(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】無線機
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20220117BHJP
【FI】
H04B1/40
(21)【出願番号】P 2018057260
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 裕
(72)【発明者】
【氏名】笠原 力弥
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信音声を受信する受信部と、
前記受信音声を記録する記録部と、
送信音声を送信する送信部と、
前記記録部に記録された受信音声を遡り再生させる再生制御部と、
前記遡り再生中に前記受信音声の受信の終了を検知した場合、前記遡り再生中であることを通知する再生中信号を前記送信部に送信させ、前記遡り再生が終了すると、前記遡り再生が終了したことを示す再生終了信号を前記送信部に送信させる送受信制御部と、を備え
、
前記送受信制御部は、前記再生中信号を送信した後、前記受信音声を受信した場合には、前記受信音声に受信割込信号が付加されているか否かを検出し、
前記再生制御部は、前記受信割込信号が検出された場合、前記遡り再生を中断し、前記受信割込信号が付加されている前記受信音声を再生する、
無線機。
【請求項2】
前記遡り再生を実行させる遡り再生ボタンを備え、
前記遡り再生ボタンを押下した時間に応じて、前記遡り再生を実行する時間が決定される、請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記受信音声に前記受信割込信号が付加されていない場合に、前記受信音声を記録部に記録する録音制御部を備える、請求項
1または2に記載の無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
半二重通信のようなブレストーク通信において、話し手側に聞き手側が応答するタイミングを把握させ、スムーズな対話が行われるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半二重通信による無線通信においては、聞き手側が聞いている音声を話して側に通知してしまうと、通信チャネルを占有してしまう問題がある。また、話し手側が応答を持っている間に、内容の訂正や、緊急で内容を伝達したい状況となった場合には、聞き手は送信中のため受信することができないといった問題がある。
【0005】
本発明は、半二重通信において、通信内容の確認を容易にしつつ、過去の音声を確認中であることを、通信回線を占有せずに通信相手に認知させることのできる無線機を提供することを課題とする。また、過去の音声を確認中であっても、通信相手の通信の必要性に応じて受信するか、過去の音声の確認を継続するかを選択させる手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の無線機は、受信音声を受信する受信部と、前記受信音声を記録する記録部と、送信音声を送信する送信部と、前記記録部に記録された受信音声を遡り再生させる再生制御部と、前記遡り再生中に前記受信音声の受信の終了を検知した 場合、前記遡り再生中であることを通知する再生中信号を前記送信部に送信させ、前記遡り再生が終了すると、前記遡り再生が終了したことを示す再生終了信号を前記送信部に送信させる送受信制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様の無線機は、受信側に送信音声を送信する送信部と、前記受信側から受信音声を受信する受信部と、前記受信側で録音した音声信号を再生中であることを示す再生中信号を受信した場合、前記再生に割込んで受信させる割込信号を前記送信音声に付加して前記送信部に送信させる送受信制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半二重通信において、通信内容の確認を容易にしつつ、過去の音声を確認中であることを、通信回線を占有せずに通信相手に認知させることができる。過去の音声を確認中であっても、通信相手の通信の必要性に応じて受信するか、過去の音声の確認を継続するかを選択させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る無線機の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る無線機の基本的な動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、遡り再生を行う動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】
