(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】車両用ペダルの後退抑止構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220117BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20220117BHJP
G05G 1/32 20080401ALI20220117BHJP
【FI】
B62D25/08 J
G05G1/30 E
G05G1/32
(21)【出願番号】P 2017203470
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】万谷 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】大渕 泰知
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤 企三宜
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-017698(JP,A)
【文献】特開2002-087230(JP,A)
【文献】特開2014-154122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
G05G 1/30
G05G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のコラムシャフトの前方かつ下方において、前記コラムシャフトの中心軸から車幅方向にオフセットした位置に配置され、前記車両に対して上端部を枢支されたペダルと、
前記ペダルに固定され、前記ペダルの前記コラムシャフトに対するオフセット方向とは逆方向へと延設されたペダルブラケットと、
前記車両のデッキクロスメンバに固定され、前記コラムシャフトを前記デッキクロスメンバに対して支持するコラムサポートブラケットと、
前記コラムサポートブラケットに配設され、前記ペダルブラケットに向かって前方に延設されたフランジと
を備え、
前記ペダルブラケットが、正面視で前記コラムシャフトとオーバーラップし、側面視で前記コラムシャフトの前端における下端よりも上方に位置するよう前記ペダルに固定される
ことを特徴とする、車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項2】
前記フランジが、前記中心軸の左側に位置する左側部と、前記中心軸の右側に位置する右側部と、前記左側部及び前記右側部を接続する接続部とを有し、
前記ペダルブラケットが、前記ペダルの後退時に、前記左側部及び前記右側部のうち前記ペダルに近接する一方に対して先に接触する形状に形成される
ことを特徴とする、請求項
1記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項3】
前記ペダルブラケットが、前記左側部及び前記右側部のうち前記ペダルに近接する一方に対して直交する向きに配置されて前記ペダルの後退時に前記フランジに当接する当接面と、前記当接面に対して垂直な支持面とを有するL字断面形状に形成される
ことを特徴とする、請求項
2記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項4】
前記コラムサポートブラケットにおける前記フランジ及び前記デッキクロスメンバ間の板面に沿って固定された補強板を備える
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項5】
前記コラムサポートブラケットが、前記デッキクロスメンバの周面に沿って半円筒状に形成された半円筒部を有し、
前記補強板が、前記デッキクロスメンバの周面のうち前記半円筒部で被覆されない面を被覆する部分筒面部を有する
ことを特徴とする、請求項
4記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項6】
前記ペダルブラケットの延設方向が、車両後方かつ上方に向かって傾斜した方向に設定される
ことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【請求項7】
前記フランジが、前記コラムサポートブラケットの前端部に設けられる
