(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220203BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20220203BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20220203BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220203BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/16 185
G03G21/00 510
G03G15/00 455
B65H5/06 D
B65H5/06 M
(21)【出願番号】P 2017210153
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇史
(72)【発明者】
【氏名】大西 淳
(72)【発明者】
【氏名】高野 正人
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164523(JP,A)
【文献】特開2008-001447(JP,A)
【文献】特開2011-184128(JP,A)
【文献】特開平11-052743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
5/06
5/22
29/12-29/24
29/32
G03G 13/20
15/00
15/20
21/16
21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙にトナー像を転写する転写部と、前記転写部により前記用紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着部と、を備え、前記用紙上に画像を形成する画像形成装置において、
前記定着部を
用紙搬送方向及び当該用紙搬送方向の反対方向に付勢する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記定着部の用紙搬送方向上流側及び下流側に、それぞれ前記定着部を挟んで対向するように設けられ、
前記定着部は、可動であ
り、
前記定着部の用紙搬送速度は、前記転写部の用紙搬送速度よりも遅いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部は、紐状部材により吊るされていることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着部は、回転可能に固定された球状部材の上に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着部の移動方向は、用紙搬送方向に対して平行であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙が前記転写部及び前記定着部の双方で通紙しているタイミングにおける前記定着部の位置で固定し、前記定着部の位置を調整する調整部を備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記調整部は、用紙種変更時、複数枚通紙時、ジョブ毎及び定着温度設定時の少なくともいずれか一において、前記定着部の位置を調整することを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記調整部における調整時に使用される前記用紙は、坪量300g/m
2以上の厚紙であることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を転写部にて用紙に転写し、転写されたトナー像を定着部にて加熱定着することで、用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
近年、プロダクションプリント市場において、画像形成装置の画像位置精度向上の要望が非常に強くなっている。特に、用紙のスキュー成分は、画像品質の中でも目立ちやすく、要求レベルも高いため、画像位置精度向上の要望が非常に強い。したがって、組み付け誤差や部品精度誤差による転写部-定着部間のアライメント誤差により発生する用紙後端部のスキューを抑制する必要がある。
【0004】
図8に、転写部U1-定着部U2間のアライメント誤差により発生する用紙P後端部のスキューの一例を示す。また、
図9に、用紙P後端部にスキューが発生した場合の画像領域E1の一例を示す。
用紙Pは、定着部U2内の駆動ローラー(図示省略)の軸芯に垂直な方向に通紙されるが、
図8及び
図9に示すように、転写部U1-定着部U2間にアライメント差があることで、用紙P後端部の画像が傾いてしまうという課題がある。この課題は、厚紙や長尺紙ほど悪化する傾向がある。
【0005】
そこで、画像読取部によるテストパターンの検出結果に基づいて転写ニップと定着ニップの平行度を算出し、転写ニップと定着ニップの平行度の調整量を表示させる構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、転写ニップと定着ニップの平行度が損なわれることに起因する画像品質の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術は、機械の全数でアライメントを調整する必要があるため、開発時やMIF時におけるアライメント調整に莫大な費用が掛かるという課題がある。
【0008】
本発明は、調整コストを削減しつつ、画像位置精度を向上させることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
用紙にトナー像を転写する転写部と、前記転写部により前記用紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着部と、を備え、前記用紙上に画像を形成する画像形成装置において、
前記定着部を用紙搬送方向及び当該用紙搬送方向の反対方向に付勢する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記定着部の用紙搬送方向上流側及び下流側に、それぞれ前記定着部を挟んで対向するように設けられ、
前記定着部は、可動であり、
