(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、カラーフィルタ基板、および液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220117BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220117BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
C09B67/20 J
C09B67/20 G
(21)【出願番号】P 2017515851
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2017010964
(87)【国際公開番号】W WO2017164127
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2016061331
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昇太
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】神井 康宏
(72)【発明者】
【氏名】川邉 憲一
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 敬造
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-080206(JP,A)
【文献】特開2017-003995(JP,A)
【文献】特開2015-125402(JP,A)
【文献】特開2014-153677(JP,A)
【文献】特開2016-003288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/1335
C09B 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂および下記一般式(1)で表される化合物を含有し、該ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンがC.I.ピグメントグリーン59であり、該黄色顔料がC.I.ピグメントイエロー185を含む顔料である着色樹脂組成物;
【化1】
【化2】
一般式(1)中、R
1は、H、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CN、ハロゲン原子または一般式(2)で表される基を表す;
R
4は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基または炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R
4は、隣接するベンゼン環とともに環を形成していてもよい;
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CNまたはハロゲン原子を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~3である;
R
2は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環基またはCNを表し、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および複素環基の水素原子の少なくとも一部がOR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、-NCOR
22-OCOR
23、CN、ハロゲン原子、-CR
21=CR
22R
23または-CO-CR
21=CR
22R
23で置換されていてもよい;
R
21、R
22およびR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基または炭素原子数2~20の複素環基を表す;
R
3は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基または炭素原子数2~20の複素環基を表し、これらの基の水素原子の少なくとも一部は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい;
前記において、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、アルキル鎖中に不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合およびウレタン結合から選ばれた結合を1~5個含んでもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記化学式(3)で表される化合物である、請求項1記載の着色樹脂組成物。
【化3】
【請求項3】
前記着色樹脂組成物の着色剤の合計含有量を100質量%として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンの含有量が72質量%以上である、請求項1または2記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
さらに連鎖移動剤を含む、請求項1から3のいずれか一項記載の着色樹脂組成物。
【請求項5】
さらに増感剤を含む、請求項1から4のいずれか一項記載の着色樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタ基板。
【請求項7】
カラーフィルタ基板と対向基板とが貼合され、両者の間に液晶化合物が充填され、バックライトが取り付けられた液晶表示装置であって、該カラーフィルタ基板が、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂および下記一般式(1)で表される化合物を含有する画素を有し、該ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンがC.I.ピグメントグリーン59であり、該黄色顔料がC.I.ピグメントイエロー185を含み、かつ、該バックライトの輝度が8000~100000cd/m
2である液晶表示装置;
【化4】
【化5】
一般式(1)中、R
1は、H、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CN、ハロゲン原子または一般式(2)で表される基を表す;
R
4は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基または炭素原子数7~30のアリールアルキル基を表し、R
4は、隣接するベンゼン環とともに環を形成していてもよい;
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CNまたはハロゲン原子を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~3である;
R
2は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環基またはCNを表し、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および複素環基の水素原子の少なくとも一部がOR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、-NCOR
22-OCOR
23、CN、ハロゲン原子、-CR
21=CR
22R
23または-CO-CR
21=CR
22R
23で置換されていてもよい;
R
21、R
22およびR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基または炭素原子数2~20の複素環基を表す;
R
3は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基または炭素原子数2~20の複素環基を表し、これらの基の水素原子の少なくとも一部は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい;
前記において、アルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、アルキル鎖中に不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合およびウレタン結合から選ばれた結合を1~5個含んでもよい。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記化学式(3)で表される化合物である請求項7記載の表示装置。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ基板、および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は軽量、薄型、低消費電力等の特性を活かし、テレビ、ノートパソコン、携帯情報端末、スマートフォン、デジタルカメラ等様々な用途で使用されている。
