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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/70 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
B29D30/70
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018025140
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019137019
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明▲瀬▼ 智
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055493(JP,A)
【文献】特開2016-198976(JP,A)
【文献】特開平05-309761(JP,A)
【文献】特開平04-355121(JP,A)
【文献】特開2012-254562(JP,A)
【文献】特開2008-168807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その延在方向に延びるコードとこのコードを被覆するトッピングゴムとを含むストリップが、外周面上に巻き回されるドラムを備えるタイヤの製造装置であって、
上記ドラムの外周面が、上記ストリップが嵌め込まれうる周方向に向けて螺旋状に延びる溝を備えており、
上記溝が、上記ストリップがこの溝に嵌め込まれたときこのストリップの側面と接触する第一面とこのストリップの底面と接触する第二面とを備え、その周方向に垂直な断面がV字状を呈するタイヤの製造装置。
【請求項2】
上記第一面の幅が、上記ストリップの厚みの0.8倍以上1.2倍以下である請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
上記第二面の幅が、上記ストリップの幅の0.5倍以上1.0倍以下である請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記第一面の外側端と上記第二面の外側端とを結ぶ仮想線と、上記第一面とがなす角度が、80°以上100°以下である請求項1から3のいずれかに記載の製造装置。
【請求項5】
上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記第一面の外側端と上記第二面の外側端とを結ぶ仮想線と、上記第二面とがなす角度が、9°以上24°以下である請求項1から4のいずれかに記載の製造装置。
【請求項6】
上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記溝の断面が、重なり及び隙間が無く並んでいる請求項1から5のいずれかに記載の製造装置。
【請求項7】
その延在方向に延びるコードとこのコードを被覆するトッピングゴムとを含むストリップを用意する工程
及び
上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程
を備え、
上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程においては、上記ドラムの外周面に設けられた、周方向に向けて螺旋状に延びる溝であって、第一面と第二面とを備えその周方向に垂直な断面がV字状を呈する溝に、上記ストリップの側面がこの第一面と接触しこのストリップの底面がこの第二面と接触するように上記ストリップが嵌め込まれて巻き回されるタイヤの製造方法。
【請求項8】
上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程においては、
上記ストリップを上記溝に送り出しながら、上記ドラムが回転しつつ軸方向に動くことで、上記ストリップが螺旋状に巻き回される請求項7に記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
重荷重タイヤ用である、請求項7又は8に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常タイヤでは、トレッドの半径方向内側にバンドを備えている。バンドは、コードを含んでいる。コードの典型的な材質は、スチールである。コードは、実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンドは、いわゆるジョイントレス構造を有する。
【0003】