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用ペダルの後退抑止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方からの外力によって車両用ペダルが車室内に向かって後退するのを抑止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員保護性能を向上させるための工夫の一つとして、アクセルペダルやブレーキペダル,クラッチペダルといった車両用ペダルの後退を抑止する構造が知られている。この構造は、車両前方からの外力が作用したときに、車両用ペダルが後退して乗員の脚部に接触することを防止するための構造である。例えば、車両用ペダルにあらかじめペダルブラケットを取り付けておき、そのペダルブラケットを車両用ペダルの後退時にステアリングハンガへ当接させることによって、車両用ペダルを前方に回動させる構造が知られている(特許文献1参照)。このような構造により、車両用ペダルの後退が抑止されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構造では、車両用ペダルの当接対象であるステアリングハンガを介して、ステアリングがパイプ状の横桁部材(デッキクロスメンバ,インパネクロスメンバ)に支持される。一方、ペダルブラケットとステアリングハンガとの当接位置によっては、ステアリングハンガ自体の変形によって乗員保護性能が低下する可能性がある。例えば、特許文献1に記載の構造では、後退してきた車両用ペダルが鉛直軸回り(上下方向に沿う軸回り)に回動しつつ倒れる構造(段落0045参照)となっているため、その反力によってステアリングハンガが鉛直軸周りに回動変形しうる。この変形によってステアリングが車室内で乗員に接近する方向へと移動してしまうと、ステアリングの支持状態が不安定になるほか、ステアリングエアバッグの動作に悪影響を与えかねない。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、乗員保護性能を向上させた車両用ペダルの後退抑止構造を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)開示の車両用ペダルの後退抑止構造は、ペダル,ペダルブラケット,コラムサポートブラケット,フランジを備える。ペダルは、車両のコラムシャフトの前方かつ下方において、前記コラムシャフトの中心軸から車幅方向にオフセットした位置に配置され、前記車両に対して上端部を枢支される。ペダルブラケットは、前記ペダルに固定され、前記ペダルの前記コラムシャフトに対するオフセット方向とは逆方向へと延設される。コラムサポートブラケットは、前記車両のデッキクロスメンバに固定され、前記コラムシャフトを前記デッキクロスメンバに対して支持する。フランジは、前記コラムサポートブラケットに配設され、前記ペダルブラケットに向かって前方に延設される。また、前記ペダルブラケットは、正面視で前記コラムシャフトとオーバーラップし、側面視で前記コラムシャフトの前端における下端よりも上方に位置するよう前記ペダルに固定される。
【0007】
(2)前記フランジが、前記中心軸の左側に位置する左側部と、前記中心軸の右側に位置する右側部と、前記左側部及び前記右側部を接続する接続部とを有することが好ましい。また、前記ペダルブラケットが、前記ペダルの後退時に、前記左側部及び前記右側部のうち前記ペダルに近接する一方に対して先に接触する形状に形成されることが好ましい。
【0008】
(3)前記ペダルブラケットが、前記左側部及び前記右側部のうち前記ペダルに近接する一方に対して直交する向きに配置されて前記ペダルの後退時に前記フランジに当接する当接面と、前記当接面に対して垂直な支持面とを有するL字断面形状に形成されることが好ましい。
(4)前記コラムサポートブラケットにおける前記フランジ及び前記デッキクロスメンバ間の板面に沿って固定された補強板を備えることが好ましい。
【0009】
(5)前記コラムサポートブラケットが、前記デッキクロスメンバの周面に沿って半円筒状に形成された半円筒部を有することが好ましい。また、前記補強板が、前記デッキクロスメンバの周面のうち前記半円筒部で被覆されない面を被覆する部分筒面部を有することが好ましい。
(6)前記ペダルブラケットの延設方向が、車両後方かつ上方に向かって傾斜した方向に設定されることが好ましい。
(7)前記フランジが、前記コラムサポートブラケットの前端部に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
ペダルの後退時にペダルブラケットをコラムサポートブラケットのフランジに接触させて、ペダル踏面を押し込むことができる。これにより、ペダルの踏面の後退を効率的に抑止することができ、乗員保護性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両用ペダルの後退抑止構造を示す縦断面図である。
【
図3】(A)はペダルの側面図、(B)はペダルの斜視図である。
【
