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特許7006092道路情報取得システムおよび道路情報取得プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】道路情報取得システムおよび道路情報取得プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/076 20120101AFI20220117BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20220117BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B60W40/076
G01C21/26 A
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017187354
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019059418
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】宮島 孝幸
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089103(JP,A)
【文献】特開2014-232240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/076
G01C 21/26
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得する勾配取得部と、
前記勾配取得区間の開始位置および終了位置と、前記勾配の正負が転換する正負転換位置と、前記勾配の変化が急激である区間において前記勾配の変化が緩やかな区間よりも密に設定された設定位置と、のそれぞれについての前記勾配を示す道路情報を取得する道路情報取得部と、
を備え
前記設定位置は、前記設定位置と前記開始位置と前記終了位置と前記正負転換位置の各位置の前記勾配を用いた線形補間によって再現された勾配と、前記勾配取得部によって取得された前記勾配と、の誤差が許容範囲となるように設定されている、
道路情報取得システム。
【請求項2】
前記道路情報取得部は、
前記勾配が既定範囲内である区間に前記設定位置を設定しない、
請求項1に記載の道路情報取得システム。
【請求項3】
前記道路情報取得部は、
前記勾配取得部によって前記勾配が取得されなかった区間の直前および直後に前記設定位置を設定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の道路情報取得システム。
【請求項4】
コンピュータを、
車両の現在位置を取得する現在位置取得部、
前記現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得する勾配取得部、
前記勾配取得区間の開始位置および終了位置と、前記勾配の正負が転換する正負転換位置と、前記勾配の変化が急激である区間において前記勾配の変化が緩やかな区間よりも密に設定された設定位置と、のそれぞれについての前記勾配を示す道路情報を取得する道路情報取得部、
として機能させ、
前記設定位置は、前記設定位置と前記開始位置と前記終了位置と前記正負転換位置の各位置の前記勾配を用いた線形補間によって再現された勾配と、前記勾配取得部によって取得された前記勾配と、の誤差が許容範囲となるように設定されている、
道路情報取得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路情報取得システムおよび道路情報取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方に存在する道路の特徴に基づいて車両を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の前方の勾配に基づいて車両を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-223895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の前方の道路における勾配を車両制御に利用するためには、車両制御の利用に耐える程度に勾配を正確に特定する必要がある。勾配を正確に特定するためには、道路上での勾配が特定された地点の密度が密であることが好ましい。しかし、勾配を示す情報を、例えば、他の制御ユニット等に送信して利用する場合、情報量が過大であると、送信に時間を要する、送信できない、などの不具合が生じ得る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、勾配の精度を落とさずに情報量を削減できる可能性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、道路情報取得システムは、車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得する勾配取得部と、前記勾配取得区間の開始位置および終了位置と、前記勾配の正負が転換する正負転換位置と、前記勾配の変化が急激である区間において前記勾配の変化が緩やかな区間よりも密に設定された設定位置と、のそれぞれについての前記勾配を示す道路情報を取得する道路情報取得部と、を備える。
