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  • 特許-ボイラ装置 図1
  • 特許-ボイラ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ボイラ装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20220117BHJP
   F23N 5/18 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F22B35/00 J
F23N5/18 101J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018029707
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019143914
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝太
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁昌
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105881(JP,A)
【文献】実開昭63-148048(JP,U)
【文献】特開平09-112893(JP,A)
【文献】特開平11-108352(JP,A)
【文献】特開2000-346349(JP,A)
【文献】米国特許第06216685(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
F23N 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体と、
送風路を介して前記ボイラ本体内へ空気を送り込む送風機と、
前記送風路と連通する第1連通路と、
前記ボイラ本体と連通する第2連通路と、
前記第1連通路内と前記第2連通路内との差圧に応じて、前記ボイラ本体に供給する燃料の流量を調整する流量調整部とを備え
前記第1連通路には、前記送風路からの圧力を減圧する第1減圧部が設けられている、ボイラ装置。
【請求項2】
前記第2連通路には、前記ボイラ本体からの圧力を減圧する第2減圧部が設けられている、請求項に記載のボイラ装置。
【請求項3】
前記第2減圧部の流路面積は、前記第1減圧部の流路面積よりも大きい、請求項に記載のボイラ装置。
【請求項4】
前記流量調整部は、前記第1減圧部により減圧された圧力と前記第2減圧部により減圧された圧力との差圧と、供給する燃料の圧力とに応じて、開度を調整する圧力調整弁を含み、
前記圧力調整弁は、開度に応じて供給する燃料の流量を調整する、請求項または請求項に記載のボイラ装置。
【請求項5】
前記流量調整部は、
開度に応じて供給する燃料の流量を調整する流量調整弁と、
前記第1連通路内と前記第2連通路内との差圧を特定するための差圧情報を出力する差圧情報出力部と、
前記差圧情報に基づいて、前記流量調整弁の開度を制御する制御部とを含む、請求項1~請求項のいずれかに記載のボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料供給路に圧力調整弁(いわゆるガバナ)を設け、供給する燃料の圧力を一定に維持する燃焼装置があった。また、このような燃焼装置においては、燃焼用空気を整流するためのウインドボックス内の圧力をガバナのダイヤフラム孔に導入するものがあった(例えば、特許文献1)。これにより、ウインドボックス内の圧力低下に連動してガバナの2次圧を低下させて、供給する燃料を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-38417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような燃焼装置においては、燃焼用空気と外気(大気)との差圧をガバナへ導入するものが一般的であった。このため、例えば、燃焼装置からの排ガスによる背圧がかかったときにはガバナに導入される差圧が小さくなり、供給する燃料の圧力が低下してしまう。その結果、背圧がかかったときには、燃焼用空気に対して供給する燃料が少ない高空気比となり失火する原因となっていた。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、背圧の影響を受けずに空気比を極力一定に維持できるボイラ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラ装置は、ボイラ本体と、送風路を介して前記ボイラ本体内へ空気を送り込む送風機と、前記送風路と連通する第1連通路と、前記ボイラ本体と連通する第2連通路と、前記第1連通路内と前記第2連通路内との差圧に応じて、前記ボイラ本体に供給する燃料の流量を調整する流量調整部とを備え、前記第1連通路には、前記送風路からの圧力を減圧する第1減圧部が設けられている。
【0007】
上記の構成によれば、第1連通路内と第2連通路内との差圧に応じてボイラ本体に供給する燃料の流量を調整できるため、背圧の影響を受けることなく空気比を一定に維持することができる。また、ボイラ装置の仕様・設計等に合せて、送風路からの圧力を第1減圧部により調整できる。
【0010】
好ましくは、前記第2連通路には、前記ボイラ本体からの圧力を減圧する第2減圧部が設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、ボイラ装置の仕様・設計等に合せて、ボイラ本体からの圧力を第2減圧部により調整できる。
【0012】
好ましくは、前記第2減圧部の流路面積は、前記第1減圧部の流路面積よりも大きい。
【0013】
上記の構成によれば、異物などの影響により第1減圧部よりも先に第2減圧部が詰まってしまうことを極力回避できる。また、仮に第1減圧部が詰まった場合には高空気比となり失火するため、より安全側にボイラ装置を制御できる。
【0014】
