(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】受信機及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
H04B1/10 B
(21)【出願番号】P 2018056688
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】内記 康則
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-048830(JP,A)
【文献】特開平02-072721(JP,A)
【文献】特開平08-056168(JP,A)
【文献】特開昭53-058712(JP,A)
【文献】特開2002-290867(JP,A)
【文献】特開平05-183455(JP,A)
【文献】特開2007-181136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号から分岐したモニタ用受信信号を増幅する受信増幅部と、
増幅後のモニタ用受信信号の振幅を所定範囲内に収めるAGC動作の利得設定値を前記受信増幅部に設定する制御部と、
前記利得設定値の変化を監視し、前記利得設定値の変化が所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記受信信号にパルスノイズが含まれるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、
増幅後の受信信号を整流する絶対値算出部と、
整流された信号を平滑して信号値とする積分処理部と、
前記信号値と所定の基準値との差分値を算出する差分算出部と、
前記差分値に基づき前記利得設定値を制御する、アタック制御部およびリリース制御部と、を有し、
前記判定部は、
前記信号値が前記所定の基準値を超えた期間における前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、パルスノイズが含まれると判定し、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、所定の期間、前記受信信号を所定減衰量で減衰させるパルスノイズ除去部と、
を備える受信機。
【請求項2】
前記パルスノイズ除去部は、
前記パルスノイズを減衰させる減衰部と、前記パルスノイズを遅延させる遅延部とを有し、
前記判定部は、
パルスノイズが含まれると判定した場合に、前記減衰部に所定の減衰量の減衰を行うブランキング期間を設定し、
前記遅延部は、前記受信信号のパルスノイズを遅延させ、前記ブランキング期間と同期させることを特徴とする、
請求項
1に記載の受信機。
【請求項3】
前記受信機は、排他的に使用する複数のフィルタを備え、
前記判定部は、前記フィルタの種類に基づいて、前記ブランキング期間を設定する、
請求項
2に記載の受信機。
【請求項4】
受信信号から分岐したモニタ用受信信号であって受信増幅部が増幅した増幅後の前記モニタ用受信信号
を設定し、
整流された信号を平滑して信号値とし、
前記信号値と所定の基準値との差分値を算出し、
前記差分値に基づき前記受信増幅部の増幅後の受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を前記受信増幅部に設定し、
前記信号値が前記所定の基準値を超えた期間における前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、前記受信信号にパルスノイズが含まれると判定し、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、所定の期間だけ、前記受信信号を所定減衰量で減衰させる、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信機及びプログラムに関し、特に受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
受信信号をIF(Intermediate Frequency)帯域の信号に変換し、変換後のIF帯域のIF信号を増幅する受信機が知られている。受信機は、増幅部でIF信号を増幅し、増幅部は、その利得を自動で制御するIF-AGC(Automatic Gain Control)機能を有する。
【0003】
