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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】受信機及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20220117BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20220117BHJP
   H03G 3/20 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H04B1/16 R
H04B1/10 E
H03G3/20 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018056687
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019169860
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】内記 康則
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-195688(JP,A)
【文献】特開2002-290867(JP,A)
【文献】特開平05-183455(JP,A)
【文献】国際公開第2011/151860(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0297622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010453(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0191007(US,A1)
【文献】特開2007-181136(JP,A)
【文献】特開昭62-057323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 1/10
H03G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を増幅する受信増幅部と、
増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるAGC動作の利得設定値を前記受信増幅部に設定する制御部と、
前記利得設定値の変化を監視し、前記利得設定値の変化が所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記受信信号にパルスノイズが含まれるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、
増幅後の受信信号を整流する絶対値算出部と、
整流された信号を平滑して信号値とする積分処理部と、
前記信号値と所定の基準値との差分値を算出する差分算出部と、
前記差分値に基づき前記利得設定値を制御する、アタック制御部およびリリース制御部と、を有し、
前記判定部は、
前記信号値が前記所定の基準値を超えた期間における前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、パルスノイズが含まれると判定し、
前記制御部は、前記パルスノイズが含まれると判定された場合、前記パルスノイズの発生直前の利得設定値を前記パルスノイズ発生直後の利得設定値として前記受信増幅部に設定する、
受信機。
【請求項2】
前記受信機は、排他的に使用する複数のフィルタを備え、
前記判定部は、前記制御部が前記フィルタを通過した後の前記受信信号に対して前記利得設定値を設定する場合、前記フィルタの種類に基づいて前記所定期間閾値及び前記所定変化量閾値の少なくとも一方を変更する、
請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記利得設定値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記利得設定値は、AGC動作の変化点で記憶することを特徴とする、
請求項1または2に記載の受信機。
【請求項4】
受信増幅部が増幅した増幅後の受信信号を整流し、
整流された信号を平滑して信号値とし、
前記信号値と所定の基準値との差分値を算出し、
前記差分値に基づき前記受信増幅部の増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を前記受信増幅部に設定し、
前記信号値が前記所定の基準値を超えた期間における前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、前記受信信号にパルスノイズが含まれると判定し、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、前記パルスノイズの発生直前の利得設定値を前記パルスノイズ発生直後の利得設定値として前記受信増幅部に設定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信機及びプログラムに関し、特に受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の了解度の低下を抑制することが可能な受信機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