図4】デッキクロスメンバ周辺の拡大断面図である。
【
図5】後退抑止構造の作用を説明するための斜視図である。
【
図6】ペダル後退時におけるペダルブラケット周辺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態としての車両用ペダルの後退抑止構造について説明する。本実施形態に含まれる各要素の位置や方向の説明に際し、左右方向について述べる場合には、車両に着座した姿勢の乗員をから見たときの左右方向を基準とする。また、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.装置構成]
図1は、車両のコラムシャフト6周辺の構造を示す縦断面図である。コラムシャフト6は、ステアリング(ハンドル)に接続されたステアリングシャフト21を回動自在に支持する円筒状の部材である。コラムシャフト6の前方側は、ダッシュボードケース22に挿入される。ダッシュボードケース22の内部には、コラムシャフト6の近傍においてパワーステアリング用のモーターやセンサーなどが設けられる。また、コラムシャフト6の前端部は、ユニバーサルジョイント9を介してインターミディエイトシャフト7に接続される。
【0014】
コラムシャフト6の前方かつ下方には、ペダル1(例えばクラッチペダルやブレーキペダル,アクセルペダルなど)が取り付けられる。ペダル1は、車両に対して上端部を枢支された踏み込み操作用の入力装置であり、回転中心C
1は車幅方向(左右方向)に延設される。車幅方向におけるペダル1の位置は、コラムシャフト6の中心軸から車幅方向の左右いずれかの方向にオフセットした位置に配置される。
図1に示すペダル1は、ダッシュパネル23に固定されたペダル固定具24に対して揺動可能に取り付けられており、ペダル1の位置はコラムシャフト6の中心軸から左方向に僅かにオフセットしている。
【0015】
ペダル1には、ペダルブラケット2が溶接固定される。ペダルブラケット2とは、L字断面形状(アングル形状)の金属部品であり、車両前方からの外力がペダル1に作用したときに、ペダル1が車室内へと過度に進入することを防止する機能を持つ。ペダルブラケット2の延設方向は、コラムシャフト6に対するペダル1のオフセット方向とは逆方向に設定される。すなわち、ペダルブラケット2は、正面視(または上面視)でコラムシャフト6(またはインターミディエイトシャフト7)に近づく方向に向かって延設される。本実施形態のペダルブラケット2は、ペダル1から右方向に向かって延設される。なお、ペダルブラケット2は、コラムシャフト6(またはインターミディエイトシャフト7)を越えて、反対側に突出するまで延設されることが好ましい。
【0016】
ペダル1に対するペダルブラケット2の接合位置は、コラムシャフト6との位置関係に応じて設定される。すなわち、ペダルブラケット2は、側面視でコラムシャフト6の前端よりも上方(同一の高さを含む)でペダル1に固定される。
図1中の破線Lは、ペダル1とペダルブラケット2との接合箇所の下端を表す。この破線Lが少なくともコラムシャフト6の前端における下端に一致するように、あるいは、下端よりも上方に位置するように、ペダル1とペダルブラケット2との接合箇所が設定される。
【0017】
ダッシュボードケース22の内部には、デッキクロスメンバ8が配設される。デッキクロスメンバ8は、車幅方向に延在するパイプ状の横桁部材(インパネクロスメンバ)である。また、デッキクロスメンバ8には、コラムシャフト6を支持するためのコラムサポートブラケット3が取り付けられる。コラムサポートブラケット3の後端部は、デッキクロスメンバ8に固定される。一方、コラムサポートブラケット3の前端部には、コラムシャフト6が揺動可能に支持される。ただし、コラムシャフト6の揺動は、図示しないチルト機構のロックが解除された状態のみで実現するようになっている。なお、コラムシャフト6の揺動中心C2は車幅方向(左右方向)に延設される。
【0018】
コラムサポートブラケット3には、半円筒部13とサポート部14とが設けられる。半円筒部13は、半円筒状に形成された部位であり、デッキクロスメンバ8の周面に沿ってその上半分ほどの範囲を被覆する。一方、サポート部14は半円筒部13から前方に向かって延設され、チルトヒンジピンを揺動中心C2(チルト軸)として上下方向に揺動操作可能(チルト位置調整可能)に支持されるチルトブラケットの役割を果たす部位であり、コラムシャフト6の揺動中心C2を支える部位となる。サポート部14を前方に向かって伸ばすことで、ステアリングのチルト方向の調整代(上下移動量)が増大する。
【0019】