このタイヤのローカバーの組み立てでは、ドラムを備える製造装置が用いられる。この組み立てでは、コードをゴムで被覆したストリップが用意される。このストリップが、ドラムの外周上で、周方向に向けて螺旋状に巻かれることで、バンドが形成される。バンドの外側に、トレッドが積層される。このバンド及びトレッドが、他のドラム上で形成されたカーカスやサイドウォール等の他の構成部材と組み合わされて、ローカバーが得られる。ドラムを使用したバンドの形成装置についての検討が、特開2016-55493公報で報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-55493公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンドの形成においては、ストリップをドラムの外周に巻き付ける際のストリップのドラムに対する滑りや、巻き付けた後のバンド全体のドラムに対する滑りを防止することが、良好なユニフォミティを実現するために重要となる。また、ストリップを螺旋巻きするときの、オーバーラップ量のばらつきを低減することも、良好なユニフォミティに寄与する。これらの滑り及びばらつきが低減されたタイヤの製造装置が求められている。
【0006】
本発明の目的は、良好なユニフォミティが実現されうるタイヤの製造装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その延在方向に延びるコードとこのコードを被覆するトッピングゴムとを含むストリップが、外周面上に巻き回されるドラムを備えるタイヤの製造装置に関する。上記ドラムの外周面は、上記ストリップが嵌め込まれうる周方向に向けて螺旋状に延びる溝を備えている。上記溝は、上記ストリップがこの溝に嵌め込まれたときこのストリップの側面と接触する第一面とこのストリップの底面と接触する第二面とを備え、その周方向に垂直な断面がV字状を呈する。
【0008】
好ましくは、上記第一面の幅は、上記ストリップの厚みの0.8倍以上1.2倍以下である。
【0009】
好ましくは、上記第二面の幅は、上記ストリップの幅の0.5倍以上1.0倍以下である。
【0010】
好ましくは、上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記第一面の外側端と上記第二面の外側端とを結ぶ仮想線と、上記第一面とがなす角度は、80°以上100°以下である。
【0011】
好ましくは、上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記第一面の外側端と上記第二面の外側端とを結ぶ仮想線と、上記第二面とがなす角度は、9°以上24°以下である。
【0012】
好ましくは、上記ドラムの周方向に垂直な断面において、上記溝の断面は、重なり及び隙間が無く並んでいる。
【0013】
本発明に係る製造方法は、その延在方向に延びるコードとこのコードを被覆するトッピングゴムとを含むストリップを用意する工程、及び上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程を備える。上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程においては、上記ドラムの外周面に設けられた、周方向に向けて螺旋状に延びる溝であって、第一面と第二面とを備えその周方向に垂直な断面がV字状を呈する溝に、上記ストリップの側面がこの第一面と接触しこのストリップの底面がこの第二面と接触するように上記ストリップが嵌め込まれて巻き回される。
【0014】
好ましくは、上記ストリップをドラムの外周面上に巻き回す工程においては、上記ストリップを上記溝に送り出しながら、上記ドラムが回転しつつ軸方向に動くことで、上記ストリップが螺旋状に巻き回される。
【0015】
好ましくは、この製造方法は重荷重タイヤ用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る製造装置では、ドラムの外周面は、周方向に向けて螺旋状に延びる溝を備えている。ストリップは、この溝に嵌め込まれてドラムに巻き回される。この溝は、ストリップがこの溝に嵌め込まれたとき、ストリップの側面と接触する第一面と、ストリップの底面と接触する第二面とを備え、その周方向に垂直な断面がV字状を呈している。この溝は、ストリップを巻くときのストリップのドラムに対する滑りを防止する。この溝は、ストリップが巻かれた後のバンド全体のドラムに対する滑りを防止する。この溝は、ストリップのオーバーラップ量のばらつきの低減に寄与する。この製造装置では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造装置の一部が示された側面図である。
図2図2は、図1の装置の正面図である。
図3図3は、図1の装置の一部が示された拡大断面図である。
