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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20220117BHJP
   B41J 2/155 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/155
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018013175
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019130699
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪谷 真吾
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/061981(WO,A1)
【文献】特開2017-177353(JP,A)
【文献】特開平11-058717(JP,A)
【文献】特開2014-028432(JP,A)
【文献】特開2003-285422(JP,A)
【文献】特開2001-301148(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012231(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックからなる基本色のインクと、イエロー、マゼンタ及びシアンとは色相が異なる特色のインクとを用いて、イエロー、マゼンタ及びシアンのうち少なくとも一色と前記特色とを混色させた部分を含む画像を記録媒体に記録可能なインクジェット記録装置であって、
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される記録媒体に対して、前記基本色の各々、第1の前記特色、及び当該第1の特色とは色相が異なる第2の前記特色のうち互いに異なる一色のインクをそれぞれ吐出する複数のインク吐出部と、
を備え、
前記第1の特色及び前記第2の特色は、色相環において、イエロー、マゼンタ及びシアンに対応する色相の位置で区分された3つの色相範囲のうち互いに異なる色相範囲に属し、
前記複数のインク吐出部の各々は、前記搬送部による記録媒体の搬送方向について互いに異なる位置に設けられ、
前記複数のインク吐出部のうち前記第1の特色のインクを吐出する第1のインク吐出部は、前記搬送方向について、前記複数のインク吐出部のうちイエロー、マゼンタ及びシアンのインクを吐出するインク吐出部の配置範囲の外側に配置されており、
前記複数のインク吐出部のうち前記第2の特色のインクを吐出する第2のインク吐出部は、前記搬送方向について前記配置範囲の前記第1のインク吐出部側とは反対側に配置されているインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1の特色は、両端がイエロー及びマゼンタに対応する色相である前記色相範囲に属し、
前記第2の特色は、両端がマゼンタ及びシアンに対応する色相である前記色相範囲に属する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1の特色はオレンジであり、前記第2の特色はブルーである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1の特色はレッドであり、前記第2の特色はバイオレットである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
イエロー、マゼンタ及びシアンのうち、前記第1の特色が属する前記色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色のインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第1のインク吐出部から最も遠い位置に設けられており、
イエロー、マゼンタ及びシアンのうち、前記第2の特色が属する前記色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色のインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第2のインク吐出部から最も遠い位置に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
シアンのインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第1のインク吐出部から最も遠い位置に設けられており、
イエローのインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第2のインク吐出部から最も遠い位置に設けられている請求項2から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記複数のインク吐出部は、前記第1の特色及び前記第2の特色とは色相が異なる第3の前記特色のインクを吐出する第3のインク吐出部を有し、
前記第3の特色は、前記第1の特色及び前記第2の特色のいずれか一方である所定の特色が属する前記色相範囲に属し、
前記第3のインク吐出部は、前記搬送方向について前記所定の特色のインクを吐出する前記インク吐出部に隣り合う位置に設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体は布帛である請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送部により搬送されている記録媒体に対し、インク吐出部に設けられたノズルからインクを吐出させて所望の位置に着弾させることで画像などを記録するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置の一つとして、互いに異なる色のインクを各々吐出する複数のインク吐出部が記録媒体の搬送方向について異なる位置に設けられ、搬送されている記録媒体に対して各インク吐出部から適切なタイミングでインクを吐出させることでカラー画像を記録することができるものがある。