(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20220117BHJP
H04N 1/40 20060101ALI20220117BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220117BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220117BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H04N1/60
H04N1/40 062
G06T1/00 310Z
B41J29/38
B41J29/393 105
(21)【出願番号】P 2018031762
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪田 良介
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121674(JP,A)
【文献】特開2011-073286(JP,A)
【文献】特開2006-069202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-1/62
H04N 1/40-1/409
G06T 1/00
B41J 29/38
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被参照用の第1の画像データと処理対象の第2の画像データを比較し、前記第2の画像データから、前記第1の画像データの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである第1の画素群を検出する第1の画像検出部と、
前記第1の画像データと前記第2の画像データを比較し、前記第2の画像データから、前記第1の画像データの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである第2の画素群を検出する第2の画像検出部と、
印刷ジョブに含まれる画像データごとに前記第1の画素群及び前記第2の画素群の情報を含む再利用可能領域情報を記憶する記憶部と、
記録材に画像を形成するプリンタエンジンの前記主走査方向に関する状態情報、及び前記再利用可能領域情報に基づいて、前記画像データに対して補正用の画像処理を行い補正処理済み画像データを生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記第2の画像データから前記補正処理済み画像データを生成する際、前記第2の画像データの前記第1の画素群の領域については、前記第1の画像データの同じ座標にある
前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用し、前記第2の画像データの前記第2の画素群の領域については、
前記第2の画像データの前記第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用し、前記第2の画像データの前記第1の画素群及び前記第2の画素群として検出されなかった他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行う
画像処理システム。
【請求項2】
さらに、前記画像処理部が補正用の画像処理を行う際に利用する一時記憶部、を備え、
前記画像処理部は、前記第2の画像データに補正用の画像処理を行う際、前記一時記憶部に前記第1の画像データの補正処理済み画像データを展開し、前記第2の画像データの前記第2の画素群の領域については、
前記第2の画像データの前記第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用して
、前記第1の画像データの補正処理済み画像データの該当領域を上書き更新し、前記第2の画像データの前記他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行い前記第1の画像データの補正処理済み画像データの該当領域を更新し、前記第2の画素群及び前記他の画素群の領域の更新が終了後に前記一時記憶部に展開されている画像データを前記第2の画像データの補正処理済み画像データとする
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記プリンタエンジンの前記主走査方向に関する状態情報は、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルの前記主走査方向の欠陥位置を示す情報である
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記第1の画像検出部及び前記第2の画像検出部において比較される前記第1の画像データと前記第2の画像データは、別々の印刷ジョブの印刷ページに対応する
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記第1の画像検出部及び前記第2の画像検出部において比較される前記第1の画像データに対応する印刷ページと前記第2の画像データに対応する印刷ページのページ間隔は、前記画像処理部が使用するメモリの記憶容量に応じて変更される
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記第1の画像検出部及び前記第2の画像検出部において比較される前記第1の画像データに対応する印刷ページと前記第2の画像データに対応する印刷ページは、同一の印刷ページである
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項7】
さらに前記第1の画像データの補正用の画像処理
を行った結果が記憶される記憶部と、
キャッシュデータ用の記憶領域と、
前記記憶領域に記憶されるキャッシュデータを管理するキャッシュデータ管理部と、を備え、
前記キャッシュデータ管理部は、前記第2の画像データの前記第2の画素群に対応する、前記第1の画像データの再利用される補正用の画像処理
を行った結果のみを前記記憶領域にキャッシュデータとして記憶する
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記第1の画像検出部及び前記第2の画像検出部は、前記第2の画像データに占める前記第1の画素群及び前記第2の画素群の割合が、前記プリンタエンジンの印刷速度と前記補正用の画像処理に要する時間との関係で決まる閾値以上になったことを検出した場合には、前記第1の画素群及び前記第2の画素群の検出処理を終了する
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記画像処理部は、印刷ジョブを実行中に前記プリンタエンジンから前記補正用の画像処理の実行指示を受信した場合には、前記第1の画像検出部及び前記第2の画像検出部の検出結果によらず、以降の画像データの全ての領域に新規に補正用の画像処理を行う
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記第1の画像検出部、前記第2の画像検出部、及び前記画像処理部が、一つの装置に搭載されている
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記第1の画像検出部、前記第2の画像検出部、及び前記画像処理部が、複数の装置に分散して搭載されている
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項12】
被参照用の第1の画像データと処理対象の第2の画像データを比較して前記第2の画像データから検出された、前記第1の画像データの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである第1の画素群の情報と、前記第1の画像データと前記第2の画像データを比較して前記第2の画像データから検出された、前記第1の画像データの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである第2の画素群の情報と、を含む再利用可能領域情報を印刷ジョブに含まれる画像データごとに記憶する記憶部と、
記録材に画像を形成するプリンタエンジンの前記主走査方向に関する状態情報、及び前記再利用可能領域情報に基づいて、前記画像データに対して補正用の画像処理を行い補正処理済み画像データを生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記第2の画像データから前記補正処理済み画像データを生成する際、前記第2の画像データの前記第1の画素群の領域については、前記第1の画像データの同じ座標にある
前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用し、前記第2の画像データの前記第2の画素群の領域については、