図4図4は、図3の装置の溝がさらに拡大された断面図である。
図5図5は、ストリップが示された断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ製造装置2の一部が示された側面図である。この図では、この装置2のうち、ドラム4及びアプリケータ6が示されている。タイヤの製造においては、このドラム4の外周面上に、帯状のトスリップが巻き回され、バンドが形成される。この図では、このストリップ8も示されている。図1において、左右方向がドラム4の軸方向である。図2は、図1の装置2の正面図である。図2において、両矢印Aで示される方向がドラム4の周方向である。紙面と垂直な方向が、ドラム4の軸方向である。
【0020】
図1及び2に示されるように、ドラム4は円筒状を呈する。このドラム4は、図2の矢印Xの方向に回転することができる。このドラム4は、軸方向(図1の矢印Y方向及びその逆の方向)に移動することができる。図示されないが、このドラム4は、複数の軸方向に延びるセグメントから構成されている。複数のセグメントが、周方向に円筒状に並べられて、この円筒状のドラム4が構成されている。このセグメントを半径方向に移動させることで、このドラム4は、拡径及び縮径が可能となっている。
【0021】
図1に示されるように、ドラム4の外周面には、溝10が刻まれている。この溝10は、螺旋状に延びている。溝10は、実質的に周方向に延びている。周方向に対する溝10の延在方向の角度は、2°以下、さらには1°以下である。この実施形態では、一つの溝10が、ドラム4の軸方向の一方の端の近辺から他方の端の近辺まで延びている。
【0022】
図3は、図1のドラム4の一部が示された拡大断面図である。これは、ドラム4の周方向に垂直な断面である。図3において、上下方向がドラム4の半径方向であり、左右方向がドラム4の軸方向であり、紙面と垂直な方向がドラム4の周方向である。この図には、ドラム4の外周面の、軸方向の端の近辺が示されている。図4は、図3の溝10がさらに拡大された図である。
【0023】
図3及び4に示されるように、溝10は、この溝10の延在方向に延びる第一面12と第二面14とを備えている。このため、溝10の断面16(溝断面16)は、V字状を呈する。図3に示されるように、このドラム4の断面には、溝断面16が軸方向に並んでいる。等幅の溝断面16が、等ピッチで並べられている。隣接する溝断面16間には重なりがなく、隙間も存在しない。換言すれば、隣接する溝断面16は、互いに接している。
【0024】
アプリケータ6は、ドラム4の外周面の外側に位置する。アプリケータ6は、ストリップ8をドラム4の外周面上の所望の位置に案内する。アプリケータ6は、ドラム4の外周面上に、ストリップ8を送り出す。
【0025】
この装置2を使用したタイヤの製造方法は、バンドを形成する工程を含む。このバンドを形成する工程は、
(1)ストリップ8を用意する工程
及び
(2)ストリップ8をドラム4の外周面上に巻き回す工程
を含む。
【0026】
上記(1)の工程では、コードを含むストリップ8が用意される。図5は、用意されたストリップ8の断面斜視図である。ストリップ8は、帯状である。ストリップ8は、並列された複数のコード18と、このコード18を被覆するトッピングゴム20とを備える。この実施形態では、6本のコード18が、並列されている。これらのコード18は、ストリップ8の延在方向に延びる。典型的なコード18の材質は、スチールである。コード18の延在方向に延び、コードが並ぶ方向に平行な面が、このストリップの上面22及び底面24である。コード18の延在方向に延び、上面22及び底面24に垂直な面が、このストリップの側面26である。
【0027】
上記(2)の工程では、上記(1)の工程で用意されたストリップ8が、ドラム4の外周面に巻かれる。この工程では、まずストリップ8の先端が、ドラム4の溝10の端の位置に合わせられる。図1には、この状態が示されている。ストリップ8の先端が、溝10の端において、溝10に嵌め込まれる。すなわち、ストリップ8の側面26が溝10の第一面12と接触し、ストリップ8の底面24が溝10の第二面14と接触する。
【0028】
アプリケータ6がストリップ8を送り出しつつ、ドラム4が図2のX方向に回転する。併せてドラム4が、図1のY方向に移動する。これにより、ストリップ8がドラム4に螺旋状に巻かれる。このとき、ストリップ8の側面26と第一面12とが接触した状態でストリップ8が巻かれるように、ドラム4の回転速度とドラム4のY方向の移動速度とが調整される。ストリップ8は、溝10に嵌め込まれた状態で螺旋状に巻かれる。図3に、この様子が示されている。それぞれの溝断面16に、ストリップ8の断面28が位置している。それぞれの溝断面16において、第一面12とストリップ8の側面26とが接触し、第二面14とストリップ8の底面24とが接触している。所望の位置までストリップ8が巻かれると、ドラム4の回転が止まる。これにて、上記(2)の工程が終了する。これにて、バンドが形成される。
