2ブラケット32の上部3202に載置され、底面のボルト挿通孔6420および上部3202のボルト挿通孔に挿通したボルトN2がトランスミッションマウント34に締結され、第2ビード64の縦部6402の底面および第2ブラケット32の上部3202がトランスミッションマウント34に共締めされている。
車両搭載部品用第2取り付け板部44の車両後部で車幅方向内側に位置するボルト挿通孔4402、第2ブラケット32の上部3202の車幅方向内側の端部に位置するボルト挿通孔に上方からボルトN5が挿通され、上部3202の下面でこのボルトにナットが締結されている。
これによりトレイ28の車両後方部分が第2ブラケット32を介してフロントサイドメンバ18に取着されている。
バッテリ取り付け板部38と第2縦板部46と車両搭載部品用第2取り付け板部44とにわたって車両前後方向に延在する第2ビード64で、トレイ28をフロントサイドメンバ18に取着することで、トレイ28を車体に強固に固定できる。
このとき、車両上下方向で第2ビード64の横部6404内にボルトN4が収まるようにすると、バッテリ14とボルトN4との干渉を防止することができる。
【0021】
図9に示すように、バッテリ取り付け板部38の車幅方向外側に位置するフランジ50部分に、そのフランジ50部分を下方に突出させたブラケット76が設けられ、このブラケット76にバッテリ取り付け用のフック部材78A(
図4参照)の下端が係止される係止孔7602が形成されている。
図8(A)、
図9に示すように、バッテリ取り付け板部38の車幅方向内側に位置する箇所に、バッテリ取り付け用のフック部材78B(
図4参照)の下端が係止される係止孔3802が設けられている。
車両搭載部品用第1取り付け板部40の車両前後方向に間隔をおいた2箇所に、エアクリーナー取り付け用ボルト挿通孔4002が形成されている。
車両搭載部品用第2取り付け板部44の車両後方の車幅方向内側の端部にエアクリーナー取り付け用ボルト挿通孔4410が形成されている。
【0022】
図2、
図4に示すように、バッテリ14は平面視縦長のバッテリケース1402を有し、その長手方向を車両の前後方向に向けてバッテリ取り付け板部38に載置され、バッテリ取り付け板部38に形成された2つの係止孔3802のうち車幅方向外側の係止孔3802と、ブラケット76の係止孔7602とにそれぞれ係止させたフック部材78A、78Bの上部の雄ねじ7802を、バッテリケース1402の上面に配置したクランプ部材80の両端の孔に下方から挿通させ、クランプ部材80の上面でそれらフック部材78A、78Bの雄ねじ7802にナット82が締結されている。
これによりバッテリ14はバッテリ取り付け板部38上に取り付けられている。
【0023】
図4、
図5、
図6に示すように、エアクリーナー16は、エアフィルターを収容するケース本体1602と、ケース本体1602の底部から上方に離れた箇所に突設された取り付けフランジ1604とを備えている。
ケース本体1602の底面の車両前後方向の前部が車両搭載部品用第1取り付け板部40に載置され、下方から2つのエアクリーナー取り付け用ボルト挿通孔4002(
図8(A)参照)にそれぞれ挿通した2本のボルトN6がケース本体1602の底面に締結される。
また、ケース本体1602から車幅方向外側に突設されたフランジ1604が、車両搭載部品用第2取り付け板部44に載置され、下方からボルトN7が取り付けフランジ1604とエアクリーナー取り付け用ボルト挿通孔4410(
図8(A)参照)に挿通され、フランジ1604上でボルトN7にナットが締結される。
これによりエアクリーナー16はトレイ28の車幅方向内側の箇所に取り付けられている。
エアクリーナー16が車両搭載部品用第1取り付け板部40を介してトレイ28に取り付けられた状態で、平面視した場合、エアクリーナー16の重心は車両前後方向で車両搭載部品用第1取り付け板部40の2本の2本のボルトN6の間に位置している。
言い換えると、エアクリーナー16の重心のフロントサイドメンバ18の延在方向の位置がフロントサイドメンバ18の延在方向一端に位置するボルトN6と他端に位置するボルトN6の間に位置している。
【0024】
本実施の形態によれば、バッテリ取り付け板部38とその車幅方向側方に位置する車両搭載部品用第1取り付け板部40とを有する単一のトレイ28によりバッテリ14とエアクリーナー16との2つの車両搭載部品を支持するようにした。