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、プロセスカラー(基本色)であるイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクを吐出するインク吐出部に加えて、イエロー、マゼンタ及びシアンとは色相が異なる特色のインクを吐出するインク吐出部をさらに設け、イエロー、マゼンタ及びシアンのうち少なくとも一色と当該特色とを混色させた色の画像も記録可能とすることで、記録画像の色再現性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。ここで、複数の色を混色させるためには、混色させる色のインク同士を記録媒体上の所定の近傍範囲内に着弾させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-88207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のインクジェット記録装置では、記録媒体の搬送にともなって、搬送方向に直交する幅方向についての記録媒体の位置にずれが生じてしまう(例えば、記録媒体が斜行してしまう)場合がある。ここで、搬送方向について異なる2点間における記録媒体の幅方向の相対的な位置ずれ量は、当該2点間の距離が大きいほど増大する傾向がある。
【0006】
記録媒体にこのような位置ずれが生じると、記録媒体への幅方向についてのインクの着弾位置にもずれが生じるため、複数のインク吐出部からそれぞれ吐出されたインク同士による所望の混色がなされず、記録画像における色ずれの発生に繋がる。特に、特色のインクを用いるインクジェット記録装置では、使用するインクの色数、すなわちインク吐出部の数が多いほど複数のインク吐出部の搬送方向についての配置範囲が大きくなる。このため、搬送方向についての配置間隔が大きいインク吐出部の間でインクの幅方向の着弾位置ずれが大きくなりやすく、当該着弾位置ずれに起因する色ずれが顕著となりやすいという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、記録画像における色ずれを抑制することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェット記録装置の発明は、
イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックからなる基本色のインクと、イエロー、マゼンタ及びシアンとは色相が異なる特色のインクとを用いて、イエロー、マゼンタ及びシアンのうち少なくとも一色と前記特色とを混色させた部分を含む画像を記録媒体に記録可能なインクジェット記録装置であって、
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される記録媒体に対して、前記基本色の各々、第1の前記特色、及び当該第1の特色とは色相が異なる第2の前記特色のうち互いに異なる一色のインクをそれぞれ吐出する複数のインク吐出部と、
を備え、
前記第1の特色及び前記第2の特色は、色相環において、イエロー、マゼンタ及びシアンに対応する色相の位置で区分された3つの色相範囲のうち互いに異なる色相範囲に属し、
前記複数のインク吐出部の各々は、前記搬送部による記録媒体の搬送方向について互いに異なる位置に設けられ、
前記複数のインク吐出部のうち前記第1の特色のインクを吐出する第1のインク吐出部は、前記搬送方向について、前記複数のインク吐出部のうちイエロー、マゼンタ及びシアンのインクを吐出するインク吐出部の配置範囲の外側に配置されており、
前記複数のインク吐出部のうち前記第2の特色のインクを吐出する第2のインク吐出部は、前記搬送方向について前記配置範囲の前記第1のインク吐出部側とは反対側に配置されている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の特色は、両端がイエロー及びマゼンタに対応する色相である前記色相範囲に属し、
前記第2の特色は、両端がマゼンタ及びシアンに対応する色相である前記色相範囲に属する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の特色はオレンジであり、前記第2の特色はブルーである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の特色はレッドであり、前記第2の特色はバイオレットである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
イエロー、マゼンタ及びシアンのうち、前記第1の特色が属する前記色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色のインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第1のインク吐出部から最も遠い位置に設けられており、
イエロー、マゼンタ及びシアンのうち、前記第2の特色が属する前記色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色のインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第2のインク吐出部から最も遠い位置に設けられている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
シアンのインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第1のインク吐出部から最も遠い位置に設けられており、
イエローのインクを吐出する前記インク吐出部は、前記配置範囲のうち前記搬送方向について前記第2のインク吐出部から最も遠い位置に設けられている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数のインク吐出部は、前記第1の特色及び前記第2の特色とは色相が異なる第3の前記特色のインクを吐出する第3のインク吐出部を有し、
前記第3の特色は、前記第1の特色及び前記第2の特色のいずれか一方である所定の特色が属する前記色相範囲に属し、
前記第3のインク吐出部は、前記搬送方向について前記所定の特色のインクを吐出する前記インク吐出部に隣り合う位置に設けられている。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録媒体は布帛である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、記録画像における色ずれを抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】インクジェット記録装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図4】ヘッドユニットの配列順序を示す図である。
