(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】設備異常診断装置
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
(21)【出願番号】P 2018003013
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】中尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】外山 達斎
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/104760(WO,A1)
【文献】特許第6076421(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象の設備の診断により異常を検知する設備診断装置であって、
事前に前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データを学習することで正常モデルを作成する正常モデル生成手段と、
新たに前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データについて前記正常モデルによって正常または外れを判定する正常/外れ判定手段と、
前記正常/外れ判定手段で外れと判定された多次元特徴量データおよび前記正常モデルの多次元特徴量データを学習し、前記外れと判定された多次元特徴量データの外れ原因を前記設備の異常原因として特定する異常原因特定手段と、
を備え、
前記異常原因特定手段は、前記外れと判定された多次元特徴量データの特徴量の各変数について正常/外れの分類に寄与した重要度を求め、前記重要度に基づき前記外れ原因を特定し、
事前に作成された前記設備の各異常原因と前記重要度との対応表を記憶させた記憶手段をさらに備え、
前記異常原因特定手段は、前記外れと判定された多次元特徴量データの前記重要度と、前記対応表の重要度とを照合することで前記外れ原因を特定し、
前記設備の実機または前記設備のシミュレーションモデルに基づき各種の異常を模擬し、
前記模擬された各異常時の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データの重要度を求め、前記対応表に前記重要度と前記模擬された異常の異常原因とを対応づけて記述した
ことを特徴とする設備診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断対象の設備を診断して異常を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設備の出力する時系列信号に基づいて設備の異常を検知する装置および方法が記載されている。この特許文献1の記載によれば、設備の出力する時系列信号に基づいて一定期間ごとに運転パラメータラベルが付与される。
【0003】
この運転パラメータラベルに基づき予め学習データが選定され、選定された学習データに基づき正常モデルが作成される。この正常モデルに基づき前記時系列信号の異常測度が算出され、算出された異常測度に基づき設備の正常/異常が識別される。
【0004】
このように設備の異常を検知する場合、異常が稀な設備については異常データの入手が容易でないため、診断対象の設備について正常データのみの学習により正常モデルを作成し、設備の正常・異常を分類している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように特許文献1の技術によれば、診断対象の設備について正常と異常とを分類できるものの、以下の問題が生じるおそれがあった。
【0007】
すなわち、重要な設備については異常の発生を早期に発見し、メンテナンスを実施して異常発生による設備の運転停止期間を短縮することが望まれているため、異常発生の原因の特定が必要となる。しかしながら、特許文献1の技術は、異常の種類ごとに運転パラメータラベルを付与することができないため、設備の異常原因を特定することができない。
【0008】
この場合に異常の種類ごとに運転パラメータラベルを付与して異常データを学習させれば、学習させたパターンの原因を特定することは可能である。ところが、前述のようにすべての異常パターンを網羅した異常データの入手は容易ではないため、学習させる異常パターンに漏れが生じ、正常・異常の分類を誤るおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、診断対象の設備の異常を早期に検出し、かつ設備の異常原因の特定を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様は、診断対象の設備の診断により異常を検知する設備診断装置であって、
事前に前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データを学習することで正常モデルを作成する正常モデル生成手段と、
新たに前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データについて前記正常モデルによって正常または外れを判定する正常/外れ判定手段と、
前記正常/外れ判定手段で外れと判定された多次元特徴量データおよび前記正常モデルの多次元特徴量データを学習し、前記外れと判定された多次元特徴量データの外れ原因を前記設備の異常原因として特定する異常原因特定手段と、を備える。