図5は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。
【
図6】
図6は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。
【
図7】
図7は、音声データを再聴取する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、割込送信する動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図9】
図9は、追伸送信を行う動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態は、業務用無線やアマチュア無線機などの通信装置において好適に使用することができる。なお、各図において同一または相当する部分には同一の符号を付して適宜説明は省略する。
【0011】
図1を用いて、本発明の実施形態に係る無線機について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線機の一例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、無線機100は、マイク101と、送信ボタン102と、操作部103と、表示部104と、音声認識部105と、スピーカ106と、遡り再生ボタン107と、送受信制御部108と、再生制御部109と、記録部110と、録音制御部111と、送信部112と、受信部113と、送受信アンテナ114とを備える。
【0013】
まず、無線機100の具体的な動作を説明する前に、無線機100が備える各部について簡単に説明する。
【0014】
マイク101は、無線機100の使用者の音声を取得する。具体的には、マイク101は、無線機100が送信モードの間、常時、使用者の音声を取得する。
【0015】
送信ボタン102は、無線機100を受信モードから送信モードに切り替えるためのボタンである。具体的には、無線機100は、使用者によって送信ボタン102を押下されている間は送信モードとなり、使用者によって送信ボタン102が開放されると受信モードとなる。
【0016】
操作部103は、無線機100の各種の機能を操作するためのボタンである。使用者は、操作部103を操作することで、無線機100に各種の機能を発揮させることができる。使用者は、例えば、操作部103を操作することで、無線機100の送受信条件を設定することができる。使用者は、例えば、操作部103を操作することで、通信相手が遡り再生をしている際に、その遡り再生中の音声に割込んで受信者に内容を伝えることのできる割込モードに切り替えることができる。
【0017】
表示部104は、例えば、無線機100の通信状況や、無線機100の設定状況を表示する。表示部104は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含む通常のディスプレイで実現することができる。
【0018】
音声認識部105は、例えば、記録部110が記録する音声データから音声を認識する処理を実行する。音声認識部105は、認識した音声を文字列として表示部104に表示する。
【0019】
スピーカ106は、音声を出力する装置である。スピーカ106は、例えば、無線機100が通信相手と通話している際に、通信相手の音声を出力する。スピーカ106は、例えば、遡り再生の音声を出力する。
【0020】
遡り再生ボタン107は、無線機100に遡り再生を実行させるためのボタンである。具体的には後述するが、本実施形態では、スピーカ106から音声が発せられている最中に、遡り再生ボタン107が押下されることで、遡り再生が実行される。
【0021】
送受信制御部108と、再生制御部109と、録音制御部111とは、無線機100が備える各部を制御する。具体的には、送受信制御部108と、再生制御部109と、録音制御部111とは、記録部110が記録するプログラムを展開して実行することによって、無線機100が備える各部を制御する。送受信制御部108と、再生制御部109と、録音制御部111とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む電子的な回路などで実現することができる。
【0022】
記録部110は、送受信制御部108と、再生制御部109と、録音制御部111とが、各部を制御するための制御プログラムを記録している。記録部110は、遡り再生を実行するために無線機100が受信した受信音声を記録している。記録部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、光ディスクなどの記録装置である。記録部110は、無線または有線で接続される外部記録装置などであってもよい。