前記定着部の用紙搬送速度は、前記転写部の用紙搬送速度よりも遅いことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記定着部は、紐状部材により吊るされていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記定着部は、回転可能に固定された球状部材の上に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記定着部の移動方向は、用紙搬送方向に対して平行であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記用紙が前記転写部及び前記定着部の双方で通紙しているタイミングにおける前記定着部の位置で固定し、前記定着部の位置を調整する調整部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像形成装置において、
前記調整部は、用紙種変更時、複数枚通紙時、ジョブ毎及び定着温度設定時の少なくともいずれか一において、前記定着部の位置を調整することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の画像形成装置において、
前記調整部における調整時に使用される前記用紙は、坪量300g/m2以上の厚紙であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、調整コストを削減しつつ、画像位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の制御構造を示す機能ブロック図である。
【
図3】転写ユニット-定着ユニット間のアライメント差の調整前の様子の一例を示す図である。
【
図4】転写ユニット-定着ユニット間のアライメント差の調整後の様子の一例を示す図である。
【
図5】定着ユニットの用紙幅方向両端から紐状部材で吊るす構成の一例を示す図である。
【
図6】定着ユニットを球状部材の上に配置する構成の一例を示す図である。
【
図7】従来構成と実施例構成とにおける用紙抜け時間差とアライメント角度差との対応関係を示す図である。
【
図8】転写部-定着部間のアライメント誤差により発生する用紙後端部のスキューの一例を示す図である。
【
図9】用紙後端部にスキューが発生した場合の画像領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る画像形成装置1は、原稿から画像を読み取って得られた画像データ又は外部機器から受信した画像データに基づいて、電子写真方式により用紙上にカラー画像を形成するタンデム型のカラー画像形成装置である。
画像形成装置1は、
図1及び
図2に示すように、自動原稿搬送部2と、スキャナー部3と、画像形成部4と、給紙部5と、記憶部6と、操作表示部7と、制御部10と、を備えて構成されている。
【0021】
自動原稿搬送部2は、原稿Dを載置する載置トレイ、原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部3は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部3は、受光した反射光を電気信号に変換して制御部10に出力する。
【0022】
画像形成部4は、イエロー作像部Yと、マゼンタ作像部Mと、シアン作像部Cと、ブラック作像部Kと、中間転写ベルトBと、定着ユニットFと、を備えて構成されている。
各作像部YMCKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を感光体41に形成し、感光体41に形成されたYMCK各色のトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。
なお、各作像部YMCKの構成及び動作はいずれも同様であるため、以下、イエロー作像部Yを例に挙げて、画像形成部4が行う一連の画像形成動作について説明する。
【0023】
感光体41は、ドラム状の金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂からなる感光層が形成された有機感光体により構成され、図中反時計回りに回転駆動される。感光層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0024】
帯電装置42は、帯電チャージャーを用いて感光体41を一定の電位に帯電する。
露光装置43は、制御部10からの画像データDyに基づいて感光体41の非画像領域を露光して露光した部分の電荷を除去し、感光体41の画像領域に静電潜像を形成する。
現像装置44は、感光体41に形成された静電潜像上に現像剤であるトナーを供給し、感光体41にイエローのトナー像を形成する。
【0025】
一次転写ローラー45は、感光体41に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。
なお、他の作像部MCKも同様に、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を中間転写ベルトBに一次転写する。これにより、中間転写ベルトB上にYMCK各色のカラーのトナー像が形成される。
【0026】
中間転写ベルトBは、複数のローラーに懸架され回転可能に支持された半導電性エンドレスベルトであり、ローラーの回転に伴って図中時計回りに回転駆動される。この中間転写ベルトBは、一次転写ローラー45により、対向するそれぞれの感光体41に圧着される。一次転写ローラー45のそれぞれには、印加された電圧に応じた転写電流が流れる。これにより、各感光体41の表面に現像された各トナー像は、それぞれ各一次転写ローラー45により順次中間転写ベルトBに一次転写される。
【0027】
転写ユニット(転写部)46は、二次転写ローラー対461を含んで構成され、中間転写ベルトBに一次転写されたトナー像を用紙Pに二次転写する。二次転写ローラー対461は、対をなす一方のローラーが中間転写ベルトBに圧接し、他方が中間転写ベルトBを巻き回す複数のローラーのうちの1つを構成している。二次転写ローラー対461は、対をなすローラー間で形成される転写ニップを用紙Pが通過することにより、中間転写ベルトB上のトナー像を、給紙部5の給紙トレイ51~53から搬送されてきた用紙Pに二次転写する。
【0028】
定着ユニット(定着部)Fは、定着ローラー対F1を含んで構成され、用紙Pに転写されたトナー像を定着する定着処理を施す。定着ローラー対F1は、対をなすローラー間で形成される定着ニップを用紙Pが通過することにより、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧して画像を用紙に定着させる。
