(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】タイヤ及びタイヤセット
(51)【国際特許分類】
B60C 11/11 20060101AFI20220117BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B60C11/11 Z
B60C11/03 300E
B60C11/03 E
(21)【出願番号】P 2017242954
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真浩
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246054(JP,A)
【文献】特開2008-308153(JP,A)
【文献】特開2003-072318(JP,A)
【文献】特開2000-198320(JP,A)
【文献】特開2015-077880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝底面から踏面に向けて突出する複数のブロックを有するトレッド部と、前記トレッド部からビード部に至るサイド部とを含むタイヤであって、
前記複数のブロックは、前記踏面の一対のトレッド端に沿って、タイヤ周方向に空隙を隔てて配される複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記サイド部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分を有し、
前記外側部分は、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面を含み、
前記各ショルダーブロックの前記一対の壁面間の前記踏面に沿ったタイヤ周方向の距離であるショルダーブロック長さは、タイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の前記溝底面に沿ったタイヤ周方向の距離である空隙長さよりも小さ
く、
前記各壁面は、略三角形状である、
タイヤ。
【請求項2】
溝底面から踏面に向けて突出する複数のブロックを有するトレッド部と、前記トレッド部からビード部に至るサイド部とを含むタイヤであって、
前記複数のブロックは、前記踏面の一対のトレッド端に沿って、タイヤ周方向に空隙を隔てて配される複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記サイド部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分を有し、
前記外側部分は、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面を含み、
前記各ショルダーブロックの前記一対の壁面間の前記踏面に沿ったタイヤ周方向の距離であるショルダーブロック長さは、タイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の前記溝底面に沿ったタイヤ周方向の距離である空隙長さの90%~98%である、
タイヤ。
【請求項3】
前記各ショルダーブロックの前記踏面は、略台形状である、請求項
1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記各壁面のタイヤ子午面に対する角度は、±5°以内である、請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外側部分のタイヤ軸方向の長さである張出長さは、前記トレッド端間のタイヤ軸方向の距離であるトレッド幅の10%~20%である、請求項
1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数のブロックは、前記複数のショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、タイヤ周方向において、前記ショルダーブロックと交互に配される複数のミドルブロックを含み、
前記複数のミドルブロックは、それぞれ、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するミドル外端を有し、
前記ミドル外端と前記トレッド端とのタイヤ軸方向の距離であるミドル外端長さは、タイヤ軸方向において前記ミドル外端位置での前記各ショルダーブロックの高さであるショルダーブロック高さよりも大きい、請求項
1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するショルダー外端を有し、
前記各ショルダーブロックの前記トレッド端から前記ショルダー外端までの前記ショルダーブロックの表面に沿った長さであるショルダー長さは、前記ミドル外端から前記ショルダー外端までの前記溝底面に沿った溝底長さよりも小さい、請求項
6に記載のタイヤ。
【請求項8】
溝底面から踏面に向けて突出する複数のブロックを有するトレッド部と、前記トレッド部からビード部に至るサイド部とを含むタイヤであって、
前記複数のブロックは、前記踏面の一対のトレッド端に沿って、タイヤ周方向に空隙を隔てて配される複数のショルダーブロックと、前記複数のショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、タイヤ周方向において、前記ショルダーブロックと交互に配される複数のミドルブロックとを含み、