前記第2の画像データの前記第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用し、前記第2の画像データの前記第1の画素群及び前記第2の画素群として検出されなかった他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行う
画像処理装置。
【請求項13】
被参照用の第1の画像データと処理対象の第2の画像データを比較し、前記第2の画像データから、前記第1の画像データの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである第1の画素群を検出する第1の画像検出ステップと、
前記第1の画像データと前記第2の画像データを比較し、前記第2の画像データから、前記第1の画像データの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである第2の画素群を検出する第2の画像検出ステップと、
印刷ジョブに含まれる画像データごとに前記第1の画素群及び前記第2の画素群の情報を含む再利用可能領域情報を記憶する記憶ステップと、
記録材に画像を形成するプリンタエンジンの前記主走査方向に関する状態情報、及び前記再利用可能領域情報に基づいて、前記画像データに対して補正用の画像処理を行い補正処理済み画像データを生成する画像処理ステップと、を有し、
前記画像処理ステップにおいて、
前記第2の画像データから前記補正処理済み画像データを生成する際、前記第2の画像データの前記第1の画素群の領域については、前記第1の画像データの同じ座標にある
前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用するステップと、
前記第2の画像データの前記第2の画素群の領域については、
前記第2の画像データの前記第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用するステップと、
前記第2の画像データの前記第1の画素群及び前記第2の画素群として検出されなかった他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行うステップと、を含む
画像処理方法。
【請求項14】
被参照用の第1の画像データと処理対象の第2の画像データを比較して前記第2の画像データから検出された、前記第1の画像データの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである第1の画素群の情報と、前記第1の画像データと前記第2の画像データを比較して前記第2の画像データから検出された、前記第1の画像データの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである第2の画素群の情報と、を含む再利用可能領域情報を印刷ジョブに含まれる画像データごとに記憶する記憶部と、前記画像データに対して補正用の画像処理を行う画像処理部と、を備えた画像処理装置のコンピューターに、
記録材に画像を形成するプリンタエンジンの前記主走査方向に関する状態情報、及び前記再利用可能領域情報に基づいて、前記画像データに対して補正用の画像処理を行い補正処理済み画像データを生成する画像処理手順を実行させるためのプログラムであって、
前記画像処理手順は、前記第2の画像データから前記補正処理済み画像データを生成する際、前記第2の画像データの前記第1の画素群の領域については、前記第1の画像データの同じ座標にある
前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用する手順と、
前記第2の画像データの前記第2の画素群の領域については、
前記第2の画像データの前記第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる前記第1の画像データの前記画素群の補正用の画像処理
を行った結果を再利用する手順と、
前記第2の画像データの前記第1の画素群及び前記第2の画素群として検出されなかった他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行う手順と、を含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データにキャリブレーション用の画像処理を行う画像処理システム、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装箱等に印刷を行うパッケージ印刷は、包装箱の展開図に合わせて複数の印刷データが必要であり、また一つ一つの印刷面も大きい傾向がある。現在、パッケージ印刷は、主にオフセット印刷により行われている。パッケージ印刷を行う場合には、時間のかかる印刷データのRIP処理及び色変換処理を、印刷開始より前に完了しておくことが多い(例えば前日の夜などにRIP処理のみ実施しておく等)。但し、インクジェット記録装置の場合には、キャリブレーション用の画像処理(以下「キャリブレーション処理」とも称する。)については、印刷直前のプリンタエンジンの状態(ノズル詰まりなど)に合わせて実施する必要がある。ここでキャリブレーション処理とは、プリンタエンジンの特性(状態)に合わせて印刷データを補正するための画像処理のことを指す。
【0003】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドに設けたノズルからインク滴を吐出することで用紙等の記録材に画像を形成(記録)している。しかしながら、インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドのノズル内への空気混入やノズル付近への紙粉等の異物の付着等により、ノズルの吐出不良が発生するおそれがある。そこで、キャリブレーション処理の一例として、ノズル欠補正処理が挙げられる。ノズル欠補正とは、特定のノズルが詰まっている場合に、特定のノズルの周辺(例えば左右)のノズルから吐出するインク量を調整(補間処理)することで、ノズル欠による画像不良(白スジの発生)を抑制する処理である。
【0004】
つまり、印刷時に実施する画像処理には、RIP処理や色変換処理などのプリンタエンジンの状態に依存しない第1の処理と、キャリブレーション処理などのプリンタエンジンの状態に依存する第2の処理がある。第1の処理は、印刷実行とは非同期で実施可能であるため、処理時間に対する制約は少なく自由度の高い処理の実施が可能である。しかし、第2の処理は、印刷実行と同期して実施する必要があるため、処理内容が制限される。
【0005】
複数ページジョブかつ大ページサイズ(B1サイズなど)のジョブであって、さらにインク版数が多い(CMYKOGVなど)場合には、キャリブレーション用の画像処理(第2の処理)に時間がかかる。そのため、各ページの印刷開始時に画像処理が間に合わずにリアルタイム出力できなくなるという問題がある。印刷する用紙サイズがそれほど大きくない(B2サイズ以下など)場合には、キャリブレーション用の画像処理に専用のハードウェアなどを使って、性能を担保することができる。しかし、用紙サイズが大きい場合(B1サイズ以上など)には、コスト的にハードウェア処理で対応することが困難になり、ソフトウェアでの処理が必要になる。そのため、複数ページジョブにおいては、他ページのキャリブレーション処理結果を再利用するなどの対策を行い、キャリブレーション処理に要する時間を短縮する必要がある。
【0006】
特許文献1には、キャリブレーション処理に要する時間を削減するために、キャリブレーション処理結果の再利用を行う技術が開示されている。キャリブレーション処理結果の再利用については、インクの種類(記録剤)をパラメータとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたインクの種類を判別することによる再利用方法では、上記問題点の対策、即ちキャリブレーション処理時間の短縮は不可能である。
【0009】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、処理対象ページのキャリブレーション用の画像処理(第2の処理)に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の画像処理システムは、被参照用の第1の画像データと処理対象の第2の画像データを比較し、第2の画像データから、第1の画像データの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである第1の画素群を検出する第1の画像検出部と、第1の画像データと第2の画像データを比較し、第2の画像データから、第1の画像データの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである第2の画素群を検出する第2の画像検出部と、印刷ジョブに含まれる画像データごとに第1の画素群及び第2の画素群の情報を含む再利用可能領域情報を記憶する記憶部と、記録材に画像を形成するプリンタエンジンの主走査方向に関する状態情報、及び再利用可能領域情報に基づいて、画像データに対して補正用の画像処理を行い補正処理済み画像データを生成する画像処理部と、を備える。