画像形成部4は、YMCK各色のトナー像が二次転写された用紙Pを定着ユニットFにより加熱及び加圧した後、所定の搬送路に通して機外に排出する。
以上が画像形成部4による一連の画像形成動作である。
【0029】
クリーニング装置47は、一次転写後の感光体41表面に残留する残留トナーや紙紛等の残留物を除去する。クリーニング装置47は、弾性体(例えばポリウレタンゴム)からなる平板状(シート状)のクリーニングブレードを感光体41に当接させるブレードクリーニング方式を採用している。
クリーニング装置48は、二次転写後の中間転写ベルトBに残留する残留物を除去する。
【0030】
給紙部5は、複数の給紙トレイ51~53を備えて構成され、各給紙トレイ51~53に種類の異なる複数の用紙Pを収容する。給紙部5は、所定の搬送路により収容される用紙Pを画像形成部4に給紙する。
【0031】
記憶部6は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリなどにより構成され、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部10から読み書き可能に記憶する。
【0032】
操作表示部7は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部71及び操作部72として機能する。
表示部71は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。ユーザーは、操作表示部7を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0033】
制御部10は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、CPUはROMに記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7等の画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する(
図2参照)。例えば、制御部10は、スキャナー部3からの電気信号を入力して各種画像処理を行い、画像処理により生成されたYMCK各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkを画像形成部4に出力する。また、制御部10は、画像形成部4の動作を制御して用紙Pに画像を形成する。
【0034】
次に、転写ユニット46-定着ユニットF間のアライメント差の調整方法について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、以下の説明では、
図3及び
図4に示す用紙Pの搬送方向をX方向、用紙Pの幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
本実施形態では、
図3に示すように、転写ユニット46-定着ユニットF間にアライメント差があり、定着ユニットFの用紙搬送速度(定着速度)Vfが転写ユニット46の用紙搬送速度(転写速度)Vtよりも遅い条件となっている。
【0035】
定着ユニットFの用紙搬送方向(X方向)上流側及び下流側には、それぞれ定着ユニットFを付勢するバネ(弾性部材)SPが設けられている。バネSPは、定着ユニットFの用紙搬送方向上流側及び下流側に、それぞれ定着ユニットFを挟んで対向するように設けられている。定着ユニットFは、用紙搬送方向に対して平行に移動可能に構成されており(すなわち、可動であり)、用紙搬送方向(X方向)の上下流側から、バネSPにより押圧されるようになっている。これにより、定着ユニットFが必要以上に押し流されないよう、移動可能な範囲を規制することができる。なお、バネSPは、バネ定数の低いものが用いられている。
【0036】
上記の構成において、用紙P先端が定着ユニットFに進入すると、転写ユニット46-定着ユニットF間のアライメントがずれているため、用紙P幅方向(Y方向)端部のいずれか一方(具体的には、転写ユニット46-定着ユニットF間の距離が短い方)のみループLが形成される。
用紙PにループLが形成されると、用紙Pの復元力(反力)PWが定着ユニットFに作用する。バネSPは、バネ定数の低いものが用いられているため、用紙Pの復元力PWは、バネSPの付勢力に抗して定着ユニットFを移動させようとする。その後、用紙Pの復元力PWが作用しなくなるまで(すなわち、ループLが解消されるまで)定着ユニットFは移動し、定着ユニットFが停止した位置が転写ユニット46-定着ユニットF間のアライメント差がない位置となる(
図4参照)。
これにより、アクティブ(能動的)なアライメント調整を実施するのではなく、用紙Pの復元力PWによるパッシブ(受動的)なアライメント調整を実施することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1は、定着部(定着ユニットF)を付勢する弾性部材(バネSP)を備える。また、弾性部材は、定着部の用紙搬送方向上流側及び下流側に、それぞれ定着部を挟んで対向するように設けられ、定着部は、可動である。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、定着ユニットFが用紙Pの復元力PWを受けて当該復元力PWが作用しなくなるまで移動するので、パッシブなアライメント調整を実施することができる。これにより、アライメント調整に掛かるコストを削減することができるとともに、画像位置精度を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、定着部の用紙搬送速度は、転写部(転写ユニット46)の用紙搬送速度よりも遅い。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、転写ユニット46-定着ユニットF間において、用紙P幅方向端部のいずれか一方にループLが形成されるので、ループLを解消しようとする用紙Pの復元力PWによりパッシブなアライメント調整を実施することができる。これにより、アライメント調整に掛かるコストを削減することができるとともに、画像位置精度を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、定着部の移動方向は、用紙搬送方向に対して平行である。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、画像位置精度に強く影響を与える用紙搬送方向のアライメント誤差を解消することができるので、画像位置精度を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、定着ユニットFを移動可能とする(可動とする)ための構成として、用紙搬送方向(X方向)の上下流側からそれぞれバネSPで押圧する構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、バネSPで押圧する構成に加えて、さらに、定着ユニットFの用紙幅方向(Y方向)両端(前奥)から紐状部材STで吊るす構成を採用するようにしてもよい。紐状部材STは、例えば、釣り糸、毛糸、ゴム紐等、定着ユニットFを支持可能な部材であれば、いかなる部材を用いるようにしてもよい。