図5】インクの色の色相環における位置を示す図である。
図6】ヘッドユニットの配列順序の他の例を示す図である。
図7】変形例1におけるインクの色の色相環における位置を示す図である。
図8】変形例1におけるヘッドユニットの配列順序を示す図である。
図9】変形例2におけるヘッドユニットの配列順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、搬送部10と、記録部20と、制御部30などを備える。
【0020】
搬送部10は、駆動ローラー11と、従動ローラー12と、搬送ベルト13(搬送部材)と、搬送モーター14と、ロータリーエンコーダー15と、押圧ローラー16と、剥がしローラー17などを備える。
駆動ローラー11は、搬送モーター14の駆動によって回転軸を中心に回転する。搬送ベルト13は、駆動ローラー11及び従動ローラー12(以下ではまとめて搬送ローラーとも記す)により内側が支持された輪状のベルトであり、駆動ローラー11が回転動作するのに従って周回移動する。従動ローラー12は、搬送ベルト13の周回移動に伴って駆動ローラー11の回転軸と平行な回転軸を中心に回転する。搬送ベルト13としては、搬送ローラーとの接触面で柔軟に屈曲し、かつ確実に記録媒体Mを支持する材質のものが用いられ、例えば、ゴムなどの樹脂製のベルトや、スチールベルトなどを用いることができる。この搬送ベルト13は、記録媒体Mが吸着される材質及び/又は構成を有することで、より記録媒体Mを安定して搬送ベルト13に載置可能とすることができる。
【0021】
搬送モーター14は、制御部30からの制御信号に応じた回転速度で駆動ローラー11を回転動作させる。搬送モーター14は、駆動ローラー11を通常の搬送方向とは反対方向に逆回転させることも可能となっている。搬送部10は、搬送ベルト13の搬送面上に記録媒体Mが載置された状態で、駆動ローラー11の回転速度に応じた速度で搬送ベルト13が周回移動することで記録媒体Mを搬送ベルト13の移動方向(搬送方向)に搬送する搬送動作を行う。
なお、記録媒体Mの搬送は、例えば搬送部10によるインク吐出が行われる期間一時停止させるといった態様で間欠的に行われても良い。搬送部10による搬送動作は、上記のように搬送を一時停止させる動作を含むものとする。
【0022】
本実施形態では、記録媒体Mとして布帛が用いられる。記録媒体Mは、記録媒体Mが巻き取られたロール(記録媒体巻出部)から巻き出されて(繰り出されて)搬送ベルト13上に供給される。本実施形態の搬送部10は、搬送方向と直交する幅方向の幅が約2m、ロール全体での長さが約4000mの記録媒体Mを搬送可能に構成されている。なお、搬送部10により、幅方向の幅が2mより小さい記録媒体Mを搬送しても良い。また、搬送部10は、幅方向の幅が2mより大きい記録媒体Mを搬送可能な構成とされていても良く、また、搬送可能な記録媒体Mの幅方向の最大幅が2mより小さい構成とされていても良い。
なお、記録媒体Mは、上述の布帛に限定されず、紙やシート状の樹脂等、表面に吐出されたインクを固着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。また、ロールから巻き出される長尺の記録媒体Mに代えて、枚葉紙等の短尺の記録媒体Mが用いられても良い。
【0023】
ロータリーエンコーダー15は、駆動ローラー11が所定の角度回転するごとにパルス信号(検出信号)を制御部30及びヘッド制御部24(図3)に出力する。ロータリーエンコーダー15の構成は、特には限られないが、例えば、所定の円周上に配列された複数のスリットが設けられ駆動ローラー11とともに回転するコードホイールと、当該コードホイールのスリットに光を照射する発光部と、発光部から射出されスリットを通過した光を検出する受光部とを備え、受光部による光の検出結果に基づくパルス信号を制御部30及びヘッド制御部24に出力する構成とすることができる。ここで、パルス信号は、例えば、スリット通過光の受光周期と同一の周期を有し互いに位相が90度異なる2つの方形派(A相及びB相)の各々における立ち上がり及び立ち下りのタイミングで出力されるものとすることができる。このような構成では、A相及びB相の位相により駆動ローラー11の回転方向を検出することもできる。
【0024】
押圧ローラー16は、搬送ベルト13の搬送面に供給される記録媒体Mを当該搬送面に対して押圧することでしわなどの搬送面からの浮きを除去する。
剥がしローラー17は、搬送ベルト13に吸着された状態で搬送されてきた記録媒体Mを所定の圧力で引っ張ることで、記録媒体Mを搬送面から引き剥がして図示略の後処理装置へ送る。本実施形態では、後処理装置として、画像が記録された記録媒体Mを乾燥させる乾燥装置、発色を良くし、またインクを固着させるために記録媒体Mを蒸す装置、汚れや未固着のインク等を洗い落す洗浄装置、記録媒体Mを所定の位置で裁断する裁断装置などが設けられている。
【0025】
記録部20は、6つのヘッドユニット21(インク吐出部)を備える。各ヘッドユニット21は、画像データに基づいてインクを吐出するインク吐出動作を各々行う複数の記録素子を有し、当該複数の記録素子がインク吐出動作を行うことにより、搬送部10により搬送される記録媒体M上に画像を記録する画像記録動作を行う。6つのヘッドユニット21の各々は、互いに異なる色のインクを吐出する。具体的には、各ヘッドユニット21は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、オレンジ(O)、ブルー(B)の6色のうち互いに異なる一色のインクを吐出する。
【0026】
これらの6色のうち、減法混色による色の表現に用いられる3原色(Y、M及びC)と、当該3原色の重ね合わせのみでは実際には得られ難いブラック(K)とからなる4色は、プロセスカラー(基本色)と呼ばれ、インクジェット記録装置をはじめとする各種の画像形成装置による画像の記録に用いられる基本的な色の組合せである。
また、O及びBは、プロセスカラーのうちY、M及びCとは色相が異なる色であり、特色と呼ばれる。本実施形態では、特色は、プロセスカラーのうちY、M及びCのうち少なくとも一色との混色により、プロセスカラーとは異なる色を表現するために用いられる。
このように、本実施形態のインクジェット記録装置1では、プロセスカラーのインクと、O(第1の特色)及びB(第2の特色)のインクとを用いることで、プロセスカラー同士の混色により得られる色に加えて、Y、M及びCのうち少なくとも一色とO又はBとの混色により得られる色を表現することができるようになっている。
