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特許7006208ドアモジュールおよびドアモジュール用固定具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ドアモジュールおよびドアモジュール用固定具
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20220117BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220117BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20220117BHJP
   H02G 3/36 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B60J5/00 501B
B60R16/02 620C
F16B5/06 F
H02G3/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017234017
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019099031
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】江端 大輔
(72)【発明者】
【氏名】深水 雄也
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 龍太
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-203296(JP,A)
【文献】特開2004-262306(JP,A)
【文献】特開2005-199812(JP,A)
【文献】特開2005-178616(JP,A)
【文献】特開2014-144727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 16/02
F16B 5/06
H02G 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアインナパネルに設けられたサービスホールを閉塞する樹脂製の閉塞板に予めドアハーネスが配索されてなるドアモジュールであって、
前記閉塞板は、その外周縁部が前記サービスホールの内周縁部に隙間を隔てて対向する大きさで形成されている一方、
前記閉塞板の前記外周縁部には、前記サービスホールの前記内周縁部の外周側まで突出して該内周縁部と嵌合する弾性嵌合部が、前記閉塞板の板厚寸法よりも大きな厚さ寸法でかつ前記外周縁部の周方向に延出して突設されており、
前記弾性嵌合部には、該弾性嵌合部の突出端面の中央に開口して前記周方向に延びて前記サービスホールの前記内周縁部を収容する内周縁部収容凹溝が設けられており、該内周縁部収容凹溝を挟んで対向する一対の弾性挟持片の間で、前記サービスホールの前記内周縁部が挟持されるようになっている
ことを特徴とするドアモジュール。
【請求項2】
前記弾性嵌合部が、前記閉塞板の前記外周縁部の周方向に離隔した複数箇所に設けられている請求項1に記載のドアモジュール。
【請求項3】
前記弾性嵌合部が、ゴム弾性体によって構成されている請求項1または2に記載のドアモジュール。
【請求項4】
前記弾性嵌合部が前記閉塞板と別体形成されており、該弾性嵌合部の基端面の中央に開口して前記周方向に延びて前記閉塞板の前記外周縁部を収容する外周縁部収容凹溝が設けられており、該外周縁部収容凹溝を挟んで対向する一対の保持片の間に前記閉塞板の前記外周縁部が保持されるようになっている請求項1~3の何れか1項に記載のドアモジュール。
【請求項5】
前記閉塞板が複数の車種に共通に用いられるものである一方、
前記弾性嵌合部の突出寸法が、前記複数の車種毎に異なる前記閉塞板の前記外周縁部と前記サービスホールの前記内周縁部の対向隙間寸法の違いに応じて異なる複数種類が準備されており、
前記車種毎に対応した前記弾性嵌合部が選択されて前記閉塞板に取り付けられるようになっている請求項4に記載のドアモジュール。
【請求項6】