【0006】
さらに、上記の目的を達成するために、道路情報取得プログラムは、コンピュータを、車両の現在位置を取得する現在位置取得部、前記現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得する勾配取得部、前記勾配取得区間の開始位置および終了位置と、前記勾配の正負が転換する正負転換位置と、前記勾配の変化が急激である区間において前記勾配の変化が緩やかな区間よりも密に設定された設定位置と、のそれぞれについての前記勾配を示す道路情報を取得する道路情報取得部、として機能させる。
【0007】
すなわち、道路情報送信システム、プログラムにおいて、勾配の正負転換位置は、道路が形成する山の頂点または谷の底であるため、道路勾配の再現に重要な位置である。また、勾配の変化が急激である区間においては、短い距離の区間で勾配が定義されていないと勾配を再現できない。そこで、勾配取得区間において、正負転換位置を含み、勾配の変化が急激である区間において密に設定された設定位置を含む構成として道路情報を取得することで、勾配の精度を落とさずに情報量を削減できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】道路情報送信システムを示すブロック図である。
図2】道路情報送信処理のフローチャートである。
図3図3Aは降坂路での勾配の算出法を模式的に示す図であり、図3Bは勾配の例を示す図である。
図4図4Aおよび図4Bは線形補間の例を示す図である。
図5図5Aは設定位置の密度を示す図であり、図5Bは位置の間引きを示す図であり、図5Cは勾配の不定区間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)道路情報送信システムの構成:
(2)道路情報送信処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)道路情報送信システムの構成:
図1は、本発明にかかる道路情報送信システム10の構成を示すブロック図である。道路情報送信システム10は、ECU(Electronic Control Unit)であり、図示しないCPUやRAM等によって構成される制御部20と、ROMやHDD等によって構成される記録媒体30とを備えている。制御部20は、記録媒体30に記憶されたプログラムを実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして道路情報送信プログラム21を実行可能である。道路情報送信プログラム21は、車両の現在位置の前方の道路の勾配を示す道路情報を車両制御ユニットに送信する機能を制御部20に実行させる。
【0011】
道路情報送信システム10が搭載される車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と車両制御ユニット44または45とを備えている。記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両の現在位置の特定や道路の勾配の特定等に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置および種類等を示す地物データ等を含んでいる。
【0012】
また、本実施形態において地図情報30aには、道路上の一定距離(例えば50m)毎の標高を示す標高データが含まれている。当該標高データは、道路上の各位置について、当該位置の標高値を示している。なお、標高データは種々の形式で定義されて良く、ノードや形状補間点の標高を示すように定義されるなどの構成が採用されてもよい。
【0013】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を制御部20に出力する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を制御部20に出力する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角加速度に対応した信号を制御部20に出力する。
【0014】