【0003】
液晶表示装置は、用途に応じて、3~6原色の最適な色を表示することが要求される。液晶表示装置の色性能を担うカラーフィルタ基板の画素に用いられる着色剤組成物として最適な色材が探索されている。
【0004】
緑色画素においては、種々の顔料の組み合わせが検討されているが、フタロシアニン骨格を有する緑顔料と黄色顔料を組み合わせることが一般的である(特許文献1)。フタロシアニン骨格を有する緑顔料としては、C.I.ピグメントグリーン36(臭素化銅フタロシアニン)、C.I.ピグメントグリーン7(臭塩素化銅フタロシアニン)のようなポリハロゲン化銅フタロシアニンと、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン)、C.I.ピグメントグリーン59(臭塩素化亜鉛フタロシアニン)のようなポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンがある。フタロシアニン骨格を有する緑顔料とC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー139等の黄色顔料が組み合わされて使用されている。また、黄色顔料として複数の黄色顔料を組み合わせて使用されることも一般的である(特許文献2、3)。種々の組み合わせのうち、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138の組み合わせが初期透過率が高いため、好んで用いられる(特許文献2、3)。
【0005】
一方、フタロシアニンに酸素遮断状態で光が照射されると、吸収スペクトルが変化することにより、フタロシアニンで形成された緑画素の光透過率が低下することが知られている(非特許文献1)。すなわち、フタロシアニンで形成された緑画素を有する液晶表示装置に酸素遮断状態で光が照射されると、液晶表示装置の明るさが暗くなる。非特許文献1においては、フタロシアニン骨格を置換基で修飾することで、この現象を緩和できることが開示されている。また、カラーフィルタの耐光性を改善するために、ヒンダートアミン等の光安定剤を添加する技術が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2014-41341
【文献】特開平2015-169880
【文献】特開平2012-141368
【文献】特開平2011-102833
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Photopolymer Science and Technology Volume7, Number I (1994) p.151-158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の技術では、透過率低下を防止する効果が不十分であった。そこで本発明は、酸素遮断時の透過率保持率が高い着色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂および下記一般式(1)の化合物を含有し、該ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンがC.I.ピグメントグリーン59であり、該黄色顔料がC.I.ピグメントイエロー185を含む顔料である着色樹脂組成物である。
【0010】
【0011】
【0012】
式中、R1はH、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CN、ハロゲン原子および一般式(2)で表される基から選ばれた基を表す。
【0013】
R4は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基および炭素原子数7~30のアリールアルキル基から選ばれた基を表し、R4は、隣接するベンゼン環とともに環を形成していてもよい。
【0014】
R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CNまたはハロゲン原子を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~3である。
【0015】
R2は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環基およびCNから選ばれた基を表し、
アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および複素環基は、さらにOR21、COR21、SR21、NR22R23、-NCOR22-OCOR23、CN、ハロゲン原子、-CR21=CR22R23または-CO-CR21=CR22R23で置換されていてもよい。
【0016】
R21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基または炭素原子数2~20の複素環基を表す。
【0017】
R3は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基および炭素原子数2~20の複素環基から選ばれた基を表し、これらの基は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0018】
前記において、アルキル基は直鎖でも分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、アルキル鎖の途中に不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合およびウレタン結合から選ばれた結合を1~5個含んでも良い。
【0019】
また、本発明は、上記の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタ基板である。
【0020】
また、本発明は、カラーフィルタ基板と対向基板とが貼合され、両者の間に液晶化合物が充填され、バックライトが取り付けられた液晶表示装置であって、該カラーフィルタ基板が、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂および上記一般式(1)で表される化合物を含有する画素を有し、該ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンがC.I.ピグメントグリーン59であり、該黄色顔料がC.I.ピグメントイエロー185を含み、かつ、該バックライトの輝度が8000~100000cd/m2である液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、初期透過率が高く、酸素遮断時の透過率保持率が高い着色樹脂組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明者らは、前記の透過率低下現象について鋭意検討したところ、この現象は、フタロシアニン系の緑顔料において発生し、特にポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン(例えば、C.I.ピグメントグリーン58)において顕著であることを見出した。また、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンと、特定の黄色顔料(例えば、C.I.ピグメントイエロー138)とを組み合わせた際に、透過率の低下が著しいことを突き止めた。また、この透過率低下現象は、酸素遮断状態で光が照射された場合に発生し、光の照射を終えた後に、大気に開放し、酸素を含む雰囲気にさらすと、透過率が回復することを突き止めた。これらのことから、この透過率低下現象は、フタロシアニン顔料の励起に起因する現象であると推測し、励起状態を解消する失活剤について鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表されるニトロカルバゾール骨格を有する化合物が、失活剤として特異的に効果が高いことを突き止めた。
【0023】
一般的なC.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138を組み合わせた着色樹脂組成物は、初期透過率は高いものの、着色樹脂組成物の上にITOを成膜した状態で光を照射すると透過率が顕著に低下する。これは、上記のように特定の黄色顔料との相互作用により励起されたC.I.ピグメントグリーン58が、ITO膜によって、酸素が遮断されることで、励起状態をとりつづけることに起因する。
【0024】
なお、本発明において、透過率とは、着色樹脂組成物塗膜を、顕微分光測定器を用いてC光源で測定を行い、CIE1931規格に基づくxy色度空間でのy-Yプロットにおいて、x=0.265、y=0.629の時のY値を透過率とする。測定方法の詳細については後述する。
【0025】
本発明においては、着色樹脂組成物中に一般式(1)の化合物を含むことにより、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンの励起状態を失活させ、酸素遮断時の光照射による透過率低下を防止することができる。