自動車のドアインナパネルに設けられたサービスホールを閉塞する樹脂製の閉塞板に予めドアハーネスが配索されてなるドアモジュールを、前記ドアインナパネルに固定するために用いられるドアモジュール用固定具であって、
請求項4または5に記載の前記弾性嵌合部によって構成されている
ことを特徴とするドアモジュール用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアインナパネルに設けられたサービスホールを閉塞する樹脂製の閉塞板に予めドアハーネスが配索されてなるドアモジュールと、かかるドアモジュールをドアインナパネルに固定するために用いられるドアモジュール用固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアアウタパネルとドアインナパネルの間には、スピーカ等のドア用電装品やそれらに接続されるワイヤハーネスであるドアハーネスなどが配索されており、ドアインナパネルには、メンテナンス用のサービスホールが開口して設けられている。そして、サービスホールからドアインナパネル内への浸水を防止するために、サービスホールは防水ビニールシート等により覆蓋されていた。
【0003】
ところで、近年では、特開2005-178616号公報等に記載されているように、サービスホールを覆蓋する防水ビニールシートに代えて、形状保持性のある比較的硬質な樹脂製の閉塞板を採用し、かかる閉塞板に対してドアハーネスやドアハーネスに接続されるドア用電装品等を取り付けてモジュール化したドアモジュールを用いることが提案されている。このようなドアモジュールを用いることにより、車両組付時のドアハーネス等の配索作業を簡素化することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0004】
ところで、このようなドアモジュールを用いた場合でも、ドアモジュールをドアインナパネルに対してボルト締め固定する必要がある。それゆえ、比較的大型のドアモジュールにおいては、複数箇所に設けられたボルト穴をドアインナパネル側のボルト穴の位置あわせする作業も煩雑となる。また、かかるボルト締め作業を自動化する場合には、ボルト充填機構やボルト締結機構などの様々な機器が必要となり、十分な作業スペースを確保することが困難となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-178616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ドアモジュールのドアインナパネルへの組み付けを容易に行うことができる、新規な構造のドアモジュールおよびドアモジュール用固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ドアモジュールに関する本発明の第一の態様は、自動車のドアインナパネルに設けられたサービスホールを閉塞する樹脂製の閉塞板に予めドアハーネスが配索されてなるドアモジュールであって、前記閉塞板は、その外周縁部が前記サービスホールの内周縁部に隙間を隔てて対向する大きさで形成されている一方、前記閉塞板の前記外周縁部には、前記サービスホールの前記内周縁部の外周側まで突出して該内周縁部と嵌合する弾性嵌合部が、前記閉塞板の板厚寸法よりも大きな厚さ寸法でかつ前記外周縁部の周方向に延出して突設されており、前記弾性嵌合部には、該弾性嵌合部の突出端面の中央に開口して前記周方向に延びて前記サービスホールの前記内周縁部を収容する内周縁部収容凹溝が設けられており、該内周縁部収容凹溝を挟んで対向する一対の弾性挟持片の間で、前記サービスホールの前記内周縁部が挟持されるようになっていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、閉塞板は、その外周縁部がサービスホールの内周縁部に隙間を隔てて対向する大きさで形成されている一方、閉塞板の外周縁部には、サービスホールの内周縁部の外周側まで突出して該内周縁部と嵌合する弾性嵌合部が、閉塞板の板厚寸法よりも大きな厚さ寸法でかつ外周縁部の周方向に延出して突設されている。さらに、弾性嵌合部には、該弾性嵌合部の突出端面の中央に開口して周方向に延びる内周縁部収容凹溝が設けられており、該内周縁部収容凹溝を挟んで一対の弾性挟持片が対向して設けられている。それゆえ、ドアインナパネルのサービスホール上に本願発明のドアモジュールを載置し、押込み力を加えるだけで、閉塞板の外周縁部の突設された弾性嵌合部の一対の弾性挟持片のうち、サービスホールの内周縁部に近接する側が凹溝に向かって弾性変形し、サービスホールの内周縁部を乗り越えた際に弾性復帰する。これにより、サービスホールの内周縁部が、一対の弾性挟持片の間で挟持され、ドアモジュールがドアインナパネルのサービスホールの内周縁部に弾性嵌合部を介して嵌合されることとなり、ドアモジュールがドアインナパネルに保持されることとなる。