前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記サイド部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分と、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するショルダー外端とを有し、
前記外側部分は、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面を含み、
前記各ショルダーブロックの前記一対の壁面間の前記踏面に沿ったタイヤ周方向の距離であるショルダーブロック長さは、タイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の前記溝底面に沿ったタイヤ周方向の距離である空隙長さよりも小さく、
前記複数のミドルブロックは、それぞれ、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するミドル外端を有し、
前記ミドル外端と前記トレッド端とのタイヤ軸方向の距離であるミドル外端長さは、タイヤ軸方向において前記ミドル外端位置での前記各ショルダーブロックの高さであるショルダーブロック高さよりも大きく、
前記各ショルダーブロックの前記トレッド端から前記ショルダー外端までの前記ショルダーブロックの表面に沿った長さであるショルダー長さは、前記ミドル外端から前記ショルダー外端までの前記溝底面に沿った溝底長さの80%~95%である、
タイヤ。
【請求項9】
請求項
1~8のいずれかに記載のタイヤの複数個からなるタイヤセットであって、
タイヤ軸方向に積み重ねられ、かつ、タイヤ軸方向に隣接する第1タイヤ及び第2タイヤを含み、
前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックは、前記第2タイヤのタイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の空隙に挿入される、タイヤセット。
【請求項10】
請求項
6~8のいずれかに記載のタイヤの複数個からなるタイヤセットであって、
タイヤ軸方向に積み重ねられ、かつ、タイヤ軸方向に隣接する第1タイヤ及び第2タイヤを含み、
前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックは、前記第2タイヤのタイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の空隙に挿入され、
前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックと前記第2タイヤの前記各ミドルブロックとは、タイヤ軸方向に隙間を有する、タイヤセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロックを有するトレッド部を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数個のタイヤを運搬又は保管する際には、各タイヤのタイヤ軸方向を鉛直方向に向けて上下方向に積み重ねられることが一般的である。下記特許文献1は、複数個のタイヤを上下方向に積み重ねたときの荷崩れを抑止するために、タイヤのサイド部に凸部及び凹部を設けたタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、不整地走行に適したタイヤでは、トレッド部に複数のブロックを有しており、最もトレッド端側に配されるショルダーブロックが、タイヤのサイド部よりもタイヤ軸方向の外側に突出している場合がある。このようなタイヤは、タイヤ軸方向を鉛直方向に向けて上下方向に積み重ねたときに、サイド部が接触することがなく、特許文献1のような凸部及び凹部を設けたとしても、荷崩れ防止の効果がなかった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ショルダーブロックがタイヤのサイド部よりもタイヤ軸方向の外側に突出しているタイヤにおいて、タイヤ軸方向に積み重ねられたときの荷崩れを防止し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溝底面から踏面に向けて突出する複数のブロックを有するトレッド部と、前記トレッド部からビード部に至るサイド部とを含むタイヤであって、前記複数のブロックは、前記踏面の一対のトレッド端に沿って、タイヤ周方向に空隙を隔てて配される複数のショルダーブロックを含み、前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記サイド部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分を有し、前記外側部分は、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面を含み、前記各ショルダーブロックの前記一対の壁面間の前記踏面に沿ったタイヤ周方向の距離であるショルダーブロック長さは、タイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の前記溝底面に沿ったタイヤ周方向の距離である空隙長さよりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記各ショルダーブロックの前記踏面は、略台形状であるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記各壁面は、略三角形状であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記各壁面のタイヤ子午面に対