好ましくは、前記流量調整部は、前記第1減圧部により減圧された圧力と前記第2減圧部により減圧された圧力との差圧と、供給する燃料の圧力とに応じて、開度を調整する圧力調整弁を含み、前記圧力調整弁は、開度に応じて供給する燃料の流量を調整する。
【0015】
上記の構成によれば、第1減圧部により減圧された圧力と第2減圧部により減圧された圧力との差圧に応じて、圧力調整弁により機械的に燃料の流量を調整することができる。
【0016】
好ましくは、前記流量調整部は、開度に応じて供給する燃料の流量を調整する流量調整弁と、前記第1連通路内と前記第2連通路内との差圧を特定するための差圧情報を出力する差圧情報出力部と、前記差圧情報に基づいて、前記流量調整弁の開度を制御する制御部とを含む。
【0017】
上記の構成によれば、第1連通路内と第2連通路内との差圧を特定するための差圧情報に応じて、制御部により流量調整弁の開度が制御されて、燃料の流量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係るボイラ装置の構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態2に係るボイラ装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態1>
以下に、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態1に係るボイラ装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るボイラ装置1の構成を模式的に示す図である。
【0020】
ボイラ装置1は、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、送風路30を介してボイラ本体2内に空気を送り込む送風機3と、ボイラ本体2からの排ガスなどを導出する煙道4と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給ライン(燃料供給路)5とを備えている。なお、燃料は、ガスである例について説明するが、ガスなどの気体に限らず、油などの液体であってもよい。
【0021】
燃料供給ライン5は、送風路30に接続されている。燃料供給ライン5から供給される燃料は、送風路30において、送風機3から送風される空気と混合して、ボイラ本体2内のバーナ20に供給される。
【0022】
燃料供給ライン5には、流路を開閉するための開閉弁61(電磁弁)と、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整可能であるとともに遮断機能をも備えるガバナ62とが設けられている。ガバナ62は、開閉弁61の下流側に配置されている。
【0023】
下流側のガバナ62は、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整する流量調整部8を構成している。つまり、ガバナ62は、ボイラ本体2に供給する燃料の圧力を調整する圧力調整弁として機能する。本実施の形態におけるガバナ62は、送風路30内の圧力とボイラ本体2内の圧力との差圧に応じて開度が変化するように構成されている。ガバナ62は、導入される差圧と供給する燃料の圧力(2次側の圧力)とが均圧となるように機械的に開度が調整される均圧弁である。ガバナ62の下流側流路からは、分岐路53が設けられている。ガバナ62は、分岐路53から得られる二次側の圧力が、導入される送風路30内の圧力とボイラ本体2内の圧力との差圧となるように開度を調整することができる。
【0024】
具体的には、ボイラ装置1は、送風路30と連通する第1連通路51と、ボイラ本体2(炉内)と連通する第2連通路52とを備えている。第2連通路52は、第1連通路51に合流するように配置されており、ボイラ本体2内の圧力に応じて、例えば第1連通路51に流入した空気をボイラ本体2内へ吹き込むように構成されている。その結果、第1連通路51上における第2連通路52との合流点よりも下流側通路を通る気体の圧力は、送風路30内の圧力とボイラ本体2内の圧力との差圧に相当する。また、第1連通路51は、第2連通路52との合流点よりも下流側の通路により、ガバナ62に接続されている。これにより、送風路30内の圧力とボイラ本体2内の圧力との差圧をガバナ62に導入することができる。ガバナ62は、第1連通路51から導入された気体の圧力に応じて開度を変化させる。
【0025】
ここで、「送風路30内の圧力」と「外気の圧力」との差圧に応じて流量を調整する従来からの形態(以下「比較例」という)においては、ボイラ本体2からの排ガスによる背圧がかかった場合、「送風路30内の圧力」と「外気の圧力」との差圧が小さくなり得る。このため、ガバナ62に導入される差圧は小さくなる。その結果、ボイラ本体2からの背圧がかかった場合、供給する燃料の圧力が低下し、送風機3から送風される空気量に対してバーナ20へ供給する燃料が少ない高空気比となり失火する虞があった。
【0026】
これに対し、本実施の形態では、「送風路30内の圧力」と「ボイラ本体2内(炉内)の圧力」との差圧をガバナ62に導入している。このため、ボイラ本体2の背圧の影響を受けず空気比を維持するように、送風機3から送風される空気量に対してバーナ20へ供給する燃料の圧力(流量)を調整することができる。その結果、背圧耐性を向上させることができる。
【0027】
さらに、第1連通路51には、送風路30から流入する気体の圧力を減圧する(第1の)減圧部71が設けられている。同様に、第2連通路52には、ボイラ本体2から流入する気体の圧力を減圧する(第2の)減圧部72が設けられている。減圧部71および減圧部72は、例えばオリフィスであるが、これに限らず開度調整可能なバルブなどであってもよい。減圧部71および減圧部72各々により減圧する割合(流路面積)を調整することにより、ボイラ装置1の仕様あるいは設計などに適合させることができる。
【0028】