【0042】
また、
図6に示すように、定着ユニットFを球体状の部材(球状部材R)の上に配置する構成を採用するようにしてもよい。この場合、球状部材Rは回転可能に固定されており、球状部材Rが回転することにより定着ユニットFが球状部材R上を移動する構成となっている。球状部材Rとしては、例えば、ビー玉やパチンコ玉等が用いられる。なお、球状部材Rの数は特に限定されず、定着ユニットFを用紙搬送方向に移動可能な構成であれば、いかなる構成であってもよい。また、球状部材Rの代わりに、円筒状のローラー部材を採用するようにしてもよい。
【0043】
いずれの場合も、実施形態の構成と同様、用紙P幅方向端部のいずれか一方(具体的には、転写ユニット46-定着ユニットF間の距離が短い方)のみループが形成され、用紙Pの復元力が作用しなくなるまで(すなわち、ループが解消されるまで)定着ユニットFは移動し、定着ユニットFが停止した位置が転写ユニット46-定着ユニットF間のアライメント差がない位置となる。
その後、適正位置となった定着ユニットFに対して、ねじ等を利用して位置を固定し、アライメントを調整する。このアライメント調整は、主に、紙種変更時、複数枚通紙時、ジョブ毎又は定着温度調整時に実施される。
【0044】
以上のように、定着ユニットFを、紐状部材STで吊るす構成や回転可能に固定された球状部材Rの上に配置する構成を採用することで、定着ユニットFを移動可能に支持することができるので、パッシブなアライメント調整を実施することができる。これにより、アライメント調整に掛かるコストを削減することができるとともに、画像位置精度を向上させることができる。
【0045】
図7に、定着ユニットFが移動しないように設置した従来構成(
図8参照)と、定着ユニットFを紐状部材STで吊るして移動可能とした実施例構成(
図5参照)と、における用紙抜け時間差とアライメント角度差との対応関係を示す。
図7において、横軸がアライメント角度差(すなわち、転写ユニット46-定着ユニットF間の初期のアライメント角度差)であり、縦軸が用紙抜け時間差(すなわち、転写ユニット46の上流側位置における用紙Pの幅方向(Y方向)両端(前奥)での通過検知タイミングの差分)である。そして、この用紙抜け時間差を、スキュー成分に代用することができる。すなわち、理想的には、用紙抜け時間差を「0」とすることが最も好ましい。
【0046】
図7に示す例では、従来構成に比べ、実施例構成の方がアライメント誤差に対して感度が低く(すなわち、用紙抜け時間差の値が小さく、かつ、傾きが緩やかで)、良好な結果が得られることがわかった。
【0047】
また、用紙Pが転写ユニット46及び定着ユニットFの双方で通紙しているタイミングにおける定着ユニットFの位置で固定し、定着ユニットFの位置を調整する調整部(制御部10)を備えるようにしてもよい。この場合、制御部10は、用紙Pが転写ユニット46及び定着ユニットFの双方で通紙しているタイミングにおける定着ユニットFの位置において、図示しないストッパーにより定着ユニットFの位置を固定することで、定着ユニットFの位置を調整する。なお、上記の調整は、制御部10の制御により自動的に行うようにしてもよいし、オペレーターがストッパーを操作することにより手動で行うようにしてもよい。
【0048】
以上のように、用紙が転写ユニット46及び定着ユニットFの双方で通紙しているタイミングにおける定着ユニットFの位置で固定し、定着ユニットFの位置を調整する調整部(制御部10)を備えることで、アライメント調整後の位置を維持することができるので、画像位置精度を確保することができる。
【0049】
上記の調整は、例えば、用紙種変更時、複数枚通紙時、ジョブ毎及び定着温度設定時の少なくともいずれか一において行われる。
したがって、調整に適したタイミングでアライメント調整を実施することができるので、生産性を下げることなくアライメント調整を実施することができる。
【0050】
また、上記の調整時に使用される用紙は、例えば、坪量300g/m2以上の厚紙である。
以上のように、坪量300g/m2以上の厚紙を使用することで、用紙Pの復元力(反力)をより確実に定着ユニットFに伝えることができるので、パッシブなアライメント調整をより確実に実施することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、定着ユニットFの用紙搬送速度Vfが、転写ユニット46の用紙搬送速度Vtよりも遅くなるように制御しているが、これに限定されるものではない。すなわち、定着ユニットFの用紙搬送速度Vfが、転写ユニット46の用紙搬送速度Vtよりも速くなるように制御するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、定着ユニットFの移動方向が、用紙搬送方向に対して平行である構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、定着ユニットFを、用紙搬送方向に対して平行な方向に加えて、用紙搬送方向に対して垂直な方向にも移動可能な構成を採用するようにしてもよい。
【0053】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
2 自動原稿搬送部
3 スキャナー部
4 画像形成部
41 感光体
42 帯電装置
43 露光装置
44 現像装置
45 一次転写ローラー
46 転写ユニット(転写部)
461 二次転写ローラー対
47、48 クリーニング装置
B 中間転写ベルト
F 定着ユニット(定着部)
SP バネ(弾性部材)
ST 紐状部材
R 球状部材
5 給紙部
6 記憶部
7 操作表示部
10 制御部(調整部)