制御部20は、車速センサ42およびジャイロセンサ43から出力された信号に基づいて推定される位置の軌跡である自立航法軌跡と地図情報30aとに基づいて車両の現在位置が存在し得る比較対象道路を複数設定し、GPS受信部41にて取得されたGPS信号の誤差円に基づいて比較対象道路を絞り込む。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、絞り込まれた比較対象道路のうち、自立航法軌跡と形状が最も一致する道路を車両が走行している道路である走行道路として推定するマップマッチング処理を行い、当該マップマッチング処理によって推定された走行道路上で車両の現在位置を取得する。
【0015】
なお、車両の現在位置を取得するために利用されるセンサはGPS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43に限定されず、これらの一部であってもよいし、他のセンサ(例えば、加速度センサや後進検出センサ等)が併用されても良く、種々の構成を採用可能である。
【0016】
車両制御ユニット44,45は、車両制御のための制御部を備えたECUである。車両制御の種類は任意の種類であって良く、本実施形態において、車両制御ユニット44は、加減速制御を行う制御部を備え、車両制御ユニット45は自動変速機(Automatic Transmission)の制御を行う制御部を備えている。
【0017】
すなわち、車両は変速部や制動部(ブレーキ等)、加速部(アクセル、モーター制御部等)等を備え、車両制御ユニット44は、各部を制御することにより車両に作用する加速度と車速とを制御することができる。加減速制御における制御目標は種々の制御目標であって良く、例えば、ハイブリッド車において、燃料消費を低減するための制御目標等が挙げられる。なお、本実施形態において、車両制御ユニット44は、道路情報送信システム10が送信する道路情報を取得し、当該道路情報が示す車両の前方の道路の勾配に基づいて車両を制御する。
【0018】
また、本実施形態において、車両が備える変速部は自動変速機であり、車両制御ユニット45が出力する制御信号によって変速制御を行うことができる。すなわち、車両制御ユニット45は、加速部に対する制御によってエンジン回転を制御し、変速部における変速段の制御を行うことができる。自動変速機の制御における制御目標は種々の制御目標であって良く、例えば、道路上での登降坂の開始位置に到達する前に、登降坂の勾配に応じた変速比となるようにシフトチェンジを行うような制御目標等が挙げられる。
【0019】
車両は、車両制御ユニット44,45以外にも種々の種類の制御を行うための車両制御ユニットを搭載可能である。また、本実施形態においては、車両制御ユニット44,45のいずれかを選択して車両に搭載可能であるが、双方が搭載可能であっても良い。本実施形態において、道路情報送信システム10と車両制御ユニット44,45は図示しない通信インタフェースを介して通信ケーブルによって接続される(CAN:Controller Area Network)。また、本実施形態において、道路情報送信システム10と車両制御ユニット44,45は既定の運転支援用通信規格に準拠した通信を行う。むろん、道路情報送信システム10と車両制御ユニット44,45との接続態様や通信規格は種々のものを採用可能である。
【0020】
以上のように、本実施形態において車両制御ユニット44,45は、道路情報送信システム10から送信された道路情報に基づいて車両を制御する。この構成において、制御部20は、運転支援用通信規格に準拠しながら道路情報を送信する。当該規格の1フレームに記述できる情報量は多くなく、多数のフレームに分けて送信する場合には処理負荷が増大してしまう。そこで、本実施形態の制御部20は、勾配の精度を過度に低下させずに情報量を削減して道路情報を送信する機能を実行する。
【0021】
この機能を実現するため、制御部20は、道路情報送信プログラム21により道路情報を送信する処理を実行する。道路情報送信プログラム21は、現在位置取得部21aと勾配取得部21bと道路情報取得部21cと道路情報送信部21dとを備えている。現在位置取得部21aは、車両の現在位置を取得する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を取得し、現在位置の履歴に基づいて自立航法軌跡を取得する。
【0022】
また、制御部20は、自立航法軌跡と、GPS受信部41の出力信号が示す誤差円と、地図情報30aに基づいて、比較対象道路を絞り込む。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、絞り込まれた比較対象道路のうち、自立航法軌跡と形状が最も一致する道路を車両が走行している道路である走行道路として推定するマップマッチング処理を行い、当該マップマッチング処理によって推定された走行道路上で車両の現在位置を取得する。
【0023】
勾配取得部21bは、現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、地図情報30aを参照し、車両の現在位置の前方に存在する道路の標高を取得する。そして、当該標高に基づいて道路の勾配を取得する。勾配は種々の手法で算出されてよい。図3Aは、勾配を取得する手法の一例を示す図であり、降坂路を模式的に示している。図3Aにおいては、横軸方向で水平位置の変化を模式的に示し、縦軸方向で標高(垂直位置)の変化を模式的に示している。