する角度は、±5°以内であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダーブロック長さは、前記空隙長さの90%~98%であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記外側部分のタイヤ軸方向の長さである張出長さは、前記トレッド端間のタイヤ軸方向の距離であるトレッド幅の10%~20%であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記複数のブロックは、前記複数のショルダーブロックのタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、タイヤ周方向において、前記ショルダーブロックと交互に配される複数のミドルブロックを含み、前記複数のミドルブロックは、それぞれ、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するミドル外端を有し、前記ミドル外端と前記トレッド端とのタイヤ軸方向の距離であるミドル外端長さは、タイヤ軸方向において前記ミドル外端位置での前記各ショルダーブロックの高さであるショルダーブロック高さよりも大きいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記複数のショルダーブロックは、それぞれ、前記溝底面においてタイヤ軸方向の最も外側に位置するショルダー外端を有し、前記各ショルダーブロックの前記トレッド端から前記ショルダー外端までの前記ショルダーブロックの表面に沿った長さであるショルダー長さは、前記ミドル外端から前記ショルダー外端までの前記溝底面に沿った溝底長さよりも小さいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記ショルダー長さは、前記溝底長さの80%~95%であるのが望ましい。
【0015】
本発明は、上記のタイヤの複数個からなるタイヤセットであって、タイヤ軸方向に積み重ねられ、かつ、タイヤ軸方向に隣接する第1タイヤ及び第2タイヤを含み、前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックは、前記第2タイヤのタイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の空隙に挿入されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記のタイヤの複数個からなるタイヤセットであって、タイヤ軸方向に積み重ねられ、かつ、タイヤ軸方向に隣接する第1タイヤ及び第2タイヤを含み、前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックは、前記第2タイヤのタイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の空隙に挿入され、前記第1タイヤの前記各ショルダーブロックと前記第2タイヤの前記各ミドルブロックとは、タイヤ軸方向に隙間を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤにおいて、複数のショルダーブロックは、それぞれ、サイド部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分を有し、前記外側部分は、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面を含み、前記各ショルダーブロックの前記一対の壁面間の踏面に沿ったタイヤ周方向の距離であるショルダーブロック長さは、タイヤ周方向に隣接する一対の前記ショルダーブロック間の溝底面に沿ったタイヤ周方向の距離である空隙長さよりも小さい。
【0018】
このようなタイヤは、タイヤ軸方向に積み重ねられるときに、一方のタイヤのショルダーブロック間の空隙に、他方のタイヤのショルダーブロックが挿入されるので、安定してスムーズに積み重ねることができ、その作業性及び安定性が良好である。また、複数個のタイヤが積み重ねられたタイヤセットは、各タイヤがタイヤ軸方向に重複する部分を有するので、コンパクト性に優れている。
【0019】
さらに、本発明のタイヤは、ショルダーブロックの壁面がタイヤ子午面に略平行であるので、タイヤが積み重ねられたときに、一方のタイヤのショルダーブロックと他方のタイヤのショルダーブロックとの接触面積が大きい。このため、本発明のタイヤは、複数個のタイヤが積み重ねられたタイヤセットに振動や慣性力等の外力が作用したとしても、荷崩れを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図4】複数個のタイヤが積み重ねられたタイヤセットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
図2は、
図1のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1は、
図2のA-A線の断面図である。このタイヤ1は、例えば、モトクロス等の不整地走行用のモーターサイクル(図示省略)に装着するのに適している。なお、タイヤ1は、例えば、4輪バギー等の不整地走行用の自動車に装着するのに適したものであってもよい。
【0022】