受信信号をIF(Intermediate Frequency)帯域の信号に変換し、変換後のIF帯域のIF信号を増幅する受信機が知られている。受信機は、増幅部でIF信号を増幅し、増幅部は、その利得を自動で制御するIF-AGC(Automatic Gain Control)機能を有する。
【0003】
特許文献1には、受信信号の時間経過に伴う電力推移を電力算出で求め、得られた受信電力値系列に対して移動平均区間毎の移動平均を移動平均電力算出で求めることが記載されている。また、特許文献1には、得られた移動平均電力値系列中のノイズ閾値よりも大なる区間をインパルスノイズ重畳区間としてインパルスノイズ検出で検出することが記載されている。また、特許文献1には、受信電力値系列中のインパルスノイズ重畳区間の電力値を一定の置換電力値に電力置換で置換したものを新たな受信電力値系列とする一連の処理を実行する、ことが記載されている。特許文献1には、IF-AGC機能を有する受信機が受信信号と共にパルスノイズを受信した際に受信信号の了解度が低下しないようにする方法は、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-156687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IF-AGC機能を有する受信機は、受信信号と共に、例えば、電燈のスイッチング動作に伴って発生するパルスノイズを受信する場合がある。このような場合、IF-AGC機能を有する受信機は、受信信号の振幅よりも大きな振幅を有するパルスノイズに合わせて利得を制御する。これにより、パルスノイズの振幅よりも小さな振幅の受信信号は、その振幅が低下するため、了解度が低下し、若しくは音声が聞こえなくなる。このように、IF-AGC機能を有する受信機が受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質が低下するという問題があった。
本発明は、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本開示は、
受信信号を増幅する受信増幅部と、
増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるAGC動作の利得設定値を前記受信増幅部に設定する制御部と、
前記利得設定値の変化を監視し、前記利得設定値の変化が所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記受信信号にパルスノイズが含まれるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、前記パルスノイズが含まれると判定された場合、前記パルスノイズの発生直前の利得設定値を前記パルスノイズ発生直後の利得設定値として前記受信増幅部に設定する、
受信機を提供する。
【0007】
また、本開示は、
受信増幅部が増幅した増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を前記受信増幅部に設定し、
前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、前記受信信号にパルスノイズが含まれると判定し、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、前記パルスノイズの発生直前の利得設定値を前記パルスノイズ発生直後の利得設定値として前記受信増幅部に設定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
図2】実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
図3】実施の形態に係る受信機の動作を例示するフローチャートである。
図4A】受信増幅部に入力するIF信号を例示するグラフである。
図4B】受信増幅部に設定するAGC電圧を例示するグラフである。
図4C】受信増幅部から出力するIF信号を例示するグラフである。
図5A】受信増幅部に入力するIF信号を例示するグラフである。
図5B】受信増幅部に設定するAGC電圧を例示するグラフである。
図5C】受信増幅部から出力するIF信号を例示するグラフである。
図6】実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
先ず、実施の形態に係る受信機の概要を説明する。
図1は、実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施の形態に係る受信機10は、受信増幅部11と、制御部12と、判定部13と、を備える。
【0013】
受信増幅部11は、受信信号を増幅する。
【0014】