【0024】
このような勾配において、勾配算出位置が位置Piである場合、制御部20は、その前後の一定距離L(例えば50m)の位置Pr1,Pr2の標高を取得する。そして、制御部20は、位置Pr1,Pr2の標高差Zを距離2Lで除して100を乗じることにより、勾配を%の単位で算出する。この際、制御部20は、進行方向への進行に伴って標高が上がる場合に正、標高が下がる場合に負の値となるように勾配を取得する。むろん、勾配は、隣接する2点の標高に基づいて算出されても良いし、より遠い範囲の標高が参照されても良い。さらに、勾配は、他の単位、例えば、角度によって特定されても良い。
【0025】
本実施形態において標高は、50mなどの比較的短い距離毎に地図情報30aにおいて定義されている。制御部20は、標高値の間隔に応じて、50mなどの比較的短い距離毎に勾配を特定することになる。車両制御ユニット44,45で車両の制御を行うためには、数km~数十km程度(例えば、4kmや36km)の距離の範囲の勾配が最低限必要である。本実施形態においては、当該距離の範囲を勾配取得区間と呼ぶ。当該勾配取得区間内で勾配は多数の位置で定義される状態となるため、全ての勾配を車両制御ユニット44,45に送信すると、極めて多数のフレームで勾配を示す情報を送信しなくてはならない。
【0026】
そこで、道路情報取得部21cは、勾配の精度を過度に低下させずに情報量を削減し、勾配を示す道路情報を取得する機能を制御部20に実行させる。本実施形態において、車両制御ユニット44,45は、送信された道路情報に含まれる勾配の値と位置に基づいて、線形補間によって任意の位置の勾配を再現する。すなわち、車両制御ユニット44,45は、道路情報に含まれる勾配の位置で折れ曲がる折れ線を用いて線形補間によって勾配取得区間の進行方向に沿った勾配を再現する。
【0027】
そこで、制御部20は、当該線形補間によって再現された勾配で車両制御ユニット44,45による車両制御が充分に実施できるように勾配の位置を設定する。具体的には、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、勾配取得区間の開始位置および終了位置と、勾配の正負が転換する正負転換位置と、勾配の変化が急激である区間において勾配の変化が緩やかな区間よりも密に設定された設定位置と、のそれぞれについての勾配を示す道路情報を取得する。
【0028】
勾配の正負転換位置は、道路が形成する山の頂点または谷の底であるため、道路勾配の再現に重要な位置である。また、勾配の変化が急激である区間においては、短い距離の区間で勾配が定義されていないと勾配を再現できない。そこで、制御部20は、勾配取得区間において、勾配の変化が急激である区間において変化が緩やかな区間よりも密に位置を設定し、設定位置とする。そして、制御部20は、勾配取得区間の開始位置および終了位置と、正負転換位置と、設定位置とにおける勾配を取得し、送信対象の道路情報を生成する。すなわち、制御部20は、運転支援用通信規格に準拠したフレームに、これらの各位置における勾配を示す情報を記述して道路情報とする。以上の構成によれば、勾配の精度を落とさずに情報量を削減できる可能性を高めることができる。
【0029】
道路情報送信部21dは、車両制御ユニットに道路情報を送信する機能を制御部20に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、道路情報取得部21cの機能によって取得された道路情報を、図示しない通信インタフェースを介して車両制御ユニット44または45に送信する。この結果、車両制御ユニット44または45においては、道路情報に基づいて車両の前方の勾配を再現し、加減速制御や自動変速機制御を実行する。
【0030】
(2)道路情報送信処理:
次に、道路情報送信処理を詳細に説明する。制御部20は、現在位置取得部21aの機能により、マップマッチング処理によって現在位置を取得する処理を一定時間毎(例えば100ms毎)に実行している。従って、制御部20は、車両の現在位置を随時取得することができる。この状況において、制御部20は、予め決められた道路情報送信タイミング(例えば、車両が一定距離走行した場合や、送信済の道路情報が示す道路の残距離が既定距離以下となった場合等)で道路情報送信処理を実行する。
【0031】
図2は、道路情報送信処理を示すフローチャートである。道路情報送信処理において、制御部20は、勾配取得部21bの機能により、標高に基づいて勾配を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、車両の前方の道路の所定範囲(少なくとも勾配取得区間を越える範囲)の標高値を取得する。そして、制御部20は、標高値が定義されている各位置の勾配を取得する。