【0009】
したがって、本態様のドアモジュールによれば、従来必要とされたドアモジュールのドアインナパネルへのボルト締結作業を省略することができ、ボルト締結に必要な大型の機器も不要とすることができる。その結果、ドアモジュールのドアインナパネルへの組み付けを容易に行うことができ、組み付け工程の自動化を一層有利に進めることができる。
【0010】
しかも、一対の弾性挟持片の間でサービスホールの内周縁部を挟持することでドアモジュールがドアインナパネルに固定されていることから、ドアモジュールとドアインナパネルとの当接面をなくすことができる。それゆえ、従来構造のごときドアモジュールを直接ドアインナパネルに重ね合わせてボルト締結していた構造においてそれらの間に挟持していたゴムパッキンを不要とすることができ、部品点数の削減を図ることもできる。
【0011】
なお、弾性嵌合部は、閉塞板の外周縁部の全周に亘って設けられていてもよく、あるいは周方向に離隔した複数箇所に設けられていてもよく、要求される防水性や防振性に応じて適宜に設定され得る。また、弾性嵌合部は閉塞板と一体的に設けられていてもよいし、閉塞板とは別体に設けられて基端部側で閉塞板に固定されていてもよい。
【0012】
ドアモジュールに関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のドアモジュールにおいて、前記弾性嵌合部が、前記閉塞板の前記外周縁部の周方向に離隔した複数箇所に設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、弾性嵌合部が閉塞板の周方向に離隔した複数箇所に分断して設けられていることから、ドアモジュールをサービスホールに載置して押し込む際の押圧力を低減することができ、組み付け容易性の向上を図ることができる。弾性嵌合部の設定箇所は、例えば、従来ボルト締め固定が必要とされた箇所を含んで設定され得る。
【0014】
ドアモジュールに関する本発明の第三の態様は、前記第一または第二の態様に記載のドアモジュールにおいて、前記弾性嵌合部が、ゴム弾性体によって構成されているものである。
【0015】
本態様によれば、弾性嵌合部がゴム弾性体によって構成されていることから、ドアモジュールをドアインナパネルに対して高い防振性を確保しつつ固定することができる。また、一対の弾性挟持片の弾性変形量も大きく確保することができ、一対の弾性挟持片の挟持力を有利に得ることができる。
【0016】
ドアモジュールに関する本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のドアモジュールにおいて、前記弾性嵌合部が前記閉塞板と別体形成されており、該弾性嵌合部の基端面の中央に開口して前記周方向に延びて前記閉塞板の前記外周縁部を収容する外周縁部収容凹溝が設けられており、該外周縁部収容凹溝を挟んで対向する一対の保持片の間に前記閉塞板の前記外周縁部が保持されるようになっているものである。
【0017】
本態様によれば、弾性嵌合部が閉塞板と別体形成されていることから、弾性嵌合部を容易に製造することができる。しかも、弾性嵌合部の基端面に開口する外周縁部収容凹溝に閉塞板の外周縁部を嵌め込めて一対の保持片の間で保持するだけで弾性嵌合部を閉塞板に取り付けることができることから、閉塞板に対して簡便に弾性嵌合部を設定することができる。
【0018】
なお、一対の保持片は、閉塞板の外周縁部に対して弾性復帰力により圧接するようにしてもよいし、閉塞板の外周縁部に対して圧接されることなく当接して接着剤等により固着するようにしてもよい。
【0019】