制御部12は、増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を受信増幅部11に設定する。受信増幅部11は、利得設定値に基づいて受信信号を増幅する。
【0015】
判定部13は、利得制御値の変化が所定変化量閾値を超えた期間が所定期間閾値未満である場合、受信信号にパルスノイズが含まれると判定する。
【0016】
制御部12は、受信信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生直前の利得設定値を、パルスノイズ発生直後の利得設定値として受信増幅部11に設定する。
【0017】
受信増幅部11が増幅した後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を受信増幅部11に設定する機能を、AGC機能と称する。IF帯域のIF信号に対するAGCを、IF-AGCと称する。受信機10は、このIF-AGC機能を有する。
【0018】
ここで、IF-AGC機能を説明する。
【0019】
IF-AGC機能は、受信増幅部が増幅した後の信号の振幅を、所定範囲内に収めるため、受信増幅部に設定するAGC電圧を制御する。AGC電圧を上げると受信増幅部の利得が増加し、受信増幅部から出力される出力信号の振幅が大きくなる。AGC電圧を下げると受信増幅部の利得が低下し、受信増幅部から出力される出力信号の振幅が小さくなる。
【0020】
IF-AGC機能は、出力信号の一部を、整流、平滑し、出力信号の振幅に応じた信号値(例えば直流電位)とする。信号値と、所定の基準値とを比較し、所定の基準値(リファレンスレベル)を超えた場合に、受信増幅部の利得を下げ、出力信号の振幅が所定範囲内に収めるよう制御する。
【0021】
ここで、受信機10が、パルスノイズを受信した場合のIF-AGC機能を説明する。
【0022】
パルスノイズは、数ミリ秒程度までの短い期間において大きな振幅を有するノイズ信号である。IF-AGC機能を有する受信機は、このパルスノイズが入力した場合、リファレンスレベル以上の振幅を有するパルスノイズを所定範囲内に収めるために、AGC電圧を下げて受信増幅部の利得を下げる動作を行う。この動作をアタック動作と称する。アタック動作では、パルスノイズの振幅を所定範囲内に収めるために、例えば、2ミリ秒程度の時間を掛けてAGC電圧を低下させて受信増幅部の利得を下げる。
【0023】
一方、パルスノイズが過ぎ去った後は、パルスノイズが無くなるので、受信増幅部に入力する信号の振幅は下がる。このため、受信機は、下がっていた利得を回復させる(上昇させる)ために、AGC電圧を上げて受信増幅部の利得を上げる動作を行う。この動作をリリース動作と称する。リリース動作では、例えば、100ミリ秒から10秒程度の時間を掛けてAGC電圧を上げて受信増幅部の利得を回復させる。
【0024】
また、受信機が受信信号と共にパルスノイズを受信した場合(受信信号にパルスノイズが含まれる場合)、パルスノイズが受信機に入力される毎に、アタック動作により受信増幅部の利得が下がる。このため、目的とする受信信号の振幅が小さくなり、その了解度が低下し、若しくは音声が聞こえなくなる。
【0025】
そこで、実施の形態に係る受信機10は、受信信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生直前の利得設定値を、パルスノイズ発生直後の利得設定値として受信増幅部11に設定する。これにより、アタック動作に伴う受信増幅部11の利得の低下を緩和することができる。
【0026】
次に、実施の形態に係る受信機の詳細を説明する。
図2は、実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
図2では、受信信号がIF帯域のIF信号に変換され、IF信号が受信増幅部11で増幅され、該増幅されたIF信号に対してIF-AGCが行われることを例に挙げて説明する。実施の形態は、これには限定されない。受信信号が増幅され、該増幅された受信信号に対してAGCが行われてもよい。
【0027】
図2に示すように、受信機10の制御部12は、絶対値算出部121と、積分処理部122と、差分算出部123と、基準値生成部124と、リリース制御部127と、アタック制御部126と、切替部125と、電圧利得変換部128とを有する。判定部13は、パルスノイズ判定部131を有する。
【0028】
受信機10は受信信号を受信し、受信された受信信号はIF帯域のIF信号に変換される。受信増幅部11は、変換された後のIF信号を増幅する。絶対値算出部121は、例えば、整流回路を使用してIF信号の振幅を絶対値にする。積分処理部122は、IF信号の振幅の絶対値を積分(平滑)し、IF信号の振幅に応じた信号値を差分算出部123とアタック制御部126とに出力する。差分算出部123は、信号値と、基準値生成部124が生成した基準値と、の差分を算出する。基準値をリファレンスレベルと称することもある。
【0029】
切替部125は、該差分がゼロを超えた場合、すなわち、信号値が基準値を超えた場合、アタック制御部126によるアタック動作を選択するため、端子1と端子3とを接続する。これにより、AGC電圧としてアタック制御部126の出力電圧が選択される。