【0032】
勾配は、例えば、上述の図3Aに示す例のように、勾配算出位置の前後等の複数の位置における標高値に基づいて取得される。図3Bは、標高の例を破線、勾配の例を実線によって模式的に示している。なお、本実施形態において、標高は道路において測定され、その測定値が地図情報30aに記述される。そして、地図情報30aが示す道路の全てについて標高が測定済であるとは限らず、測定されていない区間も存在し得る。従って、標高が測定されていない区間について勾配は取得不可能であり、制御部20は、当該区間の勾配は不定とする。
【0033】
次に、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、勾配取得区間の開始位置および終了位置を取得する(ステップS105)。すなわち、道路情報の送信先である車両制御ユニット44または45は、車両の制御のために最低限必要な距離の範囲が定義されており、制御部20は、当該範囲の区間である勾配取得区間を取得する。勾配取得区間の距離は、記録媒体30等に予め記録されていても良いし、車両制御ユニット44,45から取得されても良い。また、勾配取得区間の距離は、車両制御ユニット44,45で共通の値とされても良い。例えば、車両制御ユニット44,45で車両の制御のために最低限必要な距離の範囲のうち、距離が長い方を勾配取得区間の距離とすれば、最低限必要な距離が短い方のユニットにおいても制御を行うことが可能である。
【0034】
いずれにしても、勾配取得区間の距離が取得されると、制御部20は、当該距離に基づいて勾配取得区間の開始位置および終了位置を取得する。なお、勾配取得区間の開始位置は、車両の現在位置であってもよいし、現在位置の前方または後方にマージンを設けた位置であっても良い。制御部20は、当該開始位置から勾配取得区間の距離だけ前方の位置を勾配取得区間の終了位置として取得する。図3Bに示す例において、開始位置は位置Ps、終了位置は位置Peである。
【0035】
次に、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、勾配の正負転換位置を取得する(ステップS110)。勾配の正負転換位置は、道路が形成する山の頂点または谷の底である。例えば、図3Bに示す勾配において、位置P1は、破線で示す標高の極小点、すなわち、谷の底である。勾配は、位置P1の後方で負であり、位置P1の後方で正であるため、谷の底に相当する位置P1が勾配の正負転換位置である。図3Bに示す勾配において、位置P2は、破線で示す標高の極大点、すなわち、山の頂点である。勾配は、位置P2の後方で正であり、位置P2の後方で負であるため、山の頂点に相当する位置P2が勾配の正負転換位置である。
【0036】
補間点を直線で結ぶ線形補間によって勾配を再現する場合、山の頂点や谷の底に補間点が設定されていないと、当該山の頂点や谷の底を再現することはできない。従って、道路勾配の再現に重要な位置である。そこで、制御部20は、正負転換位置が補間点となるように、勾配に基づいて正負転換位置を取得する。図3Bであれば、位置P1,P2が取得される。
【0037】
次に、制御部20は、ステップS115~S125のループ処理により、線形補間によって再現された勾配と元の勾配との誤差が許容範囲となるように補間点を増やしていく処理を行う。具体的には、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、既存の位置で線形補間した結果と勾配の誤差が最大になる点を特定する(ステップS115)。既存の位置は、ループ処理の過程で確定されている補間点であり、初回にステップS115が実行される段階では、ステップS105で取得された開始位置および終了位置と、ステップS110で取得された正負転換位置である。2回目以後にステップS115が実行される段階では、ステップS125で設定位置として取得された位置も既存の位置に含まれる。
【0038】
いずれにしても、制御部20は、既存の位置に基づいて線形補間を行って勾配を再現する。そして、元の勾配と再現された勾配とを比較し、誤差が最大になる点を特定する。図4Aは、図3Bに示す例において、既存の位置が位置Ps,Pe,P1,P2である場合の線形補間の結果を太い直線で示した図である。制御部20は、このように算出された太い直線の線形補間結果と、細い曲線で示された位置毎の勾配とを比較し、誤差が最大になる点を特定する。図4Aに示す例においては、位置P3における誤差ΔEが最大であるため、位置P3が特定される。
【0039】