【0026】
【0027】
【0028】
式中、R1はH、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基、CN、ハロゲン原子および一般式(2)で表される基から選ばれた基を表す。
【0029】
R4は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基および炭素原子数7~30のアリールアルキル基から選ばれた基を表し、R4は、隣接するベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。
【0030】
R5およびR6は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基、炭素原子数2~20の複素環基から選ばれた基CNおよびハロゲン原子から選ばれた基を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0~3である。
【0031】
R2は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環基およびCNから選ばれた基を表し、
アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および複素環基は、さらにOR21、COR21、SR21、NR22R23、-NCOR22-OCOR23、CN、ハロゲン原子、-CR21=CR22R23または-CO-CR21=CR22R23で置換されていてもよい。
【0032】
R21、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基または炭素原子数2~20の複素環基を表す。
【0033】
R3は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数6~30のアリールオキシ基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキルオキシ基および炭素原子数2~20の複素環基から選ばれた基を表し、これらの基は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0034】
前記において、アルキル基は直鎖でも分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、アルキル鎖の途中に不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合およびウレタン結合から選ばれた結合を1~5個含んでも良い。
【0035】
上記一般式(1)で表される化合物は、カルバゾール骨格の片方のベンゼン環にニトロ基が置換されたニトロカルバゾール化合物である。カルバゾール骨格のもう一方のベンゼン環は、無置換であっても良いし、上記に例示した置換基によって置換されていても良い。このような化合物の例としては、例えば下記の9-エチル-3-ニトロカルバゾール等が挙げられる。
【0036】
【0037】
一般式(1)で表される化合物として、R1が一般式(2)で表される基であった場合、失活剤として作用するだけでなく、光重合開始剤として機能するので好ましい。なお、この化合物自体は公知であり、特許第4223071号掲載公報に記載されており、その製造方法もこの公報に記載されている。市販品を用いてもよい。
【0038】
この化合物を光重合開始剤として用いる場合、i線(365nm)だけではなくh線(405nm)といった長波長露光においても十分な光硬化が可能となるため、レンズスキャン方式のような、より低露光量の露光方式に対応することができる。
【0039】
一般式(1)であらわされる化合物の含有量としては、固形成分中の0.1~50質量%が好ましく、さらに好ましくは2~20質量%である。0.1質量%以下であると透過率保持率向上の効果が低くなる。また、50質量%を超えると膜がもろくなる場合がある。ここで、「固形成分」とは、着色樹脂組成物に含有される各成分のうち、溶剤以外の成分の総和のことをいう。
【0040】
本発明の着色樹脂組成物は、着色剤、バインダー樹脂および上記一般式(1)の化合物を含有する。
【0041】
着色剤として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、ならびに、C.I.ピグメントイエロー138およびC.Iピグメントイエロー185から選ばれた黄色顔料を必須成分として含む。C.I.ピグメントイエロー138およびC.Iピグメントイエロー185は、初期透過率が高い。前記のように、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー138を組み合わせて用いた場合に透過率低下が著しいという問題があったが、本発明においては、上記のように、一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、透過率低下の問題を解決することができる。
【0042】
着色剤の含有量の好ましい範囲は、固形成分中の1~65質量%であり、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。1質量%より低いと着色性能が低くなる。また、65質量%を超えると膜がもろくなる場合がある。
【0043】
ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとしては、C.I.ピグメントグリーン58およびC.I.ピグメントグリーン59から選ばれた1種以上が好ましく挙げられる。
【0044】
カラーフィルタとして要求される色特性の観点から、着色樹脂組成物の着色剤の合計含有量を100質量%とした場合の、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、着色剤全体中の比率は、10~99質量%含まれることが好ましい。ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンの比率は、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは72質量%以上である。また、該比率は95質量%以下であることがより好ましい。ポリハロゲン化フタロシアニンの比率が高いほど着色剤濃度を低下させやすく、樹脂成分が増えるために得られるカラーフィルタの信頼性が高くなる。黄色顔料は、着色剤全体中の1~90質量%含まれることが好ましく、より好ましくは5~85質量%である。
【0045】
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー150も好ましい。C.I.ピグメントイエロー138およびC.I.ピグメントイエロー185から選ばれた顔料に加えて、C.I.ピグメントイエロー150をさらに含むことにより、初期透過率をそれほど低下させずに酸素遮断下の耐候性試験での透過率保持率をさらに向上させることができる。この場合、混合比率としては、黄色顔料の合計含有量を100質量%として、C.I.ピグメントイエロー138とC.I.ピグメントイエロー185の合計含有量が20~85質量%の範囲、より好ましくは20~80質量%の範囲が、初期透過率と透過率保持率の両立の面で特に優れている。また、C.I.ピグメントイエロー150の比率は、黄色顔料の総和を100質量%として、C.I.ピグメントイエロー150の含有量が20~80質量%の範囲が好ましい。
【0046】
また黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー138を用いる場合には、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、C.I.ピグメントイエロー138およびバインダー樹脂、反応性モノマーおよび分散剤の合計を100質量%として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンおよびC.I.ピグメントイエロー138の合計含有量が43~55質量%であると、輝度が高くしやすく好ましい。
【0047】
そのほかに特性を損なわない範囲で、他の顔料も含有して良い。例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55や、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、139、142、147、148、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207を含むことができる。
【0048】
バインダー樹脂としては、特に限定はないが、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、等が好ましい。安定性の面からアクリル樹脂が特に好ましく用いられる。
【0049】