ドアモジュールに関する本発明の第五の態様は、前記第四の態様に記載のドアモジュールにおいて、前記閉塞板が複数の車種に共通に用いられるものである一方、前記弾性嵌合部の突出寸法が、前記複数の車種毎に異なる前記閉塞板の前記外周縁部と前記サービスホールの前記内周縁部の対向隙間寸法の違いに応じて異なる複数種類が準備されており、前記車種毎に対応した前記弾性嵌合部が選択されて前記閉塞板に取り付けられるようになっているものである。
【0020】
本態様によれば、弾性嵌合部が閉塞板と別体形成されていることから、車種毎のサービスホールの大きさ等の相違があっても、閉塞板を共通にして、弾性嵌合部の突出寸法を車種毎に異なる閉塞板の外周縁部とサービスホールの内周縁部の対向隙間寸法の違いに応じて異ならせて複数種類が準備することにより、車種毎の違いに対応することができる。これにより、閉塞板を共通にした汎用化を図ることができ、本発明にかかるドアモジュールの汎用性の向上を図ることもできる。
【0021】
ドアモジュール用固定具に関する本発明の第一の態様は、自動車のドアインナパネルに設けられたサービスホールを閉塞する樹脂製の閉塞板に予めドアハーネスが配索されてなるドアモジュールを、前記ドアインナパネルに固定するために用いられるドアモジュール用固定具であって、前記第四または第五の態様のドアモジュールに記載の前記弾性嵌合部によって構成されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、第四または第五の態様のドアモジュールに記載の閉塞板と別体形成された弾性嵌合部を用いてドアモジュール用固定具を提供することができる。したがって、弾性嵌合部の基端面に開口する外周縁部収容凹溝に閉塞板の外周縁部を嵌め込めて一対の保持片の間で保持するだけで弾性嵌合部を閉塞板に取り付けることができることから、閉塞板に対して簡便に弾性嵌合部を設定することができる。
【0023】
また、ドアモジュール用固定具は、車種毎に異なる閉塞板の外周縁部とサービスホールの内周縁部の対向隙間寸法の違いに応じて突出寸法を異ならせることにより複数種類のバリエーションをもって提供することができ、汎用的なドアモジュール用固定具として提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、閉塞板の外周縁部には、サービスホールの内周縁部と嵌合する弾性嵌合部が、閉塞板の板厚寸法よりも大きな厚さ寸法でかつ外周縁部の周方向に延出して突設されている。さらに、弾性嵌合部には内周縁部収容凹溝が設けられており、内周縁部収容凹溝を挟んで一対の弾性挟持片が対向して設けられている。それゆえ、ドアインナパネルのサービスホール上に本願発明のドアモジュールを載置して押込み力を加えるだけで、サービスホールの内周縁部が一対の弾性挟持片の間で挟持され、ドアモジュールがドアインナパネルに保持される。したがって、従来必要とされたドアモジュールのドアインナパネルへのボルト締結作業を省略できることから、ドアモジュールのドアインナパネルへの組み付けを容易に行うことができ、組み付け工程の自動化を一層有利に進めることができる。しかも、一対の弾性挟持片の間でサービスホールの内周縁部を挟持することによって固定されていることから、ドアモジュールとドアインナパネルとの当接面をなくすことができる。それゆえ、従来必要とされたゴムパッキンを不要とすることができ、部品点数の削減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態としてのドアモジュールを備えたドア部の構造の一例を示す概略図。
図2図1におけるII-II断面を示す拡大図。
図3】サービスホールに閉塞板を嵌め込む手順を説明するための図であって、図1におけるII-II断面に相当する図。
図4】本発明の第一の実施形態の他の態様としてのドアモジュールを備えたドア部の構造の一例を示す概略図。
図5】本発明の第二の実施形態としてのドアモジュールを備えたドア部の構造の一例を示す概略図。