次に、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在するか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、ステップS115で取得された最大の誤差が予め決められた閾値以上である場合に、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在すると判定する。なお、閾値は、実際の勾配と線形補間によって得られた勾配との間の誤差として許容可能な上限値であり、予め決められる。すなわち、車両制御ユニット44,45で許容可能な勾配の誤差は予め特定可能であり、閾値は許容可能な誤差の上限値である。なお、閾値は、車両制御ユニット44,45毎に決められていても良いし、共通の値であってもよい。後者の場合、各ユニットで許容可能な誤差のうち、小さい方の値が閾値となる。
【0040】
ステップS120において、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在すると判定された場合、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、勾配との誤差が最大になる点を設定位置として取得する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、ステップS115で取得された点を設定位置(補間点になる位置)とみなす。例えば、図4Aに示す例であれば、位置P3が設定位置として取得される。
【0041】
以上のように、設定位置を増やしていく処理は、ステップS120において、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在すると判定されなくなるまで繰り返される。図4Bは、図4Aに示す状態から、さらに2カ所の位置P4,P5を設定位置として取得した状態を例示した図である。以上のような処理が繰り返され、ステップS120において、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在すると判定されなくなると、勾配の変化が急激である区間において変化が緩やかな区間よりも密に設定位置が設定される。なお、勾配の変化が急激であるか否かは、例えば、勾配の位置による2次微分等によって評価可能であり、ある長さの区間内で等距離に設定された複数の位置における勾配の2次微分値の絶対値の和が大きい場合、和が小さい場合より勾配の変化が急激である。
【0042】
図5Aにおいては、区間Z1に設定される設定位置の例を位置Pz1として示し、区間Z2に設定される設定位置の例を位置Pz2として示している。ステップS115~S125のループ処理を繰り返すと、勾配の変化が急激である区間Z1において変化が緩やかな区間Z2よりも設定位置が密になる。
【0043】
ステップS120において、誤差と勾配の乖離が閾値以上の点が存在すると判定されない場合、すなわち、線形補間によって再現される勾配と元の勾配との誤差が車両制御ユニット44,45における許容誤差以下になった場合、制御部20は、3カ所以上連続して勾配が既定範囲内である場合に間の位置を間引く(ステップS130)。ここで、既定範囲は、勾配が同一であると見なせる程度のマージンである。すなわち、ほぼ同値の勾配が連続している場合、勾配はほぼ一定であると推定され、これらの勾配は線形補間で直線に近似しても良い場合が多い。
【0044】
図5Bは、勾配の例である。図5Bにおいては、図3Bと同様の軸で勾配を表現しているが、図3Bよりも図5Bの方が狭い範囲での勾配を例示している。図5Bにおいては、狭い範囲で正負転換位置が連続して現れている例を示している。このような例は、標高測定時のノイズ等に起因して発生し得る。このように、狭い範囲にほぼ同値の勾配が集中している場合、実際の路面では勾配はほぼ同値であるため、多数の補間点は必要ない。そこで、制御部20は、勾配がほぼ同値で連続する場合に、間の位置を間引く。例えば、図5Bに示す例であれば、位置P01~P05の間の位置である位置P02,P03,P05が間引かれる。
【0045】
次に、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、ステップS100で勾配が取得されなかった区間の直前および直後の位置を設定位置として取得する(ステップS135)。すなわち、本実施形態においては、ステップS100において勾配が不定とされる場合があるため、制御部20は、勾配取得区間の中に勾配が不定である区間が存在するか否か判定する。勾配取得区間の中に勾配が不定である区間が存在する場合、制御部20は、当該区間を除外して線形補間を実施できるように当該区間の端点を設定位置とする。
【0046】
図5Cは、勾配の例である。図5Cにおいては、図3Bと同様の軸で勾配を表現しているが、この例においては、位置P11から位置P12までの区間で勾配が不定である。この場合、制御部20は、勾配が不定である区間の後方端において最も前方に存在する位置P11を設定位置として取得する。また、制御部20は、勾配が不定である区間の前方端において最も前方に存在する位置P12を設定位置として取得する。
【0047】