【0023】
送信部112は、例えば、マイク101で取得した音声や、送信相手を識別するためのIDを変調する。送信部112は、変調した信号を送信音声として送受信アンテナ114を介して通信相手に送信する。受信部113は、送受信アンテナ114を介して受信した通信相手から送信された受信音声を復調する。送受信アンテナ114は、通信相手に送信音声を電波として送信する。送受信アンテナ114は、通信相手から送信された電波を受信音声として受信する。
【0024】
次に、無線機100の、受信モードにおける動作について説明する。
【0025】
受信モードにおいて、無線機100は、送受信アンテナ114によって電波を受信音声として受信する。無線機100は、受信音声を受信部113によって復調する。受信部113は、復調した受信音声を、送受信制御部108と、再生制御部109と、録音制御部111とに出力する。
【0026】
再生制御部109は、受信部113から受けた受信音声を音声としてスピーカ106から出力する。
【0027】
無線機100は、スピーカ106から音声が発せられている最中に、受信者が再生制御部109に接続された遡り再生ボタン107を押下すると、遡り再生を実行する。遡り再生とは、録音制御部111が音声データを書き込んでいる記録部110の書込み位置から、遡り再生ボタン107が押下され続けていた時間分(以降、遡り時間と呼ぶ)だけメモリの読み出し位置を遡り、遡った位置の音声データを再生することをいう。具体的には、再生制御部109は、受信者によって遡り再生ボタン107が押下されると、受信部113から入力される音声信号の代わりに、記録部110の記録されている再生音声をスピーカ106から出力する。これにより、受信者は、過去に受信した受信音声を聞くことができる。再生制御部109は、記録部110の書込み位置と、記録部110の読み出し位置との間の音声データを音声認識部105に入力してもよい。この場合、音声認識部105は、音声データを、音声認識によって文字列データに変換して表示部104に表示する。
【0028】
送受信制御部108は、遡り再生中に送信者からの電波(受信音声)の受信を終了したことを検知すると、遡り再生中であることを知らせる符号(以降、再生中信号と呼ぶ)を生成する。送受信制御部108は、生成した再生中信号を送信部112から送信者に送信する。送受信制御部108は、遡り再生が終了した場合には、遡り再生の終了を知らせる符号(以降、再生終了信号と呼ぶ)を生成する。送受信制御部108は、遡り再生が終了すると生成した再生終了信号を送信部112から送信者に送信する。送受信制御部108は、遡り再生中信号を送信した後、再生終了信号を送信した時間までの間に新たな電波の受信があった場合には、受信音声に割込送信であることを示す符号(以降、割込信号と呼ぶ)が含まれていないかを検査する。
【0029】
再生制御部109は、受信音声に割込信号が付加されている場合には、遡り再生を中断し、割込信号が付加された受信音声をスピーカ106から出力する(以降、割込再生と呼ぶ)。そして、再生制御部109は、割込信号の受信が終了したら、割込信号の受信によって中断した位置から遡り再生を再開する。一方、再生制御部109は、受信音声に割込信号が含まれていない場合には、受信音声をスピーカ106から出力せずに、遡り再生を継続する。この場合、録音制御部111は、受信した受信音声を記録部110に記録されているメモリ記録の最後に連結して記録する(以降、追伸モードと呼ぶ)。
【0030】
録音制御部111は、受信部113から受けた受信音声を記録部110に記録する。ここで、受信部113が出力する受信音声は、アナログ信号であっても良いし、符号化された圧縮音声データであっても良い。すなわち、受信部113が出力する受信音声に、特に制限はない。
【0031】
次に、無線機100の送信モードについて説明する。
【0032】
送信モードにおいて、送信者が送信ボタン102を押下すると、送受信制御部108に対して送信音声の送信を開始するように通知される。これにより、無線機100は、受信モードから送信モードに切り替る。この場合、送受信制御部108は、送信相手を特定するID番号などの必要に応じた信号と、マイク101から入力された音声とを変調して送信するように送信部112を制御する。送受信制御部108は、ID番号などの必要に応じた信号と、マイク101から入力された音声とを、送受信アンテナ114から受信側に送信音声として送信する。
【0033】