ここで、インクジェット記録装置1による画像形成における混色は、異なる色のインクを記録媒体M上の所定の近傍範囲内に着弾させることで、記録媒体Mの(通常の巨視的な視点からの)観察者には当該異なる色同士が混ぜ合わされた色に見える効果を用いて表現される。したがって、必ずしも記録媒体M上で液体状態のインク同士が合一するようにインクを吐出させる必要はなく、近接位置に(又は少なくとも一部が重なる位置に)着弾した異なる色のインク同士が互いに別個のタイミングで固化する態様で(すなわち、液体状態で合一しない態様で)インクを吐出させても良い。
【0027】
また、本実施形態では、綿や麻といった天然繊維などの記録媒体Mに対して好適に用いられる反応染料インクが用いられている。反応染料インクは、記録媒体Mに吐出した後に蒸し処理(加熱及び加湿)を行うことで染料分子が記録媒体の分子と共有結合し、安定した状態で記録媒体Mを着色させることができる。
【0028】
6つのヘッドユニット21は、記録媒体Mの搬送方向について互いに異なる位置に、所定の間隔を開けて配列されている。このような構成において、各ヘッドユニット21は、記録素子から吐出するインクの色に対応する画像を形成し、インクジェット記録装置1は、Y、M、C、K、O、Bの画像を記録媒体M上の同一領域に重ねて記録することにより記録対象のカラー画像を記録する。
なお、6つのヘッドユニット21の配列順序については、後に詳述する。
【0029】
図2は、ヘッドユニット21の構成を示す模式図である。図2では、ヘッドユニット21の全体を搬送ベルト13の搬送面に相対する側から見た平面図が示されている。
ヘッドユニット21は、インクを吐出する複数の記録素子がそれぞれ設けられた54個の記録ヘッド22を備える。各記録ヘッド22では、幅方向について約72mmの幅に亘って連続するように記録素子が配列されている。記録ヘッド22に設けられた記録素子は、それぞれ、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル23とを有する。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズル23からインクを吐出する。図2では、記録素子におけるノズル23のインク吐出口の位置が示されている。なお、各記録ヘッド22における記録素子の配列方向は、搬送方向に直交する幅方向に限られず、直角以外の角度で搬送方向と交差する方向であっても良い。
【0030】
ヘッドユニット21では、記録素子のノズル23が幅方向について交互に配置されるような位置関係で搬送方向に隣接して配置された2つの記録ヘッド22により、ヘッドモジュール22Mが構成されている。また、ヘッドユニット21では、27個のヘッドモジュール22Mが、ノズル23からインクを吐出可能な範囲が幅方向についての画像の記録幅(約2m)に亘って連続的に繋がるような位置関係で、幅方向についての配置範囲が互いに一部重複するように千鳥格子状に配置されてラインヘッドが構成されている。ヘッドユニット21は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で画像を記録する。なお、ヘッドモジュール22Mの数(従って記録ヘッド22の数)は、記録媒体Mの幅方向の長さなどに応じて適宜変更することができる。
【0031】
図3は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、搬送部10に設けられた搬送駆動部101及びロータリーエンコーダー15と、ヘッドユニット21に設けられたヘッド制御部24及びヘッド駆動部221と、制御部30と、画像処理部41と、操作表示部42と、入出力インターフェース43と、バス44などを備える。
【0032】
搬送駆動部101は、制御部30から供給される制御信号に基づいて搬送モーター14に駆動信号を供給して駆動ローラー11を所定の回転速度で回転させることにより、搬送ベルト13を所定の移動速度で移動させる。
【0033】
ヘッド制御部24は、制御部30からの制御信号や、ロータリーエンコーダー15から入力されたパルス信号のカウント数に応じた適切なタイミングで、ヘッド駆動部221に対して各種制御信号や画像データを出力する。
ヘッド駆動部221は、ヘッド制御部24から入力される制御信号や画像データに応じて記録ヘッド22の記録素子に対して圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給し、各ノズル23の開口部からインクを吐出させる。
【0034】
制御部30は、CPU31(Central Processing Unit)、RAM32(Random Access Memory)、ROM33(Read Only Memory)及び記憶部34を有する。
【0035】
CPU31は、ROM33に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM32に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU31は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0036】
RAM32は、CPU31に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM32は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0037】
ROM33は、CPU31により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM33に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0038】
記憶部34には、入出力インターフェース43を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部34としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0039】
画像処理部41は、制御部30による制御下で、記憶部34に記憶された画像データに対して所定の画像処理を行い、画像処理後の画像データを記憶部34に記憶させる。画像処理部41が行う画像処理としては、外部装置2から入力され記憶部34に記憶されたPDL(Page Description Language)データをラスター形式の画像データに変換するラスタライズ処理、R、G、Bの各色成分の画像データをC、M、Y、K、O、Bの各色成分の画像データに変換する色変換処理、画像データに対するハーフトーン処理などがある。このように生成されたC、M、Y、K、O、Bの画像データは、6つのヘッドユニット21のうちインクの色が対応するヘッドユニット21に供給され、制御部30及びヘッド制御部24による制御下で、当該供給された画像データに基づいてインク吐出動作が行われる。