アクリル系樹脂としては、特に限定はないが、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物などがあげられる。
【0050】
これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nープロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソ-ブチル、メタクリル酸イソ-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ペンチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル;スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;1,3-ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン;末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を付加したアクリル樹脂を用いると、着色樹脂組成物を感光性樹脂組成物として使用する場合に、加工の際の感度がよくなるので好ましく用いることができる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがある。このような側鎖をアクリル系(共)重合体に付加させる方法としては、アクリル樹脂がカルボキシル基や水酸基などを有する場合には、これらにエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどを付加反応させる方法が一般的である。その他、イソシアネートを利用してエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させることもできる。
【0052】
かかる方法により製造された側鎖に不飽和基を持つアクリル樹脂は、さらにイオン交換法や再沈殿により精製することもできる。再沈殿の方法としては、かかるバインダー樹脂溶液を水、または種々の有機溶媒と混合することで沈殿させて粉末を得る方法が挙げられる。
【0053】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル樹脂としては、例えば、市販のアクリル樹脂であるサイクロマー(登録商標)P(ダイセル化学工業(株))またはアルカリ可溶性カルド樹脂を用いることができる。
【0054】
バインダー樹脂の質量平均分子量Mwは、3千~20万が好ましく、さらに好ましくは9千~10万である。質量平均分子量が3千未満では得られる硬化膜の強度が低くなる。また、質量平均分子量が20万を超えると樹脂組成物の安定性が低下するため、好ましくない。ここで、質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値である。
【0055】
バインダー樹脂の好ましい含有量は、現像性と色特性のバランスの観点から、固形成分中の1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%である。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、有機溶剤、密着改良剤、界面活性剤、などが挙げられる。
【0057】
バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いた場合の有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ベンジルアセテート(沸点214℃)、エチルベンゾエート(沸点213℃)、メチルベンゾエート(沸点200℃)、マロン酸ジエチル(沸点199℃)、2-エチルヘキシルアセテート(沸点199℃)、2-ブトキシエチルアセテート(沸点192℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点188℃)、シュウ酸ジエチル(沸点185℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、シクロヘキシルアセテート(沸点174℃)、3-メトキシ-ブチルアセテート(沸点173℃)、アセト酢酸メチル(沸点172℃)、エチル-3-エトキシプロピオネート(沸点170℃)、2-エチルブチルアセテート(沸点162℃)、イソペンチルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、酢酸ペンチル(沸点150℃)またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃;以下、「PMA」)などが挙げられる。
【0058】
また、上記以外の溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点193℃)、モノエチルエーテル(沸点135℃)、メチルカルビトール(沸点194℃)、エチルカルビトール(202℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル(沸点153℃)またはジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)等の(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤;酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)または酢酸イソペンチル(沸点142℃)等の脂肪族エステル類;ブタノール(沸点118℃)、3-メチル-2-ブタノール(沸点112℃)または3-メチル-3-メトキシブタノール(沸点174℃)等の脂肪族アルコール類;シクロペンタノンまたはシクロヘキサノン等のケトン類;キシレン(沸点144℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)またはソルベントナフサ(石油留分:沸点165~178℃)などが挙げられる。
【0059】
コーティング特性と乾燥特性のバランスの観点から、有機溶媒の含有量の好ましい範囲としては、着色樹脂組成物全量中の40~95質量%、より好ましくは50~90質量%である。
【0060】
密着改良剤は、塗膜の基板への密着性を向上させる目的で、好ましく添加することができる。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0061】
密着性とバインダー樹脂との相溶性のバランスの観点から、密着改良剤の含有量の好ましい範囲は、固形成分中の10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0062】
界面活性剤は、樹脂組成物の塗布性、および層の表面の均一性を良好にする目的で添加することができる。具体的には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤などがあげられる。かかる界面活性剤の添加量は、全量に対して、好ましくは0.001~10質量%であるのがよい。添加量がこの範囲より少ないと、塗布性、膜表面の均一性の改良の効果が小さく、多すぎると逆に塗布性が不良となるため好ましくない。
【0063】
本発明の着色樹脂組成物は、感光性樹脂組成物としても、非感光性樹脂組成物としても使用することができる。感光性樹脂組成物として用いる場合には、さらに反応性モノマーおよび光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0064】
反応性モノマーとしては、特に限定されるものではないが、多官能(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートのようなオリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ジシクロペンタンジエニルジアクリレート、もしくはこれらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物などを用いることができる。これらの反応性モノマーは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。
【0065】
光重合開始剤としては、前記のように、一般式(1)で表される化合物として、R1が一般式(2)で表される基であった場合、失活剤として作用するだけでなく、光重合開始剤として機能する。一般式(1)で表される光重合開始剤として ADEKA(株)製アデカアークルズ(登録商標)NCI-831が挙げられる。また、一般式(1)で表される化合物以外の光重合開始剤を添加することもできる。
【0066】
その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、オキシムエステル化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物またはチタネート等の無機系光重合開始剤が挙げられる。
【0067】