そして、それらバッテリ取り付け板部38と車両搭載部品用第1取り付け板部40とを、単一の平坦面上に設けずに、第1縦板部42を設けて車両搭載部品用第1取り付け板部40をバッテリ取り付け板部38の下方に位置させた。
そのため、第1縦板部42、第1縦板部42とバッテリ取り付け板部38との間の稜線、第1縦板部42と車両搭載部品用第1取り付け板部40との間の稜線によりトレイ28の前後方向の強度、剛性が高められており、単一のトレイ28によりバッテリ14とエアクリーナー16との2つの車両搭載部品を支持するにも拘わらず、バッテリ14およびエアクリーナー16の振動を抑制する上で有利となり、それらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
また、エアクリーナー16が車幅方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
更に、前突時のトレイ28の変形を抑制しバッテリ14の保護を図る上で有利となる。
【0025】
また、本実施の形態では、エアクリーナー16が車両搭載部品用第1取り付け板部40に取り付けられた状態で、平面視した場合、エアクリーナー16の重心は車両前後方向で車両搭載部品用第1取り付け板部40の2本のボルトN6の間に位置している。
そのため、エアクリーナー16が上下方向、車幅方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
また、重量の大きいバッテリ14と軽量なエアクリーナー16との2つの車両搭載部品を単一のトレイ28により支持するようにした。
そのため、車両前部空間12に配置する軽量なエアクリーナー16の振動を抑制する上で有利となり、それらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、車幅方向に延在しバッテリ取り付け板部38から第1縦板部42を通って車両搭載部品用第1取り付け板部40に至る第1ビード70を設けたので、第1ビード70によりトレイ28の強度、剛性が高まり、バッテリ14およびエアクリーナー16の振動を抑制しそれらによる走行中の騒音を低減する上で、またエアクリーナー16が車両前後方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、車両搭載部品用第2取り付け板部44が互いに高さの異なる箇所に設けられ、トレイ28には、第1縦板部42、第2縦板部46,第3縦板部48が形成されると共に、第1縦板部42とバッテリ取り付け板部38との間の稜線、第1縦板部42と車両搭載部品用第1取り付け板部40との間の稜線、第3縦板部48と車両搭載部品用第1取り付け板部40との間の稜線、第3縦板部48と車載部品用第2取り付け板部44との間の稜線がトレイ28の車両前後方向にわたって連続状に形成され、第2縦板部46とバッテリ取り付け板部38との間の稜線、第2縦板部46と車載部品用第2取り付け板部44との間の稜線が車幅方向に延在しているので、トレイ28の車両前後方向及び車幅方向の強度、剛性がさらに高められ、走行中の騒音を低減する上で、また、前突時のトレイ28の変形を抑制しバッテリ14の保護を図る上で有利となり、さらに、エアクリーナー16が車幅方向、前後方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、エアクリーナー16は、底面が車両搭載部品用第1取り付け板部40にボルトN6で取り付けられ、底面から上方に離れたフランジ1604が車両搭載部品用第2取り付け板部44にボルトN7で取り付けられているので、エアクリーナー16が車両前後方向を中心軸として、また、車幅方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
このとき、第1縦板部42と第2縦板部46のバッテリ取り付け板部38からの延在方向(本実施例では、第1縦板部42が下方向、第2縦板部46が上方向)を逆向きにすることで、エアクリーナー16の上下方向の支持間隔(車両搭載部品用第1取り付け板部40と車両搭載部品用第2取り付け板部44の上下方向の距離)を大きくすることができ、エアクリーナー16が車幅方向、前後方向を中心軸として回転することを抑制する上で更に有利となる。