特許文献1には、入力信号の被変調波のピークに基づくピーク曲線を閾値の基準となる閾値基準曲線として導出し、閾値基準曲線に所定のオフセット値を加算して閾値曲線を導出することが記載されている。また、特許文献1には、導出された閾値曲線に基づいて、入力信号が閾値曲線未満であれば減衰せず、入力信号が閾値以上であれば、入力信号の増加に従って漸減するように、減衰特性線を導出することが記載されている。また、特許文献1には、減衰特性線に基づいて入力信号を減衰するノイズブランカが記載されている。特許文献1には、IF信号から分岐したモニタ用IF信号に対してIF-AGC機能を有する受信機が、IF信号と共にパルスノイズを受信した際にIF信号の了解度が低下しないようにする方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IF-AGC機能を有する受信機は、受信信号と共に、例えば、電燈のスイッチング動作に伴って発生するパルスノイズを受信する場合がある。このような場合、IF-AGC機能を有する受信機は、受信信号の振幅よりも大きな振幅を有するパルスノイズに合わせて利得を制御する。これにより、パルスノイズの振幅よりも小さな振幅の受信信号は、その振幅が低下するため、了解度が低下し、若しくは音声が聞こえなくなる。このように、IF-AGC機能を有する受信機が受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質が低下するという問題があった。
本発明は、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本開示は、
受信信号から分岐したモニタ用受信信号を増幅する受信増幅部と、
増幅後のモニタ用受信信号の振幅を所定範囲内に収めるAGC動作の利得設定値を前記受信増幅部に設定する制御部と、
前記利得設定値の変化を監視し、前記利得設定値の変化が所定の条件を満たすか否かに基づいて、前記受信信号にパルスノイズが含まれるか否かを判定する判定部と、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、所定の期間、前記受信信号を所定減衰量で減衰させるパルスノイズ除去部と、
を備える受信機を提供する。
【0007】
また、本開示は、
受信信号から分岐したモニタ用受信信号であって受信増幅部が増幅した増幅後の前記モニタ用受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を前記受信増幅部に設定し、
前記利得設定値の変化が、その変化に要する期間は所定期間閾値未満であり、且つ、変化量は所定変化量閾値を超える場合、前記受信信号にパルスノイズが含まれると判定し、
前記パルスノイズが含まれると判定された場合、所定の期間だけ、前記受信信号を所定減衰量で減衰させる、
ことをコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
【
図3】実施の形態に係る受信機の動作を例示するフローチャートである。
【
図4A】パルスノイズ除去部に入力するIF信号を例示するグラフである。
【
図4B】ブランキング信号を例示するグラフである。
【
図4C】パルスノイズ除去部から出力するIF信号を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
先ず、実施の形態に係る受信機の概要を説明する。
図1は、実施の形態に係る受信機10を例示するブロック図である。
【0012】
図1に示すように、実施の形態に係る受信機10は、受信増幅部11と、制御部12と、判定部13と、パルスノイズ除去部14と、を備える。
【0013】
受信増幅部11は、受信信号から分岐したモニタ用受信信号を増幅する。
【0014】
制御部12は、増幅後のモニタ用受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を受信増幅部11に設定する。受信増幅部11は、利得設定値に基づいてモニタ用受信信号を増幅する。
【0015】
判定部13は、利得設定値の変化が所定変化量閾値を超えた期間が所定期間閾値未満である場合、受信信号にパルスノイズが含まれると判定する。
【0016】
パルスノイズ除去部14は、受信信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生からブランキング期間Tbだけ、受信信号の振幅を所定減衰量Daだけ減衰させる。ブランキング期間Tbは、例えば、パルスノイズが含まれると判定された期間であってもよい。
【0017】
受信増幅部11が増幅した後のモニタ用受信信号の振幅を所定範囲内に収めるように利得設定値を受信増幅部11に設定する機能を、AGC機能と称する。IF帯域のIF信号に対するAGCを、IF-AGCと称する。受信機10は、このIF-AGC機能を有する。受信機10は、IF信号においてIF-AGC機能が必要な場合、例えば、パルスノイズ除去部14の後段にIF-AGC機能を有する受信増幅部(図示しない)を設けてもよい。
【0018】
ここで、IF-AGC機能を説明する。
【0019】
IF-AGC機能は、受信増幅部11が増幅した後の信号の振幅を、所定範囲内に収めるため、受信増幅部11に設定するAGC電圧を制御する。AGC電圧を上げると受信増幅部11の利得が増加し、受信増幅部11から出力される出力信号の振幅が大きくなる。AGC電圧を下げると受信増幅部11の利得が低下し、受信増幅部11から出力される出力信号の振幅が小さくなる。