より具体的には、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン、イルガキュア(登録商標)369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン)、同379(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)、同OXE01(1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)])、以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカル(株)製)、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、4-(p-メトキシフェニル)-2,6-ジ-(トリクロロメチル)-s-トリアジンまたはオキシムエステル系化合物であるアデカアークルズ(登録商標)NCI-930が挙げられる。
【0068】
また、感度向上を目的として、光重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を用いることも好ましい。連鎖移動剤としては、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4-メチルチオ)フェニルエーテル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、昭和電工(株)製カレンズ(登録商標)MT PE-1 (ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))、昭和電工(株)製カレンズ(登録商標)MT NR-1(1,3,5トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン))、昭和電工(株)製カレンズ(登録商標)MT BD-1(1,4ビス(3メルカプトブチリルオキシ)ブタン)、等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2-ヨードエタノール、2-ヨードエタンスルホン酸、3-ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物が挙げられる。
【0069】
感度とバインダー樹脂との相溶性のバランスの観点から、連鎖移動剤量の含有量の好ましい範囲は、固形成分中の0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。
【0070】
さらに増感剤を添加すると、さらに感度を向上させることができる。増感剤としては、チオキサントン系増感剤、芳香族または脂肪族の第3級アミンなどが挙げられる。より具体的には、例えばチオキサントン、2-クロロチオキサントン、DETX-S(2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン)等が挙げられる。
【0071】
また、これらの増感剤は2種類以上を併用して用いることもできる。増感剤の添加量としては、特に限定はないが、感光性組成物の全固形成分に対して、好ましくは2~30質量%、より好ましくは5~25質量%である。
【0072】
樹脂組成物に安定性を保つために重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤としては、特に限定されるものではないが、例えばヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、tert-ブチルカテコールなどが挙げられる。
【0073】
安定性と感光特性のバランスの観点から、重合禁止剤量の含有量の好ましい範囲は、固形成分中の0.0001~1%質量%であり、より好ましくは、0.005~0.5質量%である。
【0074】
次に、着色樹脂組成物の製造方法について説明する。着色樹脂組成物は、顔料、バインダー樹脂および溶剤を分散機により分散して顔料分散液を調製した後、その他の構成成分を加えることによって製造することが好ましい。分散機としては、例えば、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、アトライター等が挙げられる。分散効率に優れるビーズミルが好ましい。ビーズミルで用いる分散ビーズとしては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズまたはガラスビーズが挙げられるが、ジルコニアビーズが好ましい。
【0075】
顔料分散液を調製する際には、顔料の分散安定性を向上するために、分散剤を添加することが好ましい。分散剤としては、顔料誘導体や高分子分散剤などを用いることができる。顔料誘導体としては、例えば顔料骨格のアルキルアミン変性体やカルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体などを挙げることができる。顔料誘導体は、シナジストとして顔料の湿潤や微細顔料の安定化に有効である。これら顔料誘導体の中でも、有機顔料のスルホン酸誘導体は微細顔料の安定化に効果が大きく、好ましく用いられる。高分子分散剤としては、カラーフィルタ用に使用されるものであれば、特に限定されず、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、などのポリマー、またはこれらの共重合体など、種々のものを単独、または混合して用いることができる。これら高分子分散剤の中でも、アミン価および酸価を持ったものが好ましい。具体的には、固形分換算のアミン価が5~200であり酸価が1~100であるものが好ましい。これらの分散剤を用いることで、顔料分散液ひいては着色樹脂組成物の保存安定性が向上するため、好ましく用いられる。
【0076】
かかる方法によって顔料分散液を調製した後、目的の組成に応じて、アクリル系樹脂、反応性モノマー、光重合開始剤、重合禁止剤、その他添加剤等を混合した希釈ワニスを用意し、顔料分散液と混合することで、着色樹脂組成物を得ることができる。
【0077】
つぎに、本発明の感光性着色剤組成物を用いたカラーフィルタ基板について説明する。本発明のカラーフィルタ基板は、本発明の着色樹脂組成物を用いて、少なくとも1色の着色画素を形成させることが必要である。それ以外のカラーフィルタの構成については、特に限定されないが、例えば、透明な基板上に樹脂ブラックマトリクスを形成した後に、赤色、緑色および青色の画素が形成されたカラーフィルタが好ましく用いられる。
【0078】
樹脂ブラックマトリクスに使用される顔料は、遮光剤としての役割を果たすものであれば、特に限定されない。有機顔料であるピグメントブラック7、カーボンブラック、黒鉛、酸化鉄、酸化マンガン、チタンブラックなどが遮光剤として使用される。顔料に、表面処理を行うことも好ましい。また、必要に応じて、複数の遮光剤を混合して用いることも、他の色の顔料を添加することもできる。
【0079】
赤色画素に使用される顔料は、役割を果たすものであれば、特に限定されない。赤色顔料の例としては、ピグメントレッド9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254などが使用される。黄色顔料の例としては、ピグメントイエロー12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185などが使用される。オレンジ色顔料の例としては、ピグメントオレンジ13、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71などが使用される。
【0080】
また、青色画素に使用される顔料は、役割を果たすものであれば、特に限定されない。青色顔料の例としては、ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60、64などが使用される。ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50などが使用される。
【0081】
緑色画素には、本発明の着色樹脂組成物が好適に用いられる。
【0082】
つぎに、カラーフィルタ基板の製造方法を、着色樹脂組成物が感光性である場合について説明する。
【0083】
まず、着色樹脂組成物を基板上に塗布する。塗布方法としては、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法などを用いて基板に着色樹脂組成物を塗布する方法、基板を着色樹脂組成物中に浸漬する方法、着色樹脂組成物を基板に噴霧するなどの種々の方法を用いることができる。
【0084】
基板としては、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの透明基板が好ましく用いられる。着色樹脂組成物を前記のような方法で透明基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより、着色樹脂組成物の塗膜を形成する。
【0085】