図6】本発明の第三の実施形態としてのドアモジュールを備えたドア部の構造の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1~3には、本発明の第一の実施形態としてのドアモジュール10を備えたドア部12が、示されている。図1に示されているように、自動車のドア部12の室内側(図1中、手前側)を構成するドアインナパネル14には、室内側に向かって開口する略矩形断面形状を有するサービスホール16が設けられている。かかるサービスホール16は、メンテナンスを行う際にドア部12内部に手指や工具や部品等を入れられるように設けられている一方、サービスホール16から水等が室内側に侵入しないように樹脂製の閉塞板18によって閉塞されている。以下の説明において、上方とは、図1中の上方、下方とは、図1中の下方、また前方とは、図1中の左方、後方とは、図1中の右方を、さらに手前側とは、図1中の紙面に対して垂直な方向の上側、奥側とは、図1中の紙面に対して垂直な方向の下側を言うものとする。
【0028】
閉塞板18には予めドアハーネス20が配索されており、ドアモジュール10を構成している。より詳細には、ドアモジュール10は、図1に示されているように、閉塞板18に、ドアハーネス20およびスピーカ22や図示しないパワーウィンド・モータやリモートコントロールミラー・モータ等を予めアセンブリして構成されている。そして、閉塞板18に配索されたドアハーネス20は、幹線20aの一方の端末がドア部12の前方側(図1中、左側)に位置する図示しない車体パネル側のワイヤハーネスに接続されていると共に、幹線20aのもう一方の端末にはドアインナパネル14側に配設されている図示しない各種の補助装置に接続される集中コネクタ24が接続されている。また、幹線20aからは複数の支線20b~eが上下斜め方向に分岐しており、かかる支線20b~eの端末に設けられたコネクタ26がそれぞれ上述したパワーウィンド・モータやリモートコントロールミラー・モータ等に接続されるようになっている。なお、かかるドアハーネス20は、ワイヤハーネス組立工程において閉塞板18に対して例えば図示しないバンドクランプを用いて固定されている。そして、サービスホール16が予めドアハーネス20が配索された閉塞板18によって閉塞されている一方、閉塞板18は室内側(図1中、手前側)から略矩形平板状のドアトリム28によって覆蓋されている。なお、理解を容易とするため、図1および図4~6では、ドアトリム28を仮想線で記載している。
【0029】
図1に示されているように、閉塞板18は、その外周縁部30がサービスホール16の内周縁部32に略一定の隙間:αを隔てて対向する大きさで形成されており、全体として略矩形平板形状を有している。また、略矩形平板形状とされた閉塞板18の外周縁部30の4つの角部34の近傍には、長手方向(図1中、左右方向)に向かってサービスホール16の内周縁部32と対向する位置および幅方向(図1中、上下方向)に向かってサービスホール16の内周縁部32と対向する位置において、合計8つの弾性嵌合部36が設けられている。すなわち、弾性嵌合部36は、閉塞板18の外周縁部30の周方向に離隔した8箇所に設けられている。かかる弾性嵌合部36は、閉塞板18とは別体形成されており、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴム材料によって一体的に形成されたゴム弾性体によって構成されている。
【0030】
より詳細には、弾性嵌合部36は、図1~2に示されているように、略矩形ブロック形状を有している。弾性嵌合部36の基端側(図2中、左側)の基端面38には、基端面38の厚さ方向(図2中、上下方向)の中央に開口すると共に、略矩形断面形状で周方向(図2中、紙面に垂直な方向)に延びて周方向に向かって開口する、外周縁部収容凹溝40が設けられている。かかる外周縁部収容凹溝40は、閉塞板18に対してその外周縁部30を収容するように取り付けられており、外周縁部収容凹溝40を挟んで対向する一対の保持片42,42の間に閉塞板18の外周縁部30が保持されるようになっている。すなわち、一対の保持片42,42は、閉塞板18の外周縁部30に対して弾性復元力により圧接されているのである。なお、一対の保持片42,42が閉塞板18の外周縁部30に対して圧接されることなく当接して、接着剤等により固着するようにしてもよい。この場合、大きな力を必要とすることなく、閉塞板18に対して弾性嵌合部36を取り付けることができる。
【0031】