【0030】
また、切替部125は、該差分がゼロ以下の場合、すなわち、信号値が基準値以下の場合、リリース制御部127によるリリース動作を選択するため、端子1と端子2とを接続する。これにより、AGC電圧としてリリース制御部127の出力電圧が選択される。AGC電圧は、受信増幅部11に設定する利得設定値に相当する。
【0031】
判定部13は、パルスノイズ判定部131を有する。パルスノイズ判定部131は、IF-AGCのAGC電圧の変化を監視し、所定条件の変化が起こったか否かを検出する。パルスノイズ判定部131は、AGC電圧が所定の変化であることが検出された場合には、IF信号にパルスノイズが含まれると判定する。また、パルスノイズ判定部131は、AGC電圧が所定の変化であることが検出されない場合には、IF信号にパルスノイズが含まれないと判定する。
【0032】
具体的には、パルスノイズ判定部131は、下記の式(1)と式(2)とが満たされた場合、IF信号にパルスノイズが含まれると判定する。
【0033】
【数1】
ただし、Tkはアタック期間であり、Tktはアタック期間閾値である。
【0034】
制御部12は、信号値が基準値を超えた場合、IF信号の振幅を所定範囲内に収めるために、AGC電圧を下げて受信増幅部11の利得を下げるアタック動作を行う。信号値が基準値を超えた場合とは、信号値と、基準値と、の差分がゼロを越えた場合とも称される。アタック期間Tkとは、信号値と、基準値と、の差分がゼロを越えた期間のことである。また、アタック期間Tkとは、アタック制御部126がアタック動作を行った期間としてもよい。アタック制御部126は、アタック期間算出用カウンタ1261を有する。アタック期間算出用カウンタ1261は、アタック期間Tk中に1サンプル毎の処理でカウントすることで、アタック期間Tkを測定する。
【0035】
アタック期間閾値Tktは、予め決められた値である。アタック期間閾値を所定期間閾値と称することもある。
【0036】
【数2】
ただし、Vgは電圧変化総量であり、Vgtは電圧平均変動量閾値である。
【0037】
電圧変化総量Vgは、アタック期間TkにおけるAGC電圧の変化量の総量である。電圧平均変動量閾値Vgtは、AGC電圧の平均変動量の閾値である。(電圧変化総量Vg/アタック期間Tk)は、パルスノイズに対してアタック動作を行った場合におけるAGC電圧の単位時間当たりの平均変動量である。AGC電圧の単位時間当たりの平均変動量を、AGC電圧の変化量と称することもある。電圧平均変動量閾値を、所定変化量閾値と称することもある。
【0038】
パルスノイズ判定部131は、アタック期間Tkがアタック期間閾値Tkt未満であり、且つ、アタック期間TkにおけるAGC電圧の変化量の総量が電圧平均変動量閾値Vgtを超える場合、受信信号にパルスノイズが含まれると判定する。そして、制御部12は、保持していたAGC電圧であってパルスノイズの発生直前のAGC電圧を受信増幅部11にフィードバックし設定する。
【0039】
このように、受信機10の判定部13は、パルスノイズによるIF-AGC機能の特徴的な動作に基づいて、アタック動作をしたアタック期間Tkと、その際に制御したAGC電圧の値からパルスノイズが受信信号に含まれるか否かを判定する。
【0040】
受信機10は、IF信号を帯域制限するための帯域制限フィルタ(図示せず)を複数備えてもよい。帯域制限フィルタは、複数の帯域制限フィルタから排他的に選択されてもよく、受信機10が受信する電波形式や帯域幅に応じて選択される。パルスノイズは、帯域制限フィルタを通過することで、その時間幅が帯域制限フィルタを通過しない場合と比べて長くなる。また、パルスノイズが所定の帯域幅よりも狭い帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合、その時間幅は、所定の帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合よりも長くなる。すなわち、帯域制限フィルタの帯域幅が狭い程、該帯域制限フィルタを通過したパルスノイズの時間幅は長くなる。
【0041】
このため、受信機10は、使用する帯域制限フィルタの種類に基づいてアタック期間閾値Tktを変更してもよい。また、受信機10は、使用する帯域制限フィルタの帯域幅に基づいてアタック期間閾値Tktを変更してもよい。
【0042】
パルスノイズは、帯域制限フィルタを通過することで、その振幅が帯域制限フィルタを通過しない場合と比べて小さくなる。また、パルスノイズが所定の帯域幅よりも狭い帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合、その振幅は、所定の帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合よりも小さくなる。すなわち、帯域制限フィルタの帯域幅が狭い程、該帯域制限フィルタを通過したパルスノイズの振幅は小さくなる。
【0043】
このため、受信機10は、使用する帯域制限フィルタの種類に基づいて電圧平均変動量閾値Vgtを変更してもよい。また、受信機10は、使用する帯域制限フィルタの帯域幅に基づいて電圧平均変動量閾値Vgtを変更してもよい。