図2に示すように、コラムサポートブラケット3の上面には、補助ブラケット26が取り付けられる。補助ブラケット26は、コラムサポートブラケット3をダッシュパネル23に固定するためのブラケットであり、側面視でサポート部14を下辺とした三角形状の補強構造をなすものである。補助ブラケット26を設けることで、コラムシャフト6の揺動中心C
2がデッキクロスメンバ8だけでなくダッシュパネル23に対しても固定されるため、ステアリングの支持状態がより安定化する。
【0020】
コラムサポートブラケット3におけるサポート部14の前端部には、コラムシャフト6の中心軸の周囲を囲むようにフランジ4が配設される。フランジ4は、コラムサポートブラケット3の前端部から前方に向かって延設された縁状の部位である。フランジ4の全体形状は、コラムシャフト6の左右及び上方を囲むトンネル形状に準えられる。すなわち、フランジ4は、コラムシャフト6の中心軸の左側に位置する左側部15と、中心軸の右側に位置する右側部16と、これらを車幅方向に接続する接続部17とを有しており、本実施例ではU字形状(正面視で上下逆向きのU字型)に形成される。
【0021】
なお、フランジ4によって囲まれる領域の広さは、コラムサポートブラケット3の前端部よりもやや狭くなるように、フランジ4の形状が設定される。すなわち、
図2に示すように、フランジ4は前方に向かって狭められた「絞り形状」とされる。このような狭窄形状のフランジ4を設けることで、コラムサポートブラケット3の前端部近傍における剛性,強度が確保される。
【0022】
図3(A),(B)に示すように、本実施形態のペダルブラケット2には、ペダル1の後退時にフランジ4に当接する部位である当接面11と、当接面11に対して垂直な支持面12とが設けられる。当接面11は、左側部15,右側部16に対してほぼ直交する向きに配置された平面状の部位である。ペダルブラケット2は、ペダル1の後退時に、左側部15,右側部16のうち、ペダル1に近い一方(本実施形態では左側部15)に対して先に接触する形状に形成される。
【0023】
また、当接面11はペダル1の後退時に、ペダル1に近い一方(本実施形態では左側部15)に対して先に接触するように、支持面12との境界を底辺(上底よりも長い下底)とした台形形状に形成される。さらに支持面12は、当接面11だけでなく、左側部15,右側部16のうちペダル1に近い一方(本実施形態では左側部15)に対してもほぼ直交する向きに配置される。
【0024】
本実施形態のペダルブラケット2の延設方向は、車両後方かつ上方に向かって傾斜した方向に設定される。ペダルブラケット2はペダル1との接合箇所を基点として、車両後方かつ上方に向かって延設される。つまり、当接面11と支持面12との境界となる辺(L字断面の角部分を含む辺)は、ペダル1に対して完全に垂直な状態ではなく、鋭角の角度をなすように配置される。また、ペダル1の後退時には、その鋭角側の範囲内でフランジ4と接触することになる。
【0025】
図4に示すように、コラムサポートブラケット3の裏面には、フランジ4からデッキクロスメンバ8にかけての板面を補強するための補強板5と第二補強板25とが取り付けられる。補強板5には、デッキクロスメンバ8の周面に沿って配設される部分円筒部18と、サポート部14の板面に沿ってその下面側に固定されるサポート裏部19とが設けられる。
【0026】
部分円筒部18は、デッキクロスメンバ8の周面のうち、コラムサポートブラケット3の半円筒部13によって被覆されない面(下半分ほどの範囲)であって、その前方側の面を被覆する。また、デッキクロスメンバ8の周面のうち、半円筒部13や部分円筒部18によって被覆されない面(下半分ほどの範囲の後方側)は、第二補強板25によって被覆される。なお、補強板5はフランジ4に重ならないように配置される。これにより、補強板5をコラムサポートブラケット3に溶接固定するための面が確保される。
【0027】
[2.作用,効果]
図5に示すように、車両前方からの外力によってダッシュパネル23が車両の後方へ移動すると、ダッシュパネル23に固定されたペダル1も後方へ移動する。このとき、ペダル1からコラムシャフト6に向かって延設されたペダルブラケット2が、コラムサポートブラケット3に向かって移動する。ペダルブラケット2は、コラムシャフト6の前端よりも上方でペダル1に固定されていることから、コラムサポートブラケット3のフランジ4に接触する。つまり、チルトヒンジピンを揺動中心C
2(チルト軸)として支持されるコラムサポートブラケット3におけるサポート部14の前端部のフランジ4が、ペダルブラケット2を受けることとなる。また、
図6に示すペダルブラケット2の形状から、右側部16よりも左側部15に先に接触する。そして、そのままダッシュパネル23などは車両の後方へ移動するものの、コラムサポートブラケット3のフランジ4とペダルブラケット2が当接する。これにより、当接点を基にペダル1がダッシュパネル23に対して相対的に前方に移動し、結果としてペダル踏面が押し込まれることとなる。