【0020】
IF-AGC機能は、出力信号の一部を、整流、平滑し、出力信号の振幅に応じた信号値(例えば直流電位)とする。信号値と、所定の基準値とを比較し、所定の基準値(リファレンスレベル)を超えた場合に、受信増幅部11の利得を下げ、出力信号の振幅が所定範囲内に収めるよう制御する。
【0021】
ここで、受信機10が、パルスノイズを受信した場合のIF-AGC機能を説明する。
【0022】
パルスノイズは、数ミリ秒程度までの短い期間において大きな振幅を有するノイズ信号である。IF-AGC機能を有する受信機10は、このパルスノイズが入力した場合、基準値(リファレンスレベル)以上の振幅を有するパルスノイズを所定範囲内に収めるために、AGC電圧を下げて受信増幅部11の利得を下げる動作を行う。この動作をアタック動作と称する。アタック動作では、パルスノイズの振幅を所定範囲内に収めるために、例えば、2ミリ秒程度の時間を掛けてAGC電圧を低下させて受信増幅部11の利得を下げる。
【0023】
一方、パルスノイズが過ぎ去った後は、パルスノイズが無くなるので、受信増幅部11に入力する信号の振幅は下がる。このため、受信機10は、下がっていた利得を回復させる(上昇させる)ために、AGC電圧を上げて受信増幅部11の利得を上げる動作を行う。この動作をリリース動作と称する。リリース動作では、例えば、100ミリ秒から10秒程度の時間を掛けてAGC電圧を上げて受信増幅部11の利得を回復させる。
【0024】
また、受信機10が受信信号と共にパルスノイズを受信した場合(受信信号にパルスノイズが含まれる場合)、パルスノイズが受信機10に入力される毎に、アタック動作により受信増幅部11の利得が下がる。このため、リリース動作中は目的とする受信信号の振幅が小さくなる。モニタ受信信号は、音声信号の復調を目的としたリリース動作は不要としてもよいため、パルスノイズの周期に対して十分に短いリリース時間であることが望ましい。
【0025】
そこで、実施の形態に係る受信機10は、受信信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズの発生からブランキング期間Tbだけ、受信信号の振幅を所定減衰量Daだけ減衰させる。ブランキング期間Tbは、例えば、パルスノイズが含まれると判定された期間である。そして、受信機10は、ブランキング期間Tb以外は、受信信号の振幅を減衰させない。これにより、受信機10は、パルスノイズを抑圧し除去するので、目的とする受信信号を受信することができる。
【0026】
次に、実施の形態に係る受信機の詳細を説明する。
図2は、実施の形態に係る受信機を例示するブロック図である。
図2では、受信信号がIF帯域のIF信号に変換され、該変換されたIF信号を例に挙げて説明する。実施の形態は、これには限定されない。
【0027】
図2に示すように、受信機10の制御部12は、絶対値算出部121と、積分処理部122と、差分算出部123と、基準値生成部124と、アタック制御部126と、リリース制御部127と、切替部125と、電圧利得変換部128と、を有する。判定部13は、パルスノイズ判定部131を備える。パルスノイズ除去部14は、遅延部141と、減衰部142と、を有する。
【0028】
受信機10は受信信号を受信し、受信された受信信号はIF帯域のIF信号に変換される。該変換されたIF信号は、主信号として処理されるIF信号と、パルスノイズが含まれるか否かを判定するために使用されるモニタ用IF信号と、に分岐される。受信増幅部11は、IF信号から分岐されたモニタ用IF信号を増幅する。
【0029】
絶対値算出部121は、例えば、整流回路を使用してモニタ用IF信号の振幅を絶対値にする。積分処理部122は、モニタ用IF信号の振幅の絶対値を積分(平滑)し、IF信号の振幅に応じた信号値を差分算出部123とアタック制御部126とに出力する。差分算出部123は、積分処理部122が出力した信号値と、基準値生成部124が生成した基準値と、の差分を算出する。基準値をリファレンスレベルと称することもある。
【0030】
切替部125は、該差分がゼロを超えた場合、すなわち、信号値が基準値を超えた場合、アタック制御部126によるアタック動作を選択するため、端子1と端子3とを接続する。これにより、AGC電圧としてアタック制御部126の出力電圧が選択される。
【0031】
また、切替部125は、該差分がゼロ以下の場合、すなわち、信号値が基準値以下の場合、リリース制御部127によるリリース動作を選択するため、端子1と端子2とを接続する。これにより、AGC電圧としてリリース制御部127の出力電圧が選択される。AGC電圧は、受信増幅部11に設定する利得設定値に相当する。
【0032】