【0044】
これまでの内容をまとめると以下のようになる。
IF-AGC機能を有する受信機が受信信号と共にパルスノイズを受信した場合、パルスノイズが受信機に入力される毎に、アタック動作により受信増幅部の利得が下がる。このため、目的とする受信信号がその影響を受け了解度が低下し、若しくは音声が聞こえなくなる。また、この時、リリース動作により、例えば60dBの利得を回復させるには少なくとも100ミリ秒程度に時間がかかるので、無音期間が発生し快適な受信をすることが難しい。
【0045】
そこで、実施の形態に係る受信機10の制御部12は、判定部13の判定結果により受信信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズに対してアタック動作を開始する直前のAGC電圧を、パルスノイズの検出の直後に設定すべきAGC電圧として受信増幅部11に設定する。これにより、受信増幅部11の利得がアタック動作後のリリース動作期間中に抑圧されることを緩和し、音声の無音期間を低減することができる。
【0046】
また、受信機10は、図6に示すように、AGC電圧(利得設定値)を記憶する記憶部14をさらに備えてもよい。制御部12は、記憶部14からアタック動作を開始する直前のAGC電圧(過去利得設定値)を読み出し、過去利得設定値を受信増幅部11に設定してもよい。また、AGC電圧は、リリース動作からアタック動作へ遷移した際、又は、アタック動作からリリース動作に遷移した際に更新される。つまり、AGC動作の変化点における利得設定値を記憶することができる。制御部12は、パルスノイズが入力する直前のAGC電圧を保持することもできる。
【0047】
制御部12は、アタック制御部126、又は、リリース制御部127から出力されたAGC電圧を、受信増幅部11の利得を利得制御信号に変換する電圧利得変換部128をさらに有してもよい。電圧利得変換部128は、変換後の利得制御信号を受信増幅部11に出力する。受信増幅部11は、利得制御信号を使用して利得を制御する。
【0048】
次に、実施の形態に係る受信機の動作を説明する。
図3は、実施の形態に係る受信機の動作を例示するフローチャートである。
【0049】
図3に示すように、電圧利得変換部128は、AGC電圧を、受信増幅部11の利得を設定するため利得制御信号に変換する(ステップS101)。電圧利得変換部128は、変換した利得制御信号を受信増幅部11に出力する。
【0050】
受信増幅部11は、利得制御信号に基づいてIF信号を増幅する(ステップS102)。
【0051】
絶対値算出部121は、IF信号の振幅の絶対値を算出(整流)する(ステップS103)。
【0052】
積分処理部122は、IF信号の振幅の絶対値を積分(平滑)して、信号値を出力する(ステップS104)。
【0053】
差分算出部123は、信号値が基準値を超えたか否かを判定する(ステップS105)。
【0054】
切替部125は、信号値が基準値を超えた場合(ステップS105:Yes)、アタック制御部126によるアタック動作を選択するために、端子1と端子3とを接続する。アタック制御部126は、アタック動作を行う(ステップS106)。AGC電圧更新部1262は、アタック動作に従ってAGC電圧を更新する(ステップS106)。
【0055】
アタック制御部126は、アタック期間Tk中、AGC電圧値を累積加算し、アタック期間AGC電圧変化総量を算出する(ステップS107)。
【0056】
アタック制御部126は、アタック期間Tkを求めるため、アタック期間算出用カウンタ1261をインクリメントする(ステップS108)
【0057】
切替部125は、信号値が基準値以下の場合(ステップS105:No)、リリース制御部127によるリリース動作を選択するために、端子1と端子2とを接続する。リリース制御部127は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作か否かを確認する(ステップS109)。
【0058】
リリース制御部127のAGC電圧更新部1272は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作でない場合(ステップS109:No)、リリース動作のAGC電圧を更新する(ステップS110)。
【0059】
リリース制御部127は、リリース動作開始用に保持されていた保持AGC電圧を、現在のAGC電圧で更新する(ステップS111)。
【0060】
リリース制御部127のAGC電圧更新部1272は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作である場合(ステップS109:Yes)、IF信号にパルスノイズが含まれるか否かをパルスノイズ判定部131に判定するよう指示を行う(ステップS112)。
【0061】
パルスノイズ判定部131は、IF信号にパルスノイズが含まれていると判定した場合(ステップS112:Yes)、現在のAGC電圧に、リリース動作開始用の保持AGC電圧を設定する(ステップS113)。
【0062】