一方、弾性嵌合部36の先端側(図2中、右側)の突出端面44には、突出端面44の厚さ方向(図2中、上下方向)の中央に開口すると共に、略矩形断面形状で周方向(図2中、紙面に垂直な方向)に延びて周方向に向かって開口する、内周縁部収容凹溝46が設けられている。かかる内周縁部収容凹溝46は、サービスホール16の内周縁部32を収容するように取り付けられており、内周縁部収容凹溝46を挟んで対向する一対の弾性挟持片48,48の間でサービスホール16の内周縁部32が挟持されるようになっている。なお、一対の弾性挟持片48,48のうち、内周縁部収容凹溝46の下側に位置する弾性挟持片48の下面には、突出端面44に向かって内周縁部収容凹溝46側に傾斜するテーパ面50が設けられている。以上の結果、閉塞板18の外周縁部30に取り付けられた弾性嵌合部36が、サービスホール16の内周縁部32の外周側まで突出して内周縁部32と嵌合されていると共に、閉塞板18の板厚寸法:tよりも大きな厚さ寸法:Tで閉塞板18の外周縁部30の周方向に延出して突設されているのである。
【0032】
次に、閉塞板18に予めドアハーネス20が配索されてなるドアモジュール10を、ドアモジュール用固定具である弾性嵌合部36を用いてドアインナパネル14に設けられたサービスホール16の内周縁部32に固定する手順について図2~3を用いて簡単に説明する。まず、閉塞板18に弾性嵌合部36が取り付けられたドアモジュール10を準備する。かかるドアモジュール10を、ドアインナパネル14のサービスホール16に対向する位置に配置後、弾性嵌合部36の弾性挟持片48の下面をサービスホール16の内周縁部32に当接させる(図3参照)。かかる状態からドアモジュール10をドアインナパネル14側に向かって押し込むことにより、テーパ面50を有する弾性挟持片48がドアインナパネル14から離隔する方向に弾性変形されて、サービスホール16の内周縁部32の内周縁部収容凹溝46への挿入が許容される。ここで、テーパ面50を有する弾性挟持片48はもう一方の弾性挟持片48に比べて薄肉とされていることから、弾性変形を容易に行うことができる。さらに押し込むことにより、サービスホール16の内周縁部32が内周縁部収容凹溝46へ挿入されると共に、弾性挟持片48が弾性復帰して一対の弾性挟持片48,48の間でサービスホール16の内周縁部32が挟持される(図2参照)。これにより、ドアモジュール10がドアインナパネル14に設けられたサービスホール16の内周縁部32に弾性嵌合部36を介して嵌合されて、ドアモジュール10がドアインナパネル14に保持される。
【0033】
このような構造とされた本実施形態のドアモジュール10によれば、ドアインナパネル14のサービスホール16上に、閉塞板18に予めドアハーネス20が配索されてなるドアモジュール10を載置後、押込み力を加えるだけで、弾性嵌合部36の内周縁部収容凹溝46にサービスホール16の内周縁部32を挿入して、かかる内周縁部32を一対の弾性挟持片48,48の間で挟持することができる。これにより、ドアモジュール10をドアインナパネル14に保持することができる。それゆえ、従来の如きドアモジュールのドアインナパネルへのボルト締結作業を省略することができ、ボルト締結に必要な大型の機器も不要とすることができる。また、ドアモジュール10のドアインナパネル14への組み付け作業を簡素化でき、組み付け工程の自動化も一層有利に進めることができる。しかも、サービスホール16の内周縁部32を一対の弾性挟持片48,48の間で挟持することによりドアモジュール10がドアインナパネル14に固定されていることから、ドアモジュール10とドアインナパネル14との当接面をなくすことができる。したがって、従来の如きボルト締結構造に必要であったゴムパッキンを不要とすることができ、部品点数の削減を図ることもできる。
【0034】
加えて、弾性嵌合部36が閉塞板18とは別体形成されていることから、弾性嵌合部36を容易に製造できる。しかも、弾性嵌合部36の基端側に設けられた外周縁部収容凹溝40を閉塞板18の外周縁部30を嵌め込むだけで、一対の保持片42,42の間で保持された状態で弾性嵌合部36を閉塞板18に対して容易に取り付けることができる。さらに、弾性嵌合部36が閉塞板18の周方向に離隔した複数箇所(本実施形態では8箇所)に分断して設けられていることから、ドアモジュール10をサービスホール16に対して取り付ける際の押圧力を低減することができ、取り付けを容易に行うことができる。