【0029】
図3で示されるように、この実施形態では、隣接するストリップ8の断面28は、半径方向に重なりを有する。すなわち、ストリップ8はオーバーラップを有して巻き回されている。この重なり部分の軸方向幅は、オーバーラップ量と称される。ストリップ8が、オーバーラップを有ざすに巻き回されていてもよい。
【0030】
この実施形態では、ストリップ8は図3の溝10の右端から左端に向けて巻き回されている。溝10の第一面12を右側に位置させ、第二面14を左側に位置させることで、ストリップ8を溝10の左端から右端に向けて巻き回してもよい。この装置2がアプリケータ6を二つ備え、一方のアプリケータ6から供給するストリップ8を溝10の右端から中央まで巻き回し、他方のアプリケータ6から供給するストリップ8を溝10の中央から左端まで巻き回してもよい。
【0031】
図示されないが、このタイヤの製造方法では、上記(2)の工程の後に、このドラム4において、バンドの外側にさらにトレッドが積層される。バンドの外側に一層又は複数層のベルトが積層され、これらの外側にトレッドが積層されてもよい。バンドの外側に積層される部材は、ここでは「外側部材」と称される。この外側部材とバンドとが圧着され、外側ローカバーが形成される。ドラム4が縮径して、外側ローカバーがドラム4から取り外される。外側ローカバーが、他のドラム上で形成されたカーカスやサイドウォール等の構成部材からなる内側ローカバーと、組み合わされる。これにより、ローカバーが形成される。
【0032】
ローカバーが、モールドに入れられる。ローカバーは、モールド内で加圧および加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0033】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0034】
本発明に係る製造装置2では、ドラム4の外周面は、周方向に向けて螺旋状に延びる溝10を備えている。この溝10は、第一面12と第二面14とを備え、その周方向に垂直な断面がV字状を呈している。ストリップ8は、この溝10に嵌め込まれてドラム4に巻き回される。ストリップ8がこの溝10に嵌め込まれたとき、ストリップ8の側面26が第一面12と接触し、ストリップ8の底面24が第二面14と接触する。これにより、ストリップ8を巻くときのストリップ8のドラム4に対する滑りが防止されている。これにより、ストリップ8が巻かれた後の、バンド全体のドラム4に対する滑りが防止されている。ストリップ8の側面26が第一面12と接触されて巻き回されているため、ストリップ8が巻かれる位置の、所望の位置からのずれは小さい。この装置2では、ストリップ8の巻き位置の精度は高い。この装置2では、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられている。これらは、タイヤのユニフォミティに寄与する。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。
【0035】
上記のとおり、ストリップ8の巻き位置の精度が高く、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられているため、この装置2で製造されたタイヤでは、接地形状の歪みが抑えられ、さらに、タイヤの半径方向の寸法のばらつきも小さい。このタイヤを市場で使用したときの接地形状の場所による変動が、抑えられている。これらは、タイヤの偏摩耗の抑制に寄与する。この装置2で製造されたタイヤでは、偏摩耗が抑えられている。
【0036】
溝を有さない従来のドラムでは、ストリップをオーバーラップを有して巻くとき、ストリップの既に巻かれた部分の上側に、それに隣接するストリップの部分が、重ねて巻き回される。ストリップの既に巻かれた部分と、それに隣接して巻き回される部分とが干渉する。これは、ストリップの位置精度に影響を及ぼす。また、ドラムに、ストリップの断面形状と同様の断面四角形の溝を設けて、この溝にストリップを嵌め込んで巻き回す方法が考えられる。しかし、この装置では、ストリップをオーバーラップさせて巻き回すのが困難となる。
【0037】