また、第2連通路52の減圧部72の流路面積(オリフィス径)は、第1連通路51の減圧部71の流路面積(オリフィス径)よりも大きい。これにより、第1連通路51に異物が混入した場合や減圧部71および減圧部72各々に異物が蓄積した場合などであっても、第1連通路51の減圧部71よりも第2連通路52の減圧部72が先に詰まってしまう可能性を低減できる。これにより、例えば第1連通路51の減圧部71よりも先に第2連通路52の減圧部72が詰まった場合、第1連通路51に流入した空気の圧力がそのままガバナ62に導入されて、バーナ20へ供給する燃料が多くなり過ぎる低空気比となる結果、不完全燃焼となりCO過多となる危険な状態となってしまうことを本実施の形態では上記構成により回避できる。また、仮に第1連通路51の減圧部71が詰まった場合には、ガバナ62に導入される圧力が小さくなるため、バーナ20へ供給する燃料を少なくなる(高空気比となる)ことにより保炎ができずに失火するため、より安全側となるようにボイラ装置1を制御できる。
【0029】
<実施の形態2>
実施の形態1では、流量調整部8が機械式のガバナ62を含み、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を機械的に調整する構成について説明したのに対し、実施の形態2では、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を制御部により電子的に調整する構成を説明する。以下では、実施の形態1に係るボイラ装置1との相違点のみ詳細に説明する。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態2に係るボイラ装置1Aの構成を模式的に示す図である。図2を参照して、本実施の形態では、燃料供給ライン5に、上記した開閉弁61およびガバナ62に加えて、調整弁81が設けられている。調整弁81は、ガバナ62よりも下流側に設けられており、制御部9によって開度が調整されるモータバルブである。なお、調整弁81は、燃料の流量を調整するものであればモータバルブに限らず、例えば、空気式制御弁であってもよい。制御部9は、例えばCPUなどの演算処理装置により実現される。
【0031】
本実施の形態では、第1連通路51と第2連通路52とは直列的に配置されており、第1連通路51はガバナ62に接続されていない。つまり、第1連通路51および第2連通路52は、送風路30に一端が接続され、かつ、ボイラ本体2に他端が接続されたダクトにより実現される。
【0032】
ダクト上には、圧力センサ73が設けられている。圧力センサ73は、第1連通路51内の気体の圧力と、第2連通路52内の気体の圧力との差圧を特定するための差圧情報を出力する。
【0033】
本実施の形態においても、第1連通路51および第2連通路52のそれぞれに、減圧部71,72が設けられている。減圧部71は、圧力センサ73よりも送風路30側に設けられ、減圧部72は圧力センサ73よりもボイラ本体2側に設けられている。
【0034】
圧力センサ73は、制御部9と電気的に接続されている。これにより、圧力センサ73からの差圧情報を制御部9に入力することができる。なお、圧力センサ73から出力されるアナログ信号はデジタル信号に変換されて、制御部9に入力される。
【0035】
制御部9は、圧力センサ73から入力される差圧情報に基づいて、調整弁81の開度を調整する。制御部9は、メモリ10に予め記憶された開度調整情報に基づいて、調整弁81に対して開度を特定するための開度特定信号を送信する。これにより、調整弁81は、送風路30内の圧力とボイラ本体2内の圧力との差圧に応じた開度に制御されて、ボイラ本体2に供給する燃料の流量を調整することができる。なお、開度調整情報とは、例えば、差圧に応じて調整弁81の開度を特定可能なテーブルであってもよく、また差圧に応じて調整弁81の開度を特定するための演算式であってもよい。
【0036】
従来から、例えば送風路30内にパンチングメタル等を設けてその前後の圧力損失から燃焼用空気の空気量を算出するものがあった。しかし、このようなものにおいては、パンチングメタルにより相当の圧力が失われるため、送風機の性能が高いものを採用する必要があり、高コストとなっていた。これに対し、実施の形態2では、パンチングメタル等を用いずに、送風路30からボイラ本体2(路内)に至るまでの固定圧損を利用して燃焼用空気の流量を算出可能となる。このため、少なくとも送風機に要するコストを抑えることができる。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0038】
上記実施の形態におけるボイラ装置1は、ガスを供給する燃料供給ラインと、油を供給する燃料供給ラインとを備え、ガスを燃料として使用するモードと、油を燃料として使用するモードとのいずれかに切り替えて制御することができるものであってもよい。
【0039】
上記実施の形態では、減圧部71および減圧部72としてオリフィスを例示した。しかし、減圧部71および減圧部72は、減圧可能なものであればこれに限らず、開度調整可能なバルブなどであってもよい。また、上記実施の形態では、第1連通路51および第2連通路52各々に減圧部を設けた例について説明した。しかし、これに限らず、第1連通路51および第2連通路52各々に減圧部が設けられていないものであってもよく、また、第1連通路51および第2連通路52のうちいずれか一方(例えば第1連通路51)のみに減圧部を設けるものであってもよい。この場合、実施の形態1では、例えば、ボイラ装置1の仕様あるいは設計などに応じて、第1連通路51および第2連通路52各々の径の大きさを調整してもよく、また、実施の形態2では、例えばボイラ装置1の仕様あるいは設計などに応じて開度調整情報を調整してもよい。
【0040】
上記実施の形態2では、開閉弁61よりも下流側にガバナ62を設けている例について説明したが、これに限らず、開閉弁61よりも下流側には、開閉弁61と同様に流路を開閉するための弁(電磁弁)を設けるものであってもよい。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラ装置
1A ボイラ装置
2 ボイラ本体
3 送風機
4 煙道
5 燃料供給ライン
8 流量調整部
9 制御部
10 メモリ
20 バーナ
30 送風路
51 第1連通路
52 第2連通路
53 分岐路
61 開閉弁
62 ガバナ
71 減圧部
72 減圧部
73 圧力センサ
81 調整弁
図1
図2