ここで、前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧となるように充填され、しかも無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0023】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイド部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるトレッド補強層7とを備えるのが望ましい。ここで、サイド部3は、トレッド部2からビード部4に至る部分である。
【0026】
本実施形態のカーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、タイヤ周方向に対して、好ましくは、15~45度の角度で傾けて配列されたカーカスコードを有する。このカーカスコードには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。
【0027】
カーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイド部3を経てビード部4に埋設されたビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0028】
本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードエーペックスゴム8が設けられているのが望ましい。ビードエーペックスゴム8は、例えば、硬質のゴムで形成されている。これにより、ビード部4が効果的に補強される。
【0029】
本実施形態のトレッド補強層7は、少なくとも1枚の補強プライ7Aにより構成されている。補強プライ7Aには、タイヤ周方向に対して、好ましくは、5~40度の角度で傾斜した補強コードが配列されている。補強コードには、例えば、スチールコード、アラミド又はレーヨン等が好適に採用される。
【0030】
本実施形態のトレッド部2は、タイヤ半径方向の最小径を構成する溝底面9aを含む溝部9と、溝底面9aからタイヤ半径方向外側に突出するブロック10とを有している。トレッド部2には、複数のブロック10が配されるのが望ましい。本実施形態の各ブロック10は、タイヤ半径方向の最大径を構成する踏面10aを含んでいる。すなわち、各ブロック10は、溝底面9aから踏面10aに向けて突出している。
【0031】
トレッド部2のトレッド端Te間の外面2aは、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、タイヤ半径方向外側に凸の略円弧状に湾曲してのびているのが望ましい。本実施形態では、トレッド部2のトレッド端Te間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TWが、タイヤ最大幅をなしている。すなわち、本実施形態のトレッド幅TWは、サイド部3間のタイヤ軸方向の最大距離であるタイヤ断面幅SWよりも大きい。
【0032】
ここで、トレッド端Teは、トレッド部2に配された複数のブロック10の内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロック10の踏面10aのタイヤ軸方向外側の縁10eを意味する。また、トレッド部2の外面2aは、ブロック10の踏面10aとブロック10間の空隙である溝部9を埋めた仮想面とから構成される。なお、トレッド端Te間のタイヤ軸方向の中心が、タイヤ赤道Cである。
【0033】
図1及び
図2に示されるように、複数のブロック10は、例えば、複数のショルダーブロック13を含んでいる。本実施形態の複数のショルダーブロック13は、踏面10aの一対のトレッド端Teに沿って、タイヤ周方向に空隙を隔てて配されている。複数のショルダーブロック13は、それぞれ、溝底面9aにおいてタイヤ軸方向の最も外側に位置するショルダー外端13eを有するのが望ましい。
【0034】
図3は、タイヤ1の斜視図である。
図1及び
図3に示されるように、本実施形態の複数のショルダーブロック13は、それぞれ、サイド部3よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側部分13aを有している。外側部分13aは、タイヤ子午面に略平行な一対の壁面14を含むのが望ましい。各壁面14のタイヤ子午面に対する角度は、好ましくは、±5°以内である。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、各ショルダーブロック13は、一対の壁面14間の踏面10aに沿ったタイヤ周方向の距離である所定のショルダーブロック長さL1を有している。また、溝部9は、タイヤ周方向に隣接する一対のショルダーブロック13間の溝底面9aに沿ったタイヤ周方向の距離である所定の空隙長さL2を有している。本実施形態のショルダーブロック長さL1は、空隙長さL2よりも小さい。
【0036】
図4は、複数個のタイヤ1が積み重ねられたタイヤセット20の正面図である。
図4に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、タイヤ軸方向に積み重ねられたときに、一方のタイヤ1のショルダーブロック13間の空隙に、他方のタイヤ1のショルダーブロック13が挿入されるので、安定してスムーズに積み重ねることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、積み重ねられたときの作業性及び安定性が良好である。また、複数個のタイヤ1が積み重ねられたタイヤセット20は、各タイヤ1がタイヤ軸方向に重複する部分を有するので、コンパクト性に優れている。
【0037】
図5は、
図4のB-B線の断面図である。