更に、フランジ1604は車両上下方向でエアクリーナー16の重心近傍、さらに言うと、重心より若干上方とすると、エアクリーナー16の回転の抑制効果がさらに高まる。
【0029】
また、本実施の形態では、バッテリ取り付け板部38の車両前方に位置する箇所から車両後方に延在し、第2縦板部46を経て車両搭載部品用第2取り付け板部44に至る第2ビード64が設けられ、車幅方向に延在し車両搭載部品用第1取り付け板部40から第3縦板部48の上部に至る第5ビード72、第6ビード74が設けられている。
そのため、トレイ28の強度、剛性がさらに高められ、走行中の騒音を低減する上で、また、衝突時のトレイ28の変形を抑制しバッテリ14の保護を図る上で、また、エアクリーナー16が車幅方向を中心軸として回転することを抑制する上で、また、エアクリーナー16が車両前後方向を中心軸として回転することを抑制する上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、トレイ28の車両搭載部品用第2取り付け板部44は、ボルトN2により第2ブラケット32と共に剛性が高いトランスミッションマウント34に取り付けられているので、バッテリ14およびエアクリーナー16の振動を抑制しそれらによる走行中の騒音を低減する上で有利となる。
【0031】
なお、第1、第2、第3縦板部42、46、48は、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、車両搭載部品用第2取り付け板部44に対して直角に曲がっていても良いし、湾曲していても良い。
また、本実施の形態では、車体骨格部材が車両前後方向に延在するフロントサイドメンバ18である場合について説明したが、車体骨格部材は車幅方向に延在し、あるいは、車両前後方向に対して斜めに延在するものであってもよい。
また、本実施の形態では、車両搭載部品用第1取り付け板部40をバッテリ取り付け板部38の車幅方向内側の箇所に位置させた場合について説明したが、車両搭載部品用第1取り付け板部40をバッテリ取り付け板部38の車幅方向外側の箇所に位置させてもよい。
また、本実施の形態では、車両搭載部品用第1取り付け板部40をバッテリ取り付け板部38の下方に位置させた場合について説明したが、車両搭載部品用第1取り付け板部40をバッテリ取り付け板部38の上方に位置させてもよい。
また、本実施の形態では、車両搭載部品用第2取り付け板部44をバッテリ取り付け板部38の上方に位置させた場合について説明したが、車両搭載部品用第2取り付け板部44をバッテリ取り付け板部38の下方に位置させてもよい。
要するに、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、車両搭載部品用第2取り付け板部44は、互いに高さの異なった箇所に位置していれば良い。
また、本実施の形態では、車両搭載部品用第1取り付け板部40と車両搭載部品用第2取り付け板部44にエアクリーナー16が取り付けられた場合について説明したが、エアクリーナー16の形状によっては、取り付けフランジ1604を省略し、エアクリーナー16を車両搭載部品用第1取り付け板部40のみに取り付けることも可能である。
その場合には、トレイ28は、バッテリ取り付け板部38、車両搭載部品用第1取り付け板部40、第1縦板部42を備えていればよく、したがって、車両搭載部品用第2取り付け板部44、第2縦板部46、第3縦板部48を省略してもよい。
また、車両搭載部品がエアクリーナーである場合について説明したが、本発明において車両搭載部品はエアクリーナーに限定されず、車両搭載部品はエアクリーナー以外の様々な部品に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 車両
12 車両前部空間
14 バッテリ
16 エアクリーナー(車両搭載部品)
1602 ケース本体
1604 取り付けフランジ(フランジ)
18 フロントサイドメンバ(車体骨格部材)
28 トレイ
30 第1ブラケット
32 第2ブラケット
34 トランスミッションマウント
38 バッテリ取り付け板部
40 車両搭載部品用第1取り付け板部、
42 第1縦板部
44 車両搭載部品用第2取り付け板部
46 第2縦板部
48 第3縦板部
64 第2ビード
70 第1ビード
N6 ボルト