上記画像処理部は、上記第2の画像データから補正処理済み画像データを生成する際、第2の画像データの第1の画素群の領域については、第1の画像データの同じ座標にある第1の画像データの画素群の補正用の画像処理を行った結果を再利用し、
上記第2の画像データの第2の画素群の領域については、当該第2の画像データの第2の画素群と主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なる第1の画像データの画素群の補正用の画像処理を行った結果を再利用し、
上記第2の画像データの第1の画素群及び第2の画素群として検出されなかった他の画素群の領域については、新規に補正用の画像処理を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一態様によれば、被参照用の第1の画像データの補正用の画像処理結果を再利用することにより、処理対象の第2の画像データに対する第2の処理の時間が短縮される。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの概要を示す説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のヘッドユニット及び画像読取部の配置例を示す説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの各装置が備えるコンピューターのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る第1の画像処理装置の制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図7】タグビットデータの一例を示す概念図である。
【
図8】画像データとタグビットデータの関係を示す概念図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る再利用可能領域の区分例を示す説明図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る再利用可能領域特定処理を示す説明図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る第2の画像処理装置の制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る第1の画像処理装置による第1の処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図13】
図12の第1の処理における再利用可能領域特定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る第2の画像処理装置による第2の処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図15】
図14の第2の処理におけるNページ目のキャリブレーション処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る第2の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図17】本発明の第4の実施形態に係るインクジェットヘッドの例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)の例について、添付図面を参照しながら説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
<1.第1の実施形態>
[画像形成システムの全体構成]
始めに、本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムについて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像形成システム10の構成例を示す説明図である。
図2は、画像形成システム10の概要を示す説明図である。
【0015】
画像形成システム10は、インクジェット記録装置1、端末装置2、第1の画像処理装置3、及び第2の画像処理装置4を備える。各装置は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続されている。本実施形態では、用紙に画像を形成する装置としてインクジェット記録装置1を適用している。
【0016】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド242(
図3参照)に設けたノズルからインクを吐出することで用紙に画像を形成(記録)するものである。このインクジェット記録装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のインクを重ね合わせるカラーインクジェット記録装置である。また、インクジェット記録装置1は、テストチャートを印刷し、用紙に印刷されたテストチャートの画像を画像読取部26により読み取り、読取画像に基づいてプリンタエンジンの状態を判定する。そして、インクジェット記録装置1は、用紙(記録材)に画像を記録するプリンタエンジンの状態情報を第2の画像処理装置4に送信する。
【0017】
端末装置2は、操作端末の一例であり、例えばパーソナルコンピューターが用いられる。端末装置2として、タブレット端末やスマートフォン等を用いてもよい。端末装置2は、OS(Operating System)により制御されている。端末装置2には、文書ファイルや画像ファイル等のドキュメントを表示画面に表示するドキュメント閲覧ソフトウェアや、印刷ジョブの生成を行うプリンタードライバーがインストールされている。
【0018】
第1の画像処理装置3は、端末装置2等から印刷ジョブのPDLデータ等の印刷データ(1)を受信し、印刷データの全ページをRAWデータに変換(RIP(Raster Image Processor)処理)する。RAWデータは、キャリブレーション処理が実施される前のRIP処理済みの印刷データである。また、第1の画像処理装置3は、印刷データの全ページのRAWデータへの変換が完了した後、RAWデータに対してキャリブレーション処理を実施する際の再利用可能領域の特定を行う。再利用可能領域特定処理では、印刷データの各ページ内の画素を3種類の区分に分類する。再利用可能領域の3種類の区分については、後に
図9を参照して詳述する。
【0019】
第2の画像処理装置4は、第1の画像処理装置3でRIP処理された印刷データ(RAWデータ)を受信するとともに、インクジェット記録装置1からプリンタエンジンの状態情報(2)を受信する。そして、第2の画像処理装置4は、RAWデータに対し、プリンタエンジンの状態情報と再利用可能領域特定情報に基づいてキャリブレーション処理を実施し、キャリブレーション処理済みのRAWデータ(3)をインクジェット記録装置1に出力する。インクジェット記録装置1は、キャリブレーション処理済みのRAWデータに基づいて、用紙に画像を記録し印刷物(4)を生成する。
【0020】
本発明者は、プリンタエンジンの状態に依存しないRIP処理や色変換処理などの第1の処理の処理時間は重要ではなく、キャリブレーション処理などのプリンタエンジンの状態に依存する第2の処理の処理時間の短縮が重要であることに着眼し、第1の処理に補足処理を追加し、第1の処理の結果に基づいて第2の処理を高速化する方法に想到した。即ち、本実施形態では、用紙(画像データ)上の印字位置をパラメータとして、キャリブレーション処理結果を再利用する。具体的には、キャリブレーション用の画像処理結果を別のページで再利用可能な画像処理装置(本例ではインクジェット記録装置1)において、再利用する対象となるデータを特定するために、画像データ上の位置情報と用紙の搬送方向の情報を使用することを特徴とする。
【0021】
[インクジェット記録装置のヘッドユニット及び画像読取部]
次に、インクジェット記録装置1のヘッドユニット24及び画像読取部26の配置例を説明する。
図3は、インクジェット記録装置1のヘッドユニット24及び画像読取部26の配置例を示す説明図であり、
図3Aは側面図、
図3Bは上面図を示す。
【0022】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド242が搭載されたヘッドユニット24を備える。ヘッドユニット24は、用紙Sの画像形成面に正対するように配置されており、インクジェットヘッド242には、用紙の搬送方向に直交する方向(主走査方向)に沿ってインクを吐出する複数のノズルが配列されている。
図3のインクジェットヘッド242は幅広であり、主走査方向の長さが用紙Sよりも長い。ヘッドユニット24の用紙搬送方向の下流側(以下、単に「下流側」と称する)には、主走査方向に沿って受光素子(画素)が配列された画像読取部26が配置されている。
【0023】
ユーザが後述する操作表示部52(
図4参照)を介してインクジェット記録装置1にテストチャートの印刷を指示すると、インクジェット記録装置1のプリンタエンジンを構成するヘッドユニット24は、用紙S全体にテストチャートを形成する。テストチャートは、例えば用紙Sの搬送方向の上流側からイエローの第1チャート群と、マゼンタの第2チャート群と、シアンの第3チャート群と、ブラックの第4チャート群とを有する。なお、テストチャート印刷の指示は、端末装置2の操作部66(