図5に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、ショルダーブロック13の壁面14がタイヤ子午面に略平行であるので、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1のショルダーブロック13と他方のタイヤ1のショルダーブロック13との接触面積が大きい。このため、本実施形態のタイヤ1は、複数個のタイヤ1が積み重ねられたタイヤセット20に振動や慣性力等の外力が作用したとしても、荷崩れを防止し得る。
【0038】
図2に示されるように、ショルダーブロック長さL1は、好ましくは、空隙長さL2の90%~98%である。ショルダーブロック長さL1が空隙長さL2の90%よりも小さいと、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1と他方のタイヤ1とのタイヤ周方向の隙間が大きく、荷崩れの防止効果が限定的となるおそれがある。ショルダーブロック長さL1が空隙長さL2の98%よりも大きいと、タイヤ1を積み重ねるときに、一方のタイヤ1のショルダーブロック13間の空隙に、他方のタイヤ1のショルダーブロック13を挿入しづらく、その作業性が低下するおそれがある。
【0039】
各ショルダーブロック13の踏面10aは、略台形状であるのが望ましい。本実施形態の各ショルダーブロック13の踏面10aは、タイヤ周方向に沿って延びる一対の略平行な縦エッジ15と、タイヤ軸方向に所定の角度θ1で互いに逆方向に傾斜する一対の横エッジ16とを有している。
【0040】
本実施形態では、各ショルダーブロック13のタイヤ軸方向外側の縦エッジ15が、トレッド端Teを構成している。一対の縦エッジ15は、例えば、タイヤ軸方向外側の縦エッジ15の長さが、タイヤ軸方向内側の縦エッジ15の長さよりも大きい。横エッジ16のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、好ましくは、10~20°である。このようなショルダーブロック13は、マッド路面を走行して泥をタイヤ周方向に押し退けるときに、タイヤ軸方向に向かう反力を発生させ、ひいては旋回性能が高められる。
【0041】
図1に示されるように、外側部分13aのタイヤ軸方向の長さである張出長さL3は、好ましくは、トレッド幅TWの10%~20%である。張出長さL3がトレッド幅TWの10%よりも小さいと、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1と他方のタイヤ1との接触面積が小さくなり、荷崩れの防止効果が限定的となるおそれがある。張出長さL3がトレッド幅TWの20%よりも大きいと、タイヤ1を積み重ねるときに、一方のタイヤ1のショルダーブロック13間の空隙に、他方のタイヤ1のショルダーブロック13を挿入しづらく、その作業性が低下するおそれがある。
【0042】
図1及び
図3に示されるように、外側部分13aの各壁面14は、略三角形状であるのが望ましい。本実施形態の各壁面14は、トレッド端Te近傍に頂点を有する略三角形状である。このような壁面14は、タイヤ1が積み重ねられたときの一方のタイヤ1と他方のタイヤ1との接触面積と、踏面10aにおける接地面積とを両立することができる。
【0043】
図1~
図3に示されるように、複数のブロック10は、例えば、複数のクラウンブロック11及び複数のミドルブロック12をさらに含んでいる。複数のミドルブロック12は、複数のショルダーブロック13のタイヤ軸方向内側に位置し、かつ、タイヤ周方向において、ショルダーブロック13と交互に配されている。複数のミドルブロック12は、それぞれ、溝底面9aにおいてタイヤ軸方向の最も外側に位置するミドル外端12eを有するのが望ましい。
【0044】
図2に示されるように、各ミドルブロック12の踏面10aは、略台形状であるのが望ましい。本実施形態の各ミドルブロック12の踏面10aは、タイヤ周方向に沿って延びる一対の略平行な縦エッジ17と、タイヤ軸方向に所定の角度θ2で互いに逆方向に傾斜する一対の横エッジ18とを有している。
【0045】
一対の縦エッジ17は、例えば、タイヤ軸方向外側の縦エッジ17の長さが、タイヤ軸方向内側の縦エッジ17の長さよりも大きい。横エッジ18のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、ショルダーブロック13の横エッジ16の角度θ1よりも小さいのが望ましい。角度θ2は、好ましくは、10°以下である。このようなミドルブロック12は、マッド路面を走行して泥をタイヤ周方向に押し退けるときに、タイヤ軸方向に向かう反力を発生させ、ひいては旋回性能が高められる。
【0046】
図1に示されるように、ミドル外端12eとトレッド端Teとのタイヤ軸方向の距離であるミドル外端長さL4は、タイヤ軸方向においてミドル外端12e位置での各ショルダーブロック13の高さであるショルダーブロック高さH1よりも大きいのが望ましい。ミドル外端長さL4は、好ましくは、ショルダーブロック高さH1の105%~130%である。このようなミドルブロック12は、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1のミドルブロック12と他方のタイヤ1のショルダーブロック13とが接触するおそれがない。
【0047】
各ショルダーブロック13のトレッド端Teからショルダー外端13eまでのショルダーブロック13の表面に沿った長さであるショルダー長さL5は、ミドル外端12eからショルダー外端13eまでの溝底面9aに沿った溝底長さL6よりも小さいのが望ましい。このようなミドルブロック12は、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1のミドルブロック12と他方のタイヤ1のショルダーブロック13とが接触するおそれがない。