この製造装置2では、断面がV字状を呈する溝10を有する。ストリップ8がこの溝10に嵌め込まれて巻かれるため、ストリップ8がオーバーラップを有して巻かれた場合においても、ストリップ8の既に巻かれた部分と、この部分に隣接して巻き回される部分との干渉は小さい。例えば、図3の実施形態では、それぞれのストリップ8の断面28は、その前に巻かれたその右隣のストリップ8の断面28と、干渉していない。これは、ストリップ8を巻き回す際のストリップ8の位置の精度を向上させる。これは、タイヤのユニフォミティに寄与する。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。
【0038】
本発明に係る製造方法では、ストリップ8をドラム4に螺旋状に巻き回す際に、ドラム4が軸方向に移動する。この方法では、アプリケータ6がストリップ8を送り出す位置は、固定されている。この方法では、アプリケータをドラムに対して軸方向に移動させてストリップを巻き回す従来の方法に比べて、ストリップ8にねじれが生じることや、ストリップ8の一部がこのストリップ8の他の部分と密着することが効果的に防止されている。これは、製造不良の抑制及び生産性の向上に寄与する。アプリケータを一周ごとに一ピッチずつ軸方向に移動させてストリップを巻く方法に比べて、ストリップ8の局所的な歪みが効果的に抑えられている。この方法では、タイヤの損傷の発生が効果的に抑えられている。
【0039】
図4において、両矢印LAは、第一面12の幅を表す。両矢印LBは、第二面14の幅を表す。また、図5において、両矢印Tは、ストリップ8の厚みを表す。両矢印Wは、ストリップ8の幅を表す。
【0040】
幅LAの厚みTに対する比(LA/T)は、0.8以上が好ましい。比(LA/T)を0.8以上とすることで、ストリップ8を巻き回すときのストリップ8の滑りが、効果的に防止されている。ストリップ8が巻かれた後のバンド全体のドラム4に対する滑りが、効果的に防止されている。この装置2では、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられている。さらに、ストリップ8の既に巻かれた部分と、この部分に隣接して巻き回される部分との干渉が、効果的に小さくされている。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。このタイヤでは、偏摩耗が抑えられている。
【0041】
幅LAの厚みTに対する比(LA/T)は、1.2以下が好ましい。比(LA/T)を1.2以下とすることで、この溝10によるバンドの段差が適正に抑えられる。バンドに外側部材を積層したとき、バンドと外側部材との接触面積が十分に確保できる。バンドと外側部材との良好な接着性が実現されている。さらに、バンドの段差が適正に抑えられるため、この外側ローカバーと内側ローカバーとの良好な接着性が実現されている。これは、良好な生産性及び製造不良の抑制に寄与する。この観点から比(LA/T)は、1.1以下がより好ましい。
【0042】
幅LBの幅Wに対する比(LB/W)は、0.5以上1.0以下が好ましい。比(LB/W)を0.5以上1.0以下とすることで、適正なオーバーラップ量が実現される。これは、タイヤのユニフォミティに効果的に寄与する。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。
【0043】
図4において、符号θAは、第一面12の外側端と第二面14の外側端を結ぶ仮想線と、第一面12とがなす角度を表す。角度θAは、80°以上が好ましい。角度θAを80°以上とすることで、ストリップ8を巻き回すときのストリップ8の滑りが効果的に防止されている。ストリップ8が巻かれた後のバンド全体のドラム4に対する滑りが効果的に防止されている。この装置2では、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられている。これらは、タイヤのユニフォミティに寄与する。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。この観点から角度θAは、90°以上がより好ましい。
【0044】
角度θAは、100°以下が好ましい。角度θAを100°以下とすることで、第一面12と第二面14との間にストリップ8の端が入り込みこの端がつぶれることが防止されている。これは、ストリップ8の巻き位置の精度向上に寄与する。この装置2では、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられている。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。さらに、第一面12と第二面14との間にストリップ8の端が入り込むことが抑えられているため、外側ローカバーをドラム4から取り外す際の、取り外しの不良が抑えられている。
【0045】