図5)を用いて入力してもよい。
【0024】
次に、用紙Sに形成されたテストチャートを画像読取部26が読み取る。そして、画像読取部26は、読取画像データをRAM42に記憶する。状態判定部45は、RAM42に記憶された読取画像データに基づいてインクジェットヘッド242のノズルの吐出不良(ノズル欠)を検出する。プリンタエンジンであるヘッドユニット24の状態情報は、キャリブレーション処理に反映される。状態判定部45は、後述する
図4に示す制御部40のCPU41がROM43に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
即ち、状態判定部45が吐出不良を検出した場合、後述する
図11に示す第2の画像処理装置4のキャリブレーション処理部82は、吐出不良が発生したノズルに隣接するノズルからのインクの吐出量を増やすことで、ヘッドユニット24の補正処理を行う。例えばあるノズルに吐出不良があると用紙搬送方向に沿って白スジが発生するため、吐出不良のノズルの主走査方向に隣接する両側のノズルの吐出量を増やす。また、状態判定部45は、操作表示部52に吐出不良に関する情報、例えば、吐出不良が発生したノズル、インクジェットヘッド242やヘッドユニット24等の情報を表示させてもよい。
【0026】
上述したように、テストチャートを1枚の用紙S全体に形成することで、吐出不良が発生したノズルの位置や吐出不良の度合い(白スジの大きさ等)を正確に検出することができる。これにより、補正処理の精度を向上させることができる。
【0027】
なお、インクジェット記録装置1は、円筒状に形成された画像形成ドラムを備えていてもよい。画像形成ドラムは、不図示の駆動モータにより回転する。画像形成ドラムの外周面には、給紙部から供給された用紙Sが担持される。そして、画像形成ドラム21は、回転駆動することで用紙Sを排紙部に向けて搬送する。また、画像形成ドラム21の外周面には、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26が対向して配置される。
【0028】
ここで、吐出不良の例としてノズル欠(ノズル抜けとも呼ばれる)を挙げたが、これに限定されるものではない、吐出不良としては、例えば、インクの理想的な着弾位置から幅方向に着弾がずれる吐出曲がりや、インクジェットヘッド242等へ電気的な信号が正常に伝わらなかったり、インクジェットヘッド242のノズルが制御信号に対して想定通りに反応したかったりすることによる吐出タイミングが遅れる吐出遅延等が挙げられる。吐出不良としては、これらの正常にインクが吐出できていない複数の現象を含めてもよい。
【0029】
[インクジェット記録装置の制御系]
次に、インクジェット記録装置1の制御系の構成について
図4を参照して説明する。
図4は、インクジェット記録装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0030】
図4に示すように、インクジェット記録装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)43と、を有する。さらに、制御部40は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)等からなる記憶部44を有している。記憶部44には、画像読取部26が読み取った画像のデータ、インクジェットヘッド242のノズルの吐出不良を検出するためのテストチャートや、ノズルの吐出不良検出動作を行うための情報が格納される。
【0031】
また、インクジェット記録装置1は、不図示の画像形成ドラム、用紙排出部や用紙反転部等の搬送系の駆動を行う搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53とを有している。
【0032】
制御部40のCPU41は、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25、画像読取部26、RAM42、ROM43、及び記憶部44にそれぞれシステムバス54を介して接続され、装置全体を制御する。また、CPU41は、搬送駆動部51、操作表示部52、入出力インターフェース53にそれぞれシステムバス54を介して接続されている。
【0033】
操作表示部52は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部52は、ユーザに対する指示メニュー、ノズルの吐出検出動作に関する情報や取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部52は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付ける入力部としての役割を持つ。
【0034】
入出力インターフェース53は、第2の画像処理装置4に接続されている。そして、入出力インターフェース53は、第2の画像処理装置4から印刷ジョブ(画像データ、出力設定)を受信する。入出力インターフェース53は、受信した画像データを制御部40に出力する。そして、制御部40は、入出力インターフェース53から受信した画像データを画像処理する。また、制御部40が、受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行うように構成してもよい。
【0035】
また、ヘッドユニット24は、制御部40によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて用紙S上に所定の画像を形成する。具体的には、ヘッドユニット24は、ヘッド駆動部241を駆動することで、インクジェットヘッド242からインクを所定の位置に吐出させる。ヘッドユニット24の上流側には、制御部40の制御により、近傍を通過する用紙Sが所定の温度となるように発熱を行う加熱部23が設けられている。
【0036】
ヘッドユニット24は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)に応じて4つ設けられている。4つのヘッドユニット24は、用紙Sの搬送方向に対して上流側から、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に配置されている。
【0037】
ヘッドユニット24は、用紙Sの搬送方向と直交する方向(主走査方向)において用紙Sの全体を覆う長さ(幅)に設定されている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。4つのヘッドユニット24は、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。
【0038】
ヘッドユニット24により用紙Sに形成された画像は、画像読取部26によって読み取られ、その画像データが制御部40に送られる。また、ノズルの吐出不良検出動作を行う際、制御部40は、画像読取部26から送られた画像データに基づいて吐出不良が生じているノズルを判別する。そして、制御部40は、例えば、インクジェットヘッド242の吐出不良が発生したノズルに隣接するノズルからのインクの吐出量を増やすことで、ヘッドユニット24の補正処理を行う。
【0039】
[端末装置及び画像処理装置のハードウェア構成]
図5は、画像形成システム10の各装置が備えるハードウェア構成例を示すブロック図である。各装置の機能、使用目的に合わせて装置内の各部は取捨選択される。ここでは、上述した画像形成システム10に示された端末装置2のハードウェア構成例を説明する。第1の画像処理装置3及び第2の画像処理装置4のハードウェア構成は、端末装置2と同様である。
【0040】
端末装置2は、制御部60、表示部65、操作部66、不揮発性ストレージ67、通信インターフェース68を備える。端末装置2内の各部は、バス64を介して接続されている。
【0041】
制御部60は、CPU61、ROM62、及びRAM63によって構成される。制御部60は、端末装置2内の各部の動作を制御するコンピューターの一例として用いられる。
【0042】
CPU61は、例えば操作部66を通じて行われるユーザの入力操作に応じて、プリンタードライバーを動作して印刷ジョブを生成する。CPU61は、制御部の一例であり、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM62(記録媒体の一例)から読み出して実行する。CPU61は、高速なデータ処理のためのキャッシュメモリ61mを備え、キャッシュメモリ61mを適宜利用しながら演算を行う。なお、CPU61に代えて、MPU(Micro Processing Unit)等の他の演算装置を演算部として用いてもよい。
ROM62は、不揮発性メモリの一例として用いられ、CPU61が動作するために必要なプログラムやデータ等を記憶している。
RAM63は、揮発性メモリの一例として用いられ、CPU61が行う各処理に必要な情報(データ)を一時的に記憶する。
【0043】