判定部13のパルスノイズ判定部131は、IF-AGCのAGC電圧の変化を監視し、所定条件の変化が起こったか否かを検出する。パルスノイズ判定部131は、AGC電圧が所定の変化であることが検出された場合には、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれると判定する。また、パルスノイズ判定部131は、AGC電圧が所定の変化であることが検出されない場合には、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれないと判定する。モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれる場合は、分岐元のIF信号にもパルスノイズが含まれ、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれない場合は、分岐元のIF信号にもパルスノイズが含まれないことは自明である。
【0033】
具体的には、パルスノイズ判定部131は、下記の式(1)と式(2)とが満たされた場合、モニタ用IF信号とIF信号とのそれぞれにパルスノイズが含まれると判定する。
【0034】
【数1】
ただし、Tkはアタック期間であり、Tktはアタック期間閾値である。
【0035】
制御部12は、信号値が基準値を超えた場合、IF信号の振幅を所定範囲内に収めるために、AGC電圧を下げて受信増幅部11の利得を下げるアタック動作を行う。信号値が基準値を超えた場合とは、信号値と、基準値と、の差分がゼロを越えた場合とも称される。アタック期間Tkとは、信号値と、基準値と、の差分がゼロを越えた期間のことである。また、アタック期間Tkとは、アタック制御部126がアタック動作を行った期間としてもよい。アタック制御部126は、アタック期間算出用カウンタ1261を有する。アタック期間算出用カウンタ1261は、アタック期間Tk中に1サンプル毎の処理でカウントすることで、アタック期間Tkを測定する。
【0036】
アタック期間閾値Tktは、予め決められた値である。アタック期間閾値を所定期間閾値と称することもある。
【0037】
【数2】
ただし、Vgは電圧変化総量であり、Vgtは電圧平均変動量閾値である。
【0038】
電圧変化総量Vgは、アタック期間TkにおけるAGC電圧の変化量の総量である。電圧平均変動量閾値Vgtは、AGC電圧の平均変動量の閾値である。(電圧変化総量Vg/アタック期間Tk)は、パルスノイズに対してアタック動作を行った場合におけるAGC電圧の単位時間当たりの平均変動量である。AGC電圧の単位時間当たりの平均変動量を、AGC電圧の変化量と称することもある。電圧平均変動量閾値を、所定変化量閾値と称することもある。
【0039】
パルスノイズ判定部131は、アタック期間Tkがアタック期間閾値Tkt未満であり、且つ、アタック期間TkにおけるAGC電圧の変化量の総量が電圧平均変動量閾値Vgtを超える場合、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれると判定する。また、パルスノイズ判定部131は、この場合、IF信号にもパルスノイズが含まれると判定する。パルスノイズ判定部131は、IF信号にパルスノイズが含まれると判定した場合、パルスノイズ除去部14にブランキング信号を通知する。
【0040】
パルスノイズ除去部14は、IF信号にパルスノイズが含まれると判定された場合にパルスノイズ判定部131から通知されたブランキング信号に基づいてパルスノイズの発生からブランキング期間Tbだけ、IF信号の振幅を所定減衰量Daだけ減衰させる。具体的には、パルスノイズ除去部14は、減衰部142を有し、ブランキング信号に基づいて減衰部142の減衰量を制御し、IF信号の振幅を所定減衰量Daだけ減衰させる。減衰部142は、例えば、可変増幅器又は可変減衰器である。
【0041】
パルスノイズ判定部131によるパルスノイズが含まれるか否かの判定は、パルスノイズが過ぎ去った時に行われる。このため、パルスノイズ除去部14が、IF信号にパルスノイズが含まれる期間にIF信号を減衰させようとしてもタイミングが合わない。
【0042】
そこで、実施の形態に係る受信機10のパルスノイズ除去部14は、IF信号に含まれるパルスノイズを遅延させる遅延部141を有する。パルスノイズ除去部14は、遅延部141を使用してパルスノイズを遅延させることで、パルスノイズの開始タイミングとブランキング期間Tbの開始タイミングとを同期させ、IF信号の振幅を減衰させる。すなわち、パルスノイズ除去部14は、パルスノイズを遅延させ、パルスノイズとブランキング信号とを同期させてIF信号の振幅を減衰させる。パルスノイズの振幅を減衰させることを、ブランキングと称する。
【0043】
ブランキング期間Tbは、例えば、0.025ミリ秒以上、10ミリ秒以下の範囲で所定の値に設定してもよい。また、所定減衰量Daは、例えば、-100デシベル以上、-5デシベル以下の範囲で所定の値に設定してもよい。また、信号を急峻に減衰させることで、違和感のある音声として聞こえてしまうことがある。違和感のある音声として聞こえないようにするため、ブランキング信号にはロールオフフィルタを掛ける処理を行う。