【0011】
(2)本発明の他の態様は、コンピュータにより診断対象の設備を診断して異常を検知する設備診断方法であって、
事前に前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データを学習することで正常モデルを作成する正常モデル生成ステップと、
新たに前記設備の計測データに基づき多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データについて前記正常モデルによって正常または外れを判定する正常/外れ判定ステップと、
前記正常/外れ判定ステップで外れと判定された多次元特徴量データおよび前記正常モデルの多次元特徴量データを学習し、前記外れと判定された多次元特徴量データの外れ原因を前記設備の異常原因として特定する異常原因特定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、診断対象の設備の異常を早期に検出するだけでなく、設備の異常原因を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る設備診断装置の構成図。
【
図4】同 実施例の異常原因分類記憶部の記憶データ図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る設備診断装置を説明する。この設備診断装置は、診断対象の設備の出力する多次元特徴量データを基に異常を早期に検知し、さらに設備の異常原因を特定する。
【0015】
≪構成例≫
(1)
図1に基づき前記設備診断装置の構成例を説明する。ここでは前記設備診断装置1は、例えばガスタービン,蒸気タービン,回転機,プラントなどの設備2を診断対象とする。
【0016】
具体的には前記設備診断装置1は、コンピュータにより構成され、通常のコンピュータのハードウェアリソース(例えばCPU,RAM・ROMなど主記憶装置,HDD・SSDなどの補助記憶装置)を備える。
【0017】
このハードウェアリソースとソフトウェアリソース(OS,アプリケーションなど)との協働の結果、前記設備診断装置1は、計測部4,計測値データ記録部5,多次元特徴量抽出部6,正常データ記憶部7,正常モデル作成部8,正常モデル記憶部9,正常/外れ判定部10,仮ラベル付与部11,正常/外れラベル付きデータ記憶部12,分類変数抽出部13,異常原因判定部14,異常原因分類記憶部15を実装する。
【0018】
(2)以下、前記各部4~15の詳細を説明する。ここでは前記各部5,7,9,12,15は、前記記憶装置上に構成されているものとする。また、設備2には各種のセンサ3が取り付けられ、各センサ3で設備状態が計測されている。
【0019】
このとき計測部4は、各センサ3の計測したアナログ値をA/D変換してデジタルデータ化する。ここでデジタルデータ化された計測データは、計測値データ記録部5に時系列に記録される。
【0020】
そして、多次元特徴量抽出部6は、計測値データ記録部5からセンサ3の計測データを取得し、取得した計測データから設備2の異常検出に必要な多次元特徴量を算出し、多次元特徴量データとする。ここで診断用の正常モデルを作成する際には、設備2の正常状態が明らか場合に設備2を事前に運転させて正常状態の多次元特徴量データを算出し、算出された正常状態の多次元特徴量データには正常ラベルが付与されて正常データ記憶部7に記憶される。
【0021】
この正常モデル作成部8は、正常データ記憶部7の記憶データ(正常状態の多次元特徴量データ)に基づき教師なし機械学習により正常モデルを作成し、作成された正常モデルを正常モデル記憶部9に記憶させる。なお、正常データ記憶部7の記憶データは、正常/外れラベル付きデータ記憶部12に出力されて記憶される。
【0022】
一方、診断時には多次元特徴量抽出部6は、運転状態の設備2から計測された計測データに基づき多次元特徴量を算出し、算出された多次元特徴量データを正常/外れ判定部10に出力する。この正常/外れ判定部10は、入力された多次元特徴量データについて、正常モデル記憶部9に記憶された正常モデルとの外れ値検知を行う。
【0023】
すなわち、診断対象として設備2を計測した計測データから算出された多次元特徴量データに対して前記正常モデルを用いて正常/外れを判定し、外れと判定された多次元特徴量データを仮ラベル付与部11に出力される。
【0024】
この仮ラベル付与部11は、外れと判定された多次元特徴量データ(外れ値)を入力データとし、該入力データに外れラベルを付与する。ここで外れラベルが付与された多次元特徴量データは、正常ラベルの付与された多次元特徴量データとともに正常/外れラベル付きデータ記憶部12に記憶される。
【0025】
さらに分類変数抽出部13は、正常/外れラベル付きデータ記憶部12の記憶データ、即ち外れと判定された多次元特徴量データと正常と判定された多次元特徴量データとに基づき教師あり機械学習を実施し、多次元特徴量の各変数について「正常」と「外れ」とに分類するのに寄与した重要度を算出する。ここで算出された重要度は、重要度ベクトルとして異常原因判定部14に出力する。
【0026】
このとき異常原因判定部14は、外れと判定された多次元特徴量の重要度ベクトルをもとに異常原因分類記憶部15にアクセスして外れ原因を特定する。この異常原因分類記憶部15には、設備2の診断前に事前に作成された対応表が記憶されている。
【0027】
この対応表には、