表示部65は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、制御部60で行われる処理の結果等を表示する。操作部66には、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネル等が用いられ、ユーザが所定の操作を行い、指示を入力することが可能である。
【0044】
不揮発性ストレージ67は、記録媒体の一例であり、CPU61が各部を制御するためのプログラム、OS等のプログラム、及びデータを記憶する。不揮発性ストレージとしては、例えば、HDD、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等が用いられる。
【0045】
通信インターフェース68は、例えばNIC(Network Interface Card)やモデム等で構成され、LAN等のネットワークNを介して通信相手の装置との接続を確立し、各種データの送受信を実行する。
【0046】
次に、第1の画像処理装置3及び第2の画像処理装置4について説明する。
第1の画像処理装置3及び第2の画像処理装置4のハードウェア構成は、
図5に示したハードウェア構成と同様である。但し、第1の画像処理装置3及び第2の画像処理装置4は、表示部65及び操作部66を備えていなくてもよい。
【0047】
第1の画像処理装置3のCPU61は、端末装置2から印刷ジョブを受信すると、処理対象のページ(現ページ)に対して、キャリブレーション処理済みの参照ページ(RAWデータ)からキャリブレーション処理結果を再利用可能な領域を特定する処理を行う。本実施形態では、再利用の形態に応じて再利用可能領域を3つの区分に分類する(
図9参照)。
【0048】
また、第2の画像処理装置4のCPU61は、端末装置2から印刷ジョブ(印刷指示)を受信すると、プリンタエンジンの主走査方向に関する状態情報(例えばノズル欠情報)、及び再利用可能領域情報に基づいて、現ページの画素群ごとにキャリブレーション処理結果の再利用の可否を判断する。そして、CPU61は、その再利用の可否の判断結果に応じて、RAM63に展開した参照ページのキャリブレーション処理結果を適宜再利用しながら現ページのキャリブレーション処理を実行する。RAM63は、キャリブエーション処理が行われる際に、参照ページのキャリブレーション処理済み画像データ(キャリブレーション処理結果)が展開される一時記憶部の一例である。この第2の画像処理装置4のキャリブレーション処理については、後に詳述する。
【0049】
[第1の画像処理装置の制御部の機能構成]
次に、第1の画像処理装置3の制御部60の機能構成について説明する。
図6は、第1の画像処理装置3の制御部60の機能構成例を示すブロック図である。
【0050】
第1の画像処理装置3の制御部60は、RIP処理部71、色変換処理部72、及び再利用可能領域特定部73を備える。第1の画像処理装置3の制御部60は、通信インターフェース68により端末装置2から受信した印刷ジョブから、印刷データと出力設定を読み出す。この印刷データは、例えば、PostscRIPt(登録商標)やPDF(Portable Document Format)等のPDL(Page Description Language)で作成されたファイルである。第1の画像処理装置3は、第1の画像処理部及び第2の画像処理部の一例である。
【0051】
RIP処理部71は、受信した印刷ジョブの出力設定に基づいて、ページ毎に印刷データ(
図2の(1))にラスタライズ処理(RIP処理)を行い色変換処理部72へ出力する。RIP処理に際して、RIP処理部71は、印刷データにおいて文字データが埋め込まれている箇所を文字領域と判断し、写真データが埋め込まれている箇所を写真領域と判断する。そして、RIP処理部71は、印刷データを基に生成したRAWデータ(以下、CMYKプレーンとも呼ぶ。)に加えて、印刷データに含まれる各領域のオブジェクト種(文字オブジェクト又は画像オブジェクト)に応じたタグビットプレーンを出力する。RAWデータは、インクジェット記録装置1で判読可能な画像形成用データである。インクジェット記録装置1が印刷する時には、タグビットプレーンに含まれる画素毎に付与されたタグビットに基づいて、CMYKプレーンに対して適切な画像処理(トーンカーブ種の変更や細線化処理等)を施すことで、印刷品質を向上させている。
【0052】
ここで、CMYKプレーンとタグビットプレーン(タグビットデータ)について、
図7と
図8を参照して説明する。
図7は、タグビットデータの一例を示す概念図である。
タグビットデータとは、インクジェット記録装置1が印刷データにRIP処理を施すことで生成するRAWデータ(ビットマップデータ)の画素毎の属性情報を示すデータである。CMYKの合計4プレーンからなるカラーデータに対して、1プレーンのタグビットプレーンからなるタグビットデータがプリンタコントローラによって生成される。CMYKプレーンの特定位置の画素と、タグビットプレーンの特定位置の画素とは一致する。
【0053】
図8は、画像データとタグビットデータの関係を示す概念図である。
図8Aは、画像データの一例を示している。この画像データは、第1の画像処理装置3に印刷データとして入力される。この画像データは、写真データが埋め込まれている箇所を写真領域、図形データが埋め込まれている箇所を図形領域、フォント等の文字データが埋め込まれている箇所を文字領域として含んでいる。画像データに含まれる各領域(画素群に相当)は、それぞれ文字オブジェクト、図形オブジェクト、写真オブジェクトとして識別される。
【0054】
図8Bは、
図8Aに例示された画像データに対応するタグビットデータを示している。タグビットデータは画像データを構成する各画素のオブジェクト属性(写真/図形/文字)に応じて割り振られたタグビットからなるデータである。写真オブジェクト、図形オブジェクト、及び文字オブジェクトには、それぞれ例えば、「1」、「2」、「4」とした写真属性を示すタグビット、図形属性を示すタグビット、及び文字属性を示す文字画像タグビットが割り振られる。なお、以下の説明では、図形オブジェクトに文字画像タグビットが割り振られるものとするが、図形オブジェクトに写真タグビットが割り振られるようにしてもよい。
【0055】
したがって、2つの画素群が同じ画素群であると言えるためには、第1にオブジェクト種が同じである、第2にCMYKプレーンの各プレーンの対応する座標の画素値が同じである、という2つの条件を満たす必要がある。なお、上記例ではCMYKの4色のプレーンを生成したが、CMYKOGVなどのより多色のプレーンを生成する構成としてもよい。
【0056】
色変換処理部72は、RIP処理部71によりRIP処理された印刷データに対し、例えばICCプロファイルに基づく色変換テーブルを用いてページ毎に色変換処理を行う。例えば、色変換処理部72は、RIP処理後の印刷データのCMYK値を、色変換テーブルを用いてユーザが所望する他のCMYK値に変換する。色変換処理部72は、変換した全ページ分のRAWデータを、一時的に第1の画像処理装置3の不揮発性ストレージ67に保存する。
【0057】
再利用可能領域特定部73は、処理対象のページ(現ページ)に対して、キャリブレーション処理済みの参照ページ(RAWデータ)からキャリブレーション処理結果を再利用可能な領域を特定する処理を行う。再利用可能領域特定部73は、現ページ内の画素を3種類の区分に分類し、それぞれの区分に合わせたデータ(情報)を生成する。この区分は単画素単位ではなく、
図8から理解されるように、複数の画素から構成されある程度の大きさを持った画素群である。例えば、画素群は、ある種のオブジェクトを含む32×32ピクセルの矩形などである。但し、画素群の形状は矩形に限定されない。再利用可能領域特定部73は、画素群単位で画素値の比較を行い、比較対象の画素群に含まれる全ての画素が同じであるかどうかを判断の基準とする。この再利用可能領域特定部73は、第1の画像検出部73aと第2の画像検出部73bを備える。
【0058】
第1の画像検出部73aは、参照ページ(被参照用の第1の画像データの一例)と現ページ(処理対象の第2の画像データの一例)を比較し、現ページから、参照ページの画素群と同じ座標であって構成画素が同じである画素群(第1の画素群)を検出する。再利用可能領域特定部73は、第1の画像検出部73aで検出された第1の画素群を、
図9に示すように“区分1”に分類する。即ち、“区分1”では、参照ページと現ページの画素群を同じ座標(位置)で比較し、同じ内容であると判断される。画素群の位置の一致については、例えば重心に相当する画素や特定の画素(矩形の画素であれば左上角の画素など)の座標を比較して判断される。
【0059】
第2の画像検出部73bは、参照ページと現ページを比較し、現ページから、参照ページの画素群と用紙搬送方向に直交する主走査方向の座標が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、さらに構成画素が同じである画素群(第2の画素群)を検出する。再利用可能領域特定部73は、第1の画像検出部73aで検出された第2の画素群を、“区分2”に分類する。即ち、“区分2”では、参照ページと現ページの画素群の位置が互いに用紙搬送方向に対してのみ異なってよいものとする(画像の内容は同じ)。その理由は、一つにはインクジェット記録装置1のキャリブレーション処理であるノズル欠補正の「同一の用紙搬送方向上では同じ補正処理を行う」という特徴に着眼しているためである。