なお、画像処理部41を設けず、制御部30において上記各種の画像処理を行っても良い。また、インクジェット記録装置1の外部に設けられた外部装置2において上記各種の画像処理を行い、処理後の画像データを記憶部34に記憶させるようにしても良い。
【0040】
操作表示部42は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部42は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部30に出力する。
【0041】
入出力インターフェース43は、外部装置2と制御部30との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース43は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0042】
バス44は、制御部30と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0043】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース43を介してプリントジョブ及び画像データ等を制御部30に供給する。
【0044】
なお、インクジェット記録装置1の構成要素は上記に限られず、必要に応じて他の構成要素が設けられていても良い。例えば、搬送方向についてヘッドユニット21の上流側に、記録媒体Mの浮きといった載置異常や記録媒体M上に付着した異物などの検出を行うためのセンサー(異状検知部)を設けても良い。
【0045】
次に、6つのヘッドユニット21の配列順序について説明する。
図4は、本実施形態におけるヘッドユニット21の配列順序を示す図である。この図では、6つのヘッドユニット21の搬送方向における配置位置(搬送方向上流側から順にP1~P6とする)と、各配置位置P1~P6に配置されたヘッドユニット21により吐出されるインクの色との関係が示されている。図4に示されるとおり、本実施形態では、O、Y、M、K、C、Bのインクを吐出するヘッドユニット21が搬送方向上流側からこの順に配列されている。
このような順序でヘッドユニット21を配置することにより、記録画像における色ずれの発生を抑制することができる。以下では、その理由について説明する。
【0046】
インクジェット記録装置1では、別個のヘッドユニット21からそれぞれ吐出された異なる色のインクが所望の位置に着弾されなかった場合には、当該異なる色同士の混色が適切に行われなくなって記録画像における色ずれの発生に繋がる。
具体的には、本実施形態のインクジェット記録装置1では、搬送ベルト13に蛇行が生じていると、搬送方向について異なる位置の間で記録媒体Mの幅方向についての位置ずれが生じ(すなわち、記録媒体Mの斜行が生じ)、別個のヘッドユニット21からそれぞれ吐出されたインクの幅方向についての着弾位置が相対的にずれて上記の色ずれが発生する。搬送ベルト13の蛇行は、当該搬送ベルト13が搬送ローラーから受ける力の幅方向についての分布の不均衡などに起因して、搬送ローラーにおける搬送ベルト13の接触範囲が幅方向にずれることなどにより生じる。
搬送ベルト13の蛇行等に起因して記録媒体Mが斜行している場合、記録媒体Mの幅方向についての位置ずれ量は、搬送方向についての距離が大きい2点間ほど大きくなる傾向がある。したがって、6つのヘッドユニット21のうち搬送方向についての配置間隔が大きいヘッドユニット21からそれぞれ吐出されたインクほど、幅方向についての着弾位置がずれやすく、記録画像における色ずれに繋がりやすい。
【0047】
他方で、インクジェット記録装置1で用いられる6色のインクには、互いに混色させずに用いられる色の組み合わせも存在し、これらの組み合わせの色同士では、インクの着弾位置にずれが生じても記録画像における色ずれには繋がらない。どのような色同士を混色させずに用いるかについては、色相環における色相の相対関係に基づいて説明することができる。
【0048】
図5は、6つのヘッドユニット21から吐出されるインクの色の色相環における位置を示す図である。
ここで、色相環は、色の三要素の一つである色相を、連続的に変化して知覚されるような順序で円環状に配置したものである。図5の色相環では、Y、R(レッド)、M、B、C、G(グリーン)が時計回りでこの順に60度間隔で配置されている。以下では、色相環において、Y、M及びCに対応する色相の位置で区分された3つの範囲を色相範囲A1~A3とする。このうち色相範囲A1は、Y及びMに対応する色相の位置で区分された範囲であり、色相範囲A2は、M及びCに対応する色相の位置で区分された範囲であり、色相範囲A3は、C及びYに対応する色相の位置で区分された範囲である。
【0049】
本実施形態のインクジェット記録装置1で用いられている特色のうちOは、色相範囲A1に属し、Bは、Oとは異なる色相範囲A2に属している。
本実施形態で用いられている反応染料インクでは、当該反応染料インクに使用可能な染料の色の関係上、色相範囲A1の中ではオレンジの色相を有するインクが調製しやすく、また色相範囲A2の中ではブルーの色相を有するインクが調製しやすい。このため、本実施形態では、2つの特色としてO及びBが用いられている。
ここで、特色として用いられるオレンジは、例えば色相がマンセル色相環において7.5R~7.5YRの範囲内にある色である。また、特色として用いられるブルーは、例えば色相がマンセル色相環において7.5B~7.5PBの範囲内にある色である。
【0050】
インクジェット記録装置1による画像の記録では、色相環のうちある色相範囲に属する特色は、当該特色が属する色相範囲の両端の色相に対応するプロセスカラー(以下では、便宜上「近傍プロセスカラー」と記す)との間で混色させて用いる一方、通常、当該特色が属する色相範囲の両端の色相とは異なる色相のプロセスカラー(以下では、便宜上「反対プロセスカラー」と記す)との間では混色させずに用いる。これは、特色と反対プロセスカラーとを混色させると無彩色に近い色となるため、混色による記録画像の色再現性の向上には寄与しないためである。
具体的には、本実施形態の特色のうちOは、Oについての近傍プロセスカラーであるY及びMと混色させて用いる一方、反対プロセスカラーであるCとは混色させずに用いる。同様に、Bは、Bについての近傍プロセスカラーであるM及びCと混色させて用いる一方、反対プロセスカラーであるYとは混色させずに用いる。