【0044】
ブランキング信号と同期をとるためのIF信号の遅延量、すなわち、遅延部141の遅延量は、ブランキング期間Tbとロールオフフィルタの遅延量と後述する帯域制限フィルタの帯域幅とから決定される。
【0045】
受信機10は、IF信号を帯域制限するための帯域制限フィルタ(図示せず)を複数備えてもよい。帯域制限フィルタは、複数の帯域制限フィルタから排他的に選択されてもよく、受信機10が受信する電波形式や帯域幅に応じて選択される。パルスノイズは、帯域制限フィルタを通過することで、帯域制限フィルタの種類に応じて、信号の遅延量および時間幅も変化する。例えば、時間幅は、帯域制限フィルタを通過しない場合と比べて長くなる。また、パルスノイズが所定の帯域幅よりも狭い帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合、その時間幅は、所定の帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合よりも長くなる。すなわち、帯域制限フィルタの帯域幅が狭い程、該帯域制限フィルタを通過したパルスノイズの時間幅は長くなる。
【0046】
このため、受信機10のパルスノイズ除去部14は、使用する帯域制限フィルタの種類に基づいてブランキング期間Tbを変更してもよい。また、パルスノイズ除去部14は、使用する帯域制限フィルタの帯域幅に基づいてブランキング期間Tbを変更してもよい。
【0047】
パルスノイズは、帯域制限フィルタを通過することで、その振幅が帯域制限フィルタを通過しない場合と比べて小さくなる。また、パルスノイズが所定の帯域幅よりも狭い帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合、その振幅は、所定の帯域幅の帯域制限フィルタを通過した場合よりも小さくなる。すなわち、帯域制限フィルタの帯域幅が狭い程、該帯域制限フィルタを通過したパルスノイズの振幅は小さくなる。
【0048】
このため、受信機10のパルスノイズ除去部14は、使用する帯域制限フィルタの種類に基づいて所定減衰量Daを変更してもよい。また、パルスノイズ除去部14は、使用する帯域制限フィルタの帯域幅に基づいて所定減衰量Daを変更してもよい。
【0049】
制御部12は、アタック制御部126、又は、リリース制御部127から出力されたAGC電圧を、受信増幅部11の利得を制御する利得制御信号に変換する電圧利得変換部128を有する。電圧利得変換部128は、変換後の利得制御信号を受信増幅部11に出力する。受信増幅部11は、利得制御信号を使用して利得を制御する。
【0050】
次に、実施の形態に係る受信機の動作を説明する。
図3は、実施の形態に係る受信機の動作を例示するフローチャートである。
【0051】
図3に示すように、電圧利得変換部128は、AGC電圧を、受信増幅部11の利得を設定するため利得制御信号に変換する(ステップS101)。電圧利得変換部128は、変換した利得制御信号を受信増幅部11に出力する。
【0052】
受信増幅部11は、利得制御信号に基づいてモニタ用IF信号を増幅する(ステップS102)。
【0053】
絶対値算出部121は、モニタ用IF信号の振幅の絶対値を算出(整流)する(ステップS103)。
【0054】
積分処理部122は、モニタ用IF信号の振幅の絶対値を積分(平滑)して、信号値を出力する(ステップS104)。
【0055】
差分算出部123は、信号値が基準値を超えたか否かを判定する(ステップS105)。
【0056】
切替部125は、信号値が基準値を超えた場合(ステップS105:Yes)、アタック制御部126によるアタック動作を選択するために、端子1と端子3とを接続する。アタック制御部126は、アタック動作を行う(ステップS106)。AGC電圧更新部1262は、アタック動作に従ってAGC電圧を更新する(ステップS106)。
【0057】
アタック制御部126は、アタック期間Tk中、AGC電圧値を累積加算し、アタック期間AGC電圧変化総量を算出する(ステップS107)。
【0058】
アタック制御部126は、アタック期間Tkを求めるため、アタック期間算出用カウンタ1261をインクリメントする(ステップS108)
【0059】
切替部125は、信号値が基準値以下の場合(ステップS105:No)、リリース制御部127によるリリース動作を選択するために、端子1と端子2とを接続する。リリース制御部127は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作か否かを確認する(ステップS109)。
【0060】
リリース制御部127のAGC電圧更新部1272は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作でない場合(ステップS109:No)、リリース動作のAGC電圧を更新する(ステップS110)。
【0061】