【0060】
さらに、再利用可能領域特定部73は、第1の画素群と第2の画素群のいずれにも区分されない画素群を、“区分3”に分類する。これらの区分1~区分3の画素群の情報(再利用可能領域特定結果)はRAM63に一時記憶され、再利用可能領域情報3Rとして第2の画像処理装置4によるキャリブレーション処理に利用される。
【0061】
[再利用可能領域の区分例]
ここで、再利用可能領域の区分例について、
図9を参照して説明する。
図9は、再利用可能領域の区分例を示す説明図である。
【0062】
再利用可能領域情報3Rは、「区分No」、「区分名」、「生成するデータ」の項目を備える。ページ毎に再利用可能領域情報3Rをデータベース化して一時的にRAM63に記憶する。
【0063】
「区分No」は、区分の種類を識別するための番号である。
図9では、“区分1”~“区分3”が割り当てられている。
【0064】
「区分名」は、「区分No」の名称を示す。
図9では、区分1の名称が“再利用可能(同位置)”、区分2の名称が“再利用可能(異位置)”、そして区分3の名称が“再利用不可”である。
“再利用可能(同位置)”は、参照ページと現ページの双方の画素群が、同じ位置(座標)にあって、各画素群を構成する画素の値が同じであるため、再利用可能であることを示す。
“再利用可能(異位置)”は、参照ページと現ページの双方の画素群が、用紙搬送方向に直交する主走査方向の位置(座標)が同じであって用紙搬送方向の座標が異なり、各画素群を構成する画素の値が同じであるため、再利用可能であることを示す。
“再利用不可”は、各画素群を構成する画素の値が異なるため、再利用できないことを示す。
【0065】
「生成するデータ」は、各区分に該当する画素群を検出したときに生成されるデータ(情報)であって、キャリブレーション処理の際に必要となるデータを示す。
区分1:生成するデータなし
区分2:現画像(画素群)の座標と大きさ、参照画像(画素群)のページ番号と座標
区分3:現画像(画素群)のRAWデータ、配置される座標、現画像(画素群)の大きさ
【0066】
再利用可能領域特定部73は、全ページ分の再利用可能領域の特定処理が完了した後、RAWデータと再利用可能領域特定結果(
図2の(2))を、通信インターフェース68により第2の画像処理装置4へ送信する。第2の画像処理装置4は、受信したこれらのデータを不揮発性ストレージ67に格納しておく。
【0067】
[再利用可能領域の画像例]
図10は、再利用可能領域特定処理を示す説明図である。
印刷ジョブのページP1は参照ページ、ページP1に続いて搬送されているページP2は処理対象ページ(現ページ)の例である。ページP1とページP2を比較すると、ページP2には、ページP1の画素群と同じ位置かつ同じ内容(画像A)の画素群Im1が存在する。このページP2の画素群Im1は“区分1”に分類される。またページP2には、ページP1の画素群と同じ用紙搬送方向上に位置して同じ内容(画像B)の画素群Im2が存在する。このページP2の画素群Im2は“区分2”に分類される。ページP2に画像Cを構成する画素群Im3が存在するが、ページP1に同じ位置又は同じ用紙搬送方向上に位置する画像Cの画素群が存在しないため、画素群Im3は“区分3”に分類される。
【0068】
[第2の画像処理装置の制御部の機能構成]
次に、第2の画像処理装置4の制御部60の機能構成について説明する。
図11は、第2の画像処理装置4の制御部60の機能構成例を示すブロック図である。
【0069】
第2の画像処理装置4の制御部60は、エンジン状態取得部81、キャリブレーション処理部82、及びデータ転送処理部83を備える。第2の画像処理装置4の制御部60は、操作表示部52又は端末装置2から印刷開始要求を受信すると、RAWデータに対するキャリブレーション処理の動作を開始する。第2の画像処理装置4は、画像処理部の一例である。
【0070】
エンジン状態取得部81は、インクジェット記録装置1のプリンタエンジンの主走査方向に関する状態情報(以下「エンジン状態情報」と称す。)を取得し、キャリブレーション処理部82へ出力する。本実施形態では、エンジン状態情報は、インクジェット記録装置1のインクジェットヘッド242のノズルの主走査方向の欠陥位置を示す情報(ノズル欠情報)である。エンジン状態取得部81は、印刷開始要求を受信したときにインクジェット記録装置1からエンジン状態情報を取得してもよいし、所定の時間間隔でエンジン状態情報を取得し不揮発性ストレージ67に最新の情報を記憶しておいてもよい。
【0071】
キャリブレーション処理部82は、プリンタエンジンの主走査方向に関する状態情報、及び再利用可能領域情報3Rに基づいて、処理対象ページからキャリブレーション処理済みRAWデータを生成し、RAM63へ記憶する。RAM63は、例えばSDRAMにより構成される。
【0072】
データ転送処理部83は、DMA(Direct Memory Access)転送機能を有し、キャリブレーション処理済みRAWデータを、インクジェット記録装置1(プリンタエンジン)へ随時転送する。
【0073】
上述のように構成された制御部60では、キャリブレーション処理部82は、アクセス速度の遅い不揮発性ストレージ67から先頭ページのRAWデータの読み出しを開始し、エンジン状態情報(ノズル欠情報など)を元に、RAWデータに対しキャリブレーション用の画像処理を実施する。そして、キャリブレーション処理部82は、RAWデータにキャリブレーション用の画像処理を実施しながら、キャリブレーション処理済みのRAWデータをアクセス速度の高速なRAM63の記憶領域へと展開していく。そして、データ転送処理部83は、キャリブレーション処理部82の指示に基づき、先頭ページのキャリブレーション処理が終了した後のRAWデータ(
図2の(3))を、DMA(Direct Memory Access)転送処理によりCPU61を介さずにRAM63からインクジェット記録装置1(プリンタエンジン)に転送する。
【0074】
インクジェット記録装置1(プリンタエンジン)は、キャリブレーション処理済みのRAWデータからインクジェットヘッド242の駆動情報に変換し、ノズルからインクを吐出して用紙に印字し、印刷物(
図2の(4))を生成する。
【0075】
複数ページの印刷ジョブの場合、2ページ目以降のキャリブレーション用の画像処理は、キャリブレーション処理済みのRAWデータを、RAM63上から破棄せずに、RAM63上に上書きを行っていく。
【0076】
具体的には、現ページの対象画素群が区分1であり“再利用可能(同位置)”の場合には、何もせずに前ページの同じ座標にある対応する画素群のキャリブレーション処理済みのRAWデータを再利用する。
対象画素群が区分2であり“再利用可能(異位置)の場合には、前ページの参照先の座標(即ち、同一の用紙搬送方向上の座標)にあるキャリブレーション処理済みのRAWデータをコピーして再利用する。
対象画素群が区分3であり“再利用不可”の場合には、該当画素群のRAWデータに対し新規にキャリブレーション用の画像処理を実施し、RAM63上のキャリブレーション処理済みのRAWデータを更新する。
【0077】
[第1の画像処理装置による第1の処理]
次に、第1の画像処理装置3による第1の処理について説明する。
図12は、第1の画像処理装置3による第1の処理の手順例を示すフローチャートである。
図12では、第1の画像処理装置3が出力用の印刷データを受信し、第2の画像処理装置4にデータを転送するまでの処理の流れを示している。
【0078】
始めに第1の画像処理装置3の制御部60は、通信インターフェース68により端末装置2から印刷ジョブ(印刷データ、出力設定)を受信する(S1)。
【0079】
次いで、制御部60のRIP処理部71は出力設定に基づいて印刷データにRIP処理を行い、色変換処理部72は出力設定に基づいてRIP処理済みの印刷データに色変換処理を行う。これらの処理により、印刷データがRAWデータに変換される(S2)。
【0080】
次いで、制御部60の再利用可能領域特定部73は、処理対象ページ(現ページとも称する)に対し参照ページのキャリブレーション処理結果を再利用可能な領域の特定を行う(S3)。そして、再利用可能領域特定部73は、RAWデータと再利用可能領域特定結果を、通信インターフェース68により第2の画像処理装置4へ送信する(S4)。
【0081】
[再利用可能領域特定処理]
ここで、
図12に示したステップS3の再利用可能領域特定処理について説明する。
図13は、ステップS3の再利用可能領域特定処理の手順例を示すフローチャートである。この再利用可能領域特定処理は、RAWデータの各色のタグビットプレーンについて行われる。
【0082】
始めに再利用可能領域特定部73は、現ページ内の対象とする画素群が最後の画素群であるか否か、即ち現ページ内の全ての画素群に対して各区分への分類が完了したかどうかを確認する(S11)。区分の分類が済んでいない画素群がある場合には(S11のNO)、次の画素群を対象としてステップS12の処理へ移行する。この段階では、現ページ内の複数の画素群の中の一番目の画素群であるため、まだ全ての画素群に対して区分の分類は完了していない。