【0028】
(1)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、ペダル1のオフセット方向とは逆方向(右方向)へ向かってペダル1から延設されたペダルブラケット2が設けられ、コラムサポートブラケット3から前方へ、ペダルブラケット2に向かってフランジ4が延設される。このような構造により、ペダル1の後退時にペダルブラケット2をコラムサポートブラケット3のフランジ4に接触させて、ペダル踏面を押し込むことができる。したがって、ペダル1の踏面の後退を効率的に抑止することができ、乗員保護性能を向上させることができる。
【0029】
(2)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、ペダル1とペダルブラケット2との接合箇所が、側面視でコラムシャフト6の前端よりも上方に配置される。これにより、ペダル1の後退時に、たとえペダルブラケット2がフランジ4よりも下方へと移動したとしても、ペダルブラケット2とコラムシャフト6とを接触させることができ、コラムシャフト6でペダル1の踏面の後退を抑止することができる。
【0030】
(3)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、
図6に示すように、ペダルブラケット2と左側部15とが先に接触し、その後にペダルブラケット2と右側部16とが接触する。このような順序でペダルブラケット2をフランジ4に接触させることで、ペダルブラケット2の先端部近傍への荷重入力によるモーメントの急増を防止することができる。これにより、ペダルブラケット2の変形や基端部破壊を予防することができる。
【0031】
(4)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、ペダルブラケット2の当接面11が左側部15に対してほぼ直交する向きに配置される。また、支持面12は、当接面11と左側部15との双方に対してほぼ直交する向きに配置される。これにより、ペダル1の後退時に作用する荷重が当接面11や左側部15の面内で効率よく伝達され、ペダルブラケット2,フランジ4の変形量を減少させることができる。したがって、ペダル1の後退をより確実に抑止することができる。
【0032】
(5)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、
図2中に破線で示すように、コラムサポートブラケット3の裏面に補強板5が固定される。これにより、ペダル1の後退時に作用する荷重によるコラムサポートブラケット3の変形を抑止することができ、ペダル1の後退抑止効果を向上させることができる。
(6)上記の補強板5は、
図4に示すように、デッキクロスメンバ8の周面のうち、コラムサポートブラケット3の半円筒部13で被覆されない面を被覆するように設けられる。このように、デッキクロスメンバ8をコラムサポートブラケット3と補強板5とで挟み込むことで、コラムシャフト6をしっかりと保持したままペダル1の後退を抑止することができ、乗員保護性能を向上させることができる。
【0033】
(7)上記の車両ペダルの後退抑止構造では、ペダルブラケット2の延設方向が、車両後方かつ上方に向かって傾斜した方向に設定される。これにより、ペダルブラケット2をペダル1に対して完全に垂直に固定した場合よりも、ペダルブラケット2の当接面11に沿った方向の荷重成分が増大しやすくなる。つまり、ペダルブラケット2をペダル1に対して完全に垂直に固定した場合と比較して、ペダルブラケット2を座屈しにくくすることができ、ペダル1の後退抑止効果を向上させることができる。
【0034】
[3.変形例]
上述の実施形態では、当接面11の形状が台形形状であるペダルブラケット2を例示したが、具体的な当接面11の形状はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、ペダル1の後退時に右側部16と接触するものと予想される部位に切り欠き部27を設けることで、ペダルブラケット2とフランジ4との接触順序を調節してもよい。少なくとも、ペダルブラケット2と左側部15とが先に接触し、その後にペダルブラケット2と右側部16とが接触するように当接面11の形状を設定することで、上述の実施形態と同様の作用効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 ペダル
2 ペダルブラケット
3 コラムサポートブラケット
4 フランジ
5 補強板
6 コラムシャフト
8 デッキクロスメンバ
11 当接面
12 支持面
13 半円筒部
15 左側部
16 右側部
17 接続部