【0051】
さらに、インクジェット記録装置1による画像の記録では、互いに異なる色相範囲に属する特色同士も、混色させずに用いる。これは、特色及び反対プロセスカラーを混色させない理由と同様の理由による。したがって、本実施形態の2つの特色であるO及びBは、互いに混色させずに用いる。
【0052】
上述した画像処理部41よる色変換処理では、上記の混色の可否に係る条件が満たされるようにC、M、Y、K、O、Bの各画像データが生成される。具体的には、互いに混色させないO及びCの画像データの各々では、O及びCのインクが混色して認識される近傍範囲に吐出されないような位置関係で、インク吐出に対応する画素(オン画素)が配置される。同様に、B及びY、O及びBの画像データの組み合わせにおいても、同様の位置関係でオン画素が配置される。
【0053】
図4に示されるとおり、本実施形態のインクジェット記録装置1では、互いに混色させて用いられることのない2つの特色(O及びB)を吐出するヘッドユニット21が、搬送方向における両端(P1、P6)に配置されている。すなわち、2つの特色のうちOのインクを吐出するヘッドユニット21O(第1のインク吐出部)は、搬送方向について、Y、M及びCのインクを吐出するヘッドユニット21Y、21M、21Cの配置範囲の外側に配置され、2つの特色のうちBのインクを吐出するヘッドユニット21B(第2のインク吐出部)は、搬送方向についてヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のヘッドユニット21O側とは反対側に配置されている。
この結果、幅方向のインクの着弾位置ずれが大きくなる搬送方向上流側端部及び下流側端部のヘッドユニット21からは、混色させることのないO及びBのインクがそれぞれ吐出されるため、搬送ベルト13の蛇行によって、これらのヘッドユニット21から吐出されたインクの幅方向の着弾位置ずれが生じても、記録画像における色ずれには繋がらないようになっている。
また、このような配置の結果、混色させる頻度の高いY、M、Cのインクを吐出するヘッドユニット21Y、21M、21C同士を、互いにを近接させて配置することができる(P2、P3、P5)。このため、互いに混色させるプロセスカラーのインクについて幅方向の着弾位置ずれを小さくすることができ、記録画像における色ずれを抑制することができる。
【0054】
また、2つの特色のうちOについての反対プロセスカラーであるCのインクを吐出するヘッドユニット21Cは、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向についてヘッドユニット21Oの位置(P1)から最も遠い位置(P5)に設けられている。
また、2つの特色のうちBについての反対プロセスカラーであるYのインクを吐出するヘッドユニット21Yは、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向についてヘッドユニット21Bの位置(P6)から最も遠い位置(P2)に設けられている。
この結果、搬送方向についての間隔が大きい位置関係のヘッドユニット21から、混色させることのない特色及び反対プロセスカラーのインクがそれぞれ吐出されることとなるため、搬送ベルト13の蛇行によって、これらのヘッドユニット21から吐出されたインクの幅方向の着弾位置ずれが生じても、記録画像における色ずれに繋がらないようになっている。
また、このような配置の結果、特色のインクを吐出するヘッドユニット21と、当該特色と混色させる近傍プロセスカラーのインクを吐出するヘッドユニット21とを相対的に近づけることができる。具体的には、互いに混色させるO、Y、Mのインクを吐出するヘッドユニット21O、21Y、21Mの配置位置を近接させることができ(P1~P3)、また、互いに混色させて用いられるB、C、Mのインクを吐出するヘッドユニット21B、21C、21Mの配置位置を近接させることができる(P3、P5、P6)。このため、互いに混色させる特色及びプロセスカラーのインクについて幅方向の着弾位置ずれを小さくすることができ、記録画像における色ずれを抑制することができる。
【0055】
なお、図6に示されるように、6つのヘッドユニット21の配列順序を図4とは逆にしても良い。このような配列順序によっても、図4と同一の色ずれ抑制効果が得られる。
【0056】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。本変形例では、使用する特色が上記実施形態とは異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
本変形例では、インク中に染料が分散された状態となっている分散染料インクが用いられる。分散染料インクは、ポリエステルやアセテートといった化学染料に対して好適に用いられる。
また、本変形例では、特色として、レッド(R)及びバイオレット(V)が用いられる。
【0057】
図7は、本変形例の6つのヘッドユニット21から吐出されるインクの色の色相環における位置を示す図である。この図に示されるように、本変形例で用いられる特色のうち、Rは、上記実施形態のOと同一の色相範囲A1に属し、Vは、上記実施形態のBと同一の色相範囲A2に属している。このため、上記実施形態と同様の理由により、本変形例の特色のうちRは、Y及びMとは混色させて用いる一方、Cとは混色させずに用いる。また、Vは、M及びCと混色させて用いる一方、Yとは混色させずに用いる。また、R及びVの特色同士は、混色させずに用いる。
【0058】
分散染料インクでは、当該分散染料インクに使用可能な染料の色の関係上、色相範囲A1の中ではレッドの色相を有する色のインクが調製しやすく、また色相範囲A2の中ではバイオレットの色相を有する色のインクが調製しやすい。このため、本実施形態では、2つの特色としてR及びVが選択されている。
ここで、特色として用いられるレッドは、例えば色相がマンセル色相環において7.5RP~7.5Rの範囲内にある色である。また、特色として用いられるバイオレットは、例えば色相がマンセル色相環において7.5PB~7.5Pの範囲内にある色である。
【0059】
図8は、本変形例におけるヘッドユニット21の配列順序を示す図である。
本変形例では、図8(a)に示されるように、R、Y、M、K、C、Vのインクを吐出するヘッドユニット21が搬送方向上流側からこの順に配列されている。