送受信制御部108は、送信終了後に送受信アンテナ114が受信した受信信号から再生中信号を検出すると、送信相手が遡り再生中であることを知らせる報知音を、スピーカ106から出力するように再生制御部109を制御する。同時に、送受信制御部108は、表示部104に遡り再生中であることを知らせるマーカ等を表示する。送受信制御部108は、スピーカ106による報知と、表示部104による報知とのいずれか一方のみを行っても良い。
【0034】
送受信制御部108は、送受信アンテナ114が受信した受信信号から再生終了信号を検出すると、送信相手が遡り再生を終了したことを知らせる報知音を、スピーカ106から出力するように再生制御部109を制御する。同時に、送受信制御部108は、表示部104から遡り再生中であることを知らせるマーカを消去する。
【0035】
ところで、送信相手が遡り再生中である場合は、通常、送信者は、送信相手の遡り再生の終了を待つことになる。しかしながら、本実施形態では、受信者が遡り再生中であっても、追加の送信音声を送信する必要が発生した場合には、操作部103を操作して割込みモードに切り替えることができる。そして、送信者は、割込みモードに切り替えた後で、送信ボタン102を押下して送信音声を送信すれば、遡り再生中の音声に割込んで受信者に内容を伝えることができる。
【0036】
具体的には、無線機100が割込モードの状態で、送信者によって送信ボタン102が押下され、マイク101から音声が入力されると、送受信制御部108は、送信音声に割込信号を付加する。この場合、送受信制御部108は、送信部112によって、割込信号が付加された送信音声を変調する。そして、送受信制御部108は、割込信号を付加した送信音声を送受信アンテナ114から受信側に発信する。
【0037】
上述のとおり、割込信号を受信した受信側では、遡り再生を一旦中断して割込信号を含む受信音声をスピーカ106から出力する。一方、送信者が操作部103によって送受信制御部108に割込モードに切り替えずに送信を行うと、割込信号が付加されずに送信音声が送信される。この場合、受信側では、記録部110に既に記録されているメモリ記録音声の最後に連結して受信した受信音声を記録する。これにより、割込信号が付加されていない送信音声は、遡り再生が終了した後に、続けて受信者に提供される。
【0038】
次に、
図2から
図9を用いて、遡り再生、割込モード、及び追伸モードの動作について説明する。
図2から
図4、及び
図7から
図9は、無線機の動作を示すタイムチャートであり、横軸が時間である。
図5は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。
図6は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。なお、
図2から
図9において、同じ信号、時刻、及び時間には同じ符号を付与し、適宜説明は省略する。
【0039】
図2を用いて、本発明の実施形態に係る無線機100の基本的な動作について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る無線機100の基本的な動作の一例を示すタイムチャートである。
【0040】
図2は、半二重通信を行う無線機Aと、無線機Bとの間の音声データの送受信を模式的に示している。ここで、無線機Aが送信側であり、無線機Bが受信側である。送受信信号A100と、送受信信号B100は、
図1に図示の送受信アンテナ114で送受信される音声データを表している。スピーカ出力音声B300は、
図1に図示のスピーカ106から出力される音声データを表している。無線機Aと、無線機Bとは、
図1に図示の無線機100である。
【0041】
図2では、無線機Aは送信音声A101を電波として送信し、無線機Bは送信音声A101を受信音声B101として受信する。無線機Bは、受信音声B101を復調して、受信音声B301としてスピーカ106から受信者に提供するとともに、メモリ記録音声B201として記録部110に記録する。このとき、送信から受信までにかかる時間には、変調や復調処理にかかる時間や、電波の伝搬などにより時間dT001の遅延が発生する。ただし、一般的に時間dT001は僅かな時間であり、受信者が受信の終了を認知して応答を送信する(ブレストーク通信)ことに影響を及ぼすことはない。受信者は、受信音声B301を聴取し終えたタイミングを認知すると、その内容に応じて送信音声B102を電波として返信する。そして、無線機Aは、送信音声B102を受信音声A102として受信する。以降、同様にブレストーク通信を繰り返すことによって、無線機Aと、無線機Bとの間で会話がなされる。
【0042】
図3を用いて、第一の発明である再生中信号及び再生終了信号を送信する動作について説明する。
図3は、無線機Bが遡り再生を行う動作の一例を示すタイムチャートである。
【0043】