図2に示すように、設備2の異常原因と該異常原因の異常が発生したときの重要度ベクトルとの対応関係が記述されている。例えば異常原因「×××の故障」の重要度ベクトル「V_1」,同「○○○の故障」の重要度ベクトル「V_2」,同「△△△の故障」の重要度ベクトル「V_n」などの対応関係が記述されている。
【0028】
この対応表は、設備2の診断前に事前に作成されているものとする。作成方法としては、例えば診断対象の設備2のシミュレーションモデルを事前に作成し、該シミュレーションモデルから設備2の各種の異常を模擬する方法を用いることができる。この場合、模擬された各異常時のシミュレーションモデルからセンサ3と同様な計測データを取得し、取得された計測データを多次元特徴量データに変換する。この多次元特徴量データの各変数ついて重要度ベクトルを算出し、算出された重要度ベクトルを前記模擬された異常の異常原因と対応付ける。ただし、前記対応表の作成方法は、このような方法には限定されず、シミュレーションモデルではなく、他の方法を用いてもよいものとする。
【0029】
具体的には異常原因判定部14は、外れと判定された多次元特徴量の重要度ベクトルと前記対応表に記述された重要度ベクトルとを照合し、最も合致した重要度ベクトルの異常原因を前記対応表から取得する。この取得情報を外れ原因、即ち設備2の異常原因として出力する。
【0030】
≪実施例≫
図3に基づき前記設備診断装置1の実施例を説明する。この実施例では、回転機20を診断対象の設備2とし、前記設備診断装置1が回転機20の異常診断に使用されている。すなわち、前記設備診断装置1は、回転機20の状態を振動センサ21により計測して回転機20異常を検出している。
【0031】
ここでは前記設備診断装置1は、「正常モデル作成ステージ」と「診断ステージ」と「異常原因特定ステージ」の各ステージを実行することで回転機20の異常を検出する。以下、実施例をステージ毎に説明する。
【0032】
(1)正常モデル作成ステージ
前記設備診断装置1は、回転機20の診断前に正常/外れを判定するための正常モデルを作成する。この正常モデル作成ステージは、回転機20が正常であることが明らかな状態であることを前提とする。
【0033】
この前提の下、回転機20の運転時に振動センサ21により回転機20の振動状態が計測される。この振動センサ21の計測値が計測部4に送信されることで処理が開始される。以下、正常モデル作成ステージの各ステップ(図示省略)を説明する。
【0034】
S01,S02:処理が開始されると計測部4は、振動センサ21の計測したアナログ値をA/D変換してデジタルデータ化する(S01)。ここでデジタルデータ化された計測データを計測値データ記録部5に記録し、振動波形データとする(S02)。
【0035】
S03:多次元特徴量抽出部6は、計測値データ記録部5に記録された振動波形データを例えばフーリエ変換によりパワースペクトルに変換し、変換されたパワースペクトルの各周波数を変数とした多次元特徴量データを生成する。
【0036】
S04:多次元特徴量抽出部6は、S03で生成された多次元特徴量データに正常ラベルを付与し、正常データ記憶部7に記憶させる。この正常ラベルを付与された多次元特徴量データは、前述のように正常/外れラベル付きデータ記憶部12にも出力されて記憶される。なお、正常モデル作成ステージでは、S01~S04の処理を繰り返して実施し、正常データ記憶部7に回転機20の正常状態における多次元特徴量データを蓄積する。
【0037】
S05:正常モデル作成部8は、正常データ記憶部7に蓄積された多次元特徴量データに基づき1クラスの教師なし機械学習、例えば「One-classSVM」などの手法を用いて正常モデルを作成することができる。ここで作成された正常モデルを正常モデル記憶部9に記憶し、処理を終了する。
【0038】
(2)診断ステージ
前記設備診断装置1は、正常モデル記憶部9に記憶された正常モデルを利用して回転機20の振動状態を診断する。ここでは正常モデル作成ステージと同じく、振動センサ21が回転機20の振動状態を計測して計測値が計測部4に送信されることで処理が開始される。
【0039】
まず、S01~S03と同様な処理ステップを実施し、現在の回転機20の振動状態における多次元特徴量データを生成する。ここで生成された多次元特徴量データは、正常/外れ判定部10に出力される.
つぎに正常/外れ判定部10は、入力された多次元特徴データについて正常モデル記憶部に記憶された正常モデルを用いて正常/外れを判定する(S06:図示省略)。すなわち、多次元特徴量データが正常モデルに含まれれば正常と判定する一方、含まれなければ外れと判定する。ここで外れと判定された場合には回転機20が異常とみなされ、該外れと判定された多次元特徴量データ(外れ値)を仮ラベル付与部11に出力し、処理を終了する。
【0040】
(3)異常原因特定ステージ
前記設備診断装置1は、診断ステージにおいて外れと判定された多次元特徴量データの外れ原因を回転機20の異常原因として特定する。ここでは外れと判定された多次元特徴量データの仮ラベル付与部11への入力により処理が開始される。以下、異常原因特定ステージの各ステップ(図示省略)を説明する。
【0041】
S07:処理が開始されると仮ラベル付与部11は、入力された多次元特徴量データに外れラベルを付与し、正常/外れラベル付きデータ記憶部12に記憶させる。これにより正常/外れラベル付きデータ記憶部12には、正常/外れラベル付きの多次元特徴量データが蓄積される。
【0042】