図4において、符号θBは、第一面12の外側端と第二面14の外側端を結ぶ仮想線と、第二面14とがなす角度を表す。角度θBは、9°以上が好ましい。角度θBを9°以上とすることで、ストリップ8を巻き回すときのストリップ8の滑りが効果的に防止されている。ストリップ8が巻かれた後のバンド全体のドラム4に対する滑りが効果的に防止されている。この装置2では、ストリップ8のオーバーラップ量のばらつきが抑えられている。これらは、タイヤのユニフォミティに寄与する。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。
【0046】
角度θBは、24°以下が好ましい。角度θBを24°以下とすることで、この溝10によるバンドの段差が適正に抑えられる。バンドに外側部材を積層したとき、バンドと外側部材との接触面積が十分に確保できる。このバンドと外側部材との良好な接着性が実現されている。さらに、バンドの段差が適正に抑えられるため、外側ローカバーと、内側ローカバーとの良好な接着性が実現されている。これは、良好な生産性及び製造不良の抑制に寄与する。
【0047】
この製造装置2は、バンドのコード18がスチールからなる重荷重用のタイヤの製造に、特に適している。
【0048】
ストリップ8の巻き回しを開始するドラム4上の位置において、ドラム4に磁石を埋め込むのが好ましい。ストリップ8のコード18がスチールからなるとき、このコード18の先端がこの磁石に吸着されることにより、ストリップ8がずれることが防止される。さらに、ドラム4の所定の場所において、第一面12の外側端の内側に、磁石を埋め込むのが好ましい。この磁石の吸着力により、ストリップ8を安定して所望の位置に巻き回すことができる。この製造装置2では、良好なユニフォミティを有するタイヤが製造されうる。なお、この磁石が埋め込まれる位置や磁石の強さは、この磁石が、外側ローカバーをドラム4から取り外す際の、取り外し不良の要因とならないように設定される。
【実施例
【0049】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0050】
[実施例1]
本発明に係る製造装置を使用してタイヤが試作された。このタイヤのサイズは、295/80R22.5であった。このタイヤは重荷重用である。バンドの形成に使用されたストリップの幅Wは10mm、厚みTは2mmであった。このストリップは、6本のスチールからなるコードを含んでいる。この装置の角度θA及び比(LA/T)が、表1に示されている。比(LB/W)は、0.8とされた。なお、角度θBは、角度θA、比(LA/T)及び比(LB/W)から決められている。
【0051】
[比較例1]
比較例1の装置では、ドラムは溝を有しない。この装置を使用したことの他は実施例1と同様にして、タイヤが試作された。
【0052】
[実施例2-7]
実施例2-7の装置では、第一面の幅LAを変更して比(LA/T)が表1及び2に示された値とされた。この装置を使用したことの他は実施例1と同様にして、タイヤが試作された。
【0053】
[実施例8-12]
実施例8-12の装置では、角度θAが表3に示された値とされた。この装置を使用したことの他は実施例1と同様にして、タイヤを試作した。
【0054】
[ストリップ巻き精度]
5本のタイヤについてストリップが巻かれた後に、ストリップの巻き位置の精度が目視で確認された。この結果が、A、B、C及びDの4段階で評価された。この結果が表1-3に示されている。A、B、C、Dの順に好ましい。
【0055】
[外側部材及び内側ローカバーとの接着性]
5本のタイヤについて、ローカバーを形成した後、このローカバーカバーを切断してバンドと外側部材との接着性及び外側カバーと内側カバーとの接着性が目視で確認された。この結果が、A、B、C及びDの4段階で評価された。この結果が表1-2に示されている。A、B、C、Dの順に好ましい。
【0056】
[オーバーラップばらつき]
5本のタイヤについてストリップが巻かれた後に、オーバーラップ量のばらつきが目視で確認された。この結果が、A、B、C及びDの4段階で評価された。この結果が表3に示されている。A、B、C、Dの順に好ましい。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1-3に示されるように、実施例の製造装置で作成されたタイヤは総合的に評価か高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明された装置は、種々の空気入りタイヤの製造に適用されうる。
【符号の説明】
【0062】
2・・・製造装置
4・・・ドラム
6・・・アプリケータ
8・・・ストリップ
10・・・溝
12・・・第一面
14・・・第二面
16・・・溝断面
18・・・コード
20・・・トッピングゴム
22・・・上面
24・・・底面
26・・・側面
28・・・ストリップの断面
図1
図2
図3
図4
図5