受信者は、受信音声B101を受信音声B302として聴取している途中で、遡り再生を実行したい場合には、まず、遡り再生ボタン107を押下することで遡り時間を指定する。これにより、無線機Bは、遡り再生ボタン107を押下した時点から遡り時間だけ戻った時点のメモリ記録音声B201をメモリ再生音声B303としてスピーカ106から再生する。この結果、受信者が受信音声B101を聴取し終わる時間には、元々存在する遅延時間である時間dT001に加えて、更に、遡り再生ボタン107を押下していた時間と、遡り再生を実行していた時間とを加算した時間dT002の遅延が発生する。この遅延時間は無視できる時間ではなく、送信者は自分の送信が終了しているのにも関わらず受信者からの応答が返ってこないため、送信者は応答を待ちきれずに再送信してしまうなど、ブレストーク通信の障害となる。
【0044】
本発明によれば、無線機Bは、受信音声B101の受信が終了した時間T101において、メモリ再生音声B303を再生(遡り再生)している場合には、再生中信号C101を無線機Aに送信する。
【0045】
無線機Aは、無線機Bが送信した再生中信号C101を、再生中信号D101として受信する。無線機Aは、再生中信号D101を受信すると、例えば、報知音をスピーカ106から鳴らしたり、表示部104に無線機Bが遡り再生中であることを示すマーカを表示したりすることで、送信者に受信者が遡り再生中であることを報知する。そして、無線機Bは、メモリ再生音声B303の再生が終了した時点T002(遡り再生が終了した時点)において、再生終了信号C102を無線機Aに送信する。
【0046】
無線機Aは、再生終了信号C102を再生終了信号D102として受信する。無線機Aは、再生終了信号D102を受信すると、例えば、報知音をスピーカ106から鳴らしたり、表示部104に表示されていた無線機Bが遡り再生中であることを示すマーカを消去したりする。これにより、無線機Aは、無線機Bからの応答を持ち、無線機Bが送信した送信音声B102を受信音声A102として受信できる。
【0047】
ここで、
図4と、
図5と、
図6とを用いて、無線機Bが送受信信号B100と、メモリ記録音声B200の音声データとを遡り再生する方法について説明する。
図4は、音声データを示す図である。
図5は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。
図6は、記録部110に音声データが記録される様子を示す図である。
【0048】
図4では、音声データを離散化されたデータとして示している。送受信信号B100は、送受信データB110からB119の10個のサンプルからなるものとする。メモリ記録音声B200は、メモリデータB210からB219の10個のサンプルからなるものとする。
【0049】
図5と、
図6とは送受信データB110からB119が記録される記録部110を模式的に示している。具体的には、記録部110の先頭に、送受信データB110をメモリデータB210として記録し、順次、送受信データがメモリデータとして格納される。このとき、
図4で送受信データB110からB113までがスピーカ106から出力された時間T101が経過したところで、受信者が、遡り再生ボタン107を押下したとする。この場合、
図5で示すように記録部110にはメモリデータB210からB213が記録される。この時、録音制御部111がデータを書き込む位置を示すWriteポインタと、再生制御部109がデータを読み出す位置を示すReadポインタは共に4となる。
【0050】
続けて、受信者は、遡り再生ボタン107を
図4に示す時間T102だけ押下し続けてから開放したとする。この結果、遡り時間は時間T102となり、時間T102と同じ時間である時間T103だけメモリ記録音声B200の再生位置を遡ることになる。
図4に示すように、時間T102は2サンプル時間に相当するため、
図6に示すようにWriteポインタは6に進み、メモリデータB215まで記録された状態になる。そして、Readポインタは2に戻り、メモリデータB212から再生を開始する。すなわち、受信者は、2サンプル遡ったメモリデータB212から受信音声を聞き直すことができる。
【0051】
このとき、無線機Bは、送受信データB116を受信しており、以降、送受信データB119まで受信して終了する。同時に、無線機Bは、メモリデータB212を出力しており、以降、メモリデータB219までを出力して終了する。したがって、受信者は、遡り再生ボタン107をリリースしてから、時間T104だけ経過してから聴取を終了する。この場合、送信者は、少なくとも、時間T105の間、受信者からの応答を待つことになる。また、遡り再生ボタン107を押下している時間T102の間のスピーカ出力音声B300は無音であっても良いし、