S08:分類変数抽出部13は、正常/外れラベル付きデータ記憶部12を参照して正常/外れラベル付きの多次元特徴量データを取得する。その後、取得された正常/外れラベル付きの多次元特徴量データ群に基づき教師あり機械学習を行う。
【0043】
例えば「RandomForest」や「マハラノビス=タグチ法」などの手法を用いることができる。このような教師あり機械学習の結果、多次元特徴量データの各変数(ここでは周波数)について、S06で「正常」と「外れ」に分類するのに寄与した重要度、即ち重要度ベクトルが求められる。
【0044】
なお、外れラベル付きの多次元特徴量データの重要度ベクトルが異常原因判定部14に出力される。また、外れラベル付きの多次元特徴量データについては、重要度ベクトルを診断結果レポートに添付したり、ログとして記録に残すことが好ましい。
【0045】
S09:異常原因判定部14は、入力された重要度ベクトルをキーに異常原因分類記憶部15に記憶された対応表を参照して、外れラベル付きの多次元特徴量データの外れ原因を回転機20の異常原因を特定する。
【0046】
この対応表には、
図4に示すように、回転機20の異常原因と該異常原因の異常が発生したいときの重要度ベクトルとの対応関係が記述されている。例えば異常原因「軸受の摩耗」の重要度ベクトル「V_1={f1,f2,...,fM}」,同「回転機のアンバランス」の重要度ベクトル「V_2={f1,f2,...,fM}」,同「ミスアライメント」の重要度ベクトル「V_n={f1,f2,...,fM」などの対応関係が記述されている。
【0047】
この対応表は、前述の作成方法により作成され、回転機20の設計情報(寸法,回転数,曲数など)に基づき作成されたシミュレーションモデルをベースに作成される。すなわち、前記シミュレーションモデルから軸受の摩耗や回転機のアンバランスなど様々な異常が発生した時の振動波形データを模擬する。この模擬された振動波形データからフーリエ変換により異常発生時の多次元特徴量データを生成し、生成された多次元特徴量データに外れラベルを付与する。
【0048】
この外れラベル付き多次元特徴量データと正常ラベル付き多次元特徴量データとに基づきS08の教師あり機械学習を行って重要度ベクトルを求める。この重要度ベクトルと、前記模擬された異常の異常原因とを対応付けた情報が前記対応表に記述される。
【0049】
具体的には異常原因判定部14は、入力された重要度ベクトルと前記対応表の重要度ベクトルとのマッチングを行って、入力された重要度ベクトルに最もマッチする前記対応表の重要度ベクトルを探索する。
【0050】
このマッチングには、例えば重要度ベクトル同士の差のL2ノルム(二乗誤差の和の平方根)を用いることができる。この場合には、式(1)示す「E」の値が最小の重要度ベクトルをマッチするデータとする方法や、同「E」の値に閾値を設けて閾値以下の重要度ベクトルをマッチするデータとする方法を用いることができる。
【0051】
【0052】
式(1)中の「i」は異常原因のインデックスを示し、「j」は変数のインデックスを示し、「N」はベクトル長を示している。
【0053】
そして、前記マッチングの結果、入力された重要度ベクトルにマッチする重要度ベクトルのデータが前記対応表にあれば、それに対応する異常原因(外れ原因)を取得する。この取得情報を回転機20の異常原因としてモニタに表示し、併せて監視センターなどに通知する。
【0054】
一方、入力された重要度ベクトルにマッチする重要度ベクトルのデータが無ければ、回転機20について原因不明(未知)の異常発生と捉え、その旨をモニタ表示し、監視センターなどに通知する。このとき式(1)の「E」の値に閾値が設けられている場合に閾値以下の重要度ベクトルが無ければ原因不明(未知)とすることができる。一方、閾値以下の重要度ベクトルが複数あれば各重要度ベクトルに対応する異常原因を取得し、回転機20の複数の異常原因としてもよい。
【0055】
したがって、このような前記設備診断装置1によれば、例えば回転機20などの診断対象の設備2について異常を早期に検出でき、さらに異常原因を特定することもできる。すなわち、S06の外れ判定は、S01~S05に示すように正常データのみを学習した正常モデルに基づき判定され、正常と外れとを精度よく判定することができる。
【0056】
また、前記設備診断装置1によれば、S07~S09に示すように、S06の外れ判定後に外れ原因を設備2の異常原因として特定することができる。ここでは前記対応表に記述された既知の異常原因については、回転機20の診断時に特定され、この点でS06の正常と外れとの判定精度を悪化させることなく、異常原因の特定が可能となる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば異常原因分類記憶部15の対応表の作成にあたっては、回転機20のシミュレーションモデルではなく、回転機20の実機を用いて各種の異常が発生したときの振動波形データを模擬してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2…診断対象の設備
3…センサ
4…計測部
5…計測値データ記録部
6…多次元特徴量抽出部
7…正常データ記憶部
8…正常モデル作成部
9…正常モデル記憶部
10…正常/外れ判定部
11…仮ラベル付与部
12…正常/外れラベル付きデータ記憶部
13…分類変数抽出部
14…異常原因判定部
15…異常原因分類記憶部(記憶手段)
20…回転機
21…振動センサ