アタック制御部126は、ステップS111の後、ステップS112がNoの場合、若しくは、ステップS113の後で、アタック期間算出用カウンタ1261をクリアする(ステップS114)。
【0063】
アタック制御部126は、アタック期間AGC電圧変化総量をクリアする(ステップS115)。
【0064】
受信機10は、ステップS115の後、ステップS101に戻る。
【0065】
次に、実施の形態に係る受信機の効果を説明する。
【0066】
図4Aは、受信増幅部に入力するIF信号を例示するグラフである。
図4Aの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。図4Aに示すVsは音声信号を示し、Pnはパルスノイズを示す。
図4Bは、受信増幅部に設定するAGC電圧を例示するグラフである。
図4Bの横軸は時間を示し、縦軸は減衰量設定のための電圧値を示す。
図4Cは、受信増幅部から出力するIF信号を例示するグラフである。
図4Cの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。
図4A図4Cは、パルスノイズに対してのみIF-AGC機能が動作し、音声信号に対してはIF-AGC機能が動作しない信号レベルの場合のグラフである。
【0067】
図4Aに示すように、IF信号には、Vsで示す音声信号に加えて、Pnで示すパルスノイズが含まれる。
【0068】
図4Bに示すように、受信増幅部11に図4Aに示すパルスノイズが入力した場合、アタック動作が開始される。AGC電圧は、アタック動作に伴い電圧値が下がる。
【0069】
図4Cに示すように、受信機10は、IF信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生直前のAGC電圧を、パルスノイズ発生直後のAGC電圧として受信増幅部11に設定する。これにより、パルスノイズに伴ってIF出力信号が低くなる期間は短くなる。
【0070】
図5Aは、受信増幅部に入力するIF信号を例示するグラフである。
図5Aの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。図5Aに示すVsは音声信号を示し、Pnはパルスノイズを示す。
図5Bは、受信増幅部に設定するAGC電圧を例示するグラフである。
図5Bの横軸は時間を示し、縦軸は電圧値を示す。
図5Cは、受信増幅部から出力するIF信号を例示するグラフである。
図5Cの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。
図5A図5Cは、信号の信号レベルでIF-AGC機能が動作している場合のグラフである。
【0071】
図5Aに示すように、IF信号には、Vsで示す音声信号に加えて、Pnで示すパルスノイズが含まれる。
【0072】
図5Bに示すように、受信増幅部11に図5Aに示すパルスノイズが入力した場合、アタック動作が開始される。AGC電圧は、アタック動作に伴い電圧値が下がる。音声信号にもIF-AGC機能が動作するので、音声信号が大きい場合にはAGC電圧値が低く、音声信号が小さい場合にはAGC電圧値が高くなる。
【0073】
図5Cに示すように、受信機10は、IF信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生直前のAGC電圧を、パルスノイズ発生直後のAGC電圧として受信増幅部11に設定する。これにより、パルスノイズに伴ってIF出力信号が低くなる期間は短くなる。
【0074】
このように、実施の形態に係る受信機10においては、高速な応答特性の利点を維持しつつ、パルスノイズに対する抑圧の不具合を解消でき、快適な目的信号の受信を行うことができる。
【0075】
実施の形態に係る受信機10は、IF-AGC機能にパルスノイズを判定する機能と、パルスノイズによって低下した受信増幅部11の利得を回復する機能と、を有する。これにより、受信信号の了解度の低下を抑制することができる。
【0076】
その結果、実施の形態においては、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の了解度の低下を抑制することが可能な受信機及びプログラムを提供することができる。
【0077】
尚、実施の形態では、受信増幅部11の利得を制御するものとしてAGC電圧を使用する場合を例に挙げて説明したが、これには限定されない。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3…端子
10…受信機
11…受信増幅部
12…制御部
121…絶対値算出部
122…積分処理部
123…差分算出部
124…基準値生成部
125…切替部
126…アタック制御部
1261…アタック期間算出用カウンタ
1262…AGC電圧更新部
127…リリース制御部
1272…AGC電圧更新部
128…電圧利得変換部
13…判定部
131…パルスノイズ判定部
14…記憶部
Tk…アタック期間
Tkt…アタック期間閾値
Vg…電圧変化総量
Vgt…電圧平均変動量閾値
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6