図4のメモリデータB212、B213を逆転再生したメモリデータB213R、B212Rを出力しても良い。
【0052】
ここで、
図7を用いて、遡り再生中にメモリデータを再聴取する方法について説明する。
図7は、遡り再生中にメモリデータを再聴取する方法を説明するための図である。
【0053】
詳細な説明は省略するが、
図7に示すように、
図4に図示のスピーカ出力音声B300で、メモリデータB212から遡り再生を開始してメモリデータB214まで再生した時間T114だけ経過後に、再び、遡り再生ボタン107を時間T115だけ押下したとする。この場合、時間T115に相当する4サンプル分の時間T116だけReadポインタが遡り、メモリデータB211から再び聴取することができる。この結果、メモリデータB211から聴取を再開してから、時間T117後に聴取が終了し、受信終了から聴取終了までの時間T118は少なくとも送信者は受信者からの応答を待つことになる。同様に遡り再生中であれば何度でも再聴取が可能である。
【0054】
尚、説明の簡単のため、遡り時間はReadポインタが0に達した場合はリミットし、メモリ容量は1通信時間分以上に十分あるものとして、メモリの終端に記録音声データが達した場合には記録を中止するものとした。しかしながら、Writeポインタと、Readポインタとの追い越しなどに配慮することでメモリの終端に達した場合にはメモリ先頭に戻るループ構造しても良い。さらに、遡り再生を途中で終了して通常の送受信モードに戻る仕組みを設けても良い。
【0055】
図8を用いて、第二の発明である無線機Aが割込送信をする動作の一例について説明する。
図8は、無線機Aが割込送信する動作の一例を示すタイムチャートである。
【0056】
図8において、無線機Aが再生中信号D101を受信すると、送信者は無線機Bが遡り再生中であることを認識できる。送信者は、無線機Bに対して、緊急に送信する要件が発生した場合には割込信号D103を送信信号A103の先頭に付加して送信する。
【0057】
無線機Bは、割込信号C103が先頭に付加された受信音声B103を受信すると、スピーカ出力音声B300で再生中のメモリ再生音声B304を一旦停止する。そして、無線機Bは、受信音声B103を受信音声B305として出力する。受信音声B305の出力が終了すると、一旦停止していたメモリ再生音声B304の続きであるメモリ再生音声B306を出力する。この結果、遅延時間は、
図3の時間dT002に割込受信の時間を加えた時間dT003となる。
【0058】
図9を用いて、第三の発明である無線機Aが追伸送信を行う動作の一例について説明する。
図9は、
図4の時間dT002において無線機Aが追伸送信を行う動作の一例を示すタイムチャートである。
【0059】
図9では、
図8に示した割込モードと同様に、
図3に図示の時間dT002において、無線機Aが送信音声A104を送信する。しかしながら、追伸モードでは、割込信号が送信音声A104の先頭に付加されない。無線機Bは、割込信号が付加されていないので受信音声B104を受信しても、スピーカ出力音声B300には出力しない。この場合、無線機Bは、メモリ記録音声B200のメモリ記録音声B201に続けて、受信音声B104をメモリ記録音声B202として記録部110に記録する。この結果、追伸モードで送信された音声は遡り再生のメモリ再生音声B303に続けてメモリ再生音声B307として受信者に提供される。この結果、遅延時間は、
図3の時間dT002に追伸受信の時間を加えた時間dT004となる。
【0060】
また、第四の発明では、音声認識部105には、
図7に図示の時間T103、及び時間T116で指定された区間に記録されている音声データが供給される音声から文字列への変換を行う。表示部は、音声から変換した文字列を表示部104に表示する。
【0061】
上述のとおり、本実施形態では、半二重通信でリアルタイムの遡り再生を行ってもブレストーク通信に支障をきたさないだけでなく、遡り再生中の通信も可能となる。また、本実施形態では、遡り再生ボタンの押下持続時間で遡り時間を指定するユーザインターフェースにより感覚的な操作が可能となる。さらに、本実施形態では、遡り再生ボタンを押下している部分のみ音声認識により文字列として提示されるため情報を視覚的にも補完することが可能となる。
【0062】
上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
101 マイク
102 送信ボタン
103 操作部
104 表示部
105 音声認識部
106 スピーカ
107 遡り再生ボタン
108 送受信制御部
109 再生制御部
110 記録部
111 録音制御部
112 送信部
113 受信部
114 送受信アンテナ