次に、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、道路情報を生成する(ステップS140)。すなわち、制御部20は、道路情報取得部21cの機能により、ステップS105で取得された開始位置および終了位置と、ステップS110において取得された正負転換位置およびステップS125,S135で設定された設定位置と、これらの位置からステップS130で間引きの対象となった位置を除外した位置を送信対象とする。そして、制御部20は、送信対象の位置に当該位置の勾配を対応づけた情報を運転支援用通信規格に準拠したフレームに記述して道路情報とする。むろん、勾配の情報は複数の位置についての情報であるため、フレームは複数個になり得る。
【0048】
道路情報が生成されると、制御部20は、道路情報送信部21dの機能により、道路情報を送信する(ステップS145)。すなわち、制御部20は、生成された道路情報を含むフレームを車両制御ユニット44または45に送信する。道路情報が送信されると、車両制御ユニット44または45は、送信された道路情報に基づいて線形補間によって勾配を再現し、当該勾配に基づいて車両を制御する。再現された勾配は、元の勾配との誤差が許容範囲内になるように道路情報が生成されるため、車両制御ユニット44または45においては、正確な勾配に基づいて車両を制御することができる。なお、本実施形態においては、勾配が不定である区間が存在し得るが、勾配が不定である区間は道路情報として車両制御ユニット44,45に送信されることが好ましい。この場合、車両制御ユニット44,45は、車両制御を停止する。
【0049】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、勾配の正確性を維持しながら情報量を削減できる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、道路情報送信システム10は車両に搭載された端末であってもよいし、車両の利用者が携帯する端末であってもよい。また、現在位置取得部21a、勾配取得部21b、道路情報取得部21c、道路情報送信部21dの機能の少なくとも一部が上述の実施形態と異なる制御主体で実現されても良い。例えば、現在位置取得部21aが、現在位置を取得するためのECU等によって実現される構成等が採用されてもよい。
【0050】
また、一部の機能が省略されたり、処理の順序が変更されたりするなど、上述の実施形態に変更が加えられても良い。例えば、道路情報送信処理において、ステップS100,S105の順序が逆であり、勾配取得区間の開始位置から終了位置までの間の勾配が算出される構成等であっても良い。さらに、制御部20が複数の装置で構成されても良く、各装置は車両内に配置されても良いし、一部が車両外(例えば、外部のサーバ等)に存在しても良い。さらに、勾配の情報に基づいて実行される制御は、上述の加減速制御や自動変速機制御に限定されない。例えば、サスペンションの制御、オートクルーズ制御、ヘッドライトの方向制御等に勾配の情報が利用されても良い。
【0051】
現在位置取得部は、車両の現在位置を取得することができればよい。従って、上述のように、自律航法、GPS、マップマッチングを組み合わせて特定される構成以外にも種々の構成が採用可能である。例えば、自律航法、GPSの組み合わせやこれらのいずれかによって現在位置が取得される構成であっても良い。さらに、車両が備えるカメラで撮影された画像(例えば、停止線の画像等)に基づいて現在位置が取得される構成であっても良く、種々の構成が採用可能である。
【0052】
勾配取得部は、現在位置の前方の道路上に設定された勾配取得区間の勾配を取得することができればよい。勾配の取得法は、上述の実施形態のように、一定期間毎に計測された標高に基づいて算出する手法以外にも種々の手法が採用されてよい。ただし、勾配を取得するための標高等の情報は、道路上において、道路情報として最終的に取得される勾配以上の密度で定義されている。
【0053】
設定位置は、勾配の変化が急激である区間において当該勾配の変化を再現できるように設定されれば良く、上述の実施形態のように、元の情報としての勾配と、再現された勾配との差が許容範囲内になるように設定される他にも種々の設定法が採用されてよい。例えば、勾配取得区間において、既定数の位置についての勾配を示す道路情報が定義される構成とし、当該既定数の位置に、正負転換位置や設定位置が含まれるような構成等が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…道路情報送信システム、20…制御部、21…道路情報送信プログラム、21a…現在位置取得部、21b…勾配取得部、21c…道路情報取得部、21d…道路情報送信部、30…メモリ、30a…地図情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…車両制御ユニット、45…車両制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5