次に、着色樹脂組成物の塗膜上にマスクを設置し、超高圧水銀灯、ケミカル灯、高圧水銀灯等を用いて、紫外線等により選択的に露光を行う。露光機はプロキシミティ、ミラープロジャクション、レンズスキャン等問わず使用できる。精度の観点からレンズスキャン方式が好ましい。
【0086】
その後、アルカリ性現像液で現像を行う。アルカリ性現像液に用いるアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ類等が挙げられる。
【0087】
その後、得られた塗膜パターンを加熱処理することによって画素がパターンニングされたカラーフィルタ基板となる。加熱処理は、通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150~350℃、好ましくは180~250℃の温度のもとで、0.5~5時間、連続的または段階的に行われる。この加熱工程により、感光性着色剤組成物の樹脂成分の硬化が進む。パターンニング工程をブラックマトリクスと3~6原色の各画素について順次行う。
【0088】
この上に必要に応じてオーバーコート膜を形成してもよい。オーバーコート膜としては、例えば、エポキシ膜、アクリルエポキシ膜、アクリル膜、シロキサンポリマ系の膜、ポリイミド膜、ケイ素含有ポリイミド膜、ポリイミドシロキサン膜等が挙げられる。オーバーコート膜の上にさらに、透明導電膜を形成しても構わない。
【0089】
透明導電膜としては、例えば、膜厚0.1μm程度のITO等の金属酸化物薄膜が挙げられる。ITO膜の作製方法としては、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法が挙げられる。
【0090】
カラーフィルタ基板には、固定されたスペーサーを形成してもよい。固定されたスペーサーとは、カラーフィルタ基板の特定の場所に固定され、液晶表示装置を作製した際に対向基板と接するものをいう。これによりカラーフィルタ基板と対向基板との間に、一定のギャップが保持され、このギャップ間に液晶化合物が充填される。カラーフィルタ基板に固定されたスペーサーを形成することにより、液晶表示装置の製造工程において球状スペーサーを散布する行程や、シール剤内にロッド状のスペーサーを混練りする工程を省略することができる。
【0091】
次に液晶表示装置について説明する。カラーフィルタ基板と対向基板とを貼合せ、両者の間のギャップに液晶化合物を充填することにより、液晶表示装置を製造することができる。対向基板としては、例えば、薄膜ダイオード(TFD)素子、走査線、信号線および透明電極を有する駆動素子基板上に、液晶配向のためのラビング処理を施した液晶配向膜が設けられた、対向基板を用いることができる。カラーフィルタ基板にも液晶配向のためのラビング処理を施した。該対向基板とカラーフィルタ基板とを対向させて、シール材を用いて、貼り合わせる。次に、シール部に設けられた注入口から液晶を注入した後に、注入口を封入し、バックライトを取り付け、ICドライバ等を実装することにより液晶表示装置が完成する。バックライトとしては、例えば、青色LEDとYAG蛍光体からなる白色LEDなどを使用できる。
【0092】
カラーフィルタ基板は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂および前記一般式(1)で表される化合物を含有する画素を有し、該黄色顔料がC.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー138およびC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0093】
バックライトの輝度は、8000~100000cd/m2が好ましく、より好ましくは10000~50000cd/m2、さらに好ましくは15000~30000cd/m2である。バックライトの光度は、高い方が液晶表示装置の視認性が向上するので好ましい。従来技術の問題点であった透過率の低下現象は、輝度に比例し、バックライトの輝度が8000cd/m2以上になると透過率の低下が顕著であった。しかし、本発明の着色樹脂組成物を用いれば、この透過率低下現象を防止できるので、バックライトの輝度を8000cd/m2以上にすることにより、液晶表示装置の視認性を向上させることができる。液晶表示装置の視認性の観点からは、バックライトの輝度は、高ければ高いほど好ましいが、機度が100000cd/m2を超える場合はパネルの冷却コストが高くなる。
【0094】
着色樹脂組成物を分析する方法としては、着色樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥を行った後、以下の分析方法で分析することができる。顔料の分析は、レーザーラマン(例えば、HOLIBA Jobin Yvon製Ramanor T-64000)を用いて測定することができる。失活剤、連鎖移動剤、増感剤等の分析は、FT-IR(例えば、SPECTR-TECH社製FT-IR MICROSCOPE)を用いて測定することができる。また、必要に応じて、遠心分離、濾過、GPC分取等採取法などを組み合わせることや、上記の複数の分析方法を組み合わせることで、高精度に検出が可能となる。
【0095】
また、カラーフィルタ基板を用いて、着色樹脂組成物を分析する方法としては、カラーフィルタ基板の透明電極層および保護膜層を表面研磨して取り除き、着色樹脂組成物を露出させ、分析サンプルをマニュピュレーター採取した後に、上記と同様に行うことができる。
【実施例】
【0096】
以下、好ましい実施態様を用いて本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例1-4、6-12は、現在は参考例であり、実施例5が本発明の実施例である。
【0097】
実施例中の着色樹脂組成物の評価を以下の方法で行った。
【0098】
<評価方法>
(初期透過率評価)
着色樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、90℃10分間乾燥し、露光量i線40mJ/cm2で全面露光した後、230℃30分間加熱を行った。下記の各実施例、比較例において形成した緑色画素の膜厚は表2に示した。得られた着色樹脂組成物塗膜を、大塚電子製顕微分光測定器”LCF-100MA“を用いてC光源で測定を行い、CIE1931規格に基づくxy色度空間でのy-Yプロットにおいて、x=0.265、y=0.629の時のY値を求め、初期透過率とした。次の基準で評価を行った。
A:初期透過率が51以上
B:初期透過率が49を超え、51未満
C:初期透過率が49以下。
【0099】
(透過率保持率評価)
(1)カラーフィルタ作製
ブラックマトリックスを作製したガラス基板上に、以下のようにして、本発明の着色樹脂組成物を用いて緑色画素を形成した。
【0100】
非感光性の着色樹脂組成物については、着色樹脂組成物を前記基板上に塗布した後、90℃10分の加熱乾燥を行った。得られた着色樹脂組成物塗布膜上に、ポジレジストを塗布し、90℃10分で加熱乾燥を行った。続いて、ポジ用フォトマスクを介して100mJ/cm2の露光を行った後、1.0質量パーセントのテトラメチルアンモニウム液で現像を行うことにより、所望のパターンを形成した。ポジレジストをメチルセルソルブアセテートで剥離した後、230℃30分加熱硬化を行った。
【0101】
感光性の着色樹脂組成物については、着色樹脂組成物を前記基板上に塗布した後、90℃10分の加熱乾燥を行った。得られた着色樹脂組成物塗布膜に、ネガ用フォトマスクを介して、100mJの露光を行った後、0.3質量パーセントのテトラメチルアンモニウム液で現像を行ことにより、所望のパターンを形成した。続いて、230℃30分加熱硬化を行った。
【0102】
次に、赤色樹脂組成物および青色樹脂組組成物を用いて、同様にして赤画素および青画素をそれぞれ同基板上に作製した。その後、透明電極を形成させ、緑画素、青画素および赤画素を有するカラーフィルタ基板を得た。このカラーフィルタ基板の緑色画素を、前記(初期透過率評価)と同様にして、顕微分光で透過率を測定し、得られたY値をY0とした。
【0103】
(2)液晶表示装置作製
無アルカリガラス上にTFT素子、透明電極等を形成させてアレイ基板を作製した。(1)で作成したカラーフィルタ基板と該アレイ基板に、それぞれポリイミド配向膜を形成し、ラビング処理を行った。アレイ基板にマイクロロッドを練り込んだシール剤を印刷し、6μmの厚さのビーズスペーサーを散布した後、アレイ基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせた。シール部に設けられた注入口からネマティック液晶(チッソ製“リクソン”JC-5007LA)を注入した後、液晶セルの両面に偏光フィルムを偏光軸が垂直になるようにして貼り合わせ、液晶パネルを得た。この液晶パネルに、青色LEDとYAG蛍光体からなる白色LEDバックライトを取り付け、TABモジュール、プリント基板等を実装し液晶表示装置を作製した。白色LEDバックライトは、駆動電力を調整し、輝度を5000~20000cd/m2のものを用いた。
【0104】
(3)耐候性試験