【0083】
次いで、再利用可能領域特定部73は、第1の画像検出部73aにより現ページと参照ページの画素群を同じ座標で比較する処理を行う(S12)。そして、第1の画像検出部73aは、現ページで対象としている画素群が、参照ページの画素群と同じ座標であって構成画素が同じであるか否かを判定する(S13)。現ページの対象画素群が参照ページの画素群が同じ(位置と内容が同じ)である場合には(S13のYES)、第1の画像検出部73aは、現ページの当該画素群を区分1に分類し(S14)、ステップS11の処理に移行する。
【0084】
一方、現ページの画素群が参照ページの画素群と同じではない場合には(S13のNO)、再利用可能領域特定部73は、第2の画像検出部73bにより現ページと参照ページの画素群を用紙搬送方向上で比較する処理を行う(S15)。
【0085】
そして、第2の画像検出部73bは、現ページで対象としている画素群が、参照ページの画素群と同じ用紙搬送方向上であって構成画素が同じであるか否かを判定する(S16)。現ページの対象画素群が参照ページの画素群と同じ用紙搬送方向上であって構成画素が同じである場合には(S16のYES)、第2の画像検出部73bは、現ページの当該画素群を区分2に分類する(S17)。このとき、参照ページにおいて現ページの対象画素群に対応する画素群の位置を示す座標情報を、分類結果と合わせて保存する。ステップS17の処理が終了後、第2の画像検出部73bは、ステップS11の処理に移行する。
【0086】
一方、現ページの対象画素群と同じ画素群が参照ページの同じ用紙搬送方向にない場合には(S16のNO)、再利用可能領域特定部73は、区分1にも区分2にも分類されなかった画素群を区分3に分類し(S18)、ステップS11の処理に移行する。このように再利用可能領域特定部73は、現ページ内の複数の画素群に対して順次ステップS11~S18の処理を適宜実行する。そして、現ページ内の全ての画素群に対して区分の分類が完了した場合には(S11のYES)、再利用可能領域特定部73は、
図12のステップS4の処理へ戻る。
【0087】
上述の第1の画像処理装置3による再利用可能領域特定が終了すると、RAWデータと再利用可能領域特定結果が、第1の画像処理装置3から第2の画像処理装置4へ送信される。このRAWデータへの変換と再利用可能領域特定を含む第1の処理は、印刷指示受信から印刷ジョブ完了までの時間を短縮する上で、印刷指示を受信する前に実行しておくことが望ましい。
【0088】
[第2の画像処理装置による第2の処理]
次に、第2の画像処理装置4による第2の処理について説明する。
図14は、第2の画像処理装置4による第2の処理の手順例を示すフローチャートである。
図14では、第2の画像処理装置4がRAWデータと再利用可能領域特定結果を受信し、RAWデータにキャリブレーション処理を行ってインクジェット記録装置1へ転送するまでの流れを示している。
【0089】
始めに第2の画像処理装置4の制御部60は、ユーザの操作によりインクジェット記録装置1の操作表示部52又は端末装置2から印刷指示を受信する(S21)。
【0090】
次いで、制御部60のエンジン状態取得部81は、インクジェット記録装置1よりヘッドユニット24を含むプリンタエンジンの状態についての情報(ノズル欠情報等)を取得する(S22)。予めインクジェット記録装置1からプリンタエンジンの状態情報を取得し、RAM63に記憶しておいてもよい。
【0091】
次いで、キャリブレーション処理部82は、RAWデータの1ページ目のキャリブレーション処理を実施し、そして、データ転送処理部83は、インクジェット記録装置1(プリンタエンジン)に対してキャリブレーション処理済みRAWデータを転送する(S23)。
【0092】
次いで、キャリブレーション処理部82は、印刷すべき次のページがあるかどうかを確認し(S24)、次のページがない場合には(S24のNO)、本フローチャートの処理を終了する。一方、次のページがある場合には(S24のYES)、キャリブレーション処理部82は、次のページ(Nページ目)を対象としてキャリブレーション処理を実施する(S25)。ここでは、2ページ目のキャリブレーション処理が実施される。
【0093】
そして、データ転送処理部83は、処理対象のNページ目(2ページ目)のキャリブレーション処理が終了すると、インクジェット記録装置1に対してキャリブレーション処理済みRAWデータを転送する(S26)。制御部60は、ステップS26の処理が終了後にステップS24の処理に移行し、(N+1)ページ目(3ページ目)以降のページがある場合には(S24のYES)、ステップS24~S26の処理を繰り返す。
【0094】
[Nページ目のキャリブレーション処理]
ここで、
図14に示したステップS25のNページ目のキャリブレーション処理について説明する。
図15は、ステップS25におけるNページ目のキャリブレーション処理の手順例を示すフローチャートである。
【0095】
始めにキャリブレーション処理部82は、不揮発性ストレージ67(
図5)からNページ目のRAWデータに対する参照ページのキャリブレーション処理結果(キャリブレーション処理済みRAWデータ)を、RAM63に読み込む(S31)。
【0096】
次いで、キャリブレーション処理部82は、再利用可能領域特定結果を参照し、Nページ目の対象とする画素群の区分が“区分2”であるか否かを判定する(S32)。キャリブレーション処理部82は、対象画素群の区分が“区分2”である場合には(S32のYES)、再利用可能領域特定結果として保存されている座標情報を元に、該当画素群について参照ページの対応する座標にある画素群のデータをコピーする。そして、キャリブレーション処理部82は、このコピーしたデータを用いてRAM63に記憶された参照ページのキャリブレーション処理済みRAWデータの該当画素群のデータを更新する(S33)。ステップS33の処理後、キャリブレーション処理部82は、ステップS36の処理に移行する。
【0097】
また、キャリブレーション処理部82は、対象画素群の区分が“区分2”ではない場合には(S32のNO)、再利用可能領域特定結果を参照し、対象画素群の区分が“区分3”であるか否かを判定する(S34)。キャリブレーション処理部82は、対象画素群の区分が“区分3”である場合には(S34のYES)、プリンタエンジン状態情報に基づいて、該当画素群に対して新規にキャリブレーション処理を実施する。そして、キャリブレーション処理部82は、このキャリブレーション処理結果を用いて、RAM63に記憶された参照ページのキャリブレーション処理済みRAWデータの該当画素群のデータを更新する(S35)。ステップS35の処理後、キャリブレーション処理部82は、ステップS36の処理に移行する。
【0098】
また、キャリブレーション処理部82は、対象画素群の区分が“区分3”ではない場合には(S34のNO)、対象画素群の区分は“区分1”であると判断する。区分1の画素群については、RAM63に記憶された参照ページのキャリブレーション処理済みRAWデータがそのまま利用される。
【0099】
次いで、ステップS33又はステップS35の処理が終了後、あるいはステップS35のNOの場合には、キャリブレーション処理部82は、現ページ内の全ての画素群に対してキャリブレーション処理が完了したかどうかを確認する(S36)。現ページ内にキャリブレーション処理が済んでいない画素群がある場合には(S36のNO)、キャリブレーション処理部82は、次の画素群を対象としてステップS32の処理に移行し、適宜ステップS32~S36の処理を実施する。
【0100】
そして、現ページ内の全ての画素群に対してキャリブレーション処理が完了した場合には(S36のYES)、
図14のステップS26の処理に戻り、現ページのキャリブレーション処理済みデータがインクジェット記録装置1に転送される。
【0101】
このように、キャリブレーション処理部82は、現ページに対しキャリブレーション処理を行う際、RAM63に参照ページのキャリブレーション処理済み画像データを展開する。そして、キャリブレーション処理部82は、現ページの区分2の画素群の領域については、参照ページの同一の用紙搬送方向上にある該当画素群の補正用の画像処理結果を再利用して、RAM63に展開された参照ページのキャリブレーション処理済み画像データの該当領域を上書き更新する。また、現ページの区分3の画素群の領域については、新規にキャリブレーション処理を行い参照ページのキャリブレーション処理済み画像データの該当領域を更新する。この区分2及び区分3の画素群のそれぞれの領域の更新が終了後にRAM63に展開されているRAWデータが、現ページのキャリブレーション処理済みRAWデータとして、プリンタエンジンへ転送される。
【0102】
上述した第1の実施形態によれば、現ページに対する再利用可能領域特定情報に基づいて、参照ページのキャリブレーション処理結果を現ページのキャリブレーション処理に再利用する。そのため、新規に行うキャリブレーション処理を削減することができるので、キャリブレーション処理(第2の処理)に要する時間を短縮できる。それゆえ、現ページに対するキャリブレーション処理の高速化が実現され、複数ページのジョブを印刷するときのリアルタイム性を向上させることが可能となる。