なお、弾性嵌合部36の閉塞板18に対する取り付け箇所は、例えば従来ボルト締め固定が必要とされた箇所を含んで設定され得る。また、弾性嵌合部36がゴム弾性体によって構成されていることから、ドアモジュール10をドアインナパネル14に対して高い防振性を確保しつつ固定することができる。しかも、一対の弾性挟持片48,48の弾性変形量も大きく確保することができることから、一対の弾性挟持片48,48の挟持力も有利に得ることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上記第一の実施形態では、閉塞板18の外周縁部30がサービスホール16の内周縁部32に略一定の隙間:αを隔てて対向する大きさで形成されていたが、図4に示す本発明の第一の実施形態の別の態様としてのドアモジュール52のように、閉塞板18の外周縁部30がサービスホール54の内周縁部32に略一定の隙間:βを隔てて対向する大きさで形成されていてもよい。この場合には、閉塞板18がサービスホール16,54の大きさの異なる複数(本実施形態では2種類)の車種に共通に用いることができる。すなわち、上記複数の車種毎に対応した弾性嵌合部36,56が準備されており、複数の車種毎に対応した弾性嵌合部36,56が選択されて閉塞板18に取り付けられるようになっているのである。より詳細には、弾性嵌合部36,56の閉塞板18の外周縁部30からの突出寸法:a,bが、複数の車種毎に異なる閉塞板18の外周縁部30とサービスホール16,54の内周縁部32の対向隙間寸法:α,βの違いに応じて異なっているのである。このように、複数の車種でサービスホール16,54の大きさ等が異なっていても、閉塞板18を共通にして、弾性嵌合部36,56を突出寸法a,bを車種毎の違いに応じて異ならせて複数種類が準備することにより、車種毎の違いに対応することができるのである。それゆえ、閉塞板18を共通にした汎用化を図ることができ、本発明にかかるドアモジュール10,52の汎用性の向上を図ることもできる。
【0036】
また、上記第一の実施形態では、弾性嵌合部36,56は、略矩形状とされていたが、図5に示す本発明の第二の実施形態としてのドアモジュール58の弾性嵌合部60のように、略L字形状とされていてもよい。これにより、弾性嵌合部60の取付箇所を従来の弾性嵌合部36,56の8箇所から4箇所に半減することができることから、作業効率向上を図ることができる。さらに、上記第一の実施形態では、閉塞板18の外周縁部30とサービスホール16の内周縁部32間には略一定の隙間:αが形成されていたが、図6に示す本発明の第三の実施形態としてのドアモジュール62のように、閉塞板18の外周縁部30における弾性嵌合部36の取付箇所に外方に向かって開口する略矩形断面形状の切欠部64を設けてもよい。これにより、閉塞板18の外周縁部30とサービスホール16の内周縁部32間の隙間:γを上記第一の実施形態の場合(α)に比して大幅に小さくすることができる。
【0037】
加えて、上記第一~第三の実施形態では、弾性嵌合部36,56,60は、閉塞板18の外周縁部30の周方向の一部のみに設けられていたが、全周に亘って設けられていてもよく、要求される防水性や防振性に応じて適宜に設定され得る。また、上記第一~第三の実施形態では、弾性嵌合部36,56,60は閉塞板18と別体形成されていたが、例えば軟質の樹脂を用いて2色成形によって一体的に設けられていてもよい。さらに、上記第一~第三の実施形態では、サービスホール16,54や閉塞板18は略矩形状とされていたが、任意の形状のものが採用可能である。また、上記第一の実施形態では、一対の弾性挟持片48,48のうち、内周縁部収容凹溝46の下側に位置する弾性挟持片48の下面にテーパ面50が設けられていたが、かかるテーパ面50は必ずしもなくてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10,52,58,62:ドアモジュール、14:ドアインナパネル、16,54:サービスホール、18:閉塞板、20:ドアハーネス、30:外周縁部、32:内周縁部、36,56,60:弾性嵌合部(ドアモジュール用固定具)、38:基端面、40:外周縁部収容凹溝、42:保持片、44:突出端面、46:内周縁部収容凹溝、48:弾性挟持片
図1
図2
図3
図4
図5
図6