液晶表示装置をバックライト点等状態で60℃60%の恒温高湿槽に100時間投入した。その後、パネルを解体し、緑色画素を前記と同様にして顕微分光で測定し、得られたY値をY1とした。Y1/Y0を透過率保持率とし次の基準で評価を行った。
A:透過率保持率が90%以上
B:透過率保持率が80%以上~90%未満
C:透過率保持率が80%未満。
【0105】
(感光特性評価)
着色樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、90℃10分間乾燥し、50μmのライン&スペースパターンを持つフォトマスクを介して、露光量がそれぞれi線換算で10、20、30、40、50、100、200、400mJ/cm2となるように、露光時間を調整し、紫外線露光を行った。基板とフォトマスクのギャップは25μmとした。
【0106】
次に、露光後の基板を23℃の0.2質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中で60秒間シャワー現像した後、純水で洗浄した。230℃30分加熱を行った。
【0107】
また別途、着色樹脂組成物を上記と同様の条件でガラス基板上に塗布し、露光量i線換算で400mJ/cm2で全面露光した後、現像を行わずに230℃30分加熱を行った基板を用意した。
【0108】
パターン加工後の基板について、50μmラインパターンの膜厚測定を行った。現像を行わなかった基板の着色樹脂組成物膜の膜厚を100%とした場合に、90%以上の膜厚が残存している露光量を求めた。膜厚は東京精密(株)製“表面粗さ輪郭形状測定機 サーフコム(登録商標)1400”で測定を行った。上記の露光量のうち、90%以上の膜厚が残存している最小の露光量を感度とした。次の基準で判定を行った。
A:感度が30mJ/cm2以下
B:感度が30mJ/cm2より大きく400mJ/cm2以下
C:感度が400mJ/cm2より大きい
非感光:評価なし
(着色剤分散液の作成)
C.I.ピグメントグリーン58(DIC(株)製 “FASTGEN(登録商標)Green A110”)150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK-LPN6919”、60質量%溶液)75g、バインダーポリマー(ダイセル化学製、“サイクロマー(登録商標)P”、ACA250、45質量%溶液)100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA)675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントグリーン58分散液(D-1)を作成した。
【0109】
C.I.ピグメントイエロー138(東洋インキ製 “LIONOGEN(登録商標) YELLOW1010”)150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK-LPN6919”、60質量%溶液)75g、バインダーポリマー(ダイセル化学製、“サイクロマー(登録商標)P”、ACA250、45質量%溶液)100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA)675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントイエロー138分散液(D-2)を作成した。
【0110】
C.I.ピグメントイエロー150(大日精化(株)製 “クロモファイン(登録商標)イエロー6266EC”)150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK-LPN6919”、60質量%溶液)75g、バインダーポリマー(ダイセル化学製、“サイクロマー(登録商標)P”、ACA250、45質量%溶液)100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA)675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントイエロー150分散液(D-3)を作成した。
【0111】
C.I.ピグメントグリーン59 150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK-LPN6919”、60質量%溶液)75g、バインダーポリマー(ダイセル化学製、“サイクロマー(登録商標)P”、ACA250、45質量%溶液)100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA)675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントグリーン59分散液(D-4)を作成した。
【0112】
C.I.ピグメントイエロー185(BASF製 “Paliotol(登録商標)Yellow D1155”)150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK-LPN6919”、60質量%溶液)75g、バインダーポリマー(ダイセル化学製、“サイクロマー(登録商標)P”、ACA250、45質量%溶液)100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA)675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントイエロー185分散液(D-5)を作成した。
【0113】
実施例1
(着色樹脂組成物の作成)
上記D-1 36.84g、上記D-2 24.56g、サイクロマー(登録商標)P1.51g、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)反応性モノマー(日本化薬製 “カヤラッド(登録商標)DPHA”)4.59g、失活剤(シグマアルドリッチ製“9-エチル-3-ニトロカルバゾール”(純度98%)) 0.29g、PMA32.21gを添加し、C.I.ピグメントグリーン58/C.I.ピグメントイエロー138=60/40の着色樹脂組成物を作製した。
【0114】
得られた着色樹脂組成物をバックライト輝度が10000cd/m2で前記の評価方法に従って評価した。初期透過率は51.0で良好であった。さらに耐候性評価を行った結果、透過率保持率は84%と良好な値を示した。
【0115】
実施例2
実施例1中の失活剤9-エチル-3-ニトロカルバゾールを下式(3)のニトロカルバゾール系開始剤に代えたこと以外は、実施例1と全く同様にして着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好であった。またバックライト輝度が10000cd/m2で耐候性評価を行った結果、透過率保持率は84%と良好な値を示した。さらに感光性評価を行ったところ、必要露光量が40mJ/cm2と良好な特性を示した。このことからニトロカルバゾール部位を持つ開始剤は、失活剤の効果と光重合開始剤としての効果を併せ持っているといえる。
【0116】
【0117】
比較例1
失活剤を添加しない以外は実施例1と全く同様にして、着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好であるものの、バックライト輝度が10000cd/m2での耐候性評価後の透過率保持率は74%と不十分なものであった。
【0118】
比較例1と実施例2の比較から、9-エチル-3-ニトロカルバゾールが失活剤として効果を発揮したといえる。
【0119】
比較例2
9-エチル-3-ニトロカルバゾールをヒンダートアミン光安定剤(BASF製 “TINUVIN(登録商標)770DF”)に代えた以外は、実施例1と全く同様にして、着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好であるものの、バックライト輝度が10000cd/m2での耐候性評価後の輝度保持率は77%と、比較例1に対してわずかな改良効果はあるものの不十分であった。
【0120】
比較例3
9-エチル-3-ニトロカルバゾールを下式のカルバゾールに代えた以外は、実施例1と全く同様にして、着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好であるものの、耐候性評価後の透過率保持率は74%と不十分なものであった。すなわちニトロ基が付加されていないカルバゾールは失活剤として効果を発揮しないといえる。
【0121】
【0122】
比較例4
実施例1中の失活剤9-エチル-3-ニトロカルバゾールをニトロ基を持たない下式のカルバゾール系開始剤(BASF製“OXE02”)に代えたこと以外は、実施例1と全く同様にして着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好あった。またバックライト輝度が10000cd/m2での耐候性評価を行ったところ透過率保持率は74%と不十分な値を示した。このことからニトロ基を持たないカルバゾール開始剤は、失活剤の効果がないといえる。
【0123】
【0124】
比較例5