【0103】
なお、上述した第1の実施形態では、現ページの直前のページを参照ページとしたが、現ページと参照ページは、別々の印刷ジョブの印刷ページでもよい。例えば単数ページを複数部だけ印刷する印刷ジョブがある場合、各ページは異なる印刷ジョブにより印刷されるが、このような場合でも参照ページを確保して適宜キャリブレーション用の画像処理を実施することにより、印刷品質が維持される。
【0104】
また、上述した第1の実施形態では、比較される参照ページと現ページが、同一の印刷ページであってもよい。例えば、あるページの区分1及び区分2に分類される画素群に対し、同一ページ内の同一の用紙搬送方向上にある同じ内容の画素群のキャリブレーション処理結果を再利用することができる。現ページと同じページのキャリブレーション処理結果を再利用できるので、RAM63の記憶容量を低減できる。
【0105】
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態は、キャッシュメモリ61mを用いてRAM63の使用する記憶領域の量を削減するものである。
【0106】
図16は、第2の実施形態に係る第2の画像処理装置4の制御部60Aの機能構成例を示すブロック図である。
制御部60Aは、エンジン状態取得部81、キャリブレーション処理部82、データ転送処理部83、及びキャッシュデータ管理部84を備える。
【0107】
キャッシュデータ管理部84は、キャッシュメモリ61mに記憶されるキャッシュデータを管理する。このキャッシュデータ管理部84は、現ページの区分2の画素群に対応する、参照ページの再利用されるキャリブレーション処理結果のみをキャッシュメモリ61mにキャッシュデータとして記憶する。
【0108】
上述した第2の実施形態によれば、RAM63の使用する記憶領域の量を削減することができる。
【0109】
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態は、一定の条件が整えば、再利用可能領域特定部73が再利用可能領域の特定を終了する例である。
【0110】
第1の画像処理装置3のRAM63に、インクジェット記録装置1(プリンタエンジン)の印刷速度の情報と、第2の画像処理装置4によるキャリブレーション処理に要する時間の情報が記憶されているものとする。
【0111】
再利用可能領域特定部73は、現ページに占める区分1及び区分2の画素群の割合が、予め設定された閾値(例えば80%)以上になったことを検出した場合には、区分1及び区分2の画素群の検出処理を終了する。ここで閾値は、プリンタエンジンの印刷速度とキャリブレーション処理に要する時間との兼ね合いで決まる。つまり、残り(20%)の画素群に対して新規のキャリブレーション処理を実施したとしても、リアルタイムのプリント処理に間に合うように閾値を設定すればよい。
【0112】
上述した第3の実施形態は、現ページ内に再利用可能領域の特定をしていない画素群が残っていたとしても途中で特定を終了する。このため、現ページに対する画素群の検出完了までの時間を削減することができる。
【0113】
<4.第4の実施形態>
図3に示したインクジェットヘッド242は幅広であり、主走査方向の長さが用紙Sよりも長かったが、本実施形態は、インクジェットヘッドの主走査方向の長さが用紙Sよりも短い場合の例である。
【0114】
図17は、第4の実施形態に係るヘッドユニット24Aの例を示す上面図である。
ヘッドユニット24Aのインクジェットヘッド242は、主走査方向の長さが用紙Sのおよそ半分である。ヘッドユニット24Aを所定のタイミングで主走査方向に移動させることにより、インクジェットヘッド242からインクを用紙Sの主走査方向の全体に吐出させる。インクジェットヘッド242の主走査方向の長さが、用紙Sのおよそ1/3の長さでも、ヘッドユニット24Aを3回に分けて移動させることで用紙Sの主走査方向の全体をカバーすることができる。
【0115】
<5.変形例>
上述した各実施形態では、プリンタエンジンの主走査方向に関する状態情報(エンジン状態情報)としてノズル欠情報に基づくノズル欠補正処理(補間処理)を例示したが、この例に限らない。例えば、電子写真方式の画像形成装置において用紙搬送方向に沿って発生した縦スジ(白スジ又は黒スジ)をエンジン状態情報として、キャリブレーション処理(補正処理)を実施することも可能である。即ち、本発明が適用されるプリンタエンジンは、インクジェット記録装置1に限らず、電子写真方式の画像形成装置等、他の方式の画像形成装置でもよい。
【0116】
また、プリンタエンジンの状態情報の例として、ノズル欠情報について説明したが、ノズルからのインクの吐出量が設定よりも大きい(黒スジに相当)場合にも、上述した本実施形態により参照ページのキャリブレーション処理結果を再利用することができる。
【0117】
また、第1の画像処理装置3と第2の画像処理装置4の各機能を、同一の画像処理装置内に搭載してもよい。また、第1の画像処理装置3と第2の画像処理装置4の各機能を、インクジェット記録装置1内に搭載してもよい。さらにまた、第1の画像処理装置3と第2の画像処理装置4の各機能が、更に多数の装置に分散して搭載されてもよい。
【0118】
また、上述した各実施形態において、再利用可能領域特定部73において比較される参照ページと現ページのページ間隔は、第2の画像処理装置4が使用するRAM63(メモリの一例)の記憶容量に応じて変更してもよい。第2の画像処理装置4が備えるRAM63の記憶容量が大きい場合、複数ページ分のキャリブレーション処理結果を保持しておくことができるため、参照されるページと現在のページの差を2ページ、3ページ…と広げることが可能である。例えば、印刷データの各ページの内容が類似している場合やエンジン状態情報が頻繁に変化しない場合には、始めに参照ページとして1ページ目のキャリブレーション処理結果を取得して後続の複数のページで流用することで、CPU61の負荷を低減し、キャリブレーション処理に要する時間を削減できる。
【0119】
また、上述した各実施形態において、キャリブレーション処理部82は、印刷ジョブを実行中にプリンタエンジンからキャリブレーション用の画像処理の実行指示を受信した場合には、第1の画像検出部73a及び第2の画像検出部73bの検出結果によらず、以降の画像データの全ての領域に対して新規にキャリブレーション用の画像処理を行う。例えば、インクジェット記録装置1のプリンタエンジンは、印刷ジョブのプリント枚数が多い場合には、予め設定した規定枚数(例えば5,000枚)の印刷が完了する毎にキャリブレーション用の画像処理を実施する。あるいは、ユーザから操作表示部52を介してキャリブレーション用の画像処理の実行を指示された場合には、プリンタエンジンは、キャリブレーション用の画像処理を実施する。このように、適宜キャリブレーション用の画像処理を実施することにより、エンジン状態が判定されて印刷品質が維持される。
【0120】
また、上述した各実施形態では、記録材として用紙を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、例えば、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等その他各種の記録材を適用できる。
【0121】
さらに、本発明は上述した各実施形態例に限られるのではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0122】
例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成要素に置き換えることは可能である。また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成要素の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0123】
また、上記の各構成要素、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路の設計などによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成要素、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…インクジェット記録装置、 2…端末装置、 3…第1の画像処理装置、 3R…再利用可能領域特定情報、 4…第2の画像処理装置、 10…画像形成システム、 24…ヘッドユニット、 242…インクジェットヘッド、 26…画像読取部、 44…記憶部、 45…状態判定部、 60…制御部、 61…CPU、 61m…キャッシュメモリ、 71…RIP処理部、 72…色変換処理部、 73…再利用可能領域特定部、 73a…第1の画像検出部、 73b…第2の画像検出部、 81…エンジン状態取得部、 82…キャリブレーション処理部、 83…データ転送処理部、 Im1~Im3…画素群