図8(a)の配列順序は、上記実施形態の図4の配列順序におけるOを、Oと同一の色相範囲A1に属するRに入れ換え、Bを、Bと同一の色相範囲A2に属するVに入れ替えたものに相当する。このような配列順序とすることで、互いに混色させることのないRとV、RとC、YとVのインクを吐出するヘッドユニット21同士を搬送方向について離れた位置に配置することができる。よって、これらの組み合わせのインクの着弾位置が搬送ベルト13の蛇行によりずれたとしても、記録画像における色ずれに繋がらないようになっている。
なお、図8(b)に示されるように、6つのヘッドユニット21の配列順序を図8(a)とは逆にしても良い。
【0060】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例では、O、R及びBの3色の特色のインクが用いられる。したがって、記録部20は、上記実施形態の6つのヘッドユニット21に、Rのインクを吐出するヘッドユニット21Rを加えた7つのヘッドユニット21を有する構成とされる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0061】
図9は、本変形例におけるヘッドユニット21の配列順序を示す図である。
この図に示されるように、本変形例では、R、O、Y、M、K、C、Bのインクを吐出するヘッドユニット21が搬送方向上流側からこの順に配列されている。本変形例の3つの特色のうち、O及びRは、同一の色相範囲A1に属しているため、混色させて用いられることがある。このため、O及びRのインクを吐出するヘッドユニット21O及びヘッドユニット21Rは、互いに近接する位置、すなわち、図9のように搬送方向について隣り合う位置に配置される。
なお、図9においてヘッドユニット21O及びヘッドユニット21Rの位置を入れ替えても良い。また、7つのヘッドユニット21の配列順序を図9とは逆にしても良い。
【0062】
上記では、O、R及びBの3色の特色のインクを用いる例を挙げて説明したが、本変形例の態様はこれに限られず、3色以上の特色のうち2色以上が同一の色相範囲に属する任意の態様が本変形例に含まれる。これらのいずれの態様においても、同一の色相範囲に属する特色のインクを吐出するヘッドユニット21を互いに隣り合う位置関係で設けることが望ましい。例えばO、B及びVの特色を用いる場合には、B及びVのインクを吐出するヘッドユニット21B及びヘッドユニット21Vを互いに隣り合う位置に配置すれば良い。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、Y、M、C及びKからなるプロセスカラー(基本色)のインクと、Y、M及びCとは色相が異なる特色のインクとを用いて、Y、M及びCのうち少なくとも一色と特色とを混色させた部分を含む画像を記録媒体Mに記録可能なインクジェット記録装置1であって、記録媒体Mを搬送する搬送部10と、搬送部10により搬送される記録媒体Mに対して、プロセスカラーの各々、O(第1の特色)、及びOとは色相が異なるB(第2の特色)のうち互いに異なる一色のインクをそれぞれ吐出する複数のヘッドユニット21と、を備え、O及びBの各特色は、色相環において、Y、M及びCに対応する色相の位置で区分された3つの色相範囲のうち互いに異なる色相範囲に属し、複数のヘッドユニット21の各々は、搬送部10による記録媒体Mの搬送方向について互いに異なる位置に設けられ、複数のヘッドユニット21のうちOのインクを吐出するヘッドユニット21O(第1のインク吐出部)は、搬送方向について、複数のヘッドユニット21のうちY、M及びCのインクを吐出するヘッドユニット21の配置範囲の外側に配置されており、複数のヘッドユニット21のうちBのインクを吐出するヘッドユニット21B(第2のインク吐出部)は、搬送方向について上記配置範囲のヘッドユニット21O側とは反対側に配置されている。
【0064】
このような構成における2つの特色(O及びB)は、色相環において間に少なくとも一色のプロセスカラーを挟む関係の色相を有する。このような色相関係の2つの特色は、当該特色が属する色相範囲の両端のプロセスカラーと混色させることで記録画像の色再現性の向上に寄与する。一方で、上記2つの特色同士を直接混色させても上記色再現性の向上効果が補強されないため、通常、これらの特色同士は混色させずに用いられる。
上記構成では、このような特色のインクを吐出するヘッドユニット21O及びヘッドユニット21Bが、プロセスカラーのヘッドユニット21Y、21M及び21Cを間に挟む位置に配置される。この配置では、ヘッドユニット21Oとヘッドユニット21Bとの間隔が大きいため、これらの各ヘッドユニット21の位置の間で搬送ベルト13の蛇行等による記録媒体Mの幅方向についての位置ずれが大きくなりやすい。しかしながら、ヘッドユニット21O及びヘッドユニット21Bから互いに混色させないインクがそれぞれ吐出されるため、記録媒体Mの位置ずれに起因して幅方向のインクの着弾位置に相対的なずれが生じても、記録画像における色ずれに繋がらないようにすることができる。
また、プロセスカラーのヘッドユニット21C、21M及び21Yの配置範囲の一方側に2つの特色のヘッドユニット21をまとめて配置する従来の配置では、一方の特色と、C、M及びYとの間に他方の特色が挟まる位置関係でヘッドユニット21が配置されるため、当該一方の特色のヘッドユニット21と、C、M及びYのヘッドユニット21との間隔が大きくなる問題があった。これに対し、上記構成のように2つの特色のヘッドユニット21O、21Bをヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲の両側に配置することで、各特色について、C、M及びYのヘッドユニット21との間隔を小さくすることができる。よって、互いに混色させる特色のインク及びプロセスカラーのインクについて幅方向の着弾位置のずれを小さくすることができ、記録画像における色ずれを抑制することができる。
また、上記構成のようにヘッドユニット21O及びヘッドユニット21Bが配置される結果、プロセスカラーのインクを吐出するヘッドユニット21Y、21M、21C同士の相対距離を小さくすることができるため、互いに混色させるY、M及びCのインクについて幅方向の着弾位置のずれを小さくすることができ、記録画像における色ずれを抑制することができる。
【0065】
また、第1の特色として、両端がY及びMに対応する色相である色相範囲A1に属する色を用い、第2の特色として、両端がM及びCに対応する色相である色相範囲A2に属する色を用いた場合には、上記の特徴を有する特色の反応染料インクや分散染料インクを容易に調製することができる。
【0066】