リリース制御部127のAGC電圧更新部1272は、今回のリリース動作がアタック動作後の初のリリース動作である場合(ステップS109:Yes)、IF信号にパルスノイズが含まれるか否かをパルスノイズ判定部131に判定するよう指示を行う(ステップS111)。パルスノイズ判定部131は、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれると判定した場合、分岐元のIF信号にパルスノイズが含まれると判定する。また、パルスノイズ判定部131は、モニタ用IF信号にパルスノイズが含まれないと判定した場合、分岐元のIF信号にパルスノイズが含まれないと判定する。パルスノイズ判定部131は、判定結果をパルスノイズ除去部14に出力する。
【0062】
パルスノイズ判定部131が、パルスノイズが含まれていると判定した場合(ステップS111:Yes)、パルスノイズ判定部131は、パルスノイズ除去部14に、ブランキング期間Tbを設定する(ステップS112)。パルスノイズ除去部14の遅延部141は、IF信号を所定時間分、遅延させる。パルスノイズ除去部14の減衰部142は、遅延したIF信号の振幅を可変増幅器又は可変減衰器を使用して所定減衰量Daの減衰を行う。
【0063】
アタック制御部126は、ステップS110の後、ステップS111がNoの場合、若しくは、ステップS112の後で、アタック期間算出用カウンタ1261をクリアする(ステップS113)。
【0064】
アタック制御部126は、アタック期間AGC電圧変化総量をクリアする(ステップS114)。
【0065】
受信機10は、ステップS114の後、ステップS101に戻る。
【0066】
次に、実施の形態に係る受信機の効果を説明する。
【0067】
図4Aは、パルスノイズ除去部に入力するIF信号を例示するグラフである。
図4Aの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。
図4Aに示すVsは音声信号を示し、Pnはパルスノイズを示す。
図4Bは、ブランキング信号を例示するグラフである。
図4Bの横軸は時間を示し、縦軸は減衰量設定のための電圧値を示す。
図4Cは、パルスノイズ除去部から出力するIF信号を例示するグラフである。
図4Cの横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。
図4A~
図4Cは、帯域幅が2700Hz(ヘルツ)の場合のグラフである。
【0068】
図4Aに示すように、IF信号には、Vsで示す音声信号に加えて、Pnで示すパルスノイズが含まれる。
【0069】
図4AのVsで示す音声信号と、Pnで示すパルスノイズと、を含むIF信号が受信機10に入力した場合、
図4Bに示すように、
図4AのPnで示すパルスノイズに同期したブランキング信号がパルスノイズ除去部14に入力する。パルスノイズ除去部14では、ブランキング信号の電圧が高い場合、減衰部142の減衰量は低く設定され、ブランキング信号の電圧が低い場合、減衰部142の減衰量は高く設定される。
【0070】
受信機10は、IF信号にパルスノイズが含まれると判定された場合、パルスノイズに同期した
図4Bに示すブランキング信号に基づいてパルスノイズを抑圧し除去し、
図4Cに示すようなIF信号を出力する。パルスノイズ除去部14から出力するIF信号は、パルスノイズ除去部14に入力するIF入力信号と比べて、パルスノイズが除去されていることがわかる。
【0071】
実施の形態に係る受信機10は、IF信号にパルスノイズが含まれるか否かを判定するパルスノイズ判定部131と、パルスノイズを減衰させるパルスノイズ除去部14と、を備える。これにより、パルスノイズが存在する受信環境において、効率的にパルスノイズを抑圧し除去するので、受信信号の了解度の低下を抑制することができる。
【0072】
その結果、実施の形態においては、受信信号と共にパルスノイズを受信した際、受信信号の品質を向上することが可能な受信機及びプログラムを提供することができる。
【0073】
尚、実施の形態では、受信増幅部11の利得を制御するものとしてAGC電圧を使用する場合を例に挙げて説明したが、これには限定されない。
【0074】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1、2、3…端子
10…受信機
11…受信増幅部
12…制御部
121…絶対値算出部
122…積分処理部
123…差分算出部
124…基準値生成部
125…切替部
126…アタック制御部
1261…アタック期間算出用カウンタ
1262…AGC電圧更新部
127…リリース制御部
1272…AGC電圧更新部
128…電圧利得変換部
13…判定部
131…パルスノイズ判定部
14…パルスノイズ除去部
141…遅延部
142…減衰部
Tk…アタック期間
Tkt…アタック期間閾値
Tb…ブランキング期間
Dа…所定減衰量
Vg…電圧変化総量
Vgt…電圧平均変動量閾値