実施例1中の失活剤9-エチル-3-ニトロカルバゾールをニトロ基を持たない下式のカルバゾール系開始剤(ADEKA製“N1919”)に代えたこと以外は、実施例1と全く同様にして着色樹脂組成物を作成した。得られた着色樹脂組成物の初期透過率は51.0で良好あった。またバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率は74%と不十分な値を示した。このことからニトロ基を持たないカルバゾール開始剤は、失活剤の効果がないといえる。
【0125】
【0126】
実施例3
実施例2において、ピグメントグリーン58の代わりに、同じくポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンのピグメントグリーン59を用い、ピグメントグリーン59およびピグメントイエロー138の比率を、表2に示すようにした以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。初期透過率が50.5と良好な値を示した。またバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率を評価したところ89%と実用上十分な特性を有していた。このことからポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとピグメントイエロー138と一般式(1)の化合物の組み合わせは、初期透過率が極めて良好であり、透過率保持率が良好であるといえる。
【0127】
実施例4、5
実施例2においてピグメントイエロー138の代わりにピグメントイエロー185を用い、配合比を表2に示すようにした以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、バックライト輝度が10000cd/m2で評価した(実施例4)。また実施例3においてピグメントイエロー138の代わりにピグメントイエロー185を用い、配合比を表2に示すようにした以外は、実施例3と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した(実施例5)。初期透過率が52.0(実施例4)、51.4(実施例5)と極めて良好な値を示した。またバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率を評価したところ、93%(実施例4)、93%(実施例5)と極めて良好な値をしめした。このことからポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンとピグメントイエロー185と一般式(1)の化合物の組み合わせは、初期透過率と透過率保持率が極めて良好であるといえる。
【0128】
実施例6、7、8
実施例2において、ピグメントイエロー150をさらに配合し、配合比を、表2に示すようにした以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。ピグメントイエロー138の比率が低下するに従い、初期透過率が50.5(実施例6)、50.0(実施例7)、49.5(実施例8)と低下の傾向が見られたが実用範囲内であった。またバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率を評価したところ、90%(実施例6)、92%(実施例7)、96%(実施例8)と極めて良好な値を示した。さらに感光特性を評価したところ、いずれも40mJ/cm2と十分な感度を有していた。
【0129】
またポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、C.I.ピグメントイエロー138、バインダー樹脂、反応性モノマーおよび分散剤の合計を100質量%として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンおよびC.I.ピグメントイエロー138の合計含有量と初期透過率を比較した場合に、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンおよびC.I.ピグメントイエロー138の合計含有量が43質量%以上の場合に、初期透過率が高いと言える。 実施例9、10
一般式(3)の失活剤に加えて、連鎖移動剤(昭和電工(株)製カレンズ(登録商標)MT PE-1 (ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート):実施例9)、(昭和電工(株)製カレンズ(登録商標)MT NR-1(1,3,5トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)):実施例10)をそれぞれ添加した以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。いずれも初期透過率とバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率が良好であり、かつ感度が極めて高く良好であった。このことから連鎖移動剤は他の特性を損なわずに感度のみ向上させることができるといえる。
【0130】
実施例11
一般式(3)の失活剤に加えて、増感剤(日本化薬(株)製DETX-S (2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン)を添加した以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。初期透過率とバックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率が良好であり、かつ感度が極めて高く良好であった。このことから増感剤は他の特性を損なわずに感度のみ向上させることができるといえる。
【0131】
実施例12
着色剤を表2に示すようにした以外は、実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。バックライト輝度が10000cd/m2での透過率保持率を評価したところ、100%と充分なものであった。
【0132】
比較例6
バックライト輝度を20000cd/m2とした以外は比較例1と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。バックライト輝度の増大に応じて、輝度保持率は70%とさらに低下していた。
【0133】
実施例13
バックライト輝度を20000cd/m2とした以外は実施例2と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。輝度保持率は80%と、やや低下したが、実用上充分に使用できる値であった。
【0134】
実施例14
バックライト輝度を20000cd/m2とした以外は実施例12と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。若干の輝度保持率の低下がみられたが,非常に良好な値であった。
【0135】
比較例7、8
開始剤をニトロ基を持たない開始剤OXE02(比較例7)、N1919(比較例8)にそれぞれ代えた以外は、実施例14と全く同様にして着色樹脂組成物を作成し、評価した。輝度保持率が大幅に低下し、不十分な値であった。
【0136】
参考例1~5
バックライト輝度を5000cd/m2とした以外は、実施例14、実施例2、実施例4、比較例7および比較例8と同様にして、参考例1~5を実施した。バックライト輝度が低いことにより、輝度保持率が高くなった。このことからバックライト輝度が低い場合には、そもそも輝度低下が起こりにくいと言える。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
表3において、「Y138,Y185/黄顔料」は、黄色顔料の合計含有量を100質量%として、C.I.ピグメントイエロー138およびピグメントイエロー185の合計含有量を示した。「着色剤濃度」は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、黄色顔料、バインダー樹脂、反応性モノマーおよび分散剤の合計含有量を100質量%として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンおよび黄色顔料の合計含有量を示した。「緑顔料,Y138/樹脂」は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン、C.I.ピグメントイエロー138、バインダー樹脂、反応性モノマーおよび分散剤の合計含有量を100質量%として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンおよびC.I.ピグメントイエロー138の合計含有量を示した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の着色樹脂組成物は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ基板の画素を形成するための着色樹脂組成物として好適に使用できる。