【0048】
ショルダー長さL5は、好ましくは、溝底長さL6の80%~95%である。このようなブロック10を有するタイヤ1は、タイヤ1が積み重ねられたときに、一方のタイヤ1のショルダーブロック13間の空隙に、他方のタイヤ1のショルダーブロック13が強固に固定され、振動や慣性力等の外力が作用したとしても、荷崩れを防止し得る。
【0049】
図2に示されるように、複数のクラウンブロック11は、例えば、タイヤ赤道C上に設けられている。本実施形態では、複数のクラウンブロック11のタイヤ軸方向の中心位置が、それぞれ、タイヤ赤道C上に配されている。各クラウンブロック11は、タイヤ軸方向の長さがタイヤ周方向の長さよりも大きい横長状であるのが望ましい。このようなクラウンブロック11は、高いトラクション性能を発揮することができる。
【0050】
クラウンブロック11は、例えば、その踏面10aに形成された細溝19の配置が異なる第1クラウンブロック11A及び第2クラウンブロック11Bを含んでいる。第1クラウンブロック11Aには、例えば、タイヤ赤道Cの両側に1本ずつの細溝19が設けられている。第2クラウンブロック11Bには、例えば、第2クラウンブロック11Bを横切る2本の細溝19が設けられている。このようなクラウンブロック11は、トラクション性能と耐久性とを両立することができる。
【0051】
図4及び
図5に示されるように、タイヤ1の複数個からなるタイヤセット20は、例えば、タイヤ軸方向を鉛直方向に向けて上下方向に積み重ねられ、かつ、タイヤ軸方向に隣接する第1タイヤ1A及び第2タイヤ1Bを含んでいる。本実施形態の第1タイヤ1Aは、積み重ねられたタイヤ1の一方のタイヤ1であり、第2タイヤ1Bは、他方のタイヤ1である。このようなタイヤセット20は、振動や慣性力等の外力が作用したとしても、第1タイヤ1Aの壁面14と第2タイヤ1Bの壁面14とが接触するので、第1タイヤ1Aと第2タイヤ1Bとの接触面積が大きく、荷崩れを防止し得る。
【0052】
第1タイヤ1Aの各ショルダーブロック13は、第2タイヤ1Bのタイヤ周方向に隣接する一対のショルダーブロック13間の空隙に挿入されるのが望ましい。同様に、第2タイヤ1Bの各ショルダーブロック13は、第1タイヤ1Aのタイヤ周方向に隣接する一対のショルダーブロック13間の空隙に挿入されるのが望ましい。このようなタイヤセット20は、振動や慣性力等の外力が作用したとしても、第1タイヤ1Aと第2タイヤ1Bとが強固に固定されているので、荷崩れを防止し得る。
【0053】
本実施形態の第1タイヤ1Aの各ショルダーブロック13と第2タイヤ1Bの各ミドルブロック12とは、タイヤ軸方向に隙間を有している。同様に、本実施形態の第1タイヤ1Aの各ミドルブロック12と第2タイヤ1Bの各ショルダーブロック13とは、タイヤ軸方向に隙間を有している。このようなタイヤセット20は、タイヤ1が積み重ねられるときに、互いのタイヤ1のミドルブロック12とショルダーブロック13とが接触するおそれがない。
【0054】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0055】
実施例として、
図1の基本構造を有し、
図2の基本パターンを有する不整地走行用のモーターサイクルに装着するのに適したタイヤ(タイヤサイズ120/80-19)が、表1及び表2の仕様に基づき試作された。比較例として、ショルダーブロック長さL1が空隙長さL2よりも大きい比較例1と、壁面を有さない比較例2とのタイヤ(タイヤサイズ120/80-19)が、表1の仕様に基づき試作された。
【0056】
これら試作タイヤをそれぞれ積み重ねたときの、コンパクト性、作業性及び安定性がテストされた。テスト方法は、以下のとおりである。
【0057】
<コンパクト性>
各試作タイヤ10本を1セットとして、タイヤ軸方向を鉛直方向に向けて積み重ねたときの積み重ね高さが測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が小さいほど積み上げ高さが低く、コンパクト性に優れていることを示す。
【0058】
<作業性>
各試作タイヤ10本を1セットとして、タイヤ軸方向を鉛直方向に向けて10セット積み重ねたときの時間が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が小さいほど積み重ね作業に要する時間が短く、作業性に優れていることを示す。
【0059】
<安定性>
各試作タイヤ10本を1セットとして、タイヤ軸方向を鉛直方向に向けて積み重ねたタイヤセットを、上下方向及び左右方向に振動可能な振動台により振動させ、そのときの最も下のタイヤと最も上のタイヤとのずれた量が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が小さいほどタイヤセットのずれた量が小さく、安定性に優れていることを示す。
振動条件は、以下のとおりである。
振動数:1Hz
振幅:2~10mmの間で不規則に変更
時間:1時間
【0060】
テストの結果が表1及び表2に示される。
【0061】
【0062】
【0063】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、コンパクト性に優れており、また、作業性及び安定性も優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 サイド部
4 ビード部
9a 溝底面
10 ブロック
10a 踏面
13 ショルダーブロック
14 壁面