また、第1の特色をOとし、第2の特色をBとした場合には、上記の特徴を有する特色の反応染料インクを容易に調製することができる。
【0067】
また、第1の特色をRとし、第2の特色をVとした場合には、上記の特徴を有する特色の分散染料インクを容易に調製することができる。
【0068】
また、Y、M及びCのうち、第1の特色が属する色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色(反対プロセスカラー)のインクを吐出するヘッドユニット21は、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向について第1のインク吐出部に対応するヘッドユニット21から最も遠い位置に設けられており、Y、M及びCのうち、第2の特色が属する色相範囲の両端の色相とは異なる色相の色(反対プロセスカラー)のインクを吐出するヘッドユニット21は、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向について第2のインク吐出部に対応するヘッドユニット21から最も遠い位置に設けられている。具体的には、Cのインクを吐出するヘッドユニット21Cは、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向についてヘッドユニット21Oから最も遠い位置に設けられており、Yのインクを吐出するヘッドユニット21Yは、ヘッドユニット21Y、21M及び21Cの配置範囲のうち搬送方向についてヘッドユニット21Bから最も遠い位置に設けられている。
特色と、当該特色についての反対プロセスカラーとは、混色させても上述した色再現性の向上効果が補強されないため、通常、互いに混色させずに用いられる。
上記構成によれば、特色及び反対プロセスカラーのインクをそれぞれ吐出する一対のヘッドユニット21の間隔が大きくなるため、これらの各ヘッドユニット21の位置の間で搬送ベルト13の蛇行等による記録媒体Mの幅方向についての位置ずれが大きくなりやすい。しかしながら、これらの各ヘッドユニット21から、混色させることのない特色及び反対プロセスカラーのインクがそれぞれ吐出されるため、記録媒体Mの位置ずれに起因して幅方向のインクの着弾位置に相対的なずれが生じても、記録画像における色ずれに繋がらないようにすることができる。
また、特色及び反対プロセスカラーのインクをそれぞれ吐出する一対のヘッドユニット21が上記のように配置される結果、特色のインクを吐出するヘッドユニット21と、当該特色と混色させる近傍プロセスカラーのインクを吐出するヘッドユニット21とを相対的に近づけることができる。このため、互いに混色させる特色及びプロセスカラーのインクについて幅方向の着弾位置ずれを小さくすることができ、記録画像における色ずれを抑制することができる。
【0069】
また、変形例2に係るインクジェット記録装置1では、複数のヘッドユニット21は、第1の特色(O)及び第2の特色(B)とは色相が異なる第3の特色(R)のインクを吐出するヘッドユニット21Rを有し、第3の特色は、第1の特色及び第2の特色のいずれか一方である所定の特色が属する色相範囲に属し、ヘッドユニット21Rは、搬送方向について上記所定の特色のインクを吐出するヘッドユニット21に隣り合う位置に設けられている。このような構成によれば、記録画像における色ずれを抑制しつつ、より多くの特色を用いることで記録画像の色再現性をさらに向上させることができる。
【0070】
また、布帛の記録媒体Mを用いる場合には、プロセスカラーと特色とを混色させることが色再現性の向上のために効果的であるところ、上記の構成を適用することで、色ずれを抑制して所望の色再現性向上効果を得ることができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、特色は、上記実施形態及び各変形例に示したものに限られず、Y、M及びCとは色相が異なり、かつY、M及びCのうち少なくとも一色と混色させて用いる他の任意の色を特色として用いても良い。例えば、図5の色相範囲A3に属する色(グリーン等)を用いても良い。
なお、互いに異なる色相範囲に属する3色の特色を用いる場合には、このうち2色の特色については上記実施形態で説明したように配列順序を定め、他の一色については、2色の特色のいずれかに隣り合う位置に配置することができる。
【0072】
また、K(ブラック)のインクを吐出するヘッドユニット21Kの位置は、上記実施形態及び各変形例に示した位置に限られない。例えば、図4図6図8図9において、ヘッドユニット21Kとヘッドユニット21Mの位置を互いに入れ換えても良い。さらに、ヘッドユニット21Kの位置は、他の色のインクによる着色に影響を与えない範囲で配列順序を変更しても良く、例えば搬送方向についていずれか一方の端の位置としても良い。これは、ヘッドユニット21K(ブラック)のインクは、他の色のインクと混色しても無彩色のままであり、他の色のインクとの間で着弾位置に相対的なずれがあっても記録画像における色ずれに繋がらないためである。
【0073】
また、色相環は、上記実施形態のもの(Y、R、M、B、C、Gが60度間隔で配置されているもの)に限られず、マンセル色相環やPCCS色相環といった、Y、R、M、B、C、Gに対応する色相がこの順に配列された他の種別の色相環を用いても良い。
【0074】
また、上記実施形態及び各変形例では、搬送ベルト13を備える搬送部10により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではなく、搬送部10は、例えば、搬送部材として搬送ドラムを用い、回転する搬送ドラムの外周面上で記録媒体Mを保持して搬送するものであっても良い。このような搬送ドラムを用いた場合であっても、記録媒体Mの幅方向についての位置ずれが生じ得るため、本発明を適用することで、記録媒体Mの位置ずれに起因する色ずれを抑制することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェット記録装置
2 外部装置
10 搬送部
11 駆動ローラー
12 従動ローラー
13 搬送ベルト
14 搬送モーター
15 ロータリーエンコーダー
16 押圧ローラー
17 ローラー
20 記録部
21 ヘッドユニット
22 記録ヘッド
22M ヘッドモジュール
23 ノズル
24 ヘッド制御部
30 制御部
31 CPU
32 RAM
33 ROM
34 記憶部
41 画像処理部
42 操作表示部
43 入出力インターフェース
44 バス
A1~A3 色相範囲
M 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9